IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オフィス・タカハシの特許一覧

特開2023-170342ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル
<>
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図1
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図2
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図3
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図4
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図5
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図6
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図7
  • 特開-ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170342
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ジグソーパズル製造方法及びジグソーパズル
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/06 20060101AFI20231124BHJP
   B41M 3/16 20060101ALI20231124BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   A63F 9/10 20060101ALI20231124BHJP
   G09B 21/00 20060101ALI20231124BHJP
   B41M 5/00 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
B41M3/06 C
B41M3/16
B41J29/00 G
B41J29/00 H
A63F9/10 G
G09B21/00 B
B41M5/00 120
B41M5/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082024
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】502148668
【氏名又は名称】株式会社オフィス・タカハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100195327
【弁理士】
【氏名又は名称】森 博
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勝則
(72)【発明者】
【氏名】権藤 繭子
【テーマコード(参考)】
2C061
2H113
2H186
【Fターム(参考)】
2C061AP10
2C061AQ05
2C061AS11
2C061CJ01
2C061CK10
2H113AA04
2H113AA06
2H113BA27
2H113BB02
2H113BB22
2H113CA13
2H113CA46
2H113FA43
2H186AA04
2H186AB11
2H186FA08
(57)【要約】
【課題】短納期での製造や大型サイズの製造等、製造に対する要求に柔軟に対応して、立体感や質感を有するパズルを効率的に製造可能なジグソーパズル製造方法及びジグソーパズルを提供する。
【解決手段】複数のパズル片を有するジグソーパズルの製造方法であって、パズル片の基となる原パズル片が組み合わされた状態であるパズル基板の表面に、基準画像を印刷する基準画像印刷工程と、パズル基板に印刷された基準画像の上に立体層を形成する立体層形成工程と、を有する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のパズル片を有するジグソーパズルの製造方法であって、
前記パズル片の基となる原パズル片が組み合わされた状態であるパズル基板の表面に、基準画像を印刷する基準画像印刷工程と、
前記パズル基板に印刷された前記基準画像の上に立体層を形成する立体層形成工程と、を有することを特徴とするジグソーパズル製造方法。
【請求項2】
前記立体層形成工程では、紫外線の照射によりインクを硬化させて前記立体層を形成する請求項1に記載のジグソーパズル製造方法。
【請求項3】
前記立体層形成工程では、インクを複数回重合することにより前記立体層を形成する請求項2に記載のジグソーパズル製造方法。
【請求項4】
前記立体層形成工程では、クリアインクを使用する請求項2又は3に記載のジグソーパズル製造方法。
【請求項5】
前記立体層形成工程では、前記基準画像に顕出している物体の外形に合わせて前記立体層を形成する請求項4に記載のジグソーパズル製造方法。
【請求項6】
前記立体層形成工程では、前記立体層が点字を構成するように形成される請求項1又は2に記載のジグソーパズル製造方法。
【請求項7】
複数のパズル片を有するジグソーパズルであって、
前記パズル片の表面には、前記複数のパズル片を組み合わせた状態である組合せ状態において統一性がある基準画像となるような断片画像が印刷されており、
前記組合せ状態において隣接する前記パズル片での断片画像が、連続するように印刷されており、
少なくとも1つの前記パズル片の前記断片画像の上に立体層が形成されていることを特徴とするジグソーパズル。
【請求項8】
前記立体層が、紫外線の照射により硬化するインクで形成されている請求項7に記載のジグソーパズル。
【請求項9】
前記立体層が、前記インクが複数回重合された状態で形成されている請求項8に記載のジグソーパズル。
【請求項10】
前記立体層を形成するインクがクリアインクである請求項8又は9に記載のジグソーパズル。
【請求項11】
前記立体層が、前記組合せ状態において前記基準画像に顕出している物体の外形に合わせた形状となるように配設されている請求項10に記載のジグソーパズル。
【請求項12】
前記立体層が、点字を構成するように設置されている請求項7又は8に記載のジグソーパズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のパズル片を組み合わせて完成させるジグソーパズルの製造方法及び製造されるジグソーパズルに関し、特に、完成させたときに立体感を有する箇所が形成されるジグソーパズルの製造方法及びジグソーパズルに関する。
【背景技術】
【0002】
複数のパズル片を平面状に嵌合して1枚の絵や写真等(以下、総称して「絵写真」とする)を完成させるパズルであるジグソーパズルの製造では、完成形である絵写真を印刷した印刷紙をジグソーパズル用の台紙に貼着し、印刷紙を貼着された台紙を、切断用の刃(以下、「切断刃」とする)を有する抜型等の金型を使用したプレス機で型抜きすることによりパズル片に分割する方法(以下、「後型抜き方法」とする)が、従来用いられている。特に市販されているジグソーパズルの製造や、顧客から提供される写真を使用して作製されるジグソーパズルの製造等で、後型抜き方法が多く用いられている。
【0003】
後型抜き方法でジグソーパズル、特にA2サイズのような大型のジグソーパズルを製造する場合、絵写真を大型の印刷紙に印刷できる印刷機と大型の台紙を型抜きできるプレス機が必要となる。このような大型のサイズに対応できる印刷機及びプレス機は高価であるから、容易に導入できるものではない。コストを抑えるべく、大型のサイズに対する印刷及び型抜きを、これらに対応できる業者等に依頼する場合、通常は一定の量での発注で一定の納期がかかるので、ジグソーパズルの少量製造や短期間での製造等に柔軟に対応するのが容易ではない(以下、この課題を「製造課題」とする)。
【0004】
また、後型抜き方法のように、印刷紙を台紙に貼着した後に、切断刃による型抜きをした場合、切断刃が台紙に食い込んで切断するので、切断刃の切断部分と接する印刷紙の印刷面が潰されてしまい、印刷された統一性がある絵写真が、切断された箇所で連続性を欠き、パズル片間の境界線が目立ち、絵写真の美観を損なうおそれがある(以下、この課題を「品質課題」とする)。
【0005】
上述の後型抜き方法での製造課題及び品質課題に対応するために、型抜きを先行して実施し、型抜きされた台紙に絵写真を印刷する方法(以下、「先型抜き方法」とする)が提案されている。
例えば、特許文献1では、水性インクによる印刷に適した受像層を表面に形成したパズル原紙(台紙)を型抜きした後、パズル片に分断された状態のパズル原紙の受像層に絵写真を印刷するジグソーパズルの製造方法が提案されている。この方法によれば、型抜きされた状態の白紙のパズル原紙を用意しておけば、好みに応じたジグソーパズルの製造に柔軟に対応可能となっている。
【0006】
一方、ジグソーパズルには、パズル片を嵌合させて完成させるまでの困難さや思考力等を楽しむ遊具という面の他に、完成させたジグソーパズル上に表現された絵写真を観賞用として楽しむという面もある。後者のように、ジグソーパズルを観賞用として楽しむ場合、絵写真に立体感や質感を持たせ、より高級感があるジグソーパズルを製造する技術が提案されている。
例えば、特許文献2では、台紙の上に印刷紙を合紙(貼着)し、その上に塩ビフィルム層を定着させ、更に、その上にUVシルクスクリーン印刷により形成されるUV印刷層を施した後に、型抜きを行って製造されるジグソーパズルのパズル片が提案されている。UV印刷層を施すことにより、ジグソーパズルの絵柄に立体感や質感を持たせるようにしている。
【0007】
また、特許文献3では、後型抜き方法で形成された基ピース(パズル片)の表面に透明な合成樹脂液剤を表面張力によって零れ落ちない程度まで注ぎ落すか、吹き付けるか、或いは塗布し、その後に合成樹脂液剤を硬化させて透明樹脂層を形成するパズル製造方法が提案されている。透明樹脂層のレンズ効果による個々の基ピースの絵柄の広がりによって、全体の絵柄が綺麗に繋がって見え、個々の基ピースの絵柄が浮き上がっているような立体的な視覚を与えることができるとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-190466号公報
【特許文献2】登録実用新案第3026179号公報
【特許文献3】特開平9-294870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
後型抜き方法での製造課題及び品質課題に対応すると共に、立体感や質感を有するジグソーパズルを製造しようとする場合、特許文献2及び3で提案されている製造方法は後型抜き方法であるから、製造課題及び品質課題が残存する。特に、特許文献2で提案の製造方法では、印刷紙を合紙した台紙の上に塩ビフィルム層及びUV印刷層を重着させた後で型抜きを行っているので、品質課題が顕著になる可能性がある。
【0010】
製造課題及び品質課題に対応するために、特許文献2で提案されている技術を、特許文献1で提案されているような先型抜き方法に適用しようとしても、特許文献2では塩ビフィルム層を台紙全面に定着させているので、型抜きされた台紙に定着させた場合、パズル片が切り離せないおそれがある。
【0011】
特許文献3で提案されている製造方法では、個々の基ピースの表面に透明樹脂層を形成するので、先型抜き方法に適用することが可能である。しかし、個々の基ピースに対して、合成樹脂液剤を表面張力によって零れ落ちない程度まで注ぎ落すか、吹き付けるか、或いは塗布しなければならないので、多くの時間を要する作業が必要となる。
【0012】
本発明は上述のような事情よりなされたものであり、本発明の目的は、製造に対する要求に柔軟に対応して、立体感や質感を有するジグソーパズルを効率的に製造可能なジグソーパズル製造方法及びジグソーパズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0014】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 複数のパズル片を有するジグソーパズルの製造方法であって、前記パズル片の基となる原パズル片が組み合わされた状態であるパズル基板の表面に、基準画像を印刷する基準画像印刷工程と、前記パズル基板に印刷された前記基準画像の上に立体層を形成する立体層形成工程と、を有することを特徴とするジグソーパズル製造方法。
<2> 前記立体層形成工程では、紫外線の照射によりインクを硬化させて前記立体層を形成する<1>に記載のジグソーパズル製造方法。
<3> 前記立体層形成工程では、インクを複数回重合することにより前記立体層を形成する<2>に記載のジグソーパズル製造方法。
<4> 前記立体層形成工程では、クリアインクを使用する<2>又は<3>に記載のジグソーパズル製造方法。
<5> 前記立体層形成工程では、前記基準画像に顕出している物体の外形に合わせて前記立体層を形成する<1>乃至<4>のいずれかに記載のジグソーパズル製造方法。
<6> 前記立体層形成工程では、前記立体層が点字を構成するように形成される<1>乃至<5>のいずれかに記載のジグソーパズル製造方法。
<7> 複数のパズル片を有するジグソーパズルであって、前記パズル片の表面には、前記複数のパズル片を組み合わせた状態である組合せ状態において統一性がある基準画像となるような断片画像が印刷されており、前記組合せ状態において隣接する前記パズル片での断片画像が、連続するように印刷されており、少なくとも1つの前記パズル片の前記断片画像の上に立体層が形成されていることを特徴とするジグソーパズル。
<8> 前記立体層が、紫外線の照射により硬化するインクで形成されている<7>に記載のジグソーパズル。
<9> 前記立体層が、前記インクが複数回重合された状態で形成されている<8>に記載のジグソーパズル。
<10> 前記立体層を形成するインクがクリアインクである<8>又は<9>に記載のジグソーパズル。
<11> 前記立体層が、前記組合せ状態において前記基準画像に顕出している物体の外形に合わせた形状となるように配設されている<7>乃至<10>のいずれかに記載のジグソーパズル。
<12> 前記立体層が、点字を構成するように設置されている<7>乃至<11>のいずれかに記載のジグソーパズル。
【発明の効果】
【0015】
本発明のジグソーパズル製造方法及びジグソーパズルによれば、型抜きされたパズル基板に対して基準画像の印刷及び立体層の形成を行うので、効率的に製造された、立体感や質感を有するジグソーパズルを提供することができ、短納期等の製造に対する要求にも柔軟に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るジグソーパズルを製造するためのジグソーパズル製造システムの構成例を示す図である。
図2】パズル基板の例を示す正面図である。
図3】基準画像及び立体層基本情報の例を示す図である。
図4】ジグソーパズル製造システムの動作の手順例の概要を示すシーケンス図である。
図5】制御装置の構成例を示すブロック図である。
図6】制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図7】ジグソーパズルの例を示す図である。
図8】点字作製でのパズル基板、基準画像、立体層基本情報及びジグソーパズルの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、複数のパズル片を有するジグソーパズルの製造方法及び製造されるジグソーパズルに関する発明である。なお、本発明に係るジグソーパズルには、外枠が付いた台紙の上でパズル片を組み合わせるピクチャーパズル等も含まれる。
【0018】
本発明では、先型抜き方法を使用する。即ち、印刷又は印刷紙の貼着等による絵写真(基準画像)の積層が実施されていない台紙に対する型抜きにより分離加工された小片(原パズル片)が平面状に嵌合された状態のままであるパズル基板に対して、基準画像を表面に印刷する。更に、基準画像を印刷されたパズル基板に対して、基準画像の上に、厚さを有する立体層を形成する。基準画像を印刷する基準画像印刷工程と立体層を形成する立体層形成工程を間断なく実施することができるので、効率的にジグソーパズルを製造することができる。
【0019】
型抜きされたパズル基板は、基準画像が印刷されていないので、汎用性があり、ジグソーパズルを製造する前にパズル基板を予め用意しておけば、型抜きの工程を省略することができるので、短納期でのジグソーパズルの製造が可能となる。A2サイズのような大型のジグソーパズルを製造する場合でも、予め外部の業者に依頼する等によりパズル基板を用意しておけば、短納期でのジグソーパズルの製造等に対応できる。また、原パズル片を平面状に嵌合した状態で基準画像を印刷するので、基準画像が、隣接する原パズル片の境界線を横断して連続するように印刷される。よって、基準画像の一部である断片画像を印刷されたパズル片を平面状に嵌合した状態(組合せ状態)において、隣接するパズル片の境界線が目立つのを抑え、断片画像が違和感なく連続する画像となる。
【0020】
立体層は、基準画像全面に形成しても良いが、局所的に形成することにより、ジグソーパズル表面に凹凸が形成され、基準画像に立体感を加えることができる。基準画像に顕出している物体、例えば基準画像に人物が撮影されている場合のその人物の箇所のみに立体層を形成した場合、人物が浮き上がったような感じに表現することができる。立体感を加えることにより、視覚障害者の方もジグソーパズルを楽しむことができる。視覚障害者の方がパズル片の周縁部の形状だけを頼りにしてパズル片を正しく組み合わせるのは困難であるが、立体感を与えることにより、パズル片を正しく組み合わせる難易度を下げることができる。
【0021】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、各図において、同一構成要素には同一符号を付し、説明を省略することがある。また、以下の説明における形状等は例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。更に、以下では、本発明を実施するための主要な構成及び動作を中心にして説明しており、本発明を実施するために必要となる汎用的な処理、例えばデータの送受信処理等については説明を簡略又は省略している。
【0022】
本発明に係るジグソーパズルを製造するためのジグソーパズル製造システムの構成例を図1に示す。
【0023】
図1に示されるように、ジグソーパズル製造システム1は、印刷装置2及び制御装置3を備え、印刷装置2と制御装置3はケーブル4で接続されている。印刷装置2にパズル基板がセットされ、制御装置3が印刷装置2を制御して、ジグソーパズルが製造される。ケーブル4は有線ケーブルで、印刷装置2と制御装置3はケーブル4を介してデータの送受信を行う。なお、印刷装置2と制御装置3は無線通信によりデータの送受信を行っても良い。
【0024】
印刷装置2は、パズル基板の表面への基準画像の印刷及び立体層の形成を行う。本実施形態では、印刷装置2として、汎用のインクジェットプリンタを使用する。印刷装置2として、レーザープリンタ等、インクジェットプリンタ以外のプリンタを使用しても良いが、インクジェットプリンタは、圧力や熱を加えて粒子化したインクを紙等の媒体に直接吹き付けて印刷するので、型抜きにより原パズル片間の境界線において凸凹部分が生じても、凸凹部分にも適切に印刷することができ、好適である。印刷装置2の詳細については、後述する。
【0025】
制御装置3は、印刷装置2の制御を行う。本実施形態では、制御装置3として、パソコン等の汎用の装置を使用し、制御装置3に搭載された専用のアプリケーション、または、専用のアプリケーションと汎用のアプリケーションの組み合わせ等により、印刷装置2の制御を行う。制御装置3は、キーボードやマウス等の入力手段とディスプレイ等の表示手段を備えている。なお、制御装置3として、汎用の装置ではなく、専用装置を使用しても良い。制御装置3の詳細については、後述する。
【0026】
ジグソーパズル製造システム1によるジグソーパズル製造では、パズル基板、基準画像の基となる画像情報及び立体層を形成するための基本情報(以下、「立体層基本情報」とする)を予め用意しておく。これらの予め用意するものについて説明する。
【0027】
パズル基板は、ジグソーパズル用の台紙を型抜きして作製されたものである。台紙として、ジグソーパズル用で一般的に使用されている厚紙を使用する。パズル基板の大きさは、A3やA4サイズの他に、A2サイズのような大型のサイズでも良い。台紙の表面に印刷装置2により基準画像が印刷されるので、印刷される側の表面(以下、「印刷面」とする)に印刷用のインクを吸収、定着させるための樹脂層等が積層されていても良い。なお、台紙として、厚紙の他に、コルク材や木板等の吸水性を有する素材を使用しても良い。
【0028】
台紙は、ジグソーパズルの製造にて通常使用されているプレス機により、型抜きされる。プレス機は、切断刃を有する金型を使用して型抜きを行う。台紙の型抜きにより作製されたパズル基板の例を図2に示す。図2は、パズル基板5の正面図であり、型抜きにより分離された複数(図2では140個)の原パズル片が平面状に嵌合された状態になっている。図2に示されるパズル基板5の周縁部には枠がないが、周縁部に枠が設けられたパズル基板を使用しても良い。
パズル基板5を、ジグソーパズルを製造するタイミングで台紙から作製しても良いが、予めパズル基板5を作製して保管しておき、ジグソーパズルの製造の際に、保管したパズル基板5を使用するようにしても良い。これにより、ジグソーパズルを製造するタイミング(例えば顧客からの注文によりジグソーパズルを製造する場合等)において、パズル基板5を作製する工程を省略できるので、短納期でのジグソーパズルの製造等に対応することができる。パズル基板5として、市販されているものを使用しても良い。
【0029】
画像情報は、パズル基板5の印刷面に印刷される基準画像の基となる情報である。画像情報は制御装置3での処理に使用されるので、デジタルデータとして表現された情報であり、画像情報として、デジタルカメラで撮影された写真、スキャナで取り込まれた画像、グラフィックソフトウェア等で作画されたイラストや画像等が使用される。画像情報はデジタルデータとして表現されていれば、任意の情報を使用することができるので、例えば、顧客から持ち込まれた画像情報を使用することにより、オリジナルなジグソーパズルの製造等を行うことができる。
【0030】
立体層基本情報は、画像情報と同様に、制御装置3での処理に使用される、デジタルデータとして表現された情報である。立体層基本情報は、パズル基板5に印刷された基準画像上に形成する立体層を重着する位置を決めるために使用される。例えば、画像情報が図3(A)に示されるような雲61、家62及び木63を含む画像6で、基準画像において木63に対応する位置に立体層を形成する場合、図3(B)に示されるような木63のみからなる画像7を立体層基本情報とする。この場合、画像編集ソフトウェア等を使用して、画像6(画像情報)から画像7(立体層基本情報)を作成するようにしても良い。
【0031】
立体層基本情報は、木63のように画像情報に描画、撮影された物体に対応する画像に限られず、画像情報に存在しない物体や文字等の画像を立体層基本情報としても良い。また、基準画像全面に立体層を形成する場合は、立体層基本情報はなくても良い。
【0032】
ジグソーパズル製造システム1は、パズル基板5を印刷装置2にセットして、画像情報及び立体層基本情報を制御装置3に入力し、制御装置3が印刷装置2を制御することにより、パズル基板5の印刷面に基準画像を印刷する工程(基準画像印刷工程)及び基準画像上に立体層を形成する工程(立体層形成工程)を経て、ジグソーパズルを製造する。ここで、ジグソーパズル製造システム1において、印刷装置2と制御装置3の間でのデータの送受信を中心とした動作手順について、その概要を説明する。
【0033】
図4は、ジグソーパズル製造システム1の動作の手順例の概要を示すシーケンス図である。なお、印刷装置2及び制御装置3では、入力及び受信したデータの正当性を確認し、データが正しくない場合、エラーを出力又は送信する等のエラー処理を行うことがあるが、その動作の説明は省略する。
【0034】
まずは、画像情報及び立体層基本情報の制御装置3への入力及びパズル基板5の印刷装置2へのセットが完了し、画像情報及び立体層基本情報を基にした基準画像及び立体層情報それぞれの生成が制御装置3で実施される。立体層情報の詳細については後述する。
その後、制御装置3は、入力手段を介した操作者からのジグソーパズル製造の開始の指示(以下、「開始指示」とする)、例えばディスプレイに表示された開始ボタンのクリック操作等による指示を入力したら、ジグソーパズル製造における印刷装置2に対する設定情報を印刷装置2に送信する(ステップS1)。設定情報の詳細については後述する。
【0035】
印刷装置2は、設定情報を受信したら、設定情報に従った設定を行い、設定が完了したことを示す信号(以下、「設定完了信号」とする)を制御装置3に送信する。
設定完了信号を受信した制御装置3は、基準画像を印刷装置2に送信する(ステップS2)。
【0036】
基準画像を受信した印刷装置2は、パズル基板5の印刷面に基準画像を印刷する。基準画像の印刷が終了したら、印刷装置2は、印刷終了を示す信号(以下、「印刷終了信号」とする)を制御装置3に送信する。
印刷終了信号を受信した制御装置3は、立体層情報を印刷装置2に送信する(ステップS3)。
【0037】
立体層情報を受信した印刷装置2は、立体層情報に従って、パズル基板5に印刷された基準画像上に立体層を形成する。立体層の形成が終了したら、印刷装置2は、立体層形成の終了を示す信号(以下、「形成終了信号」とする)を制御装置3に送信する。
形成終了信号を受信した制御装置3は、ジグソーパズルの製造が完了したことを操作者に知らせる。例えば、完了を示すメッセージの表示等により操作者に知らせる。
上述の動作において、ステップS2が基準画像印刷工程で、ステップS3が立体層形成工程でそれぞれ実行される。
【0038】
印刷装置2の詳細について説明する。
【0039】
上述のように、印刷装置2としてインクジェットプリンタを使用する。パズル基板5を所定の場所(テーブル)に載置し、パズル基板5にノズルからインクを吹き付けて基準画像を印刷する。立体層も、同様に、基準画像を印刷されたパズル基板5にノズルからインクを吹き付けることにより形成する。
【0040】
インクジェットプリンタの動作方式には、ノズルから連続的にインク粒を帯電させ、偏向電極で曲げて印字面に吹き付けるコンティニュアス方式及び印字に必要な量のインク粒を吐出するオンデマンド方式があり、オンデマンド方式には、電圧を加えると体積が変化する圧電素子であるピエゾ素子を使用してインク粒を吐出するピエゾ方式、ヒーターの加熱によりインク内に気泡を発生させてインク粒を吐出するサーマル方式、及びノズル口の蓋をソレノイドで開閉させながらインク粒を吐出するバルブ方式がある。印刷装置2では、小型化やマルチヘッド化等が容易に実現でき、インクの吐出量の制御がし易いオンデマンド方式のピエゾ方式を使用するが、他の方式を使用しても良い。
【0041】
印刷装置2は、インクとして、UV(Ultra Violet)インクを使用する。UVインクは、短時間の紫外線照射によって重合反応を起こして皮膜を作り、硬化・定着するインクで、化学反応で定着するので、耐溶剤性及び耐摩耗性が高く、剥離がしづらく、乾燥が速いので、製造時間の短縮化を図れる。なお、UVインク以外の染料インクや顔料インク等を使用しても良い。
【0042】
基準画像の印刷では、印刷装置2は、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー等のカラーインクを使用する。パズル基板5へのカラーインクの密着性を強化するために、プライマーを使用しても良い。プライマーはインクと素材の密着性を向上させる目的で作られた無色透明の塗布材で、インクの下地として接着剤の役割を果たす。プライマーを吹き付けた後に、カラーインクを吹き付けることにより、カラーインクの密着性を強化することができる。
【0043】
立体層の形成では、印刷装置2は、クリアインクを使用する。クリアインクは無色透明のインクであるから、カラーインクで印刷された印刷物の上にクリアインクを重合することにより、印刷物に立体感や質感等を与えることができる。具体的には、印刷装置2は、クリアインクの使用により、光沢感を出すグロス調印刷、マット感(艶消し)を出すマット調印刷及び立体感を出す厚盛り印刷を行うことができる。立体層の形成では厚盛り印刷を行うが、印刷装置2は、グロス調印刷又はマット調印刷で立体層を形成しても良い。
【0044】
グロス調印刷及びマット調印刷ではクリアインクを通常1回重合するが、厚盛り印刷ではクリアインクを複数回重合する。グロス調印刷とマット調印刷とでは、クリアインクを吹き付けてから紫外線を照射するまでの時間に違いがある。即ち、クリアインクを吹き付けた後、一定の時間を空けて紫外線を照射すると、クリアインクの表面が滑らかになり、光沢感が出るグロス調印刷となる。一方、クリアインクを吹き付けた直後に紫外線を照射すると、クリアインクの表面に細かい凹凸が残り、光が乱反射するマット調印刷となる。厚盛り印刷ではクリアインクを複数回重合するので、クリアインクが横に広がらないマット調印刷の要領でクリアインクを重合していく。厚盛り印刷で光沢感を出したい場合は、最後の層の重合をグロス調印刷で行う。
【0045】
クリアインクは無色透明であるが、基準画像に存在しない物体や文字等の画像を立体層として表現する場合等では、単色のインクを使用して立体層を形成する。
なお、クリアインク使用以外の方法で立体層を形成しても良い。例えば、印刷物の表面に樹脂の粉を塗布し、熱処理をすることによってそれを透明な盛り上がりに変化させるバーコ印刷等で立体層を形成しても良い。
【0046】
制御装置3の詳細について説明する。
【0047】
制御装置3の構成例を図5に示す。制御装置3として汎用の装置を使用しており、図5には、本実施形態に関わる構成要素のみを示している。
【0048】
制御装置3は、設定情報管理部31、製造制御部32及び記憶部33を備える。
記憶部33は、設定情報管理部31から出力される設定情報Ist並びに製造制御部32から出力される基準画像Pb及び立体層情報Islを記憶する。
【0049】
設定情報管理部31は、ジグソーパズル製造における印刷装置2に対する設定情報Istを管理する。設定情報Istには、基準画像印刷に関連する設定情報(以下、「印刷設定情報」とする)及び立体層形成に関連する設定情報(以下、「立体層設定情報」とする)が含まれる。印刷設定情報としては、例えば基準画像の解像度、紫外線の照度、カラーインクの調整値(インクリミット、中間調濃度等)等がある。立体層設定情報としては、重合回数、クリアインクの濃度等がある。なお、設定情報Istに、印刷装置2の機構に関する設定情報(例えばテーブルの高さ等)、ネットワークに関する設定情報等を含めても良い。また、印刷装置2に設定情報を入力できる手段(例えばタッチパネル、ボタン等)を設け、その入力手段から設定情報を入力するようにしても良く、制御装置3からの設定情報Istと印刷装置2の入力手段からの設定情報を併用できるようにしても良い。後者の場合、設定情報Istと入力手段からの設定情報とで値が異なる場合、どちらを使用するかを決められる仕組みを設ける。
【0050】
設定情報Ist内の各項目には初期値が設定されている。各項目の値を変更する場合、操作者は、制御装置3が備える入力手段を用いて、変更する項目の値を入力する。変更する項目と値は、入力手段を介して入力設定情報Iisとして設定情報管理部31に入力されるので、設定情報管理部31は、入力設定情報Iisに基づいて設定情報Istを変更する。設定情報Istは記憶部33に記憶される。
【0051】
制御装置3が備える入力手段を介して操作者からジグソーパズル製造の開始指示が入力されると、開始指示Cstとして設定情報管理部31に入力される。設定情報管理部31は、開始指示Cstを入力したら、記憶部33に記憶されている設定情報Istを読み出し、印刷装置2に送信する。
なお、設定情報Istが変更されて制御装置3が停止した場合、制御装置3の再起動時、設定情報管理部31は、設定情報Istを初期値に戻しても良いし、変更された値のままとしても良い。
【0052】
製造制御部32は、パズル基板5に印刷される基準画像Pb及び立体層形成のための基となる情報である立体層情報Islを生成する。
製造制御部32は、画像情報Ipcから基準画像Pbを生成する。製造制御部32は、操作者からの指示や必要に応じて、画像情報Ipcに対して、傾き補正、拡大・縮小、トリミング等の編集処理を施して、基準画像Pbを生成する。複数の画像情報Ipcを入力し、それらを合成して基準画像Pbとする等の処理を行っても良い。編集処理等を行わない場合、製造制御部32は、画像情報Ipcを基準画像Pbとする。基準画像Pbは記憶部33に記憶される。
【0053】
製造制御部32は、立体層基本情報Isbから立体層情報Islを生成する。立体層基本情報Isbは画像情報Ipcと同様な形式で、立体層情報Islは基準画像Pbと同様な形式である。製造制御部32は、立体層基本情報Isbに対して、編集処理等を施して、立体層情報Islを生成する。立体層基本情報Isbとして、例えば図3(B)に示されるような画像情報Ipc内の物体(図3の場合は木63)に対応する画像を使用して、基準画像Pb内のこの物体の上に立体層を形成する場合、印刷される基準画像と立体層にズレが生じないように、画像情報Ipcに対して施された処理と同じ処理を立体層基本情報Isbに対して施して、立体層情報Islを生成する。この場合、画像情報Ipcに対して施された処理内容を保持しておいて、保持した処理内容を立体層基本情報Isbに対して施すようにしても良い。画像情報Ipcの場合と同様に、複数の立体層基本情報Isbを合成して立体層情報Islとする等の処理を行っても良く、編集処理等を行わない場合、立体層基本情報Isbを立体層情報Islとする。立体層情報Islは記憶部33に記憶される。なお、立体層基本情報Isbとして画像情報Ipcと同様な形式の情報を使用するのではなく、例えば、画像情報Ipc又は基準画像Pbに座標軸を設定し、その座標軸に対する座標値で立体層基本情報Isbを表現するようにしても良い。立体層情報Islも座標値で表現するようにしても良い。
【0054】
画像情報Ipcから立体層基本情報Isbを自動的に生成する機能(以下、「立体層基本情報生成機能」とする)を制御装置3に追加して、立体層基本情報生成機能で生成された立体層基本情報Isbを製造制御部32に入力するようにしても良い。例えば、画像情報Ipc中で色がある部分のみを抽出して立体層基本情報Isbとする。立体層基本情報生成機能を製造制御部32に搭載しても良く、立体層基本情報生成機能の代わりに、基準画像Pbから立体層情報Islを自動的に生成する機能を制御装置3に追加しても良い。
【0055】
製造制御部32は、設定情報Istに従った設定が完了したことを示す設定完了信号Ssfを印刷装置2から受信したら、記憶部33に記憶されている基準画像Pbを読み出し、印刷装置2に送信する。
製造制御部32は、基準画像Pbの印刷終了を示す印刷終了信号Spfを印刷装置2から受信したら、記憶部33に記憶されている立体層情報Islを読み出し、印刷装置2に送信する。
【0056】
製造制御部32は、立体層形成の終了を示す形成終了信号Sffを印刷装置2から受信したら、ジグソーパズルの製造完了を示すメッセージを、制御装置3が備える出力手段を介して表示する。
【0057】
このような制御装置3の構成において、制御装置3が開始指示Cstを入力してからの動作例を図6のフローチャートを参照して説明する。なお、図4による動作手順の説明の場合と同様に、エラー処理の動作の説明は省略する。
【0058】
設定情報管理部31は、開始指示Cstを入力したら(ステップS10)、設定情報Istを記憶部33から読み出し、印刷装置2に送信する(ステップS20)。
その後、製造制御部32は、印刷装置2から送信される設定完了信号Ssfを入力したら(ステップS30)、基準画像Pbを記憶部33から読み出し、印刷装置2に送信する(ステップS40)。
【0059】
製造制御部32は、印刷装置2から送信される印刷終了信号Spfを入力したら(ステップS50)、立体層情報Islを記憶部33から読み出し、印刷装置2に送信する(ステップS60)。
製造制御部32は、印刷装置2から送信される形成終了信号Sffを入力したら(ステップS70)、ジグソーパズルの製造完了を示すメッセージを、出力手段を介して表示する(ステップS80)。
【0060】
なお、上述の動作例では、開始指示Cst、設定完了信号Ssf、印刷終了信号Spf及び形成終了信号Sffそれぞれが入力されるまで待ち状態となっているが(ステップS10、30、50及び70)、それぞれが入力されたら、割込み処理等により次の動作(ステップS20、40、60及び80)を実行するようにしても良い。また、印刷装置2は、基準画像の印刷と立体層の形成を2段階に分けて実行するので、それに合わせて、制御装置3は基準画像Pb及び立体層情報Islを2段階に分けて送信しているが、例えば、印刷装置2がインクを噴出するプリントヘッドを複数備える等により基準画像の印刷と立体層の形成を同時に実行できる場合、制御装置3は基準画像Pb及び立体層情報Islを同時に送信しても良い。
【0061】
このような動作を行うことにより、例えば、図2に示されるようなパネル基板5を印刷装置2にセットし、図3に示されるような画像6及び7をそれぞれ画像情報Ipc及び立体層基本情報Isbとして使用した場合、図7に示されるようなジグソーパズル8を製造することができる。図7において、基準画像内の木63の画像の上に立体層が形成されており、それをわかりやすく示すために、その箇所でのパズル片間の境界線は不鮮明となっている。なお、図7では、木63の画像全体に立体層を形成しているが、木63の輪郭部分だけに立体層を形成するようにしても良い。
【0062】
上述の実施形態では、基準画像の上に立体層を形成することにより、基準画像に立体感を持たせている。基準画像に立体感を持たせることにより、視覚障害者の方がジグソーパズルを楽しむこともできる。例えば、図3(A)に示される画像6中の雲61、家62及び木63に対応する基準画像の上に立体層を形成した場合、視覚障害者の方はジグソーパズルに触れることにより、各物体(雲61、家62及び木63)の立体的な形状を認識することができるので、その感触を頼りに、パズル片を組み合わせて、ジグソーパズルを完成させることができる。
【0063】
視覚障害者向けに、立体層で点字を作製して、ジグソーパズルを楽しませるようにすることも可能である。点字のみ、又は上述の物体の画像上への立体層の形成及び点字の組合せにより、視覚障害者の方にジグソーパズルを楽しんでもらう。
【0064】
立体層による点字の作製(以下、略して「点字作製」とする)は、点字を表示した画像を立体層基本情報として使用することにより行われる。
点字を表示した画像は、グラフィックソフトウェア等を使用して、日本工業規格等の規格に準拠した点字を作成し、適切な位置に点字を配置することにより作製する。点字は高さについても適切な範囲が決まっているので(例えば0.3~0.5mm)、点字作製では、印刷装置2は、点字の高さが適切な範囲になるように立体層を形成する。
【0065】
図8に点字作製の例を示す。例えば、図8(A)に示されるようなパズル基板9を使用し、画像情報として図8(B)に示されるようなリンゴ101が撮影された画像10を使用する。そして、画像情報である画像10から生成される基準画像をパズル基板9に印刷した場合、リンゴ101に対応する画像が印刷されるパズル片と印刷されないパズル片を区別するために、図8(C)に示されるような点字を表示した画像11を作製する。図8(C)では、点字の配置がわかりやすいように、パズル片間の境界線を点線で示しているが、実際には点線は表示されていない。画像11を立体層基本情報として使用することにより、図8(D)に示されるようなジグソーパズル12を製造することができる。
【0066】
なお、上述の点字作製では、パズル片でのリンゴ101の画像の有無を区別するために点字を使用しているが、より詳細な情報、例えば画像情報に複数の物体が撮影されている場合の各物体の名称を示すため等に点字を使用しても良い。或いは、一部のパズル片のみに点字を重合し、完成した状態のジグソーパズルの一部分で点字が確認できる等、作製する点字を少なくしても良い。点字である立体層の密着性を強化するために、プライマーを使用しても良い。
【0067】
上述の実施形態でのジグソーパズル製造システム1は印刷装置2及び制御装置3を備えるが、制御装置3の機能を印刷装置2に搭載し、印刷装置のみでジグソーパズルの製造を行うようにしても良い。この場合、ケーブル4は不要となる。また、上述の実施形態での制御装置3は、記憶部33をメモリとして、それ以外の構成要素の処理を、上述のようにプログラムとして実現することにより、コンピュータとメモリの構成で実現可能である。各構成要素は専用IC(Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアでも実現可能である。
【0068】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記形態において明示的に開示されていない事項、例えばジグソーパズルのサイズ等は、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な値を採用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 ジグソーパズル製造システム
2 印刷装置
3 制御装置
4 ケーブル
5、9 パズル基板
8、12 ジグソーパズル
31 設定情報管理部
32 製造制御部
33 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8