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特開2023-170365通信安定化装置、及び通信安定化方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170365
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】通信安定化装置、及び通信安定化方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 28/18 20090101AFI20231124BHJP
   H04W 24/08 20090101ALI20231124BHJP
   H04W 28/26 20090101ALI20231124BHJP
【FI】
H04W28/18
H04W24/08
H04W28/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082060
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001678
【氏名又は名称】藤央弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】水垣 健一
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA33
5K067EE02
5K067EE10
(57)【要約】
【課題】高信頼な通信を提供する。
【解決手段】無線通信システムの通信を安定化するための通信安定化装置であって、前記無線通信システムは、基地局と、前記基地局と無線通信する端末と、前記通信安定化装置に接続され、前記基地局の通信を制御する制御装置を有し、前記通信安定化装置は、前記無線通信システムの過去の通信状況から、前記無線通信システムの将来の通信状況を予測し、前記予測された将来の通信状況において所定の通信品質が維持できないと判定される場合、通信品質を維持するための通信設定を作成し、予測された通信品質の低下前に設定を変更するように前記制御装置に指示する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムの通信を安定化するための通信安定化装置であって、
前記無線通信システムは、基地局と、前記基地局と無線通信する端末と、前記通信安定化装置に接続され、前記基地局の通信を制御する制御装置を有し、
前記通信安定化装置は、
前記無線通信システムの過去の通信状況から、前記無線通信システムの将来の通信状況を予測し、
前記予測された将来の通信状況において所定の通信品質が維持できないと判定される場合、通信品質を維持するための通信設定を作成し、予測された通信品質の低下前に設定を変更するように前記制御装置に指示することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信安定化装置であって、
将来の通信状況を予測結果における前記端末の無線リソース利用率を算出し、
前記算出された無線リソース利用率に基づいて通信品質が維持できるかを判定することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の通信安定化装置であって、
前記予測された将来の通信状況における前記端末の通信量を算出し、
前記算出された通信量の総和に基づいて通信品質が維持できるかを判定することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項4】
請求項1に記載の通信安定化装置であって、
前記予測された将来の通信状況において前記基地局に接続している前記端末の数を推定し、
前記推定された前記基地局に接続している前記端末の数に基づいて通信品質が維持できるかを判定することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の通信安定化装置であって、
前記予測された将来の通信状況において通信が混雑している期間を判定し、
前記判定された混雑している期間において、高い通信品質を保証すべき端末が安定して通信可能な無線リソースを割り当てるように設定を変更することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか一つに記載の通信安定化装置であって、
前記予測された将来の通信状況において通信が空いている期間を判定し、
前記判定された空いている期間に前記端末の送信時刻を変更するように設定を変更することを特徴とする通信安定化装置。
【請求項7】
無線通信システムの通信を安定化するために通信安定化装置が実行する通信安定化方法であって、
前記無線通信システムは、基地局と、前記基地局と無線通信する端末と、前記通信安定化装置に接続され、前記基地局の通信を制御する制御装置を有し、
前記通信安定化方法は、
前記通信安定化装置が、前記無線通信システムの過去の通信状況から、当該無線通信システムの将来の通信状況を予測し、
前記通信安定化装置が、前記予測された将来の通信状況において所定の通信品質が維持できないと判定される場合、通信品質を維持するための通信設定を作成し、予測された通信品質の低下前に設定を変更するように前記制御装置に指示することを特徴とする通信安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信安定化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多様な無線通信システムの実用化を背景として、無線通信の分野は多様な発展しており、従来の情報通信分野ではなく、製造業や社会インフラにおいても通信の無線化が進んでいる。従来普及していた無線LANは自営網として容易に構築できるが、通信の信頼性は高くはなかった。一方、LTEや5G通信などの公衆網は無線LANより信頼性が高いものの、公衆通信であるため特定の利用者の通信の信頼性を高めることはできなかった。このため利用者が多い環境では無線リソースが不足して通信品質が劣化し、通信の信頼性を確保できないと問題がある。
【0003】
これに対し、公衆網で用いられる無線通信方式を用いて自営網を構築するPrivate LTEやローカル5Gの実用化により、ユーザ数や通信品質設定を設置者が独自に管理できる自営網が実現し、製造業やインフラなど、これまで通信の信頼性が問題となり、無線化できなかった分野にも無線通信を使用する機運が高まっている。
【0004】
これらの無線通信システムでは、各端末又は各通信セッションに通信品質保証レベルが定められる。例えばローカル5G通信システムでは、各通信セッションにネットワークスライスと呼ばれる通信設定が割り当てられ、ネットワークスライスによって信号伝達経路や無線通信品質が定められる。端末から基地局までの無線通信区間での無線品質設定方法として、例えば使用できる無線リソースの割合を定める方法がある。これにより、高い優先度で通信するネットワークスライスが無線リソースを多く利用できるようにして、複数の種類の無線通信が同時に行われる場合でも、優先度が高い通信の無線通信品質を高めて、安定した通信を提供できる。
【0005】
また、無線通信システムの通信品質は、通常は実際に通信して判定可能となるものであり、通信開始前の通信品質の判断は困難である。
【0006】
本技術分野の背景技術として、以下の先行技術がある。特許文献1(国際公開2014/6800号)には、端末装置に対して通信のためのリソースを割り当てる基地局装置であって、基地局装置における混雑度を推定する混雑度推定部と、混雑度推定部が推定した混雑度に基づき端末装置に対するリソースの割り当て量を制御するリソース制御部と、を備えることを特徴とする基地局装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2014/6800号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載された基地局は、上りリンクバッファに滞留するデータの状況から通信システムの混雑状況を推定し、それに対応して高い優先度の端末への基地局接続(基地局からの通信リソース割り当て)を優先的に行うことで無線システム混雑時の接続遅延を抑制する。この方法は、発生した通信障害の影響を最小限に抑制するものであるが、障害自体を抑制していない。このため、生産システムの制御のような、僅かな通信障害でも全体に大きな影響が波及するシステムへの適用が困難である。また、現在の状況への対応を繰り返して障害を回避するため、例えば工程の都合によって規則的に発生する障害に対して根本的な対策による障害の解決は不可能である。
【0009】
工場などの現場では、作業進捗状況によって無線通信の通信状況が偏る場合がある。それに対し、高い優先度の通信が十分な信頼性を得られるように、多くの無線リソースを割り当てるなどの設定が必要となる。一方、そのような通信に恒常的に多くの無線リソースを確保すると、高い優先度の通信が発生していない場合でも、それ以外の通信が使える無線リソースが少なくなり、通信に支障が生じる。
【0010】
このため、通信状況の変化を常に測定し、測定された通信状況に応じてリアルタイムに無線設定を最適化することが理想だが、そのためには管理者が常に通信状況を監視し、通信状況に応じた設定を適用する必要があり、運用コストが増加する。また、通信状況の測定から、当該通信状況に対応する設定変更までは時間差があるため、その時間差の間は高い信頼性を保てない。
【0011】
本発明は、無線通信システムの制御装置から取得した通信状況を示す情報に基づいて将来の通信環境を推定し、その推定結果に基づいて適切なタイミングで無線通信システムの設定を変更することにより、高信頼な通信を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、無線通信システムの通信を安定化するための通信安定化装置であって、前記無線通信システムは、基地局と、前記基地局と無線通信する端末と、前記通信安定化装置に接続され、前記基地局の通信を制御する制御装置を有し、前記通信安定化装置は、前記無線通信システムの過去の通信状況から、前記無線通信システムの将来の通信状況を予測し、前記予測された将来の通信状況において所定の通信品質が維持できないと判定される場合、通信品質を維持するための通信設定を作成し、予測された通信品質の低下前に設定を変更するように前記制御装置に指示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、高い信頼性を維持できる。前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第一の実施例の通信システム構成を示す図である。
図2】第一の実施例の通信安定化装置の機能ブロック図である。
図3】第一の実施例の通信安定化装置が実行する処理のフローチャートである。
図4】第一の実施例の通信品質維持条件算出のフローチャートである。
図5】第一の実施例のネットワーク設定変更時の通信フローのシーケンス図である。
図6】第一の実施例の無線リソース割当率変更処理のフローチャートである。
図7】第一の実施例の無線リソースの割当率の設定例を示す図である。
図8】第一の実施例の通信品質管理テーブルの例を示す図である。
図9】第二の実施例の送信時刻変更シーケンスの例を示す図である。
図10】第二の実施例の無線リソース利用量の推移を示す図である。
図11】第二の実施例の端末管理テーブルの例を示す図である。
図12】第二の実施例のネットワーク設定変更時の通信フローのシーケンス図である。
図13】第三の実施例の通信品質維持条件の判定処理のフローチャートである。
図14】第四の実施例の通信品質維持条件の判定処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施例1>
図1は、本発明の第一の実施例の通信システム構成を示す図である。
【0016】
本実施例の通信システムは、複数の端末1と、端末1と無線通信する基地局2と、基地局2を制御する制御装置3とを有する。制御装置3には、制御装置3からの情報に基づいて無線通信の安定化のための設定を行う通信安定化装置4が接続される。
【0017】
端末1から送信された信号は基地局2を経由して制御装置3に転送され、その信号の宛先に応じて他の無線端末や外部のネットワーク5を経由してアプリケーションサーバ6に転送される。例えば、制御装置3は、4G通信システムにおけるEPC(Evolved Packet Core)、又は5G通信システムにおける5Gコアである。また、外部ネットワークから送信される端末1宛の信号は、一旦制御装置3に送信され、制御装置3から、端末1が接続している基地局2を経由して端末1に送信される。各端末1及び各通信セッションには通信品質保証レベルが定められている。これは遅延、誤り率、伝送速度など、当該通信が満たす通信品質が定められたものであり。例えば、通信品質保証レベルは、5G通信システムにおけるネットワークスライスである。
【0018】
図2は、通信安定化装置4の機能ブロック図である。
【0019】
通信安定化装置4は、通信部41と、通信状況データベース42と、通信状況推定部43と、通信品質管理テーブル44と、無線リソース計算部45と、通信設定作成部46を有する。通信部41は、制御装置3と通信して無線ネットワークの通信状況に関する情報の受信し、設定変更指示のやり取りを行う。通信状況データベース42は、端末1の情報を記録する端末管理テーブルや、端末1の通信状況などの情報を格納する。通信状況推定部43は、過去の情報に基づいて将来の各端末1の通信状況を推定する。通信品質管理テーブル44は、無線ネットワークの通信品質保証レベル毎の補償内容と無線リソースの状況を管理する。無線リソース計算部45は、端末1による無線リソースの消費量を計算する。通信設定作成部46は、各通信品質保証レベルを実現するための設定を作成する。
【0020】
通信安定化装置4は、プロセッサ、メモリ、補助記憶装置及び通信インターフェースを有する計算機によって構成される。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する演算装置である。プロセッサが、各種プログラムを実行することによって、通信安定化装置4が提供する機能が実現される。なお、プロセッサがプログラムを実行して行う処理の一部を、他の演算装置(例えば、ASIC、FPGA等のハードウェア)で実行してもよい。メモリは、不揮発性の記憶素子であるROM及び揮発性の記憶素子であるRAMを含む。ROMは、不変のプログラム(例えば、BIOS)などを格納する。RAMは、DRAM(Dynamic Random Access Memory)のような高速かつ揮発性の記憶素子であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時に使用されるデータを一時的に格納する。補助記憶装置は、例えば、磁気記憶装置等の大容量かつ不揮発性の記憶装置であり、プロセッサが実行するプログラム及びプログラムの実行時にプロセッサが使用するデータを格納する。通信インターフェースは、所定のプロトコルに従って、他の装置との通信を制御するネットワークインターフェース装置である。
【0021】
図3は、通信安定化装置4が実行する処理のフローチャートである。
【0022】
通信安定化装置4は、制御装置3を通じて、所定のタイミングで繰り返し(例えば、所定時間間隔で)無線ネットワークの通信状況に関する情報を収集する(S01)。通信状況に関する情報とは、無線通信の安定度を判断するための情報であり、例えば、各基地局2に接続している端末1の数と各端末1の通信量などである。この通信状況に関する情報は、基地局2や端末1に実装されたアプリケーションから取得し、通信安定化装置4内に時刻情報と共に記録され、将来の無線ネットワークの通信状況推定に利用される。例えば、機械学習された推定モデルを用いて通信状況を推定する場合、この通信状況に関する情報が学習データとなる。
【0023】
次に、通信安定化装置4は、直近に受信した情報と過去に受信した情報より、過去期間の通信状況の推移の情報を作成し、作成した情報に基づいて将来の通信状況を推定する(S02)。例えば、機械学習された推定モデルを用いて通信状況を推定する場合、推定モデルは無線リソースの使用状況と必要リソース量の時間変化によって機械学習しており、推定モデルの説明変数は過去期間の各端末1の通信量の推移であり、目的変数は将来の期間(T2)の各端末1の通信量の推移である。
【0024】
推定に用いる通信状況の観察期間は、その環境に依存して決まる。例えば、一つの作業工程がn時間必要であり、この作業工程を繰り返す作業が行われる環境では、観察期間T1をはn時間以上に設定するとよい。
【0025】
次に、通信安定化装置4は、推定された将来の通信状況に基づいて、将来の期間において必要な通信品質を維持可能な条件を算出する(S03)。例えば、スループットから受信信号強度(RSSI)を算出でき、遅延から再送間隔を算出できる。通信品質維持条件算出(S03)の詳細は、図4を参照して説明する。
【0026】
次に、通信安定化装置4は、通信品質を維持可能な条件と将来の通信状況推定結果を比較し、将来の期間の通信状況の推定結果が通信品質を維持可能な条件を満たすかを判定する(S04)。例えば、端末1毎に定められた基準に従って、全ての端末1の品質レベルを維持できるかを判定してもよく、特定の端末1の品質レベルのみを維持できるかを判定してもよい。将来の期間の通信状況の推定結果が通信品質を維持可能な場合、ステップS01に戻り、処理を繰り返す。一方、将来の期間の通信状況の推定結果が通信品質を維持不可能な場合、通信安定化装置4は、将来の期間の通信状況の通信環境の推定結果で通信品質を維持可能な新たな無線設定を作成する(S05)。
【0027】
次に、通信安定化装置4は、作成された無線設定を適用するスケジュールを作成する(S06)。設定適用時期は、将来において通信状況の変化によって無線品質が低下する前であって、高い通信品質保証レベルにおける品質保証に影響が生じないことを優先し、その条件下で低い通信品質保証レベルにおける品質保証に影響がなるべく少ないタイミングに設定する。
【0028】
通信安定化装置4は、作成された設定内容と設定適用タイミングを制御装置3に指示する(S07)。制御装置3は、通信安定化装置4からの通知内容に従って無線システムの設定を変更する。
【0029】
図4は、通信品質維持条件算出のフローチャートであり、図3のステップS02からS04の詳細を示す。
【0030】
通信安定化装置4は、無線システムに登録されている各端末1について、その端末1がその期間(T2)に通信するか、通信のために接続する基地局2、通信するデータのサイズと送受信期間を推定する(S11)。
【0031】
通信安定化装置4は、推定結果に基づいて、各基地局2が利用する無線リソースの量を算出する(S12)。無線リソース利用量は各端末1の送受信データ量と、その端末1の無線通信速度から算出される。
【0032】
次に、通信安定化装置4は、基地局2ごとに接続する端末1の通信品質保証レベルごとの無線リソース利用量の総和を算出し(S13)、算出された無線リソース利用量の総和が各通信品質保証レベルの無線リソースの割当量を超えるかを通信品質保証レベル毎に判定する(S14)。無線リソース利用量の総和が割当量を超える場合、通信品質が維持できないと判定し(S15)、ステップS05~S07において、新たな無線リソースを割り当てる。一方、無線リソース利用量の総和が割当量を超えない場合、通信品質を維持できると判定する(S16)。
【0033】
図5は、ネットワーク設定変更時の通信フローのシーケンス図である。
【0034】
各基地局2は、所定のタイミング(例えば、所定の時間間隔で)、その基地局2に接続している端末1の通信状況に関する情報を含む通信状況報告(M01)を制御装置3に送信する。
【0035】
制御装置3は、受信した通信状況報告や、制御装置3を経由して転送される端末1との送受信信号から、端末1の送受信量、通信速度などの情報を纏めた通信環境報告(M02)を通信安定化装置4に送信する。この通信環境報告について、通信安定化装置4からのリクエストを契機として制御装置3が通信環境報告を送ってもよい。
【0036】
通信安定化装置4は、受信した通信環境報告を用いて各基地局2における通信状況を推定し(M03)、通信品質が維持できるかを判定する。通信品質が維持できないと判定される場合(M03n)、無線品質を維持可能な設定を作成し、作成された設定と当該設定を反映するタイミングの情報を含む設定変更指示(M05)を制御装置3に送信する。
【0037】
制御装置3は、受信した設定変更指示に基づいて、適切なタイミングに各基地局2の設定を変更する基地局設定変更指示(M06)を送る。この際、基地局2に設定変更の内容と設定適用タイミングを送信し、基地局2が受信した設定適用タイミングに設定を適用してもよい。また、制御装置3が、設定適用タイミングに設定変更指示を基地局2に送信し、基地局2は受信した設定変更指示に従って設定を適用してもよい。
【0038】
図6から図8を参照して、通信システムの設定変更の例を説明する。本実施例では、通信システムの設定変更の例として基地局2における各通信品質保証レベルに割り当てられた無線リソースの割当率変更の手順を説明する。
【0039】
図6は、将来通信状況が変化して、通信量が増加した通信品質保証レベルの通信品質を保つことができないと通信安定化装置4が判断した場合に実行される無線リソース割当率変更処理のフローチャートである。
【0040】
まず、無線リソース割当率変更処理では、通信安定化装置4は、無線リソースの不足が予想される通信品質保証レベルが存在する場合(S21)、無線リソースの不足が予想される通信品質保証レベルnの優先度が最低レベルであるかを判定する(S22)。通信品質保証レベルnの優先度が最下位である場合、それ以上無線リソースを通信品質保証レベルnに割り当て不可能なので、設定変更は行わずに処理を終了する(S30)。
【0041】
対象となる通信品質保証レベルnより優先度が低い通信品質保証レベルが存在する場合、優先度が低い通信品質保証レベルn+1で余剰の無線リソースを合計し、余剰無線リソースの総量を算出する(S23)。算出された余剰無線リソースで必要な無線リソースを満たすかを判定し(S24)、算出された余剰無線リソースで必要な無線リソースを満たす場合、余剰無線リソースを通信品質保証レベルnに割り当て(S31)、処理を終了する(S30)。
【0042】
一方、無線リソースの余剰がない、又は余剰無線リソースの総量で必要な無線リソースを満たさない場合、他の通信品質保証レベルの割当量を削減して、通信品質保証レベルnに割り当てる。まず、優先度が最も低い通信品質保証レベルを削減対象に設定し(S25)、当該最下位の通信品質保証レベルの割当量を削減して、通信品質保証レベルnに割り当て(S26)、通信品質保証レベルnで必要な無線リソースを確保できるかを判定する(S27)。ステップS26~S27では、各通信品質保証レベルには最低限必要な無線リソース割当率が設定されており、最低割当率までの削減量で必要な無線リソースを確保できるかを判定する。当該最下位の通信品質保証レベルの割当量を削減して必要量を確保できる場合、確保した無線リソースを通信品質保証レベルnに割り当て(S32)、処理を終了する(S30)。
【0043】
一方、当該最下位の通信品質保証レベルの割当量を削減しても必要量を確保できない場合、その次に上位の通信品質保証レベルが通信品質保証レベルnであるかによって、次に上位の通信品質保証レベルが存在するかを判定する(S28)。そして、次に上位の通信品質保証レベルが存在すれば、次に上位の通信品質保証レベルを削減対象に設定し(S29)、ステップS26に戻り、次に上位の通信品質保証レベルに対して同様の処理を行う。
【0044】
最終的に無線リソース追加割当が必要な通信品質保証レベルn以下のレベルへの割当量の削減で対応できる場合、その変更内容を記録し、記録される変更内容に応じて設定を変更する。前述した処理で必要な無線リソースを確保できない場合、確保できた無線リソースを割り当てるように設定を変更し、通信安定化装置4からリソース不足を警告する。
【0045】
このように、下位の品質通信品質保証レベルの余剰無線リソースを上位の品質通信品質保証レベルに割り当てた後、下位の品質通信品質保証レベルで削減した無線リソースを上位の品質通信品質保証レベルに割り当てるので、下位の品質通信品質保証レベルへの影響を小さくしつつ、上位の品質通信品質保証レベルの通信品質を確保できる。
【0046】
図7は、ある基地局2における無線リソースの割当率の設定例を示す図であり、図8は、この時の通信品質管理テーブル44の例を示す図である。
【0047】
割当率変更前は、この基地局2の割当率は、設定1のように優先度の高い上位の通信品質保証レベル1に対して30%、優先度の中の通信品質保証レベル2に対して30%、優先度の低い下位の通信品質保証レベル3に対して40%割り当てられている。
【0048】
図8に示すように、通信品質管理テーブル44は、各通信品質保証レベルで保証される通信性能(例えば必須通信成功率)T1と、無線リソース割当率T2、余剰無線リソース率T3、将来時刻tmにおける無線リソース不足量T4、及び無線リソースの最低割当率T5などを記録する。なお、通信品質保証レベル1が最も優先度が高い上位のレベルで、通信品質保証レベル3が最も優先度が低い下位のレベルである。必須通信成功率は、所定時間内に通信が完了できる確率であり、パーセンテージで表している。無線リソース不足量T4は、図4は、通信品質維持条件算出(図4)のステップS12で推定された無線リソース量から算出できる。最低割当率T5は、基地局2で使用可能な無線リソースを100とした各通信品質保証レベルに最低限割り当てられるリソース量の割合である。
【0049】
通信品質管理テーブル44は、所定のタイミングで常に更新されても、設定変更を試みるタイミングで更新してもよい。
【0050】
この例では、最も優先度が高い上位の通信品質保証レベル1で、未来の時刻tmの時点で10%の無線リソース割当量が不足することが予想されている。
【0051】
このとき、下位の通信品質保証レベル2以下の余剰無線リソースが無いことを確認した後、優先度が最も低い通信品質保証レベル3の無線リソースを削減できるかを判定する。通信品質保証レベル3の現在の割当率は40%だが、その最低割当率が10%なので、通信品質保証レベル3の割当量を30%に削減し、そこで得た10%分を通信品質保証レベル1に割り当てる。この割当変更によって、通信品質保証レベル1が必要とする無線リソース量を満たすことができる。これにより割当量は図7の設定2のように変更され、通信品質保証レベル1は必要な無線リソース利用量を確保し、約束された無線性能を提供できる。
【0052】
以上に説明したように、本発明の第一の実施例によると、将来の通信状況の推定結果に基づいて基地局2の設定を変更するため、通信状況の変化と設定変更のタイミングが同期し、管理者の負担を増やすことなく、通信の高い信頼性を担保できる。また、第一の実施例による設定変更制御は、通信優先度が高く、大容量(例えば画像データ)を転送する端末1が通信する場面で有効である。
【0053】
<実施例2>
本発明の第二の実施例として、無線通信環境の利用率が低くなる時間帯を推定し、端末1の信号送信時刻を推定された時間帯に設定することによって、無線通信を安定化する方法について説明する。ここでは、図3の通信安定化装置4の動作シーケンスのうち、推定環境で通信品質を維持可能な設定の作成(S05)で、端末1の信号送信時刻を通信が集中していない時間へ変更する設定を作成する。なお、第二の実施例において、第一の実施例との相違点を主に説明し、第一の実施例と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0054】
第二の実施例では、図3のステップS02において、推定モデルを用いて端末1が通信しているかを推定する。第二の実施例の推定モデルは、端末1が通信状況(通信しているか、休止しているか)の時間変化によって機械学習しており、説明変数として将来の時刻を入力すると、目的変数として通信の有無が出力されるものである。
【0055】
図9は、本実施例の送信時刻変更シーケンスの例を示す図である。
【0056】
まず、通信安定化装置4は、基地局2の無線リソース利用量の推移を推定し、無線リソースの不足が予測される時間帯を検出する。無線リソース利用量の推定方法は第一の実施例と同様の方法を採用できる。例えば、図10のような無線リソース利用量の推移が想定される場合について説明する。無線通信の安定が保証される基準値S1を推定無線リソース利用率が超える期間(図中のtaからtb)がある場合(S41)、この期間における通信が推定される端末1のうち通信時刻を変更可能な端末1に対し通信時刻の変更を指示する。変更先は通信が空いている時刻を指定することで、全体の無線リソース利用量を減少させる。図10に示す例では、無線リソース利用量が基準値S2を下回るtcからtdの期間を通信時刻移行先と定める(S42)。次に、変更する端末1の候補として優先度が最も低い下位の通信品質保証レベルの端末1を選択する(S43)。選択された端末1の端末管理テーブルを参照し、通信時刻が変更可能な端末1の通信時刻をtcからtdの期間へ変更する(S44)。
【0057】
図11は、本実施例における端末管理テーブルの例を示す図である。端末管理テーブルは、通信品質管理テーブル44の一部を構成しており、各端末の通信品質保証レベルT12と、通信時刻の指定変更可否に関する情報T13を記録する。
【0058】
通信安定化装置4は、端末1への送信時刻変更によってtaからtbの期間の無線リソース利用量が基準値S1以下になり、無線リソースの不足が解消するかを判定する(S45)。そして、無線リソース利用率が基準値S1以下にならない場合、次に優先度が低い下位の通信品質保証レベルの端末1に対象を変更し(S48)、ステップS44に戻り、処理を繰り返す。
【0059】
以上の処理によって無線リソース利用率が基準値S1を下回る場合、制御装置3に設定変更を指示し(S46)、設定変更を終了する(S49)。
【0060】
図12は、本実施例におけるネットワーク設定変更時の通信フローのシーケンス図である。
【0061】
各基地局2は、所定のタイミング(例えば、所定の時間間隔で)、その基地局2に接続している端末1の通信状況に関する情報を含む通信状況報告(M01)を制御装置3に送信する。
【0062】
制御装置3は、受信した通信状況報告や、制御装置3を経由して転送される端末1との送受信信号から、端末1の送受信量、通信速度などの情報を纏めた通信環境報告(M02)を通信安定化装置4に送信する。この通信環境報告について、通信安定化装置4からのリクエストを契機として制御装置3が通信環境報告を送ってもよい。
【0063】
通信安定化装置4は、受信した通信環境報告を用いて各基地局2における通信状況を推定し(M03)、通信品質が維持できるかを判定する。通信品質が維持できないと判定される場合(M03n)、無線品質を維持可能な設定を作成し、作成された設定と当該設定を反映するタイミングの情報を含む設定変更指示(M05)を制御装置3に送信する。
【0064】
制御装置3は、受信した設定変更指示に基づいて、適切なタイミングに各基地局2の設定を変更する基地局設定変更指示(M06)を送る。
【0065】
基地局2は、受信した基地局設定変更指示(M07)を、送信時刻変更を指示された端末1に送信する。
【0066】
以上に説明したように、本発明の第二の実施例によると、通信している端末1の数によって通信品質が維持できるかを判定し、通信品質が維持できない場合に端末1の送信タイミングを変更するので、多数の端末1からデータが送信される場合に、予め調整することなく、端末1の送信タイミングを変更できる。
【0067】
<実施例3>
本発明の第三の実施例として、無線ネットワークが通信品質を維持できるかの判断基準として基地局2に接続する端末1の推定通信量の総計を用いる場合について説明する。なお、第三の実施例において、第一の実施例との相違点を主に説明し、第一の実施例と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0068】
第三の実施例では、図3のステップS02において、推定モデルを用いて端末1の通信量の合計値を推定する。第三の実施例の推定モデルは、端末1の通信量の合計値の時間変化によって機械学習しており、説明変数として将来の時刻を入力すると、目的変数として通信量が出力されるものである。
【0069】
図13は、本実施例の通信品質維持条件の判定処理のフローチャートである。
【0070】
通信安定化装置4は、無線システムに登録されている各端末1について、その端末1がその期間(T2)に通信するか、通信のために接続する基地局2、通信するデータのサイズと送受信期間を推定する(S51)。
【0071】
通信安定化装置4は、推定結果に基づいて、各基地局2が利用する無線リソースの量を算出する(S52)。無線リソース利用量は各端末1の送受信データ量と、その端末1の無線通信速度から算出される。
【0072】
次に、通信安定化装置4は、基地局2ごとに接続する端末1の通信データ量の総和を算出し(S53)、算出された通信データ量の総和が基地局2に接続されるネットワーク機器、ケーブルの性能、ネットワーク構成などから規定される許容通信容量を超えるかを判定する(S54)。通信データ量の総和が許容通信容量を超える場合、通信品質が維持できないと判定し(S55)、新たな通信設定へ変更する。例えば、通信設定の変更は、端末1の送信時刻変更、端末1が使用する変調方式の変更、通信経路の変更などである。一方、通信データ量の総和が許容通信容量を超えない場合、通信品質を維持できると判定する(S56)。
【0073】
以上に説明したように、本発明の第三の実施例によると、端末1の通信量の合計値によって通信品質が維持できるかを判定し、通信品質が維持できない場合に端末1の通信量を制限するなどで通信条件を変更するので、基地局2の通信量が大きく上限に近い場合に、予め調整することなく、端末1の通信量を制限できる。
【0074】
<実施例4>
本発明の第四の実施例として、無線ネットワークが通信品質を維持できるかの判断基準として基地局2に接続する端末1の総数を用いる場合について説明する。なお、第四の実施例において、第一の実施例との相違点を主に説明し、第一の実施例と同じ構成及び処理には同じ符号を付し、それらの説明は省略する。
【0075】
第四の実施例では、図3のステップS02において、推定モデルを用いて基地局2に接続する端末1の数を推定する。第四の実施例の推定モデルは、基地局2に接続している端末1の数の時間変化によって機械学習しており、説明変数として将来の時刻を入力すると、目的変数として基地局2に接続する端末1の数が出力されるものである。
【0076】
図14は、本実施例の通信品質維持条件の判定処理のフローチャートである。
【0077】
通信安定化装置4は、無線システムに登録されている各端末1について、その端末1がその期間に通信するか、通信のために接続する基地局2、通信するデータのサイズと送受信期間を推定する(S61)。
【0078】
通信安定化装置4は、推定結果に基づいて、各基地局2に接続する端末1の数を算出し(S62)、算出された接続端末数が各基地局2の処理能力から規定される接続許容台数を超えるかを判定する(S63)。接続端末数が接続許容台数を超える場合、通信品質が維持できないと判定し(S64)、新たな通信設定へ変更する。例えば、通信設定の変更は、端末1の送信時刻変更などである。一方、接続端末数が接続許容台数を超えない場合、通信品質を維持できると判定する(S65)。
【0079】
以上に説明したように、本発明の第四の実施例によると、基地局2に接続している端末1の数の時間変化によって通信品質が維持できるかを判定し、通信品質が維持できない場合に端末1の送信タイミングを変更するなどで通信条件を変更するので、基地局2に接続する端末1が多い場合に、送信タイミングなどの条件を予め調整することなく、多くの端末1が通信できる。
【0080】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0081】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0082】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0083】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0084】
1 端末
2 基地局
3 制御装置
4 通信安定化装置
5 ネットワーク
6 アプリケーションサーバ
41 通信部
42 通信状況データベース
43 通信状況推定部
44 通信品質管理テーブル
45 無線リソース計算部
46 通信設定作成部
M01 通信状況報告
M02 通信環境報告
M05 設定変更指示
M06 基地局設定変更指示
M07 端末設定変更指示
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14