(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170308
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】沸騰水浴装置及びCOD自動測定装置
(51)【国際特許分類】
B01L 7/00 20060101AFI20231124BHJP
G01N 33/18 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B01L7/00
G01N33/18 104
G01N33/18 106Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081971
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】592157098
【氏名又は名称】ラボテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128277
【弁理士】
【氏名又は名称】專徳院 博
(72)【発明者】
【氏名】吉川 惠
(72)【発明者】
【氏名】玉重 繁良
(72)【発明者】
【氏名】三代 秀和
【テーマコード(参考)】
4G057
【Fターム(参考)】
4G057AD00
(57)【要約】
【課題】水蒸気の外部放出を抑制可能であり、かつエネルギーロスの少ない沸騰水浴装置及び該沸騰水浴装置を備えるCOD自動測定装置を提供する。
【解決手段】水槽本体10に前記沸騰浴槽15と前記沸騰浴槽15と堰19で仕切られた凝縮水回収槽35とを有し、沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却し凝縮させる第1凝縮器51と、前記第1凝縮器51を通過した前記水蒸気を冷却し凝縮させる第2凝縮器65と、前記第1凝縮器51及び前記第2凝縮器65で凝縮させた凝縮水を補給水として前記沸騰浴槽15に供給する凝縮水供給手段45と、前記第1凝縮器51及び前記第2凝縮器65に冷却水を供給する冷却水供給装置71と前記第1凝縮器51を冷却し温度の上昇した前記冷却水を冷却する冷却水冷却器81とを有する冷却水循環装置70と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰浴槽で発生する水蒸気を冷却し凝縮させる第1凝縮器と、
前記第1凝縮器を通過した前記水蒸気を冷却し凝縮させる第2凝縮器と、
を備えることを特徴とする沸騰水浴装置。
【請求項2】
さらに、前記第1凝縮器及び前記第2凝縮器で凝縮させた凝縮水を補給水として前記沸騰浴槽に供給する凝縮水供給手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の沸騰水浴装置。
【請求項3】
水槽本体に、前記沸騰浴槽と前記沸騰浴槽と堰で仕切られた凝縮水回収槽とを備え、
前記沸騰浴槽と前記凝縮水回収槽とは気相部が連通し、
前記第1凝縮器は、前記凝縮水回収槽の気相部に設置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の沸騰水浴装置。
【請求項4】
前記第1凝縮器及び前記第2凝縮器に冷却水を供給する冷却水供給手段と、前記第1凝縮器を冷却し温度の上昇した前記冷却水を冷却する冷却水冷却手段とを有する冷却水循環装置を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の沸騰水浴装置。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の沸騰水浴装置を備えることを特徴とするCOD自動測定装置。
【請求項6】
JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」又はJIS K 0102の19「アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODOH)」に準拠した構成を有するCOD自動測定装置であって、
沸騰浴槽として請求項1又は2に記載の沸騰水浴装置を備えることを特徴とするCOD自動測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CODの測定などで使用する沸騰水浴及びCOD自動測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
JIS K 0806-1997には工場排水などの化学的酸素消費量(COD)を測定するための自動計測器に関する規定がある。このCOD自動計測器の測定原理は、JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」に準拠する。JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」は、試料に硝酸銀溶液と硫酸を加えた後、5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液を加えて沸騰水中で30分間加熱し、消費された過マンガン酸カリウムの量を酸素当量として表すものである。
【0003】
JIS K 0102の17に基づくCODの分析、COD自動測定装置については、これまでにもいくつかの課題が指摘されている。例えば、排水にヒドロキシルアミン化合物(NS化合物)が共存している場合、NS化合物の分解処理に一週間くらいの時間を要する(例えば特許文献1参照)。生成する塩化銀が反応槽・配管の内壁、反応槽内の酸化還元電位(ORP)電極などの各種センサーへ付着することでCOD値の測定誤差を生じる(例えば特許文献2参照)。JIS K 0102の17に準拠するCOD自動測定装置については次のような課題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-76338号公報
【特許文献2】特開2009-139119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
JIS K 0102の17には、「試料に硝酸銀溶液と硫酸を加えた後、5mmol/L過マンガン酸カリウム溶液を加えて沸騰水中で30分間加熱し」とあり、COD自動測定装置においても沸騰水浴を設置する必要がある。沸騰水浴は、三角フラスコの出し入れ等があるため密閉することができず、沸騰水浴から大量の水蒸気が発生する。
【0006】
JIS K 0102の17に準拠するCOD自動測定装置は、沸騰水浴ほか多くの機器等が筐体に収納・設置されているため沸騰水浴から大量の水蒸気が放出されると他の機器に悪影響を及ぼし、また漏電の危険もある。また大量の水蒸気の放出は、周囲環境に悪影響を及ぼし、さらにエネルギーロスになり好ましくない。このように沸騰水浴から発生する水蒸気は、沸騰水浴及びCOD自動測定装置において解決すべき課題の1つであるが、これまでこの点に関しては特に指摘されておらず、これを解決する方法も開発されていない。
【0007】
本発明の目的は、水蒸気の外部放出を抑制可能であり、かつエネルギーロスの少ない沸騰水浴装置及び該沸騰水浴装置を備えるCOD自動測定装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、沸騰浴槽で発生する水蒸気を冷却し凝縮させる第1凝縮器と、前記第1凝縮器を通過した前記水蒸気を冷却し凝縮させる第2凝縮器と、を備えることを特徴とする沸騰水浴装置である。
【0009】
本発明に係る沸騰水浴装置は、さらに、前記第1凝縮器及び前記第2凝縮器で凝縮させた凝縮水を補給水として前記沸騰浴槽に供給する凝縮水供給手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また本発明に係る沸騰水浴装置は、水槽本体に、前記沸騰浴槽と前記沸騰浴槽と堰で仕切られた凝縮水回収槽とを備え、前記沸騰浴槽と前記凝縮水回収槽とは気相部が連通し、前記第1凝縮器は、前記凝縮水回収槽の気相部に設置されることを特徴とする。
【0011】
また本発明に係る沸騰水浴装置は、前記第1凝縮器及び前記第2凝縮器に冷却水を供給する冷却水供給手段と、前記第1凝縮器を冷却し温度の上昇した前記冷却水を冷却する冷却水冷却手段とを有する冷却水循環装置を備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記沸騰水浴装置を備えることを特徴とするCOD自動測定装置である。
【0013】
また本発明は、JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」又はJIS K 0102の19「アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODOH)」に準拠した構成を有するCOD自動測定装置であって、沸騰浴槽として前記沸騰水浴装置を備えることを特徴とするCOD自動測定装置である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、水蒸気の外部放出を抑制可能であり、かつエネルギーロスの少ない沸騰水浴装置及び該沸騰水浴装置を備えるCOD自動測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1の構成を説明するための図である。
【
図2】本発明の第2実施形態の沸騰水浴装置2の構成を説明するための図である。
【
図3】本発明の第1及び第2実施形態の沸騰水浴装置1,2の凝縮装置50廻りの変形例を説明するための図である。
【
図4】本発明の第3実施形態のCOD自動測定装置100の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1の構成を説明するための図である。本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1は、CODの分析等で試料90を加熱するために使用する装置であり、水槽本体10と、発生する水蒸気を凝縮させた凝縮水を沸騰浴槽15に供給する凝縮水供給手段45と、発生する水蒸気を冷却、凝縮させる凝縮装置50とを備える。本実施形態では、被加熱物である試料90は、三角フラスコ95に入れられている。
【0017】
水槽本体10は、天板12に三角フラスコ95を出し入れするための開口部13が複数個設けられた長方体状の本体11内に、試料90を加熱する沸騰浴槽15と、沸騰浴槽15と堰19を隔て沸騰浴槽15に併設された凝縮水回収槽35とを備える。
【0018】
沸騰浴槽15は、底部にヒーター30を備え、ヒーター30の上部に三角フラスコ95を載置するための載置台17が設けられている。載置台17は、パンチングメタルなど水が流通可能な部材で構成される。使用の際は、載置台17に三角フラスコ95が搭置され、開口部13は、蓋14で個別に塞がれる。
【0019】
堰19の内側(沸騰浴槽側)には水の出入りが可能な開口部23を備える仕切板21が設けられ、載置台17の一端部が仕切板21に固定されている。仕切板21と堰19との間は、沸騰浴槽15の水位を計測する水位計測部25であり、液面計27が設置されている。前記のように水位計測部25を構成することで沸騰浴槽15の水位を安定して計測することができる。ヒーター30は、加熱制御装置32を介して沸騰浴槽15を沸騰状態に維持する。
【0020】
凝縮水回収槽35は、沸騰浴槽15で発生する水蒸気が凝縮装置50により冷却、凝縮された凝縮水を貯留する。また三角フラスコ95の出し入れに伴い、沸騰浴槽15の水位が変動し、堰19を超えて流れ込む沸騰水も合わせて貯留する。堰19の高さは、本体11の高さよりも低く、沸騰浴槽15と凝縮水回収槽35とは気相部36が連通するように構成されている。
【0021】
凝縮水回収槽35には、水位を検知する液面計37が設置され、補給水供給ライン40が接続する。補給水供給ライン40からは、沸騰浴槽15で発生する水蒸気のうち凝縮水として回収することができなかった水蒸気に相当する水が補給される。補給水供給ライン40には、補給水弁42が設けられ、液面計37に接続する水位調節器38と協働して凝縮水回収槽35を所定の水位に維持する。
【0022】
凝縮水供給手段45は、凝縮水回収槽35内の凝縮水を沸騰浴槽15に供給する凝縮水供給ポンプ46を備え、沸騰浴槽15の水位を計測する液面計27と接続する水位調節器28と協働して沸騰浴槽15内を所定の水位に維持する。
【0023】
凝縮装置50は、沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却、凝縮させる第1凝縮器51、第1凝縮器51を通過する水蒸気を冷却、凝縮する第2凝縮器65、第1凝縮器51及び第2凝縮器65に冷却媒体としての冷却水を供給する冷却水循環装置70とを含む。
【0024】
第1凝縮器51は、沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却、凝縮させる凝縮器であり、凝縮水回収槽35の気相部36に設置されている。第1凝縮器51は、冷却水循環装置70を通じて供給される冷却水を冷却媒体とし、冷却管の外表面で水蒸気を冷却、凝縮させる。凝集した水は、凝縮水回収槽35に落下、貯留される。
【0025】
第1凝縮器51を設置する際は、天板12と第1凝縮器51との間を塞ぐカバー53を設け、カバー53で囲まれた天板12部分に第2凝縮器接続口58を設けることが好ましい。これにより沸騰浴槽15で発生する水蒸気が、第1凝縮器51をショートパスして第2凝縮器65に導かれることを防止し、効率的に水蒸気を凝縮させることができる。
【0026】
第2凝縮器65は、第1凝縮器51を通過する水蒸気を冷却、凝縮する凝縮器であり、第2凝縮器接続口58と連通するように本体11の外に設置されている。第2凝縮器65は、2管式の冷却器であり、冷却水循環装置70を通じて供給される冷却水を冷却媒体とする。凝集した水は、凝縮水回収槽35に落下する。
【0027】
冷却水循環装置70は、第1凝縮器51及び第2凝縮器65に冷却媒体としての冷却水を供給する装置であり、冷却水供給装置71と、第2凝縮器65及び第1凝縮器51を冷却し温度の上昇した戻り冷却水を冷却する冷却水冷却器81とを備え、冷却水は循環使用される。
【0028】
冷却水供給装置71は、冷却水供給水槽73と、冷却水供給水槽73に接続する冷却水供給ポンプ75、冷却水供給ライン76及び冷却水返送ライン77で構成される。冷却水供給ポンプ75から送水される冷却水は、まず第2凝縮器65に送られ、第2凝縮器65を冷却した冷却水が引き続き第1凝縮器51に送られる。第1凝縮器51を冷却した冷却水は、冷却水返送ライン77を通じて冷却水冷却器81に送られ、ここで空冷された後、冷却水供給水槽73に戻る。冷却水冷却器81は、ファンを備え、戻り冷却水を強制冷却する空冷式冷却器である。
【0029】
沸騰水浴装置1において、沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却、凝縮させた凝縮水は、沸騰浴槽15の補給水として返送されるため第1凝縮器51の冷却温度は高い方が好ましい。一方で、第1凝縮器51の冷却温度を極端に高くすると第2凝縮器65の負荷が大きくなり、第2凝縮器65が大型化し、あるいは第2凝縮器65において第1凝縮器51を通過する水蒸気を十分に凝縮することができなくなる。
【0030】
以上から第1凝縮器51の冷却温度(凝縮温度)は、75~90℃程度が好ましく、第2凝縮器65の冷却温度(凝縮温度)は、20~35℃程度が好ましい。なお、80℃の飽和蒸気圧及び30℃の飽和蒸気圧は、それぞれ100℃の飽和蒸気圧の約47%、約4%である。
【0031】
上記構成からなる沸騰水浴装置1は、凝縮温度(冷却温度)の異なる2つの凝縮器を直列に配置し、第1凝縮器51で沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却し凝縮させ、第2凝縮器65では第1凝縮器51で凝縮しなかった水蒸気を冷却し凝縮させるので、高い温度の凝縮水を回収すると共に、水蒸気の外部放出を抑制することができる。また沸騰水浴装置1は、エネルギーロスが少ない。
【0032】
また沸騰水浴装置1は、水槽本体10に、ヒーター30を備える沸騰浴槽15とは分離した凝縮水回収槽35を備え、ここで沸騰浴槽15で発生する水蒸気を凝縮させ凝縮水を回収するので、沸騰浴槽15に影響を与えることなく水蒸気を凝縮させることができる。これにより沸騰浴槽15は、試料90の加熱を安定して行うことができる。
【0033】
また沸騰水浴装置1は、第1凝縮器51を凝縮水回収槽35の気相部36に設置し、凝縮水を直下の凝縮水回収槽35に回収するので、装置をコンパクトにすることができる。
【0034】
図2は、本発明の第2実施形態の沸騰水浴装置2の構成を説明するための図である。
図1に示す本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0035】
本発明の第2実施形態の沸騰水浴装置2は、本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1と基本構成を同じくするが、第1凝縮器51の構成等が異なっている。具体的には、第1凝縮器51は、ケーシング55に収納され、本体11の外であって本体11よりも高い位置に取付けられている。これに伴い凝縮水回収槽35等も省略されている。
【0036】
第1凝縮器51は、ケーシング55の中央部にケーシング55を上下に仕切るように配置されている。ケーシング55の下部には、一端を本体11の天板12に設けられた水蒸気排出口16と接続する水蒸気導入管56が接続し、水蒸気導入管56を通じて沸騰浴槽15で発生する水蒸気がケーシング55に導入される。
図2では、水蒸気導入管56が2本であるが、本体11に設ける水蒸気排出口16及び水蒸気導入管56の数は、1又は3以上であってもよい。
【0037】
ケーシング55の底部には凝縮水を沸騰浴槽15に送る凝縮水供給管60が接続する。凝縮水供給管60の先端61は、沸騰浴槽15の下部に配置されており水中に位置する。ケーシング55の頂部には第2凝縮器接続口58が設けられ、第1実施形態の沸騰水浴装置1と同様に、ここに第2凝縮器65が接続する。
【0038】
以上からなる第2実施形態の沸騰水浴装置2は、第1凝縮器51が、本体11よりも高い位置に取付けられているので、ポンプ等を使用することなく凝縮水を位置エネルギーを利用して沸騰浴槽15に供給することができる。このため沸騰水浴装置2では、凝縮水回収槽35、液面計37、水位調節器38、凝縮水供給ポンプ46を省略することができる。補給水供給ライン40は、沸騰浴槽15に連結される。
【0039】
上記構成からなる沸騰水浴装置2も沸騰水浴装置1と同様に、凝縮温度(冷却温度)の異なる2つの凝縮器を直列に配置し、第1凝縮器51で沸騰浴槽15で発生する水蒸気を冷却し凝縮させ、第2凝縮器65では第1凝縮器51で凝縮しなかった水蒸気を冷却し凝縮させるので、高い温度の凝縮水を回収すると共に、水蒸気の外部放出を抑制することができる。また沸騰水浴装置2は、エネルギーロスが少ない。
【0040】
また沸騰水浴装置2は、第1凝縮器51及び第2凝縮器65を水槽本体10の外に配置し、ここで沸騰浴槽15で発生する水蒸気を凝縮させ凝縮水を回収するので、沸騰浴槽15に影響を与えることなく水蒸気を凝縮させることができる。これにより沸騰浴槽15は、試料90の加熱を安定して行うことができる。
【0041】
また沸騰水浴装置2は、位置エネルギーを用いて凝縮水を沸騰浴槽15に供給することができるため凝縮水回収槽35、凝縮水ポンプ46等を省略することができ、装置をコンパクトにすることができる。
【0042】
次に、第1及び第2実施形態の沸騰水浴装置1,2の凝縮装置50廻りの変形例を示す。
図3は、凝縮装置50廻りの変形例を説明するための模式図である。
図1及び
図2に示す本発明の第1及び第2実施形態の沸騰水浴装置1,2と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0043】
図3(A)は、冷却水供給ライン76を途中で分岐させ、一方の冷却水供給ライン76aを第1凝縮器51に接続し、他方の冷却水供給ライン76bを第2凝縮器65に接続する。第1凝縮器51及び第2凝縮器65をそれぞれ冷却した冷却水は、それぞれ冷却水返送ライン77a、77bを通じて冷却水冷却器81に戻し、ここで冷却する。このような冷却水供給方法は、第1凝縮器51及び第2凝縮器65にそれぞれ独立して冷却水を供給することができるので各凝縮器の温度の調節が容易になる。
【0044】
図3(B)は、第1凝縮器51の戻り冷却水を補給水として利用するものであり、第1凝縮器51と冷却水冷却器81とを結ぶ冷却水返送ライン77を分岐させ、ここに分岐ラインを設け、これを凝縮水回収槽35の補給水供給ライン43とする。補給水供給ライン43には、水位調節器38からの指令により開閉する補給水弁44を設ける。第1凝縮器51からの戻り冷却水の一部を補給水として利用すると、冷却水供給水槽73の水位が低下するので、冷却水供給水槽73に補給水供給ライン40を接続する。冷却水供給水槽73の水位調節は、冷却水供給水槽73に設置した液面計83及びこれに接続する水位調節器84を介して行う。
【0045】
第1凝縮器51の戻り冷却水を補給水として利用する方法は、温度の高い戻り冷却水を沸騰水槽15の補給水として利用することができるので熱効率に優れる。さらに外部からの水を補給水として冷却水供給水槽73に供給するので、冷却水供給水槽73の温度を低下させることができる。
【0046】
図3(C)は、第1凝縮器51の戻り冷却水を利用して、凝縮水回収槽35に補給する水を加温する。具体的には、第1凝縮器51と冷却水冷却器81とを結ぶ冷却水返送ライン77に熱交換器86を設け、熱交換器86の低温側に補給水供給ライン40を接続する。これにより温度の上昇した水を凝縮水回収槽35に供給することが可能となり熱効率に優れる。さらに冷却水冷却器81の負荷を低減させることができる。
【0047】
以上、第1、第2実施形態の沸騰水浴装置1,2、さらにその変形例を用いて本発明に係る沸騰水浴装置を説明したが、本発明に係る沸騰水浴装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲で変更することができる。
【0048】
例えば上記実施形態では、第1凝縮器51としてプレート熱交換器、第2凝縮器65として2重管式の熱交換器を使用しているが、本発明に係る沸騰水浴装置において、第1凝縮器51及び第2凝縮器65の型式は特に限定されるものではない。第1凝縮器51及び第2凝縮器65は、凝縮性能に優れコンパクトなものが好ましい。上記実施形態では、第1凝縮器51と第2凝縮器65とがそれぞれ独立した凝縮器となっているが、1つの凝縮器において、2つの温度領域を設け、それぞれを第1凝縮器51及び第2凝縮器65としてもよい。
【0049】
また上記実施形態では沸騰浴槽15で発生する水蒸気を凝縮させ、さらに外部に放出される水蒸気を抑制するための手段として温度レベルの異なる2つの凝縮器を使用するが、本発明に係る沸騰水浴装置では、これら手段として少なくとも温度レベルの異なる2つの凝縮器が設置されていればよく、3つ以上の凝縮器を用いてもよい。また上記実施形態では、冷却水冷却器81に強制空冷式の冷却器を使用するが、冷却水冷却器81は他のタイプのものであってもよい。
【0050】
図4は、本発明の第3実施形態のCOD自動測定装置100の構成を説明するための図である。
図1に示す第1実施形態の沸騰水浴装置1と同一の構成には、同一の符号を付して説明を省略する。
【0051】
本発明の第3実施形態のCOD自動測定装置100は、JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」に記載の方法に準拠した構成を有するCOD自動測定装置であり、沸騰浴槽として本発明の第1実施形態の沸騰水浴装置1を備える。
【0052】
JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」は、試料を硫酸酸性とし、酸化剤として過マンガン酸カリウムを加え、沸騰水浴中で30分間反応させ、そのとき消費した過マンガン酸カリウムの量を求め、相当する酸素の量(Omg/L)で表すと規定されており、それに対応し、本実施形態のCOD自動測定装置100は、以下のように構成される。
【0053】
COD自動測定装置100は、試料を一定量自動採取し、反応槽109に供給する試料採取手段101、試薬を貯蔵する試薬貯槽105を備え、貯蔵する試薬を一定量自動採取し、反応槽109に供給する試薬供給手段103、反応槽109、反応槽109を加熱する沸騰水浴である沸騰水浴装置1、及び反応槽109を移動させるアクチュエータ111を備える反応手段107、滴定器115及び終点を検出する検出器117を備える滴定手段113、各手段の動作を制御する制御手段119、制御手段119に接続しデータを入出力するタッチパネル等の入出力手段121を主に構成される。
【0054】
またCOD自動測定装置100は、上記各手段の他、洗浄水を貯蔵する洗浄水タンクを備え、反応槽109等に洗浄水を供給する洗浄水供給手段、廃液を貯留する廃液タンク等を備える。本実施形態のCOD自動測定装置100は、筐体123を有し、前記各手段、各機器が筐体123に適宜配置されている。
【0055】
COD自動測定装置100の動作は、JIS K 0102の17「100℃における過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODMn)」に規定の手順に沿って行われる。COD自動測定装置100の動作の概略は、以下のとおりである。
【0056】
制御手段119は、反応槽107に試料を一定量自動採取し、これに適量の水を加え、所定の硫酸を加え、撹拌しながら所定の硝酸銀溶液を加えるように試料採取手段101及び試薬供給手段103を制御する。これにより試料中の塩化イオンがマスキングされる。
【0057】
続いて制御手段119は、所定の過マンガン酸カリウム溶液を加え、撹拌し、直ちに反応槽109を沸騰水浴装置1の沸騰水槽15に入れ、30分間加熱するように試薬供給手段103及び反応手段107を制御する。制御手段119は、反応槽109の加熱に先立ち、沸騰水浴装置1を立上げ、沸騰水槽15を沸騰状態に維持すると共に凝縮水供給手段45及び凝縮装置50を動作させる。
【0058】
続いて制御手段119は、反応槽109を沸騰水槽15から取り出し、所定のしゅう酸ナトリウムを加え撹拌し、反応するように試薬供給手段103及び反応手段107を制御する。続いて制御手段119は、液温50~60℃で所定の過マンガン酸カリウム溶液で滴定するように滴定手段113を制御し、得られた結果をデータ処理部(図示省略)で処理し、測定結果を入出力手段121に出力する。別途、水についても同様の操作を行う。
【0059】
従来の沸騰水浴を備えるCOD自動測定装置の場合、筐体が開放されていると沸騰水浴から大量の水蒸気が放出され、周囲の環境を悪化させる。一方、本実施形態のCOD自動測定装置100の場合、沸騰水浴として沸騰水浴装置1を用いるので開放された筐体123であっても水蒸気の放出が抑制され、周囲の環境に悪影響を与えることがない。
【0060】
本実施形態のCOD自動測定装置100において、箱型の筐体123を使用する場合には、筐体123に空気取入口及び空気排出口を設け、沸騰水浴装置1の冷却水冷却器81の空冷ファンの排出口と空気排出口とを接続するのがよい。このように構成すれば冷却水冷却器81の空冷ファンを筐体123内の空気を換気する換気ファンとして利用することが可能であり、筐体123内に蒸気が籠ることを防ぐことができる。
【0061】
以上、第3実施形態のCOD自動測定装置100を用いて本発明に係るCOD自動測定装置を説明したが、本発明に係るCOD自動測定装置は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明に係るCOD自動測定装置は、沸騰水浴として沸騰水浴装置1を用いるものであればよく、COD自動測定装置の構成は、JIS K 0806-1997「化学的酸素消費量(COD)自動計測器」に記載の構造からなるものであってもよい。また本発明に係るCOD自動測定装置は、JIS K 0102の19「アルカリ性過マンガン酸カリウムによる酸素消費量(CODOH)」に記載の方法に準拠した構成を有するCOD自動測定装置であってもよい。さらに他のCOD分析方法に基づくものであってもよい。
【0062】
第3実施形態のCOD自動測定装置100は、沸騰水浴として沸騰水浴装置1を備えるが、沸騰水浴装置1に代えて本発明の第2実施形態の沸騰水浴装置2、さらには
図3に示すような本発明の第1及び第2実施形態の沸騰水浴装置1,2の変形例を使用してもよい。
【0063】
以上のとおり、図面を参照しながら好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
【符号の説明】
【0064】
1、2 沸騰水浴装置
10 水槽本体
15 沸騰浴槽
19 堰
35 凝縮水回収槽
36 気相部
45 凝縮水供給手段
50 冷却装置
51 第1凝縮器
65 第2凝縮器
70 冷却水循環装置
71 冷却水供給装置
81 冷却水冷却器
100 COD自動測定装置