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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170405
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】グロメット、及び、ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/22 20060101AFI20231124BHJP
   H01B 17/58 20060101ALI20231124BHJP
   F16L 5/02 20060101ALI20231124BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H02G3/22
H01B17/58 C
F16L5/02 A
B60R16/02 622
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082133
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 ▲祐▼大
(72)【発明者】
【氏名】小川 真由
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和也
【テーマコード(参考)】
5G333
5G363
【Fターム(参考)】
5G333AA11
5G333AB16
5G333CC04
5G333DA03
5G333EA02
5G333EB08
5G363AA16
5G363BA02
5G363CA06
5G363CB08
(57)【要約】
【課題】取付パネルの貫通孔への取付性の向上を図るグロメット、及び、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【解決手段】グロメット1は、軸線方向Xの一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に軸線方向Xに沿って配索材Wを挿通可能である本体部10と、本体部10の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象である第1取付パネル100の第1貫通孔101の周縁部に係止可能である第1係止部14と、本体部10の外周部で第1係止部14より軸線方向Xの他方側にずれると共に軸線方X向に直交する径方向Y,Zの外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて取付対象である第2取付パネル200の第2貫通孔201の周縁部に係止可能である第2係止部15とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向の一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に前記軸線方向に沿って配索材を挿通可能である本体部と、
前記本体部の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象の貫通孔の周縁部に係止可能である第1係止部と、
前記本体部の外周部で前記第1係止部より前記軸線方向の他方側にずれると共に前記軸線方向に直交する径方向の外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能である第2係止部と、
を備えるグロメット。
【請求項2】
筒状をなして前記本体部における前記軸線方向の一方側に設けられると共に内部に前記軸線方向に沿って前記配索材を挿通可能である筒状部を備え、
前記本体部は、前記筒状部と前記第1係止部との間に設けられる第1傾斜面と、前記第1係止部と前記第2係止部との間に設けられる第2傾斜面とを有する、
請求項1に記載のグロメット。
【請求項3】
前記第1係止部及び前記第2係止部は、前記貫通孔の周縁部が嵌合する溝部を有し、前記溝部における前記軸線方向の一方側の小径土手部の外径より、前記溝部における前記軸線方向の他方側の大径土手部の外径が大きい、
請求項1または請求項2に記載のグロメット。
【請求項4】
前記大径土手部は、前記取付対象における前記軸線方向の他方側の面を押圧するリップ部を有する、
請求項3に記載のグロメット。
【請求項5】
前記第1係止部と前記第2係止部は、前記径方向に間隔を空けて設けられることで、前記第1係止部と前記第2係止部が前記軸線方向から見て重ならないように配置される、
請求項1に記載のグロメット。
【請求項6】
グロメットと、
導電性を有して前記グロメットの内部に配置される配索材と、
を備え、
前記グロメットは、
軸線方向の一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に前記軸線方向に沿って配索材を挿通可能である本体部と、
前記本体部の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象の貫通孔の周縁部に係止可能である第1係止部と、
前記本体部の外周部で前記第1係止部より前記軸線方向の他方側にずれると共に前記軸線方向に直交する径方向の外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能である第2係止部と、
を備えるワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グロメット、及び、ワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
グロメットは、取付対象である取付パネルに形成された貫通孔に装着される。グロメットは、内部に配索材が配置されることで、取付パネルの一方側の空間に配置された機器と、取付パネルの他方側の空間に配置された機器とを配索材により接続する。従来のグロメットは、筒形状をなす本体部と、本体部の外周部に設けられる係止部とを備える。従来のグロメットは、係止部が取付パネルの貫通孔に係止され、本体部の内部に配索材が配置される。従来のグロメットとしては、例えば、特許文献1に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭59-047181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のグロメットは、取付パネルの貫通孔に係止する係止部が、本体部の外周部に複数設けられる。そのため、取付パネルに形成された異なる内径の貫通孔に対して使用することができる。ところで、上述した特許文献1に記載のグロメットは、複数の係止部における径方向の位置が軸方向から見て重なっている。すると、グロメットを取付パネルの貫通孔に装着するとき、手前側の係止部が貫通孔の周縁部に接触してしまい、奥側の係止部を貫通孔の周縁部に係止することが困難となるおそれがある。そのため、従来のグロメットは、取付パネルの貫通孔への取付性に改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、取付パネルの貫通孔への取付性の向上を図るグロメット、及び、ワイヤハーネスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るグロメットは、軸線方向の一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に前記軸線方向に沿って配索材を挿通可能である本体部と、前記本体部の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象の貫通孔の周縁部に係止可能である第1係止部と、前記本体部の外周部で前記第1係止部より前記軸線方向の他方側にずれると共に前記軸線方向に直交する径方向の外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能である第2係止部と、を備える。
【0007】
また、本発明に係るワイヤハーネスは、グロメットと、導電性を有して前記グロメットの内部に配置される配索材と、を備え、前記グロメットは、軸線方向の一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に前記軸線方向に沿って配索材を挿通可能である本体部と、前記本体部の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象の貫通孔の周縁部に係止可能である第1係止部と、前記本体部の外周部で前記第1係止部より前記軸線方向の他方側にずれると共に前記軸線方向に直交する径方向の外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて前記貫通孔の周縁部に係止可能である第2係止部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るグロメット、及び、ワイヤハーネスは、本体部の外径が軸線方向の一方側に向けて漸減し、本体部の外周部に貫通孔の周縁部に係止可能である第1係止部及び第2係止部が設けられる。そして、第1係止部と第2係止部とは、軸線方向にずれると共に径方向にずれた位置に設けられる。そのため、グロメットを大径の貫通孔に装着するとき、手前側の第1係止部が貫通孔の周縁部に接触するおそれがなく、奥側の第2係止部を貫通孔の周縁部に容易に係止することができる。その結果、取付パネルの貫通孔へのグロメットの取付性の向上を図ることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るグロメットが適用されるワイヤハーネスの概略構成を表す斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るグロメットを表す縦断面図である。
図3図3は、実施形態に係るグロメットの第1係止部を表す断面図である。
図4図4は、実施形態に係るグロメットの第1係止部が貫通孔に係止した状態を表す断面図である。
図5図5は、実施形態に係るグロメットが第1取付パネルの第1貫通孔に装着された状態を表す断面図である。
図6図6は、実施形態に係るグロメットが第2取付パネルの第2貫通孔に装着された状態を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1は、実施形態に係るグロメットが適用されるワイヤハーネスの概略構成を表す斜視図、図2は、実施形態に係るグロメットを表す縦断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態のグロメット1は、車両等に配索されるワイヤハーネスWHに組み込まれるものである。ここで、ワイヤハーネスWHは、例えば、車両に搭載される各機器間の接続のために、複数の配索材Wを束にして集合部品とし、複数の配索材Wを各機器に接続するようにしたものである。ワイヤハーネスWHは、導電性を有する配索材Wと、配索材Wが挿通されるグロメット1とを備える。ワイヤハーネスWHは、この他、さらに、コルゲートチューブ、樹脂テープ、プロテクタ等の外装部材、電気接続箱、固定具など種々の構成部品を含んで構成されてもよい。配索材Wは、例えば、金属棒、電線、電線束等によって構成される。金属棒は、導電性を有する棒状部材の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線は、複数の導電性を有する金属素線からなる導体部(芯線)の外側を、絶縁性を有する被覆部によって覆ったものである。電線束は、当該電線を束ねたものである。ワイヤハーネスWHは、複数の配索材Wを束ねて集約すると共に、束ねられた配索材Wの端末に設けられたコネクタ等を介して各種機器が電気的に接続される。
【0013】
そして、グロメット1は、取付対象である第1取付パネル100に形成された第1貫通孔101、または、取付対象である第2取付パネル200に形成された第2貫通孔201に装着される。すなわち、グロメット1は、第1取付パネル100、または、第2取付パネルを境界にして区画される2つの空間に渡って配索材Wを配索する際に適用されるものである。第1取付パネル100と第2取付パネル200は、例えば、車両のボデー等を構成する金属板である。第1貫通孔101と第2貫通孔は、第1取付パネル100と第2取付パネル200をそれぞれ板厚方向に沿って貫通する。第1貫通孔101と第2貫通孔201は、内径が相違する。第1貫通孔101の内径に対して、第2貫通孔201の内径が大きい。
【0014】
第1取付パネル100と第2取付パネル200を境界にして区画される2つの空間とは、典型的には、車内空間(例えば、キャビン)と車外空間(例えば、エンジンコンパートメント)である。そして、グロメット1は、ワイヤハーネスWHの配索材Wが挿通され、配索材Wの周囲に外装された状態で第1貫通孔101に組み付けられることで、第1貫通孔101、または、第2貫通孔201を通る配索材Wを保護すると共に、第1貫通孔101、または、第2貫通孔201を止水(防水)するものである。グロメット1は、第1貫通孔101、または、第2貫通孔201の防水の他、防塵、遮音等の機能も有する。そして、本実施形態のグロメット1は、内径が小さい第1貫通孔101を有する第1取付パネル100と、内径が大きい第2貫通孔201を有する第2取付パネル200との両方に対して適用することができるような汎用性を持たせた構造となっている。
【0015】
なお、図1図5図6は、配索材Wを二点鎖線で省略して図示している。また、図1は、第1取付パネル100と第2取付パネル200を二点鎖線で省略して図示している。そして、以下の説明では、互いに交差する第1方向と第2方向と第3方向のうち、第1方向を「軸線方向X」といい、第2方向を「第1径方向Y」といい、第3方向を「第2径方向Z」という。軸線方向Xと第1径方向Yと第2径方向Zとは、典型的には、相互に直交する。ここで、軸線方向Xは、上述した第1取付パネル100と第2取付パネル200の板厚方向に相当し、第1貫通孔101と第2貫通孔201に対する配索材W、グロメット1の挿通方向に相当する。言い換えれば、軸線方向Xは、グロメット1に挿通された配索材Wの延在方向に沿う方向である。第1径方向Yと第2径方向Zは、第1貫通孔101と第2貫通孔201の延在方向に相当する。ここで、第1取付パネル100および第2取付パネル200は、鉛直方向に配置されているため、軸線方向Xと第1径方向Yと第2径方向Zは、第1水平方向と第2水平方向と鉛直方向として説明する。但し、第1取付パネル100および第2取付パネル200が水平方向に配置されているとき、軸線方向Xと第1径方向Yと第2径方向Zは、鉛直方向と第1水平方向と第2水平方向である。
【0016】
そして、説明をわかり易くするため便宜的に、配索材Wが軸線方向Xに沿って直線状に配索されるものとして説明するが、これに限らず、グロメット1が第1取付パネル100または第2取付パネル200に装着された状態で、軸線方向Xが屈曲した方向とされ、グロメット1、配索材Wが一部で屈曲されて設けられるものであってもよい。また、以下の説明で用いる各方向は、特に断りのない限り、グロメット1が第1取付パネル100または第2取付パネル200に装着された状態での方向として説明する。
【0017】
本実施形態のグロメット1は、図1及び図2に示すように、内部に配索材Wが軸線方向Xに沿って挿通され、第1取付パネル100の第1貫通孔101または第2取付パネル200の第2貫通孔201との間を止水可能なシール部材である。グロメット1は、本体部10と、筒状部20とを備え、本体部10と筒状部20が一体となって弾性体として形成される。グロメット1は、例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー等、剛性が低く高い可撓性を有する絶縁性の弾性樹脂材料(例えば、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等)により形成される。
【0018】
本体部10は、第1貫通孔101または第2貫通孔201に嵌合し、第1貫通孔101または第2貫通孔201を止水すると共に内部に軸線方向Xに沿って配索材Wが挿通される部分である。ここで、本体部10は、配索材Wとして、配索材Wを挿通可能な部分として形成される。本体部10は、第1隔壁部11と、第2隔壁部12と、基部13と、第1係止部14と、第2係止部15とを含んで構成される。本体部10は、軸線方向Xの他方側(図2の左方側)から軸線方向Xの一方側(図2の右方側)に向けて外径が漸減する。本体部10は、軸線方向Xに沿って、第1隔壁部11、第1係止部14、第2隔壁部12、第2係止部15、基部13の順に配置される。本体部10は、基部13と第1係止部14と第2係止部15を除く第1隔壁部11および第2隔壁部12は、外径が漸減するように、外周面が段差なく滑らかに傾斜するテーパ形状をなす。
【0019】
第1隔壁部11は、軸線方向Xに沿った中心軸線Cを中心とした円環形状に形成される。具体的に、第1隔壁部11は、外周面が円錐台形状をなす筒部材である。そして、第1隔壁部11は、軸線方向Xの一方側に向けて外径が漸減することで、外周側に軸線方向Xに対して所定の角度をもった第1傾斜面11aが設けられる。第2隔壁部12は、軸線方向Xに沿った中心軸線Cを中心とした円環形状に形成される。具体的に、第2隔壁部12は、外周面が円錐台形状をなす筒部材である。そして、第2隔壁部12は、軸線方向Xの一方側に向けて外径が漸減することで、外周側に軸線方向Xに対して所定の角度をもった第2傾斜面12aが設けられる。基部13は、軸線方向Xに沿った中心軸線Cを中心とした円環形状に形成される。具体的に、基部13は、円筒形状である。そして、基部13は、軸線方向Xに沿って外径が一定をなすことで、外周側に軸線方向Xに対して平行な平坦面13aが設けられる。
【0020】
第1隔壁部11と第2隔壁部12と基部13とは、軸線方向Xに沿って配列され、内周部側で一体化される。すなわち、第1隔壁部11は、内周側に軸線方向Xに対して所定の角度をもった傾斜面11bが設けられる。第2隔壁部12は、内周側に軸線方向Xに対して平行な平坦面12bが設けられる。基部13は、内周側に軸線方向Xに対して平行な平坦面13bが設けられる。第1隔壁部11と第2隔壁部12と基部13は、傾斜面11bと平坦面12bと平坦面13bが連続する。なお、第1隔壁部11と第2隔壁部12と基部13は、内周面の形状が上述した形状に限定されるものではなく、傾斜面や平坦面などを組み合わせた形状であってもよい。
【0021】
本体部10は、基部13から軸線方向Xの一方側に向かって膨出した形状に形成される。第1隔壁部11と第2隔壁部12と基部13とは、一体化された状態で、全体として内部が中空のドーム形状である。本体部10は、軸線方向Xの他方側に配置された基部13側が開口する。本体部10は、軸線方向Xの一方側に配置された第1隔壁部11側に筒状部20が一体に接続される。
【0022】
第1係止部14と第2係止部15とは、本体部10の外周側に配置される。第1係止部14と第2係止部15とは、軸線方向Xにずれて位置すると共に、第1径方向Y及び第2径方向Zにずれて位置する。すなわち、第1係止部14と第2係止部15とは、軸線方向Xに間隔を空けて配置されると共に、第1径方向Y及び第2径方向Zに間隔を空けて配置される。つまり、第1係止部14は、軸線方向Xの一方側である筒状部20側に位置し、第2係止部15は、軸線方向Xの他方側である基部13側に位置する。また、第1係止部14は、第1径方向Y及び第2径方向Zの内方側である中心軸線C側に位置し、第2係止部15は、第1径方向Y及び第2径方向Zの外方側に位置する。本体部10は、筒状部20と第1係止部14との間に第1傾斜面11aが設けられ、第1係止部14と第2係止部15との間に第2傾斜面12aが設けられる。
【0023】
第1係止部14は、第1取付パネル100の第1貫通孔101の周縁部に係止可能である。第2係止部15は、第2取付パネル200の第2貫通孔201の周縁部に係止可能である。第1取付パネル100と第2取付パネル200の厚さや第1貫通孔101と第2貫通孔201の形状がほぼ同様であることから、第1係止部14と第2係止部15とは、ほぼ同形状である。但し、第1取付パネル100と第2取付パネル200の厚さなどが相違すれば、第1係止部14と第2係止部15とを異なる形状としてもよい。
【0024】
第1係止部14は、第1溝部14aを有し、第2係止部15は、第2溝部15aを有する。第1溝部14aは、本体部10の外周部に周方向に沿って連続するように全周にわたって設けられる。第2溝部15aは、本体部10の外周部に周方向に沿って連続するように全周にわたって設けられる。第1溝部14a及び第2溝部15aは、本体部10の外周部に中心軸線Cを中心とした円環状の溝である。第1溝部14aは、本体部10が第1貫通孔101に装着された状態で、第1取付パネル100における第1貫通孔101の周縁部に嵌合する。第2溝部15aは、本体部10が第2貫通孔201に装着された状態で、第2取付パネル200における第2貫通孔201の周縁部に嵌合する。
【0025】
第1係止部14は、第1リップ部14bを有し、第2係止部15は、第2リップ部15bを有する。第1リップ部14bは、本体部10の外周部に周方向に沿って連続するように全周にわたって設けられる。第1リップ部14bは、第1溝部14aに隣接するように、第1溝部14aより軸線方向Xの他方側に設けられる。第2リップ部15bは、本体部10の外周部に周方向に沿って連続するように全周にわたって設けられる。第2リップ部15bは、第2溝部15aに隣接するように、第2溝部15aより軸線方向Xの他方側に設けられる。第1リップ部14b及び第2リップ部15bは、本体部10の外周部に中心軸線Cを中心とした円環壁状の止水部である。第1リップ部14bは、本体部10が第1貫通孔101に装着された状態で、第1取付パネル100における軸線方向Xの他方側の面に接触して押圧することで止水する。第2リップ部15bは、本体部10が第2貫通孔201に装着された状態で、第2取付パネル200における軸線方向Xの他方側の面に接触して押圧することで止水する。第1リップ部14b及び第2リップ部15bは、弾性変形することにより、第1貫通孔101及び第2貫通孔201を形成する周縁部の表面に密着し、第1貫通孔101及び第2貫通孔201の全周縁をシールするよう構成される。
【0026】
上述したように、第1係止部14と第2係止部15とは、軸線方向Xに間隔を空けて配置されると共に、第1径方向Y及び第2径方向Zに間隔を空けて配置される。すなわち、第1係止部14の第1リップ部14bの最大半径R1は、第2係止部15の第2溝部15aの最小半径R2より小さい。そのため、第1係止部14と第2係止部15は、本体部10を軸線方向Xの一方側から他方側を見たとき、第1係止部14の第1リップ部14bが第2係止部15の第2溝部15a重ならないように配置される。
【0027】
ここで、第1係止部14について詳細に説明する。なお、第2係止部15は、第1係止部14とほぼ同様の構成であることから、説明は省略する。図3は、実施形態に係るグロメットの第1係止部を表す断面図、図4は、実施形態に係るグロメットの第1係止部が貫通孔に係止した状態を表す断面図である。
【0028】
図3に示すように、第1係止部14は、本体部10の外周部に第1溝部14aを有する。第1係止部14は、第1溝部14aにおける軸線方向Xにおける一方側に小径土手部14cが設けられ、第1溝部14aにおける軸線方向Xにおける他方側に大径土手部14dが設けられる。小径土手部14cは、第1傾斜面11aから第1溝部14aに向けて湾曲面を有する。大径土手部14dは、第2傾斜面12aから軸線方向Xの一方側と第1径方向Y及び第2径方向Zの外方に突出して第1溝部14aに続く膨出形状をなす。そして、大径土手部14dに第1リップ部14bが設けられる。ここで、第1係止部14は、小径土手部14cの半径R11より、大径土手部14dの半径R12が大きい。
【0029】
図4に示すように、グロメット1は、第1係止部14により第1取付パネル100の第1貫通孔101に装着される。このとき、グロメット1は、第1係止部14の第1溝部14aが第1貫通孔101の周縁部に嵌合する。そして、グロメット1は、第1リップ部14bが第1取付パネル100に押し潰されるように弾性変形する。すると、グロメット1は、弾性変形した第1リップ部14bが復帰しようとする弾性力をもって第1取付パネル100における軸線方向Xの他方側の面を押圧する。そのため、グロメット1は、第1係止部14により第1取付パネル100の第1貫通孔101にがた付きがなく係止される。
【0030】
図1及び図2に示すように、筒状部20は、本体部10と一体で筒状に形成され、内部に軸線方向Xに沿って配索材Wが挿通される部分である。筒状部20は、第1隔壁部11から軸線方向Xに沿って一方側に突出するように形成される。筒状部20は、軸線方向Xに沿った中心軸線Cを中心とした円筒状に形成され、軸線方向Xに沿って延在する。筒状部20は、第1隔壁部11より小径の円筒状に形成される。筒状部20は、軸線方向Xの一方側の端部が開口し、他方側の端部が第1隔壁部11に接続される。
【0031】
このように構成されるグロメット1は、本体部10と筒状部20の内部空間部が挿通空間部30として機能する。挿通空間部30は、配索材Wが挿通される空間部であり、本体部10及び筒状部20に渡って連続する。
【0032】
図5は、実施形態に係るグロメットが第1取付パネルの第1貫通孔に装着された状態を表す断面図である。
【0033】
第1取付パネル100は、小径の第1貫通孔101が設けられ、グロメット1は、第1係止部14を用いて第1取付パネル100の第1貫通孔101に装着される。まず、第1取付パネル100の左側にグロメット1を配置し、グロメット1の筒状部20側を第1取付パネル100の第1貫通孔101に挿入する。すると、グロメット1は、筒状部20に続いて本体部10が第1貫通孔101に挿入されると、第1貫通孔101の周縁部に第1係止部14が係止することで、第1取付パネル100に装着される。すなわち、図4に示すように、グロメット1は、第1係止部14の第1溝部14aが第1貫通孔101の周縁部に嵌合し、このときに弾性変形した第1リップ部14bが第1取付パネル100の面を押圧することで、第1取付パネル100に強固に装着される。
【0034】
図6は、実施形態に係るグロメットが第2取付パネルの第2貫通孔に装着された状態を表す断面図である。
【0035】
第2取付パネル200は、大径の第2貫通孔201が設けられ、グロメット1は、第2係止部15を用いて第2取付パネル200の第2貫通孔201に装着される。まず、第2取付パネル200の左側にグロメット1を配置し、グロメット1の筒状部20側を第2取付パネル200の第2貫通孔201に挿入する。このとき、第1係止部14の外径より第2係止部15の外径、つまり、第2貫通孔201の内径が大きいことから、第1係止部14が第2貫通孔201の周縁部に接触することがなく、第2貫通孔201にグロメット1をスムースに挿入することができる。すると、グロメット1は、筒状部20に続いて本体部10が第2貫通孔201に挿入されると、第2貫通孔201の周縁部に第2係止部15が係止することで、第2取付パネル200に装着される。すなわち、グロメット1は、第2係止部15の第2溝部15aが第2貫通孔201の周縁部に嵌合し、このときに弾性変形した第2リップ部15bが第2取付パネル200の面を押圧することで、第2取付パネル200に強固に装着される。
【0036】
以上説明したように、本実施形態に係るグロメット1は、軸線方向Xの一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に軸線方向Xに沿って配索材Wを挿通可能である本体部10と、本体部10の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象である第1取付パネル100の第1貫通孔101の周縁部に係止可能である第1係止部14と、本体部10の外周部で第1係止部14より軸線方向Xの他方側にずれると共に軸線方X向に直交する径方向Y,Zの外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて取付対象である第2取付パネル200の第2貫通孔201の周縁部に係止可能である第2係止部15とを備える。
【0037】
本実施形態に係るグロメット1によれば、グロメット1を大径の第2貫通孔201に装着するとき、手前側の第1係止部14が第2貫通孔201の周縁部に接触するおそれがなく、奥側の第2係止部15を第2貫通孔201の周縁部に容易に係止することができる。その結果、第2取付パネル200の第2貫通孔201へのグロメット1の取付性の向上を図ることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るグロメット1は、筒状をなして本体部10における軸線方向Xの一方側に設けられると共に内部に軸線方向Xに沿って配索材Wを挿通可能である筒状部20を備え、本体部10は、筒状部20と第1係止部14との間に設けられる第1傾斜面11aと、第1係止部14と第2係止部15との間に設けられる第2傾斜面12aとを有する。そのため、第1係止部14と第2係止部15とを本体部10における外径の異なる位置に容易に配置することができる。また、グロメット1を第1貫通孔101や第2貫通孔201に挿入するとき、第1傾斜面11aや第2傾斜面12aが第1貫通孔101の内周面や第2貫通孔201の内周面にガイドされることとなり、グロメット1を第1貫通孔101や第2貫通孔201にスムースに挿入することができる。
【0039】
また、本実施形態に係るグロメット1は、第1係止部14及び第2係止部15は、第1貫通孔101及び第2貫通孔201の周縁部が嵌合する第1溝部14a及び第2溝部15aを有し、第1溝部14a及び第2溝部15aにおける軸線方向Xの一方側の小径土手部14cの外径より、第1溝部14a及び第2溝部15aにおける軸線方向Xの他方側の大径土手部14dの外径が大きい。そのため、グロメット1の第1溝部14aまたは第2溝部15aが第1貫通孔101または第2貫通孔201の周縁部に嵌合したとき、グロメット1は、径方向の異なる位置にある小径土手部14cと大径土手部14dが第1取付パネル100または第2取付パネル200を挟持することとなり、グロメット1を安定して保持することができる。
【0040】
また、本実施形態に係るグロメット1は、大径土手部14dは、取付対象である第1取付パネル100及び第2取付パネル200における軸線方向Xの他方側の面を押圧する第1リップ部14bおよび第2リップ部15bを有する。そのため、グロメット1の第1溝部14aまたは第2溝部15aが第1貫通孔101または第2貫通孔201の周縁部に嵌合したとき、第1リップ部14bまたは第2リップ部15bが第1取付パネル100または第2取付パネル200の面を押圧することとなり、グロメット1を安定して保持することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るグロメット1は、第1係止部14と第2係止部15は、径方向Y,Zに間隔を空けて設けられることで、第1係止部14と第2係止部15が軸線方向Xから見て重ならないように配置される。そのため、グロメット1を大径の第2貫通孔201に装着するとき、手前側の第1係止部14が第2貫通孔201の周縁部に接触するおそれがなく、奥側の第2係止部15を第2貫通孔201の周縁部に容易に係止することができる。
【0042】
また、本実施形態に係るワイヤハーネスWHは、グロメット1と、導電性を有してグロメット1の内部に配置される配索材Wとを備え、グロメット1は、軸線方向Xの一方側に向けて外径が漸減すると共に内部に軸線方向Xに沿って配索材Wを挿通可能である本体部10と、本体部10の外周部に周方向に沿って設けられて取付対象である第1取付パネル100の第1貫通孔101の周縁部に係止可能である第1係止部14と、本体部10の外周部で第1係止部14より軸線方向Xの他方側にずれると共に軸線方X向に直交する径方向Y,Zの外方側にずれた位置に周方向に沿って設けられて取付対象である第2取付パネル200の第2貫通孔201の周縁部に係止可能である第2係止部15とを備える。そのため、第2取付パネル200の第2貫通孔201へのグロメット1の取付性の向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 グロメット
10 本体部
11 第1隔壁部
11a 第1傾斜面
12 第2隔壁部
12a 第2傾斜面
13 基部
13a 平坦面
14 第1係止部
14a 第1溝部
14b 第1リップ部
14c 小径土手部
14d 大径土手部
15 第2係止部
15a 第2溝部
20 筒状部
30 挿通空間部
100 第1取付パネル(取付対象)
101 第1貫通孔
200 第2取付パネル(取付対象)
201 第2貫通孔
C 中心軸線
W 配索材
WH ワイヤハーネス
X 軸線方向
Y 第1径方向
Z 第2径方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6