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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170420
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】マルチ給湯システム
(51)【国際特許分類】
   F24H 15/32 20220101AFI20231124BHJP
   F24H 1/10 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/10 20220101ALI20231124BHJP
   F24H 15/269 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
F24H15/32
F24H1/10 Z
F24H15/10
F24H15/269
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082163
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004709
【氏名又は名称】株式会社ノーリツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】跡部 嘉史
(72)【発明者】
【氏名】津田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】牛尾 篤史
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼上 俊彦
【テーマコード(参考)】
3L034
【Fターム(参考)】
3L034BA25
3L034BB03
(57)【要約】
【課題】マルチ給湯システムにおいて、ユーザに違和感を与えることなく、各給湯装置が備える能力切換弁の固着を抑制する。
【解決手段】コントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合において、他の給湯装置2が給湯運転中であるときに、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。また、コントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合には、他の給湯装置2が給湯運転していなくても、固着予防制御を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1給湯装置と、
第2給湯装置とを備え、
前記第1給湯装置は、
燃焼機構に燃料を供給する通路に設けられた元電磁弁と、
前記燃焼機構の発生熱量範囲が異なる複数の能力段を切り換えるための能力切換弁と、
前記元電磁弁および前記能力切換弁を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、前記能力切換弁の閉状態が基準時間継続した場合において、前記第1給湯装置が運転停止中であり、かつ、前記第2給湯装置が運転中であるときに、前記元電磁弁を閉弁させた状態で前記能力切換弁を開閉させる固着予防制御を実行する、マルチ給湯システム。
【請求項2】
前記第1給湯装置および前記第2給湯装置の動作を制御する制御装置をさらに備え、
前記制御装置は、前記第2給湯装置が運転中であるか否かを示す情報を前記第1給湯装置に送信するように構成され、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第2給湯装置が運転中であるか否かを判断する、請求項1に記載のマルチ給湯システム。
【請求項3】
前記第2給湯装置は、ファンを含み、
前記情報は、前記ファンが動作している場合に送信される、請求項2に記載のマルチ給湯システム。
【請求項4】
前記第2給湯装置は、当該第2給湯装置が運転中であるか否かを示す情報を前記第1給湯装置に送信するように構成され、
前記制御部は、前記情報に基づいて前記第2給湯装置が運転中であるか否かを判断する、請求項1に記載のマルチ給湯システム。
【請求項5】
前記第1給湯装置および前記第2給湯装置は、屋内に設置される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のマルチ給湯システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
給湯装置には、燃料ガスの供給経路に設けられた電磁弁を開閉制御することにより、バーナへの燃料ガスの供給と遮断とを切り替えるものがある。電磁弁に固着が生じると、バーナに燃料ガスを適切に供給できなくなってしまう。そこで、固着に関する様々な対策がなされている。
【0003】
たとえば、特開2008-267639号公報(特許文献1)には、燃焼器で点火不良や途中消火が発生した場合に、ガス供給管に設けられた比例弁を開閉動作させて、比例弁の固着を解消させる燃焼装置が開示されている。
【0004】
また、特開平8-178421号公報(特許文献2)には、バーナにガスを供給するガス供給管に設けられた電磁弁の固着を、電磁弁に供給される電流の時間変化率に基づいて検出する給湯装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-267639号公報
【特許文献2】特開平8-178421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
複数台の給湯装置を連結して運用させるマルチ給湯システムが知られている。マルチ給湯システムでは、給湯負荷に応じて給湯装置の運転台数が決定される。そのため、複数台の給湯装置において、一定時間使用されない給湯装置が存在し得る。給湯装置が一定時間使用されないと、電磁弁に固着が生じてしまう可能性がある。特に、燃焼機構の能力段を切り換えるための能力切換弁に固着が生じてしまうと、適切な給湯ができなくなってしまう。そこで、能力切換弁の固着を抑制するために、マルチ給湯システムの待機中に各給湯装置の能力切換弁を開閉させることが考えられる。
【0007】
しかしながら、能力切換弁の開閉は、弁体の動作に伴なう動作音を生じさせる。マルチ給湯システムの待機中に給湯装置から生じる動作音は、ユーザに違和感を与え得る。ユーザに違和感を与えることなく、給湯装置が備える能力切換弁の固着を抑制する手法が望まれる。
【0008】
本発明はこの様な問題点を解決するためになされたものであって、本発明の目的は、マルチ給湯システムにおいて、ユーザに違和感を与えることなく、各給湯装置が備える能力切換弁の固着を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある局面では、マルチ給湯システムは、第1給湯装置と、第2給湯装置とを備える。第1給湯装置は、燃焼機構に燃料を供給する通路に設けられた元電磁弁と、燃焼機構の発生熱量範囲が異なる複数の能力段を切り換えるための能力切換弁と、元電磁弁および能力切換弁を制御する制御部とを含む。制御部は、能力切換弁の閉状態が基準時間継続した場合において、第1給湯装置が運転停止中であり、かつ、第2給湯装置が運転中であるときに、元電磁弁を閉弁させた状態で能力切換弁を開閉させる固着予防制御を実行する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、マルチ給湯システムにおいて、ユーザに違和感を与えることなく、各給湯装置が備える能力切換弁の固着を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係るマルチ給湯システムの構成例を示すブロック図である。
図2】実施の形態に係る給湯装置の構成例を示すブロック図である。
図3】給湯装置における固着予防制御を説明するための図(その1)である。
図4】給湯装置における固着予防制御を説明するための図(その2)である。
図5】固着予防制御における能力切換弁の制御を説明するための図である。
図6】コントローラで実行される固着予防制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。
図7】コントローラで実行される運転指令を監視するための処理の手順を示すフローチャートである。
図8】変形例5に係るマルチ給湯システムの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお以下では、図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰返さないものとする。
【0013】
<構成図>
図1は、本実施の形態に係るマルチ給湯システム1の構成例を示すブロック図である。マルチ給湯システム1は、複数の給湯装置2a~2fを連結して運用するように構成された連結型給湯システムである。マルチ給湯システム1は、たとえば、ホテルなどの大量の出湯(大きな給湯負荷)が要求される商業施設等に用いることができる。マルチ給湯システム1は、給湯負荷に応じて、給湯運転を行なう給湯装置の台数を変更可能に構成される。
【0014】
図1を参照して、マルチ給湯システム1は、複数の給湯装置2a~2fと、マルチ給湯システム1全体を統括制御するためのシステムコントローラ3と、給水配管4と、給湯配管7と、給湯栓8と、ガス供給管9とを備える。以下では、給湯装置2a~2fの各々を特に区別しない場合には、「給湯装置2」と総称する場合がある。
【0015】
マルチ給湯システム1は、給湯負荷に応じて、給湯運転を行なう給湯装置2の台数を変更可能に構成される。給湯運転を行なう給湯装置2の台数は、システムコントローラ3により制御される。システムコントローラ3は、後述する運転台数制御を行なうように構成される。
【0016】
給水配管4は、上水道等の水源から供給される水を各給湯装置2に供給するための配管である。給水配管4の下流側の先端は、各給湯装置2の入水管5に接続されている。各給湯装置2は、給水配管4と接続された入水管5から供給される水を加熱昇温させて、昇温された水(お湯)を出湯管6を介して給湯配管7に供給する。
【0017】
給湯配管7は、各給湯装置2から出湯される湯水を給湯栓8に供給するための配管である。給湯配管7の上流側の先端は、各給湯装置2の出湯管6に接続されており、給湯配管7の下流側の先端は、給湯栓8に接続されている。マルチ給湯システム1は、給湯配管7に対して並列に接続された複数の給湯装置2a~2fからの出湯により給湯運転を実行することができる。
【0018】
ガス供給管9は、各給湯装置2へ燃料ガスを供給するための配管である。ガス供給管9の下流側の先端は、各給湯装置2のガス供給管61に接続されている。
【0019】
給湯装置2は、コントローラ20を備える。コントローラ20は、マイクロコンピュータを含んで構成される。このコントローラ20は、給湯装置2の動作を制御するためのプログラムが記憶された記憶部をさらに含んで構成される。コントローラ20の構成の詳細は後に図2を参照しながら説明する。
【0020】
システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのコントローラ20a~20fを統括制御する。システムコントローラ3は、制御部31と、記憶部32と、通信部33とを含む。なお、システムコントローラ3は、本発明に係る「制御装置」の一例に相当する。
【0021】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)34およびインターフェース(I/F)35を含むマイクロコンピュータによって構成することができる。
【0022】
記憶部32は、ROM(Read Only Memory)36およびRAM(Random Access Memory)37を含む。ROM36は、CPU34で実行されるプログラムを記憶するためのメモリである。RAM37は、CPU34でプログラムを実行する際の作業領域となり、かつ計測値を記憶したりするためのメモリである。たとえば、ROM36には、システムコントローラ3の動作を制御するためのプログラムが格納されている。制御部31は、起動処理時において、ROM36に格納されたプログラムを読み出してRAM37に展開する。制御部31はRAM37に展開されたプログラムを実行してシステムコントローラ3の動作を制御する。
【0023】
通信部33には、通信線(たとえば、2心通信線)CLが接続されている。通信部33は、通信線CLを介して、給湯装置2a~2fの各々のコントローラ20a~20fとの間で双方向にデータを送受信することによって情報を授受できるように構成されている。
【0024】
システムコントローラ3には、通信線CLを経由して、最大m台(m:予め定められた自然数)の給湯装置2が接続可能である。また、給湯装置2は、浴槽等への補給水装置によって構成することも可能である。
【0025】
図1の構成例では、m=6とし、最大6台の給湯装置2a~2fがシステムコントローラ3に接続されている。なお、システムコントローラ3の構成は任意である。システムコントローラ3は、図1のように複数の給湯装置2a~2fとは別体に設けられてもよいし、複数の給湯装置2a~2fのうちの1台の給湯装置2の内部に設けられてもよい。また、1台または複数台のシステムコントローラによってシステムコントローラ3が構成されてもよい。
【0026】
各給湯装置2のコントローラ20が格納されたプログラムを実行することにより、システムコントローラ3からの指令に従って給湯装置2を動作させるためのソフトウェア処理が実現される。
【0027】
図2は、本実施の形態に係る給湯装置2の構成例を示すブロック図である。図2を参照して、給湯装置2は、入水管5と、出湯管6と、熱交換器10および燃焼機構50等が格納された燃焼缶体(以下、単に「缶体」とも称する)14と、コントローラ20と、ファン40と、缶体配管70と、バイパス管75と、バイパス弁80とを備える。本実施の形態では、燃焼機構50は、複数本のバーナ60を含んで構成される。
【0028】
入水管5は、バイパス弁80を経由して、缶体配管70およびバイパス管75と接続される。入水管5には、給水配管4を経由して、水道水等の低温水が供給される。入水管5の低温水は、バイパス弁80を経由して、缶体配管70およびバイパス管75へ分配される。
【0029】
缶体配管70は、熱交換器10に接続される。熱交換器10は、一次熱交換器11および二次熱交換器12を有する。入水管5から缶体配管70へ導入された低温水は、バーナ60の発生熱量により、熱交換器10を通過することによって加熱される。
【0030】
バーナ60へのガス供給管61には、元ガス電磁弁62、ガス比例弁63および、能力切換弁65~67が配置される。元ガス電磁弁62は、バーナ60への燃料ガスの供給をオンオフする機能を有する。ガス供給管61のガス流量は、ガス比例弁63の開度に応じて制御される。
【0031】
能力切換弁65~67は、燃焼機構50を構成するバーナ60のうちの、燃料ガスの供給対象となるバーナ本数を切り換えるために開閉制御される。図2の構成例では、10本のバーナ60のうち、能力切換弁65の開放により5本のバーナ60に対して燃料が供給され、能力切換弁66の開放により2本のバーナ60に対して燃料が供給され、能力切換弁67の開放により3本のバーナ60に対して燃料が供給される。
【0032】
本実施の形態では、能力切換弁65~67の開放によって燃料が供給されるバーナを「燃焼バーナ」と称し、その数を「燃焼バーナ本数」とも称する。上述した能力切換弁65~67の開閉により、燃焼バーナ本数、すなわち、加熱能力が異なる複数の能力段を切り換えることができる。
【0033】
本実施の形態では、能力1段(STG=1)~能力3段(STG=3)の3段階で、燃焼バーナの本数が切り換えられる。すなわち、能力切換弁65~67の開閉により、能力1段~能力3段の3段階の能力段に切り換えることができる。たとえば、能力1段では、能力切換弁66のみの開放によって燃焼バーナは2本であり、能力2段では、能力切換弁65および66の開放によって燃焼バーナは7本であり、能力3段では、能力切換弁65~67の開放によって燃焼バーナは10本である。
【0034】
燃焼機構50の発生熱量は、燃焼バーナ本数と、ガス流量との組み合わせによって決まる。すなわち、各能力段において、ガス比例弁63の開度によって制御されるガス流量の増加に比例して、発生熱量は増加する。
【0035】
缶体14において、バーナ60から出力された燃料ガスは、ファン40からの燃焼用空気と混合される。ファン40による送風量は、バーナ60全体からの供給ガス量に対する燃焼用の空気量が適正値となる様に制御される。ファン40の送風量は、ファン回転数と比例するので、ファン40の回転数は、要求される発生熱量に伴って設定される回転数指令に従って制御される。ファン40には、ファン回転数を検出するための回転数センサ45が設けられている。
【0036】
燃料ガスと燃焼用空気との混合気が、図示しない点火装置によって着火されることにより、燃料ガスが燃焼されて火炎が生じる。バーナ60からの火炎によって生じる、燃焼機構50からの燃焼熱は、缶体14内で一次熱交換器11および二次熱交換器12へ与えられる。
【0037】
二次熱交換器12は、燃焼機構50からの燃焼排ガスの潜熱によって、通流された低温水を熱交換によって予熱する。一次熱交換器11は、二次熱交換器12によって予熱された低温水を、燃焼機構50からの燃焼ガスの顕熱(燃焼熱)による熱交換によってさらに加熱する。これにより、熱交換器10によって加熱された高温水が、出湯管6へ出力される。缶体14の燃焼ガスの流れ方向下流側には熱交換後の燃焼排ガスを排出処理するための排気経路15が設けられる。
【0038】
バイパス管75および出湯管6は、合流点78において接続される。したがって、給湯装置2からは、缶体14から出力された高温水と、バイパス管75からの低温水との混合によって調温された適温の温水が給湯配管7(図1)に供給される。
【0039】
図2に例示された給湯装置2は、熱交換器10を通過した高温水および熱交換器10をバイパスした低温水を混合する、いわゆるバイパスミキシング方式の構成を有している。
【0040】
バイパス弁80は、コントローラ20からの制御指令に従って弁開度が制御されることにより、缶体配管70の流量およびバイパス管75の流量の比率を制御する。たとえば、バイパス弁80による流量比率kは、図示しない弁体を開閉するステッピングモータによって制御することができる。
【0041】
温度センサ110は、缶体配管70または入水管5に配置されて、熱交換器10による加熱前の入水温度Twを検出する。缶体配管70には、流量センサ150を配置することができる。流量センサ150は、代表的には、羽根車式流量センサによって構成することができる。
【0042】
缶体配管70に配置された流量センサ150によって、缶体配管70の流量、すなわち、熱交換器10を通過して加熱される流量である缶体流量Qbが検出される。なお、入水管5に流量センサ150を配置した場合には、給湯装置2に導入される全体流量Qtlを検出することができる。
【0043】
上述した流量比率kを用いて、缶体流量Qbおよび全体流量Qtlの間には、Qb=k・Qtlの関係が成立する。したがって、流量センサ150によって、缶体流量Qbおよび全体流量Qtlの一方を検出すると、他方はバイパス弁80の開度から換算された流量比率kを用いて、計算によって求めることができる。
【0044】
出湯管6には、温度センサ120,130が設けられている。温度センサ120は、出湯管6およびバイパス管75の合流点78よりも上流側(熱交換器10側)に配置されて、熱交換器10を通過した高温水の温度を検出する。温度センサ130は、合流点78よりも下流側(出湯側)に配置されて、上記高温水とバイパス管75からの低温水の混合後の湯温を検出する。
【0045】
更に、出湯管6には、出湯流量を制御するための流量調整弁90が設けられている。流量調整弁90の弁開度は、コントローラ20によって制御される。たとえば、燃焼開始直後の加熱能力が不足する期間中において、出湯流量を絞るように流量調整弁90の開度が制御されることによって、出湯温度の低下を抑制することができる。また、燃焼開始直後以外でも、最大発生熱量で運転する場合や、最大許容流量で運転する場合等において、目標温度に従って出湯するために、流量調整弁90によって出湯流量を絞る制御を実行することができる。
【0046】
コントローラ20は、制御部21と、記憶部22と、通信部23とを含む。制御部21は、CPU24およびインターフェース(I/F)25を含むマイコンによって構成することができる。
【0047】
記憶部22は、ROM26およびRAM27を含む。ROM26は、CPU24で実行されるプログラムを記憶するためのメモリである。RAM27は、CPU24でプログラムを実行する際の作業領域となり、かつ計算値を記憶するためのメモリである。たとえば、ROM26には、コントローラ20の動作を制御するためのプログラムが格納されている。制御部21は、起動処理時において、ROM26に格納されたプログラムを読み出してRAM27に展開する。制御部21はRAM27に展開されたプログラムを実行してコントローラ20の動作を制御する。コントローラ20は、一般的なコンピュータに相当する機能を有して構成することができる。
【0048】
通信部23には、通信線CLが接続されている。通信部23は、通信線CLを介して、システムコントローラ3との間で双方向にデータを送受信することによって情報を授受できるように構成されている。
【0049】
<給湯装置の運転台数制御>
稼働させる給湯装置2の台数は、システムコントローラ3により制御される。システムコントローラ3は、給湯栓8からの出湯量(給湯負荷)に応じて燃焼動作させる給湯装置2の台数を制御する。
【0050】
システムコントローラ3は、図示しないリモートコントローラから運転スイッチがオンされたことを示す信号を取得すると、制御プログラムに従って、複数の給湯装置2a~2fのうち最初に燃焼動作させるメイン給湯装置(たとえば、給湯装置2a)を設定する。リモートコントローラは、マルチ給湯システム1に対して、ユーザが運転を指令するためのコントローラである。システムコントローラ3は、メイン給湯装置の出湯管6に備えられた流量調整弁90を開放させて、メイン給湯装置だけを給湯待機状態にしておく。なお、メイン給湯装置は1台に限られず、たとえば、当初から大きな給湯負荷が見込まれる場合には複数の給湯装置をメイン給湯装置に設定してもよい。
【0051】
システムコントローラ3は、メイン給湯装置以外の給湯装置であるサブ給湯装置(たとえば、給湯装置2b~2f)の出湯管6に備えられた流量調整弁90を全閉に制御して、サブ給湯装置に通水が生じないようにする。したがって、この状態で、給湯栓8が開かれると、メイン給湯装置(たとえば、給湯装置2a)にだけ通水が生じる。給湯装置2a(メイン給湯装置)において、コントローラ20aは、流量センサ150aの検出値が所定量(いわゆる最低作動流量MOQ)を超えると、給湯装置2aの給湯運転を開始させる。なお、流量調整弁90に代えて、缶体配管70に缶体流量調整弁を、バイパス管75にバイパス流量調整弁をそれぞれ設けて、缶体流量調整弁およびバイパス流量調整弁の弁開度を制御することにより出湯流量を調整するように給湯装置2が構成される場合には、システムコントローラ3は、待機中のサブ給湯装置の缶体流量調整弁およびバイパス流量調整弁を全閉に制御する。
【0052】
給湯装置2a(メイン給湯装置)の給湯運転中に、給湯栓8での出湯流量の増加等により給湯負荷が増加し、給湯負荷が給湯装置2aの給湯能力(出湯能力)の上限に近づくと、システムコントローラ3は、給湯装置2aの出湯能力が上限に達する前に1台のサブ給湯装置(たとえば、給湯装置2b)の出湯管6bに備えられた流量調整弁90bを開放させる。これにより、給湯装置2bにも通水が生じる。給湯装置2bにおいて、コントローラ20bは、流量センサ150bの検出値が所定量(いわゆる最低作動流量MOQ)を超えると、給湯装置2bの給湯運転を開始させる。このように、メイン給湯装置の出湯能力が上限に近づくと、サブ給湯装置を燃焼動作させて、メイン給湯装置の出湯能力の不足を補うようになっている。
【0053】
さらに給湯負荷が増加し、給湯装置2bも出湯能力の上限に近づくと、システムコントローラ3は、別の1台のサブ給湯装置(たとえば、給湯装置2cとする)の出湯管6cに備えられた流量調整弁90cを開放させて、メイン給湯装置(給湯装置2a)およびサブ給湯装置(給湯装置2b)の出湯能力の不足をサブ給湯装置(給湯装置2c)の燃焼動作によって補う。このように、運転台数制御では、システムコントローラ3は、給湯負荷に応じて運転させる給湯装置2の台数を変化させる制御を行なう。
【0054】
なお、給湯負荷が減少し、サブ給湯装置の運転が不要となった場合、システムコントローラ3は、給湯運転中の1台のサブ給湯装置(たとえば、給湯装置2c)に対して給湯運転を禁止する旨の制御指令を与える。これにより、給湯装置2cのコントローラ20cは、給湯装置2cの流量調整弁90を全閉に制御するとともに、給湯運転を停止する。
【0055】
<固着予防制御>
ここで、マルチ給湯システム1に含まれる給湯装置2の台数(上述の自然数m)は、マルチ給湯システム1の設置場所における使用態様に応じて決定される。具体的には、マルチ給湯システム1の給湯能力(出湯能力)が、マルチ給湯システム1に要求され得る給湯負荷のピーク以上となるように、マルチ給湯システム1に含まれる給湯装置2の台数が決定される。要求され得る給湯負荷のピークに対して余裕を持つように給湯装置2の台数が決定されるので、稼働されない給湯装置2が存在し得る。稼働されない給湯装置2を存在させないために、システムコントローラ3は、メイン給湯装置を適宜変更する(ローテーションさせる)。たとえば、システムコントローラ3は、所定期間(たとえば24時間)毎に、メイン給湯装置を、給湯装置2a,2b,2c,2d,2e,2fの順にローテーションさせる。メイン給湯装置のローテーションによって、各給湯装置2の累積作動時間を平均化させて、マルチ給湯システム1内の給湯装置2間の寿命のばらつきを抑制する。
【0056】
しかしながら、上記のようにメイン給湯装置をローテーションさせたとしても、給湯負荷によっては、一定期間運転されない(動作されない)給湯装置2が生じ得る。たとえば、メイン給湯装置が給湯装置2fから給湯装置2aにローテーションされ、その後、給湯負荷が小さい状況が継続するような場合、給湯装置2fは、次にメイン給湯装置に設定されるまで運転されない可能性がある。給湯装置2が一定期間運転されないと、能力切換弁65~67が一定期間開閉されず、能力切換弁65~67に固着が生じてしまう可能性がある。
【0057】
上記への対策として、たとえば、システムコントローラ3は、マルチ給湯システム1の待機中に、一定期間運転されなかった給湯装置2の能力切換弁65~67を開閉させることにより、能力切換弁65~67の固着を抑制することが考えられる。しかしながら、能力切換弁65~67の開閉は、弁体の動作に伴なう動作音を生じさせる。マルチ給湯システム1の待機中に給湯装置2から生じる動作音(主として能力切換弁65~67の動作音)は、ユーザに違和感を与え得る。
【0058】
そこで、本実施の形態に係るマルチ給湯システム1では、一定期間運転されなかった給湯装置2(対象の給湯装置2)がある場合、少なくとも1台の他の給湯装置2の給湯運転中に、対象の給湯装置2の固着予防制御を実施する。固着予防制御は、元ガス電磁弁62を閉弁させた状態で、能力切換弁65~67を閉状態から開状態にし、その後に再び閉状態にする制御である。固着予防制御の詳細については後述する。給湯装置2の給湯運転中には、種々の動作音が生じている。他の給湯装置2の給湯運転中に固着予防制御を実行すれば、固着予防制御により生じる動作音がユーザに違和感を与えることを抑制することができる。
【0059】
本実施の形態では、第1基準時間Tth1および第2基準時間Tth2(>Tth1)の2つの基準時間を設ける。第1基準時間Tth1は、固着予防制御の実行可否を判断するための閾値である。能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第1基準時間Tth1以上となった場合、コントローラ20は、マルチ給湯システム1に含まれる他の給湯装置2の中に給湯運転中の給湯装置2があるか否かを判断する。閉弁継続時間の検出には、たとえば、コントローラ20に含まれる不図示のタイマを用いることができる。コントローラ20は、給湯運転中の給湯装置2がある場合、固着予防制御を実行する。コントローラ20は、給湯運転中の給湯装置2がない場合、固着予防制御を実行しない。第1基準時間Tth1は、たとえば、12時間に設定される。なお、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第1基準時間Tth1以上であり、かつ、給湯運転中の給湯装置2があるという条件を「第1条件」と定義する。
【0060】
第2基準時間Tth2は、強制的に固着予防制御を実行するか否かを判断するための閾値である。第2基準時間Tth2は、第1基準時間Tth1よりも長い時間に設定される(Tth2>Tth1)。第2基準時間Tth2は、たとえば、24時間に設定される。能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合、コントローラ20は、給湯運転中の他の給湯装置2があるか否かにかかわらず、固着予防制御を実行する。なお、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第2基準時間Tth2以上であるという条件を「第2条件」と定義する。
【0061】
運転中の給湯装置2があるか否かの判断は、システムコントローラ3からの情報に基づいて判断することができる。給湯運転を開始した給湯装置2のコントローラ20は、通信部23を介して、給湯運転を開始したことを示す情報(以下「開始情報」とも称する)をシステムコントローラ3に送信する。システムコントローラ3は、複数の給湯装置2a~2fのうちのいずれかの給湯装置2から開始情報を受けると、通信部33を介して、給湯運転中の給湯装置2があることを示す情報(以下「第1情報」とも称する)を、給湯装置2a~2fに送信する。システムコントローラ3は、後述の終了情報を受けるまで、所定の制御周期毎に、第1情報を給湯装置2a~2fに送信する。給湯装置2a~2fのコントローラ20a~20fの各々は、第1情報を受けている間、給湯運転中の給湯装置2があると判断する。なお、第1情報には、給湯運転中の給湯装置2を特定するための情報が含まれてもよい。
【0062】
給湯運転を終了した給湯装置2のコントローラ20は、通信部23を介して、給湯運転を終了したことを示す情報(以下「終了情報」とも称する)をシステムコントローラ3に送信する。システムコントローラ3は、開始情報を受けた給湯装置2から終了情報を受けると、当該給湯装置2の給湯運転の終了を認識する。システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fの全てが給湯運転を停止したと判断すると、第1情報の送信を停止する。
【0063】
次に、図3図5を参照しながら、固着予防制御の詳細を説明する。
【0064】
図3図5は、ある給湯装置2における固着予防制御を説明するための図である。図3~5では、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちの最も長いものを閉弁継続時間Txと称する場合がある。図3には、閉弁継続時間Txが、第1基準時間Tth1以上であり、かつ、第2基準時間Tth2未満である場合の固着予防制御の一例が示されている。なお、以下においては、給湯装置2fを例にして説明する。そのため、各構成に添え字fを付して説明するが、図3図5では添え字は記載していない。
【0065】
図3を参照して、時刻t1において、能力切換弁67fが閉弁される(閉状態にされる)。これに伴って、給湯装置2fのコントローラ20fは、時刻t1において、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3の計測を開始する。なお、能力切換弁65f,66fは、開状態に維持されている。
【0066】
時刻t2において、給湯装置2fの燃焼が停止され、給湯運転が停止される。これによって、時刻t2において、能力切換弁65f,66fが閉弁される。したがって、給湯装置2fのコントローラ20fは、時刻t2において、能力切換弁65f,66fの閉弁継続時間Tx1,Tx2の計測を開始する。
【0067】
時刻t3において、他の給湯装置2(たとえば、給湯装置2a)が給湯運転を開始する。したがって、時刻t3において、給湯装置2fのコントローラ20fは、システムコントローラ3から第1情報を受信する。給湯運転を開始した給湯装置2aは、時刻t3以降、給湯運転を継続するものとする。
【0068】
時刻t4において、時刻t1から第1基準時間Tth1が経過する。換言すると、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3が第1基準時間Tth1となる。したがって、給湯装置2fのコントローラ20fは、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3が、第1基準時間Tth1以上になったことを検出する。この際、給湯装置2fのコントローラ20fは、システムコントローラ3から第1情報を受信しているので(給湯運転中の給湯装置2aがあるので)、第1条件が満たされたと判断し、固着予防制御の実行を決定する。
【0069】
本実施の形態では、コントローラ20fは、条件(第1条件または第2条件)が満たされた場合、全ての能力切換弁65f,66f,67fに対して固着予防制御を実行する。また、本実施の形態では、コントローラ20fは、使用頻度(開閉頻度)の低い順番に従って、能力切換弁67f,65f,66fの順に固着予防制御を実行する。本実施の形態に係る給湯装置2fは、能力切換弁67f,65f,66fの順に使用頻度が低くなる仕様となっている。固着予防制御の実行順は、給湯装置2の仕様に応じて適宜設定することができる。
【0070】
なお、コントローラ20fは、全ての能力切換弁65f,66f,67fの固着予防制御を並列に実行してもよい。能力切換弁65f,66f,67fの固着予防制御を順次実行するか、または、並列に実行するかは、給湯装置2fの電源容量に応じて適宜設定することが可能である。
【0071】
また、時刻t4において、時刻t1から第1基準時間Tth1が経過したとしても、システムコントローラ3から第1情報を受信していない場合(他のいずれの給湯装置も給湯運転していない場合)には、コントローラ20fは、第1条件が満たされていないと判断し、固着予防制御の実行を決定しない。
【0072】
図4には、閉弁継続時間Txが第2基準時間Tth2以上である場合の固着予防制御の一例が示されている。
【0073】
時刻t11において、能力切換弁67fが閉弁される。これに伴って、給湯装置2fのコントローラ20fは、時刻t11において、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3の計測を開始する。なお、能力切換弁65f,66fは、開状態に維持されている。
【0074】
時刻t12において、給湯装置2fの燃焼が停止され、給湯運転が停止されている。これによって、時刻t12において、能力切換弁65f,66fが閉弁される。したがって、給湯装置2fのコントローラ20fは、時刻t12において、能力切換弁65f,66fの閉弁継続時間Tx1,Tx2の計測を開始する。時刻t12以降、マルチ給湯システム1に含まれるいずれの給湯装置2も給湯運転されないものとする。そのため、時刻t11から第1基準時間Tth1が経過し、閉弁継続時間Tx3が第1基準時間Tth1以上になったとしても、固着予防制御は実行されない。
【0075】
時刻t13において、時刻t11から第2基準時間Tth2が経過する。換言すると、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3が第2基準時間Tth2となる。したがって、給湯装置2fのコントローラ20fは、能力切換弁67fの閉弁継続時間Tx3が、第2基準時間Tth2以上になったことを検出する。コントローラ20fは、閉弁継続時間Tx3が第2基準時間Tth2以上になると第2条件が満たされるので、給湯運転中の給湯装置がなくても固着予防制御の実行を決定する。
【0076】
図5は、固着予防制御における能力切換弁の制御を説明するための図である。
【0077】
本実施の形態に係る固着予防制御では、コントローラ20は、能力切換弁をデューティー制御する。能力切換弁は、全開および全閉のいずれかの状態に切り替えられる。コントローラ20は、まず、予め定められたデューティー比(デューティー比100%未満)で能力切換弁を制御する。この段階では、能力切換弁は全閉している。次いでコントローラ20は、100%のデューティー比で能力切換弁を制御して、能力切換弁を全開状態にする。そして、コントローラ20は、再び上記予め定められたデューティー比で能力切換弁を制御して、能力切換弁を全閉状態にする。本発明者らは、上記のように能力切換弁をデューティー制御することにより、能力切換弁の開閉動作に伴って発生する動作音を小さくすることができることを見い出した。上記予め定められたデューティー比は、実験あるいはシミュレーションにより導くことができる。上記予め定められたデューティー比は、能力切換弁の仕様、および/または給湯装置2の仕様に応じて適宜変更することができる。なお、たとえば、コントローラ20は、予め定められたデューティー比で能力切換弁を制御し、そこからデューティー比を徐々に増加させてもよい。この場合、あるデューティー比(予め定められたデューティー比より大きい)において能力切換弁が全開状態となる。そして、コントローラ20は、さらに100%のデューティー比で能力切換弁を制御した後に、再び上記予め定められたデューティー比で能力切換弁を制御して、能力切換弁を全閉状態にする。この場合においても、能力切換弁の開閉動作に伴なって発生する動作音を小さくすることができる。
【0078】
図6は、コントローラ20で実行される固着予防制御に関する処理の手順を示すフローチャートである。図6のフローチャートの処理は、給湯装置2の運転停止中にメインルーチンから呼び出され、所定の制御周期毎に、コントローラ20によって繰り返し実行される。図6および後述の図7のフローチャートの各ステップは、コントローラ20によるソフトウェア処理によって実現される場合について説明するが、その一部あるいは全部がコントローラ20内に作製されたハードウェア(電気回路)によって実現されてもよい。
【0079】
ステップS1において、コントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上となったか否かを判断する。閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれも第1基準時間Tth1未満である場合(ステップS1においてNO)、コントローラ20は、処理をメインルーチンに返す。閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上となった場合(ステップS1においてYES)、コントローラ20は、処理をステップS2に進める。
【0080】
ステップS2において、コントローラ20は、閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となったか否かを判断する。閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれも第2基準時間Tth2未満である場合(ステップS2においてNO)、コントローラ20は、処理をステップS3に進める。閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合(ステップS2においてYES)、コントローラ20は、ステップS3の処理をスキップして、処理をステップS4に進める。
【0081】
ステップS3において、コントローラ20は、マルチ給湯システム1に含まれる他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断する。たとえば、コントローラ20は、通信部23を介して、システムコントローラ3から第1情報を受信しているか否かに基づいて、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断する。他の給湯装置2が給湯運転中でない場合(ステップS3においてNO)、コントローラ20は、処理をメインルーチンに返す。他の給湯装置2が給湯運転中である場合(ステップS3においてYES)、コントローラ20は、処理をステップS4に進める。
【0082】
ステップS4は固着予防制御の処理である。ステップS4は、ステップS5~ステップS7の処理を含む。
【0083】
ステップS5において、コントローラ20は、元ガス電磁弁62を閉じる。
【0084】
ステップS6において、コントローラ20は、能力切換弁65~67のうち、使用頻度(開閉頻度)の低いものから順に開閉動作させる。まず、コントローラ20は、能力切換弁65~67のうち最も使用頻度の低い能力切換弁(たとえば、能力切換弁67)を開閉動作させる。具体的には、コントローラ20は、上述のとおり、上述の予め定められたデューティー比で能力切換弁67を制御して開弁させ、次いで100%のデューティー比で能力切換弁67を制御して全開状態にし、再び上記予め定められたデューティー比で能力切換弁67を制御した後に、能力切換弁67を閉じる。
【0085】
ステップS7において、コントローラ20は、能力切換弁65~67の全てに対して、ステップS6の処理を実行したか否かを判断する。コントローラ20は、ステップS6の処理を実行していない能力切換弁があると判断した場合(ステップS7においてNO)、処理をステップS6に返す。この場合、コントローラ20は、ステップS6の処理を未だ実行していない能力切換弁のうち、最も使用頻度の低い能力切換弁に対してステップS6の処理を実行する。コントローラ20は、ステップS6の処理を実行していない能力切換弁がないと判断した場合(ステップS7においてYES)、処理をメインルーチンに返す。
【0086】
図7は、コントローラ20で実行される運転指令を監視するための処理の手順を示すフローチャートである。図7のフローチャートの処理は、図6のフローチャートの開始とともに開始され、図6のフローチャートの処理と並列に処理される。
【0087】
ステップS10において、コントローラ20は、システムコントローラ3から運転指令を受けたか否かを判断する。運転指令を受けていないと判断した場合(ステップS10においてNO)、コントローラ20は、処理をメインルーチンに返す。運転指令を受けたと判断した場合(ステップS10においてYES)、コントローラ20は、処理をステップS11に進める。
【0088】
ステップS11において、コントローラ20は、固着予防制御の実行中であるか否かを判断する。固着予防制御の実行中でない場合(ステップS11においてNO)、コントローラ20は、処理をメインルーチンに返す。固着予防制御の実行中である場合(ステップS11においてYES)、コントローラ20は、処理をS12に進める。
【0089】
ステップS12において、コントローラ20は、固着予防制御を中断する。なお、次回の固着予防制御の実行時には、コントローラ20は、たとえば、中断していた固着予防制御を再開させてもよい。
【0090】
以上のように、本実施の形態に係るマルチ給湯システム1では、給湯装置2a~2fの各々は、給湯運転を開始する際に開始情報をシステムコントローラ3に送信する。システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのいずれかから開始情報を受信すると、給湯運転中の給湯装置2があることを示す情報である第1情報を給湯装置2a~2fに送信する。各給湯装置2のコントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合(Tth1≦Tx<Tth2)、他の給湯装置2が給湯運転中であるときに、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。すなわち、各給湯装置2のコントローラ20は、第1条件が満たされたと判断した場合に能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。他の給湯装置2が給湯運転中であるときに固着予防制御が実行されるので、能力切換弁65~67の開閉動作に伴って発生する動作音を、給湯運転に伴う動作音に紛れ込ませることができる。よって、他の給湯装置2が給湯運転中に固着予防制御を実行すれば、固着予防制御により生じる動作音がユーザに違和感を与えることを抑制することができる。これによって、ユーザに違和感を与えることなく、能力切換弁65~67の固着を抑制することができる。
【0091】
また、本実施の形態に係るマルチ給湯システム1では、各給湯装置2のコントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合には、他の給湯装置2が給湯運転していなくても、固着予防制御を実行する。すなわち、各給湯装置2のコントローラ20は、第2条件が満たされたと判断した場合に能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合に、強制的に固着予防制御を実行することにより、能力切換弁65~67の固着を抑制することができる。
【0092】
[変形例1]
実施の形態では、各給湯装置2のコントローラ20は、システムコントローラ3から受信した第1情報に基づいて、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断した。しかしながら、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かの判断は、第1情報を用いることに限られるものではない。変形例1では、システムコントローラ3から受信したファン40の駆動指令に基づいて、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断する例について説明する。
【0093】
変形例1に係るシステムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのうちのいずれかの給湯装置2から開始情報を取得すると、給湯装置2a~2fに対してファン40の駆動指令を送信する。
【0094】
たとえば、マルチ給湯システム1は、屋内に設置されている。たとえば、給湯装置2a~2fのうち、給湯装置2aだけが給湯運転している場合を想定する。この場合、給湯運転中の給湯装置2のファン40aは駆動されている。この際、仮に、他の給湯装置2(たとえば、給湯装置2b~2f)のファン40b~40fが停止されていると、給湯装置2aの排気経路15aから排出された燃焼排ガスが、図示しない共通の集合排気路を経由して、排気経路15b~15fから給湯装置2b~2fに逆流し得る。そこで、給湯装置2a~2fのいずれかが給湯運転を開始すると、システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fに対してファン40の駆動指令を送信し、給湯装置2a~2fのファン40a~40fを駆動させる。これにより、給湯運転していない給湯装置2への燃焼排ガスの逆流を抑制することができる。
【0095】
給湯装置2a~2fのいずれかの給湯運転の開始に伴ってファン40の駆動指令(以下「第2情報」とも称する)がシステムコントローラ3から送信されることに鑑みると、実施の形態の第1情報に代えて、各給湯装置2のコントローラ20は、第2情報(ファン40の駆動指令)に基づいて、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断することができる。第2情報に基づいて、他の給湯装置2が給湯運転中であるか否かを判断するように給湯装置2が構成されても、実施の形態と同様の効果を奏することができる。
【0096】
[変形例2]
給湯装置2のコントローラ20は、給湯装置2の凍結予防のために、ファン40を駆動させる制御を実行する機能を備えるものがある。各給湯装置2のコントローラ20は、所定の箇所に設けられた温度センサの検出結果に基づいて、凍結予防のためにファン40を駆動させる。上記温度センサは、たとえば、外気温度を検出するための温度センサであってよい。各給湯装置2のコントローラ20は、凍結予防のためにファン40を駆動させると、通信部23を介して、ファン40を駆動させたことを示すファン駆動信号をシステムコントローラ3に送信する。システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのいずれかからファン駆動信号を受信すると、通信部33を介して、ファン駆動中の給湯装置2があることを示す情報である「第3情報」を給湯装置2a~2fに送信する。
【0097】
各給湯装置2のコントローラ20は、他の給湯装置2のファン40の駆動中に、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行してもよい。すなわち、第1条件を、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第1基準時間Tth1以上であり、かつ、給湯運転中またはファン40駆動中の給湯装置2があるという条件とすることができる。コントローラ20で実行される各処理の詳細は、実施の形態と基本的に同様であるため、繰り返し説明しない。
【0098】
変形例2では、能力切換弁65~67の開閉動作に伴って発生する動作音を、ファン40の動作音に紛れ込ませることにより、固着予防制御により生じる動作音がユーザに違和感を与えることを抑制することができる。したがって、ユーザに違和感を与えることなく、能力切換弁65~67の固着を抑制することができる。また、実施の形態と組み合わせることにより、固着予防制御の実行機会を増やすことができる。
【0099】
[変形例3]
バーナ60の動作終了の際には、消火後にファン40を停止せずに燃焼室内の残留ガスを排除するポストパージ(掃気運転)が実行されることがある。ポストパージの実行中に固着予防制御を実行してもよい。
【0100】
変形例3では、第1条件を、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第1基準時間Tth1以上であり、かつ、給湯運転中またはポストパージの実行中の給湯装置2があるという条件とすることができる。
【0101】
各給湯装置2のコントローラ20は、ポストパージを開始する際に、通信部23を介して、ポストパージを開始することを示す開始情報をシステムコントローラ3に送信する。システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのうちのいずれかの給湯装置2から、ポストパージを開始することを示す開始情報を取得すると、給湯装置2a~2fに対して、ポストパージ中の給湯装置2があることを示す情報である第4情報を送信する。
【0102】
各給湯装置2のコントローラ20は、第4情報に基づいて、他の給湯装置2がポストパージの実行中であるか否かを判断する。そして、各給湯装置2のコントローラ20は、実施の形態と同様に、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合(Tth1≦Tx<Tth2)、他の給湯装置2がポストパージの実行中であるときに、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。これによって、固着予防制御の実行機会を増やすことができる。
【0103】
[変形例4]
給湯装置2のコントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合(Tth1≦Tx<Tth2)、深夜帯(たとえば、0時~4時)でないときに、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行するように構成されてもよい。
【0104】
一般的に、深夜帯は他の時間帯に比べて、騒音が少ないことが想定される。一方、深夜帯以外の時間帯は、深夜帯に比べて比較的騒音が多いことが想定される。したがって、深夜帯に固着予防制御が実行されると、ユーザに違和感を与え易い一方で、深夜帯以外の時間帯に固着予防制御が実行されると、比較的ユーザに違和感を与え難いことが想定される。
【0105】
そこで、第1条件を、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のうちのいずれかが第1基準時間Tth1以上であり、かつ、深夜帯でないという条件とすることができる。詳細には、コントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合(Tth1≦Tx<Tth2)において、深夜帯でなければ、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行し、深夜帯であれば、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行しないようにする。これによって、ユーザに違和感を与えることなく、能力切換弁65~67の固着を抑制することができる。
【0106】
なお、各給湯装置2のコントローラ20は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合には、深夜帯であっても、固着予防制御を実行する。
【0107】
[変形例5]
実施の形態および変形例1~4では、システムコントローラ3が、給湯装置2a~2fとは別体として設けられる例について説明した。しかしながら、システムコントローラ3は、給湯装置2a~2fのうちのいずれかの給湯装置2に搭載することも可能である。
【0108】
図8は、変形例5に係るマルチ給湯システム1Aの構成例を示すブロック図である。マルチ給湯システム1Aは、複数の給湯装置2a~2fと、給水配管4と、給湯配管7と、給湯栓8と、ガス供給管9とを備える。
【0109】
変形例5に係るマルチ給湯システム1Aでは、一例として、給湯装置2aにシステムコントローラ3が搭載されている。図8では、給湯装置2aにシステムコントローラ3が搭載される一例として、実施の形態に係るコントローラ20aにシステムコントローラ3の機能が搭載される例が示されている。給湯装置2aにシステムコントローラ3が搭載される他の例として、給湯装置2aの筐体内にコントローラ20aとシステムコントローラ3とを収容し、これらを通信線で接続する構成を採用することもできる。なお、システムコントローラ3が搭載される給湯装置2は、給湯装置2aに限られるものではなく、給湯装置2b~2fのいずれかにシステムコントローラ3が搭載されてもよい。
【0110】
変形例5に係るマルチ給湯システム1Aでは、システムコントローラ3が搭載された給湯装置2aがマスタ給湯装置となり、給湯装置2b~2fがスレーブ給湯装置となる。給湯装置2aは、実施の形態で説明したシステムコントローラ3の機能を備える。
【0111】
メイン給湯装置は、マルチ給湯システム1Aにおいても、実施の形態に係るマルチ給湯システム1と同様に、所定期間(たとえば24時間)毎に、たとえば給湯装置2a,2b,2c,2d,2e,2fの順に切り替えられる。本実施の形態では、マスタ給湯装置である給湯装置2aが、所定期間毎にメイン給湯装置を切り替える。
【0112】
給湯装置2aと、給湯装置2b~2fとは、通信線CLにより互いに接続されている。給湯装置2aは、通信線CLを介して、給湯装置2a~2fの各々のコントローラ20b~20fとの間で双方向にデータを送受信することによって情報を授受できるように構成されている。
【0113】
スレーブ給湯装置である給湯装置2b~2fの各々は、給湯運転を開始する際には、開始情報を、マスタ給湯装置である給湯装置2aに送信する。
【0114】
マスタ給湯装置である給湯装置2aは、自身(給湯装置2a)が給湯運転を開始する場合、および/または、給湯装置2b~2fのうちのいずれかから開始情報を受信した場合、給湯装置2b~2fに第1情報を送信する。
【0115】
各給湯装置2は、実施の形態と同様、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第1基準時間Tth1以上かつ第2基準時間Tth2未満となった場合(Tth1≦Tx<Tth2)、他の給湯装置2が給湯運転中であるときに(第1条件が満たされたとき)、能力切換弁65~67の固着予防制御を実行する。また、各給湯装置2は、能力切換弁65~67の閉弁継続時間Tx1~Tx3のいずれかが第2基準時間Tth2以上となった場合(第2条件が満たされたとき)には、他の給湯装置2が給湯運転していなくても、固着予防制御を実行する。変形例5に係るマルチ給湯システム1Aにおいても、実施の形態と同様の効果を奏することができる。なお、変形例5は、変形例1~4と組み合わせることも可能である。
【0116】
[変形例6]
実施の形態および変形例1~5では、能力切換弁65~67のいずれかの閉弁継続時間Txが第1基準時間Tth1以上となると、自身が運転停止中であり、かつ、他の給湯装置が運転中に、全ての能力切換弁65~67に対して固着予防制御を実行する例について説明した。しかしながら、閉弁継続時間Txが第1基準時間Tth1以上となった能力切換弁に対してのみ固着予防制御を実行してもよい。具体的には、いずれかの能力切換弁65~67の閉弁継続時間Txが第1基準時間Tth1以上となると、自身が運転停止中であり、かつ、他の給湯装置が運転中に、閉弁継続時間Txが第1基準時間Tth1以上となった能力切換弁に対して固着予防制御を実行する。このような構成においても、ユーザに違和感を与えることなく、能力切換弁65~67の固着を抑制することができる。
【0117】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1,1A マルチ給湯システム、2 給湯装置、3 システムコントローラ、4 給水配管、5 入水管、6 出湯管、7 給湯配管、8 給湯栓、9 ガス供給管、10 熱交換器、11 一次熱交換器、12 二次熱交換器、14 缶体、15 排気経路、20 コントローラ、21 制御部、22 記憶部、23 通信部、24 CPU、25 インターフェース、26 ROM、27 RAM、31 制御部、32 記憶部、33 通信部、34 CPU、35 インターフェース、36 ROM、37 RAM、40 ファン、45 回転数センサ、50 燃焼機構、60 バーナ、61 ガス供給管、62 元ガス電磁弁、63 ガス比例弁、65~67 能力切換弁、70 缶体配管、75 バイパス管、78 合流点、80 バイパス弁、90 流量調整弁、110,120,130 温度センサ、150 流量センサ、CL 通信線。
図1
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図8