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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170340
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H02M3/28 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082019
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000103208
【氏名又は名称】コーセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正浩
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730BB27
5H730BB57
5H730BB61
5H730CC01
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE04
5H730EE07
5H730EE08
5H730FG01
5H730ZZ11
(57)【要約】
【課題】各部の浮遊容量を通じて高周波のコモンモード電流が漏洩して高周波ノイズが発生するのを容易且つ効果的に抑えることがきるスイッチング電源装置を提供する
【解決手段】第一のインダクタ素子50a(L50a)は出力側電源ライン18の側に、第二のインダクタ素子50b(L50b)は出力側グランドライン50bの側に、各々配置される。入力巻線28aの2つの端子の配線ラインは、フレームグラウンド12に対し、互いに等しい値の浮遊容量54a,54bを通じて各々静電結合している。出力平滑回路36の、第一のインダクタ素子50aの側の入力端の配線ラインは、フレームグラウンド12に対して第一の浮遊容量52a(C52a)を通じて、第二のインダクタ素子50bの側の入力端の配線ラインは、フレームグラウンド12に対して第二の浮遊容量52b(C52b)を通じて各々静電結合している。C52a・L50a≒C52b・L50bの関係を満たすように設定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームグラウンドと、互いの相間に入力電圧が入力される入力側電源ライン及び入力側グランドラインと、互いの相間に出力電圧が発生する出力側電源ライン及び出力側グランドラインと、前記入力側電源ラインと前記入力側グランドラインとの間に接続された入力相間コンデンサと、互いに直列接続された第一及び第二のスイッチング素子で成り、前記第一のスイッチング素子の側の一端が前記入力側電源ラインに接続され、前記第二のスイッチング素子の側の一端が前記入力側グランドラインに接続された第一のアームと、互いに直列接続された第三及び第四のスイッチング素子で成り、前記第三のスイッチング素子の側の一端が前記入力側電源ラインに接続され、前記第四のスイッチング素子の側の一端が前記入力側グランドラインに接続された第二のアームと、互いに絶縁された入力巻線及び出力巻線を有し、前記第一のアームの中点と前記第二のアームの中点との間に前記入力巻線が接続されたトランスと、前記出力巻線に発生する交流電圧を全波整流して整流電圧を出力する出力整流回路と、出力整流回路の出力端に接続された平滑インダクタ及び平滑コンデンサで成るローパスフィルタであって、前記平滑コンデンサの両端が前記出力側電源ラインと前記出力側グランドラインとの間に接続され、前記整流電圧を平滑することによって前記出力電圧を生成する出力平滑回路と、前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインのうち少なくとも一方を前記フレームグランドに保護接地する入力側接地コンデンサと、前記出力側電源ライン及び前記出力側グランドラインのうち少なくとも一方を前記フレームグランドに保護接地する出力側接地コンデンサとを備え、
前記平滑インダクタは、第一及び第二のインダクタ素子により構成され、前記第一のインダクタ素子が前記出力側電源ラインの側に、前記第二のインダクタ素子が前記出力側グランドラインの側に、各々配置されており、
前記入力巻線の2つの端子が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対し、互いに等しい値の浮遊容量を通じて各々静電結合し、
前記出力平滑回路の、前記第一のインダクタ素子の側の入力端が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対して第一の浮遊容量を通じて静電結合し、
前記出力平滑回路の、前記第二のインダクタ素子の側の入力端が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対して第二の浮遊容量を通じて静電結合し、
前記第一のインダクタ素子のインダクタンス値及び前記第一の浮遊容量の容量値の積が、前記第二のインダクタ素子のインダクタンス値及び前記第二の浮遊容量の容量値の積が等しい値に設定されていることを特徴とするフルブリッジ方式のスイッチング電源装置。
【請求項2】
前記第一及び第二のインダクタ素子は、1つの磁心を介して磁気結合した一対の巻線により形成され、一対の前記巻線は、互いに巻数が等しくて逆極性に磁気結合している請求項1記載のスイッチング電源装置。
【請求項3】
前記出力整流回路は、4つの整流素子で構成されたブリッジ型整流回路である請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【請求項4】
前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインの前段に、商用交流電圧を整流平滑して前記入力電圧を生成する入力整流平滑回路を備え、
前記入力側接地コンデンサは、前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインのうち少なくとも一方を、前記入力整流平滑回路を介して前記フレームグランドに保護接地する請求項1又は2記載のスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルブリッジ方式のスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図8に示すようなフルブリッジ方式のスイッチング電源装置10があった。スイッチング電源装置10は、金属製の筐体等であるフレームグラウンド12と、互いの相間に入力電圧Viが入力される入力側電源ライン14及び入力側グランドライン16と、互いの相間に出力電圧Voが発生する出力側電源ライン18及び出力側グランドライン20とを備えている。
【0003】
入力側電源ライン14と入力側グランドライン16との間には、入力相間コンデンサ22、第一のアーム24及び第二のアーム26が並列に接続されている。第一のアーム24は、互いに直列接続された第一及び第二のスイッチング素子24a,24bで成り、第一のスイッチング素子24aの側の一端が入力側電源ライン14に接続され、第二のスイッチング素子24bの側の一端が入力側グランドライン16に接続されている。第二のアーム26は、互いに直列接続された第三及び第四のスイッチング素子26a,26bで成り、第三のスイッチング素子26aの側の一端が入力側電源ライン14に接続され、第四のスイッチング素子26bの側の一端が入力側グランドライン16に接続されている。
【0004】
入力側回路と出力側回路とを絶縁するトランス28は、入力巻線28aと出力巻線28bとを有し、入力巻線28aは、第一のアーム24の中点と第二のアーム26の中点との間に接続されている。
【0005】
トランス28の出力巻線28bの両端には、出力巻線28bに発生する交流電圧を全波整流して整流電圧を出力する出力整流回路30が接続されている。この出力整流回路30は、4つの整流素子で構成されたブリッジ型整流回路である。
【0006】
出力整流回路30の出力端には、平滑インダクタ32及び平滑コンデンサ34で成るローパスフィルタ構成の出力平滑回路36が設けられており、平滑コンデンサ34が出力側電源ライン18と出力側グランドライン20との間に接続され、平滑インダクタ32が、出力側電源ライン18の側に配置されている。出力平滑回路36は、出力整流回路30が出力した整流電圧を平滑し、平滑コンデンサ34の両端に出力電圧Voを発生させる。
【0007】
入力側電源ライン14は、入力側接地コンデンサ38によってフレームグランド12に保護接地され、入力側グランドライン16は、入力側接地コンデンサ40によってフレームグランド12に保護接地されている。同様に、出力側電源ライン18は、出力側接地コンデンサ42によってフレームグランド12に保護接地され、出力側グランドライン20は、出力側接地コンデンサ44によってフレームグランド12に保護接地されている。
【0008】
その他、図8には、実際の回路部品ではない浮遊容量46も合わせて表している。浮遊容量46は、出力平滑回路36の一方の入力端(平滑インダクタ32の一端)が接続された配線ラインとフレームグラウンド12とが静電結合して形成される容量である。
【0009】
また、本発明に部分的に関連する従来技術として、特許文献1の図9に開示されたハーフブリッジ方式のスイッチング電源があった。このスイッチング電源は、スイッチング電源装置10と比較すると、入力側の主スイッチング素子及び入力巻線の部分の構成や保護接地の構成が異なっているものの、出力巻線に接続された出力整流回路及び出力平滑回路の構成はほぼ同じである。特徴的なのは、出力整流回路と出力平滑回路との間に、コモンモードチョークコイル(互いに巻数が等しく同極性に磁気結合している一対のインダクタ素子)が挿入されている点である。このコモンモードチョークコイルは、出力整流回路のダイオードのリカバリ電流に起因するコモンモード電流を抑制するためのものであり、出力整流回路が出力した整流電圧を平滑して出力電圧Voを生成するための平滑インダクタとして機能するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平7-23562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来のスイッチング電源装置10は、出力側回路から浮遊容量46を通じでフレームグラウンド12に高周波のコモンモード電流が漏洩し、入力電源に向かって帰還する入力帰還ノイズや出力電圧Voとともに負荷に伝達される出力リップルノイズ等の大きい高周波ノイズが発生するという問題がある。
【0012】
図9(a)、(b)は、コモンモード電流の流れを示す高周波等価回路である。浮遊容量46の容量値C46は、例えば数十pF~数百pFであり、平滑コンデンサ34の容量値C34や出力側接地コンデンサ42,44の容量値C42,C44よりも十分小さい。したがって、高周波帯域では、平滑コンデンサ34や出力側接地コンデンサ42,44の両端電圧はほぼゼロボルトとみなすことができ、出力側電源ライン18及び出力側グラウンドライン20は、実質的にフレームグラウンド12と同じ電位(安定電位)となる。
【0013】
コモンモード電流Isを発生させるノイズ源は、平滑インダクタ32の両端に発生する電圧Vsである。図9(c)に示す電圧Vsの波形は、安定電位側を基準にして描いた波形であり、この電圧Vsにより、図9(a)、(b)に示すように、正方向及び負方向のコモンモード電流Is(Is≒ω・C46・Vs)が、出力側回路から浮遊容量46を通じてフレームグラウンド12に漏洩する。
【0014】
このコモンモード電流Isは、出力整流回路30と出力平滑回路36との間のα部に、特許文献1のコモンモードチョークコイルを追加したとしても、ほとんど抑えることができない。α部にコモンモードチョークコイルを挿入しても、コモンモード電流Isが流れる経路のインピーダンスが高くならないからである。
【0015】
なお、図9(a)、(b)では、説明を分かりやすくするため、浮遊容量46を流れたコモンモード電流Isは、すべて出力側接地コンデンサ42に流れ込むように描いているが、実際は、出力側接地コンデンサ44や入力側接地コンデンサ38,40にも分流すると考えられる。したがって、フレームグラウンド12にコモンモード電流Isが漏洩すると、複雑なメカニズムを経て入力帰還ノイズや出力リップルノイズ等が発生することになる。
【0016】
その他、スイッチング電源装置10では、入力側回路においても、主スイッチング24a,24b,26a,26bの両端電圧をノイズ源とし、浮遊容量46とは別の浮遊容量を通じて大きなコモンモード電流が漏洩して高周波ノイズがさらに大きくなる可能性があり、何らかの対策が求められていた。
【0017】
本発明は、上記背景技術に鑑みて成されたものであり、各部の浮遊容量を通じて高周波のコモンモード電流が漏洩して高周波ノイズが発生するのを容易且つ効果的に抑えることがきるスイッチング電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、フレームグラウンドと、互いの相間に入力電圧が入力される入力側電源ライン及び入力側グランドラインと、互いの相間に出力電圧が発生する出力側電源ライン及び出力側グランドラインと、前記入力側電源ラインと前記入力側グランドラインとの間に接続された入力相間コンデンサと、互いに直列接続された第一及び第二のスイッチング素子で成り、前記第一のスイッチング素子の側の一端が前記入力側電源ラインに接続され、前記第二のスイッチング素子の側の一端が前記入力側グランドラインに接続された第一のアームと、互いに直列接続された第三及び第四のスイッチング素子で成り、前記第三のスイッチング素子の側の一端が前記入力側電源ラインに接続され、前記第四のスイッチング素子の側の一端が前記入力側グランドラインに接続された第二のアームと、互いに絶縁された入力巻線及び出力巻線を有し、前記第一のアームの中点と前記第二のアームの中点との間に前記入力巻線が接続されたトランスと、前記出力巻線に発生する交流電圧を全波整流して整流電圧を出力する出力整流回路と、出力整流回路の出力端に接続された平滑インダクタ及び平滑コンデンサで成るローパスフィルタであって、前記平滑コンデンサの両端が前記出力側電源ラインと前記出力側グランドラインとの間に接続され、前記整流電圧を平滑することによって前記出力電圧を生成する出力平滑回路と、前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインのうち少なくとも一方を前記フレームグランドに保護接地する入力側接地コンデンサと、前記出力側電源ライン及び前記出力側グランドラインのうち少なくとも一方を前記フレームグランドに保護接地する出力側接地コンデンサとを備え、
前記平滑インダクタは、第一及び第二のインダクタ素子により構成され、前記第一のインダクタ素子が前記出力側電源ラインの側に、前記第二のインダクタ素子が前記出力側グランドラインの側に、各々配置されており、
前記入力巻線の2つの端子が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対し、互いに等しい値の浮遊容量を通じて各々静電結合し、
前記出力平滑回路の、前記第一のインダクタ素子の側の入力端が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対して第一の浮遊容量を通じて静電結合し、
前記出力平滑回路の、前記第二のインダクタ素子の側の入力端が接続された配線ラインは、前記フレームグラウンドに対して第二の浮遊容量を通じて静電結合し、
前記第一のインダクタ素子のインダクタンス値及び前記第一の浮遊容量の容量値の積が、前記第二のインダクタ素子のインダクタンス値及び前記第二の浮遊容量の容量値の積が等しい値に設定されているフルブリッジ方式のスイッチング電源装置である。
【0019】
前記第一及び第二のインダクタ素子は、1つの磁心を介して磁気結合した一対の巻線により形成され、一対の前記巻線は、互いに巻数が等しくて逆極性に磁気結合していてもよい。前記出力整流回路は、4つの整流素子で構成されたブリッジ型整流回路であることが好ましい。また、前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインの前段に、商用交流電圧を整流平滑して前記入力電圧を生成する入力整流平滑回路を備え、前記入力側接地コンデンサは、前記入力側電源ライン及び前記入力側グランドラインのうち少なくとも一方を、前記入力整流平滑回路を介して前記フレームグランドに保護接地する構成にしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のスイッチング電源装置は、フルブリッジ方式のスイッチング電源装置であり、平滑インダクタやスイッチング素子の両端電圧をノイズ源とするコモンモード電流(浮遊容量を通じてフレームグラウンドに漏洩する高周波電流)を、見かけ上、非常に小さくすることができ、入力帰還ノイズや出力リップルノイズ等の高周波ノイズが発生するのを容易且つ効果的に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明のスイッチング電源装置の一実施形態を示す回路図である。
図2】この実施形態のスイッチング電源装置における、出力側回路に起因するコモンモード電流の流れを示す高周波等価回路である。
図3】この実施形態のスイッチング電源装置における、入力側回路に起因するコモンモード電流の流れを示す高周波等価回路(a)、(b)である。
図4】この実施形態のスイッチング電源装置における、各部のノイズ源の電圧波形を示すタイムチャートである。
図5】この実施形態のスイッチング電源装置の第一の変形例を示す回路図である。
図6】この実施形態のスイッチング電源装置の第二の変形例を示す回路図である。
図7】この実施形態のスイッチング電源装置の第三の変形例を示す回路図である。
図8】従来のスイッチング電源装置を示す回路図である。
図9】従来のスイッチング電源装置における、出力側回路に起因するコモンモード電流の流れを示す高周波等価回路(a)、(b)、ノイズ源の電圧波形を示すタイムチャート(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のスイッチング電源装置の一実施形態について、図1図4に基づいて説明する。ここで、従来のスイッチング電源装置10と同様の構成は、同一の符号を付して説明を省略する。
【0023】
図1に示すように、この実施形態のスイッチング電源装置48は、フルブリッジ方式のスイッチング電源装置である。従来のスイッチング電源装置10と共通する点が多いが、特徴的なのは、出力平滑回路36の従来の平滑インダクタ32が、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bで構成された平滑インダクタ50に置き換えられている点であり、第一のインダクタ素子50aが出力側電源ライン18の側に、第二のインダクタ素子50bが出力側グランドライン20の側に各々配置されている。
【0024】
第一及び第二のインダクタ素子50a,50bは、1つの磁心を介して相互に磁気結合した一対の巻線により形成され、一対の巻線は、互いに巻数が等しくて逆極性に磁気結合している。したがって、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bのインダクタンス値L50a,L50b、すなわち、出力整流回路30が出力した整流電圧を平滑する時の実効インダクタンスの値L50a,L50bは、互いに等しい値になっている(L50a≒L50b)。
【0025】
その他、図1には、実際の回路部品ではない4つの浮遊容量52a,52b,54a,54bも合わせて表している。第一の浮遊容量52aは、出力平滑回路36の、第一のインダクタ素子50aの側の入力端が接続された配線ラインとフレームグラウンド12とが静電結合して形成される容量である。第二の浮遊容量52bは、出力平滑回路36の、第二のインダクタ素子50bの側の入力端が接続された配線ラインとフレームグラウンド12とが静電結合して形成される容量である。そして、第一及び第二の浮遊容量52a,52bの容量値C52a,C52bは、構造設計を工夫することによって、互いに等しい値に設定されている(C52a≒C52b)。
【0026】
また、第三の浮遊容量54aは、トランス28の入力巻線28aの、第一のアーム24の側の一端が接続された配線ラインとフレームグラウンド12とが静電結合して形成される容量である。第四の浮遊容量54bは、トランス28の入力巻線28aの、第二のアーム24の側の一端が接続された配線ラインとフレームグラウンド12とが静電結合して形成される容量である。そして、第三及び第四の浮遊容量54a,54bの容量値C54a,C54bは、構造設計を工夫することによって、互いに等しい値に設定されている(C54a≒C54b)。
【0027】
浮遊容量52a,52b,54a,54bは、電源回路からフレームグラウンド12に向かって無駄な電流が漏洩する経路、すなわち、入力帰還ノイズや出力リップルノイズの原因となり得るコモンモード電流が流れる経路となる。
【0028】
まず、出力側回路に起因するコモンモード電流について、図2(a)、(b)の高周波等価回路に基づいて説明する。第一及び第二の浮遊容量52a,52bの容量値C52a,C52bは、例えば数十pF~数百pFであり、平滑コンデンサ34の容量値C34や出力側接地コンデンサ42,44の容量値C42,C44よりも十分小さい。したがって、高周波帯域では、平滑コンデンサ34及び出力側接地コンデンサ42,44の両端電圧はほぼゼロボルトとみなすことができ、出力側電源ライン18,20は実質的にフレームグラウンド12と同じ電位(安定電位)となる。
【0029】
出力側回路の場合、コモンモード電流を発生させるノイズ源は、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bの両端に各々発生する電圧Vs1,Vs2である。図4に示す電圧Vs1,Vs2の波形は、安定電位側を基準にして描いた波形であり、ここではL50a≒L50bなので、波の形状が同じで正負が互いに反転した波形となる。
【0030】
電圧Vs1をノイズ源とするコモンモード電流Is1(Is1≒ω・C52a・Vs1)は、図2(a)、(b)に示すように、出力側回路から第一の浮遊容量52aを通じてフレームグラウンド12に正方向及び負方向に流れる。また、電圧Vs2をノイズ源とするコモンモード電流Is2(Is2≒ω・C52b・Vs2)は、電源回路側から第二の浮遊容量52bを通じてフレームグラウンド12に負方向及び正方向に流れる。
【0031】
ここで特徴的なのは、C52a≒C52b、Vs1≒-Vs2なので、コモンモード電流Is1,Is2の関係がIs1≒-Is2となって互いに相殺されるという点である。つまり、電圧Vs1,Vs2に起因してコモンモード電流Is1,Is2が発生はするものの、互いに逆方向に流れて相殺され、見かけ上、フレームグラウンド12に漏洩するコモンモード電流が無くなるので、電圧Vs1,Vs2が原因で高周波ノイズが発生するのが効果的に抑えられる。
【0032】
次に、入力側回路に起因するコモンモード電流について、図3(a)、(b)の高周波等価回路に基づいて説明する。第三及び第四の浮遊容量54a,54bの容量値C54a,C54bは、例えば数十pF~数百pFであり、入力相間コンデンサ22の容量値C22や入力側接地コンデンサ38,40の容量値C38,C40よりも十分小さい。したがって、高周波帯域では、入力相間コンデンサ22及び入力側接地コンデンサ38,40の両端電圧はほぼゼロボルトとみなすことができ、入力側電源ライン14,16は実質的にフレームグラウンド12と同じ電位(安定電位)となる。
【0033】
入力側回路の場合、コモンモード電流を発生させるノイズ源は、第一から第四のスイッチング素子24a,24b,26a,26bの両端に各々発生する電圧Vp1,Vp2,Vp3,Vp4である。図4に示す電圧Vp1,Vp2,Vp3,Vp4の波形は、安定電位側を基準にして描いた波形であり、電圧Vp1とVp4は、波の形状が同じで正負が互いに反転した波形となり、電圧Vp2とVp3も、波の形状が同じで正負が互いに反転した波形となる。
【0034】
電圧Vp1,Vp4をノイズ源とする動作は、図3(a)に示すように、スイッチSWを接点Aに倒した図で説明することができる。電圧Vp1をノイズ源とするコモンモード電流Ip1(Ip1≒ω・C54a・Vp1)は、フレームグラウンド12から第三の浮遊容量54aを通じて入力側回路に向かう方向に流れる。また、電圧Vp4をノイズ源とするコモンモード電流Ip4(Ip4≒ω・C54b・Vp4)は、入力側回路から第四の浮遊容量54bを通じてフレームグラウンド12に向かう方向に流れる。
【0035】
ここで特徴的なのは、C54a≒C54b、Vp1≒-Vp4なので、コモンモード電流Ip1,Ip4の関係がIp1≒-Ip4となって互いに相殺されるという点である。つまり、電圧Vp1,Vp4に起因してコモンモード電流Ip1,Ip4が発生はするものの、互いに逆方向に流れて相殺され、見かけ上、フレームグラウンド12に漏洩するコモンモード電流が無くなるので、電圧Vp1,Vp4が原因で高周波ノイズが発生するのが効果的に抑えられる。
【0036】
また、電圧Vp2,Vp3をノイズ源とする動作は、図3(b)に示すように、スイッチSWを接点Bに倒した図で説明することができる。電圧Vp3をノイズ源とするコモンモード電流Ip3(Ip3≒ω・C54b・Vp3)は、フレームグラウンド12から第四の浮遊容量54bを通じて入力側回路に向かう方向に流れる。また、電圧Vp2をノイズ源とするコモンモード電流Ip2(Ip2≒ω・C54a・Vp2)は、入力側回路から第三の浮遊容量54aを通じてフレームグラウンド12に向かう方向に流れる。
【0037】
ここで特徴的なのは、C54a≒C54b、Vp2≒-Vp3なので、コモンモード電流Ip2,Ip3の関係がIp2≒-Ip3となって互いに相殺されるという点である。つまり、電圧Vp2,Vp3に起因してコモンモード電流Ip2,Ip3が発生はするものの、互いに逆方向に流れて相殺され、見かけ上、フレームグラウンド12に漏洩するコモンモード電流が無くなるので、電圧Vp2,Vp3が原因で高周波ノイズが発生するのが効果的に抑えられる。
【0038】
以上説明したように、スイッチング電源装置48によれば、平滑インダクタ50やスイッチング素子24a、24b,26a,26bの両端電圧をノイズ源とするコモンモード電流(浮遊容量を通じてフレームグラウンドに漏洩する高周波電流)を、見かけ上、非常に小さくすることができ、入力帰還ノイズや出力リップルノイズ等の高周波ノイズを効果的に抑えることができる。
【0039】
なお、本発明のスイッチング電源装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、スイッチング電源装置48は、2つの出力側接地コンデンサ42,44を設け、出力側電源ライン18及び出力側グランドライン20の両方をフレームグラウンド12に保護接地する構成にしているが、出力側電源ライン18及び出力側グランドライン20のうちの一方だけを保護接地する構成に変更してもよく、ほぼ同様の作用効果が得られる。
【0040】
上記のスイッチング電源装置48は、2つの入力側接地コンデンサ38,40を設け、入力側電源ライン14及び入力側グランドライン16の両方をフレームグラウンド12に保護接地する構成にしているが、入力側電源ライン14及び入力側グランドライン16のうちの一方だけを保護接地する構成に変更してもよく、ほぼ同様の作用効果が得られる。
【0041】
スイッチング電源装置48の出力側回路の説明の中で、第一及び第二の浮遊容量52a,52bの容量値が等しく(C52a≒C52b)、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bのインダクタンス値が等しい(L50a≒L50b)と述べたが、「等しい」というのは、値が厳密に一致していることを意味するものではない。実際にスイッチング電源装置48を量産すると、様々な要因でのばらつきが発生することになるが、各ばらつきの幅を±10~15%程度の範囲に管理することは可能であり、これによってコモンモード電流Is1とIs2の多くを相殺させることができ、高周波ノイズを大幅に低減することができる。
【0042】
スイッチング電源装置48の入力側回路の説明の中で、第三及び第四の浮遊容量54a,54bの容量値が等しく(C54a≒C54b)、第一及び第四のスイッチング素子24a,26bの両端電圧が同じ波形(Vp1≒Vp4)で、第二及び第三のスイッチング素子24b,26aの両端電圧が同じ波形(Vp2≒Vp3)と述べたが、ここで言う「等しい」及び「同じ」は、値が厳密に一致していることを意味するものではない。この点は上記と同様で、各ばらつきの幅を±10~15%程度の範囲に管理することは可能であり、これによってコモンモード電流Ip1とIp4の多くを相殺させることができ、且つコモンモード電流Ip2とIp3の多くを相殺させることができ、高周波ノイズを大幅に低減することができる。
【0043】
上記のスイッチング電源装置48は、図5に示すスイッチング電源装置48(1)のような構成に変更することができる。スイッチング電源装置48(1)は、入力巻線28aの一端と第二のアーム26とを接続する配線パターンの途中の位置に、トランス28の偏磁防止用のコンデンサ60や、各スイッチング素子24a,24b,26a,26bをソフトスイッチングさせるためのインダクタ62を挿入している。コンデンサ60及びインダクタ62は、入力巻線28aと第一のアーム24とを接続する配線パターンの側に挿入される場合もある。この種のコンデンサ60やインダクタ62は、上述した高周波等価回路において無視できる値(両端電圧がほぼゼロボルトとみすことができる値)に設定されるので、本発明の狙いの動作を妨げるものではない。
【0044】
上記のスイッチング電源装置48は、図6に示すスイッチング電源装置48(2)のような構成に変更することができる。スイッチング電源装置48はDC入力の電源装置であるが、スイッチング電源装置48(2)はAC入力の電源装置であり、入力側電源ライン14及び入力側グランドライン16の前段に、商用交流電圧を整流平滑して入力電圧Viを生成する入力整流平滑回路64が設けられている。入力整流平滑回路64は、例えば、4つのダイオードで構成されたブリッジ型の入力整流回路64aと、コンデンサで成る入力平滑回路64b(上記の入力相間コンデンサ22で兼用)とで構成することができる。入力平滑回路64bは、公知な力率改善用のチョッパ回路に置き換えてもよい。
【0045】
その他、スイッチング電源装置48(2)では、入力側接地コンデンサ38,40を入力整流平滑回路64の前段に接続し、入力側電源ライン14及び入力側グランドライン16を、入力整流平滑回路64(入力整流回路64a)を介してフレームグランド12に保護接地しているという違いがあるが、このような構成しても、ほぼ同様の作用効果が得られる。
【0046】
上記のスイッチング電源装置48は、図7に示すスイッチング電源装置48(3)のような構成に変更することができる。上記実施形態のスイッチング電源装置48の場合、平滑インダクタ50を構成する第一及び第二のインダクタ素子50a,50bが、1つの磁心を介して磁気結合した一対の巻線により形成され、一対の巻線は、互いに巻数が等しくて逆極性に磁気結合している。つまり、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bは、インダクタンス値L50a,L50bを互いに等しい値に設定することを条件に、1つの回路部品として設けている。これに対して、スイッチング電源装置48(3)の場合、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bは、独立した2つの回路部品として設けられており、各インダクタンス値L50a,L50bを自由に設定できるという特徴がある。
【0047】
スイッチング電源装置48では、出力側回路のコモンモード電流Is1(Is1≒ω・C52a・Vs1)とコモンモード電流Is2(Is2≒ω・C52b・Vs2)とを綺麗に相殺させるため、Vs1≒-Vs2(L50a≒L50b)の条件の下で、構造設計を工夫してC52a≒C52bに設定している。例えば、出力整流回路30をブリッジ型整流回路にしているのは、C52a≒C52bに設定しやすくすること、つまり、第一及び第二のインダクタ素子50a,50bに接続される配線ラインや周辺の構造物をバランスよく配置しやすくすることが考慮されている。しかしながら、何らかの事情があってC52a≒C52bに設定するのが困難な場合は、図7に示すスイッチング電源装置48(3)の構成に変更するとよい。
【0048】
スイッチング電源装置48(3)では、L50a,L50bを互いに異なる値に設定することができるので、Vs1/Vs2≒L50a/L50bという関係を利用して、Vs1,Vs2の振幅の比率をC52a,C52bの比率に合わせて変更することができる。具体的には、L50a,L50bを、C52a・L50a≒C52b・L50bの関係を満たすように調節することによって、コモンモード電流Is1,Is2を綺麗に相殺させることができる。また、C52a・L50aとC52b・L50bとの間に±10~15%程度のばらつきがあったとしても、コモンモード電流Is1とIs2の多くを相殺させることができ、高周波ノイズを大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0049】
10,48,48(1)~48(3) スイッチング電源装置
12 フレームグラウンド
14 入力側電源ライン
16 入力側グランドライン
18 出力側電源ライン
20 出力側グランドライン
22 入力相間コンデンサ
24 第一のアーム
24a 第一のスイッチング素子
24b 第二のスイッチング素子
26 第二のアーム
26a 第三のスイッチング素子
26b 第四のスイッチング素子
28 トランス
28a 入力巻線
28b 出力巻線
30 出力整流回路(ブリッジ型整流回路)
34 平滑コンデンサ
36 出力平滑回路
38,40 入力側接地コンデンサ
42,44 出力側接地コンデンサ
50 平滑インダクタ
50a 第一のインダクタ素子
50b 第二のインダクタ素子
52a 第一の浮遊容量
52b 第二の浮遊容量
54a 第三の浮遊容量
54b 第四の浮遊容量
64 入力整流平滑回路
Vi 入力電圧
Vo 出力電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9