(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170482
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/02 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01S7/02 202
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082282
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 鉄兵
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AD02
5J070AH13
5J070AH14
5J070AH19
5J070AH31
5J070AH39
5J070AK35
(57)【要約】
【課題】時系列信号のうち干渉を受けた区間が比較的長時間である場合であっても、干渉の有無を精度良く判定できるようにしたレーダ装置を提供する。
【解決手段】本開示に係るレーダ装置10は、連続する時系列信号を複数の範囲に分割するための区間を生成する区間生成部131と、それぞれの前記区間の範囲内の時系列信号の代表値である区間代表値を算出する区間代表値算出部132と、複数の前記区間代表値を、干渉を多く含む多干渉区間代表値および干渉を多く含まない少干渉区間代表値に分別する分別部133と、前記少干渉区間代表値に基づいて干渉判定閾値を算出する閾値算出部134と、前記干渉判定閾値に基づいて干渉判定値を算出する判定値算出部136と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続する時系列信号を複数の範囲に分割するための区間を生成する区間生成部(131)と、
それぞれの前記区間の範囲内の時系列信号の代表値である区間代表値を算出する区間代表値算出部(132)と、
複数の前記区間代表値を、干渉を多く含む多干渉区間代表値および干渉を多く含まない少干渉区間代表値に分別する分別部(133)と、
前記少干渉区間代表値に基づいて干渉判定閾値を算出する閾値算出部(134)と、
前記干渉判定閾値に基づいて干渉判定値を算出する判定値算出部(136)と、
を備えるレーダ装置。
【請求項2】
前記分別部は、複数の前記区間代表値に基づいて分別閾値を算出し、前記分別閾値に基づいて、複数の前記区間代表値を前記多干渉区間代表値および前記少干渉区間代表値に分別する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記閾値算出部は、複数の前記少干渉区間代表値のうち少なくとも何れか1つに基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記分別部は、昇順または降順に並び替えた複数の前記区間代表値のうち所定順位の前記区間代表値に基づいて前記分別閾値を算出する請求項3に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記閾値算出部は、複数の前記区間代表値のうち前記少干渉区間代表値に分別された区間代表値が算出された区間内の時系列信号の代表値に基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記閾値算出部は、複数の前記少干渉区間代表値に基づいて算出した統計値に基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項7】
前記閾値算出部が算出した前記干渉判定閾値を、過去の干渉判定閾値に基づいて修正する閾値修正部(135)を備える請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項8】
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の代表値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項7に記載のレーダ装置。
【請求項9】
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の移動平均値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項8に記載のレーダ装置。
【請求項10】
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の最頻値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項8に記載のレーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両の技術分野においては、衝突防止や自動運転などに関する技術が数多く提案されており、その一環として、レーダ技術を活用して対象物との相対距離や相対速度などを測定する技術の開発が進められている。ここで、レーダ信号は、時系列で連続する信号、いわゆる時系列信号であり、その一部の区間に例えば他のレーダ信号からの干渉を受ける場合がある。このような干渉を受けた信号に対し何らの対策を施さないまま信号処理を行ってしまうと、レーダ信号の処理性能が低下してしまう。そのため、従来では、例えば、レーダ信号のうち干渉を受けた区間をゼロ埋め、つまり、無効とすることにより、干渉の影響を除去する技術が考えられている。
【0003】
また、時系列信号であるレーダ信号のうち干渉を受けた区間を特定する技術として、例えば、干渉を受けた区間においては干渉の分だけ信号強度が強くなるという性質を利用した技術が考えられている。即ち、信号強度が所定の閾値を超えた異常値となっている場合には、その区間が干渉を受けていると判定することができる。この場合の閾値は、例えばレーダ信号の強度の平均値、最頻値、中央値などといった統計的な代表値に基づいて設定することができる。しかしながら、干渉を受けた区間が比較的長時間である場合には、算出される代表値が干渉の影響を強く受けてしまう。そのため、適切な閾値を設定することが困難となり、ひいては、干渉を受けているか否かの判定が困難となる。
【0004】
また、例えば特許文献1には、時系列信号であるレーダ信号を複数の範囲に分割し、それぞれの範囲内で信号強度の平均値を算出し、算出した複数の平均値のうち最小の値を、干渉を受けているか否かを判定するための閾値として設定する技術が開示されている。しかしながら、この技術では、低すぎる値が閾値として設定されてしまう可能性があり、干渉を受けているか否かの判定を精度良く行うことが困難となるおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国特許出願公開第101429361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本開示は、時系列信号のうち干渉を受けた区間が比較的長時間である場合であっても、干渉の有無を精度良く判定できるようにしたレーダ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレーダ装置は、連続する時系列信号を複数の範囲に分割するための区間を生成する区間生成部131と、それぞれの前記区間の範囲内の時系列信号の代表値である区間代表値を算出する区間代表値算出部132と、複数の前記区間代表値を、干渉を多く含む多干渉区間代表値および干渉を多く含まない少干渉区間代表値に分別する分別部133と、前記少干渉区間代表値に基づいて干渉判定閾値を算出する閾値算出部134と、前記干渉判定閾値に基づいて干渉判定値を算出する判定値算出部136と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るレーダ装置の構成例を概略的に示す図
【
図2】本開示の一実施形態に係る区間生成部による処理の一例を概略的に示す図
【
図3】本開示の一実施形態に係る区間代表値算出部による処理の一例を概略的に示す図
【
図4】本開示の一実施形態に係る区間代表値分別部による処理の一例を概略的に示す図
【
図5】本開示の一実施形態に係る干渉判定閾値算出部による処理の一例を概略的に示す図
【
図6】本開示の一実施形態に係る干渉判定閾値修正部による処理の一例を概略的に示す図
【
図7】本開示の一実施形態に係る干渉判定値算出部による処理の一例を概略的に示す図
【
図8】本開示の一実施形態に係る干渉除去部による処理の一例を概略的に示す図
【
図9】本開示の一実施形態に係るレーダ装置による全体的な処理の一例を概略的に示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のレーダ装置に係る一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1に例示するレーダ装置10は、信号生成部11、信号放射部12、信号受信部13、信号混合部14、フィルタ15、制御演算装置16などを備えている。
【0010】
信号生成部11は、例えば電圧制御発信器や制御装置などを備える周知の構成であり、送信信号Twを生成可能に構成されている。信号放射部12は、例えば信号放射アンテナなどと称されるものであり、送信信号Twを電磁波Ew1として空間内に放射可能に構成されている。信号放射部12が放射した電磁波Ew1は、図示しない対象物において反射されて電磁波Ew2としてレーダ装置10に向かう。信号受信部13は、例えば信号受信アンテナなどと称されるものであり、図示しない対象物から反射した電磁波Ew2を受信信号Dwとして受信可能に構成されている。
【0011】
信号混合部14は、送信信号Twと受信信号Dwとを混合してビード信号Bw1を生成可能に構成されている。フィルタ15は、ビード信号Bw1のうち必要な周波数帯域のビード信号Bw2のみを通過可能に構成されている。なお、フィルタ15を通過させる周波数帯域は、適宜変更して設定することができる。
【0012】
制御演算装置16は、アナログデジタル変換部17を備えている。なお、図面においては、アナログデジタル変換部17を「A/D変換部」と記載している。制御演算装置16は、アナログデジタル変換部17によりビード信号Bw2を時系列信号T1に変換可能に構成されている。時系列信号T1は、所定時間にわたって時系列で連続する信号形態となっている。なお、時系列信号T1の長さは、例えば送信信号Twや受信信号Dwの長さなどに応じて変動し得る。
【0013】
さらに、制御演算装置16は、干渉信号処理部100およびレーダ信号処理部18を備えている。干渉信号処理部100およびレーダ信号処理部18は、例えばソフトウェアにより仮想的に実現されている。なお、干渉信号処理部100およびレーダ信号処理部18は、ハードウェアにより実現されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組合せにより実現されていてもよい。
【0014】
干渉信号処理部100は、詳しくは後述するが、時系列信号T1から干渉の影響を除去した干渉除去信号T2を生成可能に構成されている。また、レーダ信号処理部18は、干渉信号処理部100が生成した干渉除去信号T2に基づいて、レーダ装置10と図示しない対象物との相対距離や相対速度などを測定可能に構成されている。
【0015】
次に、干渉信号処理部100の構成例について、さらに詳細に説明する。干渉信号処理部100は、干渉判定部110および干渉除去部120を備えている。干渉判定部110および干渉除去部120は、例えばソフトウェアにより仮想的に実現されている。なお、干渉判定部110および干渉除去部120は、ハードウェアにより実現されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組合せにより実現されていてもよい。
【0016】
干渉判定部110は、区間生成部131、区間代表値算出部132、区間代表値分別部133、干渉判定閾値算出部134、干渉判定閾値修正部135、干渉判定値算出部136を備えている。区間生成部131、区間代表値算出部132、区間代表値分別部133、干渉判定閾値算出部134、干渉判定閾値修正部135、干渉判定値算出部136は、例えばソフトウェアにより仮想的に実現されている。なお、区間生成部131、区間代表値算出部132、区間代表値分別部133、干渉判定閾値算出部134、干渉判定閾値修正部135、干渉判定値算出部136は、ハードウェアにより実現されていてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの組合せにより実現されていてもよい。
【0017】
図2に例示するように、区間生成部131は、連続するオリジナルの時系列信号T1を複数の範囲に分割するための区間Dを生成可能に構成されている。なお、区間生成部131は、連続するオリジナルの時系列信号T1を複数の物理的に分断された断片信号に分割するものではなく、あくまでも連続する単一の時系列信号T1に複数の区間Dを仮想的に設定するものである。但し、区間生成部131は、連続するオリジナルの時系列信号T1を複数の物理的に分断された断片信号に分割するものであってもよい。
【0018】
図3に例示するように、区間代表値算出部132は、それぞれの区間Dの範囲内の時系列信号T1の代表値である区間代表値Pを算出可能に構成されている。即ち、区間代表値算出部132は、それぞれの区間D内に含まれる部分的な時系列信号T1の強度について、例えば平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値などといった統計値を算出し、その算出した統計値を当該区間Dにおける時系列信号T1の強度の代表値を示す区間代表値Pとして算出する。
【0019】
図4に例示するように、区間代表値分別部133は、区間代表値算出部132によって算出された複数の区間代表値Pを、干渉を多く含む多干渉区間代表値Paおよび干渉を多く含まない少干渉区間代表値Pbに分別可能に構成されている。より詳細に説明すると、区間代表値分別部133は、区間代表値算出部132によって算出された複数の区間代表値Pに基づいて分別閾値K1を算出する。
【0020】
この場合、区間代表値分別部133は、区間代表値算出部132によって算出された複数の区間代表値Pを昇順または降順に並び替える。そして、区間代表値分別部133は、昇順または降順に並び替えた複数の区間代表値Pのうち所定順位の区間代表値Pを基準区間代表値として設定する。そして、区間代表値分別部133は、その基準区間代表値に基づいて分別閾値K1を算出するように構成されている。
【0021】
この場合、区間代表値分別部133は、基準区間代表値に所定のオフセット値を加算または減算した値を分別閾値K1として算出するように構成されている。なお、どの順位の区間代表値Pを基準区間代表値として設定するのかは、適宜変更して設定することができる。また、所定のオフセット値は、適宜変更して設定することができる。また、区間代表値分別部133は、基準区間代表値の値そのものを分別閾値K1として設定してもよい。また、分別閾値K1を算出する手法は、上述した手法に限られず、複数の区間代表値Pに基づいて分別閾値K1を算出する手法であれば、種々の手法を適用することができる。
【0022】
そして、区間代表値分別部133は、算出した分別閾値K1に基づいて、複数の区間代表値Pを多干渉区間代表値Paおよび少干渉区間代表値Pbに分別する。この場合、区間代表値分別部133は、分別閾値K1よりも大きい区間代表値Pを多干渉区間代表値Paに分別し、分別閾値K1よりも小さい区間代表値Pを少干渉区間代表値Pbに分別する。なお、仮に分別閾値K1と等しい区間代表値Pが存在する場合には、当該区間代表値Pは、多干渉区間代表値Paに分別してもよいし、少干渉区間代表値Pbに分別してもよい。
【0023】
図5に例示するように、干渉判定閾値算出部134は、区間代表値分別部133によって少干渉区間代表値Pbに分別された区間代表値Pの値に基づいて干渉判定閾値K2を算出可能に構成されている。この場合、干渉判定閾値算出部134は、複数の少干渉区間代表値Pbの値について、例えば平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値などといった統計値を算出する。そして、干渉判定閾値算出部134は、その算出した統計値を干渉判定閾値K2として算出する。そして、干渉判定閾値算出部134は、算出した干渉判定閾値K2を、レーダ装置10が備える図示しない記憶媒体に記憶可能に構成されている。
【0024】
なお、干渉判定閾値算出部134は、全ての少干渉区間代表値Pbの値に基づいて干渉判定閾値K2を算出してもよいし、複数の少干渉区間代表値Pbのうち少なくとも何れか2つ以上に基づいて干渉判定閾値K2を算出してもよいし、複数の少干渉区間代表値Pbのうち少なくとも何れか1つに基づいて干渉判定閾値K2を算出してもよい。また、干渉判定閾値算出部134は、複数の区間代表値Pのうち少干渉区間代表値Pbに分別された区間代表値Pが算出された区間D内のオリジナルの時系列信号T1の代表値に基づいて干渉判定閾値K2を算出してもよい。
【0025】
図6に例示するように、干渉判定閾値修正部135は、干渉判定閾値算出部134によって算出された干渉判定閾値K2を、過去に算出された干渉判定閾値K2に基づいて修正可能に構成されている。より詳細に説明すると、干渉判定閾値修正部135は、過去に算出された複数の干渉判定閾値K2について、例えば平均値、中央値、最頻値、最大値、最小値などといった統計値を算出し、その算出した統計値を過去の干渉判定閾値K2の代表値として算出する。そして、干渉判定閾値修正部135は、算出した過去の干渉判定閾値K2の代表値に所定のオフセット値を加算または減算した値を異常判定閾値K3として設定する。なお、所定のオフセット値は、適宜変更して設定することができる。また、干渉判定閾値修正部135は、算出した過去の干渉判定閾値K2の代表値そのものを異常判定閾値K3として設定してもよい。
【0026】
そして、干渉判定閾値修正部135は、干渉判定閾値算出部134によって干渉判定閾値K2が算出された場合には、その干渉判定閾値K2を異常判定閾値K3と比較する。そして、干渉判定閾値修正部135は、干渉判定閾値K2が異常判定閾値K3よりも大きい場合には、その干渉判定閾値K2の値を所定の修正値K4に修正して干渉判定値算出部136に出力する。なお、所定の修正値K4の値は、適宜変更して設定することができる。
【0027】
また、干渉判定閾値修正部135は、干渉判定閾値K2が異常判定閾値K3よりも小さい場合には、干渉判定閾値K2に対し修正を行わず、当該干渉判定閾値K2をそのまま干渉判定値算出部136に出力する。なお、干渉判定閾値修正部135は、仮に干渉判定閾値K2が異常判定閾値K3と等しい場合には、その干渉判定閾値K2を修正する構成としてもよいし、修正しない構成としてもよい。
【0028】
また、干渉判定閾値修正部135は、例えば、過去の干渉判定閾値K2の移動平均値に基づいて干渉判定閾値K2を修正してもよいし、過去の干渉判定閾値K2の最頻値に基づいて干渉判定閾値K2を修正してもよい。その他、干渉判定閾値修正部135は、過去の干渉判定閾値K2についての種々の統計値に基づいて干渉判定閾値K2を修正することができる。
【0029】
図7に例示するように、干渉判定値算出部136は、干渉判定閾値算出部134によって算出された干渉判定閾値K2、あるいは、干渉判定閾値修正部135によって修正された干渉判定閾値K2に基づいて干渉判定値K5を算出可能に構成されている。より詳細に説明すると、干渉判定値算出部136は、オリジナルの時系列信号T1の強度を干渉判定閾値K2と比較する。そして、干渉判定値算出部136は、オリジナルの時系列信号T1のうち強度が干渉判定閾値K2よりも大きい範囲には判定値「0」を付与し、オリジナルの時系列信号T1のうち強度が干渉判定閾値K2よりも小さい範囲には判定値「1」を付与する。これにより、干渉判定値算出部136は、判定値「0」,「1」からなる干渉判定値K5を時系列信号T1から算出する。なお、干渉判定値算出部136は、仮に時系列信号T1のうち強度が干渉判定閾値K2と等しい範囲が存在する場合には、当該範囲については、判定値「1」を付与する構成としてもよいし、判定値「0」を付与する構成としてもよい。
【0030】
図8に例示するように、干渉除去部120は、干渉判定値算出部136によって算出された干渉判定値K5を用いて、オリジナルの時系列信号T1から干渉除去信号T2を生成可能に構成されている。より詳細に説明すると、干渉除去部120は、オリジナルの時系列信号T1の強度を干渉判定値K5と比較する。そして、干渉除去部120は、オリジナルの時系列信号T1のうち、強度が干渉判定値K5よりも大きい部分を除去し、強度が干渉判定値K5よりも小さい部分のみを残し、これにより、干渉除去信号T2を生成する。このように生成される干渉除去信号T2は、オリジナルの連続する時系列信号T1のうち、干渉判定値K5よりも小さい部分のみを残した信号と定義することができる。なお、干渉除去部120は、仮にオリジナルの時系列信号T1のうち強度が干渉判定値K5と等しい部分が存在する場合には、当該部分については、干渉除去信号T2に含める構成としてもよいし、含めない構成としてもよい。
【0031】
以上に例示した各部の処理により、干渉信号処理部100は、時系列信号T1から最終的に干渉除去信号T2を生成する。そして、干渉信号処理部100は、生成した干渉除去信号T2をレーダ信号処理部18に出力する。レーダ信号処理部18は、干渉信号処理部100から得られた干渉除去信号T2に基づいて、レーダ装置10と図示しない対象物との相対距離や相対速度などを測定可能に構成されている。なお、レーダ信号処理部18による測定処理は、図示しない対象物との相対距離や相対速度などを測定可能な処理であれば、種々の処理手法を適用することができる。
【0032】
次に、レーダ装置10による上述した処理をフローチャートに基づき説明する。
図9に例示するように、レーダ装置10は、連続するオリジナルの時系列信号T1を複数の範囲に分割するための区間Dを生成する(ステップS1)。そして、レーダ装置10は、それぞれの区間Dの範囲内の時系列信号T1の代表値である区間代表値Pを算出する(ステップS2)。そして、レーダ装置10は、複数の区間代表値Pを、干渉を多く含む多干渉区間代表値Paおよび干渉を多く含まない少干渉区間代表値Pbに分別する(ステップS3)。そして、レーダ装置10は、少干渉区間代表値Pbに分別された区間代表値Pの値に基づいて干渉判定閾値K2を算出する(ステップS4)。
【0033】
そして、レーダ装置10は、算出された干渉判定閾値K2を、必要に応じ、過去に算出された干渉判定閾値K2に基づいて修正する(ステップS5)。そして、レーダ装置10は、算出された干渉判定閾値K2、あるいは、修正された干渉判定閾値K2に基づいて干渉判定値K5を算出する(ステップS6)。そして、レーダ装置10は、算出された干渉判定値K5を用いて、オリジナルの時系列信号T1から干渉の影響を除去した干渉除去信号T2を生成する(ステップS7)。そして、レーダ装置10は、干渉除去信号T2に基づいて、図示しない対象物との相対距離や相対速度などを測定する(ステップS8)。
【0034】
以上に例示したレーダ装置10によれば、区間生成部131は、連続するオリジナルの時系列信号T1を複数の範囲に分割するための区間Dを生成する。そして、区間代表値算出部132は、それぞれの区間Dの範囲内のオリジナルの時系列信号T1の代表値である区間代表値Pを算出する。そして、区間代表値分別部133は、複数の区間代表値Pを、干渉を多く含む多干渉区間代表値Paおよび干渉を多く含まない少干渉区間代表値Pbに分別する。そして、干渉判定閾値算出部134は、少干渉区間代表値Pbに基づいて干渉判定閾値K2を算出する。そして、干渉判定値算出部136は、干渉判定閾値K2に基づいて干渉判定値K5を算出する。
【0035】
即ち、レーダ装置10によれば、連続するオリジナルの時系列信号T1のうち干渉を多く含まない区間Dの代表値を活用して、オリジナルの時系列信号T1から干渉部分を除去するための干渉判定値K5を生成するように構成した。この構成例によれば、仮にオリジナルの時系列信号T1のうち干渉を受けた区間が比較的長時間である場合であっても、その干渉の有無を精度良く判定することができ、ひいては、干渉が除去された信号に基づいて図示しない対象物との相対距離や相対速度などの測定を精度良く行うことができる。
【0036】
また、レーダ装置10によれば、区間代表値分別部133は、複数の区間代表値Pに基づいて分別閾値K1を算出し、その分別閾値K1に基づいて、複数の区間代表値Pを多干渉区間代表値Paおよび少干渉区間代表値Pbに分別する。この構成例によれば、分別閾値K1という明確な基準値に基づいて、複数の区間代表値Pを多干渉区間代表値Paおよび少干渉区間代表値Pbに精度良く分別することができる。
【0037】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値算出部134は、複数の少干渉区間代表値Pbのうち少なくとも何れか1つに基づいて干渉判定閾値K2を算出可能である。このように、少なくとも何れか1つの少干渉区間代表値Pbに基づいて干渉判定閾値K2を算出することにより、オリジナルの時系列信号T1のうち干渉を受けていない範囲あるいは干渉が少ない範囲の強度が反映された干渉判定閾値K2を算出することができる。
【0038】
また、レーダ装置10によれば、区間代表値分別部133は、昇順または降順に並び替えた複数の区間代表値Pのうち所定順位の区間代表値Pに基づいて分別閾値K1を算出可能である。これにより、より最適な分別閾値K1を算出することが可能となる。
【0039】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値算出部134は、複数の区間代表値Pのうち少干渉区間代表値Pbに分別された区間代表値Pが算出された区間D内の時系列信号T1の代表値に基づいて干渉判定閾値K2を算出可能である。これにより、オリジナルの時系列信号T1のうち干渉を受けていない範囲あるいは干渉が少ない範囲の強度が一層反映された干渉判定閾値K2を算出することが可能となる。
【0040】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値算出部134は、複数の少干渉区間代表値Pbに基づいて算出した統計値に基づいて干渉判定閾値K2を算出可能である。このような統計処理を用いることにより、オリジナルの時系列信号T1のうち干渉を受けていない範囲あるいは干渉が少ない範囲の強度が正確に反映された干渉判定閾値K2を算出することが可能となる。
【0041】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値修正部135は、干渉判定閾値算出部134が算出した干渉判定閾値K2を、過去に得られた干渉判定閾値K2に基づいて修正可能である。この構成例によれば、過去に得られた干渉判定閾値K2の値も反映された、より最適な干渉判定閾値K2を設定することが可能となる。
【0042】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値修正部135は、過去の干渉判定閾値K2の代表値に基づいて干渉判定閾値K2を修正可能である。これにより、過去に得られた干渉判定閾値K2の値も反映しながら、より最適な干渉判定閾値K2に修正することができる。
【0043】
また、レーダ装置10によれば、干渉判定閾値修正部135は、例えば、過去の干渉判定閾値K2の移動平均値に基づいて今回の干渉判定閾値K2を修正することにより、あるいは、過去の干渉判定閾値K2の最頻値に基づいて今回の干渉判定閾値K2を修正することにより、統計的に修正された、より最適な干渉判定閾値K2に修正することが可能となる。
【0044】
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、適宜、変形や拡張を行うことができる。例えば、レーダ装置10は、アナログデジタル変換部17の下流側に、時系列信号T1に所定の処理を施す処理部を備える構成としてもよい。所定の処理としては、例えば信号の差分やノイズをフィルタリングする処理などが考えられる。
【0045】
また、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0046】
また、本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。或いは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によりプロセッサを構成することにより提供された専用コンピュータにより実現されても良い。若しくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路により構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより実現されても良い。又、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記憶媒体に記憶されていても良い。
【0047】
また、本開示は、特許請求の範囲に記載した発明に加え、さらに以下のような発明を含む。
[請求項1]
連続する時系列信号を複数の範囲に分割するための区間を生成する区間生成部(131)と、
それぞれの前記区間の範囲内の時系列信号の代表値である区間代表値を算出する区間代表値算出部(132)と、
複数の前記区間代表値を、干渉を多く含む多干渉区間代表値および干渉を多く含まない少干渉区間代表値に分別する分別部(133)と、
前記少干渉区間代表値に基づいて干渉判定閾値を算出する閾値算出部(134)と、
前記干渉判定閾値に基づいて干渉判定値を算出する判定値算出部(136)と、
を備えるレーダ装置。
[請求項2]
前記分別部は、複数の前記区間代表値に基づいて分別閾値を算出し、前記分別閾値に基づいて、複数の前記区間代表値を前記多干渉区間代表値および前記少干渉区間代表値に分別する請求項1に記載のレーダ装置。
[請求項3]
前記閾値算出部は、複数の前記少干渉区間代表値のうち少なくとも何れか1つに基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項2に記載のレーダ装置。
[請求項4]
前記分別部は、昇順または降順に並び替えた複数の前記区間代表値のうち所定順位の前記区間代表値に基づいて前記分別閾値を算出する請求項3に記載のレーダ装置。
[請求項5]
前記閾値算出部は、複数の前記区間代表値のうち前記少干渉区間代表値に分別された区間代表値が算出された区間内の時系列信号の代表値に基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項1から4の何れか1項に記載のレーダ装置。
[請求項6]
前記閾値算出部は、複数の前記少干渉区間代表値に基づいて算出した統計値に基づいて前記干渉判定閾値を算出する請求項1から5の何れか1項に記載のレーダ装置。
[請求項7]
前記閾値算出部が算出した前記干渉判定閾値を、過去の干渉判定閾値に基づいて修正する閾値修正部(135)を備える請求項1から6の何れか1項に記載のレーダ装置。
[請求項8]
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の代表値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項7に記載のレーダ装置。
[請求項9]
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の移動平均値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項8に記載のレーダ装置。
[請求項10]
前記閾値修正部は、過去の干渉判定閾値の最頻値に基づいて前記干渉判定閾値を修正する請求項8に記載のレーダ装置。
【符号の説明】
【0048】
図面において、10はレーダ装置、131は区間生成部、132は区間代表値算出部、133は区間代表値分別部(分別部)、134は干渉判定閾値算出部(閾値算出部)、135は干渉判定閾値修正部(閾値修正部)、136は干渉判定値算出部(判定値算出部)、を示す。