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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170455
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】排水流路構造
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/122 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
E03C1/122 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082231
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】早川 聡
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061AA01
2D061AB03
2D061AC08
(57)【要約】
【課題】
槽体の排水口の上方を排水が蓋のように覆っても、支障なく排水をスムーズに排出することができる排水流路構造を提供する。
【解決手段】
槽体の排水流路構造を、
槽体内の排水を排出する排水流路と、前記排水流路上に備えた、前記排水流路の一部を満水状態とすることで水封する封水部と、前記封水部よりも上流側の前記排水流路内の空気を、前記槽体外且つ前記排水流路外に排気する排気構造と、から構成する。
また、前記槽体の底面に前記槽体内の排水を排出する排水口を備え、少なくとも前記排水口から前記封水部までの流路を配管部材によって構成すると共に、前記排水口から前記封水部までを構成する前記配管部材に分岐部分を設け、前記分岐部分に前記排気構造を備えて構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体内の排水を排出する排水流路と、
前記排水流路上に備えた、前記排水流路の一部を満水状態とすることで水封する封水部と、
前記封水部よりも上流側の前記排水流路内の空気を、前記槽体外且つ前記排水流路外に排気する排気構造と、
から構成したことを特徴とする排水流路構造。
【請求項2】
前記槽体の底面に前記槽体内の排水を排出する排水口を備え、少なくとも前記排水口から前記封水部までの流路を配管部材によって構成すると共に、前記排水口から前記封水部までを構成する前記配管部材に分岐部分を設け、前記分岐部分に前記排気構造を備えたことを特徴とする請求項1に記載の排水流路構造。
【請求項3】
前記排気構造は、前記排水流路内の排水の前記槽体外且つ前記排水流路外への排出を防止する排水の逆流防止構造を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水流路構造。
【請求項4】
前記排水の逆流防止構造は、
常時開弁し排水の逆流時のみ閉弁する逆流防止弁から構成されることを特徴とする請求項3に記載の排水流路構造。
【請求項5】
前記排水の逆流防止構造は、
小孔を設け、撥水加工を行った撥水体から構成されることを特徴とする請求項3に記載の排水流路構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水機器の排水を行う排水流路構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台の洗面ボウルや流し台のシンクなど、使用により排水を生じる排水機器には排水を溜める槽体が備えられている。
これら槽体の底面には槽体内の排水を排出するための排水口が備えられ、更に排水口から下水側に排水を排出するため、排水口から連通する排水流路構造が設けられてなる。
通常、排水流路構造は樹脂製等の管体を利用した排水配管によって構成される。
また、槽体の排水配管など排水流路構造は下水側に連通する流路に接続されているため、下水側の臭気や害虫類が屋内側に侵入しないように、流路上に排水トラップが備えられてなる。
【0003】
特許文献1に記載の発明は、洗面台の洗面ボウルに備えられた、排水流路構造を構成する排水配管に関するものであって、以下に記載する洗面ボウルと、排水口本体、継手部材、オーバーフロー配管、トラップ部材等の配管部材から構成される。
洗面ボウルは、上方が開口した箱体形状で、底面に取付孔、側面にオーバーフロー取付孔を開口してなる。
排水口本体は、取付孔に取り付けられる円筒状の部材であって、その内部に排水口を形成すると共に、上端の外側面に周縁に沿って突出したフランジ部を、フランジ部下方の側面にはオーバーフロー配管からの排水が排水口本体内に流入するための排水窓を、それぞれ設けてなる。
継手部材は、上端に排水口本体が、下端にトラップ部材が、それぞれ接続される円筒状の部材であって、洗面ボウルの取付孔周縁及び後述するオーバーフローアダプターを排水口本体のフランジ部と継手部材の上端とで挟持することで、洗面ボウルに接続固定される。
オーバーフロー配管は、オーバーフロー取付孔に取り付けられオーバーフロー排水口を形成するオーバーフロー継手と、排水口本体の排水窓の周囲を覆うように取り付けられるオーバーフローアダプターと、オーバーフロー継手とオーバーフローアダプターとを接続するホース管と、から構成され、オーバーフロー排水口からの排水は、ホース管を介してオーバーフローアダプター内に流入し、更に排水窓から排水口本体内に流入する。尚、オーバーフロー継手とホース管、ホース管とオーバーフローアダプターは予め工場などで接着もしくは接続されて施工現場に持ち込まれるものとする。
トラップ部材は、略S字形状に屈曲させた管体を90度回転させた形状の配管部材であって、トラップ部材内を排水が通過すると、排水の一部がトラップ部材の屈曲部分に溜まり、トラップ部材内の流路上に満水状態の部分、すなわち水封状態の部分を形成する。下流側から臭気を含む空気や害虫類が上流側に通過しようとしても、この水封部分を臭気を含む空気や害虫類は通過できないため、上流側に臭気を含む空気や害虫類が侵入することが防止される。この上流側への臭気を含む空気や害虫類への逆流を防止する機能をトラップ機能、排水の流路上に溜まって流路を満水状態にすることで流路を水封しトラップ機能を生じさせる溜まり水を封水と呼ぶ。
上記した特許文献1に記載の略S字形状に屈曲させた管体によるトラップ部材は、封水によってトラップ機能を生じる封水式排水トラップである。
【0004】
上記構成の洗面台の排水配管は、以下のように施工される。
まず、洗面ボウルの取付孔に上方から排水口本体を通過させ、取付孔の周縁に排水口本体のフランジ部を係止させる。
次に、洗面ボウルのオーバーフロー取付孔にオーバーフロー配管のオーバーフロー継手を取り付ける。
次に、オーバーフローアダプターを排水口本体の下方から挿通し、排水口本体の外周であって、排水窓の位置に配置する。
次に、継手部材を排水口本体の下端に接続し、排水口本体のフランジ部と継手部材の上端とで、取付孔周縁とオーバーフローを挟持するようにして接続固定する。
更に、トラップ部材の上流側端部を継手部材の下端に、下流側端部を床下配管等下水側に繋がる配管に、それぞれ接続して、特許文献1に記載の排水配管の施工が完了する。
【0005】
上記特許文献1に記載の洗面台において、洗面ボウル内に排水が生じると、以下のようにして排水は処理される。
槽体である洗面ボウル内に排水が発生した場合、排水は、洗面ボウルの底面に設けられた排水口から、排水口本体、継手部材、トラップ部材の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
また、栓蓋等によって排水口を閉塞し、洗面ボウル内部に排水を溜めた場合、オーバーフロー排水口の下端位置まで排水が溜まると、排水はオーバーフロー排水口からオーバーフロー継手、ホース管、オーバーフローアダプターの順に流れ、更に排水口本体の排水窓から排水口本体内部に流入して、排水口本体、継手部材、トラップ部材の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
【0006】
また、特許文献2に記載された発明の洗面ボウルの排水配管のように、特許文献1に記載した槽体の排水配管からオーバーフロー排水口及びオーバーフロー配管を省略したような槽体の排水配管がある。オーバーフロー配管を採用しない理由は様々で、槽体内に排水を溜めることが無いためオーバーフロー配管が不要な場合、意匠性や清掃性の向上を目的としてオーバーフロー排水口を無くした場合、槽体の素材や製造過程においてオーバーフロー取付孔を設けることができず、オーバーフロー配管を施工することができない場合などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-245488号
【特許文献2】特開2019-203271号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前記した排水流路構造において、槽体内の排水が完了した状態では、排水流路構造の封水部に封水が溜まり、他の排水流路構造部分は空気が存在した状態となっている。
この状態より槽体内に排水が生じ、槽体内に排水が溜まる際に、排水口から封水部の上流側の封水水面までの排水流路の内部にある空気(以下実施例も含め「排水口から封水までの空気」と記載)が排水口から上方に抜ける前に排水口の全体を覆い、図14に示したように、排水口で排水と空気の境界面を形成して排水口を塞ぐ蓋のような状態となる場合がある。
特に近年は意匠性を考慮して略すり鉢形状の槽体が増加しているが、このような略すり鉢形状の槽体は、少量の排水でも容易に槽体の底面全体に排水が溜まり、また水深も深くなりやすいため、槽体の排水が排水口を塞ぐ蓋のような状態となる場合が多い。
この状態から槽体内の排水を排水口より排出するためには、排水口から封水までの空気の少なくとも一部が、排水流路の外部に排気される必要がある。
特許文献1に記載の槽体の排水配管のように、オーバーフロー配管を採用している場合には、オーバーフロー配管を介して排水口から封水までの空気を排気することができ、槽体内の排水は支障なく排水口内に流入し、排水流路より下水側に排出することができる。
しかし、オーバーフロー配管を採用しない排水流路においては、当然オーバーフロー配管を介して排水口から封水までの空気を排気することができない。また、排水口の下流側の排水流路には封水部が設けられ、その内部には封水が溜まって空気の通過を防止しているため、排水口から封水までの空気を、封水部を超えて下流側に排気することもできない。
このようなオーバーフロー配管を備えない排水配管においては、上記した排水口での排水と空気の境界面が乱れて破壊されることで、空気の一部が気泡となって排水口から排気され、気泡と入れ替わるようにして槽体内の排水が排水口内に流れ込み、以降は排水の排水口への流入と空気の排水口からの排出が継続して行われることで、排水口からの排水が行われる。
しかし、一旦槽体の排水が排水口を塞ぐ蓋のような状態となると、その後排水口での排水と空気の境界面に乱れが発生するまでには時間がかかる場合が多い。
排水口から封水水面までの排水流路の一部がL字形状の管体等によって屈曲しており、また排水口から屈曲部分までの距離が短い場合には、排水流路の流れ方向が、排水口での排水と空気の境界面に影響して境界面に乱れが発生しやすいが、排水口から封水水面までが上下方向に直線状の配管部材で、排水流路の流れ方向が水平方向に偏りがないように構成されていると、排水口での排水と空気の境界面には乱れが発生しにくく、排水が開始されるまで時間が掛かることが多い。
【0009】
上記問題を解決するため、特許文献2に記載の発明においては、オーバーフロー配管を備えない排水配管において、一端を排水口本体内部に、他端を槽体内に、それぞれ配置した通気管を排水口本体内から槽体内に配置することで、槽体内に溜まった排水が排水口を蓋のように覆っても、排水口から封水までの空気を排水口外部に排気することが可能な構造としている。
しかしながら、特許文献2に記載の発明においても、次のような問題点があった。
・槽体内側の通気管の端部の位置が低いと、槽体内に排水が溜まった時に、槽体内側の通気管の端部も排水で覆われてしまい、通気ができなくなる。
・意匠性の向上を目的としてオーバーフロー配管を省略した場合、通気管が配置されたことで意匠性が悪化するため、オーバーフロー配管を省略した意味がなくなる。
・排水口に通気管を配置したことで、栓蓋等で排水口を閉塞したい場合でも通気管が邪魔となり排水口を閉塞できなくなる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み発明されたものであって、槽体の排水流路構造において、排水口の上方を排水が蓋のように覆っても、支障なく排水をスムーズに排出することができる排水流路構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、槽体内の排水を排出する排水流路と、
前記排水流路上に備えた、前記排水流路の一部を満水状態とすることで水封する封水部と、
前記封水部よりも上流側の前記排水流路内の空気を、前記槽体外且つ前記排水流路外に排気する排気構造と、
から構成したことを特徴とする。
【0012】
第二の発明は、前記槽体の底面に前記槽体内の排水を排出する排水口を備え、少なくとも前記排水口から前記封水部までの流路を配管部材によって構成すると共に、前記排水口から前記封水部までを構成する前記配管部材に分岐部分を設け、前記分岐部分に前記排気構造を備えたことを特徴とする。
【0013】
第三の発明は、前記排気構造は、前記排水流路内の排水の前記槽体外且つ前記排水流路外への排出を防止する排水の逆流防止構造を備えたことを特徴とする。
【0014】
第四の発明は、前記排水の逆流防止構造は、常時開弁し排水の逆流時のみ閉弁する逆流防止弁から構成されることを特徴とする。
【0015】
第五の発明は、前記排水の逆流防止構造は、小孔を設け、撥水加工を行った撥水体から構成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、槽体の排水流路構造において、オーバーフロー配管を採用しない場合でも、排水口から封水までの空気を槽体外且つ排水流路外に排気することが可能な排気構造を備えたことで、排水口の上方を排水が蓋のように覆っても、支障なく排水口から封水までの空気を排水流路から排気し、それによって排水を排水口からスムーズに排出することができる。この場合に、排水口内には通気管などの追加の部材を何も配置しないため、意匠性が悪化することや、排水口を蓋体で閉塞できなくなる、という問題が発生することもない。また、排気構造に空気の通過を許容し、排水の排水流路構造外への通過を防止する逆流防止構造を備えたことで、排水流路構造の外部への排水の漏水を確実に防止することができる。具体的な逆流防止構造としては、フロート体等の弁体を利用し、排水の逆流時に弁体が可動して閉弁する可動式の逆流防止弁の他、排水配管上に設けた開口部分に、小孔を設け撥水加工を行った撥水体を備えることで、撥水体の撥水により排水の小孔からの通過を防止するようにした逆流防止構造等がある。
撥水体を利用した、可動部分の無い逆流防止構造は、空気は撥水体の小孔を通過することで通過可能としつつ、排水の逆流は撥水体に施された撥水加工によって撥水体の小孔を通過することなく弾かれる構造であり、可動部分が無いため、可動部分の作動不良によって逆流防止構造が機能しなくなる、という問題を生じない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第一実施例の洗面台を示す断面図である。
図2】洗面台の部材構成を示す参考図である。
図3】第一実施例の排水口本体、継手部材、トラップ部材の部材構成を示す断面図である。
図4】第一実施例の排気装置の部材構成を示す断面図である。
図5】第一実施例の洗面台の、作動状態を示す断面図である。
図6】第一実施例の洗面台の、作動状態を示す断面図である。
図7】第一実施例の排気装置の、(a)通気状態、(b)逆流防止状態を示す参考図である。
図8】第二実施例の洗面台を示す断面図である。
図9】第二実施例の排気装置の部材構成を示す断面図である。
図10】撥水体の平面図である。
図11】第二実施例の洗面台の、作動状態を示す断面図である。
図12】第二実施例の洗面台の、作動状態を示す断面図である。
図13】第二実施例の排気装置の、(a)通気状態、(b)逆流防止状態を示す参考図である。
図14】従来の洗面台の、作動状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の第一実施例について、図面を参照しつつ説明する。
図1乃至図7に示した、本発明の第一実施例の排水流路構造は、槽体としての洗面台Sの洗面ボウルBに用いられる排水流路構造であって、配管部材によって組み立てられる排水配管によって構成される。洗面台S及び排水配管を構成する配管部材は、以下に記載する、排水口本体1、継手部材2、トラップ部材3、排気装置4等の部材より構成される。
洗面台Sは、以下に記載する洗面ボウルBとキャビネットCとから構成される。
洗面ボウルBは上方が開口した略すり鉢形状のボウル部分B1と、ボウル部分B1の上端から下方に垂下したボウル側壁部分B2とから構成され、ボウル部分B1の下端部分に排水口本体1を取り付けるための取付孔Hを備えてなる。
キャビネットCは、前記洗面ボウルBを載置する箱体であって、前面部分は開閉可能な扉を、また上面部分の中央には開口部分を、それぞれ備えてなる。
上記のような構成のキャビネットCは、その上面部分にボウル側壁部分B2の下端を載置すると共に、上面中央の開口部分からボウル部分B1下端をキャビネットC内部に挿通し、キャビネットC内にて排水流路構造を構成する排水配管が施工される。尚、以下の実施例においては、キャビネットCの上面に洗面ボウルBが載置固定された状態で施工現場に搬入され、施工現場の適正な位置に配置固定されたものとする。
排水口本体1は略円筒形状を成す部材であって、上端の開口部分に排水口1aを、排水口1aから連続する円筒の内部には排水流路を、それぞれ形成してなる。また、上端部分外周側には、側面方向に突出するフランジ部1bを設けてなると共に、フランジ部1bより下方の側面部分には雄ネジが形成されてなる。
また、排水口本体1の雄ネジと螺合する雌ネジを設けた板ナット部材1cを備えてなる。
継手部材2は直管形状の直管部2aと、直管部2aの側面に分岐部分としての枝管部2bを備えた配管部材であって、直管部2aの上端は排水口本体1の下端に、直管部2aの下端はトラップ部材3に、それぞれ水密的に接続される。また、枝管部2bの端部は排気装置4に接続される。
トラップ部材3は、略S字形状に屈曲させた管体を90度回転させた形状の配管部材であって、トラップ部材3内を排水が通過すると、排水の一部がトラップ部材3の屈曲部分に溜まり、トラップ部材3内の流路上に満水状態の部分、すなわち水封状態の部分を形成する。下流側から臭気を含む空気や害虫類が上流側に通過しようとしても、この水封状態の部分を、臭気を含む空気や害虫類は通過できないため、上流側に臭気を含む空気や害虫類が侵入することが防止される。この上流側への臭気を含む空気や害虫類への逆流を防止する機能をトラップ機能、排水の流路上に溜まって流路を満水状態にすることで流路を水封しトラップ機能を生じさせる溜まり水を封水、トラップ部材3の封水を形成する部分を封水部3aと呼ぶ。
本実施例の略S字形状に屈曲させた管体によるトラップ部材3は、封水によってトラップ機能を生じる封水式排水トラップである。
【0019】
排気装置4は、以下に記載する排気装置本体5と、L字管6と、フロート体7と、カバー体8と、から構成される。
排気装置本体5は、図4に示したように、伏せた椀形状を成す部材であって、上方の壁面には複数の通気孔5aを備えると共に、下面にフロート体7が当接することで通気孔5aを閉塞する弁座部5bと、弁座部5bの中央から下方に延出された軸部であるガイド軸5cと、を備えてなる。またガイド軸5cの下端には、フロート体7の脱落を防止するストッパー5dを備えてなる。
フロート体7は、中央にガイド軸5cが挿通されるためのガイド孔7aが設けられた平坦な円盤であって、比重が1よりも小さく弾性を備えた素材から構成される。
L字管6は、略L字形状に屈曲させた管体であって、一端は略水平方向を向けて、他端は鉛直上方を向けて、それぞれ配管施工される。L字管6の端部の内、略水平方向を向いた端部は継手部材2の枝管部2bに接続され、鉛直上方を向いた端部は排気装置本体5が取り付けられる。
カバー体8は、伏せた椀形状を成す部材であって、その内部にリブ体8aを備え、排気装置本体5に覆いかぶさるように、但しリブ体8aにより隙間を設けて取り付けられる。カバー体8を取り付けることで、通気孔5aからの空気は、排気装置本体5とカバー体8との隙間から排気可能となると共に、通気孔5aに埃などが堆積して通気孔5aを閉塞するという問題や、弁座部5bの周囲に付着してフロート体7が弁座部5bに正しく当接できず逆流時に漏水が発生するという問題の発生を防ぐことができる。
上記した排気装置4は、以下のような手順にて図5乃至図7に示したような状態に組み立てられる。
まず、フロート体7のガイド孔7aに排気装置本体5のガイド軸5cを挿通する。ガイド軸5cの下端にはガイド孔7aより大径なストッパー5dが備えられてなるが、フロート体7は弾性を備えてなるため、ガイド孔7aを弾性変形させ拡径させることで、ストッパー5dを超えてガイド軸5cを挿通させることができる。
次に、排気装置本体5の下方の開口に、L字管6の鉛直上方を向いた端部を水密的に接続し、L字管6と排気装置本体5内部とが連通した状態とする。
更に、カバー体8を、排気装置本体5に取り付けて、排気装置4の組み立てが完了する。
洗面台Sの施工現場には、排気装置4は組み立てた状態にて搬入される。
【0020】
上記のように構成された各部材は、以下のようにして洗面台Sの洗面ボウルBに施工される。
尚、各部材の接続箇所においては、特に明記しない場合でも、必要に応じて適宜パッキンや接着などの方法によって水密的な接続が行われている。
まず、洗面ボウルBの取付孔Hに排水口本体1を挿通し、フランジ部1bの下面に取付孔Hの周縁を当接させる。
次に、板ナット部材1cを排水口本体1の雄ネジに螺合させ、フランジ部1bの下面と板ナット部材1c上面とで取付孔Hの周縁を挟持するようにして排水口本体1を洗面ボウルBに接続固定する。
次に、排水口本体1の下端に継手部材2の直管部2aの上端を接続し、継手部材2の直管部2aの下端にはトラップ部材3を接続する。また、トラップ部材3の下端は床下配管に接続する。
更に、継手本体2の枝管部2bに、排気装置4を接続して、本実施例の、排水流路構造を形成する排水配管の施工が完了する。
施工が完了した状態において、排気装置4は、図1より明らかなように、洗面ボウルBの載置面よりも低い位置、具体的にはキャビネットC内であって、更に排水口1aより低い位置にその全体が配置されている。狭いボウル部分B1とボウル側壁部分B2の間ではなく、広いキャビネットC内に排気装置4を配置するため、排気装置4の配置レイアウトの自由度は高く、また施工作業を容易に行うことができる。
また、排気装置4は後述するように逆流防止構造としてフロート体7を利用した逆流防止弁を備えてなるため、排水口1aより低い位置に配置しても排水流路外に排水流路内の排水が漏れる恐れはない。
【0021】
以下に、第一実施例の洗面台Sの排水配管の動作について説明する。尚、本実施例の使用方法の説明においては、事前に洗面台Sを使用し、図1に示したように、封水部3a内に封水が形成されているものとする。また、図1図5等より明らかなように、排水口1aから封水の上流側水面Wまでは、排水配管は上下方向に直線状に配管されている。
【0022】
上記第一実施例の洗面台Sにおいて、洗面台Sの使用により洗面ボウルB内に排水が生じると、以下のようにして排水は処理される。
槽体である洗面ボウルB内に排水が発生した場合、排水は、洗面ボウルBの底面に設けられた排水口1aから、排水口本体1、継手部材2、トラップ部材3の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
尚、本実施例の排気装置4は、排気を目的として構成し施工されているが、排水の逆流時以外は常時開弁している構成のため、排水がスムーズに行われている時は閉弁せず、排水流路外から排水流路内に空気を通気することも可能な構成である。このため、排水の流れが速く、排水流路内が負圧になった場合には排気装置4から吸気することで負圧を解消し、破封等を防ぐこともできる。
【0023】
また、洗面台Sを使用し、槽体である洗面ボウルB内に排水が行われた際、排水口1aから封水までの空気が排水口1aから抜ける前に、排水口1aの上方に排水が溜まり、図5に示したように、排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となる場合がある。特に、本実施例の洗面ボウルBは略すり鉢形状を備えてなり、少量の排水でも容易に洗面ボウルBの底面全体に排水が溜まり、また水深も深くなりやすいため、洗面ボウルB内に生じた排水が排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となる場合が多い。
更に、本実施例では、排水口1aから封水の上流側水面Wまでは、排水配管は上下方向に直線状に配管されているため、洗面ボウルB内に生じた排水が排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となると、排水口1aでの排水と空気の境界面には乱れが発生しにくく、気泡が発生しにくい構造である。
この洗面ボウルB内の排水が排水口1aを塞ぐ蓋のようになった状態であっても、排水口1aから封水までの空気は、図7(a)の矢印で示したように、継手部材2の枝管部2bから、排気装置4のL字管6を通過し、排気装置本体5の通気孔5aから排水配管外、即ち排水流路外且つ槽体である洗面ボウルB外に支障なく排気される。
排水口1aから封水までの空気の一部が排気されたことで、図6に示したように、洗面ボウルB内の排水は支障なく排水口1a内から排水口本体1内に流入し、排水口本体1、継手部材2、トラップ部材3の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
また、排水が継手部材2の枝管部2bを介して排気装置4まで流出した場合、比重が1よりも小さい素材にて構成されたフロート体7が排水に浮くことでガイド軸5cに沿って上昇し、図7(b)に示したように、弁座部5bに当接して通気孔5aを閉塞するため、通気孔5aから排水が排水流路外に漏れることは無い。
排水が完了すると、排気装置4内の排水も枝管部2bを介して継手部材2の直管部2aに排出されて失われ、フロート体7は自重によりストッパー5dの位置まで降下するため、通気孔5aが開口して再び排水口1aから封水までの空気の排気が可能となる。
即ち、本実施例の排気装置4は、排水口1aから封水の上流側水面Wまでの間の排水流路内の空気を、槽体である洗面ボウルB外且つ排水流路外に排気する排気構造であって、更にフロート体7を弁として、常時開弁して空気の通気を許容すると共に、排水の逆流時のみ閉弁して排水の槽体外且つ排水流路外への排出を防止する排水の逆流防止構造としての逆流防止弁を構成してなる。
【0024】
次に、本発明の第二実施例について、図面を参照しつつ説明する。
尚、図8乃至図13に示した、本発明の第二実施例の排水流路構造は、排気装置4以外全て段落0018に記載された各部材と同一の部材により構成されるため、排気装置4以外の部材の説明については省略し、排気装置4の構成についてのみ、以下に記載する。
【0025】
第二実施例の排気装置4は、以下に記載するL字管6と、撥水体9と、キャップ体10と、から構成される。
L字管6は、略L字形状に屈曲させた管体であって、一端は略水平方向を向けて、他端は鉛直上方を向けて、それぞれ配管施工される。L字管6の端部の内、略水平方向を向いた端部は継手部材2の枝管部2bに接続され、鉛直上方を向いた端部には撥水体9が配置される。
撥水体9は、図9及び図10に示したように小孔9aを複数規則的に設けた円形の板状体を成す金属版であって、その表面及び小孔9aに排水を弾くための撥水加工が施されてなる。
キャップ体10は、略円筒形状を成し、円筒形状の一端に内向きの鍔部10aを備えた部材であって、撥水体9が配置されたL字管6の端部に取り付けられ、鍔部10aによって撥水体9をL字管6の端部に固定することで、撥水体9の小孔9aから通気が行われることを可能な状態としつつ、L字管6の端部から撥水体9が脱落等することを防止する。
上記した排気装置4は、L字管6の鉛直上方を向いた端部に撥水体9を配置し、更にキャップ体10をL字管6の鉛直上方を向いた端部に、撥水体9が小孔9aから通気可能且つL字管6から脱落しないように取り付けることで図11乃至図13に示したような状態に組み立てが完了する。
洗面台Sの施工現場には、排気装置4は組み立てた状態にて搬入される。
【0026】
本発明の第二実施例の排水配管の、洗面台Sの洗面ボウルBへの施工手順は、段落0020に記載した第一実施例の洗面台Sの洗面ボウルBへの施工手順と同一の手順のため省略する。
尚、施工が完了した状態において、図8より明らかなように、排気装置4が、キャビネットC内であって、排水口1aより低い位置にその全体が配置されている点も、第一実施例と同様である。
【0027】
以下に、第二実施例の洗面台Sの排水配管の動作について説明する。尚、本実施例の使用方法の説明においては、事前に洗面台Sを使用し、封水部3a内に封水が形成されているものとする。また、図8図11等より明らかなように、排水口1aから封水の上流側水面Wまでは、排水配管は上下方向に直線状に配管されている。
【0028】
上記第二実施例の洗面台Sにおいて、洗面台Sの使用により洗面ボウルB内に排水が生じると、以下のようにして排水は処理される。
槽体である洗面ボウルB内に排水が発生した場合、排水は、洗面ボウルBの底面に設けられた排水口1aから、排水口本体1、継手部材2、トラップ部材3の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
尚、本発明の排気装置4は、排気を目的として構成し施工されているが、撥水体9の小孔9aを塞ぐ機構等を特に備えてはおらず、排水がスムーズに行われている時は排水流路外から排水流路内に空気を通気することも可能な構成である。このため、排水の流れが速く、排水流路内が負圧になった場合には排気装置4から吸気することで負圧を解消し、破封等を防ぐこともできる。
【0029】
また、洗面台Sを使用し、槽体である洗面ボウルB内に排水が行われた際、排水口1aから封水までの空気が排水口1aから抜ける前に排水口1aの上方に排水が溜まり、図11に示したように、排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となる場合がある。特に、本実施例の洗面ボウルBは略すり鉢形状を備えてなり、少量の排水でも容易に洗面ボウルBの底面全体に排水が溜まり、また水深も深くなりやすいため、洗面ボウルB内に生じた排水が排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となる場合が多い。
更に、本実施例では、排水口1aから封水の上流側水面Wまでは、排水配管は上下方向に直線状に配管されているため、洗面ボウルB内に生じた排水が排水口1aを塞ぐ蓋のような状態となると、排水口1aでの排水と空気の境界面には乱れが発生しにくく、気泡が発生しにくい構造である。
この洗面ボウルB内の排水が排水口1aを塞ぐ蓋のようになった状態であっても、排水口1aから封水までの空気は、図13(a)の矢印で示したように、継手部材2の枝管部2bから、排気装置4のL字管6を通過し、撥水体9の小孔9aから排水配管外、即ち排水流路外且つ槽体である洗面ボウルB外に支障なく排気される。
排水口1aから封水までの空気の一部が排気されたことで、図12に示したように、洗面ボウルB内の排水は支障なく排水口1a内から排水口本体1内に流入し、排水口本体1、継手部材2、トラップ部材3の順に通過し、最終的に下水側に排出される。
また、排水が継手部材2の枝管部2bを介して排気装置4の方向に流出した場合、撥水体9や小孔9aの表面に撥水加工が施されていることで、図13(b)に示したように、排水は撥水体9を通過することができない。排水が撥水体9を通過するためには、撥水体9表面から小孔9aに向かって排水が流れるか、排水が小孔9aよりも小さな水滴となって小孔9aを通過する必要があるが、撥水体9表面には撥水加工がおこなわれているため、撥水体9表面から小孔9aに向かって排水が流れることはできず、また排水は水量が十分なため、小孔9aを通過できるほど小さな水滴となることができず、全て撥水体9の撥水加工によって弾かれて排水は撥水体9を通過することができない状態となる。
排水が完了すると、排気装置4内の排水も枝管部2bを介して継手部材2の直管部2aに排出されて失われ、排水口1aから封水までの間の空気の排気が可能となる。
即ち、本実施例の排気装置4は、排水口1aから封水の上流側水面Wまでの間の排水流路内の空気を、槽体である洗面ボウルB外且つ排水流路外に排気する排気構造であって、更に小孔9aを設けた円形の板状体に撥水加工を施した撥水体9によって、排水の槽体外且つ排水流路外への排出を防止する排水の逆流防止構造を備えてなる。
【0030】
本発明の実施例は以上であるが、本発明の配管構造は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば、上記各実施例では、槽体を洗面台Sの洗面ボウルBとしているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、槽体を流し台のシンクや浴室の浴槽としても良い。
また、上記第二実施例では、可動部分を備えないためカバー体8を採用していないが、第一実施例のカバー体8と同様のカバー体8を、撥水体9を覆うように取り付けて、埃等が小孔9aを閉塞することが無い構造としても良い。
【0031】
また、上記第二実施例では、撥水体9を円形の板状体から構成しているが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、ハッチングを備えた金属板や可撓性を備えたメッシュ体またはスポンジ状体等に撥水加工を施して撥水体9としても良い。これらの構成の撥水体9でも、小孔9aから空気を排水流路外に排気しつつ、撥水体9の撥水の作用により排水流路外に排水の逆流が生じない構成とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1 排水口本体 1a 排水口
1b フランジ部 1c 板ナット部材
2 継手部材 2a 直管部
2b 枝管部 3 トラップ部材
3a 封水部 4 排気装置
5 排気装置本体 5a 通気孔
5b 弁座部 5c ガイド軸
5d ストッパー 6 L字管
7 フロート体 7a ガイド孔
8 カバー体 8a リブ体
9 撥水体 9a 小孔
10 キャップ体 10a 鍔部
B 洗面ボウル B1 ボウル部分
B2 ボウル側壁部分 C キャビネット
H 取付孔 S 洗面台
W 封水の上流側水面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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