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特開2023-170531音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラム
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  • 特開-音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170531
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01H 3/00 20060101AFI20231124BHJP
   G01H 9/00 20060101ALI20231124BHJP
   G01M 9/06 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01H3/00 Z
G01H9/00 Z
G01M9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082359
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 尚貴
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 晃久
【テーマコード(参考)】
2G023
2G064
【Fターム(参考)】
2G023AA01
2G023AC01
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB13
2G064BA02
2G064BA08
2G064BC22
2G064CC29
2G064CC42
2G064CC52
2G064DD08
2G064DD14
2G064DD23
(57)【要約】
【課題】マイクロフォンを使用せずに音圧を検出する音圧検出装置を提供する。
【解決手段】音圧検出装置は、透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出する変位分布算出部と、前記変位分布算出部が算出した前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる圧力の分布を推定する関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、
音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出する変位分布算出部と、
前記変位分布算出部が算出した前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、
を備える音圧検出装置。
【請求項2】
前記変位分布算出部は、時系列に撮影された前記画像に基づいて、前記音の周波数で色が変化する振動成分の変位量を、前記板状の部材を分割してできる領域ごとに算出する、
を備える請求項1に記載の音圧検出装置。
【請求項3】
前記変換関数は、前記板状の部材を分割してできる領域ごとに打撃を加えたときに計測された前記打撃に対する前記領域ごとの変位量の記録と、前記領域ごとの打撃の荷重との関係に基づいて導出される、
請求項1または請求項2に記載の音圧検出装置。
【請求項4】
前記圧力分布算出部が算出した音圧の分布を、前記板状の部材の範囲に設置された複数のマイクロフォンによって検出された音圧とみなして、音源推定を行う音源推定部、
をさらに備える請求項1または請求項2に記載の音圧検出装置。
【請求項5】
透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、
音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記画像に生じる色彩の変化の分布を算出する色彩分布算出部と、
前記色彩分布算出部が算出した前記色彩の変化の分布と、前記画像に生じる色彩の変化の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、
を備える音圧検出装置。
【請求項6】
前記板状の部材によって構成された1つ又は複数の窓を備える構造物と、
請求項1または請求項2に記載の音圧検出装置と、
を備える音圧検出システム。
【請求項7】
前記構造物が風洞試験設備、実験室、建物、移動体の何れかである、
請求項6に記載の音圧検出システム。
【請求項8】
透明な板状の部材を偏光カメラで撮影するステップと、
音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、
前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、
を有する音圧検出方法。
【請求項9】
請求項8に記載の音圧検出方法によって、音圧の分布を算出するステップと、
前記音圧の分布を算出するステップで算出された前記音圧の分布を、前記板状の部材が存在する領域に設置された複数のマイクロフォンによって検出された音圧とみなして、音源推定を行うステップと、
を有する音源推定方法。
【請求項10】
コンピュータに、
透明な板状の部材を偏光カメラで撮影した画像を取得するステップと、
音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、
前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、マイクロフォンを用いて、風洞内に配置された被測定物から発生する騒音源の位置を検出する方法が開示されている。風洞内の音源を探査する場合、風の影響とマイクロフォンの設置場所に対する対策が必要となる。風の影響については、マイクロフォンに風が当たると風の流れによる圧力変動を計測し、幅広い周波数帯でノイズを発生してしまう。そのため、風が当たらない位置にマイクロフォンを設置する必要がある。設置場所については、複数のマイクロフォンを設置可能で、かつ風の影響を受けにくい場所が必要となる。これらの対策のために、設備の改修が必要となる可能性がある。風の影響と設置場所に関する課題を回避して音源探査を行うことができれば、コストや労力を削減することができる。
【0003】
非特許文献1には、複数のマイクロフォンアレイを音源に向けて設置し、各計測点の計測結果の差異から音源分布を推定する技術が開示されている。例えば、2つ以上のマイクロフォンで受信した音の到達時間の差から音源位置の方向を推定する技術などが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-333367号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】佐々木浩一、高野靖、「マイクロホンアレイによる音源探査技術」、騒音制御、Vol.28、No2(2004)、p.80-84
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風の影響と設置場所に関する課題を回避するために、マイクロフォン以外の手段で音圧を検出する方法が求められている。
【0007】
本開示は、上記課題を解決することができる音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の音圧検出装置は、透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出する変位分布算出部と、前記変位分布算出部が算出した前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、を備える。
【0009】
本開示の音圧検出システムは、前記板状の部材によって構成された1つ又は複数の窓を備える構造物と、上記の音圧検出装置と、を有する。
【0010】
本開示の音圧検出方法は、透明な板状の部材を偏光カメラで撮影するステップと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、を有する。
【0011】
本開示の音源推定方法は、上記の音圧検出方法によって、音圧の分布を算出するステップと、前記音圧の分布を算出するステップで算出された前記音圧の分布を、前記板状の部材の範囲に設置された複数のマイクロフォンによって検出された音圧とみなして、音源推定を行うステップと、を有する。
【0012】
本開示のプログラムは、コンピュータに、透明な板状の部材を偏光カメラで撮影した画像を取得するステップと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、を実行させる。
【発明の効果】
【0013】
上述の音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラムによれば、マイクロフォンを使用せずに音圧を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る音源推定システムの一例を示す図である。
図2】実施形態に係る圧力分布推定方法について説明する図である。
図3A】実施形態に係る変換関数の算出方法について説明する第1の図である。
図3B】実施形態に係る変換関数の算出方法について説明する第2の図である。
図4】実施形態に係る音源推定方法の一例を示す図である。
図5】実施形態に係る音源推定処理の一例を示すフローチャートである。
図6】実施形態に係る監視窓の一例を示す図である。
図7】実施形態に係る音源推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
以下、本開示の音圧検出方法および音源推定方法について、図1図7を参照して説明する。
(構成)
図1は、実施形態に係る音源推定システムの一例を示す図である。音源推定システム100は、試験設備1と、試験設備1に設けられた監視窓2と、試験設備1内に配置された検査対象機器3と、監視窓2の全面を撮影するように設置された偏光カメラ4と、音源推定装置10と、を備える。例えば、試験設備1は、風洞試験設備であり、検査対象機器3は、航空機の翼である。航空機の翼を風洞試験設備内に配置して風を送ることで、航空機が飛行している状態を模擬し、その状態で、翼のどこから音が発生するかを確認する試験が行われる。試験設備1には、樹脂やガラス等の透明な板状部材を用いた監視窓2が設けられていて、外部から試験設備1内を確認できるようになっている。上記した通り、試験設備1内にマイクロフォンを設けて音源探索する方法では、風の影響で検査対象機器3が発する音をうまくとらえることができず、音源推定が難しい。本実施形態では、マイクロフォンの代わりに監視窓2を使用する。監視窓2が、音によって変位する様子を偏光カメラ4で撮影し、撮影できた監視窓2の画像から、検査対象機器3が発する音の周波数で振動する振動成分の変位を算出する。そして、監視窓2の各位置の変位を音圧に変換することにより、試験設備1内に複数のマイクロフォンを設けて音を計測したときと同様の計測結果を得て、音源推定を行う。
【0016】
音源推定装置10は、画像取得部11と、変位分布算出部12と、圧力分布算出部13と、音源推定部14と、変換関数算出部15と、記憶部16と、出力部17とを備える。
画像取得部11は、偏光カメラ4が撮影した画像(動画、又は連続的に撮影された静止画)を取得する。画像取得部11は、取得した画像を記憶部16に保存する。
【0017】
変位分布算出部12は、風洞試験の風や検査対象機器3が発する音による監視窓2の変位の分布を算出する。偏光カメラ4が監視窓2のような透明な板を撮影すると、透明な板が写った画像が撮影される。しかし、光が透明な物体を通過する際、変形による屈折率の変化が生じると偏光が生じる。従って、音圧により監視窓2に変位が生じると、偏光によって色が付いた画像が撮影される。変位分布算出部12は、画像の色により、監視窓2の各所の変位又は色彩の変化を算出する。また、変位分布算出部12は、偏光カメラ4によって連続して撮影された画像における周期的な色の変化から監視窓2の変位の周波数を算出する。変位分布算出部12は、偏光カメラ4が撮影した時系列の画像から検出された様々な周波数の中から、音源を推定したい周波数(検査対象機器3が発する音、以下、対象周波数と称する場合がある。)と同じ周波数の振動成分を抽出し、抽出した振動成分の色の変化に基づいて、その変位量を算出する。変位分布算出部12は、このような処理を監視窓2における複数の位置について行い、風洞試験中に監視窓2に生じる変位の空間的な分布を算出する。なお、対象周波数は1つではなく複数であってもよい。
【0018】
圧力分布算出部13は、変位分布算出部12によって算出された監視窓2の変位分布に基づいて、監視窓2に加わる圧力(荷重)の分布を算出する。圧力分布算出部13は、変位分布算出部12によって算出された監視窓2の変位分布を、事前の振動特性取得試験により取得した変換関数TF-1(後述する伝達関数TFの逆関数)を用いて、監視窓2に加わる圧力(音圧)の空間的な分布に変換する。
【0019】
音源推定部14は、圧力分布算出部13によって算出された監視窓2の圧力分布に基づいて、検査対象機器3から発される音の音源分布Sを推定する。
【0020】
変換関数算出部15は、事前の振動特性取得試験で検出した監視窓2の変位分布と圧力分布(荷重分布)に基づいて、監視窓2の変位分布を圧力分布に変換する変換関数TF-1を算出する。振動特性取得試験では、監視窓2の各所に打撃を加え、偏光カメラ4で監視窓2の画像を撮影する。変換関数算出部15は、撮影された画像(動画、又は連続的に撮影された静止画)に基づいて、変位分布算出部12で説明した処理と同様にして、打撃により監視窓2に発生する対象周波数の変位分布を算出する。変換関数算出部15は、監視窓2の各所に打撃を加えたときに生じる監視窓2の変位分布のデータを集め、打撃による荷重および打撃位置と、打撃によって生じる変位分布との関係を表す伝達関数TFを算出する。変換関数算出部15は、伝達関数TFの逆関数TF-1を算出し、この関数を変換関数TF-1として記憶部16に保存する。
【0021】
記憶部16は、偏光カメラ4によって撮影された画像、変換関数、音源推定における計算過程や計算結果のデータ等を記憶する。
出力部17は、音源推定によって推定された音源位置、音源の方向、音源分布などを出力する。
【0022】
次に偏光カメラ4で撮影した画像について説明する。監視窓2に圧力が加わっていない状態で撮影された画像には、透明に表示された監視窓2が写る。監視窓2に強い圧力が加わるほど、監視窓2を構成する透明の板は変位する。すると、偏光カメラ4で撮影した画像では、監視窓2の各位置が、その位置の変位量に応じた色で表示される。例えば、変位の量が少ない部分は青色、変位の量が大きい部分は赤色、その間の大きさの変位が生じた部分は、黄色や緑色等、変位量に応じて連続的に変化する色で表示される。試験設備1内で風や音が発生すると、監視窓2は、風や音の圧力により振動する。従って、監視窓2を撮影した画像の各位置は、振動(変位)の大きさに応じた色で表示され、その色は様々な周波数で変化する。画像の各位置の色の変化に注目することにより、監視窓2における対応する位置の変位量や変位の周波数が解析できる。
【0023】
図2に、実施形態に係る圧力分布推定方法の概略を示す。本実施形態では、マイクロフォンを用いて音圧を検知する代わりに、監視窓2の変位分布を算出し、変位分布を圧力分布に変換して、圧力分布を推定することによって音圧を検知する。手順としては、検査対象機器3から発される音の音源推定に先立って、(1)振動特性取得試験を行い、監視窓2の変位分布と圧力分布の関係を解析し、上述の変換関数TF-1を取得しておく。次に、(2)風洞試験を行って、監視窓2の変位分布を算出する。そして、(3)監視窓2の変位分布の算出結果を、変換関数TF-1に入力して、監視窓2の圧力分布を得る。監視窓2のどの位置にどのような圧力が加わったかを示す監視窓2の圧力分布は、監視窓2の範囲に複数のマイクロフォンを並べて、これらのマイクロフォンによって音圧を検出することと同じであるから、音源推定装置10は、監視窓2の圧力分布に対して、複数のマイクロフォンで検出した音圧に基づいて音源探査を行う従来の音源探査方法を適用して、検査対象機器3の音源推定を行う。
【0024】
(1)振動特性取得試験
図2の30Aに示すように、振動特性取得試験では、ハンマ等を使って、監視窓2の複数個所に打撃を与える。ここで、図3Aに示すように、監視窓2をm×n個の領域に分割して、m×n個の各領域に対して打撃を与える。そして、打撃前から打撃後を通じて、監視窓2を偏光カメラ4によって撮影する。画像取得部11は、撮影された画像を撮影時刻と共に記憶部16に記録する。変換関数算出部15は、各時刻に撮影された画像に基づいて、周波数ごとの応答量(図2のグラフ30A1)に基づいて荷重と変位の関係を示す伝達関数TFを算出する(後述)。ここで、応答量とは、監視窓2の変位量/加えた荷重である。
【0025】
例えば、上述したように、監視窓2をm×n個の領域に分割して、m×n個の各領域に対して打撃を与える。変換関数算出部15は、監視窓2のm×n個の各領域について、周波数ごとの応答量を解析する。m×n個に分割した各セルを(m,n)のように表す。図3Aに示すように(1,1)に加えた打撃の荷重をF1,1,k、(1,2)に加えた打撃の荷重をF1,2,k、・・・、(m、n)に加わる荷重をFm,n,kとする。また、(1,1)にF1,1,kの荷重を加えたときに計測された対象周波数の(1,1)の変位、(1,1)にF1,2,kの荷重を加えたときに計測された対象周波数の(1,1)の変位、・・・、(1,1)にFm,n,kの荷重を加えたときに計測された対象周波数の(1,1)の変位、を全て足し合わせた変位をx1,1,kのように表す。変換関数算出部15は、全セルについて、振動特性取得試験で各セルに打撃を加えたときに計測された対象周波数の変位の合計を、x1,1,k、x1,2,k、・・・、xm,n,kを算出する。ここで、kは対象周波数である。
【0026】
すると、図3Bの式(1)のように表すことができる。TFは、各セルにそれぞれ荷重F1,1,k~Fm,n,kの打撃を加えると、各セルで対象周波数kの変位x1,1,k~xm,n,kが生じる場合に、両者の関係を示す伝達関数である。変換関数算出部15は、式(1)が成立するような伝達関数TFを算出する。伝達関数TFが算出できると、変換関数算出部15は、伝達関数TFの逆関数TF-1を演算して、この関数を変換関数TF-1として記憶部16に保存する。変換関数TF-1を用いると、監視窓2の各セルに生じる変位x1,1,k~xm,n,k図3Bの式(2)により、各セルに生じる荷重、言い換えると、各セルに生じる圧力F1,1,k~Fm,n,kを算出することができる。各セルに生じる圧力を算出できると、各セルにマイクロフォンを設けたときに各マイクロフォンがそれぞれF1,1,k~Fm,n,kの音圧を検出したことと同じとみなすことができ、従来の音源推定手法を適用して、音源推定を行うことができる。変換関数算出部15は、対象周波数ごとに、変換関数TF-1を算出して、記憶部16に記録する。
【0027】
(2)風洞試験
事前の振動特性取得試験によって変換関数TF-1が算出できると、風洞試験を行って、検査対象機器3の音源を推定する。検査対象機器3を試験設備1に配置し、風洞試験を行う。その間、偏光カメラ4によって監視窓2を撮影する。画像取得部11は、撮影された画像を記憶部16に記録する。変位分布算出部12は、偏光カメラ4が撮影した時系列の画像に基づいて、監視窓2の時系列の変位分布を算出する。例えば、変位分布算出部12は、図3Aに例示するm×n個のセル別に周波数ごとの時々刻々の変位を算出する(図2のグラフ30B1)。
【0028】
(3)監視窓の圧力分布推定
風洞試験によって、監視窓2のセル別に周波数ごとの時々刻々の変位が算出できると、圧力分布算出部13は、監視窓2の時系列の圧力分布を算出する。このときの各セルに加わる荷重は作用する圧力が均一であると仮定する。圧力分布算出部13は、対象周波数についての時系列の変位分布を抽出して、記憶部16が記憶する変換関数TF-1を読み出し、図3Bの式(2)によって、各セルに加わる時系列の圧力を算出する。圧力分布算出部13は、監視窓2に生じる時系列の圧力分布(各セルの圧力)を算出する。
【0029】
(4)音源推定
監視窓2に生じた時々刻々の圧力分布を算出し、圧力が各セルへ伝搬する時刻差より、音源推定部14が音源推定を行う。例えば、各セルへ音が到着したときの時刻差は各セル間の伝達関数の位相から算出する。(3)で算出した時々刻々の圧力分布の変化を、音の到着の位相遅れによって生じる圧力分布の変化と考え、算出した伝達関数から各セルへ音が到達した時刻を推定する。尚、前記の伝達関数は各セル間の圧力波形から算出されるものである。あるいは、あるセルの圧力が閾値以上となると、その時刻に音がそのセルに到達したとみなしてもよい。これらの方法によって各セルへの音の到達時刻を推定することができると、音源推定部14は、従来の音源推定手法を用いることにより、音源推定を行うことができる。図4に音源推定方法の一例を示す。図4は、監視窓2の一部を上から見た図である。図3Bを参照して説明したようにm×nに分割してできたセルが並んでいる。1つのセルを1つのマイクロフォンとみなす。セル201~204には、検査対象機器3が発した音や風洞試験の風が届き、その圧力により変位が生じる。図示するように、セル202、セル203は、検査対象機器3から発された音Eを受信する。この際、音Eは、セル202、セル203に対し、所定の到来角度θで入射する。ここで、到来角度θは、監視窓2の垂直方向を基準とした音Eの入射角度である。セル202の中心とセル203の中心の距離を距離dとし、セル202が受信する音Eとセル203が受信する音Eとの行路差をd1、音Eの速度をc、セル202へ音波Eが到達した時刻とセル203へ音波Eが到達した時刻の時間差をΔtとする。すると、以下の式(3)が成立する。
Δt・c=d=d・sin(θ)・・・(3)
式(3)をθについて解くことにより、監視窓2のセル203から音源への方向θを算出することができる。方向θが算出できると、非特許文献1等に開示があるように、公知の技術によって、音源分布を推定することができる。例えば、セル202の中心から方向θに伸びる直線とセル203の中心から方向θに伸びる直線と検査対象機器3とで囲まれた範囲を音源分布Sとして推定してもよい。また、ここでは、音源推定の一例として、音波の到来時間差Δtに基づいて音波の到来方向θを推定する方法を説明した。しかし、音源推定の方法は、これに限定されず、他の方法であってもよい。
【0030】
(動作)
次に図5を参照して、音源推定処理の流れを説明する。
図5は、実施形態に係る音源推定処理の一例を示すフローチャートである。
事前に、振動特性取得試験を行って、変換関数算出部15が変換関数TF-1を算出する(ステップS1)。変換関数算出部15は、監視窓2に加わる荷重の位置及び大きさと、それによって生じる監視窓2全体の変位分布との関係を学習し、変位分布が分かれば、その変位分布が生じる場合には、監視窓2のどの部分にどのような大きさが加わっているかを逆推定することができる変換関数TF-1を算出する。変換関数算出部15は、変換関数TF-1を記憶部16に記録する。
【0031】
次に、風洞試験を行って、偏光カメラ4で監視窓2を撮影する(ステップS2)。監視窓2の変位分布の時間的な変化を検出する必要があるため、偏光カメラ4は、監視窓2を連続的に撮影する。画像取得部11は、偏光カメラ4によって撮影された画像を記憶部16に記録する。
【0032】
次に、変位分布算出部12は、監視窓2の変位分布を算出する(ステップS3)。変位分布算出部12は、記憶部16から撮影された画像を読み出して画像解析し、m×nに分割したセルごとに、対象周波数で周期的に色が変化する周波数成分に注目し、注目した周波数成分の変位量の経時的な変化をセルごとに算出する。変位分布算出部12は、時々刻々の式(2)における変位x1,1,k~xm,n,kを算出し、その値を記憶部16へ記録する。
【0033】
次に圧力分布算出部13は、監視窓の圧力分布を算出する(ステップS4)。圧力分布算出部13は、変位分布算出部12によって算出された、時々刻々の変位x1,1,k~xm,n,kを記憶部16から読み出して、ステップS1で算出した変換関数TF-1に代入して、時々刻々のセルごとの圧力F1,1,k~Fm,n,kを算出し、その値を記憶部16へ記録する。
【0034】
次に、音源推定部14が音源推定を行う(ステップS5)。音源推定部14は、時々刻々のセルごとの圧力変化を音圧の変化とみなし、マイクロフォンを用いた従来の音源推定手法を適用して、対象周波数の音源の分布を推定する。出力部17は、推定された音源の分布を表示装置等へ出力する。
【0035】
上記説明したように、本実施形態によれば、複数のマイクロフォンを設置して音圧レベルを計測する代わりに、もともと存在する監視窓2を活用して、1台の偏光カメラ4(複数台でもよい。)によって、監視窓2の透明の板が音圧によって変形する変位の分布を計測することにより音源推定を行う。マイクロフォンを使用せずに、音源の位置、方向、分布などを推定することができるので、風洞試験中であっても、風に影響されることなく音源を推定することができる。また、マイクロフォンの設置場所を新設する必要がなく、設置工事や設備の改修を行うことなく、既存の監視窓2を使って音源を推定することができる。
【0036】
また、試験設備1は、風洞試験設備に限定されない。検査対象機器3が製品として市場に提供される場合、その前に、耐久試験や性能試験などの各種試験が行われる。その場合、窓のついた実験室や試験設備の中に検査対象機器3を配置して、検査対象機器3を稼働させ、動作音が設計通りの位置から発されているかどうか、異音や騒音等が発生しないかどうかを確認することがある。これらの実験室や試験設備には、内部の様子を観察できるように窓が設けられていることが多い。このような場合に、実験室や試験設備を図1の試験設備1、窓を監視窓2として見立てて、偏光カメラ4にて窓を撮影し、音源を推定することにより、音が設計した位置から発されているかどうかを確認することができる。また、異音等が計測される場合には、検査対象機器3のどの部分から異音等が発されているかを推定することができる。
【0037】
更に上記で説明した音源推定を応用して、複数の監視窓を活用した音源推定を行うことができる。図6に監視窓が複数設けられた構造物の一例を示す。水などの比重が大きい物質を格納する容器では、耐久性の観点から大きな窓を設けることができない場合がある。このような容器では複数の小さな窓が設けられていることがある。このような場合、1つ1つの窓を図3Bにおける1つのセルとみなして、変位分布の計測を行い、音源推定を行うことができる。図6の例の場合、監視窓2a~2tが設けられている。監視窓2a~2tを偏光カメラ4で撮影し、各窓を1つのセルとみなして、図1図5を用いて説明した方法で、それぞれの窓ごとに時系列の変位と圧力を算出する。そして、各窓を1つのマイクロフォンとみなして、音源推定を行う。これにより、m×n個の領域に分割しにくいような小さな窓が設けられた構造物についても音源推定を行うことができる。なお、1つ1つの窓が充分に大きい場合、各窓を複数のセルに分割し、セルごとに音圧を算出してもよい。これにより、1つの窓のセル数×全窓数分のマイクロフォンによって音源推定する場合と同様にして音源推定を行うことができる。
【0038】
また、上記では、風洞試験設備、実験室、試験設備など構造物の内部で発生する音の音源を推定することとしたが、本実施形態の音源推定方法は、これらに限定されない。例えば、飛行中の航空機の客席の窓を図6に例示する複数の窓のように扱って、偏光カメラ4で各窓を撮影し、飛行中の航空機の翼(翼は客室の外部に存在する。)から発される音の音源を推定する様な場面についても、本実施形態の音源推定方法を適用することができる。電車や車両についても同様である。例えば、電車や車両の走行中又は停止中に、これらの移動体に設けられた窓を偏光カメラ4で撮影し、移動体の外部から発せられた音の音源を推定してもよい。また、オフィスなどのビルの窓を偏光カメラ4で撮影し、本実施形態の音源推定方法を適用することで、例えば、屋外から騒音がするような場合に、その騒音源を推定するような目的にも使用することができる。また、上記の実施形態では、(1)振動特性取得試験にて、監視窓2の変位分布と圧力分布の関係を示す伝達関数TFを算出し、(2)風洞試験にて監視窓2の変位分布を算出し、(3)監視窓の圧力分布推定にて伝達関数TFの逆関数TF-1を用いて監視窓2の圧力分布を求めることとしたが、以下のように構成してもよい。即ち、(1)振動特性取得試験にて、変換関数算出部15が、偏光カメラ4によって撮影された画像における監視窓2の色彩の変化の分布(例えば、セル(1,1)は赤、セル(1、2)はオレンジ、・・・などのセルごとの色)と圧力分布の関係を示す伝達関数TF´を算出し、(2)風洞試験にて、変位分布算出部12が、監視窓2を撮影した画像の色彩の変化の分布(セルごとの色)を算出し、(3)監視窓の圧力分布推定にて、圧力分布算出部13が、伝達関数TF´の逆関数TF´-1を用いて、監視窓2を撮影した画像の色彩の変化の分布から監視窓2の圧力分布を求めるように構成してもよい。このように構成した場合であっても、(4)音源推定によって、音源の推定が可能である。
【0039】
図7は、実施形態に係る音源推定装置のハードウェア構成の一例を示す図である。コンピュータ900は、CPU901、主記憶装置902、補助記憶装置903、入出力インタフェース904、通信インタフェース905を備える。
上述の音源推定装置10は、コンピュータ900に実装される。そして、上述した各機能は、プログラムの形式で補助記憶装置903に記憶されている。CPU901は、プログラムを補助記憶装置903から読み出して主記憶装置902に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、CPU901は、プログラムに従って、記憶領域を主記憶装置902に確保する。また、CPU901は、プログラムに従って、処理中のデータを記憶する記憶領域を補助記憶装置903に確保する。
【0040】
音源推定装置10の全部または一部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより各機能部による処理を行ってもよい。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、CD、DVD、USB等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ900に配信される場合、配信を受けたコンピュータ900が当該プログラムを主記憶装置902に展開し、上記処理を実行しても良い。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0041】
以上のとおり、本開示に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0042】
<付記>
各実施形態に記載の音圧検出装置、音圧検出システム、音圧検出方法、音源推定方法及びプログラムは、例えば以下のように把握される。
【0043】
(1)第1の態様に係る音圧検出装置(音源推定装置10)は、透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出する変位分布算出部と、前記変位分布算出部が算出した前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる圧力の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、を備える。
これにより、マイクロフォンを設置することなく音圧の分布を検出することができる。さらに、検出できた音圧の分布について、音源推定手法を適用することによって、マイクロフォンを設置することなく音源を推定することができる。
【0044】
(2)第2の態様に係る音圧検出装置(音源推定装置10)は、(1)の音圧検出装置であって、前記変位分布算出部は、時系列に撮影された前記画像に基づいて、前記音の周波数で色が変化する振動成分の変位量を、前記板状の部材を分割してできる領域ごとに算出する。
これにより、偏光カメラが撮影した画像に基づいて、監視窓に生じる変位分布を算出することができる。
【0045】
(3)第3の態様に係る音圧検出装置(音源推定装置10)は、(1)~(2)の音圧検出装置であって、前記変換関数は、前記板状の部材を分割してできる領域(セル)ごとに打撃を加えたときに計測された前記打撃に対する前記領域ごとの変位量の記録と、前記領域ごとの打撃の荷重との関係に基づいて導出された関数である。
これにより、監視窓の変位分布を音圧分布に変換することができる。
【0046】
(4)第4の態様に係る音圧検出装置(音源推定装置10)は、(1)~(3)の音圧検出装置であって、前記圧力分布算出部が算出した音圧の分布を、前記板状の部材の範囲に設置された複数のマイクロフォンによって検出された音圧とみなして、音源推定を行う音源推定部をさらに備える。
これにより、マイクロフォンを用いることなく音源推定を行うことができる。
【0047】
(5)第5の態様に係る音圧検出装置(音源推定装置10)は、透明な板状の部材を撮影する偏光カメラと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記画像に生じる色彩の変化の分布を算出する色彩分布算出部(変位分布算出部12)と、前記色彩分布算出部が算出した前記色彩の変化の分布と、前記画像に生じる色彩の変化の分布から前記板状の部材に加わる音圧の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出する圧力分布算出部と、を備える。
これにより、マイクロフォンを設置することなく音圧の分布を検出することができる。さらに、検出できた音圧の分布に、音源推定手法を適用することによって、マイクロフォンを設置することなく音源を推定することができる。
【0048】
(6)第6の態様に係る音圧検出システム(音源推定システム100)は、前記板状の部材によって構成された1つ又は複数の窓を備える構造物と、(1)~(5)の何れか1つに記載の音圧検出装置と、を備える。
これにより、マイクロフォンを用いることなく音圧の検出を行うことができる。
【0049】
(7)第7の態様に係る音圧検出システム(音源推定システム100)は、(6)の音圧検出システムであって、前記構造物が風洞試験設備、実験室、建物、移動体の何れかである。
窓を備える構造物であれば、(1)~(5)の何れか1つに記載の音圧検出装置を用いて音圧の検出を行うことができる。
【0050】
(8)第8の態様に係る音圧検出方法は、透明な板状の部材を偏光カメラで撮影するステップと、音が発されたときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる圧力の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、を有する。
これにより、マイクロフォンを設置することなく音圧の分布を検出することができる。
【0051】
(9)第9の態様に係る音源推定方法は、透明な板状の部材を偏光カメラで撮影するステップと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる圧力の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、前記音圧の分布を算出するステップで算出された前記音圧の分布を、前記板状の部材が存在する領域に設置された複数のマイクロフォンによって検出された音圧とみなして、音源推定を行うステップと、を有する。
これにより、マイクロフォンを設置することなく音源を推定することができる。
【0052】
(10)第10の態様に係るプログラムは、コンピュータ900に、透明な板状の部材を偏光カメラで撮影した画像を取得するステップと、音が前記板状の部材に到達したときに前記偏光カメラが撮影した画像に基づいて、前記音によって前記板状の部材に生じる変位の分布を算出するステップと、前記変位の分布を算出するステップで算出された前記変位の分布と、前記板状の部材に生じる変位の分布から前記板状の部材に加わる圧力の分布を推定する変換関数と、に基づいて、前記板状の部材に加わる音圧の分布を算出するステップと、を実行させる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・試験設備
2・・・監視窓
3・・・検査対象機器
4・・・偏光カメラ
S・・・音源分布
10・・・音源推定装置
11・・・画像取得部
12・・・変位分布算出部
13・・・圧力分布算出部
14・・・音源推定部
15・・・変換関数算出部
16・・・記憶部
17・・・出力部
900・・・コンピュータ
901・・・CPU
902・・・主記憶装置
903・・・補助記憶装置
904・・・入出力インタフェース
905・・・通信インタフェース
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7