(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170410
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】平型導体用電気コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 12/77 20110101AFI20231124BHJP
【FI】
H01R12/77
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082144
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】390005049
【氏名又は名称】ヒロセ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138140
【弁理士】
【氏名又は名称】藤岡 努
(72)【発明者】
【氏名】池田 遼太
【テーマコード(参考)】
5E223
【Fターム(参考)】
5E223AB17
5E223AB45
5E223AC21
5E223BA04
5E223BA07
5E223BA08
5E223BB01
5E223BB12
5E223CA15
5E223CB22
5E223CB29
5E223CB31
5E223CB39
5E223CC15
5E223CD01
5E223CD02
5E223CD24
5E223DA05
5E223DB09
5E223DB23
5E223EA13
5E223EC12
5E223EC22
5E223EC32
5E223EC34
5E223EC42
5E223EC47
5E223EC72
(57)【要約】
【課題】平型導体をコネクタに挿入接続する際の端子の座屈を回避し、端子と平型導体とを適切に接触させることができる平型導体用電気コネクタを提供する。
【解決手段】端子20の弾性腕部21Bは、壁部12に支持されていない状態で被支持腕部21Aの後端から延び平型導体Cの厚み方向に弾性変位可能な第一弾性部21B-1と、第一弾性部21B-1よりも受入空間11側に位置し第一弾性部21B-1の後端から前方へ折り返して延び平型導体Cの厚み方向に弾性変位可能な第二弾性部21B-2とを有し、第二弾性部21B-2は、平型導体Cに接圧をもって接触可能な接触部21B-3を有している。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びる平型導体が接続される平型導体用電気コネクタであって、
前記平型導体が前方へ向けて挿入されるように後方へ向けて開放された受入空間が形成されたハウジングと、
前後方向及び平型導体の厚み方向の両方向に対して直角な方向を端子配列方向として、端子配列方向に対して板面が直角をなした状態で前記ハウジングに配列保持される複数の端子とを有する平型導体用電気コネクタにおいて、
前記端子は、前後方向に延びる腕部を有し、
前記腕部は、前記壁部の内面に支持されて前後方向に延びる被支持腕部と、前記被支持腕部から後方へ延びる弾性腕部とを有し、
前記弾性腕部は、前記壁部に支持されていない状態で前記被支持腕部の後端から延び平型導体の厚み方向に弾性変位可能な第一弾性部と、前記第一弾性部よりも受入空間側に位置し前記第一弾性部の後端から前方へ折り返して延び平型導体の厚み方向に弾性変位可能な第二弾性部とを有し、
前記第二弾性部は、前記平型導体に接圧をもって接触可能な接触部を有していることを特徴とする平型導体用電気コネクタ。
【請求項2】
前記第一弾性部は、端子配列方向に見て前記第二弾性部よりも太く、かつ、長く形成され、前記第一弾性部の前端が前記第二弾性部の前端よりも前方に位置していることとする請求項1に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項3】
前記端子は、前記腕部に対して前記受入空間を挟んで反対側に位置し前後方向に延びる他の腕部を有し、
前記他の腕部は、前記平型導体に接圧をもって接触することで前記接触部と協働して前記平型導体を挟持可能な他の接触部を有しており、
前後方向における前記接触部と前記他の接触部との距離が前記平型導体の厚み寸法よりも小さくなっていることとする請求項1または請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【請求項4】
前記端子は、前記腕部に対して前記受入空間を挟んで反対側に位置し前後方向に延びる他の腕部を有し、
前記他の腕部は、前記平型導体に接圧をもって接触することで前記接触部と協働して前記平型導体を挟持可能な他の接触部を有しており、
前後方向における前記下側接触部と前記他の接触部との距離が、平型導体の厚み方向における前記接触部と前記他の接触部との間の隙間寸法の2倍よりも小さくなっていることとする請求項1または請求項2に記載の平型導体用電気コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平型導体が接続される平型導体用電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
前後方向に延び上下方向に厚みをもつ帯状の平型導体が前方へ向けて挿入接続されるコネクタが特許文献1に開示されている。特許文献1では、平型導体の挿入方向を後方、抜出方向を前方として説明しているが、ここでは、平型導体の挿入方向を前方、抜出方向を後方として説明する。この特許文献1のコネクタは、回路基板の実装面に実装されており、平型導体の帯幅方向を端子配列方向として配列された複数の端子がハウジングに保持されている。また、平型導体の抜けを防止するためのロック部材が、ハウジングにより回動可能に支持されている。
【0003】
端子は、金属板部材を打ち抜いて平板状に作られており、端子配列方向に対して板面が直角をなした姿勢で設けられている。端子は、ハウジングの下壁に沿って後方へ向けて延び上下方向に弾性変位可能な2つの接触片を有しており、それぞれの接触片の後端に設けられた接点で平型導体に対して下方から接触するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、端子の接触片は後方へ向けて延び、その後端に接点が設けられているので、平型導体の挿入接続の際に平型導体の前端が接触片の接点に後方から衝突することで、接触片が座屈するおそれがある。接触片が座屈すると、接触片と平型導体とを適切に接触させることができなくなる。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑み、平型導体をコネクタに挿入接続する際の端子の座屈を回避し、端子と平型導体とを適切に接触させることができる平型導体用電気コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明に係る平型導体用電気コネクタは、前後方向に延びる平型導体が接続される平型導体用電気コネクタであって、前記平型導体が前方へ向けて挿入されるように後方へ向けて開放された受入空間が形成されたハウジングと、前後方向及び平型導体の厚み方向の両方向に対して直角な方向を端子配列方向として、端子配列方向に対して板面が直角をなした状態で前記ハウジングに配列保持される複数の端子とを有する。
【0008】
かかる平型導体用電気コネクタにおいて、本発明では、前記端子は、前後方向に延びる腕部を有し、前記腕部は、前記壁部の内面に支持されて前後方向に延びる被支持腕部と、前記被支持腕部から後方へ延びる弾性腕部とを有し、前記弾性腕部は、前記壁部に支持されていない状態で前記被支持腕部の後端から延び平型導体の厚み方向に弾性変位可能な第一弾性部と、前記第一弾性部よりも受入空間側に位置し前記第一弾性部の後端から前方へ折り返して延び平型導体の厚み方向に弾性変位可能な第二弾性部とを有し、前記第二弾性部は、前記平型導体に接圧をもって接触可能な接触部を有していることを特徴としている。
【0009】
本発明では、端子において、接触部を有する第二弾性部は、第一弾性部の後端で折り返して前方へ向けて延びている。したがって、ハウジングの受入空間に平型導体が後方から挿入される際、平型導体は、端子の後端部、すなわち後方へ向けて凸湾曲する弾性腕部の折返部分によって前方へ向けて円滑に案内され、第二弾性部の接触部の位置に達する。その結果、端子は、いずれの部分においても、平型導体の前端との当接による座屈を生じない。したがって、端子と平型導体との適切な接圧を確保しやすくなる。
【0010】
(2) (1)の発明において、前記第一弾性部は、端子配列方向に見て前記第二弾性部よりも太く、かつ、長く形成され、前記第一弾性部の前端が前記第二弾性部の前端よりも前方に位置していてもよい。
【0011】
一般に、平型導体との接触のための弾性腕部を端子に設ける場合、平型導体との接触による弾性腕部の一部に負荷が集中しないように、弾性腕部の自由端側の部分を細く、反対側の部分を太く形成することで、弾性腕部に生じる応力を分散させることが多い。(2)の発明においても、弾性腕部は、第一弾性部は太く、また、自由端側に位置する第二弾性部は第一弾性部よりも細く形成されており、これによって、応力の分散が図られている。このとき、仮に太い第一弾性部と細い第二弾性部が同じ長さで形成されていると、第二弾性部の接触部が平型導体と接触した際、両者のばね性が大きく異なることに起因して、適切な接圧を確保しにくくなる。これに対して(2)の発明では、第二弾性部よりも太い第一弾性部が長く形成されているので、第一弾性部および第二弾性部の両者のばね性を同程度に設定でき、その結果、平型導体との適切な接圧を確保しやすくなる。
【0012】
(3) (1)または(2)の発明において、前記端子は、前記腕部に対して前記受入空間を挟んで反対側に位置し前後方向に延びる他の腕部を有し、前記他の腕部は、前記平型導体に接圧をもって接触することで前記接触部と協働して前記平型導体を挟持可能な他の接触部を有しており、前後方向における前記接触部と前記他の接触部との距離が前記平型導体の厚み寸法よりも小さくなっていてもよい。
【0013】
このように前後方向における接触部と他の接触部との距離を平型導体の厚み寸法よりも小さく設定することにより、平型導体がコネクタに接続された状態でその厚み方向に外力を受けて平型導体が傾斜した姿勢となっても、平型導体が接触部および他の接触部により挟持された状態を維持しやすくなる。この結果、平型導体と端子との適切な接圧での接触が確保されるととともに、平型導体の不用意な抜けを回避できる。
【0014】
(4) (1)または(2)の発明において、前記端子は、前記腕部に対して前記受入空間を挟んで反対側に位置し前後方向に延びる他の腕部を有し、前記他の腕部は、前記平型導体に接圧をもって接触することで前記接触部と協働して前記平型導体を挟持可能な他の接触部を有しており、前後方向における前記下側接触部と前記他の接触部との距離が、平型導体の厚み方向における前記接触部と前記他の接触部との間の隙間寸法の2倍よりも小さくなっていてもよい。
【0015】
一般に、平型導体を接触部および他の接触部により挟持する場合、平型導体の厚み方向における接触部と他の接触部との間の隙間寸法は、平型導体に対する十分な接圧を確保するために、平型導体の厚み寸法の半分より小さく設定されることが多い。そこで、前後方向における下側接触部と他の接触部との距離を上記隙間寸法の2倍よりも小さく設定することにより、平型導体がコネクタに接続された状態でその厚み方向に外力を受けて平型導体が傾斜した姿勢となっても、平型導体が接触部および他の接触部により挟持された状態を維持しやすくなる。この結果、平型導体と端子との適切な接圧での接触が確保されるととともに、平型導体の不用意な抜けを回避できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、平型導体をコネクタに挿入接続する際の端子の座屈を回避し、端子と平型導体とを適切に接触させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した斜視図であり、平型導体を接続する直前の状態を示している。
【
図2】本発明の実施形態に係る平型導体用電気コネクタを平型導体とともに示した斜視図であり、平型導体を抜出する直前における状態を示している。
【
図3】平型導体用電気コネクタについて、端子、金具及び可動部材を分離した状態で示した斜視図である。
【
図4】平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、コネクタ幅方向での端子の位置での断面を示している。
【
図5】平型導体用電気コネクタの斜視断面図であり、コネクタ幅方向での金具の位置での縦断面を示しており、(A)は1つの金具を抜き出した状態、(B)は金具を取り付けた状態を示している。
【
図6】平型導体の挿入直前の状態における平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は端子の位置での断面、(B)は可動部材の係止部の位置での断面、(C)は可動部材のカム部の位置での断面を示している。
【
図7】平型導体の挿入が完了した状態における平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は端子の位置での断面、(B)は可動部材の係止部の位置での断面、(C)は可動部材のカム部の位置での断面を示している。
【
図8】平型導体の抜出する直前における平型導体用電気コネクタの縦断面図であり、(A)は端子の位置での断面、(B)は可動部材の係止部の位置での断面、(C)は可動部材のカム部の位置での断面を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
図1および
図2は、本実施形態に係る平型導体用電気コネクタ1(以下「コネクタ1」という)を平型導体Cとともに示した斜視図であり、
図1は平型導体Cを接続する直前の状態、
図2は平型導体Cを抜出する直前における状態を示している。
図3は、コネクタ1について、端子20、金具30および可動部材40を分離した状態で示した斜視図である。
【0020】
コネクタ1は、回路基板(図示せず)の実装面上に実装され、該実装面に対して平行な前後方向(X軸方向)を挿抜方向として、相手接続体としての平型導体C(例えば、FPC)が挿抜可能に接続されるようになっている。コネクタ1は、平型導体Cが接続されることにより、回路基板と平型導体Cとを電気的に導通させる。本実施形態では、X軸方向(前後方向)にて、X1方向を前方、X2方向を後方とする。また、前後方向(X軸方向)に対して直角をなすY軸方向をコネクタ幅方向とし、回路基板の実装面に対して直角なZ軸方向を上下方向とする。
【0021】
平型導体Cは、前後方向(X軸方向)に延びコネクタ幅方向(Y軸方向)を幅方向とし、かつ、上下方向(Z軸方向)を厚み方向とする可撓な帯状をなし、
図2に示されるように、その前端側部分がハウジング10内に挿入される。平型導体Cは、前後方向に延びる複数の回路部(図示せず)がコネクタ幅方向に配列され形成されている。該回路部は、平型導体Cの絶縁層内に埋設されて前後方向に延びており、平型導体Cの前端近傍位置まで達している。また、上記回路部は、上記前端側部分の下面で露呈しており、コネクタ1の後述の端子20と接触可能となっている。
【0022】
また、
図1に示されるように、平型導体Cの前端側部分は他部よりも幅狭となっている。該前端側部分の両側縁には切欠部C1が形成されており、該切欠部C1の前方に位置する耳部C2の後端縁は、コネクタ1の後述する係止部42と係止する被係止部C2Aとして機能する(
図7(B)参照)。また、平型導体Cの上記他部の前端部には、平型導体Cの幅方向での両側に肩部C3が形成されている。肩部C3は、
図2に示されているように、平型導体Cがコネクタ1へ挿入された状態で、ハウジング10の後述の後端壁部18に後方から近接する。
【0023】
コネクタ1は、
図1ないし
図3に示されているように、樹脂等の電気絶縁材製のハウジング10と、コネクタ幅方向を端子配列方向として配列されハウジング10に保持される複数の金属板製の端子20(
図4も参照)と、コネクタ幅方向での端子配列範囲の両外側に配置されている金属板製の金具30と、閉位置と開位置との間で回動可能な樹脂等の電気絶縁材製、あるいは金属製の可動部材40とを備えており、平型導体Cが後方から挿入接続されるようになっている(
図1に示される矢印を参照)。
【0024】
ハウジング10は、
図1,2に示されるように、コネクタ幅方向を長手方向とする略直方体外形をなしており、平型導体Cを受け入れるための受入空間11が、後方へ向けて開放された空間として形成されている。ハウジング10は、回路基板の実装面に対して平行に延びる壁部としての下壁12および上壁13と、上下方向に延び下壁12および上壁13のコネクタ幅方向での両端部同士を連結する2つの側壁14(
図3参照)と、下壁12と上壁13の前端同士を連結する前壁15(
図6(B)参照)とを有している。
【0025】
また、ハウジング10は、
図3に示されるように、コネクタ幅方向で側壁14よりも外側に、側壁14の下部の外側面から張り出す張出部16と、張出部16の前半部に設けられた金具保持部17と、張出部16の後端部に設けられた後端壁部18とを有している。
【0026】
受入空間11は、下壁12、上壁13、前壁15(
図6(B)参照)、および2つの側壁14(
図3参照)で囲まれて、前後方向に延びており、平型導体Cの前端側部分を受け入れるようになっている(
図7(A),(B)参照)。
【0027】
上壁13には、端子配列範囲の外側で上下方向に貫通する上孔部13Aが形成されている。上孔部13Aは、
図1に示されているように、可動部材40が閉位置にあるときに、可動部材40の後述の係止部42の上方からの進入を許容する(
図6(B)も参照)。
【0028】
ハウジング10には、
図1ないし
図3に示されているように、端子20を収容する端子収容部19がコネクタ幅方向に配列して形成されている。
図4は、コネクタ幅方向に対して直角な面でのコネクタ1の縦断面図であり、コネクタ幅方向での端子20の位置での断面を示している。
図4に示されているように、端子収容部19は、ハウジング10を前後方向に貫通する溝部として形成されている。端子収容部19は、下壁12の上面から没して前後方向に延びる下溝部19Aと、上壁13の下面から没して前後方向に延びる上溝部19Bと、前壁15を前後方向に貫通するともに上下方向に延びて下溝部19Aおよび上溝部19Bの前端部同士を連通させる19Cとを有し、全体として、後方へ向けて開口する横U字状をなしている。
【0029】
張出部16は、
図3に示されているように、上下方向に対して直角な板面をもつ板状をなしており、前後方向で側壁14の全域にわたる範囲に延びている。金具保持部17は、コネクタ幅方向で側壁14の外側面との間に間隔をもって設けられている。金具保持部17と側壁14との間に形成される空間は、可動部材40の後述の側板部43を収容するための側板収容部10Aをなしている。
【0030】
金具保持部17は、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもって起立する板状をなしており、コネクタ幅方向で張出部16よりも外側に、金具30の一部を収容するための金具収容部17Aが形成されている(
図5(A),(B)も参照)。また、
図3に示されているように、金具保持部17において、コネクタ幅方向で金具収容部17Aよりも内側に位置する部分は、張出部16から上方へ起立している。また、金具保持部17の下部には、金具収容部17Aの後端よりも後方へ突出する被係止端部17Bが設けられている。被係止端部17Bは、コネクタ幅方向では金具収容部17Aを含む範囲に位置し、上下方向では張出部16の範囲内に位置しており、上下方向で金具30の後述の係止脚部34と係止するようになっている(
図5(B)参照)。
【0031】
図5は、コネクタ1の縦断面図であり、コネクタ幅方向での金具30の位置での断面を示しており、(A)は1つの金具30を抜き出した状態、(B)は金具30を取り付けた状態を示している。金具収容部17Aは、
図5に示されるように、コネクタ幅方向に対して直角に広がる溝状をなしている。金具収容部17Aの下部は、他部よりも前方にまで延びており、
図5(B)に示されているように、その前端側に形成された圧入溝部17A-1で金具30の後述の圧入固定部31A-1を保持している。
【0032】
後端壁部18は、
図3に示されているよう、金具保持部17よりも後方に位置しており、張出部16から上方へ起立するとともに側壁14の外側面に連結されている。前後方向で金具保持部17と後端壁部18との間に形成される空間は、可動部材40の後述のカム部44を収容するためのカム収容部10Bをなしている。
【0033】
端子20は、金属板部材を打ち抜いて作られており、コネクタ幅方向に対して板面が直角をなした状態で、ハウジング10の端子収容部19へ前方から圧入されて取り付けられている。端子20は、
図4に示されているように、ハウジング10の下壁12に沿って前後方向に延びる腕部としての下腕部21と、ハウジング10の上壁13に沿って前後方向に延びる他の腕部としての上腕部22と、前壁15に沿って上下方向に延び下腕部21と上腕部22の前端部同士を連結する連結腕部23と、連結腕部23の下部から前方へ向けて延出する接続部24とを有している。
【0034】
下腕部21は、下溝部19A内に収容されており、下溝部19Aの内面をなす溝底面19A-1により下方から支持されて前後方向に延びる被支持腕部21Aと、被支持腕部21Aから後方へ延びる弾性腕部21Bとを有している。被支持腕部21Aは、その全体が下溝部19A内に収容されている。被支持腕部21Aの上縁は後方に向かうにつれて下方へ傾斜しており、一方、被支持腕部21Aの下縁は前後方向に対して傾斜していない。つまり、被支持腕部21Aは、後方へ向かうにつれて徐々に細くなっている。被支持腕部21Aの下縁は、被支持腕部21Aの前後方向全域で溝底面19A-1に支持されている。
【0035】
弾性腕部21Bは、被支持腕部21Aの後端から延びる第一弾性部21B-1と、第一弾性部21B-1よりも上方、すなわち受入空間11側に位置し第一弾性部21B-1の後端から前方へ折り返して延びる第二弾性部21B-2とを有している。第一弾性部21B-1は、その全体が下溝部19A内に収容されており、後方に向かうにつれて上方に傾斜して延びている。つまり、第一弾性部21B-1の下縁と下溝部19Aの溝底面19A-1との間に形成される隙間が後方に向かうにつれて徐々に大きくなっている。第一弾性部21B-1は、この隙間の範囲内で、上下方向での弾性変位可能が許容されている。以下、この隙間を「弾性変位許容空間19A-2」という。
【0036】
本実施形態では、下溝部19Aの溝底面19A-1が前後方向全域にわたって同じ高さで形成されているので、弾性変位許容空間19A-2は、第一弾性部21B-1を傾斜させて設けることにより溝底面19A-1との間の隙間として形成されている。しかし、弾性変位許容空間19A-2の形態はこれに限られない。例えば、変形例として、溝底面19A-1を、前後方向において第一弾性部21B-1に対応する範囲で他の範囲のよりも低く形成して、弾性変位許容空間19A-2が形成されていてもよい。また、さらに別の変形例として、前後方向において第一弾性部21B-1に対応する範囲に、下壁12を設けることなく、第一弾性部21B-1の下方の空間、すなわち下方に開放された空間を弾性変位許容空間19A-2としてもよい。これらの変形例では、第一弾性部21B-1を、前後方向で傾斜することなく延びた形状とすることも可能である。
【0037】
第二弾性部21B-2は、
図4に示されているように、その一部が下溝部19Aに収容され、後方に向かうにつれて上方へ傾斜して延びている。第二弾性部21B-2の前端には、平型導体Cの下面の回路部に接圧をもって接触可能な接触部としての下接触部21B-3が上方に突出して設けられている。下接触部21B-3は、第二弾性部21B-2が自由状態にあるとき、下溝部19Aから突出して受入空間11内に位置している。上下方向における第二弾性部21B-2と第一弾性部21B-1との間に形成される隙間は、後方に向かうにつれて徐々に大きくなっており、この隙間の範囲内で第二弾性部21B-2の上下方向での弾性変位が許容されている。
【0038】
図4に示されているように、第一弾性部21B-1は、第二弾性部21B-2よりも太く形成されている。このように、弾性腕部21Bにおいて、自由端側に位置する第二弾性部21B-2を細く、自由端とは反対側に位置する第一弾性部21B-1を太く形成することで、平型導体Cとの接触により弾性腕部21Bに生じる応力を分散させることができ、これによって、弾性腕部21Bの一部に負荷が集中することを回避できる。
【0039】
また、
図4に示されているように、第一弾性部21B-1は、第二弾性部21B-2よりも長く形成され、第一弾性部21B-1の前端が第二弾性部21B-2の前端よりも前方に位置している。このように本実施形態では、第二弾性部21B-2よりも太い第一弾性部21B-1が第二弾性部21B-2よりも長く形成されているので、第一弾性部21B-1および第二弾性部21B-2の両者のばね性を同程度に設定でき、その結果、平型導体Cとの適切な接圧を確保しやすくなる。
【0040】
上腕部22は、
図4に示されているように、下腕部21に対して上下方向で受入空間11を挟んで反対側、すなわち上方に位置しており、該上腕部22の一部が上溝部19Bに収容された状態で後方に向かうにつれて下方へ傾斜して延びている。上腕部22の後端には平型導体Cの上面に接圧をもって接触可能な他の接触部としての上接触部22Aが下方に突出して設けられている。上接触部22Aは、
図4に示されているように、上腕部22が自由状態にあるとき、上溝部19Bから突出して受入空間11内に位置している。
【0041】
図4に示されているように、上接触部22Aの突出頂点は、下腕部21の下接触部21B-3の突出頂点よりも距離Pだけ前方に位置している。また、上下方向で上接触部22Aの突出頂点と下接触部21B-3の突出頂点との間には、平型導体Cに対する十分な接圧を確保するために、平型導体Cの厚み寸法R(
図6(A)参照)の半分より小さい寸法Qの隙間が形成されている。また、本実施形態では、上記距離Pは、平型導体Cの厚み寸法Rよりも小さく、かつ、隙間寸法Qの2倍よりも小さく設定されている。
【0042】
上述のように、上記距離Pを平型導体Cの厚み寸法Rよりも小さく設定することにより、平型導体Cがコネクタ1に接続された状態でその厚み方向(上下方向)に外力を受けて平型導体Cが傾斜した姿勢となっても、平型導体Cが下接触部21B-3と上接触部22Aとの協働により接圧をもって挟持された状態を維持しやすくなる。この結果、平型導体Cと端子20との適切な接圧での接触が確保されるととともに、平型導体Cの不用意な抜けを回避できる。
【0043】
また、上記隙間寸法Qが平型導体Cの厚み寸法Rの半分より小さく設定されている関係上、上記距離Pを上記隙間寸法Qの2倍よりも小さく設定することによっても、平型導体Cが下接触部21B-3と上接触部22Aとの協働により接圧をもって挟持された状態を維持しやすくなる。したがって、平型導体Cがコネクタに接続された状態でその厚み方向(上下方向)に外力を受けて平型導体が傾斜した姿勢となっても、平型導体Cと端子20との適切な接圧での接触が確保されるととともに、平型導体Cの不用意な抜けを回避できる。
【0044】
本実施形態では、上記距離Pについて、平型導体Cの厚み寸法Rよりも小さいという条件と、かつ、隙間寸法Qの2倍よりも小さいという条件の両方が満たされていることとしたが、両方の条件が満たされていることは必須ではなく、いずれかの条件が満たされていれば、平型導体Cの不用意な抜けを回避できる。
【0045】
また、本実施形態では、上接触部22Aの突出頂点が下腕部21の下接触部21B-3の突出頂点よりも前方に位置していることとしたが、突出頂点同士の上記距離Pが上述の2つの条件の少なくとも一方の条件が満たしているのであれば、突出頂点同士の前後方向での相対的な位置関係はこれに限られない。つまり、上接触部22Aの突出頂点が下腕部21の下接触部21B-3の突出頂点よりも後方に位置していてもよく、また、突出頂点同士が同位置にあってもよい。
【0046】
連結腕部23は、前溝部19C内に収容されている。連結腕部23の上縁には、上方に突出する圧入突起23Aが設けられており、この圧入突起23Aが上壁13の内面に喰い込むことにより端子20が端子収容部19内で保持されている。接続部24は、連結腕部23の下部から下方かつ前方へ向けてハウジング10外に延出している。接続部24は、その下縁がハウジング10の下壁12の下面よりも若干下方に位置しており、コネクタ1を回路基板(図示せず)の実装面に配置した状態で、実装面上の対応回路部(パッド)に半田接続される。
【0047】
図5(A),(B)は、コネクタ1の斜視断面図であり、コネクタ幅方向での金具30の位置での縦断面を示しており、
図5(A)は1つの金具30を抜き出した状態、
図5(B)は金具30を取り付けた状態を示している。金具30は、金属板部材を打ち抜くとともに、一部を板厚方向に屈曲することで作られており、ハウジング10の金具収容部17Aへ後方から圧入されて取り付けられている。このように金具30を圧入可能とすることにより、金具30をハウジング10に簡単に取り付けることができる。
【0048】
金具30は、
図5(A),(B)に示されているように、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもつ本体部31と、可動部材40のカム部44を付勢するための付勢部32と、回路基板の実装面に半田接続される固定脚部33と、ハウジング10に対して下方から係止可能な係止脚部34とを有している(
図3も参照)。金具30は、コネクタ幅方向に対して直角な板面をもつ本体部31が金具30の大部分をなし、後述するように付勢部32および固定脚部33のみがコネクタ幅方向に屈曲されて形成されている。したがって、金具30全体は簡単な形状でコンパクトに作られている。
【0049】
本体部31は、可動部材40のカム部44に対してコネクタ幅方向での外側で該カム部44に隣接しており、前後方向に直状をなして延びハウジング10に固定される固定腕部31Aと、固定腕部31Aよりも上方に位置し前後方向に延びる可動腕部31Bと、上下方向に延び固定腕部31Aと可動腕部31Bの前端側部分同士を連結する連結部31Cとを有している。金具30は、固定腕部31Aの前端部に設けられた圧入固定部31A-1が金具収容部17Aの圧入溝部17A-1に圧入されることで、金具収容部17Aで保持される。また、金具30は、金具収容部17A内に収容された状態において、固定腕部31Aが金具収容部17Aの下側内壁面17A-2に支持されている。
【0050】
可動腕部31Bは、前後方向に延び、上下方向、すなわち板面(圧延面)に対して平行な方向に弾性変位可能となっている。可動腕部31Bの前半部は、後方に向かうにつれて下方に傾斜して延び、後半部は前半部の後端から後方へ向けて傾斜することなく直状に延びている。なお、可動腕部の形状はこれに限られず、例えば、可動腕部は、前半部が後方に向かうにつれて上方に傾斜して延び、後半部が前半部の後端から後方へ向けて傾斜することなく直状に延びていてもよい。連結部31Cは、固定腕部31Aの前端寄り位置で固定腕部31Aの上縁から上方に向かうにつれて前方へ傾斜して延びており、固定腕部31Aの前端寄り位置の部分と、可動腕部31Bの前端部とを連結している。
【0051】
付勢部32は、前後方向における可動腕部31Bの後半部の中間位置で、可動腕部31Bの上縁で屈曲されてコネクタ幅方向で内側に向けて、すなわち可動部材40のカム部44の側へ向けて延びている。付勢部32は、上下方向に対して直角な板面(圧延面)を有し、カム部44の直上に位置しており、カム部44ひいては可動部材40の上方への移動を規制している(
図6(C),
図7(C),
図8(C)参照)。
【0052】
本実施形態では、
図1、
図2、
図5(B)に示されているように、可動腕部31Bの後半部の上方には何も存在していないが、変形例として、例えば、可動腕部31Bの後端部の上方で該後端部との間に所定の間隔をもって位置する規制部をハウジング10の一部によって形成してもよい。この変形例では、可動腕部31Bの後端部は、上方へ所定量変位すると規制部に下方から当接し、それ以上の変位が規制される。このような構成とすることにより、可動腕部31Bの上方への過剰な弾性変形が規制されるので、カム部44ひいては可動部材40がハウジング10から外れてしまうことを、より確実に防止できる。
【0053】
固定脚部33は、固定腕部31Aの後端寄り位置で、固定腕部31Aの下縁で屈曲されてコネクタ幅方向で内側に向けて延びている。このように固定脚部33は、コネクタ幅方向で内側、すなわち付勢部32と同じ側に向けて延びて形成されているので、固定脚部33を設けることによるコネクタ幅方向での金具30の大型化を回避できる。固定脚部33は、前後方向では付勢部32よりも後方に位置し、コネクタ幅方向では付勢部32とほぼ同じ範囲にわたって延びている。また、固定脚部33は、その下面がハウジングの下壁12の下面よりも若干下方に位置しており(
図6(C),
図7(C),
図8(C)参照)、コネクタ1が回路基板(図示せず)の実装面に配置された状態で、実装面上の対応部(パッド)に半田接続されて固定される。
【0054】
係止脚部34は、固定脚部33よりも前方に位置し、前後方向で付勢部32の範囲内に設けられている。係止脚部34は、固定脚部33の下縁から下方へ延びてから前方へ延びており、全体形状がL字状をなしている。このL字状の係止脚部34は、
図5(B)に示されているように、金具保持部17の被係止端部17Bに後方から嵌まり込むことで、被係止端部17Bに下方から係止する。
【0055】
可動部材40は、
図1ないし
図3に示されるように、コネクタ幅方向での側壁14(
図2および
図3参照)同士間の範囲にわたって延びる板状の操作部41と、操作部41の板面から突出する係止部42と、コネクタ幅方向で操作部41の両端に位置する側板部43およびカム部44とを有している。
【0056】
操作部41は、
図1に示される閉位置と
図2に示される開位置との間で可動部材40を移動(回動)させる際の操作を受けるようになっている。係止部42は、コネクタ幅方向での平型導体Cの被係止部C2Aに対応する位置で、閉位置にあるときの操作部41の後部(開位置にあるときの操作部41の下部)に設けられている。係止部42は、可動部材40が閉位置にあるときに、操作部41の下面から突出し、ハウジング10の上孔部13Aおよび受入空間11内に位置しており(
図6(B)参照)、平型導体Cと干渉可能となっている(
図7(B)参照)。係止部42において受入空間11に位置する部分は、前方へ向けて下方に傾斜する案内面42Aを後面に有しているともに、平型導体Cの被係止部C2Aに対して後方から係止する係止面42Bを前面に有している(
図6(B)および
図7(B)参照)。可動部材40が開位置にあるときには、係止部42はハウジング10外に位置した状態となり、平型導体Cに対する干渉が解除される(
図8(A),(B)参照)。
【0057】
図3に示されているように、側板部43は、コネクタ幅方向での操作部41の両端位置で、コネクタ幅方向に直角な板面をもつ板状をなして設けられている。側板部43は、前後方向で操作部41の中間位置から操作部41よりも後方位置にわたる範囲に延びているとともに、下方へ向けて突出している。つまり、
図3に示される側板部43の後端部である突出端部43Aは、操作部41の後端よりも後方へ突出している。側板部43は、可動部材40が閉位置にあるときには、側板部43全体がハウジング10の側板収容部10A内に収容され(
図1参照)、可動部材40が開位置にあるときには、突出端部43Aを除いた部分が側板収容部10A外に位置した状態となる(
図2参照)。
【0058】
カム部44は、コネクタ幅方向で側板部43の突出端部43Aの外側面から略四角柱状に突出しており、可動部材40の位置に関係なく、ハウジング10のカム収容部10Bに常時収容されている。カム部44は、金具30の付勢部32の直下に位置しており、該付勢部32によって上方への移動が規制されている。カム部44は、コネクタ幅方向に見て可動部材40の回動軸線を含む位置に設けられ、回動軸線に対して直角な断面形状が略矩形形状をなしている。
【0059】
カム部44は、可動部材40が閉位置にあるときに、閉位置において平坦な上面をなす第一被規制面44Aで付勢部32の下面に接面し(
図6(C),
図7(C))、その結果、可動部材40が確実に閉位置に維持される。また、カム部44は、可動部材40が開位置にあるときに、開位置において平坦な上面をなす第二被規制面44Bで付勢部32の下面に接面し(
図8(C)参照)、その結果、可動部材40が確実に開位置に維持される。
【0060】
本実施形態では、閉位置あるいは開位置でカム部44が付勢部32の下面に接触した状態において、金具30の可動腕部31Bは弾性変位していない、すなわち、付勢部32からの付勢力がカム部44に作用していない。しかし、変形例として、閉位置および開位置の少なくとも一方において、金具30の可動腕部31Bが若干弾性変位した状態で、付勢部32がカム部44に接触して、付勢部32からの適度の付勢力がカム部44に作用するようになっていてもよい。また、別の変形例として、閉位置および開位置の少なくとも一方において、カム部44と付勢部32との間に上下方向で隙間が形成されていてもよい。
【0061】
また、カム部44の外周面(コネクタ幅方向に対して平行な外周面)において、第一被規制面44Aと第二被規制面44Bとの間にはカム面44Cが形成されている。カム面44Cは、カム部44の1つの角部に形成された突湾曲面である。本実施形態では、可動部材40が閉位置と開位置との間で回動する過程で、カム部44は、カム面44Cで付勢部32を上方へ向けて押圧することで可動腕部31Bを弾性変位させ、その反力である下方へ向けた付勢力を付勢部32から受けるようになっている。
【0062】
このような構成のコネクタ1は、次の要領で組み立てられる。まず、ハウジング10の端子収容部19に前方から端子20を圧入して取り付ける。また、閉位置の姿勢に保った可動部材40をハウジング10へ上方から取り付ける。このとき、可動部材40の側板部43は側板収容部10Aに収容され、カム部44はカム収容部10Bに収容される。次に、ハウジング10の金具収容部17Aに後方から金具30を圧入して取り付ける。このとき、係止脚部34が被係止端部17Bに嵌着され、被係止端部17Bに下方から係止する。また、金具30の付勢部32がカム部44の直上に位置し、カム部44の上方への移動が規制される。このように端子20、金具30および可動部材40を、ハウジング10に取り付けることにより、コネクタ1が完成する。
【0063】
なお、本実施形態では、端子20、可動部材40、金具30をこの順でハウジング10に取り付けることとしたが、端子20の取付工程は、金具30および可動部材40の取付工程よりも後に行われてもよく、また、同時に行われてもよい。また、本実施形態では、可動部材40は、閉位置の姿勢でハウジング10に取り付けられることとしたが、取付時における可動部材40の姿勢はこれに限られず、例えば、開位置の姿勢であってもよい。
【0064】
次に、コネクタ1に対する平型導体Cの挿抜動作について説明する。
【0065】
まず、コネクタ1の端子20の接続部24を回路基板(図示せず)の対応回路部に半田接続するとともに、金具30の固定脚部33を回路基板の対応部に半田接続する。この接続部24および固定脚部33の半田接続により、コネクタ1が回路基板に取り付けられる。
【0066】
次に、
図6(A)~(C)に示されるように、可動部材40を閉位置にもたらした状態のコネクタ1の後方に、平型導体Cを回路基板の実装面(図示せず)に沿って前後方向(X軸方向)に延びるように位置させる(
図1も参照)。次に、平型導体Cを前方(X1方向)へ向けてコネクタ1の受入空間11に挿入する。
【0067】
本実施形態では、端子20において、下接触部21B-3を有する第二弾性部21B-2は、第一弾性部21B-1の後端で折り返して前方へ向けて延びている。したがって、受入空間11に平型導体Cが後方から挿入される際、平型導体Cは、弾性腕部21Bの後端部、すなわち後方へ向けて凸湾曲する弾性腕部21Bの折返部分によって前方へ向けて円滑に案内され、下接触部21B-3の位置に達する。したがって、端子20は、いずれの部分においても、平型導体Cの前端との当接による座屈を生じるおそれがない。その結果、端子20と平型導体Cとを適切に接触させることができる。
【0068】
受入空間11への平型導体Cの挿入過程において、平型導体Cの前端は、端子20の第二弾性部21B-2の下接触部21B-3および上腕部22の上接触部22Aに当接し、第二弾性部21B-2を押し下げて下方へ弾性変位させるとともに、上腕部22を押し上げて上方へ弾性変位させる。この結果、下接触部21B-3と上接触部22Aとの間が押し広げられる。また、このとき、第二弾性部21B-2の弾性変位に伴い、第一弾性部21B-1も下方へ弾性変位する。
【0069】
また、コネクタ幅方向における可動部材40の係止部42の位置では、平型導体Cの前端が係止部42の案内面42Aに当接して係止部42を押し上げる。係止部42が押し上げられることにより可動部材40全体が上方へ移動し、これに伴い、金具30の付勢部32がカム部44によって押し上げられ、金具30の可動腕部31Bが上方へ向けて弾性変位する。つまり、可動腕部31Bの弾性変位により、係止部42の上方への移動が許容される。
【0070】
このように端子20の下接触部21B-3と上接触部22Aとの間が押し広げられるとともに、可動部材40の係止部42が上方へ移動することにより、平型導体Cをさらに前方へ挿入することが可能となる。平型導体Cは、
図7(A)~(C)に示されているように、ハウジング10の前壁15(
図7(A),(B)参照)に当接するまで挿入される。また、このとき、平型導体Cの肩部C3は、
図2に示されているように、ハウジング10の後端壁部18に後方から近接する。
【0071】
平型導体Cの挿入が完了した状態において、
図7(A)に示されているように、下腕部21の弾性腕部21B(第一弾性部21B-1および第二弾性部21B-2)および上腕部22の弾性変位状態が維持され、平型導体Cは下接触部21B-3および上接触部22Aによって挟持されている。つまり、上接触部22Aが平型導体Cを上方から押圧しつつ、下接触部21B-3が平型導体Cの回路部に接圧をもって接触する。このようにして端子20と平型導体Cとの電気的に導通した状態が維持される。
【0072】
また、平型導体Cの挿入過程で、平型導体Cの耳部C2が係止部42の位置を通過して、係止部42が切欠部C1の位置に達すると、可動部材40は閉位置に戻り、
図7(B)に示されるように係止部42が切欠部C1内に上方から進入する。その結果、係止部42の係止面42Bが平型導体Cの被係止部C2Aに対して後方から係止可能に位置し、これによって、平型導体Cへの不用意な抜けが防止される。また、
図7(C)に示されるように、金具30の付勢部32の下面(圧延面)が可動部材40のカム部44の第一被規制面44Aに接面し、可動部材40が閉位置に維持される。このようにしてコネクタ1への平型導体Cの接続動作が完了する。
【0073】
図7(A)~(C)に示される状態、すなわちコネクタ1との接続状態にある平型導体Cをコネクタ1から意図して抜出する際には、閉位置にある可動部材40を回動させて、
図8(A)~(C)に示される開位置へもたらす。可動部材40が開位置へ回動する過程にて、カム部44のカム面44Cが金具30の付勢部32の下面に摺接しながら該付勢部32を上方へ押圧する。付勢部32が押圧されると、金具30の可動腕部31Bが上方へ弾性変位し、これによって付勢部32が上方へ変位する。つまり、カム部44は付勢部32からの付勢力を受けながら、さらなる回動を許容される。
【0074】
本実施形態では、付勢部32はその板面(圧延面)でカム部44を付勢する。したがって、付勢部の板厚面(破断面)でカム部を付勢する場合と比べて、付勢部32を滑らかな面でカム部44と接触させることができ、また、付勢部32とカム部44との接触面積を大きくすることができる。その結果、可動部材40の移動により付勢部32とカム部44とが繰り返し摺接しても、カム部44の摩耗が生じにくく、付勢部32の付勢力の低下を良好に回避できる。
【0075】
可動部材40が開位置に達すると、
図8(C)に示されているように、カム部44の第二被規制面44Bが上面をなした状態となり、金具30の可動腕部31Bは弾性変位状態が解除され自由状態に戻る。この結果、付勢部32の下面がカム部44の第二被規制面44Bに接面し、可動部材40が開位置に維持される。このように可動部材40が開位置に維持されることにより、可動部材40が不用意に閉位置へ向けて移動することを回避できる。
【0076】
このように可動部材40が開位置へ移動した結果、可動部材40の係止部42は、
図8(B)に示されるように平型導体Cの切欠部C1から上方へ外れ、平型導体Cの抜出が許容される状態となる。また、この状態は、
図8(C)に示される付勢部32の下面とカム部44の第二被規制面44Bとの接面により維持される。そして、平型導体Cを後方(X2方向)へ引くことにより、該平型導体Cはコネクタ1から難なく抜出され、抜出動作が完了する。
【0077】
本実施形態では、金具30に固定脚部33を設けて、該固定脚部33を回路基板の実装面に半田接続されるようにしたので、可動部材40の回動過程において、付勢部32が上方へ向けた力を可動部材40のカム部44から受けた際に、固定脚部33の半田接続部分により上記上方へ向けた力に対抗することはでき、その結果、金具30がハウジングから外れてしまうことを回避できる。
【0078】
また、本実施形態では、金具30に係止脚部34を設けることにより、付勢部32が上方への向けた力を可動部材40のカム部44から受けた際に、係止脚部34がハウジング10の被係止端部17Bに対して下方から係止するようになっているので、金具30がハウジング10から外れてしまうことを回避できる。特に、コネクタ1が回路基板に実装される前は、固定脚部33がまだ回路基板の実装面に半田接続されていないので、固定脚部33の半田接続部分により上記上方へ向けた力に対抗することはできない。したがって、係止脚部34を設けて該係止脚部34と被係止端部17Bとの係止力により上記上方へ向けた力に対抗できることは、コネクタ実装前において非常に有効である。
【0079】
本実施形態では、平型導体Cの回路部が平型導体Cの下面で露呈していることとしたが、これに替えて、回路部は平型導体Cの上面で露呈していてもよい。この場合、端子20の上腕部22が上接触部22Aで回路部に接触する。また、回路部は平型導体Cの下面および上面の両方で露呈していてもよい。この場合には、下面の回路部には下接触部21B-3が接触し、上面の回路部には上接触部22Aが接触する。
【0080】
本実施形態では、金具30の付勢部32が可動部材40のカム部44を付勢することとしたが、可動部材において付勢される部分はカム部であることは必須ではなく、可動部材における他の一部であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 コネクタ
10 ハウジング
11 受入空間
12 下壁(壁部)
19A-1 溝底面(内面)
20 端子
21 下腕部(腕部)
21A 被支持腕部
21B 弾性腕部
21B-1 第一弾性部
21B-2 第二弾性部
21B-3 下接触部(接触部)
22 上腕部(他の腕部)
22A 上接触部(他の接触部)
30 金具
31 本体部
31A 固定腕部
31B 可動腕部
32 付勢部
33 固定脚部
34 係止脚部
40 可動部材
42 係止部
44 カム部
C 平型導体