(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170449
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】接合方法、半導体デバイスの製造方法及び半導体デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 23/40 20060101AFI20231124BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L23/40 F
H01L21/304 611Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082220
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100177910
【弁理士】
【氏名又は名称】木津 正晴
(72)【発明者】
【氏名】河口 大祐
【テーマコード(参考)】
5F057
5F136
【Fターム(参考)】
5F057AA43
5F057AA48
5F057BA15
5F057BB06
5F057CA14
5F057DA22
5F057DA31
5F136DA13
5F136EA12
5F136FA02
5F136FA03
(57)【要約】
【課題】金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる接合方法及び半導体デバイスの製造方法、並びに金属部材が半導体部材に好適に接合された半導体デバイスを提供する。
【解決手段】接合方法は、窒化ガリウムを含む材料からなる半導体対象物30の内部にレーザ光を照射することにより、半導体対象物30の内部に位置する仮想面上に析出したガリウムからなるガリウム部34を形成する析出工程と、仮想面を境界として半導体対象物30を分離させ、分離面35上にガリウム部34を露出させる露出工程と、ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材22を、当該金属材料とガリウム部34との合金化により半導体対象物30に接合する接合工程と、をこの順に備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ガリウムを含む材料からなる半導体対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記半導体対象物の内部に位置する仮想面上に析出したガリウムからなるガリウム部を形成する析出工程と、
前記仮想面を境界として前記半導体対象物を分離させ、分離面上に前記ガリウム部を露出させる露出工程と、
ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材を、前記金属材料と前記ガリウム部との合金化により前記半導体対象物に接合する接合工程と、をこの順に備える、接合方法。
【請求項2】
前記析出工程では、前記半導体対象物の表面から前記半導体対象物の内部に前記レーザ光を照射し、前記仮想面は、前記半導体対象物の内部において前記表面と向かい合う面であり、
前記露出工程では、前記仮想面を境界として前記半導体対象物を少なくとも2つの部分に分離させる、請求項1に記載の接合方法。
【請求項3】
窒化ガリウムを含む材料からなる半導体対象物の表面にレーザ光を照射することにより、前記表面上に析出したガリウムからなるガリウム部を形成する析出工程と、
ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材を、前記金属材料と前記ガリウム部との合金化により前記半導体対象物に接合する接合工程と、をこの順に備える、接合方法。
【請求項4】
前記金属部材は、ヒートシンクである、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記金属材料は、アルミニウム、銅、銀、金、プラチナ、スズ、亜鉛、インジウム又は鉄である、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項6】
前記半導体対象物は、半導体ウェハである、請求項1~3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか一項に記載の接合方法により前記金属部材を前記半導体対象物に接合する工程を備える、半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
窒化ガリウムを含む材料からなる半導体部材と、
ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材と、を備え、
前記金属部材は、前記半導体部材との間の境界部に形成されたガリウムと前記金属材料との合金からなる合金部を介して前記半導体部材に接合されている、半導体デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、半導体デバイスの製造方法及び半導体デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェハ等の半導体対象物にレーザ光を照射することにより半導体対象物の内部に改質領域を形成し、改質領域を境界として分離させることにより半導体対象物から半導体基板等の半導体部材を切り出す加工方法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-183600号公報
【特許文献2】特開2017-057103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような加工方法を窒化ガリウムからなる半導体対象物に適用した場合、レーザ光の照射により改質領域においてガリウムが析出し、得られた半導体部材の表面にガリウムが残存することがある。この場合、例えば得られた半導体部材にヒートシンク等の金属部材を実装する際には、残存しているガリウムを洗浄又は研削等して除去した後に、接合材等により金属部材を半導体部材に接合する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる接合方法及び半導体デバイスの製造方法、並びに金属部材が半導体部材に好適に接合された半導体デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の接合方法は、[1]「窒化ガリウムを含む材料からなる半導体対象物の内部にレーザ光を照射することにより、前記半導体対象物の内部に位置する仮想面上に析出したガリウムからなるガリウム部を形成する析出工程と、前記仮想面を境界として前記半導体対象物を分離させ、分離面上に前記ガリウム部を露出させる露出工程と、ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材を、前記金属材料と前記ガリウム部との合金化により前記半導体対象物に接合する接合工程と、をこの順に備える、接合方法」である。
【0007】
この接合方法では、レーザ光の照射により半導体対象物から析出したガリウムからなるガリウム部を利用し、金属部材を構成する金属材料と当該ガリウム部とを合金化させることにより、金属部材を半導体対象物に接合する。これにより、例えば析出したガリウムを洗浄して除去する場合と比べて、工程数を削減することができる。また、半導体対象物から析出するガリウムを利用して接合するため、加工プロセスに無用な金属材料(例えば接合材に含まれる金属材料)を用いる必要がなく、金属汚染の発生を抑制することができる。また、金属材料とガリウム部との合金化により接合されるため、金属部材を半導体対象物に強固に接合することができる。よって、この接合方法によれば、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる。
【0008】
本発明の接合方法は、[2]「前記析出工程では、前記半導体対象物の表面から前記半導体対象物の内部に前記レーザ光を照射し、前記仮想面は、前記半導体対象物の内部において前記表面と向かい合う面であり、前記露出工程では、前記仮想面を境界として前記半導体対象物を少なくとも2つの部分に分離させる、[1]に記載の接合方法」であってもよい。この場合にも、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる。
【0009】
本発明の接合方法は、[3]「窒化ガリウムを含む材料からなる半導体対象物の表面にレーザ光を照射することにより、前記表面上に析出したガリウムからなるガリウム部を形成する析出工程と、ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材を、前記金属材料と前記ガリウム部との合金化により前記半導体対象物に接合する接合工程と、をこの順に備える、接合方法」である。
【0010】
この接合方法では、レーザ光の照射により半導体対象物から析出したガリウムからなるガリウム部を利用し、金属部材を構成する金属材料と当該ガリウム部とを合金化させることにより、金属部材を半導体対象物に接合する。これにより、例えば析出したガリウムを洗浄して除去する場合と比べて、工程数を削減することができる。また、半導体対象物から析出するガリウムを利用して接合するため、加工プロセスに無用な金属材料(例えば接合材に含まれる金属材料)を用いる必要がなく、金属汚染の発生を抑制することができる。また、金属材料とガリウム部との合金化により接合されるため、金属部材を半導体対象物に強固に接合することができる。よって、この接合方法によれば、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる。
【0011】
本発明の接合方法は、[4]「前記金属部材は、ヒートシンクである、[1]~[3]のいずれかに記載の接合方法」であってもよい。この場合、ヒートシンクを半導体対象物に好適に接合することができる。
【0012】
本発明の接合方法は、[5]「前記金属材料は、アルミニウム、銅、銀、金、プラチナ、スズ、亜鉛、インジウム又は鉄である、[1]~[4]のいずれかに記載の接合方法」であってもよい。この場合、金属部材をガリウム部との合金化により半導体対象物に好適に接合することができる。
【0013】
本発明の接合方法は、[6]「前記半導体対象物は、半導体ウェハである、[1]~[5]のいずれかに記載の接合方法」であってもよい。この場合、金属部材を半導体ウェハに好適に接合することができる。
【0014】
本発明の半導体デバイスの製造方法は、[7]「[1]~[6]のいずれかに記載の接合方法により前記金属部材を前記半導体対象物に接合する工程を備える、半導体デバイスの製造方法」である。この半導体デバイスの製造方法によれば、上述した理由により、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる。
【0015】
本発明の半導体デバイスは、[8]「窒化ガリウムを含む材料からなる半導体部材と、ガリウムとは異なる金属材料を含む金属部材と、を備え、前記金属部材は、前記半導体部材との間の境界部に形成されたガリウムと前記金属材料との合金からなる合金部を介して前記半導体部材に接合されている、半導体デバイス」である。
【0016】
この半導体デバイスでは、金属部材を構成する金属材料とガリウムとの合金からなる合金部を介して金属部材が半導体部材に接合されている。これにより、金属部材を半導体対象物に強固に接合することができる。このように、この半導体デバイスでは、金属部材が半導体部材に好適に接合されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、金属部材を半導体対象物に好適に接合することができる接合方法及び半導体デバイスの製造方法、並びに金属部材が半導体部材に好適に接合された半導体デバイスを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態に係る半導体デバイスの製造方法により製造される半導体デバイスの断面図である。
【
図2】実施形態に係る半導体デバイスの製造方法に用いられるレーザ加工装置の構成図である。
【
図3】(a)及び(b)は、半導体デバイスの製造方法を説明するための図である。
【
図4】(a)及び(b)は、半導体デバイスの製造方法を説明するための図である。
【
図5】(a)は、金属部材の接合前における半導体対象物の分離面の近傍の状態の一例を示す模式図であり、(b)は、金属部材の接合後における半導体対象物の分離面の近傍の状態の一例を示す模式図である。
【
図6】(a)、(b)及び(c)は、第1変形例に係る半導体デバイスの製造方法を説明するための図である。
【
図7】第2変形例に係る半導体デバイスの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明を省略する。
[半導体デバイス]
【0020】
図1に示されるように、半導体デバイス20は、半導体部材21と、半導体部材21に接合された金属部材22と、を備えている。半導体部材21は、例えば、窒化ガリウム(GaN)からなる半導体基板であり、第1表面21aと、第1表面21aとは反対側の第2表面21bとを有している。第1表面21a(金属部材22とは反対側の表面)には、複数のデバイス部23が形成されている。デバイス部23は、例えば任意の機能を奏するための素子部であり、例えば発光素子、受光素子、回路素子等である。
【0021】
金属部材22は、ガリウムとは異なる金属材料により形成されている。金属部材22を構成する金属材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、プラチナ(Pt)、スズ(Sn)、亜鉛(Zn)、インジウム(In)、鉄(Fe)が挙げられる。この例では、金属部材22は、半導体デバイス20の放熱性を高めるためのヒートシンクとして機能する。また、金属部材22が設けられていることで、半導体デバイス20のハンドリング性が向上されている。金属部材22は、半導体部材21の第2表面21bに接合されている。より具体的には、金属部材22は、半導体部材21との間の境界部に形成された合金部24を介して半導体部材21に接合されている。合金部24は、金属部材22を構成する金属材料と半導体部材21から析出したガリウムとが合金化することにより構成されている。合金部24の詳細については後述する。
[レーザ加工装置の構成]
【0022】
図2に示されるように、レーザ加工装置1は、ステージ2と、光源3と、空間光変調器4と、集光レンズ5と、制御部6と、を備えている。レーザ加工装置1は、半導体対象物10にレーザ光Lを照射することにより、半導体対象物10に改質領域11を形成する装置である。以下、第1水平方向をX方向といい、第1水平方向に垂直な第2水平方向をY方向という。また、鉛直方向をZ方向という。
【0023】
ステージ2は、例えば、半導体対象物10に貼り付けられたフィルムを吸着することにより、半導体対象物10を支持する。この例では、ステージ2は、X方向及びY方向の各々に沿って移動可能である。また、ステージ2は、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
【0024】
光源3は、例えばパルス発振方式によって、半導体対象物10に対して透過性を有するレーザ光Lを出力する。空間光変調器4は、光源3から出力されたレーザ光Lを変調する。空間光変調器4は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。集光レンズ5は、空間光変調器4によって変調されたレーザ光Lを集光する。この例では、空間光変調器4及び集光レンズ5は、レーザ照射ユニットとして、Z方向に沿って移動可能である。
【0025】
ステージ2に支持された半導体対象物10の内部にレーザ光Lが集光されると、レーザ光Lの集光点Cに対応する部分においてレーザ光Lが特に吸収され、半導体対象物10の内部に改質領域11が形成される。改質領域11は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域11としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0026】
一例として、ステージ2をX方向に沿って移動させ、半導体対象物10に対して集光点CをX方向に沿って相対的に移動させると、複数の改質スポット12がX方向に沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポット12は、1パルスのレーザ光Lの照射によって形成される。1列の改質領域11は、1列に並んだ複数の改質スポット12の集合である。隣り合う改質スポット12は、半導体対象物10に対する集光点Cの相対的な移動速度及びレーザ光Lの繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
【0027】
制御部6は、ステージ2、光源3、空間光変調器4及び集光レンズ5を制御する。制御部6は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部6では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部6は各種機能を実現する。
[接合方法及び半導体デバイスの製造方法]
【0028】
本実施形態の接合方法及び半導体デバイスの製造方法における半導体対象物10は、
図2及び
図3に示されるように、窒化ガリウムにより例えば矩形板状(チップ形状)に形成されたGaN基板30である。GaN基板30は、後述する露出工程において仮想面Sを境界として2つの部分31,32に分離させられる(
図4(a))。部分31は、上述した半導体デバイス20の半導体部材21に対応する(加工完了後に半導体部材21となる)部分である。
【0029】
まず、GaN基板30の表面30aにデバイス部33を形成する(デバイス形成工程、
図3(a))。表面30aは、半導体部材21の第1表面21aに対応し、デバイス部33は、第1表面21aに形成されたデバイス部23に対応する。デバイス形成工程は、例えばレーザ加工装置1とは別の装置を用いて実施され得る。
【0030】
続いて、レーザ加工装置1が、GaN基板30の内部にレーザ光Lを照射することにより、GaN基板30の内部に位置する仮想面S上にガリウムを析出させ、ガリウムからなるガリウム部34を仮想面S上に形成する(析出工程、
図3(b))。この例では、仮想面Sは、GaN基板30の内部においてGaN基板30の表面30aと向かい合う矩形状の面であり、表面30aと平行に、GaN基板30の側面30bに至るように延在している。析出工程では、表面30aからGaN基板30の内部にレーザ光Lを照射し、仮想面Sに沿って複数の改質スポット12(改質領域11)を形成する。例えば、仮想面Sの全体にわたって2次元に並ぶように、複数列の改質スポット12を順次形成する。この改質スポット12の形成時に、レーザ光Lの照射によりGaN基板30を構成するガリウムと窒素とが互いに分離し、窒素ガスが発生すると共に仮想面S上にガリウムが析出する。以下、この析出したガリウムをガリウム部34と記す。
【0031】
続いて、仮想面Sを境界としてGaN基板30を2つの部分31,32に分離させ、分離面35上にガリウム部34を露出させる(露出工程、
図4(a))。露出工程では、例えば、仮想面Sにおいて複数の改質スポット12からそれぞれ延びる複数の亀裂を互いに繋げることにより、仮想面Sに渡る亀裂を形成する。その後、例えば部分31を部分32から離れるように移動させることより、GaN基板30が仮想面Sを境界として2つの部分31,32に分離させられる。すなわち、GaN基板30が仮想面Sを境界として切断(スライス/剥離)される。これにより、各部分31,32における分離面35にガリウム部34が露出する。部分31の分離面35は、半導体部材21の第2表面21bに対応する。なお、露出工程では、加熱以外の方法でGaN基板30に何らかの力を作用させることにより、複数の亀裂を互いに繋げて仮想面Sに渡る亀裂を形成してもよい。以下、露出工程により得られたGaN基板30の部分31を半導体部材21とも記す。
【0032】
続いて、金属部材22を、金属部材22を構成する金属材料とガリウム部34との合金化により、半導体部材21に接合する(接合工程、
図4(b))。この合金化により、上述した合金部24が半導体部材21と金属部材22との境界部に形成される。ガリウムは溶融しやすく(融点が低く)、他の金属材料と合金化しやすいため、例えば金属部材22をガリウム部34に接触させることで、金属部材22を構成する金属材料がガリウム部34と合金化し、金属部材22が半導体部材21に接合される。接合工程は、例えばレーザ加工装置1とは別の装置を用いて実施され得る。以上の工程により、金属部材22が半導体部材21に接合された半導体デバイス20が得られる。
【0033】
図5(a)は、金属部材22の接合前におけるGaN基板30の分離面35(半導体部材21の第2表面21b)の近傍の状態の一例を示す模式図であり、
図5(b)は、金属部材22の接合後における分離面35の近傍の状態の一例を示す模式図である。
図5(a)に示される例では、分離面35上に改質スポット12が並んでおり、分離面35上のガリウム部34は、隣り合う改質スポット12の間に入り込むように形成されている。この状態から金属部材22が接合されると、
図5(b)に示されるように、隣り合う改質スポット12の間に入り込むように合金部24が形成される。このように改質スポット12の間に入り込むように合金部24が形成された場合、アンカー効果により、金属部材22を半導体部材21に強固に接合することができると考えられる。また、複数の改質スポット12の高さが互いに揃っている場合、半導体部材21の厚さ方向における接合精度を高めることができると考えられる。
[作用及び効果]
【0034】
実施形態に係る接合方法では、レーザ光Lの照射によりGaN基板30(半導体対象物)から析出したガリウムからなるガリウム部34を利用し、金属部材22を構成する金属材料とガリウム部34とを合金化させることにより、金属部材22をGaN基板30に接合する。これにより、例えば析出したガリウムを洗浄して除去する場合と比べて、工程数を削減することができる。また、GaN基板30から析出するガリウムを利用して接合するため、加工プロセスに無用な金属材料(例えば接合材に含まれる金属材料)を用いる必要がなく、金属汚染の発生を抑制することができる。また、金属材料とガリウム部34との合金化により接合されるため、金属部材22をGaN基板30に強固に接合することができる。また、GaN基板30から析出するガリウムを利用して化学反応により接合するため、例えば金属ペーストからなる接合材や、そのような接合のための接合装置を省略することができる。また、露出工程後の分離面35をそのまま接合に使用することができるため、接合工程のための準備を簡略化することができる。また、析出したガリウムの洗浄工程だけでなく、分離面35上のレーザ加工痕(改質スポット12)を研磨して除去する工程をも省略することができ、これによっても工程数を削減することができる。その結果、コストを削減することができる。よって、実施形態に係る接合方法によれば、金属部材22をGaN基板30(半導体対象物)に好適に接合することができる。
【0035】
析出工程では、GaN基板30の表面30aからGaN基板30の内部にレーザ光Lを照射する。仮想面Sは、GaN基板30の内部において表面30aと向かい合う面である。露出工程では、仮想面Sを境界としてGaN基板30を2つの部分31,32に分離させる。この場合、金属部材22をGaN基板30に好適に接合することができる。また、GaN基板30上に析出したGaを除去し、GaN基板30を研磨する工程を省略することができる。また、半導体デバイス20を薄くすることができ、放熱性の向上を図ることができる。
【0036】
金属部材22が、ヒートシンクである。この場合、ヒートシンクをGaN基板30に好適に接合することができる。
【0037】
金属部材22を構成する金属材料が、アルミニウム、銅、銀、金、プラチナ、スズ、亜鉛、インジウム又は鉄である。この場合、金属部材22をガリウム部34との合金化によりGaN基板30に好適に接合することができる。
【0038】
半導体デバイス20では、金属部材22を構成する金属材料とガリウムとの合金からなる合金部24を介して金属部材22が半導体部材21に接合されている。これにより、金属部材22をGaN基板30に強固に接合することができる。このように、半導体デバイス20では、金属部材22が半導体部材21に好適に接合されている。
[変形例]
【0039】
図6は、第1変形例に係る半導体デバイスの製造方法(接合方法)を説明するための図である。第1変形例の析出工程では、GaN基板30の表面30cにレーザ光Lを照射することにより表面30c上にガリウムを析出させ、ガリウムからなるガリウム部34を表面30c上に形成する(
図6(b))。表面30cは、GaN基板30におけるデバイス部33が形成された表面30aとは反対側の表面である。
【0040】
第1変形例に係る半導体デバイスの製造方法では、露出工程が実施されず(GaN基板30が分離されず)、析出工程の後に接合工程が実施される。第1変形例では、GaN基板30の全体が半導体デバイス20の半導体部材21に対応し、GaN基板30の表面30cが半導体部材21の第2表面21bに対応する。第1変形例の接合工程は、上記実施形態の接合工程と同様である。すなわち、接合工程では、金属部材22を、金属部材22を構成する金属材料とガリウム部34との合金化により、GaN基板30(半導体部材21)に接合する(
図6(c))。
【0041】
このような第1変形例によっても、上記実施形態と同様に、金属部材22をGaN基板30(半導体対象物)に好適に接合することができる。
【0042】
図7は、第2変形例に係る半導体デバイスの製造方法(接合方法)を説明するための図である。第2変形例に係る半導体デバイスの製造方法における半導体対象物10は、窒化ガリウムにより例えば円形板状に形成されたGaNウェハ(半導体ウェハ)40である。GaNウェハ40は、複数の直線状部分41aからなる格子状の切断予定領域(ダイシングストリート)41と、複数の直線状部分41aにより囲まれた複数の矩形状のデバイス形成領域42と、を有している。GaNウェハ40を切断予定領域41において切断して個片化することにより、複数の半導体デバイス(半導体チップ、半導体基板)が得られる。各デバイス形成領域42には、デバイス部43が形成されている。デバイス部43は、例えば上述した半導体デバイス20のデバイス部23に対応する。以下、第2変形例に係る半導体デバイスの製造方法により半導体デバイス20を製造する例について説明する。
【0043】
第2変形例に係る半導体デバイスの製造方法では、ウェハ状態で析出工程及び露出工程が実施される。析出工程では、GaNウェハ40の内部にレーザ光Lを照射することにより、GaNウェハ40の内部に位置する仮想面S上にガリウムを析出させ、ガリウムからなるガリウム部34を仮想面S上に形成する。露出工程では、仮想面Sを境界としてGaNウェハ40を2つの部分に分離させ、それら2つの部分の間の分離面35上にガリウム部34を露出させる。
【0044】
露出工程の後に、当該2つの部分の一方(GaNウェハ40)を切断予定領域41において切断して個片化することにより、分離面35(第2表面21b)にガリウム部34が露出した複数の半導体部材21が得られる(個片化工程)。個片化工程では、レーザ光Lを用いてGaNウェハ40が切断されてもよいし、レーザ加工以外の機械加工(例えばブレードダイシング)によりGaNウェハ40が切断されてもよい。前者の場合、例えば、レーザ光Lの照射によってGaNウェハ40の厚さ方向に沿って並ぶように複数の改質スポット12を形成し、それらの改質スポット12からGaNウェハ40の厚さ方向に亀裂を伸展させることにより、GaNウェハ40を切断してもよい。
【0045】
個片化工程の後に、各半導体部材21について接合工程が実施され、金属部材22を構成する金属材料とガリウム部34との合金化により金属部材22が半導体部材21に接合される。
【0046】
このような第2変形例によっても、上記実施形態と同様に、金属部材22を半導体部材21(半導体対象物)に好適に接合することができる。なお、上記例では、上記実施形態と同様にGaNウェハ40の内部に位置する仮想面S上にガリウム部34を形成するとして説明したが、第1変形例のように、GaNウェハ40の裏面(デバイス部43が形成された表面とは反対側の表面)上にガリウム部34が形成されてもよい。この場合、当該裏面の全体にわたってガリウム部34が形成されてもよいし、切断予定領域41にレーザ光Lを照射することで裏面における切断予定領域41のみにガリウム部34が形成されてもよい。
【0047】
本発明は、上記実施形態及び変形例に限られない。例えば、各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。半導体対象物の材料は、窒化ガリウムを含んでいればよく、窒化ガリウム以外の半導体材料を含んでいてもよい。金属部材22の材料は、ガリウムとは異なる金属材料を含んでいればよく、2種類以上の金属材料を含んでいてもよい。上記実施形態及び変形例ではデバイス形成工程の後に析出工程が実施されたが、デバイス形成工程は析出工程の後に実施されてもよい。上記実施形態ではGaN基板30に1つの仮想面Sが設定され、GaN基板30が2つの部分31,32に分離されたが、GaN基板30に厚さ方向に並ぶ2つ以上の仮想面Sが設定され、GaN基板30が3つ以上の部分に分離されてもよい。
【符号の説明】
【0048】
20…半導体デバイス、21…半導体部材(半導体対象物)、22…金属部材、24…合金部、30…GaN基板(半導体ウェハ、半導体対象物)、30a…表面、30c…表面、31,32…部分、34…ガリウム部、L…レーザ光、S…仮想面。