(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170466
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】糸処理装置
(51)【国際特許分類】
D01D 7/00 20060101AFI20231124BHJP
D02J 1/22 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
D01D7/00 C
D02J1/22 304
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082252
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀平
(72)【発明者】
【氏名】米倉 踏青
【テーマコード(参考)】
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4L036AA01
4L036MA33
4L036PA12
4L036PA42
4L036PA49
4L045BA03
4L045DA09
4L045DA48
4L045DB07
4L045DB17
4L045DC01
4L045DC28
4L045DC31
(57)【要約】
【課題】糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、糸処理部に形成された複数の糸走行空間に容易に配置することである。
【解決手段】糸処理装置7は、配列方向に並んだ複数の第1保持溝24aを有する第1保持ガイド24と、第1保持ガイド24よりも糸走行方向の下流側に配置された第2保持ガイド25とを有する。第1保持ガイド24は、第1保持ガイド24に複数の糸Yが掛けられる第1糸掛位置と、複数の糸Yの複数の糸走行空間31への配置が完了する第1配置完了位置とをとることが可能である。第2保持ガイド25は、第2保持ガイド25に複数の糸Yが掛けられる第2糸掛位置と、複数の糸Yの複数の糸走行空間31への配置が完了する第2配置完了位置とをとることが可能である。第1糸掛位置にある第1保持ガイド24と、第2糸掛位置にある第2保持ガイド25とは糸走行方向において互いに隣接している。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸走行方向に沿って延び且つ前記糸走行方向と交差する配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間が形成され、前記複数の糸走行空間を走行する複数の糸に所定の処理を施す糸処理部と、
複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置するための糸配置部と、を備え、
前記糸配置部は、
前記配列方向に並んだ複数の第1保持溝を有する第1保持部と、
前記第1保持部よりも前記糸走行方向の下流側に配置され、前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸のピッチを維持しながら複数の糸を保持する第2保持部と、を有し、
前記第1保持部は、前記第1保持部に複数の糸が掛けられる第1糸掛位置と、前記糸走行空間よりも前記糸走行方向の上流側の位置であって複数の糸の前記複数の糸走行空間への配置が完了する第1配置完了位置とをとることが可能であって、
前記第2保持部は、前記第2保持部に複数の糸が掛けられる第2糸掛位置と、前記糸走行空間よりも前記糸走行方向の下流側の位置であって複数の糸の前記複数の糸走行空間への配置が完了する第2配置完了位置とをとることが可能であって、
前記第1糸掛位置にある前記第1保持部と、前記第2糸掛位置にある前記第2保持部とは、前記糸走行方向において互いに隣接していることを特徴とする糸処理装置。
【請求項2】
前記配列方向のピッチが前記複数の第1保持溝と同じである複数の第1溝部を有し、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1溝部に掛けられた複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置に配置された第1規制ガイドと、
前記配列方向のピッチが前記複数の第1溝部と同じである複数の第2溝部を有し、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記複数の第2溝部に掛けられた複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置に配置された第2規制ガイドと、をさらに備え、
前記第1配置完了位置は、前記第1保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から退避する位置であり、
前記第2配置完了位置は、前記第2保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から退避する位置であり、
前記第1保持部は、前記第1糸掛位置から前記第1配置完了位置に移動する途中で複数の糸を前記第1規制ガイドに受け渡し、
前記第2保持部は、前記第2糸掛位置から前記第2配置完了位置に移動する途中で複数の糸を前記第2規制ガイドに受け渡すことを特徴とする請求項1に記載の糸処理装置。
【請求項3】
前記第2保持部は、前記配列方向のピッチが前記複数の第2溝部と同じである複数の第2保持溝を有することを特徴とする請求項2に記載の糸処理装置。
【請求項4】
前記第2保持部は、前記配列方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラであることを特徴とする請求項2に記載の糸処理装置。
【請求項5】
前記糸配置部は、前記第1保持部の前記第1糸掛位置と前記第1配置完了位置との間の移動と、前記第2保持部の前記第2糸掛位置と前記第2配置完了位置との間の移動を連動させる連動機構を有することを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の糸処理装置。
【請求項6】
前記連動機構は、
前記配列方向に沿った第1揺動軸を中心に回転可能であって、前記第1保持部を揺動可能に支持する第1揺動アームと、
前記配列方向に沿った第2揺動軸を中心に回転可能であって、前記第2保持部を揺動可能に支持する第2揺動アームと、を有し、
前記第1揺動アームは第1ギアを含み、
前記第2揺動アームは第2ギアを含み、
前記連動機構は、前記第1ギアと前記第2ギアとの噛み合いによって前記第1揺動アームと前記第2揺動アームとを連動して回転させることで、前記第1保持部の移動と、前記第2保持部の移動を連動させることを特徴とする請求項5に記載の糸処理装置。
【請求項7】
前記第1糸掛位置は、前記配列方向から見たときに、前記第1保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から、前記第1溝部の開口する開口方向に外れる位置であり、
前記第2糸掛位置は、前記配列方向から見たときに、前記第2保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から、前記第2溝部の開口する開口方向に外れる位置であることを特徴とする請求項2~6の何れか1項に記載の糸処理装置。
【請求項8】
前記第1規制ガイドは、前記配列方向から見たときに、前記第1糸掛位置にある前記第1保持部に掛けられた複数の糸の糸道と重ならない位置に配置されていることを特徴とする請求項7に記載の糸処理装置。
【請求項9】
前記第1保持部は、前記第1配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあり、
前記第2保持部は、前記第2配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記複数の第2保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあることを特徴とする請求項1に記載の糸処理装置。
【請求項10】
前記糸配置部は、前記第1保持部及び前記第2保持部に掛けられた複数の糸が前記糸走行空間に配置されることを規制する規制状態と、規制が解除された解放状態との間で切り替え可能な規制部材をさらに有し、
前記規制部材は、
前記第1保持部が前記第1糸掛位置から前記第1配置完了位置となるまでの間であって、且つ、前記第2保持部が前記第2糸掛位置から前記第2配置完了位置となるまでの間、前記規制状態をとり、
前記第1保持部が前記第1配置完了位置となり、且つ、前記第2保持部が前記第2配置完了位置となったときに、前記解放状態をとることを特徴とする請求項9に記載の糸処理装置。
【請求項11】
前記第2保持部は、前記配列方向のピッチが前記複数の第1保持溝と同じである複数の第2保持溝を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の糸処理装置。
【請求項12】
前記第2保持部は、前記配列方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラであることを特徴とする請求項9又は10に記載の糸処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に所定の処理を施す糸処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紡糸装置から紡出される複数の糸を巻取装置で巻き取るように構成された紡糸生産設備が知られている。例えば、特許文献1には、複数の糸を下方に紡出する紡糸装置と、紡糸装置の下方に配置され、複数の糸を送るための糸送りローラとを含む紡糸生産設備(引用文献1の紡糸巻取装置)が開示されている。
【0003】
このような紡糸生産設備において、紡糸装置と糸送りローラとの間における糸道上に、例えばマイグレーションノズル等の糸処理部を有する糸処理装置が配置されることがある。マイグレーションノズルとは、圧縮空気の噴射の作用を利用して糸に集束性を付与する装置である。マイグレーションノズルは、例えば特許文献2に記載の交絡装置の交絡部と同様の構成を有している。マイグレーションノズルには、糸走行方向に沿って延びた複数の糸走行空間が形成されている。各糸走行空間は、複数の糸の配列方向に所定のピッチで並んでいる。マイグレーションノズルは、各糸走行空間に配置された複数の糸に対して、集束性を付与する処理を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-057148号公報
【特許文献2】特開2019-105007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、紡糸装置から紡出された複数の糸は、例えば、サクションガンなどのような複数の糸を収束させる収束部に収束された状態で、複数の糸走行空間に配置される。しかしながら、配列方向における複数の糸のピッチは収束部に向かって徐々に狭まっており、配列方向における複数の糸のピッチが糸走行方向の上流側と下流側とで異なった状態で、複数の糸を糸走行空間に配置しなければならない。そうすると以下の問題が生じる。
【0006】
上述したように、複数の糸のピッチは収束部に向かって徐々に狭まるため、配列方向における複数の糸のピッチは糸走行方向の上流側と下流側とで異なる。一方、糸走行方向に沿って延びた各糸走行空間は配列方向に所定のピッチで並んでいる。このため、収束部の位置を調整することによって、例えば複数の糸のピッチを糸走行方向における複数の糸走行空間の上流端のピッチに合わせたとしても、複数の糸走行空間下流端のピッチには合わないという事態が生じてしまう。そうすると、糸走行方向の上流側と下流側とで配列方向におけるピッチが異なる複数の糸を各糸走行空間に適切に配置することができない。このため、現状、糸走行方向の上流側と下流側とで配列方向におけるピッチが異なる複数の糸を各糸走行空間に配置する際には、作業員が各糸走行空間に対して1本ずつ糸を配置していく必要があり、時間を要するという問題があった。
【0007】
なお、このような問題は、マイグレーションノズルを糸処理部として有する糸処理装置だけでなく、次のような糸処理装置でも生じ得る問題である。つまり、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間を走行する複数の糸に所定の処理を施す糸処理装置(例えば、複数の糸にオイルを付与するオイルノズルや複数の糸の張力を検出するテンションセンサ等)でも同様の問題は生じ得る。
【0008】
本発明の目的は、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、糸処理部に形成された複数の糸走行空間に容易に配置することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の糸処理装置は、糸走行方向に沿って延び且つ前記糸走行方向と交差する配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間が形成され、前記複数の糸走行空間を走行する複数の糸に所定の処理を施す糸処理部と、複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置するための糸配置部と、を備え、前記糸配置部は、前記配列方向に並んだ複数の第1保持溝を有する第1保持部と、前記第1保持部よりも前記糸走行方向の下流側に配置され、前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸のピッチを維持しながら複数の糸を保持する第2保持部と、を有し、前記第1保持部は、前記第1保持部に複数の糸が掛けられる第1糸掛位置と、前記糸走行空間よりも前記糸走行方向の上流側の位置であって複数の糸の前記複数の糸走行空間への配置が完了する第1配置完了位置とをとることが可能であって、前記第2保持部は、前記第2保持部に複数の糸が掛けられる第2糸掛位置と、前記糸走行空間よりも前記糸走行方向の下流側の位置であって複数の糸の前記複数の糸走行空間への配置が完了する第2配置完了位置とをとることが可能であって、前記第1糸掛位置にある前記第1保持部と、前記第2糸掛位置にある前記第2保持部とは、前記糸走行方向において互いに隣接していることを特徴とするものである。
【0010】
配列方向におけるピッチが糸走行方向の上流側と下流側とで異なる複数の糸を、糸走行方向に沿って延び且つ配列方向に所定のピッチで並ぶ複数の糸走行空間に配置するのは難しい。本発明では、第1糸掛位置にある第1保持部と第2糸掛位置にある第2保持部は糸走行方向において互いに隣接しているため、第1保持部及び第2保持部に対して、配列方向に同じ間隔で複数の糸をまとめて掛けることができる。そして、複数の糸が掛けられた第1保持部が第1配置完了位置をとり、複数の糸が掛けられた第2保持部が第2配置完了位置をとることによって、複数の糸と複数の糸走行空間との配列方向におけるピッチが揃った状態で、複数の糸を複数の糸走行空間に配置することができる。このため、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間に容易に配置することができる。
【0011】
本発明の糸処理装置において、前記配列方向のピッチが前記複数の第1保持溝と同じである複数の第1溝部を有し、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1溝部に掛けられた複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置に配置された第1規制ガイドと、前記配列方向のピッチが前記複数の第1溝部と同じである複数の第2溝部を有し、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記複数の第2溝部に掛けられた複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置に配置された第2規制ガイドと、をさらに備え、前記第1配置完了位置は、前記第1保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から退避する位置であり、前記第2配置完了位置は、前記第2保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から退避する位置であり、前記第1保持部は、前記第1糸掛位置から前記第1配置完了位置に移動する途中で複数の糸を前記第1規制ガイドに受け渡し、前記第2保持部は、前記第2糸掛位置から前記第2配置完了位置に移動する途中で複数の糸を前記第2規制ガイドに受け渡すことが好ましい。
【0012】
複数の糸を、糸走行方向において糸走行空間の上流側に配置された第1規制ガイドと下流側に配置された第2規制ガイドに掛けることによって複数の糸走行空間に配置する構成がある。このような構成において、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を第1規制ガイド及び第2規制ガイドに掛けようとすると以下の問題が生じる。すなわち、複数の糸のピッチを第1規制ガイドと第2規制ガイドの一方のピッチに合わせたとしても、糸走行方向の上流側と下流側とで複数の糸のピッチは異なっているため、他方の規制ガイドのピッチとは合わない。このため、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を糸走行空間の上流側に配置された第1規制ガイドと下流側に配置された第2規制ガイドにまとめて掛けることは難しい。本発明では、第1糸掛位置にある第1保持部及び第2糸掛位置にある第2保持部に複数の糸をまとめて掛けた後、第1保持部を第1配置完了位置に移動させ、第2保持部を第2配置完了位置に移動させることによって、第1規制ガイドと第2規制ガイドに複数の糸をまとめて掛けることが容易となる。結果として、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間に容易に配置することができる。
【0013】
本発明の糸処理装置において、前記第2保持部は、前記配列方向のピッチが前記複数の第2溝部と同じである複数の第2保持溝を有することが好ましい。
【0014】
本発明によれば、第2保持部の第2保持溝に掛けられた複数の糸のピッチは複数の第2溝部の配列方向のピッチと同じとなるため、複数の糸のそれぞれを対応する第2溝部に確実に受け渡すことができる。これにより、第2規制ガイドに正確に糸掛けを行うことができ、複数の糸を配列方向に並んだ複数の糸走行空間に正確に配置することができる。
【0015】
本発明の糸処理装置において、前記第2保持部は、前記配列方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラであることが好ましい。
【0016】
本発明によれば、回転ローラである第2保持部に掛けられる複数の糸は、回転ローラの周面と各糸との間の摩擦力によって、回転ローラの周面に対して直交するように接触する。このため、第2保持部に掛けられた複数の糸のピッチは、第2保持部よりも糸走行方向の上流側に配置された第1保持部の第1溝部に掛けられた複数の糸のピッチと揃う。さらに、第2保持部よりも糸走行方向の下流側を走行する複数の糸のピッチが、第2保持部上の糸のピッチと異なっているとしても、回転ローラの周面と各糸との間の摩擦力によって、第2保持部に掛けられた複数の糸のピッチはずれることなく維持される。よって、第2保持部に掛けられた複数の糸のピッチは複数の第1保持溝の配列方向のピッチと同じになり、ひいては、複数の第1溝部及び複数の第2溝部の配列方向のピッチと同じになる。このため、複数の糸のそれぞれを対応する第2溝部により確実に受け渡すことができる。これにより、第2規制ガイドに正確に糸掛けを行うことができ、複数の糸を配列方向に並んだ複数の糸走行空間に正確に配置することができる。
【0017】
本発明の糸処理装置において、前記糸配置部は、前記第1保持部の前記第1糸掛位置と前記第1配置完了位置との間の移動と、前記第2保持部の前記第2糸掛位置と前記第2配置完了位置との間の移動を連動させる連動機構を有することが好ましい。
【0018】
先に一方の保持部から規制ガイドへの糸の受け渡しのみが行われる場合、その後に行われる他方の保持部から規制ガイドへの糸の受け渡しに伴って、既に糸の受け渡しが完了した一方の規制ガイドから糸が浮いて外れてしまうおそれがある。本発明によれば、第1保持部から第1規制ガイドへの糸の受け渡しと、第2保持部から第2規制ガイドへの糸の受け渡しを、同じタイミングで行うことが可能となる。このため、2つの規制ガイドへの糸掛け作業をより確実に行うことができる。
【0019】
本発明の糸処理装置において、前記連動機構は、前記配列方向に沿った第1揺動軸を中心に回転可能であって、前記第1保持部を揺動可能に支持する第1揺動アームと、前記配列方向に沿った第2揺動軸を中心に回転可能であって、前記第2保持部を揺動可能に支持する第2揺動アームと、を有し、前記第1揺動アームは第1ギアを含み、前記第2揺動アームは第2ギアを含み、前記連動機構は、前記第1ギアと前記第2ギアとの噛み合いによって前記第1揺動アームと前記第2揺動アームとを連動して回転させることで、前記第1保持部の移動と、前記第2保持部の移動を連動させることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、第1揺動アームと第2揺動アームとが第1ギアと第2ギアとの噛み合いによって連動して回転することで、第1保持ガイドと第2保持ガイドとを連動して揺動させることができる。このため、第1保持ガイド及び第2保持ガイドを連動して移動させるために、複雑な構成や制御が不要となる。
【0021】
本発明の糸処理装置において、前記第1糸掛位置は、前記配列方向から見たときに、前記第1保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から、前記第1溝部の開口する開口方向に外れる位置であり、前記第2糸掛位置は、前記配列方向から見たときに、前記第2保持部が、前記第1規制ガイド及び前記第2規制ガイドに複数の糸が掛けられたときの糸道から、前記第2溝部の開口する開口方向に外れる位置であることが好ましい。
【0022】
本発明によれば、第1糸掛位置にある第1保持部及び第2糸掛位置にある第2保持部に複数の糸を掛けるときに、複数の第1溝部や複数の第2溝部のうちの本来糸が掛けられるべきでない溝部に、意図せずに糸が掛けられてしまうことを抑制することができる。そして、第1保持部に糸が保持されており且つ第1規制ガイドに糸が掛けられていない状態で第1保持部を第1配置完了位置に移動させることによって、複数の第1溝部のうちの糸が掛けられるべき第1溝部に対して、より確実に糸を掛けることができる。同様に、第2保持部に糸が保持されており且つ第2規制ガイドに糸が掛けられていない状態で第2保持部を第2配置完了位置に移動させることによって、複数の第2溝部のうちの糸が掛けられるべき第2溝部に対して、より確実に糸を掛けることができる。
【0023】
本発明の糸処理装置において、前記第1規制ガイドは、前記配列方向から見たときに、前記第1糸掛位置にある前記第1保持部に掛けられた複数の糸の糸道と重ならない位置に配置されていることが好ましい。
【0024】
本発明によれば、第1糸掛位置にある第1保持部に糸を掛けるときに、複数の第1溝部のうちの本来糸が掛けられるべきでない第1溝部に意図せずに糸が掛けられてしまうことをさらに抑制することができる。そして、第1保持部に糸が保持されており且つ第1規制ガイドに糸が掛けられていない状態で第1保持部を第1配置完了位置に移動させることによって、複数の第1溝部のうちの糸が掛けられるべき第1溝部に対して、より確実に糸を掛けることができる。
【0025】
本発明の糸処理装置において、前記第1保持部は、前記第1配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあり、前記第2保持部は、前記第2配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記複数の第2保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあることが好ましい。
【0026】
本発明では、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を第1糸掛位置にある第1保持部及び第2糸掛位置にある第2保持部にまとめて掛けた後、第1保持部を第1配置完了位置とし、第2保持部を第2配置完了位置とする。これにより、上述のような第1規制ガイドや第2規制ガイドが配置されていなくても、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間に配置することができる。このため、複数の糸を複数の糸走行空間に配置するための部材の数を減らすことができる。
【0027】
本発明の糸処理装置において、前記糸配置部は、前記第1保持部及び前記第2保持部に掛けられた複数の糸が前記糸走行空間に配置されることを規制する規制状態と、規制が解除された解放状態との間で切り替え可能な規制部材をさらに有し、前記規制部材は、前記第1保持部が前記第1糸掛位置から前記第1配置完了位置となるまでの間であって、且つ、前記第2保持部が前記第2糸掛位置から前記第2配置完了位置となるまでの間、前記規制状態をとり、前記第1保持部が前記第1配置完了位置となり、且つ、前記第2保持部が前記第2配置完了位置となったときに、前記解放状態をとることが好ましい。
【0028】
第1保持部及び第2保持部に掛けられた複数の糸が、各保持部が配置完了位置となるよりも前に複数の糸走行空間に配置されてしまうことがある。しかし、この場合、各保持部は配置完了位置となっていないため、複数の糸は対応する糸走行空間に適切に配置されないおそれがある。本発明によれば、第1保持部及び第2保持部が配置完了位置となるよりも前に、複数の糸が複数の糸走行空間に配置されることを防止することができる。このため、複数の糸を対応する複数の糸走行空間に適切に配置することができる。
【0029】
本発明の糸処理装置において、前記第2保持部は、前記配列方向のピッチが前記複数の第1保持溝と同じである複数の第2保持溝を有することが好ましい。
【0030】
本発明によれば、第2保持部の第2保持溝に掛けられた複数の糸のピッチを複数の第1保持溝の配列方向のピッチと同じになるように維持した状態で、第1保持部を第1配置完了位置とし第2保持部を第2配置完了位置とすることができる。このため、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間により確実に配置することができる。
【0031】
本発明の糸処理装置において、前記第2保持部は、前記配列方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラであることが好ましい。
【0032】
本発明によれば、回転ローラである第2保持部に掛けられる複数の糸は、回転ローラの周面と各糸との間の摩擦力によって、回転ローラの周面に対して直交するように接触する。このため、第2保持部に掛けられた複数の糸のピッチは、第2保持部よりも糸走行方向の上流側に配置された第1保持部の第1溝部に掛けられた複数の糸のピッチと揃う。さらに、第2保持部よりも糸走行方向の下流側を走行する複数の糸のピッチが、第2保持部上の糸のピッチと異なっているとしても、回転ローラの周面と各糸との間の摩擦力によって、第2保持部に掛けられた複数の糸のピッチはずれることなく維持される。この状態で、第1保持部を第1配置完了位置とし第2保持部を第2配置完了位置とすることで、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸を、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間により確実に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】第1保持ガイドが第1糸掛位置にあり、第2保持ガイドが第2糸掛位置にあるときの糸処理装置を前側から見た図である。
【
図3】第1保持ガイドが第1配置完了位置にあり、第2保持ガイドが第2配置完了位置にあるときの糸処理装置を前側から見た図である。
【
図4】糸処理部の一部分の、左右方向及び前後方向と平行な断面の断面図である。
【
図5】第1保持ガイドが第1糸掛位置にあり、第2保持ガイドが第2糸掛位置にあるときの糸処理装置を右側から見た図である。
【
図6】第1保持ガイドが第1配置完了位置にあり、第2保持ガイドが第2配置完了位置にあるときの糸処理装置を右側から見た図である。
【
図7】第1保持ガイドが第1糸掛位置にあり、第2保持ガイドが第2糸掛位置にあるときの糸処理装置を左側から見た図である。
【
図8】第1保持ガイドが第1配置完了位置にあり、第2保持ガイドが第2配置完了位置にあるときの糸処理装置を左側から見た図である。
【
図9】第1変形例に係る糸処理装置を前側から見た図である。
【
図10】第2変形例に係る糸処理装置において、第1保持ガイドが第1糸掛位置にあり、第2保持ガイドが第2糸掛位置にあるときの糸処理装置を左側から見た図である。
【
図11】第2変形例に係る糸処理装置において、第1保持ガイドが第1配置完了位置にあり、第2保持ガイドが第2配置完了位置にあるときの糸処理装置を左側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0035】
(紡糸生産設備1の全体構成)
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、紡糸生産設備1の概略構成を示す図である。以下、
図1の紙面上下方向を上下方向、紙面左右方向を左右方向とする。また、
図1の紙面に垂直な方向を前後方向とし、紙面手前側を前方とする。以下、上記の方向語を適宜使用して説明する。
【0036】
紡糸生産設備1は、紡糸装置2から紡出される複数の糸Yを巻取装置4で巻き取るように構成されている。紡糸装置2は、溶融したポリマーを糸Yとして下方に紡出する装置である。紡糸生産設備1は、
図1に示すように、油剤ノズルを各々備えた複数の油剤ガイド5と、複数の案内ガイド6と、糸処理装置7と、2つのゴデットローラ11及び12と、紡糸延伸装置3と、巻取装置4とを含む。紡糸装置2と、その下方に配置された複数の油剤ガイド5及び複数の案内ガイド6とは、上階(2階)に配置されている。糸処理装置7と、2つのゴデットローラ11及び12と、紡糸延伸装置3と、巻取装置4とは、下階(1階)に配置されている。
【0037】
複数の油剤ガイド5は、紡糸装置2の下方に配置され、紡糸装置2から下方に紡出された複数の糸Yのそれぞれに油剤を付与する。複数の案内ガイド6は、複数の油剤ガイド5のそれぞれの下方において左右方向に等間隔に配置され、油剤が付与された複数の糸Yを個別に案内する。
【0038】
糸処理装置7は、複数の案内ガイド6の下方に配置され、複数の案内ガイド6によって個別に案内された複数の糸Yに対して、圧縮空気の噴射の作用を利用して集束性を付与するための装置である。糸処理装置7は、第1規制ガイド22と、第2規制ガイド23とを有する(
図2参照)。第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に掛けられた複数の糸Yは、互いに略平行且つ左右方向に略等間隔で走行する。糸処理装置7の詳細は後述する。
【0039】
ゴデットローラ11、12は、
図1に示すように、糸処理装置7の糸走行方向の下流側に配置されており、不図示のモータによって回転駆動される。紡糸装置2から紡出された複数の糸Yは、油剤ガイド5、案内ガイド6、糸処理装置7を経由して、ゴデットローラ11に巻き掛けられており、ゴデットローラ11によって紡糸延伸装置3へ送られる。紡糸延伸装置3によって加熱延伸された複数の糸Yは、ゴデットローラ12に巻き掛けられており、ゴデットローラ12によって巻取装置4へ送られる。なお、実際には、糸走行方向においてゴデットローラ12の下流側であって巻取装置4の上流側には、交絡装置や別のゴデットローラが配置されているが、
図1では記載を書略している。
【0040】
紡糸延伸装置3は、複数の糸Yを加熱延伸する装置であり、紡糸装置2の下方に配置されている。紡糸延伸装置3は、保温箱60と、保温箱60の内部に収容された5つのゴデットローラ91~95とを有している。保温箱60の右側面部の下部には、複数の糸Yを保温箱60の内部に導入するための糸導入口60aが形成され、保温箱60の右側面部の上部には、複数の糸Yを保温箱60の外部に導出するための糸導出口60bが形成されている。
【0041】
下側3つのゴデットローラ91~93は、複数の糸Yを延伸する前に予熱するための予熱ローラであり、上側2つのゴデットローラ94、95は、延伸された複数の糸Yを熱セットするための調質ローラである。上側2つのゴデットローラ94、95のローラ表面温度は、下側3つのゴデットローラ91~93のローラ表面温度よりも高い温度に設定されている。また、上側2つのゴデットローラ94、95の糸送り速度は、下側3つのゴデットローラ91~93よりも速くなっている。
【0042】
糸導入口60aを介して保温箱60に導入された複数の糸Yは、まず、ゴデットローラ91~93によって送られる間に延伸可能な温度まで予熱される。予熱された複数の糸Yは、ゴデットローラ93とゴデットローラ94との間の糸送り速度の差によって延伸される。さらに、複数の糸Yは、ゴデットローラ94、95によって送られる間にさらに高温に加熱されて、延伸された状態が熱セットされる。このようにして延伸された複数の糸Yは、糸導出口60bを介して保温箱60の外に導出される。
【0043】
巻取装置4は、複数の糸Yを巻き取る装置であり、紡糸延伸装置3の下方に配置されている。巻取装置4は、ボビンホルダ13やコンタクトローラ14等を有している。ボビンホルダ13は、前後方向に延びる円筒形状を有し、図示しないモータによって回転駆動される。ボビンホルダ13には、その軸方向に複数のボビンBが並んだ状態で装着される。巻取装置4は、ボビンホルダ13を回転させることによって、複数のボビンBに複数の糸Yを同時に巻き取り、複数のパッケージPを生産する。コンタクトローラ14は、複数のパッケージPの表面に接触して所定の接圧を付与し、パッケージPの形状を整える。
【0044】
(糸処理装置7)
次に、糸処理装置7について、
図2~8を参照しつつ詳細に説明する。なお、
図2及び
図3では、説明のため、複数の糸Yのうち一部の糸Yの記載は省略している。また、
図7及び
図8では、説明のため、糸Yの記載は省略している。糸処理装置7は、基材20と、糸処理部21と、第1規制ガイド22と、第2規制ガイド23と、糸配置部50とを含む。
【0045】
基材20は、略直方体形状の部材である。糸処理部21は、圧縮空気の噴射の作用を利用して複数の糸Yに集束性を付与する装置である。
図3及び
図4に示すように、糸処理部21は、基材20の前後方向における前側の表面に、複数の交絡片26が左右方向に並ぶことによって形成されている。
図1に示すように、糸処理部21は、複数の案内ガイド6の下方であって、ゴデットローラ11の上方に配置されている。
【0046】
図4に示すように、糸処理部21は、複数の糸走行空間31と、複数の糸導入経路32と、複数の噴射流路33と、を有している。複数の糸走行空間31は、糸走行方向に沿って延び且つ糸走行方向と交差する配列方向(
図4の左右方向)に略等ピッチで並んでいる。なお、糸走行空間31のピッチとは、隣接する糸走行空間31の中心間の距離である。また、複数の糸走行空間31は、各交絡片26に1つずつ形成されている。糸走行空間31は、糸走行方向から見て左右方向を長手方向とする略楕円形状に形成されている。糸走行方向において、交絡片26の全長にわたって延び、両端が開口している。
【0047】
複数の糸導入経路32は、複数の糸走行空間31に対して個別に設けられた、糸Yを糸走行空間31に導入させるための経路である。糸導入経路32は、糸走行方向において、交絡片26の全長にわたって延びており、両端が開口している。また、糸導入経路32は、第1糸経路36と第2糸経路37と第3糸経路38とを有する。
【0048】
第1糸経路36は、隣接する2つの交絡片26の間に形成された隙間であり、交絡片26の略前半分において前後方向に延び、前後方向の前側の端が糸Yの挿入口36aとなっている。
【0049】
第2糸経路37は、第1糸経路36の前後方向における後側の端に接続され、第1糸経路36との接続部分から右側に延びている。第3糸経路38は、第2糸経路37の右端に接続され、第2糸経路37との接続部分から前後方向の前側に向かって延びている。そして、第3糸経路38の前後方向の前側の端が糸走行空間31に接続されている。
【0050】
また、
図4に示すように、交絡片26の前後方向における前側の表面のうち略中央部分よりも左側の略半分は、左端が略中央部分よりも後側となるように左右方向に対して傾斜した傾斜面26aとなっている。なお、本実施形態において、交絡片26の前側の表面の略中央部分は、実際の中央部分よりも若干右側の部分である。また、交絡片26の前後方向における前側の表面のうち略中央部分よりも右側の略半分は、右端が略中央部分よりも後側となるように左右方向に対して傾斜した傾斜面26bとなっている。よって、傾斜面26a、26bが第1糸経路36の左右方向における両側に位置している。これにより、後述の第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に掛けられることで互いに略平行に走行する各糸Yは、傾斜面26a、26bに案内されて第1糸経路36に挿入されるようになっている。
【0051】
複数の噴射流路33は、複数の糸走行空間31に対して個別に設けられている。噴射流路33は、各交絡片26に1つずつ形成されており、前後方向に延び、その先端(前側の端)が、第2糸経路37と第3糸経路38との接続部分の、前後方向における後側の壁面に開口した噴射口33aとなっている。これにより、噴射口33aは、第3糸経路38を介して糸走行空間31と前後方向に対向している。また、噴射流路33の後端部は、流体供給流路43を介して流体供給源40に接続されている。流体供給流路43には、バルブ39が設けられている。そして、バルブ39が開放されると、流体供給源40から供給された空気などの流体が、流体供給流路43を介して噴射流路33に供給され、噴射流路33の噴射口33aから糸走行空間31に噴射される。これにより、糸走行空間31内に旋回流が発生し、糸走行空間31を走行する糸Yを形成するフィラメントに集束性が付与される。
【0052】
第1規制ガイド22は、
図2、
図5等に示すように、基材20の前後方向における前側の表面の、糸走行方向における糸処理部21よりも上流側の部分に配置されている。第1規制ガイド22は、
図2に示すように、複数の糸Yの配列方向である左右方向に等ピッチに並んだ複数の第1溝部22aを有する。第1溝部22aのピッチとは、隣接する第1溝部22aの中心間の距離である。複数の第1溝部22aのピッチは、複数の糸走行空間31のピッチと同じである。第1溝部22aは、前後方向の前側に向かって開口している。なお、前後方向の前側に向かう方向が、本発明の第1溝部22aの開口する開口方向に相当する。また、
図5に示すように、第1規制ガイド22は、左右方向から見たときに、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24(後述)に掛けられた複数の糸Yの糸道と重ならない位置に配置されている。換言すれば、第1規制ガイド22は、前後方向において、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に掛けられた複数の糸Yの糸道よりも後側となる位置に配置されている。
【0053】
第2規制ガイド23は、
図2、
図5等に示すように、基材20の前後方向における前側の表面の、糸走行方向における糸処理部21よりも下流側の部分に配置されている。第2規制ガイド23は、
図2に示すように、複数の第1溝部22aと同じピッチで左右方向に並んだ複数の第2溝部23aを有する。第2溝部23aのピッチとは、隣接する第2溝部23aの中心間の距離である。第2溝部の23aは、前後方向の前側に向かって開口している。なお、前後方向の前側に向かう方向が、本発明の第2溝部23aの開口する開口方向に相当する。
【0054】
複数の第1溝部22aと複数の第2溝部23aとは、左右方向の位置が略同じとなっている。そして、糸走行方向に走行する糸Yが、隣接する第1溝部22aの間、及び、隣接する第2溝部23aの間を通されることで、糸Yの左右方向への移動が規制されて、糸道が規定される。また、第1規制ガイド22及び第2規制ガイドは、糸処理部21において糸Yに集束性を付与する際に、糸Yを支持する機能を有する。
【0055】
糸配置部50は、複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置するためのものである。糸配置部50は、第1保持ガイド24(本発明の第1保持部)と、第2保持ガイド25(本発明の第2保持部)と、連動機構30とを含む。
【0056】
第1保持ガイド24は、第1規制ガイド22に掛けられる複数の糸Yを保持可能なガイドである。第1保持ガイド24は、左右方向に延びた円柱形状の部材であり、左右方向のピッチが複数の第1溝部22aの左右方向のピッチと同じである複数の第1保持溝24aを有する。第1保持溝24aのピッチとは、隣接する第1保持溝24aの中心間の距離である。第1保持溝24aに掛けられる複数の糸Yは、左右方向への移動が規制される。複数の第1溝部22aと複数の第1保持溝24aとは、左右方向の位置が略同じとなっている。第1保持ガイド24は、第1保持ガイド24に複数の糸Yが掛けられる第1糸掛位置(
図2及び
図5参照)と、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から退避する第1配置完了位置(
図3及び
図6参照)との間で移動可能である。なお、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道とは、
図6に示す糸Yの糸道である。
【0057】
図2及び
図5に示すように、第1保持ガイド24は、第1糸掛位置にあるとき、糸走行方向における第1規制ガイド22の下流側であって、前後方向における糸処理部21の前側に位置している。さらに、
図5に示すように、第1保持ガイド24は、第1糸掛位置にあるとき、左右方向から見たときに、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から前後方向における前側に外れている。また、
図3及び
図6に示すように、第1保持ガイド24は、第1配置完了位置にあるとき、糸走行方向における第1規制ガイド22の上流側であって、前後方向における第1規制ガイド22の後側に位置している。第1保持ガイド24は、第1糸掛位置から第1配置完了位置に移動する途中で、複数の糸Yのそれぞれを対応する複数の第1溝部22aに受け渡す。
【0058】
第2保持ガイド25は、第1規制ガイド22に掛けられる複数の糸Yを保持可能なガイドである。第2保持ガイド25は、糸走行方向において第1保持ガイド24の下流側に配置されている。第2保持ガイド25は、左右方向に延びた円柱形状の部材であり、左右方向のピッチが複数の第2溝部23aの左右方向のピッチと同じである複数の第2保持溝25aを有する。第2溝部25aのピッチとは、隣接する第2溝部25aの中心間の距離である。第2保持溝25aに掛けられる複数の糸Yは、左右方向への移動が規制される。複数の第2溝部23aと複数の第2保持溝25aとは、左右方向の位置が略同じとなっている。第2保持ガイド25は、第2保持ガイド25に複数の糸Yが掛けられる第2糸掛位置(
図2及び
図5参照)と、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から退避する第2配置完了位置(
図3及び
図6参照)との間で移動可能である。
【0059】
図2及び
図5に示すように、第2保持ガイド25は、第2糸掛位置にあるとき、糸走行方向における第2規制ガイド23の上流側且つ第1保持ガイド24の下流側であって、前後方向における糸処理部21の前側に位置している。さらに、
図5に示すように、第2保持ガイド25は、第2糸掛位置にあるとき、左右方向から見たときに、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から前後方向における前側に外れている。また、
図3及び
図6に示すように、第2保持ガイド25は、第2配置完了位置にあるとき、糸走行方向における第2規制ガイド23の下流側であって、前後方向における第2規制ガイド23の後側に位置している。第2保持ガイド25は、第2糸掛位置から第2配置完了位置に移動する途中で、複数の糸Yのそれぞれを対応する複数の第2溝部23aに受け渡す。
【0060】
図2及び
図5に示すように、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24と、第2糸掛位置にある第2保持ガイド25とは、糸走行方向において互いに隣接している。ここで、互いに隣接しているとは、第1保持ガイド24と第2保持ガイド25との間の距離が0~10mmであることを指す。
【0061】
連動機構30は、第1保持ガイド24の第1糸掛位置と第1配置完了位置との間の移動と、第2保持ガイド25の第2糸掛位置と第2配置完了位置との間の移動を連動させる。
図7に示すように、連動機構30は、左右方向に沿った第1揺動軸51を中心に回転可能な第1揺動アーム41と、左右方向に沿った第2揺動軸52を中心に回転可能な第2揺動アーム42とを有する。
【0062】
図2に示すように、第1揺動アーム41は、その先端部分で第1保持ガイド24の左端を片持ち支持している。第1揺動アーム41が第1揺動軸51を中心に回転することで、第1保持ガイド24は第1糸掛位置と第1配置完了位置との間を揺動可能である。第1保持ガイド24が第1糸掛位置にあるとき、第1揺動アーム41は前後方向に向かって延びた状態となっている(
図7参照)。第1保持ガイド24が第1配置完了位置にあるとき、第1揺動アーム41は上斜め前に向かって延びた状態となっている(
図8参照)。
【0063】
また、
図2に示すように、第2揺動アーム42は、その先端部分で第2保持ガイド25の左端を片持ち支持している。第2揺動アーム42が第2揺動軸52を中心に回転することで、第2保持ガイド25は第2糸掛位置と第2配置完了位置との間を揺動可能である。第2保持ガイド25が第2糸掛位置にあるとき、第2揺動アーム42は前後方向に向かって延びた状態となっている(
図7参照)。第2保持ガイド25が第2配置完了位置にあるとき、第2揺動アーム42は下斜め前に向かって延びた状態となっている(
図8参照)。
【0064】
さらに、
図7に示すように、第1揺動アーム41は4つの歯形から構成される第1ギア53を含み、第2揺動アーム42は5つの歯形から構成される第2ギア54を含む。第1ギア53と第2ギア54とは互いに噛み合っている。なお、第1ギア53を構成する歯形は4つでなくてもよい。また、第2ギア54を構成する歯形は5つでなくてもよい。
【0065】
連動機構30は、第1ギア53と第2ギア54との噛み合いによって、第1揺動アーム41と第2揺動アーム42とを連動して回転させる。連動機構30は、例えば、第1揺動軸51又は第2揺動軸52のいずれか一方を回転駆動する不図示のモータを有するものである。しかしながら、連動機構30は、モータを有するものに限られず、例えば、第1揺動アーム41又は第2揺動アーム42のいずれか一方に取り付けられたレバー(不図示)を有するものでもよい。この場合、作業員が当該レバーを引くことで第1揺動アーム41又は第2揺動アーム42のいずれか一方の回転が開始される。そうすると、第1ギア53と第2ギア54とが噛み合っているため、第1揺動アーム41又は第2揺動アーム42の他方も連動して回転する。
【0066】
(糸処理装置7への糸掛け)
次に、複数の糸Yを糸処理装置7の第1規制ガイド22と第2規制ガイド23に掛ける際の具体的な手順について説明する。紡糸生産設備1では、案内ガイド6に糸掛けが行われた後に、糸処理装置7の2つの規制ガイドへの糸掛けが行われる。糸処理装置7の第1規制ガイド22と第2規制ガイド23への糸掛けは、例えばサクションガン80(本発明の収束部)を用いて行われる。サクションガン80は、複数の糸Yを吸引しながら収束させるものである。
【0067】
糸処理装置7への糸掛けを行う前に、連動機構30は、予め第1保持ガイド24を第1糸掛位置に移動させ、第2保持ガイド25を第2糸掛位置に移動させておく(
図2参照)。そして、
図5に示すように、作業員は、サクションガン80によって纏めて吸引されている複数の糸Yを、第1保持ガイド24の各第1保持溝24a及び第2保持ガイド25の各第2保持溝25aに掛ける。このとき、作業員は、サクションガン80の吸引口81に吸引される複数の糸Yの間隔と、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24の各第1保持溝24aの間隔及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25の各第2保持溝25aの間隔とが合うようにサクションガン80の位置を調整しつつ糸掛けを行う。
【0068】
続いて、連動機構30によって、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24を第1配置完了位置に向かって移動させるとともに、これに連動して第2糸掛位置にある第2保持ガイド25を第2配置完了位置に向かって移動させる。具体的には、左右方向の右側から見たときに、第1揺動アーム41が第1揺動軸51を中心に半時計回り(
図7に実線矢印)に回転することで第1保持ガイド24が第1糸掛位置から第1配置完了位置に向かって揺動する。また、左右方向の右側から見たときに、第2揺動アーム42が第2揺動軸52を中心に時計回り(
図7に実線矢印)に回転することで第2保持ガイド25が第2糸掛位置から第2配置完了位置に向かって揺動する。
【0069】
第1保持ガイド24に保持された複数の糸Yは、第1保持ガイド24が第1糸掛位置から第1配置完了位置に移動する途中で、第1規制ガイド22の各第1溝部22aに受け渡される。具体的には、第1保持溝24aに掛けられた糸Yが第1規制ガイド22の第1溝部22aの底に接触した後、さらに第1保持ガイド24が第1配置完了位置に向かって移動することで、第1保持溝24aに掛けられている糸Yが第1溝部22aに受け渡される。これにより、第1規制ガイド22への糸掛け作業が完了する。
【0070】
第2保持ガイド25に保持された複数の糸Yは、第2保持ガイド25が第2糸掛位置から第2配置完了位置に移動する途中で、第2規制ガイド23の各第2溝部23aに受け渡される。具体的には、第2保持溝25aに掛けられた糸Yが第2規制ガイド23の第2溝部23aの底に接触した後、さらに第2保持ガイド25が第2配置完了位置に向かって移動することで、第2保持溝25aに掛けられている糸Yが第2溝部23aに受け渡される。これにより、第2規制ガイド23への糸掛け作業が完了する。
【0071】
第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に掛けられた複数の糸Yは、糸処理部21の傾斜面26a、26bに案内されて第1糸経路36に挿入されるようになっている。
【0072】
(効果)
本実施形態の糸処理装置7は、第1糸掛位置と第1配置完了位置とをとることが可能な第1保持ガイド24と、第2糸掛位置と第2配置完了位置とをとることが可能な第2保持ガイド25とを有する。第1糸掛位置にある第1保持ガイド24と、第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は糸走行方向において互いに隣接している。サクションガン80に向かって収束する複数の糸Yであって、左右方向(配列方向)におけるピッチが糸走行方向の上流側と下流側とで異なる複数の糸Yを、糸走行方向に沿って延び且つ左右方向に所定のピッチで並ぶ複数の糸走行空間31に配置するのは難しい。本実施形態では、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24と第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は糸走行方向において互いに隣接しているため、第1保持ガイド24及び第2保持ガイド25に対して、左右方向に同じ間隔で複数の糸Yをまとめて掛けることができる。そして、複数の糸Yが掛けられた第1保持ガイド24が第1配置完了位置をとり、複数の糸Yが掛けられた第2保持ガイド25が第2配置完了位置をとることによって、複数の糸Yと複数の糸走行空間31との左右方向におけるピッチが揃った状態で、複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置することができる。このため、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸Yを、左右方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間31に容易に配置することができる。
【0073】
本実施形態の糸処理装置7は、糸走行方向における糸走行空間31の上流側に配置された第1規制ガイド22と、下流側に配置された第2規制ガイド23とを有する。第1配置完了位置は、第1保持ガイド24が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から退避する位置であり、第2配置完了位置は、第2保持ガイド25が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から退避する位置である。第1保持ガイド24は、第1糸掛位置から第1配置完了位置に移動する途中で複数の糸Yを第1規制ガイド22に受け渡す。第2保持ガイド25は、第2糸掛位置から第2配置完了位置に移動する途中で複数の糸Yを第2規制ガイド23に受け渡す。糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸Yを第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に掛けようとすると以下の問題が生じる。すなわち、複数の糸Yのピッチを第1規制ガイド22と第2規制ガイド23の一方のピッチに合わせたとしても、糸走行方向の上流側と下流側とで複数の糸Yのピッチは異なっているため、他方の規制ガイドのピッチとは合わない。本実施形態では、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25に複数の糸Yをまとめて掛けた後、第1保持ガイド24を第1配置完了位置に移動させ、第2保持ガイド25を第2配置完了位置に移動させることによって、第1規制ガイド22と第2規制ガイド23に複数の糸Yをまとめて掛けることが容易となる。結果として、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸Yを、左右方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間31に容易に配置することができる。
【0074】
また、本実施形態では、第2保持ガイド25は、左右方向のピッチが複数の第2溝部23aの左右方向の間隔と同じである複数の第2保持溝25aを有する。これによれば、第2保持ガイド25の第2保持溝25aに掛けられた複数の糸Yの間隔は複数の第2溝部23aの左右方向の間隔と同じとなるため、複数の糸Yのそれぞれを対応する第2溝部23aにより確実に受け渡すことができる。これにより、第2規制ガイド23に正確に糸掛けを行うことができ、複数の糸Yを左右方向に並んだ複数の糸走行空間31に正確に配置することができる。
【0075】
さらに、本実施形態では、糸配置部50は、第1保持ガイド24の第1糸掛位置と第1退避位置との間の移動と、第2保持ガイド25の第2糸掛位置と第2退避位置との間の移動を連動させる連動機構30を有する。先に一方の保持ガイドから規制ガイドへの糸Yの受け渡しのみが行われる場合、その後に行われる他方の保持ガイドから規制ガイドへの糸Yの受け渡しに伴って、既に糸Yの受け渡しが完了した一方の規制ガイドから糸Yが浮いて外れてしまうおそれがある。本実施形態によれば、第1保持ガイド24から第1規制ガイド22への糸Yの受け渡しと、第2保持ガイド25から第2規制ガイド23への糸Yの受け渡しを、同じタイミングで行うことが可能となる。このため、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23への糸掛け作業をより確実に行うことができる。
【0076】
また、本実施形態では、連動機構30は、左右方向に沿った第1揺動軸51を中心に回転可能であって第1保持ガイド24を揺動可能に支持する第1揺動アーム41と、左右方向に沿った第2揺動軸52を中心に回転可能であって第2保持ガイド25を揺動可能に支持する第2揺動アーム42と、を有する。第1揺動アーム41は第1ギア53を含み、第2揺動アーム42は第2ギア54を含む。そして、連動機構30は、第1ギア53と第2ギア54との噛み合いによって第1揺動アーム41と第2揺動アーム42とを連動して回転させることで、第1保持ガイド24の移動と第2保持ガイド25の移動を連動させる。これによれば、第1揺動アーム41と第2揺動アーム42とが第1ギア53と第2ギア54との?み合いによって連動して回転することで、第1保持ガイド24と第2保持ガイド25とを連動して揺動させることができる。このため、第1保持ガイド24及び第2保持ガイド25を連動して移動させるために、複雑な構成や制御が不要となる。
【0077】
また、本実施形態では、第1糸掛位置は、左右方向から見たときに、第1保持ガイド24が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から、前後方向の前側、すなわち、第1溝部22aの開口する開口方向に外れている。第2糸掛位置は、左右方向から見たときに、第2保持ガイド25が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から、前後方向の前側、すなわち、第2溝部23aの開口する開口方向に外れる位置であるこれによれば、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25に複数の糸Yを掛けるときに、複数の第1溝部22aや複数の第2溝部23aのうちの本来糸Yが掛けられるべきでない溝部に、意図せずに糸Yが掛けられてしまうことを抑制することができる。そして、第1保持ガイド24に糸Yが保持されており且つ第1規制ガイド22に糸Yが掛けられていない状態で第1保持ガイド24を第1退避位置に移動させることによって、複数の第1溝部22aのうちの糸Yが掛けられるべき第1溝部22aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。同様に、第2保持ガイド25に糸Yが保持されており且つ第2規制ガイド23に糸Yが掛けられていない状態で第2保持ガイド25を第2退避位置に移動させることによって、複数の第2溝部23aのうちの糸Yが掛けられるべき第2溝部23aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。
【0078】
さらに、本実施形態では、第1規制ガイド22は、左右方向から見たときに、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に掛けられた複数の糸Yの糸道と重ならない位置に配置されている。これによれば、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に糸Yを掛けるときに、複数の第1溝部22aのうちの本来糸Yが掛けられるべきでない第1溝部22aに意図せずに糸Yが掛けられてしまうことをさらに抑制することができる。そして、第1保持ガイド24に糸Yが保持されており且つ第1規制ガイド22に糸Yが掛けられていない状態で第1保持ガイド24を第1退避位置に移動させることによって、複数の第1溝部22aのうちの糸Yが掛けられるべき第1溝部22aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。
【0079】
(変形例)
以下に、前記実施形態に変更を加えた変形例について説明する。但し、前記実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を付して適宜その説明を省略する。
【0080】
(第1変形例)
上記実施形態では、第2保持ガイド25は、左右方向の間隔が複数の第2溝部23aの左右方向の間隔と同じである複数の第2保持溝25aを有する。しかしながら、第2保持ガイドは溝を有さない構成でもよい。例えば、
図9に示すように、第1変形例に係る第2保持ガイド125は、左右方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラである。回転ローラは、不図示のモータによって電動回転する駆動ローラでもよく、駆動力を有さないフリーローラ(従動ローラ)でもよい。この場合において、糸処理装置107に含まれる第1保持ガイド24は、上記実施形態と同様の構成である。
図9では、第1保持ガイド24が第1糸掛位置にあり、第2保持ガイド125が第2糸掛位置にあるときの様子を示す。この構成によれば、回転ローラである第2保持ガイド125に掛けられる複数の糸Yは、回転ローラの周面と各糸Yとの間の摩擦力によって、回転ローラの周面に対して直交するように接触する。このため、第2保持ガイド125に掛けられた複数の糸Yの間隔は、第2保持ガイド125よりも糸走行方向の上流側に配置された第1保持ガイド24の第1保持溝24aに掛けられた複数の糸Yの間隔と揃う。さらに、回転ローラの周面と各糸Yとの間の摩擦力によって、サクションガン80を用いることで第2保持ガイド125よりも糸走行方向の下流側を走行する複数の糸Yの間隔が狭くなったとしても、第2保持ガイド125に掛けられた複数の糸Yの間隔はずれることなく維持される。よって、第2保持ガイド125に掛けられた複数の糸Yの間隔は複数の第1保持溝24aの左右方向の間隔と同じになり、ひいては、複数の第1溝部22a及び複数の第2溝部23aの左右方向の間隔と同じになる。このため、複数の糸Yのそれぞれを対応する第2溝部23aにより確実に受け渡すことができる。これにより、糸処理装置107への糸掛け作業をより正確に行うことができる。
【0081】
なお、上記第1変形例に係る糸処理装置107では、回転ローラである第2保持ガイド125の姿勢は、回転ローラの周面と複数の糸Yとの摩擦力を考慮して適宜調整される。また、第1変形例において、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24と第2糸掛位置にある第2保持ガイド125に複数の糸Yを掛けるタイミングは必ずしも同じでなくてもよい。具体的には、先に第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に複数の糸Yをかけてから、そのすぐ後に第2糸掛位置にある第2保持ガイド125に複数の糸Yをかけてもよい。
【0082】
(第2変形例)
上記実施形態では、糸処理装置7は、第1保持ガイド24から第1規制ガイド22に複数の糸Yを受け渡し、第2保持ガイド25から第2規制ガイド23に複数の糸Yを受け渡すことで、複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置する構成である。しかしながら、本発明の糸処理装置は、第1規制状ガイド22及び第2規制ガイド23を有していなくてもよい。例えば、
図10に示すように、糸処理装置207は、第1保持ガイド224と、第2保持ガイド225とを有する糸配置部150を含む。
【0083】
第1保持ガイド224は、左右方向のピッチが複数の糸走行空間31の左右方向のピッチと同じである複数の第1保持溝(不図示)を有する。第1保持ガイド224は、第1糸掛位置(
図10の位置)と第1配置完了位置(
図11の位置)とをとることが可能である。第1糸掛位置は第1保持ガイド224に複数の糸Yが掛けられる位置である。
図10に示すように、第1保持ガイド224は、第1糸掛位置にあるとき、糸走行方向において糸走行空間31よりも上流側の位置にある。
図11に示すように、第1保持ガイド224は、第1配置完了位置にあるとき、糸走行方向において糸走行空間31よりも上流側であって且つ複数の第1保持溝に保持された複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置可能な位置にある。なお、第2変形例においては、第1保持ガイド224の第1糸掛位置と第1配置完了位置は同位置である。
【0084】
第2保持ガイド225は、左右方向のピッチが複数の糸走行空間31の左右方向のピッチと同じである複数の第2保持溝(不図示)を有する。第2保持ガイド225は、第2糸掛位置(
図10の位置)と第2配置完了位置(
図11の位置)とをとることが可能である。第2糸掛位置は第2保持ガイド225に複数の糸Yが掛けられる位置である。
図10に示すように、第2保持ガイド225は、第2糸掛位置にあるとき、糸走行方向において糸走行空間31よりも上流側の位置にある。
図11に示すように、第2保持ガイド225は、第2配置完了位置にあるとき、糸走行方向において糸走行空間31よりも下流側であって且つ複数の第2保持溝に保持された複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置可能な位置にある。また、第1糸掛位置にある第1保持ガイド224と、第2糸掛位置にある第2保持ガイド225とは、糸走行方向において互いに隣接している。
【0085】
第2保持ガイド225の第2糸掛位置と第2配置完了位置との間の移動は、例えば、モータ駆動の移動機構(不図示)によって行われてもよく、作業員の手動で行われてもよい。
【0086】
第2変形例の糸配置部150は、規制部材231と、支持部材232と、回転軸233とをさらに有する。規制部材231は、規制状態と解放状態との間で切り替え可能な部材である。規制部材231は、規制状態のとき、第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225に掛けられた複数の糸Yが糸走行空間31に配置されることを規制する(
図10参照)。規制部材231は、解放状態のとき、規制が解除される(
図11参照)。規制部材231は、糸走行方向において糸走行空間31よりも下流側に配置されている。回転軸233は、左右方向に沿った回転軸であり、基材20に形成されている。支持部材232は、基端部分が回転軸233と接続され、先端部分が規制部材231と接続されている。換言すれば、規制部材231は、支持部材232を介して回転軸233と接続されている。規制部材231は、回転軸233を中心に揺動することで、規制状態と解放状態との間で切り替え可能である。
【0087】
次に、糸処理部21の糸走行空間31に複数の糸Yが配置される際の手順について以下に説明する。第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225への糸掛けは、例えば、サクションガン80を用いて行われる。まず、
図10に示すように、第1保持ガイド224を第1糸掛位置とし、第2保持ガイド225を第2糸掛位置とする。このとき、規制部材231は規制状態となっている。そして、作業員は、サクションガン80によって纏めて吸引されている複数の糸Yを、第1保持ガイド224の各第1保持溝及び第2保持ガイド225の各第2保持溝に掛ける。
【0088】
続いて、
図11に示すように、第2保持ガイド225を第2配置完了位置に移動させる。第2保持ガイド225が第2糸掛位置から第2配置完了位置に至るまでの間、規制部材231は規制状態をとる。第2保持ガイド225が第2配置完了位置になったとき、
図11に示すように、規制部材231は、回転軸233を中心に上下方向の下方に向かって回転し、解放状態となる。これにより、第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225に掛けられた複数の糸Yが複数の糸走行空間31に配置される。
【0089】
第2変形例では、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸Yを第1糸掛位置にある第1保持ガイド224及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド225にまとめて掛けた後、第1保持ガイド224を第1配置完了位置とし、第2保持ガイド225を第2配置完了位置とする。これにより、上述のような第1規制ガイド22や第2規制ガイド23が配置されていなくても、糸走行方向の上流側と下流側とでピッチが異なる複数の糸Yを、配列方向に所定のピッチで並んだ複数の糸走行空間31に配置することができる。このため、複数の糸Yを複数の糸走行空間に配置するための部材の数を減らすことができる。
【0090】
一方で、第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225に掛けられた複数の糸Yが、各保持ガイドが配置完了位置となるよりも前に複数の糸走行空間31に配置されてしまうことがある。しかし、この場合、各保持ガイドは配置完了位置となっていないため、複数の糸Yは対応する糸走行空間31に適切に配置されないおそれがある。第2変形例によれば、第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225が配置完了位置となるよりも前に、複数の糸Yが複数の糸走行空間31に配置されることを防止することができる。このため、複数の糸Yを対応する複数の糸走行空間31に適切に配置することができる。
【0091】
なお、上記第2変形例では、第1保持ガイド224の第1糸掛位置と第1配置完了位置は同位置であるが、第1保持ガイド224は、第1糸掛位置と第1配置完了位置との間を移動可能であってもよい。この場合、例えば、第1保持ガイド224は、糸走行方向において糸走行空間31よりも下流側の第1糸掛位置と、糸走行方向において糸走行空間31よりも上流側の第1配置完了位置との間を移動可能である。この場合、例えば、第2保持ガイド225の第2糸掛位置と第2配置完了位置とは、ともに、糸走行方向において糸走行空間31よりも下流側の同位置である。または、上記第2変形例において、第1保持ガイド224及び第2保持ガイド225がともに移動する構成であってもよい。
【0092】
また、上記第2変形例では、第2保持ガイド225は、複数の第2保持溝を有する構成である。しかしながら、第2保持ガイド225は、複数の第2保持溝を有さない構成でもよい。例えば、第2保持ガイド225は、上述の第1変形例と同様、左右方向に沿った回転軸を中心に回転可能な回転ローラであってもよい。
【0093】
(その他の変形例)
上記実施形態では、糸処理装置7は、圧縮空気の噴射の作用を利用して複数の糸Yに集束性を付与するための装置である。しかしながら、糸処理装置はこれに限られない。糸処理装置は、互いに略平行且つ略等間隔で走行している複数の糸Yに対して糸処理部で所定の処理を行うために、糸処理部の上流側及び下流側に規制ガイド(第1規制ガイド及び第2規制ガイド)が設けられている他の装置も含む。例えば、糸処理装置は、複数の糸Yにオイルを付与するオイルノズルや複数の糸Yの張力を検出するテンションセンサ等を糸処理部として有する装置を含む。
【0094】
上記実施形態では、第1保持ガイド24は第1揺動アーム41によって揺動させられるものであり、第2保持ガイド25は第2揺動アーム42によって揺動させられるものである。しかしながら、第1保持ガイド24及び第2保持ガイド25は揺動式に限られない。例えば、第1保持ガイド24は、上下方向の移動及び前後方向の移動によって、第1糸掛位置と第1退避位置との間を移動可能であってもよい。同様に、第2保持ガイド25は、上下方向の移動及び前後方向の移動によって、第2糸掛位置と第2退避位置との間を移動可能であってもよい。具体的には、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24は、上方に移動した後、後側に移動することで第1退避位置に移動する。また、第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は、下方に移動した後、後側に移動することで第2退避位置に移動する。また、第1保持ガイド24は、斜め方向に移動することによって、第1糸掛位置と第1退避位置との間を移動可能であってもよい。同様に、第2保持ガイド25は、斜め方向に移動することによって、第2糸掛位置と第2退避位置との間を移動可能であってもよい。
【0095】
上記実施形態では、糸処理装置7は、第1保持ガイド24と第2保持ガイド25の移動を連動させる連動機構30を有している。しかしながら、糸処理装置7は、連動機構30を有していなくてもよい。この場合、第1保持ガイド24の第1糸掛位置と第1退避位置との間の移動と、第2保持ガイド25の第2糸掛位置と第2退避位置との間の移動は、それぞれ独立して行われる。
【0096】
上記実施形態では、糸処理装置7への糸掛けは、サクションガン80を用いて行われている。しかしながら、複数の糸Yを一箇所に収束させるフックガイドを用いて糸掛けが行われてもよい。
【0097】
上記実施形態では、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は、糸走行方向において第1規制ガイド22の下流側であって且つ第2規制ガイド23の上流側の位置に配置されている。しかしながら、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は、糸走行方向において第1規制ガイド22の上流側の位置に配置されていてもよく、糸走行方向において第2規制ガイド23の下流側の位置に配置されていてもよい。
【0098】
上記実施形態では、第1糸掛位置から第1配置完了位置に向かって移動する第1保持ガイド24は、第1配置完了位置に到達すると停止する。しかしながら、第1保持ガイド24は、第1配置完了位置に到達した後、第1配置完了位置を越えてさらに移動してもよい。例えば、第1保持ガイド24は、第1配置完了位置を越えて、糸処理部21の後側まで移動してもよい。第2保持ガイド25についても同様である。すなわち、上記実施形態では、第2糸掛位置から第2配置完了位置に向かって移動する第2保持ガイド25は、第2配置完了位置に到達すると停止する。しかしながら、第2保持ガイド25は、第2配置完了位置に到達した後、第2配置完了位置を越えてさらに移動してもよい。例えば、第2保持ガイド25は、第2配置完了位置を越えて、糸処理部21の後側まで移動してもよい。
【0099】
上記実施形態において、第1保持溝24aは、第1保持ガイド24の全周にわたって形成されていてもよく、第1保持ガイド24の周面の一部にのみ形成されていてもよい。ただし、第1保持溝24aは、第1保持ガイド24が第1糸掛位置から第1退避位置に移動する途中で、各糸Yが第1保持溝24aから外れないように構成されていることが必要である。同様に、第2保持溝25aは、第2保持ガイド25の全周にわたって形成されていてもよく、第2保持ガイド25の周面の一部にのみ形成されていてもよい。ただし、第2保持溝25aは、第2保持ガイド25が第2糸掛位置から第2退避位置に移動する途中で、各糸Yが第2保持溝25aから外れないように構成されていることが必要である。
【0100】
上記実施形態では、糸処理装置7は、紡糸生産設備1のうち、複数の案内ガイド6の下方であってゴデットローラ11の上方に配置されている。しかしながら、糸処理装置7が配置される位置は、これに限られない。サクションガン80などを用いて糸掛け作業を行うことによって糸走行方向の上流側と下流側で複数の糸の間隔が異なることとなる場合において、糸走行方向において離間して配置され、配列方向の間隔が互いに同じである複数の溝部(第1溝部と第2溝部)を有する2つの規制ガイド(第1規制ガイド及び第2規制ガイド)に糸Yを掛けようとするとき、本発明の構成は効果を生じ得る。
【0101】
上記実施形態では、収束部としてのサクションガン80に向かって収束する複数の糸Yが、糸処理部21に形成された複数の糸走行空間31に配置される。すなわち、複数の糸Yの配列方向におけるピッチは、糸走行方向における上流側のピッチが下流側のピッチよりも広くなっている。しかしながら、複数の糸走行空間31に配置される複数の糸Yの配列方向におけるピッチは、糸走行方向における上流側のピッチが下流側のピッチよりも狭くなっていてもよい。
【符号の説明】
【0102】
7 糸処理装置
21 糸処理部
22 第1規制ガイド
22a 第1溝部
23 第2規制ガイド
23a 第2溝部
24 第1保持ガイド
24a 第1保持溝
25 第2保持ガイド
25a 第2保持溝
30 連動機構
31 糸走行空間
41 第1揺動アーム
42 第2揺動アーム
50 糸配置部
51 第1揺動軸
52 第2揺動軸
53 第1ギア
54 第2ギア
80 サクションガン
125 第2保持ガイド
224 第1保持ガイド
225 第2保持ガイド
231 規制部材
Y 糸
【手続補正書】
【提出日】2023-04-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項9
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項9】
前記第1保持部は、前記第1配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあり、
前記第2保持部は、前記第2配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記第2保持部に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあることを特徴とする請求項1に記載の糸処理装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
本発明によれば、第1揺動アームと第2揺動アームとが第1ギアと第2ギアとの噛み合いによって連動して回転することで、第1保持部と第2保持部とを連動して揺動させることができる。このため、第1保持部及び第2保持部を連動して移動させるために、複雑な構成や制御が不要となる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
本発明の糸処理装置において、前記第1保持部は、前記第1配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも上流側であって且つ前記複数の第1保持溝に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあり、前記第2保持部は、前記第2配置完了位置にあるとき、前記糸走行方向において前記糸走行空間よりも下流側であって且つ前記第2保持部に保持された複数の糸を前記複数の糸走行空間に配置可能な位置にあることが好ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
複数の第1溝部22aと複数の第2溝部23aとは、左右方向の位置が略同じとなっている。そして、糸走行方向に走行する糸Yが、隣接する第1溝部22aの間、及び、隣接する第2溝部23aの間を通されることで、糸Yの左右方向への移動が規制されて、糸道が規定される。また、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23は、糸処理部21において糸Yに集束性を付与する際に、糸Yを支持する機能を有する。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
続いて、連動機構30によって、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24を第1配置完了位置に向かって移動させるとともに、これに連動して第2糸掛位置にある第2保持ガイド25を第2配置完了位置に向かって移動させる。具体的には、左右方向の右側から見たときに、第1揺動アーム41が第1揺動軸51を中心に
反時計回り(
図7に実線矢印)に回転することで第1保持ガイド24が第1糸掛位置から第1配置完了位置に向かって揺動する。また、左右方向の右側から見たときに、第2揺動アーム42が第2揺動軸52を中心に時計回り(
図7に実線矢印)に回転することで第2保持ガイド25が第2糸掛位置から第2配置完了位置に向かって揺動する。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
さらに、本実施形態では、糸配置部50は、第1保持ガイド24の第1糸掛位置と第1配置完了位置との間の移動と、第2保持ガイド25の第2糸掛位置と第2配置完了位置との間の移動を連動させる連動機構30を有する。先に一方の保持ガイドから規制ガイドへの糸Yの受け渡しのみが行われる場合、その後に行われる他方の保持ガイドから規制ガイドへの糸Yの受け渡しに伴って、既に糸Yの受け渡しが完了した一方の規制ガイドから糸Yが浮いて外れてしまうおそれがある。本実施形態によれば、第1保持ガイド24から第1規制ガイド22への糸Yの受け渡しと、第2保持ガイド25から第2規制ガイド23への糸Yの受け渡しを、同じタイミングで行うことが可能となる。このため、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23への糸掛け作業をより確実に行うことができる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0077
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0077】
また、本実施形態では、第1糸掛位置は、左右方向から見たときに、第1保持ガイド24が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から、前後方向の前側、すなわち、第1溝部22aの開口する開口方向に外れている。第2糸掛位置は、左右方向から見たときに、第2保持ガイド25が、第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23に複数の糸Yが掛けられたときの糸道から、前後方向の前側、すなわち、第2溝部23aの開口する開口方向に外れる位置であるこれによれば、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24及び第2糸掛位置にある第2保持ガイド25に複数の糸Yを掛けるときに、複数の第1溝部22aや複数の第2溝部23aのうちの本来糸Yが掛けられるべきでない溝部に、意図せずに糸Yが掛けられてしまうことを抑制することができる。そして、第1保持ガイド24に糸Yが保持されており且つ第1規制ガイド22に糸Yが掛けられていない状態で第1保持ガイド24を第1配置完了位置に移動させることによって、複数の第1溝部22aのうちの糸Yが掛けられるべき第1溝部22aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。同様に、第2保持ガイド25に糸Yが保持されており且つ第2規制ガイド23に糸Yが掛けられていない状態で第2保持ガイド25を第2配置完了位置に移動させることによって、複数の第2溝部23aのうちの糸Yが掛けられるべき第2溝部23aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0078
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0078】
さらに、本実施形態では、第1規制ガイド22は、左右方向から見たときに、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に掛けられた複数の糸Yの糸道と重ならない位置に配置されている。これによれば、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24に糸Yを掛けるときに、複数の第1溝部22aのうちの本来糸Yが掛けられるべきでない第1溝部22aに意図せずに糸Yが掛けられてしまうことをさらに抑制することができる。そして、第1保持ガイド24に糸Yが保持されており且つ第1規制ガイド22に糸Yが掛けられていない状態で第1保持ガイド24を第1配置完了位置に移動させることによって、複数の第1溝部22aのうちの糸Yが掛けられるべき第1溝部22aに対して、より確実に糸Yを掛けることができる。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0082
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0082】
(第2変形例)
上記実施形態では、糸処理装置7は、第1保持ガイド24から第1規制ガイド22に複数の糸Yを受け渡し、第2保持ガイド25から第2規制ガイド23に複数の糸Yを受け渡すことで、複数の糸Yを複数の糸走行空間31に配置する構成である。しかしながら、本発明の糸処理装置は、
第1規制ガイド22及び第2規制ガイド23を有していなくてもよい。例えば、
図10に示すように、糸処理装置207は、第1保持ガイド224と、第2保持ガイド225とを有する糸配置部150を含む。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
上記実施形態では、第1保持ガイド24は第1揺動アーム41によって揺動させられるものであり、第2保持ガイド25は第2揺動アーム42によって揺動させられるものである。しかしながら、第1保持ガイド24及び第2保持ガイド25は揺動式に限られない。例えば、第1保持ガイド24は、上下方向の移動及び前後方向の移動によって、第1糸掛位置と第1配置完了位置との間を移動可能であってもよい。同様に、第2保持ガイド25は、上下方向の移動及び前後方向の移動によって、第2糸掛位置と第2配置完了位置との間を移動可能であってもよい。具体的には、第1糸掛位置にある第1保持ガイド24は、上方に移動した後、後側に移動することで第1配置完了位置に移動する。また、第2糸掛位置にある第2保持ガイド25は、下方に移動した後、後側に移動することで第2配置完了位置に移動する。また、第1保持ガイド24は、斜め方向に移動することによって、第1糸掛位置と第1配置完了位置との間を移動可能であってもよい。同様に、第2保持ガイド25は、斜め方向に移動することによって、第2糸掛位置と第2配置完了位置との間を移動可能であってもよい。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
上記実施形態では、糸処理装置7は、第1保持ガイド24と第2保持ガイド25の移動を連動させる連動機構30を有している。しかしながら、糸処理装置7は、連動機構30を有していなくてもよい。この場合、第1保持ガイド24の第1糸掛位置と第1配置完了位置との間の移動と、第2保持ガイド25の第2糸掛位置と第2配置完了位置との間の移動は、それぞれ独立して行われる。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0099
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0099】
上記実施形態において、第1保持溝24aは、第1保持ガイド24の全周にわたって形成されていてもよく、第1保持ガイド24の周面の一部にのみ形成されていてもよい。ただし、第1保持溝24aは、第1保持ガイド24が第1糸掛位置から第1配置完了位置に移動する途中で、各糸Yが第1保持溝24aから外れないように構成されていることが必要である。同様に、第2保持溝25aは、第2保持ガイド25の全周にわたって形成されていてもよく、第2保持ガイド25の周面の一部にのみ形成されていてもよい。ただし、第2保持溝25aは、第2保持ガイド25が第2糸掛位置から第2配置完了位置に移動する途中で、各糸Yが第2保持溝25aから外れないように構成されていることが必要である。