(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170500
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電磁波照射装置および電磁波照射方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082316
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩二
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131AA03
5F131AA12
5F131AA13
5F131AA21
5F131AA22
5F131AA23
5F131BA53
5F131CA06
5F131CA38
5F131DA13
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA07
5F131EB01
5F131EB11
5F131EB31
5F131EB42
5F131EB46
5F131EB81
5F131EC32
5F131EC33
5F131EC34
5F131EC35
5F131EC44
5F131EC72
5F131EC73
5F131EC77
(57)【要約】
【課題】照射対象物に溶化部と未溶化部とが生じることを防止することができる電磁波照射装置および電磁波照射方法を提供する。
【解決手段】電磁波照射装置EAは、照射対象物ASに気体NGを吹き付ける吹付手段10と、気体NGが吹き付けられた照射対象物ASに電磁波EWを照射する照射手段20とを備え、吹付手段10で照射対象物ASに気体NGを吹き付ける前に、照射対象物ASにおける気体NGが吹き付けられる気体吹付領域を溶化させる溶化手段30を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射対象物に気体を吹き付ける吹付手段と、
前記気体が吹き付けられた前記照射対象物に電磁波を照射する照射手段とを備え、
前記吹付手段で前記照射対象物に前記気体を吹き付ける前に、当該照射対象物における前記気体が吹き付けられる気体吹付領域を溶化させる溶化手段を備えていることを特徴とする電磁波照射装置。
【請求項2】
前記溶化手段は、前記照射手段と兼用されていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波照射装置。
【請求項3】
照射対象物に気体を吹き付ける吹付工程と、
前記気体が吹き付けられた前記照射対象物に電磁波を照射する照射工程とを実施し、
前記吹付工程で前記照射対象物に前記気体を吹き付ける前に、当該照射対象物における前記気体が吹き付けられる気体吹付領域を溶化させる溶化工程を実施することを特徴とする電磁波照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波照射装置および電磁波照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照射対象物に電磁波を照射する電磁波照射装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された紫外線照射装置(電磁波照射装置)では、粘着テープB(接着シート)に貼付された半導体ウエハAを介して、接着シートにガス拡散孔17aから不活性ガスG(気体)を吹き付けながら、当該接着シートに紫外線(電磁波)を照射する。そのため、照射対象物は、気体が吹き付けられる気体吹付領域では、照射対象物の温度が低下して溶化が起きず、その他の領域では、照射した電磁波によって溶化が起きるので、照射対象物に溶化部と未溶化部とが生じてしまうという不都合がある。
【0005】
本発明の目的は、照射対象物に溶化部と未溶化部とが生じることを防止することができる電磁波照射装置および電磁波照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、請求項に記載した構成を採用した。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、照射対象物に気体を吹き付ける前に、照射対象物の気体吹付領域を溶化させるため、照射対象物に溶化部と未溶化部とが生じることを防止することができる。
また、溶化手段が照射手段と兼用されれば、照射手段とは別に溶化手段を設ける必要がなく、装置が大型化することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る電磁波照射装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、本実施形態におけるX軸、Y軸、Z軸は、それぞれが直交する関係にあり、X軸およびY軸は、所定平面内の軸とし、Z軸は、前記所定平面に直交する軸とする。さらに、本実施形態では、Y軸と平行な
図1の手前方向から観た場合を基準とし、方向を示した場合、「上」がZ軸の矢印方向で「下」がその逆方向、「左」がX軸の矢印方向で「右」がその逆方向、「前」がY軸と平行な
図1中手前方向で「後」がその逆方向とする。
【0010】
電磁波照射装置EAは、照射対象物としての接着シートASに気体としての窒素ガスNGを吹き付ける吹付工程を実施する吹付手段10と、窒素ガスNGが吹き付けられた接着シートASに電磁波EWを照射する照射工程を実施する照射手段20と、吹付手段10で接着シートASに窒素ガスNGを吹き付ける前に、当該接着シートASにおける窒素ガスNGが吹き付けられる窒素ガス吹付領域を溶化させる溶化工程を実施する溶化手段30とを備えている。
なお、本実施形態の接着シートASは、フレーム部材としてのリングフレームRFの開口部RF1内に配置された被着体としての半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」ともいう)WFを、当該リングフレームRFと一体化させて一体物UPを形成したものが採用され、ウエハWFを介して当該接着シートASに窒素ガスNGが吹き付けられる。また、接着シートASは、照射手段20が照射する電磁波EWに含まれる主電磁波としての紫外線によって接着力が低下する特性と、電磁波EWに含まれる副電磁波としての赤外線によって溶化を起こす特性とを有している。
【0011】
吹付手段10は、接着シートASに紫外線が照射される際、当該接着シートASの接着力が低下する反応が大気中の酸素や浮遊粒子等の阻害物質によって阻害されることを防止するものであり、駆動機器としての直動モータ11と、直動モータ11の出力軸11Aに支持され、下面に噴出孔12Aが形成された蓋部材12と、図示しない窒素ガスタンクから配管13Aを介して噴出孔12Aに窒素ガスNGを供給する加圧ポンプやタービン等の気体供給手段13とを備えている。
【0012】
照射手段20は、筐体21と、接着シートASに電磁波EWを照射する電磁波照射手段22と、接着シートASを支持する支持手段23とを備えている。
電磁波照射手段22は、筐体21の凹部21Aの底面21Bに支持された駆動機器としてのリニアモータ22Aと、リニアモータ22Aのスライダ22Bに支持されたカバー22Cと、カバー22Cの内部に収容され、電磁波EWを発光する電磁波発光手段としての高圧水銀ランプ22Dと、高圧水銀ランプ22Dが発光した電磁波EWを集光する反射板やレンズ等の集光手段22Eとを備えている。
支持手段23は、筐体21の上面21Cに支持され、凹部23Bの底面で構成される支持面23Cに貫通孔23Dが形成されたテーブル23Aと、配管23Eを介して凹部23B内から気体を吸引する減圧ポンプやエジェクタなどの減圧手段23Fとを備えている。
【0013】
溶化手段30は、本実施形態では照射手段20と兼用されており、電磁波照射手段22を備えている。
【0014】
以上の電磁波照射装置EAの動作を説明する。
先ず、
図1中実線で示す初期位置に各部材が配置された電磁波照射装置EAに対し、当該電磁波照射装置EAの使用者(以下、単に「使用者」という)が、図示しない操作パネルやパーソナルコンピュータ等の図示しない操作手段を介して、接着シートASの溶化に必要な照度や高圧水銀ランプ22Dの移動速度等の第1照射条件、および接着シートASの接着力低下に必要な照度や高圧水銀ランプ22Dの移動速度等の第2照射条件を入力するとともに、自動運転開始の信号を入力する。次いで、使用者または、多関節ロボットやベルトコンベア等の図示しない搬送手段が、
図1に示すように、一体物UPを支持面23C上の所定の位置に載置すると、吹付手段10が直動モータ11を駆動し、
図1中二点鎖線で示すように、蓋部材12を下降させて、蓋部材12、凹部23Bおよび一体物UPで空間SPを形成する。
【0015】
その後、溶化手段30が第1照射条件に基づいてリニアモータ22Aおよび高圧水銀ランプ22Dを駆動し、入力された照度および移動速度で高圧水銀ランプ22Dを左右に往復移動させ、接着シートASに電磁波EWを照射する。これにより、接着シートASが加熱され、当該接着シートASの窒素ガス吹付領域が溶化する。次に、高圧水銀ランプ22Dが初期位置に復帰すると、照射手段20がリニアモータ22Aおよび高圧水銀ランプ22Dの駆動を停止する。そして、照射手段20が減圧手段23Fを駆動し、空間SP内を吸引するとともに、吹付手段10が気体供給手段13を駆動し、噴出孔12AからウエハWFを介して接着シートASに窒素ガスNGを吹き付けながら、空間SP内に窒素ガスNGを供給する。次いで、空間SP内の窒素ガスNGの濃度が所定の濃度になったことを濃度計や濃度センサ等の図示しない検知手段が検知すると、照射手段20が減圧手段23Fの駆動を停止するとともに、吹付手段10が気体供給手段13の駆動を停止する。その後、照射手段20が第2照射条件に基づいてリニアモータ22Aおよび高圧水銀ランプ22Dを駆動し、入力された照度および移動速度で再び高圧水銀ランプ22Dを左右に往復移動させ、接着シートASに電磁波EWを照射する。これにより、接着シートASは、電磁波EWに含まれる紫外線によって接着力が低下する。
【0016】
次に、高圧水銀ランプ22Dが初期位置に復帰すると、照射手段20がリニアモータ22Aおよび高圧水銀ランプ22Dの駆動を停止した後、吹付手段10が直動モータ11を駆動し、蓋部材12を期位置に復帰させる。そして、使用者または図示しない搬送手段が一体物UPを次工程に搬送し、以降上記同様の動作が繰り返される。
【0017】
以上のような実施形態によれば、接着シートASに窒素ガスNGを吹き付ける前に、接着シートASの窒素ガス吹付領域を溶化させるため、接着シートASの窒素ガス吹付領域に溶化部と未溶化部とが生じることを防止することができる。
【0018】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。また、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれる。
【0019】
例えば、吹付手段10は、蓋部材12を下降させないで接着シートASに気体を吹き付けてもよいし、ウエハWFを介さずに接着シートASに直接気体を吹き付けてもよいし、接着シートASに高圧水銀ランプ22D側から気体を吹き付けてもよいし、照射手段20が接着シートASに電磁波EWを照射する前に気体の吹き付けを停止しなくてもよいし、蓋部材12を移動させずにまたは移動させつつ、支持手段23を移動させて空間SPを形成してもよい。
吹付手段10で吹き付ける気体は、特に限定されず、例えば、冷風、大気、窒素ガスやアルゴンガス等の単体ガス、混合ガス等であってもよいし、例えば、接着シートASの特性、特質、性質、材質および組成等に応じて接着シートASの反応が阻害されることを防止できるものであれば、どのような気体を採用してもよい。
【0020】
照射手段20は、筐体21が備わっていなくてもよいし、電磁波発光手段として、例えば、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ハロゲンランプ等を採用したり、それらを適宜に組み合わせたものを採用したりしてもよいし、電磁波発光手段を移動させずにまたは移動させつつ、支持手段23を移動させて接着シートASに電磁波EWを照射してもよいし、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、赤外線等を主電磁波として含む電磁波EWを照射してもよく、照射対象物の特性、特質、性質、材質、組成等に応じて照射対象物に必要な反応を起こさせることができるものであれば、どのような電磁波EWを照射してもよい。
照射手段20が照射する電磁波EWに含まれる副電磁波は、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、紫外線等、照射対象物を溶化させるものであれば、どのような電磁波でもよい。
照射手段20は、溶化手段30と兼用されなくてもよく、この場合、接着シートASの接着力低下に必要な電磁波EWを採用して接着シートASに照射すればよい。
【0021】
溶化手段30は、一体物UPを支持面23C上に載置する前に接着シートASを溶化させてもよいし、照射手段20と兼用されてもよいし、照射手段20と兼用されなくてもよく、照射手段20と兼用されない場合、例えば、
図1中二点鎖線で示すように、駆動機器としてのリニアモータ31のスライダ31Aに支持されたコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段32を備え、加熱手段32で接着シートASを加熱して溶化してもよいし、照射手段20と兼用される場合、スライダ22Bで加熱手段32を支持する構成とし、リニアモータ22Aを照射手段20と兼用する構成としてもよい。
【0022】
照射対象物は、被着体やリングフレームRFであってもよいし、単体の部材で構成されてもよいし、複数の部材で構成されてもよい。
接着シートASは、例えば、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、赤外線等の紫外線以外の主電磁波によって接着力が低下する特性を有するものでもよいし、可視光線、音波、マイクロ波、X線、ガンマ線、紫外線等の赤外線以外の副電磁波によって溶化を起こす特性を有するものでもよい。
一体物UPは、被着体やリングフレームRFがなくてもよい。
フレーム部材は、リングフレームRF以外に、環状でない(外周が繋がっていない)ものや、円形、楕円形、多角形、その他の形状であってもよい。
接着シートASは、大気中の阻害物質によって、その反応が阻害されるものでなくてもよい。
【0023】
照射対象物、接着シートAS、被着体およびフレーム部材の材質、種別、形状等は、特に限定されることはない。例えば、照射対象物、接着シートAS、被着体およびフレーム部材は、円形、楕円形、三角形や四角形等の多角形、その他の形状であってもよいし、接着シートASは、感圧接着性、感熱接着性等の接着形態のものであってもよく、感熱接着性の接着シートASが採用された場合は、当該接着シートASを加熱する適宜なコイルヒータやヒートパイプの加熱側等の加熱手段を設けるといった適宜な方法で接着されればよい。また、接着シートASは、例えば、接着剤層だけの単層のもの、基材と接着剤層とが積層された2層のもの、基材と接着剤層との間に1または複数の中間層が積層された3層または3層以上のもの、基材の上面に1または複数のカバー層が積層された3層または3層以上のもの、基材、中間層またはカバー層が剥離可能に設けられたもの、接着剤層のみからなる単層の両面接着シート、1または複数の中間層の両最外面に接着剤層が積層された両面接着シート等、どのようなものでもよい。さらに、被着体としては、例えば、食品、樹脂容器、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハ等の半導体ウエハ、回路基板、光ディスク等の情報記録基板、ガラス板、鋼板、陶器、木板または樹脂等の単体物であってもよいし、それら2つ以上で形成された複合物であってもよく、任意の形態の部材や物品なども対象とすることができる。なお、接着シートASは、機能的、用途的な読み方に換え、例えば、情報記載用ラベル、装飾用ラベル、保護シート、ダイシングテープ、ダイアタッチフィルム、ダイボンディングテープ、記録層形成樹脂シート等の任意のシート、フィルム、テープ等でもよい。
【0024】
本発明における手段および工程は、それら手段および工程について説明した動作、機能または工程を果たすことができる限りなんら限定されることはなく、まして、前記実施形態で示した単なる一実施形態の構成物や工程に全く限定されることはない。例えば、吹付手段は、照射対象物に気体を吹き付けるものであればどんなものでもよく、出願当初の技術常識に照らし合わせてその技術範囲内のものであればなんら限定されることはない(その他の手段および工程も同じ)。
【0025】
前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、2軸または3軸以上の関節を備えた多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダおよびロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる。
前記実施形態において、支持(保持)手段や支持(保持)部材等の被支持部材(被保持部材)を支持(保持)するものが採用されている場合、メカチャックやチャックシリンダ等の把持手段、クーロン力、接着剤(接着シート、接着テープ)、粘着剤(粘着シート、粘着テープ)、磁力、ベルヌーイ吸着、吸引吸着、駆動機器等で被支持部材を支持(保持)する構成を採用してもよい。
【符号の説明】
【0026】
EA…電磁波照射装置
10…吹付手段
20…照射手段
30…溶化手段
AS…接着シート(照射対象物)
NG…窒素ガス(気体)
EW…電磁波