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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170363
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】周波数多重無線伝送装置
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/2575 20130101AFI20231124BHJP
   H04B 1/04 20060101ALI20231124BHJP
   G02F 1/35 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
H04B10/2575 120
H04B1/04 F
G02F1/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082057
(22)【出願日】2022-05-19
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、総務省、『無線・光相互変換による超高周波数帯大容量通信技術に関する研究開発:光電気相互変換技術』委託研究(令和3年度から新たに実施する電波資源拡大のための研究開発)、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
(72)【発明者】
【氏名】安井 武史
(72)【発明者】
【氏名】久世 直也
(72)【発明者】
【氏名】時実 悠
(72)【発明者】
【氏名】長谷 栄治
(72)【発明者】
【氏名】岸川 博紀
(72)【発明者】
【氏名】岡村 康弘
(72)【発明者】
【氏名】藤方 潤一
【テーマコード(参考)】
2K102
5K060
5K102
【Fターム(参考)】
2K102AA05
2K102AA36
2K102BA03
2K102BA19
2K102BB01
2K102BB03
2K102BB04
2K102BC01
2K102DB01
2K102DB02
2K102DC08
2K102DD03
2K102DD05
2K102DD10
2K102EB20
2K102EB22
5K060DD04
5K060EE05
5K060HH14
5K060JJ21
5K102AB13
5K102AD04
5K102AK00
5K102PB15
5K102PC12
5K102PH45
5K102PH49
5K102PH50
(57)【要約】      (修正有)
【課題】テラヘルツ帯域において低位相ノイズ、かつ、大容量の無線通信を可能にする周波数多重光電気変換装置を提供する。
【解決手段】周波数多重光電気変換装置は、複数のレーザー発光部101~104から発するレーザー光で励起され、100GHz以上3THz以下の互いに異なる周波数間隔の光周波数コムを生成する複数の微小光共振器201~204と、各光周波数コムから互いに隣接する光周波数モード対を分離し、当該光周波数モード対に含まれている一方の光周波数モードに対して光変調を行う複数の光変調部3013及び光変調された一方の光周波数モードと光変調されていない他方の光周波数モードを混合する複数の混合部3020を含む変調光信号生成部301~304と、混合部3020の各出力に接続された複数の光電気変換素子401~404と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレーザー発光部から発するレーザー光で励起され、100GHz以上3THz以下の互いに異なる周波数間隔の光周波数コムを生成する複数の微小光共振器と、
各光周波数コムから互いに隣接する光周波数モード対を分離し、当該光周波数モード対に含まれている一方の光周波数モードに対して光変調を行う複数の光変調部と、
前記光変調された一方の光周波数モードと光変調されていない他方の光周波数モードを混合する複数の混合部と、
前記混合部の各出力に接続された複数の光電気変換部を備えた、周波数多重光電気変換装置。
【請求項2】
前記周波数間隔は300GHz以上1THz以下である請求項1に記載の周波数多重光電気変換装置。
【請求項3】
前記光電気変換部は単体構成とし前記複数の混合部の出力を合波するように接続されており、前記光周波数モード対間の周波数間隔は前記光電気変換部の高域遮断周波数(f)よりも高い周波数間隔で離間している請求項1に記載の周波数多重光電気変換装置。
【請求項4】
前記光電気変換部は単一走行キャリアフォトダイオードを含む請求項1に記載の周波数多重光電気変換装置。
【請求項5】
前記微小光共振器は非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質を含む請求項1に記載の周波数多重光電気変換装置。
【請求項6】
前記光周波数コムの周波数間隔(frep1~frep4)の差分(Δfrep)は10GHz以上50GHz以下であることを特徴とする、請求項3に記載の周波数多重光電気変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースバンド信号を分割し、周波数分割多重信号として送信する周波数多重光電気変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動(無線)通信(2G/3G/4G/5G等)では、電子回路の高速化、高周波化等の半導体技術の進歩に伴う技術革新が、世代進化を牽引してきた。しかし、次世代移動通信(Beyond 5G/6G)で扱う周波数はキャリア周波数300GHz以上のいわゆるテラヘルツ帯(以降、THz帯)に及ぶとされ、電気的手法の技術的限界(周波数上限)に達する可能性がある。つまり、無線キャリア波の低出力化と位相ノイズ増大、信号伝送損失の増大、光通信と移動通信の信号変換に伴う時間遅延などといった本質的問題が顕在化すると言われている。
【0003】
一方、光ファイバー網を用いた光通信は最速の情報伝送速度を有し、最近ではデバイス内部の電子配線を光配線に置き換えて超高速・大容量・低遅延・低消費電力を実現するシリコン・フォトニクスの技術開発が進んでいる。このような背景から、無線通信においてもキャリアの発生源に光学デバイスを用いたり、システムの一部に光通信の技術を取り入れたりする例が最近見受けられる。例えば、波長が異なる光をそれぞれ変調した後に混合してテラヘルツ波を発生させ、無線通信に用いた例が開示されている(非特許文献1)。
【0004】
周波数が異なる2波長の光を生成する他の方法としては、光周波数コムから、所望の周波数間隔となる任意の光周波数モードをフィルターで抽出する方法が開示されている(特許文献1)。また、光周波数コムを微小光共振器から生成する技術が開示されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009- 4858号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】永妻忠夫、“テラヘルツ波が拓く超高速無線通信”、精密工学会誌、Vol.82、No.3、2016
【非特許文献2】S.ZHANG,J.M.SILVER,X.SHANG,L.D.BINO,N.M.RIDLER,P.DEL’HAYE,”Terahertz wave generation using a soliton microcomb”,Optics Express,Vol.27,No.24,Nov.2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、非特許文献1のように、無線キャリアの周波数だけ離れた波長の独立したレーザーを光源として用いた場合、相互間の周波数又は位相の揺らぎにより、キャリア波の周波数変動や位相ノイズが発生する。また、光周波数コムから無線キャリア周波数に等しい周波数間隔を有する2波長モード光を分離抽出する場合であっても、無線キャリア周波数が光周波数コムのモード間隔よりも十分に大きいと、隣接した2波長モード光でなく、複数の光コムモードを間に挟んだ状態で2波長モード光を抽出することになり、周波数逓倍作用により位相ノイズが増大する。
【0008】
また、無線通信の超高速・超大容量化を実現するためには、より周波数利用効率の高く情報伝送速度の高い無線伝送システムが必要である。しかし、単一周波数チャンネルの無線伝送には限界があり、周波数領域の多重化が必要である。なお、非特許文献2では、隣接した2波長モード光の光/電気変換によりテラヘルツ波を生成しているが、周波数分割多重変調については記載がされていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る周波数多重光電気変換装置は、複数のレーザー発光部から発するレーザー光で励起され、100GHz以上3THz以下の互いに異なる周波数間隔の光周波数コムを生成する複数の微小光共振器と、各光周波数コムから互いに隣接する光周波数モード対を分離し、当該光周波数モード対に含まれている一方の光周波数モードに対して光変調を行う複数の光変調部と、前記光変調された一方の光周波数モードと光変調されていない他方の光周波数モードを混合する複数の混合部と、前記混合部の各出力に接続された複数の光電気変換部を備えた。
【0010】
前記周波数間隔は300GHz以上1THz以下であってもよい。
【0011】
前記微小光共振器群を構成する微小光共振器には、レーザー素子が発するレーザー光を分波したレーザー光が供給されるものであってもよい。
【0012】
前記光電気変換部は光電気変換素子単体で構成され、各光周波数コムから抽出される前記光周波数モード対は前記光電気変換素子の高域遮断周波数よりも高い周波数間隔で離間しており、前記光周波数モード対は合波して前記光
電気変換素子に供給されるものであってもよい。
【0013】
前記光電気変換素子は単一走行キャリアフォトダイオードで構成されていてもよい。
【0014】
前記微小光共振器は非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質から構成されるものであってもよい。
【0015】
前記光周波数コムの周波数間隔の差分は10GHz以上50GHz以下であってもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様によれば、分割周波数チャネルごとに微小光共振器が設けられ、それぞれの微小光共振器から生成される光周波数コムは逓倍されることなく、周波数分割多重変調に用いられることから、位相雑音が少なくしかも情報伝送速度の高い無線伝送装置を実現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】光周波数コムを用いた光電気変換装置のブロック図である。
図2】本発明の第1の実施の形態の周波数多重光電気変換装置のブロック図である。
図3】本発明の第1の実施の形態において単一のレーザー素子を用いた場合のブロック図である。
図4】本発明の第1の実施の形態の動作説明図である。
図5】本発明の第2の実施の形態の周波数多重光電気変換装置のブロック図である。
図6】本発明の第2の実施の形態の動作説明図である。
図7】本発明の第2の実施の形態において単一のレーザー素子を用いた場合のブロック図である。
図8】本発明の一実施例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本実施の形態における周波数多重光電気変換装置はセル又はスモールセル内の無線端末からの電波を受信し、ネットワークに接続された交換局又は中継局との間、いわゆるフロントホールを無線で伝送することを目的としている。特に、伝送速度を高めるため、伝送帯域を複数周波数チャネルに分割した周波数多重無線伝送方式を用いる。本実施の形態の説明の前に、参考例として、周波数分割をしないの場合の光周波数コムを用いた光電気変換装置の基本構成および動作について説明する。
【0019】
(参考例の説明)
図1に光電気変換装置のブロック図を示す。図1において、10は無線端末である。無線端末10は1つであっても複数であってもよい。また無線端末10は移動端末であっても固定端末であってもよい。11は受信アンテナであり、無線端末10からの無線信号S1を受信する。受信アンテナ11は複数の無線端末10に対応すべく、複数のアンテナ素子よりなるアンテナアレイであってもよい。また、周波数等の複数の無線通信規格に対応する複数のアンテナ群より成るものであってもよい。情報信号復調部12は無線信号S1に含まれる情報信号を復調する。情報信号復調部12はLTE、5G等、複数の無線通信規格に対応したものであってもよい。
【0020】
さらに図1において、1は単一周波数のレーザー光を発するレーザー発光素子である。発光波長が1550nm又はその周辺の波長に合わせこまれた光を発するDFBレーザーが好ましい。2は微小光共振器であり、レーザー光1で励起され、光周波数コムを生成する。光周波数コムとは、多数の光周波数モード列が等周波数(frep)間隔でかつ光位相が揃った状態で櫛の歯状に立ち並んだ超離散マルチスペクトル構造を意味する。微小光共振器2は半導体基板上に環状に形成されたものであってもよい。直径は40μm~400μmであってもよい。また、非線形光学効果を有する媒質であって、窒化ケイ素(Si)、ガリウム砒素アルミニウム(AlGaAs)、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、五酸化タンタル(Ta)、および窒化ガリウム(GaN)からなる群より選択される1種以上の媒質から構成されるものであってもよい。
【0021】
微小光共振器2により生成された光周波数コムは光学的共振器長が短いため、隣接する光周波数モード間の周波数間隔(frep)を高くすることができる。隣接する光周波数モード間の周波数間隔(frep)は、100GHz以上3THz以下であってもよい。より好ましくは300GHz以上1THz以下であってもよい。さらに好ましくは350GHz以上600GHz以下であってもよい。
【0022】
30はカップラー、31、32はバンドパスフィルター、33は光変調部、34は光増幅素子であり、これらの要素群は変調光信号生成部3を構成する。変調光信号生成部3は光周波数コムから互いに隣接する光周波数モードを分離し、一方に対してベースバンド信号S2に応じて光変調を行う。なお、バンドパスフィルター31、32の代わりにAWG(アレイ導波路回折子)を用いてもよい。光変調を受けた光周波数モードm1(周波数ν)は、混合部20において光変調を受けていない光周波数モードm0と混合され、光増幅素子34を経て光電気変換部4に供給される。なお、光増幅素子34は光電気変換部4に入力される光信号のレベルに応じて挿入されない場合もある。光電気変換素子4は単一走行キャリアフォトダイオード(UTC-PD)から成るものであってもよい。
【0023】
他方の光周波数モードm0(ν)はそのまま光増幅素子34を経て光電気変換素子4に供給される。光電気変換素子4において、光周波数モードm1と光周波数モード0は混合され(S3)、これらの差周波数(ν-ν=frep)が電磁波(テラヘルツ波)として光電気変換素子4から出力される。光電気変換素子4はアンテナ5に直結しており、テラヘルツ波(S4)としてアンテナ5から空中に放射される。
【0024】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図2に本実施の形態のブロック図を示す。図2において、301、302、303、304は変調光信号生成部である。なお、本実施の形態では4分割多重変調としているが、本発明はこれに限定されるものではない。変調光信号生成部301はバンドパスフィルター3011、3012、変調部3013、混合部3020および光増幅素子3014により構成され、図1で示された変調光信号生成部3と同様の機能を有する。変調光信号生成部302、303、304も後述のフィルター定数等以外は、変調光信号生成部301と同様の構成を有している。
【0025】
図2において、101、102、103,104はレーザー発光部である。本実施の形態では、それぞれ、発光波長が1550nm又はその周辺の波長に合わせこまれたDFBレーザーが用いられる。201、202、203、204はそれぞれ微小光共振器であり、それぞれレーザー光で励起されて光周波数コムを生成する。微小光共振器201、202、203、204は光学的共振器長が互いに異なっており、それぞれが生成する光周波数コムの周波数間隔frep1、frep2、frep3、frep4も互いに異なる。光周波数コムの周波数間隔は100GHz以上1THz以下であればよい。より好ましくは350GH以上600GHz以下であってもよい。なお、各微小光共振器に供給されるレーザー光は、本実施の形態に限られず、例えば図3に示すように。単一のハイパワーのレーザー発光素子10から複数のレーザー光を分岐させたものであってもよい。
【0026】
以上の構成により、それぞれに変調された信号が多重化される様子を図4に示す。なお、本実施の形態では、周波数間隔がfrep1<frep2<frep3<frep4 となるように光学的共振器長が設計されている。周波数間隔の差分Δfrepは10GHz以上50GHz以下であってもよい。ここで、周波数間隔の差分Δfrepとは、周波数間隔をfrep1<frep2<frep3<frep4と並べたときに段階的に増える周波数間隔の増加分を意味する。
【0027】
以上のように生成された光周波数コム群は、それぞれ変調光信号生成部301、302、303、304において、互いに隣接する光周波数モードが分離され、一方に対して光変調が行われる。変調方式はQPSK、QAM、等の振幅変調、位相変調、又はこれらの双方を含む方式であってもよい。S21、S22、S23、S24はそれぞれ、情報伝送信号からなるベースバンド信号を構成する情報ストリームである。
【0028】
変調を受けた光周波数モードとその隣接光周波数モードは光ファイバー等を通してそれぞれ光電気変換素子401、402、403、404に供給され、さらに混合され、その光ビート周波数であるfrep1、frep2、frep3、frep4をキャリア周波数とする無線信号S41、S42、S43、S44に変換される。これらの無線信号は光電気変換素子群と直結したアンテナ50において合波され、周波数多重無線信号S4として送信される(図4)。
【0029】
無線信号S41、S42、S43、S44の各帯域は周波数間隔(frep1~frep4)の周波数間隔(Δfrep)以下であることが好ましい。また光周波数コムの周波数間隔は10GHz以上50GHz以下であってもよい。また無線信号S41、S42、S43、S44の偏波を交互に直交させてもよい。このようにすることで隣接する周波数チャネルからの干渉を受けることなく各帯域を拡げることができる。
【0030】
以上のように生成された周波数多重無線信号S4は全ての周波数チャネルにおいて光周波数コムの隣接光周波数モードから生成されたものであるため、位相ノイズを極力減らすことができる。
【0031】
(第2の実施の形態)
以下、本発明の第2の実施の形態について図5および図6を用いて説明する。図5において、レーザー発光素子101、102、103,104、微小光共振器201、202、203、204、変調光信号生成部301、302、303、304は図2で示されたものと同等の機能を有する。本実施の形態においては、光電気変換部40は光電気変換素子単体で構成される。
【0032】
さらに、本実施の形態においては、図6において太線で示される光周波数モード対(ν10/ν11、ν20/ν21、ν30/ν31、ν40/ν41)が光電気変換部40を構成する光電気変換素子出力(電気側)の高域遮断周波数fよりも高い周波数間隔で離間するように、光バンドパスフィルター群(同図では光バンドパスフィルター3012のみを表示)がそれぞれの周波数コムから抽出する。すなわち、図6に示されるように、微小光共振器201の系で生成された光周波数モード対ν10/ν11のうち高域側の光の周波数ν11と隣接する光周波数モード対ν20/ν21の低域側の光の周波数ν20の間隔は、光電気変換素子の高域遮断周波数fよりも高い周波数となっている。図示はされていないが、周波数ν21とν30、ν31とν40の光周波数モード光についても同様の関係にある。
【0033】
光周波数モード対(ν10/ν11、ν20/ν21、ν30/ν31、ν40/ν41)が上記の関係にあることにより、これらを合波させて単一の光電気変換素子40に供給しても、異なる光周波数コムの相互間でビート信号は発生せず、各光周波数モード対間でのビート信号(周波数frep1、frep2、frep3、frep4<f)のみを生成することができる。
【0034】
なお、本実施の形態の以上の説明において、各微小光共振器に対してレーザー発光素子が設けられているとしたが、多重度が比較的少ない場合は、図7に示されるように、単一のハイパワーのレーザー素子10から出射されるレーザー光を分波して各微小光共振器に供給することもできる。また微小光共振器群をサブグループに分け、各サブグループにおいて単一のレーザー素子を用いることもできる。
【0035】
以下本発明の実施例について以下、説明する。本実施例においては、各プロセスにおける損失を考慮した上、図2で示された4波多重無線伝送システム全体のゲインを見積もった(図8)。
【0036】
まず、個々の光周波数コムから任意の隣接する光周波数モード対を分離する。各光周波数モードのパワーは15mW(11.76dBm)であるとすると、2モード×4チャネルで実質120mW(20.76dBm)の光キャリアが生成される。一方、アレイ導波路回折子(AWG)で6dB、光変調器で10dB、合波の過程で6dB、光バンドパスフィルターで3dBの損失が発生すると仮定し、光増幅器で30dBのゲインアップを図るとすると、ここまでで単モードあたり11.76-6-10-6+30-3=16.76dBmの利得が得られる(図8)。
【0037】
さらに、光THz変換素子(光電気変換部)での損失は300GHzで30dBに達すると見積もられるため、最終的には単モードあたり47.4μW(16.76-30=-13.24dBm)、4周波数チャネル合算で189.6μWの出力が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、移動端末から集めた情報を交換局に伝送する無線基地局や無線基地局間で情報の伝送を行う中継局などにおいて、光周波数コムを生成する微小光共振器を用いてテラヘルツ波を発生させる光電気変換装置に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
10 無線端末
1、101~104 レーザー発光部
11 受信アンテナ
12 情報信号復調部
20 混合部
2、201~204 微小光共振器
3、301~304 変調光信号生成部
30 カップラー
31、32、3011、3012 バンドパスフィルター
3010 混合部
33、3013 光変調部
34、3014 光増幅素子
4 光/電気変換部
401~404 光/電気変換素子
5、50、500 送信アンテナ

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8