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特開2023-170491電気部品固定構造および電気部品固定基板
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  • 特開-電気部品固定構造および電気部品固定基板 図1
  • 特開-電気部品固定構造および電気部品固定基板 図2
  • 特開-電気部品固定構造および電気部品固定基板 図3
  • 特開-電気部品固定構造および電気部品固定基板 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170491
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電気部品固定構造および電気部品固定基板
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/18 20060101AFI20231124BHJP
   H01G 2/06 20060101ALI20231124BHJP
   H01G 9/06 20060101ALI20231124BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H05K1/18 A
H01G2/06 A
H01G9/06 Z
H01G2/10 600
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082296
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 敏之
【テーマコード(参考)】
5E336
【Fターム(参考)】
5E336AA01
5E336AA12
5E336BC04
5E336CC53
5E336EE01
5E336GG15
(57)【要約】
【課題】加速度負荷による電気部品の破損を防ぐこと。
【解決手段】電気部品固定構造は、移動体である車両(自動車)に搭載される電気機器1の内部に固定される基板4と、基板4にリード線5Bを介して取り付けられる電気部品5と、を備え、電気部品5は、複数のリード線5Bが並んで配列されており、車両の進行方向を0度とした場合、各リード線5Bの配列方向θを0度<θ≦45度の範囲として基板4に各リード線5Bが固定される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に搭載される電気機器の内部に固定される基板と、前記基板にリード線を介して取り付けられる電気部品と、を備え、
前記電気部品は、複数の前記リード線が並んで配列されており、前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θを0度<θ≦45度の範囲として前記基板に各前記リード線が固定される、電気部品固定構造。
【請求項2】
前記電気部品は、各前記リード線の配列方向θを45度として、前記基板に各前記リード線が固定される、請求項1に記載の電気部品固定構造。
【請求項3】
前記電気部品は、複数の前記リード線を有する電解コンデンサである、請求項1に記載の電気部品固定構造。
【請求項4】
前記電気部品は、前記リード線のみを介して前記基板に固定される、請求項1に記載の電気部品固定構造。
【請求項5】
移動体に搭載される電気機器の内部に固定され、電気部品がリード線を介して固定される電気部品固定基板であって、
前記電気部品は、複数の前記リード線が並んで配列されており、
前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θが0度<θ≦45度の範囲となるように各前記リード線の固定位置を示す指標部を有する、電気部品固定基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気部品固定構造および電気部品固定基板に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に実装された電気部品を振動から保護するため、例えば、特許文献1から特許文献3には、電気部品を押さえる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-092226号公報
【特許文献2】特開2002-223082号公報
【特許文献3】特開2018-195699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1や特許文献2のように、固定バンドを介して電気部品を基板に取り付けたり、ビス止めによって電気部品を基板に固定したりする場合、電気部品を基板に実装する作業に加えて電気部品を基板に固定する作業を要するため、生産性が低下する問題がある。また、特許文献3のように、隣接する電気部品同士によって相互の傾く動きを抑制する場合、電気部品同士を密に実装しなければならず、実装の作業性が悪く、生産性が低下する問題がある。従って、生産性の低下を抑えつつ、移動体に搭載される電気機器においては車両などの移動体の急加速、急ブレーキなどの加速度による負荷により電気部品が破損することを防止することが望まれる。
【0005】
本発明は、加速度負荷による電気部品の破損を防ぐことのできる電気部品固定構造および電気部品固定基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電気部品固定構造は、移動体に搭載される電気機器の内部に固定される基板と、前記基板にリード線を介して取り付けられる電気部品と、を備え、前記電気部品は、複数の前記リード線が並んで配列されており、前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θを0度<θ≦45度の範囲として前記基板に各前記リード線が固定される。
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様の電気部品固定基板は、移動体に搭載される電気機器の内部に固定され、電気部品がリード線を介して固定される電気部品固定基板であって、前記電気部品は、複数の前記リード線が並んで配列されており、前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θが0度<θ≦45度の範囲となるように各前記リード線の固定位置を示す指標部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、加速度負荷による電気部品の破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の電気部品固定構造の適用例の電気機器の斜視図である。
図2図2は、実施形態の電気部品固定構造を表す平面図である。
図3図3は、実施形態の電気部品固定構造を表す斜視図である。
図4図4は、実施形態の電気部品固定基板を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
実施形態の電気部品固定構造は、例えば、図1に示す電気機器1に適用される。電気機器1は、移動体である車両(自動車・電車など)の車室内部に搭載されるものであって、例えば、ナビゲーションシステムやオーディオシステムである。電気機器1は、筐体2と、表示パネル3と、を有する。
【0012】
筐体2は、前側が開放され、上側、下側、右側、左側、および後側が板金で塞がれた構造である。従って、筐体2は、その外殻を構成する外筐部材である上板2Aと、下板2Bと、右板2Cと、左板2Dと、後板2Eと、を有し、全体として直方形状に形成される。ここで、電気機器1の前側、上側、下側、右側、左側、および後側は、電気機器1を車両の運転席前方に搭載した状態で各方向を定義する。即ち、運転席側に向く側を「前側」、車両前方のウインドシールド側に向く側を「後側」とし、右側および左側は、電気機器1を前側から視た方向である。筐体2は、前側が車両クラスター(ダッシュボードともいう)の外部に表れるように、車両クラスターの内部に配置される。
【0013】
表示パネル3は、パネル面を前側に向けて筐体2の前側に設置される。表示パネル3は、パネル枠3Aと、パネル面をなす表示部3Bと、を有する。パネル枠3Aは、筐体2の前側を覆う。パネル枠3Aは、本実施形態では、筐体2よりも上下方向および左右方向で若干大きい。表示部3Bは、パネル枠3Aの上下方向および左右方向において小さく、パネル枠3Aの上下方向および左右方向の内側に収納される。表示部3Bは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)または有機EL(Organic Electro-Luminescence)ディスプレイで構成される。表示部3Bは、タッチパネルとして構成できる。なお、図には明示しないが、パネル枠3Aは、上下方向や左右方向に、電気機器1の各種操作を行うための操作ボタンを設けることができる。
【0014】
電気機器1は、筐体2の内部に基板4が収容される。基板4は、板面を上下方向に向け、上板2Aおよび下板2Bと平行に配置される。言い換えると、基板4は、右板2Cと左板2Dと後板2Eとに対して垂直に配置される。
【0015】
基板4は、図2および図3に示すように、電気部品5が固定される。電気部品5は、部品本体5Aと、リード線(脚ともいう)5Bと、を有する。電気部品5は、例えば、電解コンデンサとして構成される。従って、部品本体5Aは、コイル状に巻かれた素子がケースの内部に収容されたもので、当該構成によって円柱形状に形成される。リード線5Bは、部品本体5Aから引き出された陰極と陽極との2本が略平行に設けられている。この電気部品5は、基板4に形成された図4に示すスルーホール4Aにリード線5Bが挿入され半田で固定される。従って、電気部品5は、基板4に対し、リード線5Bを介して部品本体5Aが支持された形態となる。このように、実施形態の電気部品5は、部品本体5Aから複数のリード線5Bが引き出されて構成される。
【0016】
基板4に固定された電気部品5は、複数(ここでは2本)のリード線5Bが、図2および図3に二点鎖線の直線Lで示すように並んで配列される。基板4は、移動体である車両に搭載される電気機器1に設けられていることから、車両の走行や制動、即ち車両の急加速、急ブレーキ、ハンドル操作などの加速度による負荷によって、主に前後方向や左右方向や上下方向の荷重を受ける。このため、基板4に固定された電気部品5には、車両の走行や制動に伴って前後方向や左右方向や上下方向の振動が加わる。電気部品5は、複数のリード線5Bを介して部品本体5Aが基板4に支持された形態であるため、部品本体5Aの揺れによってリード線5Bに繰り返し曲げ応力が作用する。
【0017】
リード線5Bは、配列方向と垂直な方向に部品本体5Aに振動が加わる場合、作用する繰り返し曲げ応力の影響が大きく破損し易い。一方、リード線5Bは、配列方向に部品本体5Aに振動が加わる場合、作用する繰り返し曲げ応力の影響が小さく破損し難い。なお、リード線5Bは、部品本体5Aから延びる基板4との鉛直方向(上下方向)に部品本体5Aに振動が加わる場合は、作用する繰り返し応力の種類が圧縮と引っ張りとなるため破損し難い。
【0018】
このリード線5Bに作用する繰り返し曲げ応力と破損との関係から、加わる振動の方向に対し、リード線5Bの配列方向を適宜設定することで、リード線5Bの破損を破損し難くすることが可能になる。そして、基板4は、車両の走行や制動に伴って主に前後方向や左右方向に荷重を受けることから、実施形態の電気部品固定構造では、車両の進行方向である基板4の板面に沿う前後方向を0度とした場合、図2に示すように、この前後方向に対するリード線5Bの配列方向θを、0度<θ≦45度(135度≦θ<180度)に規定する。基板4の車両に対する配置は、筐体2の車両に対する配置によって決まるので、リード線5Bの配列方向θは、車両の進行方向に対する角度となる。このように規定することで、左右方向に対するリード線5Bの配列方向θ’は、45度≦θ’<90度(90<θ’≦135度)に規定される。すなわち、実施形態の電気部品固定構造は、リード線5Bの配列方向の垂直方向が前後方向や左右方向に一致することはない。
【0019】
このように、実施形態の電気部品固定構造は、移動体である車両(自動車)に搭載される電気機器1の内部に固定される基板4と、基板4にリード線5Bを介して取り付けられる電気部品5と、を備え、電気部品5は、複数のリード線5Bが並んで配列されており、車両の進行方向を0度とした場合、各リード線5Bの配列方向θを0度<θ≦45度の範囲として基板4に各リード線5Bが固定される。
【0020】
この電気部品固定構造によれば、車両の進行方向に対し、電気部品5の各リード線5Bの配列方向θを0度<θ≦45度の範囲とすることで、各リード線5Bの配列方向θの垂直方向が前後方向や左右方向に一致することを防ぐ。この結果、実施形態の電気部品固定構造は、加速度負荷による電気部品5の破損を防ぐことができる。しかも、実施形態の電気部品固定構造は、各リード線5Bの配列方向を規定するだけでよいため、生産性の低下を抑えることができる。
【0021】
また、実施形態の電気部品固定構造では、電気部品5は、各リード線5Bの配列方向θを45度として、基板4に各前記リード線5Bが固定される。
【0022】
ここで、移動体である自動車は、例えば、左前タイヤと右後方のタイヤを対角に結んだ方向の振動が生じることが想定されるが、自動車のタイヤ前後間距離は、タイヤの左右間距離と比べて長い距離となっている。このため、移動体が自動車である場合、前後方向および左右方向の45度に振動が加わる可能性は低く、リード線5Bの配列方向θを前後方向(および左右方向)の45度にしても、リード線5Bの配列方向θに垂直方向の振動が加わる可能性は限りなく低い。このため、実施形態の電気部品固定構造によれば、移動体である自動車の前後方向および左右方向の加速度負荷による電気部品5の破損を防ぐことができる。
【0023】
また、実施形態の電気部品固定構造では、電気部品5は、複数のリード線5Bを有する電解コンデンサである。
【0024】
この電気部品固定構造によれば、電解コンデンサは、コイル状に巻かれた素子がケースの内部に収容された部品本体5Aを有するもので、容量が大きいほど大型になり、基板4に固定されたリード線5Bに生じる加速度負荷が大きい。従って、実施形態の電気部品固定構造によれば、電気部品5の対象を電解コンデンサとすることで、加速度負荷による電気部品5の破損を防ぐ効果を顕著に得ることができる。また、電解コンデンサは、コイル状に巻かれた素子がケースの内部に収容された円柱形状の部品本体5Aを有するものであるため、各リード線5Bの配列方向を規定した配置による円柱形状の軸心周りの位置変更は基板4への配置の妨げにならず、周囲に影響がない。
【0025】
また、実施形態の電気部品固定構造では、電気部品5は、リード線5Bのみを介して基板4に固定される。
【0026】
即ち、実施形態の電気部品固定構造では、電気部品5は、自身以外に基板4に押さえつけるような手段が用いられていない。この結果、実施形態の電気部品固定構造は、電気部品5を基板4に固定する作業性が損なわれず、生産性の低下を抑えることができる。
【0027】
ところで、実施形態の電気部品5を固定する基板4(電気部品固定基板)は、移動体である車両(自動車)の進行方向を0度とした場合、電気部品5の各リード線5Bの配列方向θを0度<θ≦45度の範囲とするため、図4に示すように、各リード線5Bの固定位置を示す指標部4Bを有する。
【0028】
指標部4Bは、実施形態では、基板4における電気部品5を固定する部分に、電気部品5の各リード線5Bの配列方向をスルーホール4Aに合わせて示す配列指標部4Baと、部品本体5Aの外形を示す配置指標部4Bbと、を含む。この指標部4Bは、実施形態では、シルク印刷によって施される。
【0029】
この電気部品固定基板によれば、電気部品5のリード線5Bの差し込み部(スルーホール4A)の位置を明示するため、電気部品5を基板4に固定する際の作業性を向上できる。
【0030】
本実施形態は以下の発明を包含する。
なお、本発明は専ら前後方向に負荷がかかる移動体に適用することが好ましいが、一定方向からの負荷による電気部品の破損を防ぐため有効である。
[発明1]
移動体に搭載される電気機器の内部に固定される基板と、前記基板にリード線を介して取り付けられる電気部品と、を備え、
前記電気部品は、複数の前記リード線が並んで配列されており、前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θを0度<θ≦45度の範囲として前記基板に各前記リード線が固定される、電気部品固定構造。
[発明2]
前記電気部品は、各前記リード線の配列方向θを45度として、前記基板に各前記リード線が固定される、発明1に記載の電気部品固定構造。
[発明3]
前記電気部品は、複数の前記リード線を有する電解コンデンサである、発明1または2に記載の電気部品固定構造。
[発明4]
前記電気部品は、前記リード線のみを介して前記基板に固定される、発明1から3のいずれか1つに記載の電気部品固定構造。
[発明5]
発明1から4のいずれか1つに記載の電気部品固定構造に含まれる電気部品固定基板であって、
前記移動体の進行方向を0度とした場合、各前記リード線の配列方向θが0度<θ≦45度の範囲となるように各前記リード線の固定位置を示す指標部を有する、電気部品固定基板。
【符号の説明】
【0031】
1 電気機器
4 基板
4B 指標部
5 電気部品
5B リード線
θ 配列方向
図1
図2
図3
図4