(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170306
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ドラム式洗濯機
(51)【国際特許分類】
D06F 33/48 20200101AFI20231124BHJP
D06F 103/26 20200101ALN20231124BHJP
D06F 105/46 20200101ALN20231124BHJP
D06F 105/52 20200101ALN20231124BHJP
【FI】
D06F33/48
D06F103:26
D06F105:46
D06F105:52
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081966
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】金内 優
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 祐広
(72)【発明者】
【氏名】井村 真
【テーマコード(参考)】
3B167
【Fターム(参考)】
3B167AA02
3B167AA04
3B167AE04
3B167AE12
3B167AE13
3B167BA15
3B167BA45
3B167BA54
3B167HA31
3B167HA53
3B167JA03
3B167JA31
3B167JA52
3B167JA53
3B167JA62
3B167JB08
3B167KA78
3B167KB16
3B167LA22
3B167LA25
3B167LC02
3B167LC09
3B167LD12
3B167LD13
3B167LE01
3B167LE07
3B167LF02
3B167LF07
3B167LG08
(57)【要約】
【課題】衣類のアンバランスを解消し易くする。
【解決手段】ドラム式洗濯機100は、筐体1と、筐体内に支持され、内部に液体を貯溜可能な外槽17と、外槽に回転可能なドラム21と、外槽の振動検出手段となる振動センサ28と、筐体に振動センサとドラムの回転速度を制御する制御部13と、を備える。制御部13は、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位と所定の閾値との関係に応じて、脱水制御を変更する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に支持され、内部に液体を貯溜可能な外槽と、
前記外槽に回転可能なドラムと、
前記外槽の振動検出手段となる振動センサと、
前記筐体に前記振動センサとドラムの回転速度を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記振動センサで検出された前記外槽の上下振動変位又は前後振動変位と所定の閾値との関係に応じて、脱水制御を変更する
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項2】
請求項1に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記ドラムの回転速度が前記外槽の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、前記振動センサで検出された前記外槽の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値より大きい場合に、脱水制御を変更する
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項3】
請求項1に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記ドラムの回転速度が前記外槽の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、前記振動センサで検出された前記外槽の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値より大きい場合に、衣類のほぐし動作を行ってから、脱水運転をリトライする
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項4】
請求項1に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、前記ドラムの回転速度が前記外槽の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、前記振動センサで検出された前記外槽の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値より大きい場合に、衣類のアンバランスを解消するための注水動作を行い、衣類のほぐし動作を行ってから、脱水運転をリトライする
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【請求項5】
請求項1に記載のドラム式洗濯機において、
前記制御部は、衣類のアンバランスの位置に応じて、前記閾値を変更する
ことを特徴とするドラム式洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム式洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドラム式洗濯機として、水槽ユニット(外槽)の前部に複数方向の振動成分を検知する振動検知手を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、前前後方向(FFR)、前左右方向(FLR)、前上下方向(FUD)に係る複数方向の振動成分の出力信号FFR、FLR、FUDに基づき、洗濯、すすぎ工程後の脱水動作におけるドラムの回転速度の上昇過程で、所定の回転速度R1、R2地点(R1<R2)での前前後方向の振動成分に係る出力信号FFRと前上下方向の振動成分に係る出力信号FLRの大小関係が所定の回転速度R1ではFFR>FUDでかつ所定の回転速度R2ではFFR<FUDであれば後アンバランスと判定し、後アンバランス異常に対応することが記載されている(段落0019参照)。また、特許文献1には、2つの出力信号FFR、FUDの関係を巧みに利用して、後アンバランスの場合は前前後方向の振動成分に係る出力信号FFRと前上下方向の振動成分に係る出力信号FUDの大小関係が120r/min付近の第1共振点(共振回転速度)で変化するという特徴を利用して、後アンバランスを判定することにより、以降、第1共振点以降の後アンバランス異常に対応することが記載されている(段落0022参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-125250号公報(段落0019、0022)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、ドラムの脱水回転速度(脱水工程時の1分当たりの回転数)を設定できる洗濯機が増えている。ドラムの脱水回転速度を設定できる洗濯では、脱水回転速度を通常の脱水運転が完了する定常回転速度よりも速い高速回転速度に設定できる。脱水工程では、外槽の振動を振動検出手段で判定しながら、脱水回転速度を上昇させている。外槽の振動は、衣類の片寄りで発生するアンバランスの大きさに比例し、アンバランスの位置によって、外槽の振れ方が変化する。また、脱水回転速度が上昇すると、衣類から水が抜けていくため、脱水回転速度の上昇に伴い、アンバランスの大きさや位置は変化していく。ドラムの回転速度を上昇させる途中で、外槽の振動変位が予め定められた閾値を越えた場合、振動や騒音が増大することを防ぐため、設定した脱水回転速度よりも遅い回転速度で運転する。もしくは、脱水回転を停止して、脱水運転のやり直し(リトライ)を行う。特許文献1には、衣類のアンバランスに応じて脱水制御を変更して衣類のアンバランスを解消し易くすることまでは記載されておらず、衣類のアンバランスを解消し易くすることについて向上させる余地がある。
【0005】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、衣類のアンバランスを解消し易くするドラム式洗濯機を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、ドラム式洗濯機であって、筐体と、前記筐体内に支持され、内部に液体を貯溜可能な外槽と、前記外槽に回転可能なドラムと、前記外槽の振動検出手段となる振動センサと、前記筐体に前記振動センサとドラムの回転速度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記振動センサで検出された前記外槽の上下振動変位又は前後振動変位と所定の閾値との関係に応じて、脱水制御を変更する構成とする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係るドラム式洗濯機の斜視図である。
【
図2】右側面側から見たドラム式洗濯機の断面図である。
【
図3A】脱水運転の回転速度上昇時におけるドラムの回転動作の説明図である。
【
図3B】脱水運転のリトライ時及び減速時におけるドラムの回転動作の説明図である。
【
図4A】前アンバランスの外槽振動変位の説明図である。
【
図4B】中央アンバランスの外槽振動変位の説明図である。
【
図4C】後アンバランスの外槽振動変位の説明図である。
【
図4D】対向アンバランスの外槽振動変位の説明図である。
【
図5】実施例1のドラム式洗濯機の動作を示すフローチャートである。
【
図6】実施例2のドラム式洗濯機の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0010】
なお、ドラムの脱水回転速度(脱水工程時の1分当たりの回転数)を設定できる一般的なドラム式洗濯機や、特許文献1に記載されたドラム式洗濯機には以下のような課題があり、本実施形態は、それらの課題を解決できるドラム式洗濯機を提供することも意図している。
【0011】
ドラムの脱水回転速度(脱水工程時の1分当たりの回転数)を設定できる一般的なドラム式洗濯機は、ドラムの回転速度が外槽の共振回転速度付近となる状態で衣類のアンバランスを判定すると、アンバランスを誤検知し易くなる。アンバランスを誤検知すると、ドラムが高速回転速度に到達する確率を低下させてしまったり、脱水運転のリトライ(やり直し)を増加させて、運転時間を増加させてしまったりする。本実施形態は、ドラムが高速回転速度に到達する確率を向上させたり、脱水運転のリトライを低減して、脱水運転のリトライによる運転時間の増加を抑制できるドラム式洗濯機を提供することも意図している。
【0012】
また、特許文献1に記載されたドラム式洗濯機は、アンバランスの位置判定で、ドラムの後側に衣類が片寄って発生する後アンバランスを検出できるが、ドラムの前側と後側の二カ所に衣類が片寄って発生する対向アンバランスの振動検知への配慮がない。対向アンバランスの振動検知ができないと、高速回転時にドラムの前方に備えた弾性部材が破損する恐れがある。さらに、対向アンバランスが検知できないと、対向アンバランスを後アンバランスと誤検知し、脱水運転のリトライの増加で、脱水が完了せずに運転が終了する恐れがある。本実施形態は、対向アンバランスを検知して、ドラムの高速回転時に、ドラムの前方に備えた弾性部材が破損することを防止でき、また、脱水運転のリトライの増加を抑制して、脱水が完了せずに運転が終了することを防止できるドラム式洗濯機を提供することも意図している。
【0013】
<ドラム式洗濯機の構成>
以下、
図1及び
図2を参照して、本実施形態に係るドラム式洗濯機100の構成について説明する。
図1は、右上前面側から見た本実施形態に係るドラム式洗濯機100の斜視図である。
図2は、右側面側から見たドラム式洗濯機100の断面図である。本実施形態では、ドラム式洗濯機100が乾燥機能を有するドラム式洗濯乾燥機である場合を想定して説明する。
【0014】
図1に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、外郭を構成する筐体1を備えている。筐体1は、左右の側板1a、前面カバー1b、背面カバー1c(
図2参照)、上面カバー1d、下ステー11(
図2参照)を有している。なお、
図1では右の側板のみを図示している。左の側板は右の側板と同様に形成されている。
【0015】
側板1aは、側板1aの剛性、さらには筐体1の剛性を増加させるため、側板1aの板面に凹凸を形成する絞り6が設けられている。また、筐体1は、側板1aと背面カバー1cと補強部材とにより十分な強度を有している。上面カバー1dには、水道栓からドラム式洗濯機100に給水するための給水ホース接続口30が設けられている。
【0016】
ドア2は、前面カバー1bの略中央に設けた衣類を出し入れするための投入口(図示せず)を塞ぐためのもので、前面カバー1bに設けたヒンジ(図示せず)で開閉可能に支持されている。ドア2は、ドア開放取手2aを引くことでロック機構(図示せず)が外れて開き、前面カバー1bに押し付けられることでロック機構がロックされて閉じる。前面カバー1bは、前ステー9(
図2参照)の開口部9a(
図2参照)および外槽17(
図2参照)の開口部17aと略同心に、衣類を出し入れするための円形の開口部1ba(
図2参照)を有している。
【0017】
筐体1の上部に設けた操作表示パネル3は、電源スイッチ4および操作スイッチ5を備える。操作表示パネル3は筐体1の内部に備えられている制御部13(
図2参照)に電気的に接続している。
【0018】
図2に示すように、筐体1の内部には、水を溜める外槽17が備えられる。外槽17の下部は、下ステー11の前側の左右に固定されたサスペンション26と、下ステー11の後側の左右に固定されたサスペンション26の合計4本のサスペンションで防振支持されている。外槽17の上部は懸架装置12で上ステー7と接続されることで、外槽17が筐体1に吊り下げられた状態で支持される。懸架装置12は例えばコイルばねで構成される。
【0019】
外槽17は、衣類を収納するためのドラム21を内包する。外槽17の後方には、ドラム21を回転させるためのモータ22が配置される。モータ22は、回転軸となるシャフト22aが外槽17を貫通し、ドラム21と結合されている。
【0020】
制御部13は、外槽17の下部に備えられた外槽17の振動検出手段となる振動センサ28のセンサ値を取得して、モータ22の回転速度(r/min)を制御する。制御部13は、脱水工程時にドラム21の投入した衣類のアンバランスによって、外槽17の振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の値を超えると、ドラム21の回転速度を減速または、脱水工程を一時停止して、ドラム21を正転および逆転や、ドラム21内に注水を行う。ドラム21の正転および逆転や、ドラム21に注水を行い、衣類のアンバランスを修正されると、制御部13は脱水運転のリトライを行う。
【0021】
モータ22が駆動すると、ドラム21は、正転(ドラム式洗濯機100を正面から見て時計回り)および逆転(ドラム式洗濯機100を正面から見て反時計回り)の両方向に回転駆動される。ドラム21の回転軸線Azは、ドラム式洗濯機100の前方から後方に向けて水平または、奥側が下になるように傾斜している。
図2では奥側が下になるように傾斜した状態を示している。
【0022】
ドラム21には、ドラム21内の洗濯水を外槽17に排水するための複数個の脱水孔21bが設けられると共に、その内周面に複数個(
図2では1個のみを図示)のバッフル23が設けられている。複数個のバッフル23はドラム21の周方向に間隔をおいて設けられ、ドラム21の回転に伴ってドラム21内に投入された衣類を持ち上げる。バッフル23は、ドラム21の前後方向に延在している。
【0023】
ドラム21の前端(前面側)には、円筒状の流体バランサ21cが設けられている。外槽17は、前方を開口として、後方を閉じた有底の略円筒を形成している。この外槽17の開口部と筐体1の投入口とは、前後方向に伸縮しやすいベローズ19により接続される。ベローズ19は、環状の弾性部材で成形され、ドア2を閉めることでドラム21を水封する。また、筐体1の投入口、外槽17の開口部、およびドラム21の開口部は連通しており、ドア2を開くことでドラム21内への衣類の出し入れが可能となる。なお、外槽17は、開口部を含む側と、モータ22の取り付けられる側とに分割することができる。
【0024】
給水ホース接続口30の下部には、給水弁31が配置されている。給水弁31には、外槽17に給水するための給水配管32の一端が接続されている。給水弁31の弁を開くことで、給水ホース接続口30から給水配管32を介して、洗剤容器33に水が流れ、前側注水ホース35または後側注水ホース36から外槽17内に給水される。
【0025】
外槽17の下部に備えられた排水ホース34の排水経路には、排水弁34aが設けられる。排水弁34aを閉じると外槽17内に給水した水が外槽17内に溜まり、排水弁34aを開くと、外槽17内の洗濯水が排水ホース34からドラム式洗濯機100の機外に排水される。
【0026】
<ドラム式洗濯機の全体の動作>
以下、ドラム式洗濯機100の全体の動作について説明する。
ドラム式洗濯機100では、まず利用者が電源スイッチ4を押すことで、ドラム式洗濯機100が起動する。そして、利用者は、ドア開放取手2aを引き、ドア2を開いてドラム21内に衣類を投入する。そして、利用者は、ドア2を閉じた後、操作スイッチ5を操作し、脱水回転速度の設定を行い、運転を開始する。運転が開始されると、ドラム21が回転して、注水前の衣類容量を算出する。衣類容量は、モータ22を回転させたときのモータ22の電流値に基づいて算出される。このとき、衣類容量が多い程、モータ22に負荷が加わり、電流値が大きくなるので、電流値で衣類容量を判定することができる。そして、衣類容量に基づいて、投入する洗剤量が操作表示パネル3に表示される。このとき、算出した衣類容量が多い程、投入する洗剤量も多くなる。利用者は、操作表示パネル3の表示を確認して、洗剤容器33内に所定量の洗剤量を投入する。その後、制御部13は洗い工程を開始する。
【0027】
洗い工程では、制御部13は給水弁31を開き、給水ホース接続口30から供給された水を給水配管32と洗剤容器33および前側注水ホース35または後側注水ホース36を介して、洗剤と共に外槽17内に供給する。このとき、算出した衣類容量が多い程、洗い工程での給水量が多くなる。この動作を所定時間実行した後、ドラム21を正転、停止、逆転、停止を繰り返す洗い動作を所定時間行う。このとき、衣類がバッフル23によって持ち上げられて落下する動作が繰り返されることで衣類の洗浄力が高められる。
【0028】
洗い工程の後、制御部13は脱水工程を実行する。脱水工程では、始めにドラム21に衣類が張り付かない低速回転速度でドラム21を回転させる。低速回転速度では、洗い工程で水を含んだ衣類がドラム21の回転時にバッフル23によって持ち上げられ、衣類が落下する際にドラム21の内周面に広げられる。衣類が広がり始めたら、ドラム21の回転速度を徐々に上昇させて、ドラム21に衣類を張り付ける。ドラム21に衣類が張り付くと、ドラム21の回転速度を上昇させて、外槽17の振動変位が増加する外槽17の共振回転速度域を通過させながら、目標回転速度に到達させて、衣類に含まれる水を遠心脱水していく。
【0029】
脱水工程を行った後、制御部13はすすぎ工程を実行する。すすぎ工程では、給水弁31を開いて、給水ホース接続口30から供給された水を給水配管32と洗剤容器33および前側注水ホース35または後側注水ホース36を介して、外槽17内に供給する。また、洗い工程と同様に、算出した衣類容量が多い程、給水量が多くなる。すすぎ工程では、洗い工程と同様に、ドラム21の正転、停止、逆転、停止の動作を繰り返す。このとき、バッフル23によって持ち上げられた衣類が落下する攪拌動作を所定時間行う。
【0030】
その後、制御部13は前記した脱水工程およびすすぎ工程を所定回数繰り返し、最終脱水工程に移行する。この最終脱水工程における目標回転速度区間における運転時間は、前記脱水工程より長く設定される。
【0031】
最終脱水工程を行った後、制御部13は乾燥工程を実行する。乾燥工程のドラム21の回転速度は、洗い工程時よりもさらに低速に設定される。乾燥工程ではドラム21を低速で回転させながら、送風ユニット(図示せず)からドラム21内の衣類に温風を吹き付けて、衣類のシワを低減しながら衣類を乾燥させる。
【0032】
<実施例1>
次に
図3A及び
図3Bを参照して、本実施例1の脱水工程におけるドラム21の回転動作について説明する。
図3Aは、本実施例1の脱水工程の回転速度上昇時におけるドラムの回転動作の説明図である。
図3Bは、本実施例1の脱水運転のリトライ時及び回転速度減速時におけるドラムの回転動作の説明図である。なお、以下に説明する回転速度の値は、一例に過ぎず、運用に応じて任意の値に変更することができる。
【0033】
図3Aに示すように、脱水工程はドラム21の回転速度を段階的に上昇させて、外槽17の振動変位が増加する外槽17の共振回転速度域(例えば100r/min~400r/min)や、脱水が完了したと判断する定常回転速度(例えば800r/min)を通過し、目標回転速度(例えば1400r/min)となる高速回転速度に到達させる。脱水工程では、振動センサ28で外槽17の振動変位を常に検知している。外槽17の共振回転速度域では、外槽17の振動変位を振動センサ28で検知し、アンバランス判定を行いながらドラム21の回転速度を上昇させる。外槽17の共振回転速度域で、外槽17の振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の値よりも小さい場合は、目標回転速度に向けてドラム21の回転速度を上昇させる。
【0034】
図3Bに示すように、外槽17の共振回転速度域で、外槽17の振動変位が予め定められた振動センサ28の値よりも大きい場合はドラム21の回転速度を停止して、脱水運転のリトライを行う。ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度域から定常回転速度で、外槽17の振動が予め定められた振動センサ28の値よりも大きい場合は、ドラム21の回転速度を停止して、脱水運転のリトライを行う。ドラム21の回転速度が定常回転速度よりも速い回転速度で、外槽17の振動変位が予め定められた振動センサ28の値よりも大きい場合は、ドラム21の回転速度を減速(例えば1000r/min)させて、目標回転速度よりも遅い回転速度で脱水を行う。
【0035】
ここで、衣類の片寄りで発生するアンバランスは、前アンバランスと中央アンバランスと後アンバランスと対向アンバランスに分けられる。前アンバランスは、ドラム21の前側に衣類が片寄って発生する。中央アンバランスは、ドラム21の前後の中央付近に衣類が片寄って発生する。後アンバランスは、ドラム21の後側に衣類が片寄って発生する。対向アンバランスは、ドラム21の前側と後側の二カ所に衣類が片寄って(偏在して)発生する。
【0036】
前アンバランスは、ドラム21の前側に衣類が片寄っているため、シャフト22aとアンバランスまでの距離が長く、外槽17が上下に振動しやすい。後アンバランスはドラム21の後側に衣類が片寄っているため、後アンバランスとドラム21の前端に備えられた流体バランサ21cによって、外槽17に偶力が発生するため、外槽17が前後に振動しやすい。対向アンバランスは、ドラム21の前側と後側でアンバランスが発生しているため、外槽17に偶力が発生し、外槽17が前後に振動しやすい。また、対向アンバランスは、ドラム21の前側と後側にアンバランスが発生しているため、外槽17の前後振動の大きさは、後アンバランスよりも大きくなる。中央アンバランスは、ドラム21の中央付近に衣類が片寄っているため、外槽17は、前アンバランスと後アンバランスの中間的な振動となる。そのため、前アンバランスと対向アンバランスは、中央アンバランスと後アンバランスよりも外槽17の前側の振動変位が大きくなりやすく、高速回転速度でベローズが破損しやすい。したがって、外槽17の高速回転速度に上昇させるアンバランスの大きさは、前アンバランスと対向アンバランスが、中央アンバランスと後アンバランスよりも小さくなる様に、振動センサ28の閾値を設定している。
【0037】
図4Aから
図4Dは、それぞれ、前アンバランスの外槽振動変位、中央アンバランスの外槽振動変位、後アンバランスの外槽振動変位、対向アンバランスの外槽振動変位の説明図である。
図4Aから
図4Dは、ドラム21に錘200gを備えた前アンバランスと、中央アンバランスと、後アンバランスと、対向アンバランスの外槽17の振動変位の上下振動と前後振動を示している。
【0038】
図4Aに示すように、前アンバランスは、外槽17の共振回転速度域を通過した後、上下振動変位が前後振動変位よりも大きくなりながら、高速回転速度までドラム21の回転速度が上昇する。
図4B、
図4C、
図4Dに示すように、中央アンバランスと、後アンバランスと対向アンバランスは、外槽共振回転速度域を通過した後、前後振動変位が上下振動変位よりも大きくなりながら、高速回転速度までドラム21の回転速度が上昇する。
【0039】
アンバランスは、ドラム21の回転速度上昇に伴い、衣類から水が抜けるため、高速回転速度に向けて回転速度を上げているときにアンバランスの大きさと位置は、外槽17の共振回転速度域におけるアンバランスの大きさと位置から変化する。また、前述の様に、高速回転速度に上昇させるアンバランスは、アンバランス位置毎に異なる様に振動センサ28の閾値を設定している。
【0040】
従来例では、外槽17の共振回転速度でアンバランスを判定しているため、ドラム21の回転速度の上昇によるアンバランスの変化に対応が困難となり、高速回転速度に向けて回転速度を上げているときにアンバランスを誤検知する恐れがある。そのため、従来例では、高速回転速度に到達する確率(割合)の低下や、高速回転速度のアンバランスを誤判定して脱水運転のリトライが増加することによる運転時間の増加と、大きなアンバランスが高速回転速度に到達して、外槽17の振動変位が過大となり、ベローズ19といった弾性部材が破損する恐れがある。また、脱水運転のリトライが増加した場合、脱水が完了せずに運転が終了する恐れもある。
【0041】
本実施例では、ドラム21の回転速度を定常回転速度(例えば800r/min)から目標回転速度(例えば1400r/min)までの高速回転速度に向けて上げる前に、
図4Aから
図4Dに示した外槽17の共振回転速度域(例えば100r/min~400r/min)を通過した後のドラム21の任意に定めた所定の回転速度(例えば600r/min)で、衣類のアンバランスの判定を行うことで、ドラム21の回転速度を高速回転速度に向けて上げているときのアンバランスの大きさと位置の検知精度を高めることができる。その結果、ドラム21の高速回転速度に到達する確率を向上させることができる。また、脱水運転のリトライの低減による運転時間の増加を抑制するとともに、高速回転時に外槽17の振動変位が過大となることを抑制して、ベローズ19といった弾性部材の破損を防止できる。また、脱水運転のリトライの増加を抑制して、脱水が完了せずに運転が終了することを防止できる。また、衣類のアンバランスに応じて脱水制御を変更することができる。その結果、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0042】
次に
図5を参照して、本実施例の脱水工程で高速回転速度に到達するアンバランス判定について説明する。
図5は、実施例1のドラム式洗濯機100の動作を示すフローチャートである。
【0043】
図5に示すように、ドラム式洗濯機100の制御部13は、脱水運転を開始する(S110)と、ドラム21の回転速度を上昇させる(S101)。ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度域に到達する(S102)と、アンバランスの第1判定処理を開始する(S103)。共振回転速度域は、脱水運転が完了する定常回転速度よりも遅い速度になっている。ここでは、一例として、外槽17の共振回転速度域が100r/min~400r/min程度であるものとして説明する。
【0044】
S103でアンバランスの第1判定処理が開始すると、制御部13は、外槽17の共振回転速度域における外槽17の振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の共振検出用の閾値より小さいか否かを判定する(S104)。これにより、外槽17の共振回転速度域が通過可能なアンバランス(許容アンバランス量)であるか否かを判定する。
【0045】
S104において“Yes”と判定される場合、すなわち、外槽17の共振回転速度域における外槽17の振動変位が共振検出用の閾値よりも小さい場合、制御部13は、ドラム21の回転速度を上昇させ(S105)、ドラム21の回転速度を外槽17の共振回転速度域よりも速い、所定の高速回転速度に到達させ(S106)、アンバランスの第2判定処理を開始する(S107)。
【0046】
所定の高速回転速度は、外槽17の共振回転速度域よりも速く、かつ、定常回転速度以下の速度である。ここでは、一例として、定常回転速度が例えば800r/minであり、所定の高速回転速度が例えば600r/minであるものとして説明する。ただし、所定の高速回転速度は、外槽17の共振回転速度域よりも速く、かつ、定常回転速度以下の速度であれば、600r/min以外の速度であってもよい。制御部13は、ドラム21の回転速度が所定の高速回転速度に到達したら、アンバランスの第2判定処理を行ってもよい。
【0047】
また、S104において“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の共振回転速度域における振動変位が共振検出用の閾値よりも大きい場合、制御部13は、ドラム21の回転を停止させ(S115)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。
【0048】
前記したS107でアンバランスの第2判定処理が開始すると、まず、外槽17の上下振動変位と前後振動変位の関係から、アンバランスの位置判定を行う(S108)。
【0049】
S108では、外槽17の振動変位と予め定められた(所定の)振動センサ28のアンバランス検出用の閾値を比較してアンバランスの位置判定し、その後、ドラム21の回転速度を上昇可能か否かを判定する。具体的には、S108において、アンバランスの位置判定は、外槽17の前後振動変位と上下振動変位の比から、アンバランスの位置を判定する。そして、アンバランスの位置に応じて、振動センサ28の閾値を変更する。
図4Aに示した前アンバランスは、ドラム21の回転速度が所定の高速回転速度(
図4Aの一点鎖線参照)で、外槽17の上下振動変位が前後振動変位よりも大きくなる。したがって、外槽17の上下振動変位が前後振動変位よりも大きい場合のアンバランスの位置判定結果は、第1判定結果(前アンバランス)とする。
図4Bと
図4Cと
図4Dに示した中央アンバランスと、後アンバランスと対向アンバランスは、ドラム21の回転速度が所定の高速回転速度(
図4Bから
図4Dの一点鎖線参照)で、外槽17の前後振動変位が上下振動変位よりも大きくなるため、外槽17の前後振動変位と上下振動変位の比からアンバランスの位置を判定する。外槽17の前後振動変位と上下振動変位の比は、中央アンバランス<後アンバランス<対向アンバランスとなるため、それぞれの比に応じて、アンバランスの位置を判定し、第2判定結果(中央アンバランス)、第3判定結果(後アンバランス)、第4判定結果(対向アンバランス)とする。アンバランスの位置の第1判定結果から第4判定結果は、予め制御部13に設定する。
【0050】
前記したS108において、アンバランスの位置が前アンバランスであると判定された場合、前アンバランスは高速回転速度で、外槽17の上下振動変位が大きくなるため、外槽17の上下振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の第1閾値より小さいか否かを判定する(S109)。第1閾値は、後記する第2閾値、第3閾値、第4閾値と同様に、脱水制御を変更するための基準値、すなわち、脱水運転をリトライするか否かを判定するための基準値である。制御部13は、衣類のアンバランスの位置に応じて、脱水制御を変更するための基準値に用いる閾値を、第1閾値、第2閾値、第3閾値、第4閾値のいずれかに変更する。
【0051】
また、前記したS108において、アンバランスの位置が中央アンバランス、後アンバランスまたは対向アンバランスであると判定された場合、高速回転速度で外槽17は前後振動変位が大きくなるため、外槽17の前後振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の閾値より小さいか否かを判定する。この時、アンバランスの位置が中央アンバランスであると判定された場合、外槽17の前後振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の第2閾値より小さいか否かを判定する(S110)。また、アンバランスの位置が後アンバランスであると判定された場合、外槽17の前後振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の第3閾値より小さいか否かを判定する(S111)。また、アンバランスの位置が対向アンバランスであると判定された場合、外槽17の前後振動変位が予め定められた(所定の)振動センサ28の第4閾値より小さいか否かを判定する(S112)。高速回転速度に到達するアンバランスの大きさは、対向アンバランス<後アンバランス<中央アンバランスとなるため、第2閾値から第4閾値の大きさは、第4閾値<第3閾値<第2閾値となる。
【0052】
S109とS110とS11とS112のいずれかで“Yes”と判定される場合、すなわち、外槽17の振動変位が振動センサ28の第1閾値、第2閾値、第3閾値または第4閾値より小さい場合、ドラム21の回転速度を高速回転速度まで上昇可能と判断でき、ドラム21の回転速度を上昇させる(S113)。この後、脱水予定時間経過する(S114)と、脱水運転を終了する。
【0053】
また、S109とS110とS11とS112のいずれかで“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の振動変位が振動センサ28の第1閾値、第2閾値、第3閾値または第4閾値より大きい場合、ドラム21の回転速度を高速回転速度まで上昇不可と判断し、ドラム21の回転を停止させ(S115)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。
【0054】
外槽17の共振回転速度域よりも速く、定常回転速度以下のドラム21の回転速度で、振動センサ28で前アンバランス、中央アンバランス、後アンバランス、および対向アンバランスを判別し、アンバランスの位置毎に応じた振動センサ28の閾値を設けることで、高速回転速度に到達するアンバランス量を適正化できる。したがって、高速回転速度に到達する確率を向上し、アンバランスの誤検知防止によるリトライの低減による運転時間増加の抑制および高速回転時に外槽17の振動変位が過大となることを抑制し、ベローズ19といった弾性部材の破損防止ができる。また、アンバランスの誤検知防止により、リトライの増加を抑制して、脱水が完了せずに運転が終了することを防止することができる。
【0055】
<実施例2>
次に
図6を参照して、本実施例2の脱水工程におけるドラム21の回転動作について説明する。
図6は、実施例2のドラム式洗濯機100の動作を示すフローチャートである。本実施例2では、ドラム式洗濯機100はアンバランスの位置判定に応じたリトライを行う。なお、ドラム式洗濯機100の構成については、実施例1と基本的に同様な構成であるので、以下では、異なる部分について説明する。
【0056】
図6に示すように、本実施例2の動作は、実施例1の動作(
図5参照)の動作と比較すると、S109とS110とS11とS112のいずれかで“No”と判定される場合の動作、すなわち、外槽17の振動変位が振動センサ28の第1閾値、第2閾値、第3閾値または第4閾値より大きい場合の動作が異なる点で相違する。本実施例2の動作では、S109とS110とS11とS112のいずれかで“No”と判定される場合の動作、すなわち、外槽17の振動変位が振動センサ28の第1閾値、第2閾値、第3閾値または第4閾値より大きい場合に、衣類のアンバランスを解消するための注水動作を行うことで、衣類の片寄りを修正する。
【0057】
具体的には、アンバランスの位置が前アンバランスである場合のS109において、“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の上下振動変位が振動センサ28の第1閾値より大きい場合、制御部13は、ドラム21の回転を停止させ(S201)、前側注水ホース35からドラム21の前側に注水して(S202)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。
【0058】
前アンバランスは、衣類がドラム21の前側に片寄っているため、ドラム21の前側に注水を行う(S202)ことで、衣類のほぐし動作を行う(S116)時に、ドラム21の前側の衣類の片寄りが解消され易くなる。そのため、本実施例2では、アンバランスの位置が前アンバランスである場合におけるリトライ後の脱水工程で再度リトライが発生することを抑制できる。
【0059】
また、アンバランスの位置が中央アンバランスである場合のS110において、“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の前後振動変位が振動センサ28の第2閾値より大きい場合、制御部13は、ドラム21の回転を停止させ(S203)、後側注水ホース36からドラム21の後側に注水して(S204)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。また、アンバランスの位置が後アンバランスである場合のS111において、“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の前後振動変位が振動センサ28の第3閾値より大きい場合にも、制御部13は、ドラム21の回転を停止させ(S203)、後側注水ホース36からドラム21の後側に注水して(S204)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。
【0060】
中央アンバランスと後アンバランスは、衣類がドラム21の中央付近や後側に片寄っているため、ドラム21の後側に注水を行う(S204)ことで、衣類のほぐし動作を行う(S116)時に、ドラム21の中央付近や後側の衣類の片寄りが解消され易くなる。そのため、本実施例2では、アンバランスの位置が中央アンバランスである場合又は後アンバランスである場合におけるリトライ後の脱水工程で再度リトライが発生することを抑制できる。
【0061】
また、アンバランスの位置が対向アンバランスである場合のS112において、“No”と判定される場合、すなわち、外槽17の前後振動変位が振動センサ28の第4閾値より大きい場合、制御部13は、ドラム21の回転を停止させ(S205)、前側注水ホース35と後側注水ホース36からドラム21の前側と後側に注水して(S206)、衣類のほぐし動作を行い(S116)、脱水運転をリトライする。
【0062】
対向アンバランスは、衣類がドラム21の前側と後側に片寄っているため、ドラム21の前側と後側に注水を行う(S206)ことで、衣類のほぐし動作を行う(S116)時に、ドラム21の前側と後側の衣類の片寄りが解消され易くなる。そのため、本実施例2では、アンバランスの位置が対向アンバランスである場合におけるリトライ後の脱水工程で再度リトライが発生することを抑制できる。
【0063】
ドラム式洗濯機100は、本実施例2の動作を行うことにより、S108でのアンバランスの位置判定結果に応じてドラム21への注水位置を調整する。これにより、衣類の片寄りを修正する。その結果、リトライ回数の増加を抑制でき、運転時間の増加防止することができる。また、アンバランスの誤検知防止により、リトライの増加を抑制して、脱水が完了せずに運転が終了することを防止することができる。
【0064】
<ドラム式洗濯機の主な特徴>
(1)
図2に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、筐体1と、筐体1内に支持され、内部に液体を貯溜可能な外槽17と、外槽17に回転可能なドラム21と、外槽17の振動検出手段となる振動センサ28と、筐体1に振動センサ28とドラム21の回転速度を制御する制御部13と、を備える。制御部13は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達したときに、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位と所定の閾値との関係に応じて、脱水制御を変更する。
【0065】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、衣類のアンバランスに応じて脱水制御を変更することができる。その結果、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。また、本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、ドラム21の回転速度を高速回転速度に向けて上げているときのアンバランスの大きさと位置の検知精度を高めることができる。その結果、ドラム21が高速回転速度に到達する確率を向上させることができる。また、脱水運転のリトライの低減による運転時間の増加を抑制するとともに、高速回転時に外槽17の振動変位が過大となることを抑制して、ドラム21の高速回転時に、ドラム21の前方に備えた、ベローズ19といった弾性部材が破損することを防止できる。また、脱水運転のリトライの増加を抑制して、脱水が完了せずに運転が終了することを防止できる。
【0066】
(2)
図5に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100の制御部13は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、脱水制御を変更するとよい。
【0067】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、衣類のアンバランスに応じて脱水制御を変更することができる。その結果、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0068】
(3)
図5に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100の制御部13は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、衣類のほぐし動作を行ってから(S116)、脱水運転をリトライする(S110)とよい。
【0069】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、衣類のほぐし動作を行う(S116)ことで、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0070】
(4)
図6に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100の制御部13は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、衣類のアンバランスを解消するための注水動作を行い(S202、S204、S206のいずれか)、衣類のほぐし動作を行ってから(S116)、脱水運転をリトライする(S110)とよい。
【0071】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、ドラム21の回転速度が外槽17の共振回転速度よりも速い所定の回転速度に到達した場合で、かつ、振動センサ28で検出された外槽17の上下振動変位又は前後振動変位が所定の閾値(S109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれか)より大きい場合に、衣類のアンバランスを解消するための注水動作を行い(S202、S204、S206のいずれか)、その後に、衣類のほぐし動作を行う(S116)ことで、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0072】
(5)
図5及び
図6に示すように、本実施形態に係るドラム式洗濯機100の制御部13は、衣類のアンバランスの位置に応じて、閾値を変更する(例えば、閾値をS109の第1閾値、S110の第2閾値、S111の第3閾値、S112の第4閾値のいずれかに変更する)とよい。
【0073】
このような本実施形態に係るドラム式洗濯機100は、衣類のアンバランスの位置に応じて脱水制御(例えば、
図6に示すドラム21への注水位置の設定制御を行ってからの脱水制御)を変更することができる。その結果、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0074】
以上の通り、本実施形態に係るドラム式洗濯機100によれば、衣類のアンバランスを解消し易くすることができる。
【0075】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。また、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 筐体
1a 側板
1b 前面カバー
1ba 開口部
1c 背面カバー
1d 上面カバー
2 ドア
2a ドア開放取手
3 操作表示パネル
4 電源スイッチ
5 操作スイッチ
6 絞り
7 上ステー
9 前ステー
9a 開口部
11 下ステー
12 懸架装置
13 制御部
17 外槽
17a 開口部
19 ベローズ
21 ドラム
21b 脱水孔
21c 流体バランサ
22 モータ
22a シャフト
23 バッフル
26 サスペンション
28 振動センサ
30 給水ホース接続口
31 給水弁
32 給水配管
33 洗剤容器
34 排水ホース
34a 排水弁
35 前側注水ホース
36 後側注水ホース
100 ドラム式洗濯機
Az 回転軸線