(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170318
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】エンドタブの固定方法とエンドタブの固定冶具
(51)【国際特許分類】
B23K 37/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B23K37/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081986
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 祐輔
(57)【要約】
【課題】エンドタブを安定して固定するとともに、取外しの容易なエンドタブの固定方法と、エンドタブ固定冶具を提供する。
【解決手段】2つの被溶接物(上柱1と下柱2)間に被溶接物が対向する方向に延長する板部材としての当接板11を掛け渡し、エンドタブ6の溶接方向の一方の側を当接板11の一方の面に当接させるとともに、エンドタブ6を、当接板11の他方の面とエンドタブ6の当接板11とは反対側の面とから把持部材(中クランプ14)で把持するなどして、エンドタブ6が前記の被溶接物間に位置するように、エンドタブ6を当接板11に取付けるようにした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するように保持された2つの被溶接物間の溶接継手部にエンドタブを固定する方法であって、
前記2つの被溶接物間に前記被溶接物が対向する方向に延長する板部材を掛け渡すとともに、前記エンドタブが前記2つの被溶接物間に位置するように、前記エンドタブを前記板部材に固定することを特徴とするエンドタブの固定方法。
【請求項2】
前記エンドタブの溶接方向の一方の面を前記板部材の一方の面に当接させるとともに、前記板部材の他方の面と前記エンドタブの前記板部材とは反対側の面とを把持部材で把持することで、前記エンドタブを前記2つの被溶接物間に固定することを特徴とする請求項1に記載のエンドタブの固定方法。
【請求項3】
互いに対向するように保持された2つの被溶接物間の溶接継手部にエンドタブを固定するエンドタブの固定冶具であって、
前記2つの被溶接物間に掛け渡されて前記被溶接物が対向する方向に延長し、一方の面が前記エンドタブの一方の面に当接する板部材と、
前記エンドタブが前記2つの被溶接物間に位置するように、前記エンドタブを前記板部材に固定する固定手段とを備えることを特徴とするエンドタブの固定冶具。
【請求項4】
前記固定手段は前記エンドタブを把持する把持部材を備え、
前記把持部材は、
一方の面が前記エンドタブの他方の面に当接し、他方の面が前記板部材の他方の面に当接して、前記エンドタブを溶接方向の両側から把持して固定することを特徴とする請求項3に記載のエンドタブの固定冶具。
【請求項5】
前記板部材の前記エンドタブに当接する位置に、前記2つの被溶接物間に突出する突出部を設けたことを特徴とする請求項4に記載のエンドタブの固定冶具。
【請求項6】
前記突出部の少なくとも前記被溶接物間に挿入される部分の前記板部材の厚さ方向からみた形状を、前記溶接継手部を前記板部材の厚さ方向からみた形状と相似形としたことを特徴とする請求項5に記載のエンドタブの固定冶具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接ロボットを用いて鉄骨柱を溶接する際に、溶接の継目部分に配置されるエンドタブを固定する方法とその固定冶具とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、角型鋼管などの鉄骨柱をロボット溶接する際には、溶接継手部にセラミック製の堰止め体(エンドタブ)を固定して、高熱の溶接金属が溶接継手部の外側に流れ出るのを阻止するようにしている。
エンドタブは、溶接作業中に動かないよう所定の位置に確実に固定する必要がある一方、溶接後には、容易に取外せることが要求されていることから、エンドタブの固定にはマグネットクランプが多く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のマグネットクランプはバネの力が十分でないため、溶接ノズルの接触やアークの影響でエンドタブの位置がずれてしまい、溶接品質が悪くなる、といった問題点があった。
【0005】
本発明は、エンドタブを安定して固定するとともに、取外しの容易なエンドタブの固定方法と、エンドタブの固定に用いられる冶具とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、互いに対向するように保持された2つの被溶接物間の溶接継手部にエンドタブを固定する方法であって、前記2つの被溶接物間に前記被溶接物が対向する方向に延長する板部材を掛け渡すとともに、前記エンドタブが前記2つの被溶接物間に位置するように、前記エンドタブを前記板部材に固定することを特徴とする。
これにより、溶接継手部にエンドタブを安定して固定することができる。
また、前記エンドタブの溶接方向の一方の面を前記板部材の一方の面に当接させるとともに、前記板部材の他方の面と前記エンドタブの前記板部材とは反対側の面とを把持部材で把持することで、前記エンドタブを前記2つの被溶接物間に固定するようにしたので、エンドタブを安定して固定することができるとともに、溶接後には、エンドタブを容易に取外すことができる。
【0007】
また、本発明は、互いに対向するように保持された2つの被溶接物間の溶接継手部にエンドタブを固定するエンドタブの固定冶具であって、前記2つの被溶接物間に掛け渡されて前記被溶接物が対向する方向に延長し、一方の面が前記エンドタブの一方の面に当接する板部材と、前記エンドタブが前記2つの被溶接物間に位置するように、前記エンドタブを前記板部材に固定する固定手段とを備えることを特徴とする。
これにより、溶接継手部にエンドタブを安定して固定することができる。
また、前記固定手段を、一方の面が前記エンドタブの他方の面に当接し、他方の面が前記板部材の他方の面に当接して、前記エンドタブを溶接方向の両側から把持して固定する把持手段としたので、エンドタブをずれることなく、安定して固定することが可能となる。
また、エンドタブは把持部材で把持されているので、取外しも容易である。
また、前記板部材の前記エンドタブに当接する位置に、前記2つの被溶接物間に突出する突出部を設けて、板部材とエンドタブとの接触面積を増やすようにしたので、エンドタブを確実に把持することができる。
また、前記突出部の少なくとも前記被溶接物間に挿入される部分の前記板部材の厚さ方向からみた形状を、前記溶接継手部を前記板部材の厚さ方向からみた形状と相似形とすれば、溶接継手部における板部材とエンドタブとの接触面積についても増やすことができるので、エンドタブをより安定して把持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態を示す正面図と平面図である。
【
図3】本実施の形態に係るエンドタブの固定方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1(a),(b)及び
図2は本実施の形態を示す図で、
図1(a)は正面図、
図1(b)図は平面図、
図2は要部斜視図である。各図において、1は上柱、2は下柱、3は裏当金、4はエレクションピース、5は建方調整冶具、6はエンドタブ、10は本発明によるエンドタブ固定冶具である。
エンドタブ固定冶具10は、当接板11と、上クランプ12と、下クランプ13と、中クランプ14とを備える。なお、
図1(b)では、エンドタブ6の把持状態を分かり易くするため、上クランプ12及び下クランプ13を省略した。
本例では、エンドタブ固定冶具10を用いてエンドタブ6を溶接継手部に固定するとともに、
図1(a)の上下方向である上下方向に互いに対向するように保持された2つの被溶接物である上柱1と下柱2とを溶接ロボットにより溶接する。
【0010】
上柱1は横断面が正方形の角型鋼管で、下端部には、下方に行くにしたがって板厚が薄くなる斜面部1nが形成されている。一方、下柱2は、横断面が上柱1と同形の角型鋼管で、板厚は上下方向に一定である。上柱1と下柱2とは、後述するように、所定の間隔を置いて互いに対向するように仮固定される。なお、本例では、下柱2は図示しない基礎、または、基礎の上に配置された鉄骨上に固定されており、仮固定前の上柱1はロープ等で下柱2の上方に吊るされているものとする。
裏当金3は、上柱1の内側に、外周部が上柱1に当接するように設けられて、上柱1の斜面部1nの上側から下柱2の内部まで延長する横断面が正方形の角型鋼管で、上端部が上柱1に溶接にて取付けられている。裏当金3は下柱2の内側に取付けてもよい。
エレクションピース4は、上柱1と下柱2の各外周面の中央部から外周面に垂直な方向に突出して上下方向に延長する板部材で、上柱1に設けられたエレクションピース(以下、上側エレクションピース4Aという)は下端部が斜面部1nよりも上側に位置するように上柱1に溶接されており、下柱2に設けられたエレクションピース(以下、下側エレクションピース4Bという)は上端部が下柱2の上面2nよりも下側に位置するように下柱2に溶接されている。
上側エレクションピース4Aの上柱1側とは反対側の上端部には、上端部よりも上側に突出する棒状部材である落下防止用バー4nが設けられている。なお、落下防止用バー4nは必須要素ではないので、設けなくてもよい。
【0011】
建方調整冶具5は、フレーム51と、倒れ調整手段52と、目違い調整用ボルト53,54と、転倒防止ボルト55と、固定ボルト56,57とを備え、上側エレクションピース4Aと下側エレクションピース4Bとを連結することで、上柱1と下柱2とを仮固定する。
フレーム51は、上側及び下側エレクションピース4A,4Bの板面に平行な板面を有する、互いに所定の距離離れて配置された2枚の垂直板51a,51bと、2枚の垂直板51a,51bを上端部と下端部とでそれぞれ連結する上側及び下側水平板51c,51dとを備えた、上下方向に細長い環状の部材で、上側エレクションピース4Aを受け入れる上方部分と、下側エレクションピース4Bを受け入れる下方部分とを有する。
上方部分では、2枚の垂直板51a,51bの間隔は上側エレクションピース4Aの厚さ寸法とほぼ等しい。一方、下方部分では、後述する上柱1と下柱2との位置ずれ調整(目違い調整)を行うため、2枚の垂直板51a,51bの間隔を上側エレクションピース4Aの厚さ寸法よりも大きくしている。
建方調整冶具5は、フレーム51の上側水平板51cの内側を上側エレクションピース4Aの上端部に載せるとともに、上側水平板51cの上柱1とは反対側の面を落下防止用バー4nに当接させた状態で各ボルト53~57により上側及び下側エレクションピース4A,4Bに取付けることで、上柱1と下柱2とを仮固定する。なお、
図1(a)では、ボルト53~57をそれぞれ螺入するためのネジ穴については省略している。
【0012】
倒れ調整手段52は、シム板52aと、シム板52a上に配置されるカムアーム52bと、カムアーム52b上に配置される座板52cと、倒れ調整用ボルト58とを備える。
シム板52aは、下側エレクションピース4Bの上側に配置された、下側エレクションピース4B側に、下側エレクションピース4Bに近いほど厚さが薄くなる斜面部を有する板状の部材である。シム板52aは、カムアーム52bと座板52cとを上側エレクションピース4Aと下側エレクションピース4Bとの間に配置した後、カムアーム52bと下側エレクションピース4Bとの間に挿入される。
カムアーム52bは、上側及び下側エレクションピース4A,4Bの厚さ方向から見たときの形状が逆への字形の部材で、柱側(ここでは、上柱1側)にて座板52cに接する一端部52b1と、柱側とは反対側の端部である他端部52b2と、一端部52b1と他端部52b2との間にあって下方に凸状な始点部52b3とを有する。始点部52b3はシム板52aに接している。
座板52cには倒れ調整用ボルト58を螺入するためのネジ穴59が形成されている。ネジ穴59は座板52cを上下方向に貫通している。したがって、倒れ調整用ボルト58を回転させて下方に移動させれば、カムアーム52bの他端部52b2に下向きの力が作用するのでカムアーム52bの一端部52b1は上方へ移動し、その結果、上側エレクションピース4Aには、座板52cを介して、斜め上方に力が作用するので、下柱2の軸線に対する上柱1の軸線の角度(倒れの大きさ)を変更させることができる。
すなわち、倒れ調整手段52は、倒れ調整用ボルト58の螺入深さを調整することで倒れの大きさの調整(倒れ調整)を行う。
【0013】
目違い調整用ボルト53,54は、フレーム51の2枚の垂直板51a,51bの下側エレクションピース4B側に、厚さ方向に互いに対向するように取付けられて、上柱1の下柱2に対する幅方向の位置ずれ(
図1(a)の中央のフレーム51では、同図の左右方向の位置ずれ)を調整する。
上記の中央のフレーム51を例にとると、上柱1が下柱2に対して右側にずれている場合には、右側の垂直板51aに取付けられた目違い調整用ボルト53を下側エレクションピース4Bに押付けることで、上柱1を左側に移動させて、上柱1と下柱2との目違いを修正する。逆に、上柱1が左側にずれている場合には、左側の垂直板51bに取付けられた目違い調整用ボルト54を下側エレクションピース4Bに押付けることで、上柱1を右側に移動させることで目違いを修正する。
転倒防止ボルト55は、フレーム51の下側水平板51dに設けられて上下方向に延長する図示しないネジ穴に螺入され、下側から下側エレクションピース4Bに押付けられる。すなわち、転倒防止ボルト55は、当該建方調整冶具5を、下側から下側エレクションピース4Bに固定することで、上柱1の転倒を防止するとともに、下柱2に対する上柱1の上下方向の高さを調整する。
固定ボルト56と固定ボルト57とは、フレーム51の一方の垂直板(ここでは、垂直板51a)の上側エレクションピース4A側とは反対側の側面にそれぞれ設けられて、垂直板51a厚さ方向に延長する図示しないネジ穴にそれぞれ螺入され、上側エレクションピース4Aの厚さ方向から上側エレクションピース4Aに押付けられる。すなわち、固定ボルト56,57は、当該建方調整冶具5を、下側エレクションピース4Bにその厚さ方向から固定する機能を有する。
【0014】
建方調整冶具5を用いて上側エレクションピース4Aと下側エレクションピース4Bとを仮固定する際には、まず、目違い調整用ボルト53,54による目違い調整と、転倒防止ボルト55によるレベル調整と、倒れ調整用ボルト58による倒れ調整を行なった後、固定ボルト56と固定ボルト57とにより、上柱1と下柱2とを仮固定する。
この仮固定により、
図2に示すように、上柱1と下柱2との間には、上柱1の斜面部1nと下柱2の上面2nと裏当金3で囲まれた、上柱1または下柱2の周方向(以下、柱周方向という)からみた断面形状が直角台形の開先7が一周に亘って形成される。
以下、上側エレクションピース4Aと下側エレクションピース4Bとを区別しない場合には、上側エレクションピース4Aと下側エレクションピース4Bとをエレクションピース4という。
【0015】
エンドタブ6は、エレクションピース4の厚さ方向である柱周方向に垂直な板面を有する板状の部材で、二酸化珪素を含む金属酸化物にバインダーを加えて成形(焼結)して作られる。エンドタブ6は被溶接物間の溶接継手部である上柱1と下柱2との間に形成された開先7に、板面が溶接方向に垂直になるように配置される。
図2に示すように、本例では、エンドタブ6の当接板11側の板面の形状と当接板11とは反対側の板面の形状を、いずれも、先端側(開先7に挿入される側)が開先7の形状と同じである四角形とした。
エンドタブ6の配置箇所は以下の通りである。
図1(b)において、図面の左側を右側、右側を左側、下側を前側、上側を後側とし、前側のエレクションピースを前側ピース41、左側のエレクションピースを左側ピース42、後側のエレクションピースを後側ピース43、右側のエレクションピースを右側ピース44とする。なお、ピース41~44は上柱1及び下柱2のエレクションピース4を指す。
本例では、上柱1と下柱2との溶接を2回に分けて行う。1回目は同図のR11で示すピース41からピース42との間の領域と、同図のR12で示すピース43からピース44との間の領域を溶接する。2回目は同図のR21で示すピース42からピース43との間の領域と、同図のR22で示すピース41からピース44との間の領域を溶接する。
なお、2回目の溶接時には、上柱1と下柱2とは1回目の溶接で連結されているので、2回目の溶接は、エンドタブ6を回収するとともに、建方調整冶具5を取外し、エレクションピース4を溶断して除去した後に行う。
このように、エンドタブ6は1回目の溶接時のみに使用されるので、エンドタブ6は、1回目の溶接を行う領域R11,R12の両端部(前側ピース41の左側と、左側ピース42の前側と、後側ピース43の右側と、右側ピース44の後側)に配置され、1回目の溶接後に回収される。
【0016】
エンドタブ固定冶具10は、エンドタブ6を開先7の延長方向である溶接される上柱1及び下柱2の周方向の両側から把持して溶接継手部に固定するための冶具で、上記のように、当接板11、上クランプ12、下クランプ13、及び、中クランプ14を備える。
当接板11は、上柱1と下柱2との間に掛け渡されて上下方向に延長する長尺状の板本体11aと、板本体11aのほぼ中央部から板本体11aの幅方向に突出する突出部11bとを備え、一方の板面をエレクションピース4に当接させた状態で、かつ、突出部11の先端側が開先7方向を向くようにエレクションピース4に固定される。
当接板11は、上クランプ12により、上端部にて上柱1側のエレクションピース4に固定され、下クランプ13により、下端部にて下柱2側のエレクションピース4に固定されている。
本例では、上クランプ12~中クランプ14として周知のC型クランプを用いた。
C型クランプは、中クランプ14を例にとると、
図2の右上の図に示すように、コの字状のクランプ本体14aと、ネジ14bと、取っ手14cとを備えており取っ手14cを回して、コの字の対向する一方の片(ネジ側片14p)に螺入されたをコの字の対向する他方の片(当接片14q)側に移動させることで、ネジ14bの先端である当接片14q側の端部と当接片14qとの間の空間である開口部14sの間隔を縮めて、開口部14sに対象物を把持する冶具で、対象物を強固に把持することができるとともに、ネジ14bを逆回転させて開口部の間隔を広げることで、対象物を容易に取外すことができる。
【0017】
次に、エンドタブ6の固定方法について説明する。
まず、
図3(a)に示すような、当接板11、上クランプ12、下クランプ13、及び、中クランプ14から成るエンドタブ固定冶具10を準備する。
次に、
図3(b)に示すように、当接板11の板本体11aの板面を上柱1のエレクションピース4と下柱2のエレクションピース4に密着させるとともに、当接板11の突出部11bの下端が開先7の下柱2の上面に載った状態で、板本体11aの上端部を上クランプ12を用いて上柱1のエレクションピース4に取付けるとともに、下端部を下クランプ13を用いて下柱2のエレクションピース4に取付ける。
次に、
図3(c)に示すように、エンドタブ6の板面の一方が当接板11に当接させた状態で、エンドタブ6を開先7に設置した後、中クランプ14により、エンドタブ6を固定する。
具体的には、
図2に示すように、エンドタブ6の当接板11とは反対側の側面を中クランプ14の本体14aの当接片14qに当接させ、当接板11のエンドタブ6とは反対側の板面をネジ14bに当接させた状態でネジ14bを締め、当接板11に当接した状態でエンドタブ6を固定する。
これにより、溶接継手部にエンドタブ6を強固にかつ安定して固定することができる。
また、エンドタブ6を取外す際には中クランプ14のネジ14bを緩めて、中クランプ14を取外せば、エンドタブ6を容易に取外すことができる。
1回目の溶接後には、エンドタブ6、及び、エンドタブ固定冶具10を取外すとともに、建方調整冶具5を取外し、エレクションピース4を溶断した後、2回目の溶接を行う。
【0018】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0019】
例えば、前記実施の形態では、エンドタブ6を把持部材である中クランプ14を用いて当接板11に固定したが、両面テープを用いて当接板11に固定してもよい。また、接着剤を用いてエンドタブ6を当接板11に固定するなど、他の固定手段を用いてエンドタブ6を当接板11に固定してもよい。
あるいは、エンドタブ6に所定の深さのピン穴を設けるとともに、当接板11に貫通孔を形成し、エンドタブ6と当接板11とをピン接合することで、エンドタブ6を当接板11に固定してもよい。なお、ピンは2本以上とすることが好ましい。
また、前記実施の形態では、当接板11を上クランプ12及び下クランプ13を用いて上柱1のエレクションピース4と下柱2のエレクションピース4とに取付けたが、クランプに替えてボルト及びナットを用いてもよい。
また、前記実施の形態では、上柱1と下柱2とを角型鋼管としたが、丸型鋼管やボックス柱などの他の鉄骨柱であってもよい。
また、前記実施の形態では、当接板11をエレクションピース4に取付けたが、上柱1及び下柱2にエレクションピース4がない場合には、当接板11をマグネットもしくはマグネットクランプ等により上柱1及び下柱2に直接取付ければよい。
【符号の説明】
【0020】
1 上柱、1n 斜面部、2 下柱、2n 下柱の上面、3 裏当金、
4,4A,4B エレクションピース、4n 落下防止用バー、5 建方調整冶具、
6 エンドタブ、7 開先、10 エンドタブ固定冶具、11 当接板、
11a 板本体、11b 突出部、12 上クランプ、13 下クランプ、
14 中クランプ。