(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170418
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】放熱コネクタおよびその製造方法ならびに放熱コネクタを備える回路基板構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20231124BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L21/60 311Q
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082158
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100110973
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮
(72)【発明者】
【氏名】堀田 真司
【テーマコード(参考)】
5E322
5F044
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA07
5E322AA11
5E322AB04
5E322BB10
5E322EA11
5E322FA05
5F044KK01
5F044LL09
5F136BC07
5F136FA01
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA23
5F136FA41
5F136FA53
5F136FA63
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡便な構成で、冷却媒体の漏洩リスクが低く、電子部品と回路基板との分離リスクも低く、電子部品から回路基板への放熱性を促進する放熱コネクタ、その製造方法及び放熱コネクタを備える回路基板構造を提供する。
【解決手段】CPUコア11aとCPU基板11bとを備える電子部品11と、回路基板10との間に備えられ、電子部品から回路基板への放熱を促進するための放熱コネクタ1であって、板状のゴム状弾性体2と、ゴム状弾性体2の内部にあって、ゴム状弾性体2の厚さ方向両面に露出する複数本の導電部材3と、を備える。導電部材3は、ゴム状弾性体2に比べて電気伝導性に優れた部材であって、電子部品の複数の電極21及び回路基板上の複数の電極20に接触可能にゴム状弾性体2に配置される。ゴム状弾性体2は、ゴム状弾性体2より熱伝導性に優れ、かつ、導電部材3より低い電気伝導性を有する熱伝導フィラーを含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品と、前記電子部品と電気的に接続される回路基板との間に備え、前記電子部品から前記回路基板への放熱を促進するための放熱コネクタであって、
板状のゴム状弾性体と、
前記ゴム状弾性体の内部にあって、前記ゴム状弾性体の厚さ方向両面に露出する複数本の導電部材と、
を備え、
前記導電部材は、前記ゴム状弾性体に比べて電気伝導性に優れた部材であって、前記電子部品の複数の電極および前記回路基板上の複数の電極に接触可能に前記ゴム状弾性体に配置され、
前記ゴム状弾性体は、前記ゴム状弾性体より熱伝導性に優れ、かつ前記導電部材より低い電気伝導性を有する熱伝導フィラーを含むことを特徴とする放熱コネクタ。
【請求項2】
前記ゴム状弾性体は、シリコーンゴムであることを特徴とする請求項1に記載の放熱コネクタ。
【請求項3】
前記熱伝導フィラーは、板状またはリーフ状のフィラーであることを特徴とする請求項1に記載の放熱コネクタ。
【請求項4】
前記ゴム状弾性体は、その厚さ方向に配向された前記熱伝導フィラーを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱コネクタ。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱コネクタを製造する方法であって、
第1金型内に、硬化後に熱伝導フィラーを含むゴム状弾性体となる熱伝導フィラー含有の硬化性ゴム状弾性体組成物を供給する第1供給工程と、
前記硬化性ゴム状弾性体組成物を挟んで、前記第1金型との対向側に複数のピンを備える第2金型と前記第1金型とを型締めする第1型締工程と、
前記硬化性ゴム状弾性体組成物を硬化して、前記ピンに対応した凹部を有する前記ゴム状弾性体の成形物を得る第1成形工程と、
前記成形物の前記凹部に、硬化後に導電部材となる硬化性導電部材組成物を供給する第2供給工程と、
前記硬化性導電部材組成物を挟んで、第3金型と前記第1金型とを型締めする第2型締工程と、
前記凹部に前記硬化性導電部材組成物を入れて硬化させ、前記導電部材を備える前記ゴム状弾性体の成形物を得る第2成形工程と、
前記第2成形工程後の成形物をスライスして前記放熱コネクタを得るスライス工程と、
を含むことを特徴とする放熱コネクタの製造方法。
【請求項6】
前記第1成形工程において、前記硬化性ゴム状弾性体組成物を前記ピンの方向に流れるようにして成形することを特徴とする請求項5に記載の放熱コネクタの製造方法。
【請求項7】
請求項1から3のいずれか1項に記載の放熱コネクタを、電子部品と、前記電子部品を備える回路基板との間に配置していることを特徴とする回路基板構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱コネクタおよびその製造方法、ならびに放熱コネクタを備える回路基板構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、航空機、船舶あるいは家庭用若しくは業務用電子機器の制御システムは、より高精度かつ複雑化してきており、それに伴って、回路基板上の小型電子部品の集積密度が増加の一途を辿っている。また、最近のPCに用いられているCPUは、高クロック化および高性能化してきており、それに応じて発熱量が多くなってきている。特に、ゲーミングPCでは発熱量の増大が顕著になってきている。
【0003】
このような発熱量の増大に対して、例えば、空冷用のファンを用いる空冷方式(特許文献1を参照)の他、水を用いた水冷方式(特許文献2を参照)が広く知られている。また、CPU等の電子部品側からの冷却方法として、当該電子部品の天面にヒートシンクを設け、さらにヒートシンクの冷却機能を高めるためにヒートシンクに冷却管を備え、その冷却管内に冷却媒体を流して電子部品を冷却する方法も知られている(特許文献3を参照)。
【0004】
また、従来から、次のような放熱構造も知られている。
【0005】
図9は、従来から知られる放熱構造の一例の断面図および当該断面図中の一部Pの拡大図を示す。
【0006】
図9に示す放熱構造体100は、回路基板(ここで、「回路基板」は、例えば、マザーボードであり、電子部品111に含まれる基板、例えば、後述のCPU基板とは区別される。)110上にCPU等の電子部品111が備えられている。電子部品111の一例であるCPUは、CPUコア111aとCPU基板111bとを備える。CPU基板111bには、電子部品111を囲うヒートスプレッダ112が固定されている。ヒートスプレッダ112は、その上面にグリース113を挟んで、放熱フィン114aを備えたヒートシンク114を備える。ヒートシンク114は、ヒートパイプ115を備える。ヒートパイプ115は、放熱フィン115aを備える。電子部品111のCPU基板111bは、複数の電極121を備えている。電子部品111の電極121と回路基板110上の電極120とは、細い金属ピン125によって電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-280780号公報
【特許文献2】特開2002-335091号公報
【特許文献3】特開2006-324345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、上記の従来から公知の放熱技術には、次のような問題がある。まず、空冷方式の場合には、ファンに代表される機器を搭載する必要があり、その搭載エリアを確保する必要がある。また、水冷方式の場合には、水を使うことから、漏水を防止する手段を講ずる必要がある。さらに、電子部品上に冷却管付きのヒートシンクを搭載する方法の場合には、既存のマザーボードに対し、新たな冷却用のハウジングを設けて取り付ける必要があるため、従来の基本的なPC構成を大きく変える必要がある。また、ポンプ等の冷却装置は搭載スペースを要するため、簡便な冷却技術とはいえない。さらには、電子部品の上部からの放熱機構だけでは、電子部品の放熱が十分ではない。
【0009】
加えて、
図9に示す従来から公知の放熱構造の場合には、電子部品111と回路基板110との間には空気130が存在するだけである。このため、電子部品111の放熱は、専ら、ヒートシンク114から上方の放熱機構に委ねられる。このため、電子部品111の放熱は十分とは言えない。さらに、金属ピン125は非常に細いことから、その断線のリスクが高い。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡便な構成で、冷却媒体の漏洩リスクが低く、電子部品と回路基板との分離リスクも低く、電子部品から回路基板への放熱性を促進できるようにすることを目的とする。なお、このような目的を達成することは、「すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」という本出願人の持続可能な開発目標の達成にも資する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱コネクタは、電子部品と、前記電子部品と電気的に接続される回路基板との間に備え、前記電子部品から前記回路基板への放熱を促進するための放熱コネクタであって、
板状のゴム状弾性体と、
前記ゴム状弾性体の内部にあって、前記ゴム状弾性体の厚さ方向両面に露出する複数本の導電部材と、
を備え、
前記導電部材は、前記ゴム状弾性体に比べて電気伝導性に優れた部材であって、前記電子部品の複数の電極および前記回路基板上の複数の電極に接触可能に前記ゴム状弾性体に配置され、
前記ゴム状弾性体は、前記ゴム状弾性体より熱伝導性に優れ、かつ前記導電部材より低い電気伝導性を有する熱伝導フィラーを含む。
(2)別の実施形態に係る放熱コネクタにおいて、好ましくは、前記ゴム状弾性体は、シリコーンゴムであっても良い。
(3)別の実施形態に係る放熱コネクタにおいて、好ましくは、前記熱伝導フィラーは、板状またはリーフ状のフィラーであっても良い。
(4)別の実施形態に係る放熱コネクタにおいて、好ましくは、前記ゴム状弾性体は、その厚さ方向に配向された前記熱伝導フィラーを含んでいても良い。
(5)上記目的を達成するための一実施形態に係る放熱コネクタの製造方法は、上述のいずれか1つの放熱コネクタを製造する方法であって、
第1金型内に、硬化後に熱伝導フィラーを含むゴム状弾性体となる熱伝導フィラー含有の硬化性ゴム状弾性体組成物を供給する第1供給工程と、
前記硬化性ゴム状弾性体組成物を挟んで、前記第1金型との対向側に複数のピンを備える第2金型と前記第1金型とを型締めする第1型締工程と、
前記硬化性ゴム状弾性体組成物を硬化して、前記ピンに対応した凹部を有する前記ゴム状弾性体の成形物を得る第1成形工程と、
前記成形物の前記凹部に、硬化後に導電部材となる硬化性導電部材組成物を供給する第2供給工程と、
前記硬化性導電部材組成物を挟んで、第3金型と前記第1金型とを型締めする第2型締工程と、
前記凹部に前記硬化性導電部材組成物を入れて硬化させ、前記導電部材を備える前記ゴム状弾性体の成形物を得る第2成形工程と、
前記第2成形工程後の成形物をスライスして前記放熱コネクタを得るスライス工程と、を含む。
(6)別の実施形態に係る放熱コネクタの製造方法において、好ましくは、前記第1成形工程において、前記硬化性ゴム状弾性体組成物を前記ピンの方向に流れるようにして成形するようにしても良い。
(7)上記目的を達成するための一実施形態に係る回路基板構造は、上述のいずれか1つの放熱コネクタを、電子部品と、前記電子部品を備える回路基板との間に配置している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡便な構成で、冷却媒体の漏洩リスクが低く、電子部品と回路基板との分離リスクも低く、電子部品から回路基板への放熱性を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る放熱コネクタの平面図、正面図、右側面図、平面図のA-A線断面図および正面図の一部Bの拡大図を示す。
【
図2】
図2は、
図1の放熱コネクタを電子部品と回路基板との間に配置している回路基板構造における、電子部品の電極の位置で回路基板の厚さ方向に沿って切断した縦方向断面図およびその一部Cの拡大図を示す。
【
図3】
図3は、
図1の放熱コネクタ上に電子部品を配置する状況を平面視にて示す。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る放熱コネクタの製造方法のフローを示す。
【
図7】
図7は、
図6のフローに応じた製造状況の一部の断面視を示す。
【
図9】
図9は、従来から知られる放熱構造の一例の断面図および当該断面図中の一部Pの拡大図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている諸要素およびその組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0015】
1.放熱コネクタ
図1は、本発明の実施形態に係る放熱コネクタの平面図、正面図、右側面図、平面図のA-A線断面図および正面図の一部Bの拡大図を示す。
図2は、
図1の放熱コネクタを電子部品と回路基板との間に配置している回路基板構造における、電子部品の電極の位置で回路基板の厚さ方向に沿って切断した縦方向断面図およびその一部Cの拡大図を示す。
【0016】
この実施形態に係る放熱コネクタ1は、電子部品11と、電子部品11と電気的に接続される回路基板(ここで、「回路基板」は、例えば、マザーボードであり、電子部品11に含まれる基板、例えば、後述のCPU基板とは区別される。)10との間に備え、電子部品11から回路基板10への放熱を促進するための放熱コネクタである。放熱コネクタ1は、板状のゴム状弾性体2と、ゴム状弾性体2の内部にあって、ゴム状弾性体2の厚さ方向両面に露出する複数本の導電部材3と、を備える。ゴム状弾性体2は、ゴム状弾性体2より熱伝導性に優れ、かつ導電部材3より低い電気伝導性を有する熱伝導フィラー4を含む。放熱コネクタ1の厚さは、電子部品11と回路基板10との間で導通がとれる限り制限されないが、密着性、熱伝導性と電気伝導性を保つため、50μm以上1000μm以下であるのが好ましい。
【0017】
この実施形態では、ゴム状弾性体2は、厚さの小さな直方体であるが、直方体に限定されず、板状であれば円板、楕円板などの他の形態でも良い。また、導電部材3は、この実施形態では、円柱の形状であるが、楕円柱の形状、あるいは端面を三角以上の多角形とする多角柱の形状としても良い。導電部材3は、この実施形態では、放熱コネクタ1の平面視にて、6行×9列にて整列して配置されている。この実施形態では、導電部材3は、電子部品11の一例であるCPUの下面の複数の電極(端子ともいう)21のそれぞれに1対1に接触可能であり、かつ回路基板10の複数の電極(端子ともいう)20のそれぞれに1対1に接触可能である。ただし、導電部材3は、電子部品11の電極21と回路基板10の電極20とを電気的に接続可能であれば、どのような形状、間隔および配置形態でゴム状弾性体2に形成されていても良い。以下、ゴム状弾性体2、導電部材3および熱伝導フィラー4について詳述する。
【0018】
(1)ゴム状弾性体
ゴム状弾性体2は、電気的絶縁性(単に絶縁性ともいう)に優れた弾性体である。ゴム状弾性体2の絶縁性のレベルは、好ましくは、JIS K 6249による絶縁破壊電圧5kV以上である。ゴム状弾性体2は、好ましくは、シリコーンゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、天然ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ニトリルゴム(NBR)あるいはスチレンブタジエンゴム(SBR)等の熱硬化性エラストマー; ウレタン系、エステル系、スチレン系、オレフィン系、ブタジエン系、フッ素系等の熱可塑性エラストマー、あるいはそれらの複合物等を含むように構成される。ゴム状弾性体2は、熱可塑性あるいは熱硬化性以外、例えば、光硬化性または電子線硬化性の硬化体でも良い。
【0019】
ゴム状弾性体2は、電子部品11から放熱コネクタ1を経由して回路基板10に伝達する熱によって溶融あるいは分解等せずにその形態を維持できる程度の耐熱性の高い材料から構成されるのが好ましい。この実施形態では、ゴム状弾性体2は、より好ましくは、シリコーンゴムあるいはウレタンゴムにより構成される。この実施形態では、ゴム状弾性体2は、シリコーンゴムである。
【0020】
(2)導電部材
導電部材3は、ゴム状弾性体2に比べて電気伝導性に優れた部材である。導電部材3は、電子部品11の複数の電極21および回路基板10上の複数の電極20に接触可能にゴム状弾性体2に配置されている。具体的には、導電部材3は、ゴム状弾性体2の厚さ方向の表面側と裏面側とに露出して当該厚さ方向に通電可能に、ゴム状弾性体2中に配置されている。
【0021】
導電部材3は、1×104S/m以上、好ましくは1×106S/m以上の電気伝導率を有する部材である。導電部材3としては、銅、銀、金、アルミニウム、タングステン若しくはそれらの内の一つを含む合金に代表される金属; グラファイト; または金属若しくはグラファイトを分散させた樹脂などを例示できる。当該樹脂は、熱可塑性、熱硬化性、光硬化性または電子線硬化性のいずれでも良い。導電部材3は、電子部品11と回路基板10との間の電気信号を通すルートとなる。
【0022】
(3)熱伝導フィラー
ゴム状弾性体2は、ゴム状弾性体2より熱伝導性に優れ、かつ導電部材3より低い電気伝導性を有する熱伝導フィラー4を含む。熱伝導フィラー4の電気伝導率は、1×104S/m未満、好ましくは1×102S/m未満である。熱伝導フィラー4は、放熱コネクタ1の熱伝導率を1W/m・K以上とすることができるほどの熱伝導率を有する。熱伝導フィラー4の熱伝導率は、好ましくは、10W/m・K以上である。熱伝導フィラー4は、好ましくは、ゴム状弾性体2に対して、10体積%以上80体積%以下、より好ましくは、20体積%以上70体積%以下、さらにより好ましくは、30体積%以上60体積%以下で含まれる。
【0023】
熱伝導フィラー4の形状は、針状、繊維状、板状、リーフ状または粒状などの如何なる形状でも良いが、好ましくは、板状またはリーフ状である。また、熱伝導フィラー4は、ゴム状弾性体2の厚さ方向に配向している方が好ましい。それは、放熱コネクタ1の厚さ方向に沿って熱を伝達しやすくできるからである。熱伝導フィラー4の形状が板状またはリーフ形状の場合には、熱伝導フィラー4を、一方向に、より配向させやすくなる。
【0024】
熱伝導フィラー4は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ダイヤモンド、またはそれらの2以上の混合物であり、特に好ましくはアルミナである。
【0025】
2.回路基板構造
この実施形態に係る回路基板構造5は、上述の放熱コネクタ1を、電子部品11と、電子部品11を備える回路基板10との間に配置した構造である。放熱コネクタ1の導電部材3は、電子部品11に備えられている電極21と、回路基板10に備えられている電極20と、を電気的に接続している。ゴム状弾性体2は、電子部品10と回路基板10との間の空間を埋めていて、電子部品11から回路基板10への熱伝導を促進する機能を有する。
【0026】
電子部品11は、CPU、各種メモリを好適に例示できるが、これらに限定されず、回路基板10上の電極20を通じて電気的に接続可能な部品であれば良い。この実施形態では、電子部品11はCPUである。CPUは、CPUコア11aとCPU基板11bとを備える。CPU基板11bは、複数の電極21を備えている。回路基板10の裏面、すなわち、電子部品11の搭載面とは反対側の面には、電子部品11の直下位置に、放熱シート(またはヒートパイプ)25を備えても良い。
【0027】
図3は、
図1の放熱コネクタ上に電子部品を配置する状況を平面視にて示す。
【0028】
電子部品11は、電子部品11の各電極21(
図3において点線で示す。)が放熱コネクタ1の導電部材3と1対1で接続するように配置される。この接続方法として、電子部品11の1つの電極21に対し、放熱コネクタ1の1つの導電部材3を介し、回路基板10の電極20の1つが接続されるように導電部材3を形成することができる。この変形例については後述する。
【0029】
【0030】
変形例に係る回路基板構造5aは、前述の回路基板構造5に加え、電子部品11の上方に熱を伝達させる構成を備える。電子部品11の一例であるCPUは、CPUコア11aとCPU基板11bとを備える。電子部品11の一例であるCPUのCPU基板11bには、電子部品11を囲うヒートスプレッダ12が固定されている。ヒートスプレッダ12は、その上面にグリース13を挟んで、放熱フィン14aを備えたヒートシンク14を備える。ヒートシンク14は、ヒートパイプ15を備える。ヒートパイプ15は、放熱フィン15aを備える。ヒートシンク14およびヒートパイプ15を電子部品11の上方に備えると、放熱コネクタ1を通じて回路基板10側に放熱するのに加えて、電子部品11の上方にも放熱することができる。
【0031】
図5は、
図2の回路基板構造における
図4とは別の変形例を示す。
【0032】
図5では、放熱コネクタ1の上に電子部品11を配置する状況の平面図、および回路基板10と電子部品11との間に放熱コネクタ1を備える状態の縦断面図が示されている。
図5に示す変形例では、電子部品11の1つの電極21に対し、放熱コネクタ1の2以上の導電部材3を介し、回路基板10の電極20の1つが接続されるように導電部材3が形成されている。この場合、導電部材3が電子部品11と回路基板10のそれぞれの電極21,20とその電極間距離よりも小さい断面積で多数が整列形成されている。電子部品11と回路基板10の垂直方向の位置関係がズレない限り、導電部材3のいずれかによって接続が成立するため、放熱コネクタ1の細かな位置決めをする必要がない。よって、
図3に示す放熱コネクタ1に比べて、より簡便な実装が可能である。
【0033】
3.放熱コネクタの製造方法
図6は、本発明の実施形態に係る放熱コネクタの製造方法のフローを示す。
図7は、
図6のフローに応じた製造状況の一部の断面視を示す。
図8は、
図7に続く製造状況の一部の断面視を示す。
【0034】
この実施形態に係る放熱コネクタの製造方法は、第1供給工程と、第1型締工程と、第1成形工程と、第2供給工程と、第2型締工程と、第2成形工程と、スライス工程と、を含む。以下、各工程について詳述する。
【0035】
(1)第1供給工程(ST100)
第1供給工程は、第1金型31内に、硬化後に熱伝導フィラー4を含むゴム状弾性体2となる熱伝導フィラー含有の硬化性ゴム状弾性体組成物R1を供給する工程である。第1金型31は、上記硬化性ゴム状弾性体組成物R1を供給する凹部33の他に、好ましくは、凹部33から溢れた硬化性ゴム状弾性体組成物R1を貯めるための凹部34と、を有する。
【0036】
(2)第1型締工程
第1型締工程は、硬化性ゴム状弾性体組成物R1を挟んで、第1金型31との対向側に複数のピン32aを備える第2金型32と、第1金型31とを型締めする工程である。第1金型31と第2金型32とは、金型30を構成する。この工程では、ピン32aは、硬化性ゴム状弾性体組成物R1の外側から内側へと挿入される。
【0037】
(3)第1成形工程
第1成形工程は、金型30の型締後に、硬化性ゴム状弾性体組成物R1を硬化して、ピン32aに対応した凹部35を有するゴム状弾性体の成形物R2を得る工程である。この工程では、硬化性ゴム状弾性体組成物R1が熱可塑性組成物の場合には、当該組成物R1が冷却されて成形物R2となる。また、硬化性ゴム状弾性体組成物R1が熱硬化性組成物の場合には、当該組成物R1が加熱されて成形物R2となる。また、硬化性ゴム状弾性体組成物R1が光硬化性組成物または電子線硬化性組成物の場合には、当該組成物R1が光硬化または電子線硬化されて成形物R2となる。この工程において、硬化性ゴム状弾性体組成物R1は、金型30の型締方向に圧縮され、その一部が凹部34へと流れる。すなわち、この工程では、硬化性ゴム状弾性体組成物R1をピン32aの方向に流れるようにして成形する。このため、硬化性ゴム状弾性体組成物R1中の熱伝導フィラー4は、金型30の型締方向、すなわち、放熱コネクタ1の厚さ方向に沿って配向される。なお、成形物R2は、半硬化状態で完全硬化していない状態でも、あるいは完全硬化状態でも良い。
【0038】
(4)第2供給工程
第2供給工程は、成形物R2の凹部35に、硬化後に導電部材3となる硬化性導電部材組成物E1を供給する工程である。この工程では、硬化性導電部材組成物E1は、成形物R2の上(凹部35の開口を含む)に供給される。
【0039】
(5)第2型締工程
第2型締工程は、成形物R2と硬化性導電部材組成物E1とを挟んで、第3金型36と第1金型31とを型締めする。第1金型31と第3金型36とは、金型40を構成する。
【0040】
(6)第2成形工程
第2成形工程は、凹部35に硬化性導電部材組成物E1を入れて硬化させ、導電部材3を備えるゴム状弾性体の成形物Sを得る工程である。硬化性導電部材組成物E1が金属の場合には、高温の溶融状態にある硬化性導電部材組成物E1を成形物R2上に供給される。この際には、凹部35内に硬化性導電部材組成物E1が入った段階で急冷される。また、硬化性導電部材組成物E1が樹脂+金属または樹脂+グラファイトの場合には、凹部35内に硬化性導電部材組成物E1が入った段階で、樹脂の特性に応じて加熱、冷却、光照射または電子線照射が実行される。成形物R2が半硬化状態の場合には、成形物R2は、金型40の型締方向に圧縮され、その一部が凹部34へと流れる。このため、成形物R2中の熱伝導フィラー4は、金型40の型締方向に沿って配向される。一方、成形物R2が完全硬化している場合には、成形物R2は凹部34へと流れない。こうして、成形物R2と成形物E2とを備える成形物Sが完成する。
【0041】
(7)スライス工程
スライス工程は、第2成形工程後の成形物Sをスライスして放熱コネクタ1を得る工程である。この工程では、例えば、スライス刃50を使って、導電部材3の長さ方向と略直角に、成形物Sがスライスされる。こうして、放熱コネクタ1が完成する。
【0042】
4.その他の実施形態
上述のように、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されることなく、種々変形して実施可能である。
【0043】
熱伝導フィラー4は、ゴム状弾性体2の厚さ方向に配向せずに含まれていても良い。第1成形工程では、必ずしも、硬化性ゴム状弾性体組成物R1をピン32aの方向に流れるようにして成形しなくとも良い。
【0044】
上記実施形態および各種変形例中の各構成要素および各工程は、組み合わせ不可能な場合を除き、どのように組み合わせても良い。例えば、ゴム状弾性体2をシリコーンゴムとすることと、熱伝導フィラー4を板状またはリーフ状のフィラーとすることを組み合わせても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、回路基板上の電子部品からの放熱を促進する分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1・・・放熱コネクタ、2・・・ゴム状弾性体、3・・・導電部材、4・・・熱伝導フィラー、5,5a・・・回路基板構造、10・・・回路基板、11・・・電子部品、20,21・・・電極、31・・・第1金型、32・・・第2金型、32a・・・ピン、33・・・凹部、35・・・凹部、36・・・第3金型、R1・・・硬化性ゴム状弾性体組成物、R2・・・成形物、E1・・・硬化性導電部材組成物、S・・・成形物。