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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170402
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】建設車両用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B60C11/03 300E
B60C11/03 C
B60C11/03 300C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082128
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中里 玲王
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB04
3D131BB12
3D131BC33
3D131BC40
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB31V
3D131EB31X
3D131EB32X
3D131EB42V
3D131EB42X
3D131EB43V
3D131EB43X
3D131EB44V
3D131EB44X
3D131EB46X
3D131EB47V
3D131EB48V
3D131EB48X
3D131EC13V
3D131EC13X
3D131EC14V
3D131EC14X
(57)【要約】
【課題】トレッド全体の放熱効率をさらに向上させ得る建設車両用タイヤを提供する。
【解決手段】建設車両用タイヤ10のトレッド20には、タイヤ幅方向TWに延びる幅方向細溝100と、幅方向細溝100の一端に連通しタイヤ赤道線CLを含む位置に形成されたタイヤ周方向TCに延びる中央周方向溝30と、幅方向細溝100の他端に連通し幅方向細溝100のタイヤ幅方向TW外側に形成されたタイヤ周方向TCに延びる外側周方向溝40,50と、それぞれが幅方向細溝100に連通するスロープ状の複数の切欠き溝110,210と、が形成される。タイヤ幅方向TWにおいて、複数の切欠き溝110,210の間に、タイヤ周方向TCに延びて幅方向細溝100に交差する中間周方向溝60が形成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ幅方向に延びる幅方向細溝と、
前記幅方向細溝の一端に連通し、タイヤ赤道線を含む位置に形成されタイヤ周方向に延びる中央周方向溝と、
前記幅方向細溝の他端に連通し、前記幅方向細溝のタイヤ幅方向外側に形成された前記タイヤ周方向に延びる外側周方向溝と、
それぞれが前記幅方向細溝に連通するスロープ状の複数の切欠き溝と、が形成されたトレッドを備え、
前記タイヤ幅方向において、前記複数の切欠き溝の間に、前記タイヤ周方向に延びて前記幅方向細溝に交差する中間周方向溝が形成される建設車両用タイヤ。
【請求項2】
前記中間周方向溝の前記タイヤ幅方向外側に配置された前記複数の切欠き溝に含まれる第1切欠き溝は、前記タイヤ赤道線からトレッド幅の1/4の距離を隔てた位置に形成され、
前記中間周方向溝のタイヤ幅方向内側に配置された前記複数の切欠き溝に含まれる第2切欠き溝は、前記中央周方向溝が前記幅方向細溝に連通する位置と前記中間周方向溝が前記幅方向細溝に交差する位置との中点のタイヤ幅方向位置に形成される請求項1に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項3】
前記切欠き溝は、前記タイヤ周方向に延びるとともに、前記トレッドの表面から前記幅方向細溝に向かうに連れてタイヤ径方向内側に傾斜するスロープ部を有する請求項1または2に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項4】
前記切欠き溝が、前記タイヤ周方向に沿って延びる請求項1または2に記載の建設車両用タイヤ。
【請求項5】
前記切欠き溝が、前記タイヤ周方向に沿って延びる請求項3に記載の建設車両用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスロープ状の切欠き溝が幅方向細溝に形成され、該切り欠き溝の間に中間周方向溝が形成されたトレッドを備える建設車両用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
スロープ状の切り欠き溝が形成されたトレッドを備える建設車両用タイヤが知られている(例えば、特許文献1)。該建設車両用タイヤでは、トレッドに形成されたスロープ状の切り欠き溝の作用により、例えば耐摩耗性能等への影響を抑制しつつ、トレッド全体を効率的に冷却し得るとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-130971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、上述したような建設車両用タイヤでは、車両の高速化及び高荷重への対応が強く求められている。このため、トレッドの温度上昇がさらに問題となり易い。
【0005】
本発明は、トレッド全体の放熱効率をさらに向上させ得る建設車両用タイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る建設車両用タイヤは、タイヤ幅方向に延びる幅方向細溝と、前記幅方向細溝の一端に連通し、タイヤ赤道線を含む位置に形成されタイヤ周方向に延びる中央周方向溝と、前記幅方向細溝の他端に連通し、前記幅方向細溝のタイヤ幅方向外側に形成された前記タイヤ周方向に延びる外側周方向溝と、それぞれが前記幅方向細溝に連通するスロープ状の複数の切欠き溝と、が形成されたトレッドを備える。前記タイヤ幅方向において、前記複数の切欠き溝の間に、前記タイヤ周方向に延びて前記幅方向細溝に交差する中間周方向溝が形成される。
【発明の効果】
【0007】
上記構成の建設車両用タイヤでは、トレッドに複数のスロープ状の切欠き溝が形成され、該切り欠き溝の間に中間周方向溝が設けられているため、該切欠き溝から導入される外気が幅方向細溝の溝底側を通り隣接する周方向溝(中央周方向溝、外側周方向溝、中間周方向溝)の溝底側に効率的に流入する気流を発生させ、幅方向細溝の全幅にわたって溝底付近の放熱効率を向上させることができる。これにより、トレッド全体の放熱効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、建設車両用タイヤ10の一部平面展開図である。
図2図2(a)は、幅方向細溝100及び切欠き溝110のタイヤ周方向に沿った断面図であり、図2(b)は、切欠き溝110の斜視図である。
図3図3(a)は、幅方向細溝100及び切欠き溝210のタイヤ周方向に沿った断面図であり、図3(b)は、切欠き溝210の斜視図である。
図4図4(a)は、本実施形態の構成のトレッドにおいて生じる気流の平面図であり、図4(b)は、従来の構成のトレッドにおいて生じる気流の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0010】
(1)建設車両用タイヤの概略構成
図1は、本実施形態に係る建設車両用タイヤ10の一部平面展開図である。建設車両用タイヤ10は、鉱山などの不整地を走行するダンプトラックなどに装着される空気入りタイヤである。
【0011】
建設車両用タイヤ10のサイズは、特に限定されないが、49,51,57または63インチなどが広く用いられている。建設車両用タイヤ10は、ORR(オフ・ザ・ロード・ラジアル)タイヤなどと呼ばれる場合もある。但し、必ずしもラジアルタイヤに限定されるものではない。
【0012】
図1に示すように、建設車両用タイヤ10は、路面と接するトレッド20を備える。トレッド20には、タイヤ周方向TCに延びる複数の周方向溝30,40,50,60が形成されている。また、トレッド20には、タイヤ幅方向TWに延びる複数の幅方向細溝100が形成されている。
【0013】
建設車両用タイヤ10は、タイヤ赤道線CLを基準として、概ね対称の形状を有している。但し、幅方向細溝100の位置は、タイヤ赤道線CLを基準とした一方側と他方側とで、多少タイヤ周方向TCにおいてオフセットしている。
【0014】
周方向溝30は、幅方向細溝100の一端に連通する。周方向溝30は、タイヤ赤道線CLを含む位置に形成される。本実施形態において、周方向溝30が中央周方向溝を構成する。
【0015】
周方向溝40は、幅方向細溝100の他端に連通する。周方向溝40は、幅方向細溝100のタイヤ幅方向TW外側に形成される。
【0016】
周方向溝50は、タイヤ赤道線CLを基準とした周方向溝40の逆側に形成され、周方向溝40と同様の形状を有する。本実施形態において、周方向溝40,50が外側周方向溝を構成する。
【0017】
本実施形態では、周方向溝30,40,50の溝幅が10mm程度、溝深さが100mm程度(63インチの場合)である。なお、溝幅及び溝深さは、タイヤサイズまたはスペックに応じて適宜変更可能であり、建設車両用タイヤで用いられる49インチ~63インチのタイヤの場合、概ね溝幅は3~10mm、溝深さは40~100mmである。
【0018】
また、概ね対称の形状を有する周方向溝40,50の溝深さは同じ溝幅、溝深さに形成されるが、周方向溝30と、周方向溝40,50の溝幅、溝深さは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0019】
建設車両用タイヤ10は、タイヤ赤道線CLを基準として概ね対称の形状を有するため、以下、タイヤ赤道線CLを基準とした周方向溝40側の構成について説明する。
【0020】
トレッド20には、第1ショルダーラグ溝80が形成される。第1ショルダーラグ溝80は、幅方向細溝100のタイヤ幅方向TW外側に形成され、周方向溝40を介して幅方向細溝100に連通する。第1ショルダーラグ溝80は、タイヤ幅方向TWに延びる。
【0021】
トレッド20には、第2ショルダーラグ溝90が形成される。第2ショルダーラグ溝90は、幅方向細溝100のタイヤ幅方向TW外側に形成され、周方向溝40に開口し、タイヤ幅方向TW外側に延びている。そして、タイヤ幅方向TW外側の二箇所で屈曲するクランク状に形成される。第2ショルダーラグ溝90は、周方向溝40とトレッド端TEとの間に配置されたショルダー陸部内で終端している。
【0022】
幅方向細溝100は、タイヤ幅方向TWに延びる細溝である。細溝とは、少なくとも溝幅が溝深さよりも小さい溝である。本実施形態において、幅方向細溝100が幅方向細溝を構成する。
【0023】
幅方向細溝100は、図1に示すように、一端(タイヤ赤道線CL側の端部)が周方向溝30に連通し、他端(タイヤ幅方向外側の端部)が周方向溝40に連通している。幅方向細溝100は、前記一端からタイヤ幅方向TW外側かつタイヤ周方向TCの一方の側に延びてタイヤ周方向TCの一方の側(図1の上側)に凸状に湾曲する湾曲溝部150と、湾曲溝部150に連続してタイヤ幅方向TW外側へ直線状にタイヤ幅方向TWに沿って延びる直線状溝部170と、を有している。
【0024】
本実施形態では、幅方向細溝100の溝幅が10mm程度、溝深さが100mm程度(63インチの場合)である。なお、溝幅及び溝深さは、タイヤサイズまたはスペックに応じて適宜変更可能であり、建設車両用タイヤで用いられる49インチ~63インチのタイヤの場合、概ね溝幅は3~10mm、溝深さは40~100mmである。
【0025】
また、トレッド20には、幅方向細溝100に連通する複数の切欠き溝110,210が形成される。そして、タイヤ幅方向TWにおいて、複数の切欠き溝110,210の間には、タイヤ周方向TCに延びて幅方向細溝100に交差する周方向溝60が配置されている。
【0026】
また、図1に示すように、複数の切欠き溝110,210のうち、幅方向細溝100の直線状溝部170に連通する切欠き溝110は、トレッド面視において長方形状である。そして、幅方向細溝100の湾曲溝部150に連通する切欠き溝210がトレッド面視において平行四辺形状である。
【0027】
図2(a),2(b)に示すように、切欠き溝110は、幅方向細溝100に連通するスロープ状である。本実施形態において、切欠き溝110が第1切欠き溝を構成する。
【0028】
切欠き溝110は、タイヤ赤道線CLからトレッド20の幅(以下、トレッド幅)の1/4の距離を隔てた位置に形成される。なお、トレッド20の幅とは、正規リムホイールに組み付けられ、車両指定の標準内圧に設定された建設車両用タイヤ10に、正規荷重が付加された場合におけるトレッド20の接地幅である。
【0029】
タイヤ幅方向TWにおける切欠き溝110の幅w1は、トレッド幅の2%以上4%以下であってよい。2%以上とすることによって、トレッド20の温度上昇の抑制効果を十分に得ることができ、4%以下とすることによって、トレッド20の剛性低下を抑制することができる。
【0030】
ここで、切欠き溝110が形成される「タイヤ赤道線CLからトレッド幅の1/4の距離を隔てた位置」とは、切欠き溝110のタイヤ幅方向TWにおける中央位置が、タイヤ赤道線CLからトレッド幅の1/4の距離を隔てた位置を基準にして切欠き溝110一つずつ分程度(つまり、切欠き溝110の幅w1に応じてトレッド幅の±2%~±4%程度)の範囲に配置されることを意味する。
【0031】
例えば、63インチの建設車両用タイヤ10に幅が50mm程度の切欠き溝110が形成されている場合、「タイヤ赤道線CLからトレッド幅の1/4の距離を隔てた位置」は、タイヤ赤道線CLから400mm程度隔てた位置を基準にして±50mm程度の範囲に、切欠き溝110のタイヤ幅方向TWにおける中央位置が配置されるように切欠き溝110が形成される。
【0032】
図1に示されるように、周方向溝60は、切欠き溝110のタイヤ幅方向TW内側(タイヤ赤道線CL側)に配置される。周方向溝60は、タイヤ周方向TCに延びて幅方向細溝100に交差する。なお、周方向溝60は、タイヤ赤道線CLに対して、トレッド幅の1/10の距離を隔てた位置よりもタイヤ幅方向TW外側に配置されてよい。本実施形態において、周方向溝60が中間周方向溝を構成する。
【0033】
本実施形態では、周方向溝60の溝幅が10mm程度、溝深さが100mm程度(63インチの場合)である。なお、溝幅及び溝深さは、タイヤサイズまたはスペックに応じて適宜変更可能であり、建設車両用タイヤで用いられる49インチ~63インチのタイヤの場合、概ね溝幅は3~10mm、溝深さは40~100mmである。
【0034】
図3(a),3(b)に示すように、切欠き溝210は、周方向溝60のタイヤ幅方向TW内側(タイヤ赤道線CL側)に配置され、幅方向細溝100に連通するスロープ状である。本実施形態では、切欠き溝210が第2切欠き溝を構成する。
【0035】
周方向溝60のタイヤ幅方向TW内側に配置された切欠き溝210は、周方向溝30が幅方向細溝100に連通する位置と周方向溝60が幅方向細溝100に交差する位置との中点のタイヤ幅方向位置に形成される。
【0036】
タイヤ幅方向TWにおける切欠き溝210の幅w2は、トレッド幅の2%以上4%以下であってよい。2%以上とすることによって、トレッド20の温度上昇の抑制効果を十分に得ることができ、4%以下とすることによって、トレッド20の剛性低下を抑制することができる。
【0037】
ここで、切欠き溝210が幅方向細溝100に交差する「周方向溝30が幅方向細溝100に連通する位置と周方向溝60が幅方向細溝100に連通する位置との中点のタイヤ幅方向位置」とは、切欠き溝210のタイヤ幅方向TWにおける中央位置が、タイヤ赤道線CLを含む位置に形成された周方向溝30が幅方向細溝100に連通する位置と周方向溝60が幅方向細溝100に連通する位置との中点のタイヤ幅方向位置を基準にして切欠き溝210の1/2の幅ずつ分程度(つまり、切欠き溝210の幅w2に応じてトレッド幅の±1%~±2%程度)の範囲に配置されることを意味する。
【0038】
例えば、63インチの建設車両用タイヤ10に幅が50mm程度の切欠き溝210が形成されており、周方向溝60がタイヤ赤道線CLから200mm程度隔てた位置に配置されている場合、「周方向溝30が幅方向細溝100に連通する位置と周方向溝60が幅方向細溝100に交差する位置との中点のタイヤ幅方向位置」は、タイヤ赤道線CLから100mm程度隔てた位置を基準にして±25mm程度の範囲に、切欠き溝210のタイヤ幅方向における中央位置が配置されるように切欠き溝210が形成される。
【0039】
(2)切欠き溝の形状
図2(a)は、幅方向細溝100及び切欠き溝110のタイヤ周方向に沿った断面図である。図2(b)は、切欠き溝110の斜視図である。
【0040】
図2(a),2(b)に示すように、切欠き溝110は、幅方向細溝100に連通する。具体的は、切欠き溝110は、スロープ部120を有し、スロープ部120は、幅方向細溝100に連通する。
【0041】
スロープ部120は、タイヤ周方向に沿って延びるとともに、トレッド20の表面から幅方向細溝100に向かうに連れてタイヤ径方向内側に傾斜する。
【0042】
上述したように、本実施形態において、タイヤ幅方向におけるスロープ部120の幅w1、つまり、切欠き溝110の幅w1は、50mm程度である。また、スロープ部120のトレッド20の表面に対する傾斜角度θは、20度程度である。
【0043】
切欠き溝110は、スロープ部120を有するため、建設車両用タイヤ10が転動すると、スロープ部120を伝って幅方向細溝100に空気が流入する。具体的には、空気は、スロープ部120を伝って幅方向細溝100の溝壁130に衝突し、幅方向細溝100内に広がる。
【0044】
図3(a)は、幅方向細溝100及び切欠き溝210のタイヤ周方向に沿った断面図であり、図3(b)は、切欠き溝210の斜視図である。切欠き溝210は、スロープ部220を有し、スロープ部220が幅方向細溝100に連通する。
【0045】
スロープ部220は、タイヤ周方向に沿って延びてトレッド面視で平行四辺形状になっており、トレッド20の表面から幅方向細溝100に向かうに連れてタイヤ径方向TR内側に傾斜する。
【0046】
タイヤ幅方向TWにおけるスロープ部220の幅w2、つまり、切欠き溝210のタイヤ幅方向における幅w2は、50mm程度である。また、スロープ部220の傾斜角度θは、20度程度である。
【0047】
切欠き溝110と同様に、建設車両用タイヤ10が転動すると、スロープ部220を伝って幅方向細溝100に空気が流入する。具体的には、空気は、スロープ部220を伝って幅方向細溝100の溝壁230に衝突し、幅方向細溝100内に広がる。
【0048】
(3)作用・効果
図4(a)は、本実施形態の構成のトレッド20において生じる気流の平面図であり、図4(b)は、従来の構成のトレッドにおいて生じる気流の平面図である。
【0049】
図4(b)に示すように、従来の構成のトレッドにおける幅方向細溝1100では、切欠き溝1110,1210を形成することによって、タイヤがタイヤ転動方向TRDに回転する際に幅方向細溝1100内を空気がスムーズに流れるようにしつつ、幅方向細溝1100内に取り込む空気の量を多くできるため、効率的に幅方向細溝1100近傍のトレッドの部分が冷却される。ただし、従来の構成のトレッドでは、切欠き溝1110,1210から幅方向細溝1100内に流入した空気が主に周方向溝1030及び周方向溝1040に誘導されていくため、切欠き溝1110と周方向溝1040との間、あるいは切欠き溝1210と周方向溝1030との間の幅方向細溝1100の放熱効率に対して、切欠き溝1110と切欠き溝1210との間の放熱効率が相対的に低くなっていた。言い換えると、従来の構成のトレッドでは、タイヤ幅方向にわたって均等に冷却されなかったため、放熱効率をさらに向上させる余地があった。
【0050】
本実施形態では、切欠き溝110,210から幅方向細溝100内に流入した空気は、周方向溝30及び周方向溝40に誘導されていくため、幅方向細溝100近傍のトレッド20の部分が均等に冷却される。
【0051】
本実施形態では、さらに、第1切欠き溝110と第2切り欠き溝210の間に周方向溝60が形成されているため、切欠き溝110,210から幅方向細溝100内に流入した空気が周方向溝60にも誘導されることで、第1切欠き溝110と第2切り欠き溝210の間のタイヤ幅方向位置でも幅方向細溝100を効果的に冷却することができる。このため、幅方向細溝100の全幅に亘って効率的にトレッド20を冷却できる。
【0052】
つまり、本実施形態の幅方向細溝100の場合、2つの切欠き溝を形成して流入する空気の量を増やしつつ、切欠き溝110,210を形成する位置を最適化し、さらに周方向溝60の作用によって幅方向細溝100の全幅に亘って効果的にトレッド20を冷却することができる。
【0053】
なお、当該切欠き溝が上述した位置からずれて形成されると、空気のスムーズな流れが妨げられ、タイヤ幅方向におけるトレッド20を満遍なく冷却することが難しくなる。
【0054】
また、このような幅方向細溝100の形状によれば、多数の切欠き溝を形成する必要がないため、耐摩耗性能などの他の性能への影響を抑制することができる。
【0055】
すなわち、建設車両用タイヤ10によれば、他の性能への影響を抑制しつつ、トレッド20全体を効率的に冷却し得る。特に、建設車両用タイヤ10では、幅方向細溝100において、当該溝形状に応じてそれぞれ最適化された位置に切欠き溝110,210が形成され、切欠き溝110,210の間に周方向溝60が形成されるため、トレッド20全体をさらに効率的に冷却し得る。
【0056】
なお、トレッド20の温度上昇の対策としては、耐熱性の高いゴムを用いることが容易である。一般的に、耐熱性の高いゴムは、耐摩耗性に劣るが、建設車両用タイヤ10によれば、構造的な特徴によってトレッド20の温度上昇を抑制することができるため、耐摩耗性に優れたゴムを用いることが可能となり、結果的に、耐摩耗性能も向上し得る。
【0057】
本実施形態では、切欠き溝110,210は、スロープ部120,220を有する。スロープ部120,220は、当該幅方向細溝に向かうに連れてタイヤ径方向内側に傾斜しているため、当該幅方向細溝内へのスムーズな空気の流入を促進し得る。これにより、トレッド20全体をさらに効率的に冷却し得る。
【0058】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0059】
10 建設車両用タイヤ
20 トレッド
30,40,50,60 周方向溝
80 第1ショルダーラグ溝
90 第2ショルダーラグ溝
100 幅方向細溝
110 第1切欠き溝(切欠き溝)
120 スロープ部
130 溝壁
210 第2切欠き溝(切欠き溝)
220 スロープ部
230 溝壁
図1
図2
図3
図4