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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170387
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】三次元造形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/245 20170101AFI20231124BHJP
   B29C 64/118 20170101ALI20231124BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231124BHJP
   B29C 64/227 20170101ALI20231124BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20231124BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20231124BHJP
   B33Y 40/00 20200101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C64/245
B29C64/118
B33Y30/00
B29C64/227
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082103
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】橋爪 啓太郎
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC01
4F213AP06
4F213AQ01
4F213AR07
4F213AR12
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL35
4F213WL73
4F213WL85
4F213WL92
(57)【要約】
【課題】三次元造形体の品質を高めることが可能な三次元造形装置を提供する。
【解決手段】ステージ200と、ステージ200に可塑化された第1材料を供給する第1ノズルを有する第1造形ヘッドと、ステージ200と第1造形ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、第1造形ヘッドと移動手段とを制御する制御部と、を備え、移動手段は、X軸移動手段、Z軸移動手段、及びZ軸回転手段、を有し、Z軸回転手段は、Z軸を中心にステージ200を回転させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステージと、
前記ステージに可塑化された第1材料を供給する第1ノズルを有する第1造形ヘッドと、
前記ステージと前記第1造形ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、
前記第1造形ヘッドと前記移動手段とを制御する制御部と、
を備え、
前記移動手段は、X軸移動手段、Z軸移動手段、及びZ軸回転手段、を有し、
前記Z軸回転手段は、Z軸を中心に前記ステージを回転させる、三次元造形装置。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
撮像手段を備え、
前記制御部は、
前記Z軸を中心に前記ステージを回転させ、かつ、前記第1ノズルから前記第1材料を供給することで、前記ステージの上に第1校正体を形成する第1制御を実行し、
前記撮像手段を用いて前記第1校正体を撮像する第2制御を実行し、
撮像された前記第1校正体から前記ステージの回転軸を決定する第3制御を実行し、
撮像された前記第1校正体から始点を決定する第4制御を実行し、
前記ステージの前記回転軸と、前記第1校正体の前記始点と、に基づいて、前記第1造形ヘッドと前記ステージとの位置を算出する第5制御を実行する、三次元造形装置。
【請求項3】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1制御において、前記第1校正体の前記始点を前記第1校正体の造形線幅の平均値に対して大きくするように、前記第1造形ヘッドを制御する、三次元造形装置。
【請求項4】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記ステージに可塑化された第2材料を供給する第2ノズルを有する第2造形ヘッドを備え、
前記制御部は、
前記Z軸を中心に前記ステージを回転させ、かつ、前記第2ノズルから前記第2材料を供給することで、前記ステージの上に第2校正体を形成する第6制御を実行し、
前記撮像手段を用いて前記第2校正体を撮像する第7制御を実行し、
撮像された前記第2校正体から前記ステージの前記回転軸を決定する第8制御を実行し、
撮像された前記第2校正体から始点を決定する第9制御を実行し、
前記ステージの前記回転軸と、前記第2校正体の前記始点と、に基づいて、前記第2造形ヘッドと前記ステージとの位置を算出する第10制御を実行する、三次元造形装置。
【請求項5】
請求項4に記載の三次元造形装置であって、
前記第1制御及び前記第6制御は、前記第1造形ヘッドの中心線及び前記第2造形ヘッドの中心線と、前記ステージの前記回転軸と、を一致させない、三次元造形装置。
【請求項6】
請求項2に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、第1キャリブレーション及び第2キャリブレーションを実行し、
前記第1キャリブレーションにおける前記第1校正体の直径は、前記第2キャリブレーションにおける前記第1校正体の直径に比べて小さい、三次元造形装置。
【請求項7】
請求項6に記載の三次元造形装置であって、
前記制御部は、前記第1キャリブレーションを実行した後に、前記第2キャリブレーションを実行させる、三次元造形装置。
【請求項8】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記第1ノズルから前記ステージに供給された前記第1材料の線幅を検出する検出手段と、
前記ステージに供給された前記第1材料を前記ステージから剥離する剥離手段と、
を備え、
前記制御部は、前記第1ノズルから供給される前記第1材料の量を制御する第3キャリブレーション制御を実行し、
前記第3キャリブレーション制御において、前記第1造形ヘッドの中心線と前記ステージの回転軸との距離が、前記剥離手段と前記ステージとが接触する領域の最小値以上最大値以下である、三次元造形装置。
【請求項9】
請求項8に記載の三次元造形装置であって、
前記検出手段は、撮像手段、又は、測距センサーである、三次元造形装置。
【請求項10】
請求項1に記載の三次元造形装置であって、
前記移動手段は、Y軸移動手段を備え、
前記Z軸回転手段は、取り外し可能に配置されている、三次元造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三次元造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、造形ステージに対して吐出モジュールを、X,Y方向の2軸方向に移動させて、立体造形物を造形する三次元造形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、X,Y方向の2軸方向の移動のため、曲線形状を有する立体造形物を形成する場合、曲線形状を複数の直線の集合によって形成することになり、滑らかな曲線形状に形成できないおそれがあるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
三次元造形装置は、ステージと、前記ステージに可塑化された第1材料を供給する第1ノズルを有する第1造形ヘッドと、前記ステージと前記第1造形ヘッドとを相対的に移動させる移動手段と、前記第1造形ヘッドと前記移動手段とを制御する制御部と、を備え、前記移動手段は、X軸移動手段、Z軸移動手段、及びZ軸回転手段、を有し、前記Z軸回転手段は、Z軸を中心に前記ステージを回転させる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】三次元造形装置の構成を示す斜視図。
図2】三次元造形装置の構成を示す断面図。
図3】造形ヘッドの構成を示す断面図。
図4】Z軸回転手段の構成を示す斜視図。
図5】スリップリング機構の構成を示す側面図。
図6】第1校正体及び第2校正体の構成を示す平面図。
図7】検出手段及び剥離手段の構成を示す平面図。
図8】検出手段及び剥離手段の構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下の各図においては、互いに直交する3つの軸をX軸、Y軸、及びZ軸として説明する。X軸に沿う方向を「X方向」、Y軸に沿う方向を「Y方向」、Z軸に沿う方向を「Z方向」とし、矢印の方向が+方向であり、+方向と反対の方向を-方向とする。なお、+Z方向を「上」又は「上方」、-Z方向を「下」又は「下方」ということもあり、+Z方向から見ることを平面視あるいは平面的ともいう。また、Z方向+側の面を上面、これと反対側となるZ方向-側の面を下面として説明する。
【0008】
まず、図1及び図2を参照しながら、三次元造形装置1000の構成を説明する。
【0009】
三次元造形装置1000は、造形ヘッド100からステージ200に向けて、熱可塑性樹脂が可塑化された造形材料300(図3参照)を吐出させつつ、移動手段400を駆動して、造形ヘッド100とステージ200との相対的な位置を変化させる。これにより、三次元造形装置1000は、ステージ200上に所望の形状の三次元造形物300aを造形する。
【0010】
図2に示すように、三次元造形装置1000は、ステージ200と、ステージ200と対向する位置に配置された第1造形ヘッド100R及び第2造形ヘッド100Lと、移動手段400と、第1造形ヘッド100R、第2造形ヘッド100L、及び移動手段400を制御する制御部500と、を備えている。
【0011】
第1造形ヘッド100Rは、ステージ200に第1材料を供給する第1ノズル110Rを有する。第2造形ヘッド100Lは、ステージ200に第1材料と異なる第2材料を供給する第2ノズル110Lを有する。
【0012】
移動手段400は、上記したように、第1造形ヘッド100R及び第2造形ヘッド100Lのうち少なくとも一方と、ステージ200と、を相対的に移動させる。移動手段400は、例えば、4つのモーターの駆動力によって、ステージ200を、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、Z軸回転方向、の方向に移動させるポジショナーによって構成される。即ち、移動手段400は、X軸移動手段410、Y軸移動手段420、Z軸移動手段430、及びZ軸回転手段440、を有する。具体的には、Z軸回転手段440は、Z軸を中心にステージ200を回転させる。各モーターは、制御部500の制御下にて駆動する。
【0013】
制御部500は、例えば、プロセッサーと、外部との信号の入出力を行う入出力インターフェイスと、を備えるコンピューターによって構成されている。本実施形態では、制御部500は、記憶部510に記憶されたプログラムや命令をプロセッサーが実行することによって、第1造形ヘッド100Rと、第2造形ヘッド100Lと、移動手段400との動作を制御して、造形データに基づく三次元造形物300aを造形する造形処理を実行する。
【0014】
造形データは、例えば、三次元造形装置1000に接続されたコンピューターにインストールされたスライサーソフトに、形状データを読み込ませることによって作成される。形状データは、三次元CAD(Computer Aided Design)ソフトや三次元CG(Computer Graphics)ソフトなどを用いて作成された三次元造形物300aの目標形状を表すデータである。形状データとしては、例えば、STL(Standard Triangulated Language)形式やAMF(Additive Manufacturing File Format)などのデータを用いる。スライサーソフトは、三次元造形物300aの目標形状を所定の厚さの層に分割して、層ごとに造形データを作成する。造形データは、Gコードなどによって表される。
【0015】
造形データは、例えば、ステージ200に対するノズル110の移動経路、ノズル110から吐出される造形材料300の量、三次元造形物300aを構成する複数の造形層の各々の形状、及び面積などに関する情報を含む。制御部500は、三次元造形装置1000に接続されたコンピューターや、USB(Universal Serial Bus)メモリーなどの記録媒体から造形データを取得する。
【0016】
次に、図3を参照しながら、第1造形ヘッド100R及び第2造形ヘッド100Lのうち一方の造形ヘッド100の構成を説明する。なお、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとは、同様の構成であるため、造形ヘッド100として説明する。
【0017】
造形ヘッド100は、材料供給部120と、材料溶融部130と、ノズル110と、を備えている。材料供給部120と材料溶融部130との間は、供給路121によって接続されている。材料溶融部130とノズル110との間は、連通孔133によって接続されている。造形ヘッド100は、固体状態の材料の少なくとも一部を溶融させてペースト状にした造形材料300をステージ200上に積層する。
【0018】
材料供給部120には、ペレット状や粉末状等の状態の材料が収容されている。本実施形態の第1材料及び第2材料は、ペレット状のABS樹脂である。本実施形態の材料供給部120は、ホッパーによって構成されている。材料供給部120に収容された材料は、材料供給部120の下方に設けられた供給路121を介して、材料溶融部130に供給される。
【0019】
材料溶融部130は、ケース134と、ケース134内に収容されたフラットスクリュー131と、フラットスクリュー131を駆動させる駆動モーター140と、ケース134内におけるフラットスクリュー131よりも下方に固定されたバレル132と、を備えている。
【0020】
フラットスクリュー131は、扁平な円柱形状を有し、円柱の外周から円柱の中心軸AXに向かう渦状の溝部135が円柱の底面に形成されたスクリューである。扁平とは、直径よりも高さの方が小さいことを意味している。フラットスクリュー131の底面のことを、溝形成面136と呼ぶ。フラットスクリュー131は、中心軸AXがZ方向に平行になるように配置されている。
【0021】
フラットスクリュー131の上面側には、制御部500の制御下において駆動する駆動モーター140が接続されている。駆動モーター140が発生させるトルクによって、フラットスクリュー131は、ケース134内において回転する。
【0022】
バレル132は、フラットスクリュー131の溝形成面136に対向するスクリュー対向面137を有している。スクリュー対向面137には、フラットスクリュー131の中心軸AX上の位置に、連通孔133が設けられている。バレル132には、ヒーター150が内蔵されている。ヒーター150の温度は、制御部500によって制御される。
【0023】
回転しているフラットスクリュー131の溝部135と、バレル132のスクリュー対向面137との間に供給された材料は、フラットスクリュー131の回転と、ヒーター150による加熱とによって、少なくとも一部が溶融されて、流動性を有するペースト状の造形材料300となる。造形材料300は、フラットスクリュー131の回転によって、バレル132に設けられた連通孔133へと、溝部135に沿って供給される。
【0024】
ノズル110は、連通孔133に接続されている。材料溶融部130から連通孔133を介してノズル110に供給された造形材料300は、ノズル110からステージ200に向かって吐出される。
【0025】
ステージ200の上には、造形材料300から造形された三次元造形物300a、即ち、第1校正体310及び第2校正体320(図6参照)が配置されている。
【0026】
また、三次元造形装置1000は、図2に示すように、制御部500の他に、表示部600と、記憶部510と、画像処理部520と、演算部530と、撮像手段としてのカメラ700と、を備えている。
【0027】
表示部600は、例えば、カメラ700を用いて第1校正体310を撮像した第1校正体画像や、第2校正体320を撮像した第2校正体画像を表示する。
【0028】
カメラ700は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)センサー、或いはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサー等の撮像素子を備えている。
【0029】
記憶部510は、例えば、カメラ700によって撮像された第1校正体310や第2校正体320などの画像を記憶する。
【0030】
画像処理部520は、例えば、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとの位置ずれ量が確認しやすいように、第1校正体310や第2校正体320に、寸法や計算式の画像を重ねる処理を行う。
【0031】
演算部530は、例えば、第1校正体310や第2校正体320に基づいて、ステージ200の回転軸Z0の位置を求めたり、第1校正体310と第2校正体320とのずれ量を求めたりする。
【0032】
次に、図4及び図5を参照しながら、Z軸回転手段440の構成について説明する。
【0033】
図4及び図5に示すように、Z軸回転手段440は、ステージ200の下側に配置された、スリップリング機構441を備えている。スリップリング機構441の隣りには、ステージ200を回転させるための動力源としてのモーター442が配置されている。スリップリング機構441を備えていることにより、回転軸に対して電気信号を伝達することが可能となっている。
【0034】
なお、ステージ200を回転させる機構としては、図5に示すようなスリップリング機構441に限定されず、図示はしないが、中空筒状の回転シャフトの内部に周知のロータリコネクタ(回転接続用コネクタ)を収容して、回転シャフトと一体的に回転する配線に電力を伝える構成でもよい。
【0035】
次に、図6を参照しながら、三次元造形装置1000における、第1造形ヘッド100Rと、第2造形ヘッド100Lと、ステージ200との、相対的位置の補正方法、言い換えれば、キャリブレーション方法を説明する。
【0036】
まず、ユーザーがキャリブレーションを選択すると、制御部500は、記憶部510から位置データを読み出し、移動手段400に、ステージ200を所定の場所に移動させる。
【0037】
次に、制御部500は、第1制御として、Z軸回転手段440に、Z軸を中心にステージ200を回転させると共に、第1造形ヘッド100Rに、第1ノズル110Rから第1材料を供給させる。これにより、図6に示すような、第1校正体310が造形される。
【0038】
ここで、制御部500は、Z軸回転手段440を用いてステージ200を回転させる回転角度を、360°よりも小さくすることが好ましい。これにより、第1校正体310を造形した際、第1校正体310が積層されることによる、相対的補正の精度が低下することを抑えることができる。
【0039】
次に、制御部500は、第2制御として、カメラ700に、第1校正体310を撮像させる。
【0040】
次に、制御部500は、第3制御として、演算部530に、撮像された第1校正体310から、ステージ200の回転軸Z0を決定させる。制御部500は、表示部600に、ステージ200の回転軸Z0を表示させる。
【0041】
次に、制御部500は、第4制御として、撮像された第1校正体310から始点312を決定する。なお、予め制御部500は、第1造形ヘッド100Rに、第1校正体310の造形線幅311の平均値よりも始点312が大きくなるように造形させている。なお、第1校正体310の始点312は、ユーザーが選択するようにしてもよい。
【0042】
次に、制御部500は、第5制御として、演算部530に、ステージ200の回転軸Z0と、第1校正体310の始点312と、に基づいて、第1造形ヘッド100Rとステージ200とのY方向のキャリブレーション量を決定させる。
【0043】
次に、制御部500は、演算部530に、以下の式(1)に基づいて、Y方向のずれ量を除いた第1校正体310の直径を算出し、所定の位置に対するX方向のずれ量からX方向のキャリブレーション量を決定させる。
【0044】
なお、回転軸Z0は、校正体から算出されたキャリブレーションの基準座標である。XR0は、回転軸Z0と第1造形ヘッド100Rの基準座標とのX軸方向における距離である。XRは、回転軸Z0と第1造形ヘッド100Rの測定座標(第1校正体310の始点312)とのX軸方向における距離である。YRは、回転軸Z0と第1造形ヘッド100Rの測定座標(第1校正体310の始点312)とのY軸方向における距離である。ΔXRは、第1造形ヘッド100Rの測定座標(第1校正体310の始点312)と第1造形ヘッド100Rの基準座標とのX軸方向における距離である。ΔYRは、第1造形ヘッド100Rの測定座標(第1校正体310の始点312)と第1造形ヘッド100Rの基準座標とのY軸方向における距離である。
【0045】
【数1】
【0046】
次に、制御部500は、第6制御として、Z軸回転手段440に、Z軸を中心にステージ200を回転させると共に、第2造形ヘッド100Lに、第2ノズル110Lから第2材料を供給させる。これにより、図6に示すような、第2校正体320が造形される。
【0047】
次に、制御部500は、第7制御として、カメラ700に、第2校正体320を撮像させる。
【0048】
次に、制御部500は、第8制御として、演算部530に、撮像された第2校正体320から、ステージ200の回転軸Z0を決定させる。
【0049】
次に、制御部500は、第9制御として、撮像された第2校正体320から始点322を決定する。なお、予め制御部500は、第2造形ヘッド100Lに、第2校正体320の造形線幅321の平均値よりも始点322が大きくなるように造形させている。
【0050】
次に、制御部500は、第10制御として、演算部530に、ステージ200の回転軸Z0と、第2校正体320の始点322と、に基づいて、第2造形ヘッド100Lとステージ200との位置を算出させる。
【0051】
制御部500は、演算部530に、以下の式(2)に基づいて、Y方向のずれ量を除いた第1校正体310の直径を算出し、所定の位置に対するX方向のずれ量からX方向のキャリブレーション量を決定させる。
【0052】
なお、XL0は、回転軸Z0と第2造形ヘッド100Lの基準座標とのX軸方向における距離である。XLは、回転軸Z0と第2造形ヘッド100Lの測定座標(第2校正体320の始点322)とのX軸方向における距離である。YLは、回転軸Z0と第2造形ヘッド100Lの測定座標(第2校正体320の始点322)とのY軸方向における距離である。ΔXLは、第2造形ヘッド100Lの測定座標(第2校正体320の始点322)と第2造形ヘッド100Lの基準座標とのX軸方向における距離である。ΔYLは、第2造形ヘッド100Lの測定座標(第2校正体320の始点322)と第2造形ヘッド100Lの基準座標とのY軸方向における距離である。
【0053】
【数2】
【0054】
このように、キャリブレーション量に基づいてキャリブレーションを実施することにより、ステージ200の回転軸Z0を中心として、第1造形ヘッド100RのX軸、Y軸のずれ量を補正することができる。更に、第1造形ヘッド100R及び第2造形ヘッド100Lの両方とも、ステージ200の回転軸Z0を基準としてキャリブレーションしているため、センサーなどを用いずに、ステージ200、第1造形ヘッド100R、第2造形ヘッド100Lの3つを同時にキャリブレーションすることが可能となる。そして、算出されたキャリブレーション量に基づいて、造形データを生成する。
【0055】
なお、第1制御及び第6制御は、第1造形ヘッド100Rの中心線及び第2造形ヘッド100Lの中心線と、ステージ200の回転軸Z0と、を一致させないことが好ましい。つまり、2つの造形ヘッド100R,100Lの中心とステージ200の回転軸Z0とが合っていないので、ステージ200を回転させたときに、第1校正体310及び第2校正体320を造形させることができる。よって、移動手段400を用いて、例えば、ステージ200をX軸方向に移動させることなく、第1制御及び第6制御を実行させることができる。これにより、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとの位置関係を、同時に正確に補正することができる。
【0056】
また、第1造形ヘッド100Rによる第1材料の吐出や、第2造形ヘッド100Lによる第2材料の吐出が、同時にできるようであれば、第1制御及び第6制御を同時に実行するようにしてもよい。
【0057】
なお、第2制御と第7制御を同時に実行するようにしてもよい。また、第3制御と第8制御とを同時に実行するようにしてもよい。また、第4制御と第9制御とを同時に実行するようにしてもよい。また、第5制御と第10制御とを同時に実行するようにしてもよい。
【0058】
以上述べたように、本実施形態の三次元造形装置1000は、ステージ200と、ステージ200に可塑化された第1材料を供給する第1ノズル110Rを有する第1造形ヘッド100Rと、ステージ200と第1造形ヘッド100Rとを相対的に移動させる移動手段400と、第1造形ヘッド100Rと移動手段400とを制御する制御部500と、を備え、移動手段400は、X軸移動手段410、Z軸移動手段430、及びZ軸回転手段440、を有し、Z軸回転手段440は、Z軸を中心にステージ200を回転させる。
【0059】
この構成によれば、Z軸を中心にステージ200が回転するので、ステージ200を回転させながら第1造形ヘッド100Rから第1材料を供給することにより、滑らかな曲線形状の三次元造形物300aを描画することができる。
【0060】
また、本実施形態の三次元造形装置1000は、カメラ700を備え、制御部500は、Z軸を中心にステージ200を回転させ、かつ、第1ノズル110Rから第1材料を供給することで、ステージ200の上に第1校正体310を形成する第1制御を実行し、カメラ700を用いて第1校正体310を撮像する第2制御を実行し、撮像された第1校正体310からステージ200の回転軸Z0を決定する第3制御を実行し、撮像された第1校正体310から始点312を決定する第4制御を実行し、ステージ200の回転軸Z0と、第1校正体310の始点312と、に基づいて、第1造形ヘッド100Rとステージ200との位置を算出する第5制御を実行することが好ましい。この構成によれば、第1造形ヘッド100Rとステージ200との位置を算出するので、第1造形ヘッド100Rとステージ200との相対位置を補正することができる。
【0061】
また、本実施形態の三次元造形装置1000において、制御部500は、第1制御において、第1校正体310の始点312を第1校正体310の造形線幅311の平均値に対して大きくするように、第1造形ヘッド100Rを制御することが好ましい。この構成によれば、第1校正体310の始点312の幅を大きくするので、第1校正体310の始点312を認識しやすくすることができる。
【0062】
また、本実施形態の三次元造形装置1000は、ステージ200に可塑化された第2材料を供給する第2ノズル110Lを有する第2造形ヘッド100Lを備え、制御部500は、Z軸を中心にステージ200を回転させ、かつ、第2ノズル110Lから第2材料を供給することで、ステージ200の上に第2校正体320を形成する第6制御を実行し、カメラ700を用いて第2校正体320を撮像する第7制御を実行し、撮像された第2校正体320からステージ200の回転軸Z0を決定する第8制御を実行し、撮像された第2校正体320から始点322を決定する第9制御を実行し、ステージ200の回転軸Z0と、第2校正体320の始点322と、に基づいて、第2造形ヘッド100Lとステージ200との位置を算出する第10制御を実行することが好ましい。
【0063】
この構成によれば、第2造形ヘッド100Lとステージ200との位置を算出するので、第2造形ヘッド100Lとステージ200との相対位置を補正することができる。また、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとの相対位置をキャリブレーションすることができる。
【0064】
また、本実施形態の三次元造形装置1000において、第1制御及び第6制御は、第1造形ヘッド100Rの中心線及び第2造形ヘッド100Lの中心線と、ステージ200の回転軸Z0と、を一致させないことが好ましい。この構成によれば、第1造形ヘッド100Rの中心線及び第2造形ヘッド100Lの中心線とステージ200の回転軸とを一致させない、言い換えれば、ステージ200を回転させたときに、第1校正体310及び第2校正体320を造形させることができる。よって、移動手段400を用いて、例えば、ステージ200をX軸方向に移動させることなく、第1制御及び第6制御を実行させることができる。これにより、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとの位置関係を、同時に正確に補正することができる。
【0065】
以下、上記した実施形態の変形例を説明する。
【0066】
上記したように、第1造形ヘッド100R及び第2造形ヘッド100Lを用いて、互いの校正体310,320を比較することに限定されず、一方の造形ヘッド100R,100Lを用いて、2つの校正体を造形するようにしてもよい。
【0067】
具体的には、制御部500は、第1キャリブレーション及び第2キャリブレーションを実行し、第1キャリブレーションにおける第1校正体の直径は、第2キャリブレーションにおける第1校正体の直径に比べて小さいことが好ましい。この構成によれば、第1校正体の直径を変えることで、2つのキャリブレーションにおいて第1校正体が重なることを抑えることが可能となり、第1造形ヘッド100Rとステージ200とのずれ量を正確に補正することができる。また、2つのキャリブレーションが実行できるので、例えば、一方を高精度のキャリブレーション、他方を低精度のキャリブレーションに用いることができる。
【0068】
また、制御部500は、第1キャリブレーションを実行した後に、第2キャリブレーションを実行させることが好ましい。この構成によれば、例えば、キャリブレーションの精度を変えて実行させるなど、ユーザーが選択して実行させることができる。
【0069】
また、上記したように、造形ヘッド100R,100Lとステージ200との相対位置のキャリブレーションを実施することに限定されず、例えば、三次元造形物300aの線幅W1をキャリブレーションするようにしてもよい。以下、図7及び図8を参照しながら、線幅W1のキャリブレーション方法を説明する。
【0070】
ユーザーが、線幅W1のキャリブレーションを選択すると、制御部500は、移動手段400に、第1造形ヘッド100Rと第2造形ヘッド100Lとの中点に、ステージ200の回転軸Z0が配置されるように、ステージ200を移動させる。
【0071】
次に、剥離手段としてのスクレーパ601の一端がステージ200と接触するように、スクレーパを下降させる。なお、スクレーパ601がステージ200と接触する位置とステージ200の回転軸Z0との距離は、第1造形ヘッド100Rの第1ノズル110Rの位置とステージ200の回転軸Z0との距離、及び、第2造形ヘッド100Lの第2ノズル110Lの位置とステージ200の回転軸Z0との距離、が等しくなるように配置されている。
【0072】
更に、第1造形ヘッド100Rの中心線とステージ200の回転軸Z0との距離が、スクレーパ601とステージ200とが接触する領域の最小値L3以上、最大値L4以下である。これにより、確実に三次元造形物300aをスクレーパ601で剥離することができる。
【0073】
次に、ステージ200を回転させつつ、第1造形ヘッド100R又は第2造形ヘッド100Lから材料を吐出する。造形ヘッド100R,100Lから供給された材料は、ステージ200に配置され、スクレーパ601によりステージ200から剥離された後に、ダストボックス602へ収容される。
【0074】
なお、スクレーパ601の上方には、ステージ200から剥離された三次元造形物300aの線幅W1を検出するセンサー603が備えられている。検出手段としてのセンサー603は、カメラ700により撮像された画像の色調から線幅W1を算出してもよいし、スクレーパ601の表面の凹凸を測距センサーで検出して線幅W1を算出するようにしてもよい。
【0075】
次に、得られた線幅W1に基づいて、例えば、ヒーター150の設定温度、フラットスクリュー131の回転角度、バタフライバルブの回転角、バタフライバルブの回転速度、プランジャーの押出速度、などを決定する。なお、スクレーパ601の表面で線幅W1を検出するようにしたが、ステージ200の上で線幅W1を検出するようにしてもよい。
【0076】
このように、第1ノズル110Rからステージ200に供給された第1材料の線幅W1を検出するセンサー603と、ステージ200に供給された第1材料をステージ200から剥離するスクレーパ601と、を備え、制御部500は、第1ノズル110Rから供給される第1材料の量を制御する第3キャリブレーション制御を実行し、第3キャリブレーション制御において、第1造形ヘッド100Rの中心線とステージ200の回転軸Z0との距離が、スクレーパ601とステージ200とが接触する領域の最小値L3以上最大値L4以下であることが好ましい。この構成によれば、ステージ200に供給された第1材料を、スクレーパ601を用いて剥離するので、第1ノズル110Rからステージ200上に第1材料を連続的に供給することが可能となり、第1造形ヘッド100Rからステージ200に供給される第1材料の供給量をキャリブレーションすることができる。
【0077】
また、検出手段は、撮像手段、又は、測距センサーであってもよい。この構成によれば、撮像手段、又は、測距センサーを用いるので、第1材料の線幅W1を検出することができる。
【0078】
また、上記した実施形態のように、第5制御において、第1造形ヘッド100Rのずれ量が、所定のずれ量を越えた場合には、第1ノズル110Rの取り付け不良を示唆する通知を、ユーザーに通知するようにしてもよい。これによれば、第1造形ヘッド100Rを取り付ける際に、第1造形ヘッド100Rの配線が取り付け位置に挟まることで、第1造形ヘッド100R全体が傾き、第1ノズル110Rの位置がずれてしまうことを抑えることができる。
【0079】
また、Z軸回転手段440は、三次元造形装置1000から取り外し可能に配置されていることが好ましい。この構成によれば、Z軸回転手段440が取り外し可能に配置されているので、例えば、キャリブレーションのときのみに利用することができる。
【符号の説明】
【0080】
100…造形ヘッド、100R…第1造形ヘッド、100L…第2造形ヘッド、110…ノズル、110R…第1ノズル、110L…第2ノズル、120…材料供給部、121…供給路、130…材料溶融部、131…フラットスクリュー、132…バレル、133…連通孔、134…ケース、135…溝部、136…溝形成面、137…スクリュー対向面、140…駆動モーター、150…ヒーター、200…ステージ、300…造形材料、300a…三次元造形物、310…第1校正体、311…造形線幅、312…始点、320…第2校正体、321…造形線幅、322…始点、400…移動手段、440…Z軸回転手段、441…スリップリング機構、442…モーター、500…制御部、510…記憶部、520…画像処理部、530…演算部、600…表示部、601…剥離手段としてのスクレーパ、602…ダストボックス、603…検出手段としてのセンサー、700…撮像手段としてのカメラ、1000…三次元造形装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8