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2023-170543フィルム積層体、フィルム積層体の製造方法、保護具、保護具の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170543
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】フィルム積層体、フィルム積層体の製造方法、保護具、保護具の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/00 20060101AFI20231124BHJP
   A42B 3/20 20060101ALI20231124BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20231124BHJP
   A44B 17/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A41D13/00 102
A42B3/20
A44B99/00 611Z
A44B17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082379
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113424
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 信博
(74)【代理人】
【識別番号】100185845
【弁理士】
【氏名又は名称】穂谷野 聡
(72)【発明者】
【氏名】大石 清和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 卓弥
【テーマコード(参考)】
3B011
3B100
3B107
3B211
【Fターム(参考)】
3B011AB01
3B011AC24
3B100CB01
3B100CC01
3B107CA03
3B107DA07
3B211AB01
3B211AC24
(57)【要約】
【課題】滅菌処理の十分な効果を得ることができ、且つフィルム表面構造の破損リスクもないフィルム積層体を提供する。
【解決手段】フィルム積層体1は、剥離自在に積層された複数のフィルム状部材2と、フィルム状部材2の積層方向に突出し、フィルム状部材2を所定の間隔で保持する柱状の突起部材5を備え、突起部材5の外周面に、所定の間隔でフィルム状部材2が係止する係止部が設けられ、フィルム状部材2は、突起部材5が挿脱自在に挿通する挿通孔4を有し、挿通孔4に突起部材5が挿通し、フィルム状部材2が係止部に係止することにより、フィルム状部材2が所定の間隔で保持されて積層されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
剥離自在に積層された複数のフィルム状部材と、
上記フィルム状部材の積層方向に突出し、上記フィルム状部材を所定の間隔で保持する柱状の突起部材を備え、
上記突起部材の外周面に、上記所定の間隔で上記フィルム状部材が係止する係止部が設けられ、
上記フィルム状部材は、上記突起部材が挿脱自在に挿通する挿通孔を有し、
上記挿通孔に上記突起部材が挿通し、上記フィルム状部材が上記係止部に係止することにより、上記フィルム状部材が所定の間隔で保持されて積層されているフィルム積層体。
【請求項2】
上記係止部は、上記突起部材の周方向にわたって突出する凸部であり、上記フィルム状部材が上記凸部の間に係止する請求項1に記載のフィルム積層体。
【請求項3】
複数の上記凸部を有し、上記突起部材の先端側の上記凸部から根元側の上記凸部にかけて順次拡径し、
上記挿通孔は、上記フィルム状部材の係止位置における上記凸部径に応じた開口径を有する請求項2に記載のフィルム積層体。
【請求項4】
上記凸部は、円柱状、リング状、又は球状である請求項2又は3に記載のフィルム積層体。
【請求項5】
上記係止部は、上記突起部材の周方向にわたって形成された溝部であり、上記フィルム状部材が上記溝部に係止する請求項1に記載のフィルム積層体。
【請求項6】
少なくとも上記突起部材の先端部に球状の上記凸部が形成されている請求項2,3,5のいずれか1項に記載のフィルム積層体。
【請求項7】
上記フィルム状部材は、上記挿通孔の周囲に一又は複数のスリットが形成されている請求項1~3,5のいずれか1項に記載のフィルム積層体。
【請求項8】
上記挿通孔は、上記フィルム状部材の外縁部に形成されている請求項1~3,5のいずれか1項に記載のフィルム積層体。
【請求項9】
上記フィルム状部材は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が設けられている請求項1~3,5のいずれか1項に記載のフィルム積層体。
【請求項10】
挿通孔を有するフィルム状部材を形成する工程と、
上記フィルム状部材が係止する係止部が設けられた突起部材を形成する工程と、
上記フィルム状部材の上記挿通孔に、上記突起部材を挿通し、上記係止部に上記フィルム状部材を係止させ、複数の上記フィルム状部材を所定の間隔で保持させて積層する工程を有するフィルム積層体の製造方法。
【請求項11】
複数の上記フィルム状部材を所定の間隔で保持させて積層した状態で、滅菌処理する工程を有する請求項10に記載のフィルム積層体の製造方法。
【請求項12】
使用者の顔面又は目の周囲にフィルム積層体が装着された保護具において、
上記フィルム積層体は、上記請求項1~3,5のいずれか1項に記載のものである保護具。
【請求項13】
上記保護具は、防護服、フェースシールド、アイシールド、ヘルメットのいずれかである請求項12に記載の保護具。
【請求項14】
使用者の顔面又は目の周囲にフィルム積層体が装着された保護具の製造方法において、
フィルム積層体を形成する工程と、
フィルム積層体を保護具に装着する工程とを有し、
上記フィルム積層体は、上記請求項1~3,5のいずれか1項に記載のものである保護具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、フィルム状部材を所定の間隔で複数枚積層したフィルム積層体、フィルム積層体の製造方法、フィルム積層体を用いた保護具、保護具の製造方法に関する。
に関する。
【背景技術】
【0002】
医療従事者の職業感染の防止手段として個人用保護具が多く使用されている。特に血液や体液への暴露を防ぐためのフェースシールドや防護服等の保護具は検査や手術時に使用され、血液媒介病原体(HIV、HBV、HCV)やコロナウイルス(SARS-CoV-2等)による職業感染の予防に役立っている。
【0003】
しかし、この種の保護具は、検査中や手術中に患者から飛散した血液や体液等でその表面が汚れることがある。このように汚染物が飛来する環境では、当該汚染物との接触を避けつつ速やかに視界の回復を図ることが求められる。
【0004】
また、2輪車や4輪車の自動車のオートレースの競技に用いられるヘルメットのシールドや、塗装作業の際に用いられる塗装用保護眼鏡等においても、表面が汚れて視界が妨げられことが度々発生するという同様の問題を有する。
【0005】
このような問題を解決するために、従来、ヘルメットのシールドや塗装用保護眼鏡の表面に簡単に剥離可能な保護フィルムを複数枚積層しておき、汚れによって視界が妨げられた際には、最上層の保護フィルムを汚れと共に剥離し視界を回復させることが行われている。この種の技術について、例えば特許文献1では、ヘルメットのシールド部分を覆うように複数のシート状保護カバー、即ち使い捨てのバイザーを貼り付けたヘルメットのシールド部分の保護装置が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のように保護具を単なる保護フィルムの積層構造とすると、積層した各層間における界面で反射が生じるなどする。また、単純に積層枚数の増加に伴い透過性が低下する等の問題がある。
【0007】
一方、可視光波長以下のピッチを備えたモスアイ構造体の光学素子、フィルムの低反射率特性を利用して視認性に優れる保護具も提案されている(特許文献2)。
【0008】
特許文献2に記載の積層体は、図21図22に示すように、基体の少なくとも一方の面に可視光波長以下のピッチからなる凹凸によるモスアイ構造体が設けられた複数のフィルム状部材を備え、フィルム状部材の少なくとも端部において粘着層を介して固定化されることにより、剥離可能に積層されている。図21に示す積層体は、粘着層がフィルム状部材の端部にのみ設けられている。また、図22に示す積層体は、粘着層がフィルム状部材の全面にわたり設けられている。
【0009】
モスアイ構造体を備えたフィルム状部材を積層することにより、反射率の高まりや透過率の低下を防止し、視認性を確保することができる。また、積層体表面が血液や体液によって汚染されたり、汚れによって視界が妨げられたりした際には、最上層のフィルム状部材を汚れと共に剥離し視界を回復させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000-192322号公報
【特許文献2】特開2015-57317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このようなフィルム状部材を積層させた保護具を医療用途で使用する場合、各フィルム状部材の表面をガス滅菌処理等により滅菌処理することが行われている。そして、汚染された最上層のフィルム状部材を剥がすと、新しい無菌表面を最外面に露出させることが可能となる。
【0012】
しかし、フィルム状部材を粘着層によって積層固定した積層体を使用した保護具では、ガス等による滅菌処理を行なう場合、粘着層で接合されている部分においては各フィルム状部材表面が露出されないので滅菌ガス等が流入することができず、滅菌処理がなされなかった。
【0013】
図21に示す構成では、粘着層の無いフィルム中央部は滅菌効果を奏し得るが、粘着層が設けられたフィルム外縁部は滅菌処理ができない。また、図21に示す構成でも、粘着層がフィルムの外周を全て覆う場合は、粘着層に囲まれるフィルム表裏面は滅菌処理されない。図22に示す構成では、積層フィルムの最表面及び最裏面のみ滅菌処理が施され、粘着層が介在するフィルム表裏面は滅菌処理ができない。
【0014】
したがって、汚染された最上層のフィルム状部材を剥がすと、部分的に滅菌処理が施されていないフィルム状部材や全面にわたって滅菌処理が施されていないフィルム状部材が露出することとなり、滅菌処理の十分な効果を得ることができなかった。
【0015】
また、フィルム表面にモスアイ構造を有する透明積層体の場合に粘着剤を用いた積層設計では、粘着力によっては各フィルム状部材を剥がす際にモスアイ構造を破壊するリスクも懸念される。
【0016】
そこで、本技術は、滅菌処理の十分な効果を得ることができ、且つフィルム表面構造の破損リスクもないフィルム積層体、フィルム積層体の製造方法、保護具、保護具の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した課題を解決するために、本技術に係るフィルム積層体は、剥離自在に積層された複数のフィルム状部材と、上記フィルム状部材の積層方向に突出し、上記フィルム状部材を所定の間隔で保持する柱状の突起部材を備え、上記突起部材の外周面に、上記所定の間隔で上記フィルム状部材が係止する係止部が設けられ、上記フィルム状部材は、上記突起部材が挿脱自在に挿通する挿通孔を有し、上記挿通孔に上記突起部材が挿通し、上記フィルム状部材が上記係止部に係止することにより、上記フィルム状部材が所定の間隔で保持されて積層されているものである。
【0018】
また、本技術に係るフィルム積層体の製造方法は、挿通孔を有するフィルム状部材を形成する工程と、上記フィルム状部材が係止する係止部が設けられた突起部材を形成する工程と、上記フィルム状部材の上記挿通孔に、上記突起部材を挿通し、上記係止部に上記フィルム状部材を係止させ、複数の上記フィルム状部材を所定の間隔で保持させて積層する工程を有するものである。
【0019】
また、本技術に係る保護具は、使用者の顔面又は目の周囲にフィルム積層体が装着された保護具において、上記フィルム積層体は、上記記載のものである。
【0020】
また、本技術に係る保護具の製造方法は、使用者の顔面又は目の周囲にフィルム積層体が装着された保護具の製造方法において、フィルム積層体を形成する工程と、フィルム積層体を保護具に装着する工程とを有し、上記フィルム積層体は、上記記載のものである。
【発明の効果】
【0021】
本技術によれば、フィルム積層体は、各フィルム状部材の表裏全面を滅菌ガスに晒すことが可能となり、フィルム状部材を剥離すると、常に表裏全面が滅菌処理されたフィルム状部材を露出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本技術が適用されたフィルム積層体の分解斜視図である。
図2図2は、突起部材を示す側面図であり、(A)は円柱状の凸部を設けたもの、(B)はリング状の凸部を設けたもの、(C)は球状の凸部を設けたもの、(D)は凸部を先端側から根元側にかけて順次拡径させたもの、(E)は周方向にわたって溝部を凹設したものを示す。
図3図3は、円柱状の凸部を形成した突起部材の寸法例を示した側面図である。
図4図4は、リング状の凸部を設けた突起部材にフィルム状部材を係止させた状態を示す側面図である。
図5図5は、略矩形状のフィルム状部材の上辺に沿って等間隔で4つの挿通孔を配列した構成例を示す図である。
図6図6は、挿通孔の周囲に形成したスリットを示す斜視図である。
図7図7は、本技術が適用されたフィルム積層体を構成するフィルム状部材の断面図である。
図8図8は、本技術が適用されたフィルム積層体を構成する他のフィルム状部材の断面図である。
図9図9は、本技術が適用されたフィルム積層体を構成する他のフィルム状部材の斜視図である。
図10図10は、モスアイ構造体からなる防反射層のパターンが形成された転写用ロール原盤の斜視図である。
図11図11は、モスアイ構造体からなる防反射層を形成する工程を示す断面図であり、(A)はロール原盤に基材の転写材料が塗布された面を密着させた状態、(B)は片面にモスアイ構造体が転写されたフィルム状部材、(C)は片面にモスアイ構造体が転写されたフィルム状部材の他方の面に転写材料を塗布し、ロール原盤に密着させた状態、(D)は両面にモスアイ構造体が転写されたフィルム状部材を示す。
図12図12は、保護具の一例として示す医療用防護服を示す外観斜視図である。
図13図13は、フィルム積層体の一構成例を示す断面図である。
図14図14は、フィルム積層体の他の構成例を示す断面図である。
図15図15は、フィルム積層体を保護具に装着する工程の一例を示す断面図である。
図16図16は、フィルム積層体を保護具に装着する工程の他の例を示す断面図である。
図17図17は、フィルム積層体を保護具に装着する工程の他の例を示す断面図である。
図18図18は、フック部材によってフィルム状部材を積層したフィルム積層体サンプルの構成を説明するための図である。
図19図19は、粘着剤の全面貼りによりフィルム状部材を積層したフィルム積層体サンプルの構成を説明するための図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
図20図20は、粘着剤をフィルム状部材の一側縁部に設けて積層させてフィルム積層体サンプルを示す図であり、(A)は平面図であり、(B)は断面図である。
図21図21は、フィルム状部材の端部に設けられた粘着層により複数のフィルム状部材が積層された積層体を示す断面図である。
図22図22は、フィルム状部材の全面に設けられた粘着層により複数のフィルム状部材が積層された積層体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本技術が適用されたフィルム積層体、フィルム積層体の製造方法、保護具、保護具の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本技術は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0024】
[フィルム積層体]
図1に示すように、本技術が適用されたフィルム積層体1は、剥離自在に積層された複数のフィルム状部材2と、フィルム状部材2の積層方向に突出し、フィルム状部材2を所定の間隔で保持する柱状の突起部材5を備える。図2に示すように、突起部材5の外周面には、上記所定の間隔でフィルム状部材2が係止する係止部が設けられている。フィルム状部材2は、突起部材5が挿脱自在に挿通する挿通孔4を有する。そして、突起部材5に挿通孔4を挿通させると、フィルム状部材2は係止部に係止する。これにより、フィルム状部材2が所定の間隔で保持されて積層される。
【0025】
フィルム状部材2は、可撓性を有する透明のシートである。複数のフィルム状部材2は、それぞれ挿通孔4が形成され、挿通孔4に突起部材5が挿通することにより、複数のフィルム状部材2が積層される。各フィルム状部材2は、突起部材5の外周面に設けられた係止部に係止され、所定の間隔で保持される。これにより複数のフィルム状部材2が所定の距離を隔てて積層されるとともに、各フィルム状部材2の表裏全面が露出されることとなる。
【0026】
したがって、フィルム積層体1は、各フィルム状部材2の表裏全面を滅菌ガスに晒すことが可能となり、フィルム状部材2を剥離すると、常に表裏全面が滅菌処理されたフィルム状部材2を露出させることができる。
【0027】
そして、医療用途においては、検査中や手術中に患者から飛散した血液や体液等で表面が汚れた場合には、最上層のフィルム状部材2を剥離することで、汚染物との接触を避けつつ速やかに視界の回復を図ることができる。このとき、フィルム積層体1は、剥離されることにより現れたフィルム状部材2の全面が滅菌処理されているため、患者や被検査者、他の医療者等に対する感染リスクを低減することができる。また、剥離されたフィルム状部材2の裏面全面も滅菌処理されているため、剥離時や廃棄時において、患者や被検査者、医療者等に対して、滅菌処理がなされていない部位が晒されることもない。
【0028】
[突起部材]
フィルム状部材2を支持する突起部材5は、柱状をなし、例えば図1に示すように、矩形板状のベース7の両端付近に立設されることにより、フィルム状部材2の積層方向に突出して設けられている。突起部材5は、公知のエンジニアリングプラスチック等によって成形することができる。成形手法は、金型成形や切削等、公知の成形手法を取り得る。また、突起部材5は、ベース7と一体に形成、あるいは別々の部品として形成された後、接着等により接続されることにより形成することができる。
【0029】
[係止部]
また、突起部材5は、外周面に所定の間隔でフィルム状部材2を係止させる係止部が形成されている。係止部は、突起部材5の周方向にわたって突出する複数の凸部9として形成され、突起部材5を挿通したフィルム状部材2の挿通孔4が凸部9の間に係止される。これにより、フィルム状部材2は、突起部材5の立設方向への移動が規制されるとともに、所定の間隔で保持される。
【0030】
凸部9の形状は、フィルム状部材2を係止することができれば特に制限は無く、例えば図2(A)に示すように、円柱状としてもよい。係止部は、円柱状の凸部9aを所定間隔で複数設け、凸部9aの間にフィルム状部材2を係止させることにより、フィルム状部材2を保持することができる。フィルム状部材2の間隔は、突起部材5の立設方向にわたる凸部9aの幅で規定される。
【0031】
図3は、凸部9aを形成した突起部材5の寸法例を示した側面図である。図3に示す突起部材5では、厚さ0.5mmのフィルム状部材2を1.5mm間隔で積層する。なお、図3に示すように、凸部9aは、側面を円弧状とした円環形状としてもよい。これにより、フィルム状部材2の挿脱をスムーズに行うことができ、且つ挿入時の破損を防止することができる。また、係止部の側面が丸みをおびることで、使用者や他の部材に対する安全性を高め、且つ安心感を醸し出すことができる。
【0032】
また、図2(B)に示すように、凸部9の形状は、リング状としてもよい。係止部は、リング状の凸部9bを複数設けることにより、凸部9bよりも突起部材5の根元側あるいは先端側への移動を規制したり、2つの凸部9bの間に係止して移動を規制したりすることができる。図2(B)に示す例では、3枚のフィルム状部材2を保持する場合に、突起部材5の最も根元側に形成された凸部9bによって最下層のフィルム状部材2の突起部材5の先端側への移動を規制し、突起部材5の最も先端側に形成された凸部9bによって最上層のフィルム状部材2の突起部材5の根元側への移動を規制し、中間に設けられた一対の凸部9bによって中間層のフィルム状部材2の突起部材5の根元側及び先端側への移動を規制する。フィルム状部材2の間隔は、突起部材5の立設方向にわたる凸部9bの間隔で規定される(図4参照)。
【0033】
あるいは図2(C)に示すように、凸部9の形状は、球状としてもよい。係止部は、球状の凸部9cを複数設け、凸部9cの間にフィルム状部材2を係止させることにより、フィルム状部材2を保持することができる。フィルム状部材2の間隔は、凸部9cの直径及び突起部材5の立設方向にわたる凸部9cの間隔で規定される。球状の凸部9cを設けることにより、フィルム状部材2の挿脱をスムーズに行うことができる。
【0034】
各フィルム状部材2の間隔は、各フィルム状部材2の密着を防止し表裏全面を滅菌ガスに晒す等の処理が可能であれば特に制限は無く、例えば0.1mm以上が好ましい。また、間隔が広すぎると保護具21の使用の際に異物が混入するリスクがあがるため、例えば5mm以下が好ましく、可及的に狭くすることがより好ましい。また、各フィルム状部材2の間隔は、一定でもよく、異なっていてもよい。例えば最上層のフィルム状部材2と2枚目のフィルム状部材2の間隔と、2枚目のフィルム状部材2と最下層のフィルム状部材2の間隔が異なっていてもよい。
【0035】
また、突起部材5は、先端部に球状の凸部9cを設けてもよい。先端部に球状の凸部9cを設けることにより、フィルム状部材2の挿脱をスムーズに行うことができ、且つ挿入時の破損を防止することができる。また、突起部材5の先端が丸みをおびることで、使用者や他の部材に対する安全性を高め、且つ安心感を醸し出すことができる。
【0036】
また、図2(D)に示すように、突起部材5は、複数の凸部9を設けるとともに、先端側の凸部9から根元側の凸部9にかけて順次拡径し、フィルム状部材2に設けられた挿通孔4は、当該フィルム状部材2の係止位置における凸部9の径に応じた開口径を有するようにしてもよい。これにより、最上層のフィルム状部材2や中間層のフィルム状部材2が、所定の係止位置より根元側に移動することを防止することができる。また、フィルム状部材2の積層順が決まっている場合には、少なくとも最上層のフィルム状部材2や中間層のフィルム状部材2が、所定の係止位置より根元側に係止されることを防止することができる。
【0037】
なお、係止部は、凸部9を設けるほかにも、図2(E)に示すように、突起部材5の周方向にわたって凹設される複数の溝部9dとして形成され、突起部材5が挿通したフィルム状部材2の挿通孔4の周囲が溝部9dに係止されるようにしてもよい。また、係止部は、上述した凸部9a~9cや溝部9dを、適宜組み合わせて構成してもよい。
【0038】
[フィルム状部材]
フィルム状部材2は、可撓性を有する透明のシートである。フィルム状部材2の形状は特に制限はなく、例えば図1に示すような略矩形状とする等、適用される保護具21等に応じて適宜選択することができる。複数のフィルム状部材2は、それぞれ突起部材5が挿通するとともに係止部に係止される挿通孔4が形成されている。
【0039】
突起部材5及び挿通孔4は、安定してフィルム状部材2を所定の距離を隔てて保持できるとともに、使用時においてフィルム状部材2内の使用者の視野と干渉せず、また剥離操作が容易に行えるような位置及び数で設けられる。このような観点から、挿通孔4は、フィルム状部材2の外縁部に設けることが好ましく、図1に示すように、例えば略矩形状に形成されたフィルム状部材2の上辺の両端側に形成したり、図5に示すように、略矩形状のフィルム状部材2の上辺に沿って等間隔で複数(例えば4つ)配列したりすることが好ましい。また、挿通孔4は、略矩形状のフィルム状部材2の上辺以外にも、下辺や側縁に形成してもよく、これらの一又は複数の個所に形成し若しくは複数配列してもよい。突起部材5も挿通孔4の形成位置に応じて形成、配列される。突起部材5及び挿通孔4の形成位置や数は上述したものに限られず、保護具21やフィルム積層体1の装着の構成、用途等に応じて適宜設定される。
【0040】
また、図6に示すように、フィルム状部材2は、挿通孔4の周囲に一又は複数のスリット10を形成してもよい。フィルム状部材2は、挿通孔4に突起部材5の係止部が圧入されることから、スリット10を形成することにより、フィルム状部材2の挿脱をよりスムーズに行うことができる。
【0041】
フィルム状部材2は、外縁部に剥離用のタブ20を設けてもよい。タブ20は、フィルム状部材2を剥離する際に把持される部位である。フィルム状部材2は、タブ20に剥離するフィルム状部材2の識別機能を付与することが好ましい。これにより、最上層のフィルム状部材2から剥離するよう促すことができ、誤って中間層のフィルム状部材2をその上層のフィルム状部材2とともに剥離することを防止することができる。
【0042】
このような最上層のフィルム状部材2を識別させる識別手段としては、タブ20の大きさを最上層から順次小さくしていくことが挙げられる。すなわち、図1に示すように、最上層のフィルム状部材2に形成するタブ20をそれよりも下層のフィルム状部材2のタブ20よりも大きく形成し、下層のフィルム状部材2のタブが隠れるようにすることで、常に最上層のフィルム状部材2のタブ20のみを把持しやすくなり、誤ってそれより下層のフィルム状部材2のタブ20を把持することを防止することができる。
【0043】
また、例えばタブ20の形成位置をフィルム状部材2毎に変えてもよい。例えば、最上層のフィルム状部材2は正面視で右側縁にタブ20を形成し、中間層のフィルム状部材2は正面視で左側縁にタブ20を形成する。これにより、初めに右側縁のタブ20を把持することで最上層のフィルム状部材2を剥離し、誤って中間層のフィルム状部材2まで剥離することを防止することができる。
【0044】
その他にも、フィルム状部材2毎にタブ20の色を変える、凹凸マークや開口、切り欠き等の物理的な特徴を加工するといった方法により識別させてもよい。また、上述した識別手段を組み合わせてもよい。
【0045】
なお、フィルム積層体1は、各層を構成するフィルム状部材2が全て同じものであってもよく、機能や光学特性が異なるものであってもよい。この点は、フィルム積層体1が適用される保護具21の用途等に応じて適宜選択される。また、機能や特性が異なるフィルム状部材2を積層する場合における積層順も保護具21の用途等に応じて適宜設定される。
【0046】
[モスアイ構造]
ここで、フィルム状部材2は、可撓性を有する透明基材の少なくとも一方の面に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体が設けられ、これにより反射防止機能を備える光学素子とすることが好ましい。以下では、この反射防止機能を有する微細な凹凸構造体を「モスアイ構造体」という。なお、フィルム積層体1は、モスアイ構造体を備えたフィルム状部材2を用いることにより、このフィルム状部材2を積層させることによっても視認性を損なうことがない。
【0047】
図7に示すように、フィルム状部材2は、基体11の両面に基底層13を介して可視光の波長以下のピッチで構造体12が設けられ、これにより、対向する表面及び裏面の両面に反射防止機能を有している。複数の構造体12は、基体11の表面及び裏面において、基底層13の上に複数の列をなすように規則的に配置されている。すなわち、フィルム状部材2の表面及び裏面は複数の構造体12からなるモスアイ構造体による凹凸形状を有する。なお、フィルム状部材2は、基体11の表面のみに構造体12を設けてもよい。
【0048】
フィルム状部材2は、このような凹凸形状をフィルム状部材2の表面及び裏面に設けることで、波長依存性が少なく、視認性の優れた光学調整機能を、フィルム積層体1が装着された保護具21に付与することができる。即ち、視認性に優れた保護具21を実現することに寄与することができる。
【0049】
ここで、「光学調整機能」とは、透過特性や反射特性の光学調整機能を示す。光学素子としてのフィルム状部材2は、例えば可視光に対して透明性を有しており、その屈折率nは、好ましくは1.30以上2.00以下、より好ましくは1.34以上2.00以下の範囲内であることが好ましい。但し、これには限定されない。
【0050】
なお、構造体12の屈折率は、基体11の屈折率と同様又は略同様であることが好ましい。内部反射を抑制し、コントラストを向上できるからである。
【0051】
図7では、構造体12が基底層13を介して基体11の表裏面に形成される例を示したが、この基底層13は、基体11に対する構造体12の密着性を向上させる役割を担っている。この場合、基底層13は、構造体12の底面側に当該構造体12と一体成形される光学層であって、透明性を有しており、構造体12と同様のエネルギー線硬化性樹脂組成物などを硬化することにより形成されてよい。
【0052】
また、フィルム積層体1は、図8に示すように、基底層13を有せず、基体11の上に複数の構造体12によるモスアイ構造が直接形成されたフィルム状部材2を用いてもよい。
【0053】
さらに、フィルム積層体1は、図9に示すように、基体と構造体とが、一体成形されたフィルム状部材2を用いてもよい。図9に示すフィルム状部材2は、基体11の両面に構造体12が一体成形されている。
【0054】
[基体]
ここで、基体11について更に説明する。基体11は、例えば、透明性を有する透明基材である。基体11の材料としては、例えば、透明性を有するプラスチック材料を主成分とするものが挙げられるが、これらの材料に特に限定されるものではない。
【0055】
基体11としてプラスチック材料を用いる場合、プラスチック材料の表面の表面エネルギー、塗布性、すべり性、平面性などをより改善するために、表面処理により図示しない下塗り層を更に設けるようにしてもよい。この下塗り層としては、例えば、オルガノアルコキシメタル化合物、ポリエステル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンなどが挙げられる。また、下塗り層を設けるのと同等の効果を得るために、基体11の表面に対してコロナ放電処理、UV照射処理などを行うようにしてもよい。
【0056】
基体11がプラスチックフィルムである場合、当該基体11は、例えば、上述の樹脂を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で得ることができる。基体11の厚さは、フィルム状部材2の用途に応じて適宜選択することが好ましく、例えば10μm以上500μm以下程度であってよい。基体11の形状としては、例えば、フィルム状、プレート状等を挙げることができるが、特にこれら形状に限定されるものではない。なお、フィルムにはシートが含まれるものとする。
【0057】
基体11の材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート-スチレン共重合体、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス等が挙げられるが、これらには限定されない。
【0058】
[構造体]
次に、構造体12について説明する。一般に、可視光の波長帯域は360nm~830nmであるが、この実施形態では、構造体12を可視光の波長帯域以下のサイズで規則配列している。かかる観点から、構造体12の配置ピッチは350nmを超えないものとする。構造体12は、錐体状、柱状、針状など、種々の形状でよい。
【0059】
構造体12は、後述するように、基体11に塗布されたエネルギー線硬化性樹脂組成物などの転写材料36に、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤露光装置を用いてパターンが転写された後、硬化されることにより形成される。
【0060】
転写材料36の硬化物は、親水性を有していても良い。転写材料36は、親水性を有する官能基を1種以上含んでいることが好ましい。このような親水性を有する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、およびカルボニル基などがあげられる。
【0061】
また、構造体12を形成するエネルギー線硬化性樹脂生成物は、基体11の両面で異なる物性を持っても良い。例えば、使用の用途によって、撥水性、親水性を使い分けることにより、防曇などの機能を特定の面に持たせることができる。
【0062】
エネルギー線硬化性樹脂組成物としては、紫外線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。また、エネルギー線硬化性樹脂組成物が、必要に応じてフィラーや機能性添加剤などを含んでいてもよい。
【0063】
紫外線硬化性樹脂組成物は、例えばアクリレート及び開始剤を含んでいる。
【0064】
そして、紫外線硬化性樹脂組成物は、例えば単官能モノマー、二官能モノマー、多官能モノマー等を含み、具体的には、以下に示す材料を単独又は複数混合したものである。
【0065】
即ち「単官能モノマー」としては、例えば、カルボン酸類(アクリル酸)、ヒドロキシ類(2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート)、アルキル又は脂環類のモノマー(イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)、その他機能性モノマー(2-メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、2-エトキシエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、ベンジルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N-イソプロピルアクリルアミド、N,N-ジエチルアクリルアミド、N-ビニルピロリドン、2-(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート、3-パーフルオロヘキシル-2-ヒドロキシプロピルアクリレート、3-パーフルオロオクチル-2-ヒドロキシプロピル-アクリレート、2-(パーフルオロデシル)エチル-アクリレート、2-(パーフルオロ-3-メチルブチル)エチルアクリレート)、2,4,6-トリブロモフェノールアクリレート、2,4,6-トリブロモフェノールメタクリレート、2-(2,4,6-トリブロモフェノキシ)エチルアクリレート)、2-エチルヘキシルアクリレートなどを挙げることができる。
【0066】
「二官能モノマー」としては、例えば、トリ(プロピレングリコール)ジアクリレート、トリメチロールプロパン-ジアリルエーテル、ウレタンアクリレートなどを挙げることができる。
【0067】
「多官能モノマー」としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレートなどを挙げることができる。
【0068】
なかでも、転写材料36を構成する好ましい樹脂組成物としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルモルフォリン、グリセロールアクリレート、ポリエーテル系アクリレート、N-ビニルホルムアミド、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクトン、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、脂肪族ウレタンオリゴマー、ポリエステルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0069】
「開始剤」としては、例えば、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オンなどを挙げることができる。
【0070】
「フィラー」としては、例えば、無機微粒子および有機微粒子のいずれも用いることができる。無機微粒子としては、例えば、SiO2、TiO2、ZrO2、SnO2、Al23などの金属酸化物微粒子を挙げることができる。
【0071】
「機能性添加剤」としては、例えば、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などを挙げることができる。
【0072】
構造体12として、微細な凹凸構造体からなるモスアイ構造体を形成することにより、フィルム積層体1は、高度な反射防止機能を有する。ここで、フィルム積層体1の防反射性能は、表裏面を合わせて5%以下、好ましくは1%以下、更に好ましくは0.5%以下である。手術時の光源の無影灯は100000lx以上の照度があり、これらの反射光は数%でも眩しく感じられるため、できるだけ反射を抑えることが求められる。そして、構造体12として透明の基体11に可視光の波長以下のピッチで複数の構造体を構成したモスアイ構造体からなる防反射層を備えたフィルム積層体1は、波長依存や角度依存が少なく、防反射性能が高いことから、医療用のフェースシールド、アイシールド、防護服として好適に用いることができる。
【0073】
また、フィルム積層体1は、モスアイ構造体からなる防反射層を構成する可視光の波長以下のピッチの複数の構造体を、親水性を有する樹脂で構成することにより、防曇性を付加することができる。
【0074】
さらに、フィルム積層体1は、透明の基体11の両面にモスアイ構造体からなる防反射層を構成することにより、さらに優れた防反射性能を付与することができる。
【0075】
[フィルム状部材の製造工程]
次いで、モスアイ構造体が形成されたフィルム状部材2の製造工程について説明する。フィルム状部材2は、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤露光装置を用いてパターンが転写されることによりモスアイ構造体が形成される。
【0076】
[ロール原盤]
図10に示すように、ロール原盤41は、例えば、円柱状または円筒状の形状を有し、その円柱面または円筒面が基体表面に複数の構造体12を成形するための成形面とされる。この成形面には、例えば、ドライエッチング、ウエットエッチング等により所定の構造体42が2次元配列されている。構造体42は、例えば、成形面に対して凹状または凸状を有している。ロール原盤41の材料としては、例えばガラスを用いることができるが、この材料に特に限定されるものではない。
【0077】
ロール原盤41の成形面に配置された複数の構造体42と、上述の基体11の表面に配置された複数の構造体12とは、反転した凹凸関係にある。すなわち、ロール原盤41の構造体42の形状、配列、配置ピッチなどは、基体11の構造体12と同様である。
【0078】
[転写工程1]
図11(A)に示すように、基体11は一面に転写材料36が塗布された後、この転写材料36が塗布された面が、モスアイ構造体に応じたパターンが形成されたロール原盤41に密着される。次いで、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させた後、硬化した転写材料36と一体となった基体11を剥離する。これにより、図11(B)に示すように、複数の構造体12が基体11の片面に形成されたフィルム状部材2が得られる。この際、必要に応じて、構造体12と基体11との間に基底層13をさらに形成するようにしてもよい。
【0079】
エネルギー線源37としては、電子線、紫外線、赤外線、レーザー光線、可視光線、電離放射線(X線、α線、β線、γ線など)、マイクロ波、または高周波などエネルギー線を放出可能なものであればよく、特に限定されるものではない。
【0080】
[転写工程2]
複数の構造体12が基体11の両面に形成されたフィルム状部材2を得る場合は、さらに、図11(C)に示すように、モスアイ構造体用のロール原盤41と、片面に構造体が形成された基体11の反対側の表面上に塗布された転写材料36とを密着させた後、紫外線などのエネルギー線をエネルギー線源37から転写材料36に照射して転写材料36を硬化させる。次いで、硬化した転写材料36と一体となった基体11を剥離する。これにより、図11(D)に示すように、複数の構造体12が基体11の両面に形成されたフィルム状部材2が得られる。この際、必要に応じて、構造体12と基体11との間に基底層13をさらに形成するようにしてもよい。
【0081】
この転写工程2で転写材料36として使用する樹脂組成物は前述の転写工程1と同様とすることができる。
【0082】
なお、転写工程1、または転写工程2までで得たフィルム状部材2の表面に保護フィルムを貼合しても良い。これにより、フィルム状部材2は、構造体12を、以降の工程や輸送などで破壊することを防ぐことが出来る。
【0083】
[形状形成工程]
上記で得られたフィルム状部材2は、装着する保護具21に応じて所定の形状に裁断するとともに、上述した挿通孔4が形成され、適宜スリット10の形成やタブ20への加工等が施される。挿通孔4やタブ20の加工は数値制御された切削加工機やレーザー加工装置、打ち抜きプレス装置などが使用可能である。打ち抜きプレスを使用すると挿通孔4の形成と所定形状への裁断が一つの工程で行えることから好適である。
【0084】
[積層工程]
次いで、突起部材5をフィルム状部材2の挿通孔4に挿通することによりフィルム状部材2を積層する。フィルム状部材2の層数は複数層であれば特に制限は無く、保護具の用途に応じて設定することができる。ただし、層数を重ねるほど光学特性への影響が大きくなるため、明瞭な視界が求められる用途等においては層数は少ないほうがよい。また、医療用途では、衛生面を重視してフィルム積層体1や保護具21全体がディスポーザブルとなるケースもあるため、積層枚数は2~3層が好ましい。積層方法は、上述したように、最下層のフィルム状部材2から順に挿通孔4を突起部材5に挿通させる。各フィルム状部材2は、係止部によって所定の距離を隔てて積層されるとともに、表裏全面が露出される。これによりフィルム積層体1を得る。
【0085】
[滅菌工程]
次いで、フィルム積層体1の滅菌処理を行う。滅菌処理には、エチレンオキシドガス等を用いたガス滅菌や、ガンマ線等を照射する放射線滅菌を使用できる。フィルム積層体1は、各フィルム状部材2間に所定の隙間が設けられることにより表裏全面が露出されている。したがって、全てのフィルム状部材2の全面を滅菌ガスに曝すことが可能となる。さらに、フィルム積層体1は、エチレンオキシドガス等の滅菌ガスが透過できない材料を用いてフィルム状部材2を形成した場合にも、全面を十分に滅菌することができる。
【0086】
なお、滅菌処理は、フィルム積層体1を形成した後、後述する保護具21へ装着する前に行うが、保護具21へ装着した後に保護具21とともに行ってもよく、また、その両方のタイミングで行ってもよい。
【0087】
フィルム積層体1の使用時には、最上層のフィルム状部材2が汚損したことにより剥離すると、その下層のフィルム状部材2の全面が露出する。新たに露出したフィルム状部材2は、全面が滅菌処理されているため、患者や被検査者、他の医療者等に対する感染リスクを低減することができる。
【0088】
また、フィルム状部材2の剥離は、突起部材5から挿通孔4を外すのみで可能となるため、フィルム状部材2に形成されているモスアイ構造を破損するリスクもない。この点、粘着材でフィルム状部材2間を接合する積層構造では、剥離時に粘着層とフィルム状部材2の界面破壊や粘着層間の凝集破壊といった機械的な破壊を伴うため、接合力によってはモスアイ構造を破損し、視界に悪影響を及ぼすリスクが生じる。また、粘着層残渣の飛散や粘着層からのアウトガスの発生等が生じることは、特に医療現場において好ましくない。
【0089】
また、フィルム状部材2同士を溶着することによってフィルム状部材2間を接合する積層構造においても、剥離時にフィルム状部材2間の物理的な破壊を伴うため、モスアイ構造の破損が視界にまで及ぶといったリスクを伴う。また、溶着箇所の破壊に伴う残渣の飛散は、特に医療現場において好ましくない。
【0090】
フィルム積層体1は、粘着剤は使用せず、またフィルム状部材2の溶着も行っていないため、これらによるリスクもなく安全に使用することができる。
【0091】
[保護具]
フィルム積層体1は、保護具21に装着される。保護具21は、フィルム状部材2を剥離することで視界を確保する用途を有するものであれば特に制限は無く、例えば、医療用防護服(カバーオール)、医療用フェースシールド、医療用アイシールド、医療用のディスプレイ、ヘルメットのバイザー、塗装用保護眼鏡、災害時等に使用される化学防護服等が挙げられる。
【0092】
フィルム積層体1が装着された保護具21は、保護具21を着用した使用者の顔面もしくは目の周囲に相当する部位に、フィルム積層体1が設けられている。そして、保護具21の使用中にフィルム積層体1の表面が汚損した場合は、最上層のフィルム状部材2を剥離することで、汚染物との接触を避けつつ速やかに視界の回復を図ることができる。フィルム積層体1は、各層のフィルム状部材2の表裏全面が滅菌処理されているため、使用初期のみならず剥離後においても常に滅菌処理された面が表面に現れる。これにより、医療用途においては、患者や被検査者、他の医療者等に対する感染リスクを低減することができる。また、剥離されたフィルム状部材2の裏面全面も滅菌処理されているため、剥離時や廃棄時において、患者や被検査者、医療者等に対して、滅菌処理がなされていない部位が晒されることもない。
【0093】
フィルム積層体1の装着方法は特に制限は無く、適用される保護具21の仕様に応じて適宜決定すればよい。図12は、保護具21の一例として示す医療用防護服を示す外観斜視図である。例えば、図12に示すように、保護具21は、使用者の顔面に対応した位置に開口部22が設けられ、この開口部22にフィルム積層体1を装着する。図13に示すフィルム積層体1では、3枚のフィルム状部材2が積層され、最下層のフィルム状部材2a(すなわち、最も使用者の顔の近くに配置されるフィルム状部材2a)にベース7が接着などにより接続され、ベース7に設けられた2つの突起部材5に中間層のフィルム状部材2b及び最上層のフィルム状部材2cが挿通されている。なお、本技術に係るフィルム積層体1を構成するフィルム状部材2の積層数は3層に限られない。また、突起部材5の数も2つに限られない。
【0094】
中間層のフィルム状部材2bは凸部9によってベース7と離間され、表裏全面が露出されるとともに、ベース7の表面全面を露出させ、滅菌処理を行うことができる。また、図14に示すように、中間層のフィルム状部材2bは、ベース7と接していてもよい。図14に示す構成においても、フィルム状部材2bは突起部材5に挿通するのみでベース7とは接着等されておらず、フィルム状部材2bの裏面とベース7とが緩やかに接しているのであれば滅菌ガスを進入させることは可能である。
【0095】
図15に示すように、フィルム積層体1は、ベース7が設けられる最下層のフィルム状部材2aが開口部22よりも大きく形成されている。また、開口部22の裏面側の外側縁には両面テープ等による接着層23が設けられている。そして、フィルム積層体1は、保護具21の裏側から、最上層のフィルム状部材2a及び中間層のフィルム状部材2を開口部22に通し、最下層のフィルム状部材2aを、接着層23を介して開口部22の周囲に接着させる。これにより、フィルム積層体1を保護具21に装着することができる。
【0096】
なお、図16に示すように、最下層のフィルム状部材2aを保護具21の表面側に装着してもよい。この場合、開口部22の表面側の外側縁には両面テープ等による接着層23が設けられている。そして、フィルム積層体1は、最下層のフィルム状部材2aを、接着層23を介して開口部22の周囲に接着させる。図16に示す構成では、中間層のフィルム状部材2b及び最上層のフィルム状部材2cとして開口部22よりも大きな面積のものを使用できる。
【0097】
また、図17に示すように、ベース7が接続されたフィルム状部材2aを保護具21の開口部22に接続した後に(図17(A))、中間層のフィルム状部材2bを積層させ(図17(B))、次いで最上層のフィルム状部材2cを積層させることにより(図17(C))、フィルム積層体1を形成するとともに、フィルム積層体1を備えた保護具21を形成してもよい。
【0098】
また、図示はしないが、ベース7を保護具21の開口部22付近に接着などにより装着し、当該ベース7に立設された突起部材5に複数のフィルム状部材2を順次積層させることにより、フィルム積層体1を形成するとともに、フィルム積層体1を備えた保護具21を形成してもよい。
【実施例0099】
次いで、本技術の実施例について説明する。以下の実施例では、実施例サンプルとして、図18に示すように、係止部が形成された突起部材5(以下「フック部材34」という。)を用いてフィルム状部材2を積層したフィルム積層体サンプルを用意し、比較例サンプルとして、図19に示すように、フィルム状部材2を粘着剤35で接合して積層したフィルム積層体サンプルを用意した。
【0100】
本実施例では、フィルム状部材の積層手段及び空隙幅を変えたフィルム積層体サンプルを作成し、ガス滅菌評価、視認性判定(透過率%、ヘイズ%)、剥離容易性評価、フィルム剥離時におけるモスアイ構造の剥離リスク(以下、「コンタミ評価」ともいう)を行った。
【0101】
ガス滅菌評価に使用した評価サンプルは、100×100mmのフィルム状部材を用意し、積層手段(フック部材34、又は粘着剤35)の内側領域の四隅及び中央部の計5か所に、EOGに反応すると「滅菌済」の文字が浮かび上がるシール(日油技研工業社製滅菌ラベルEO-L)を貼付した。
【0102】
滅菌処理条件は以下の通りである。
温度:50℃
湿度:50%RH
暴露時間:8時間
チャンバー内圧力:100kPa、減圧圧力:-85kPa
フラッシング:5回
【0103】
その結果、「滅菌済」の文字が浮かび上がった場合を○(滅菌の効果有り)とし、「滅菌済」の文字が浮かび上がらなかった場合を×を(滅菌の効果なし)と評価した。
【0104】
視認性判定(透過率[%]、ヘイズ[%])における透過率[%]及びヘイズ[%]は、村上色彩技術研究所社製ヘーズメーター(HM-150N)を使用し、ダブルビーム方式により求めた(JIS K 7361、JIS K 7136)。積分球はφ150mmを使用した。視認性判定基準は、ヘイズが1.5%未満の場合を○(優良)、1.5%以上の場合を×(不良)とした。
【0105】
剥離容易性評価は、TD方向に剥離したときの剥離しやすさを官能評価し、剥離しやすい順に〇(優良)、△(普通)、×(不良)と評価した。
【0106】
コンタミ評価とはフィルム剥離時におけるモスアイ構造の剥離リスクを評価したものであり、モスアイ構造の剥離リスクが無いものを○、モスアイ構造の剥離が明確に予見されるものを×、モスアイ構造の剥離リスクが明確ではないがある程度予見されるものを△とした。
【0107】
(実施例1)
実施例1では、厚さ188μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第1フィルム31と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第2フィルム32と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第3フィルム33とを、フック部材34により積層し、フィルム積層体サンプルを得た。実施例1では、フック部材34によって第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間に空隙が生じないように積層した(空隙幅約0mm)。
【0108】
(実施例2)
実施例2に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.038mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0109】
(実施例3)
実施例3に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.050mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0110】
(実施例4)
実施例4に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.075mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0111】
(実施例5)
実施例16に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.100mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0112】
(実施例6)
実施例6に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.150mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0113】
(実施例7)
実施例7に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.300mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0114】
(実施例8)
実施例8に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が0.500mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0115】
(実施例9)
実施例9に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が1.0mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0116】
(実施例10)
実施例10に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が2.0mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0117】
(実施例11)
実施例11に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅が3.0mmとなるように積層した他は、実施例1と同様である。
【0118】
(比較例1)
比較例1は、厚さ188μmのPET基材からなる第1フィルム31と、厚さ50μmのPET基材からなる第2フィルム32と、厚さ50μmのPET基材からなる第3フィルム33とを、アクリル系粘着剤35による全面貼りにより積層し、フィルム積層体サンプルを得た。図19に示すように、比較例1に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間に粘着剤層が介在することにより空隙幅は0mmである。
【0119】
(比較例2)
比較例2では、厚さ188μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第1フィルム31と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第2フィルム32と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第3フィルム33を、アクリル系粘着剤35による全面貼りにより積層し、フィルム積層体サンプルを得た。比較例2に係るフィルム積層体サンプルは、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間に粘着剤層が介在することにより空隙幅は0mmである。
【0120】
(比較例3)
比較例3は、厚さ188μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第1フィルム31と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第2フィルム32と、厚さ100μmのPET基材にモスアイ構造体を設けた第3フィルム33を使用し、アクリル系粘着剤35を第1フィルム31~第3フィルム33の各一側縁部に設けて積層させてフィルム積層体サンプルを得た。図20に示すように、比較例3に係るフィルム積層体サンプルは、一方のフィルムを撓ませて貼り合せることで、第1フィルム31と第2フィルム32の間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間の空隙幅を約0mmとした。
【0121】
【表1】
【0122】
表1に示すように、実施例1~11に係るフィルム積層体サンプルにおいては、シールに「滅菌済」の文字が浮かび上がり、滅菌の効果が確認された。実施例1では、側面視において、一見して第1フィルム31と第2フィルム32との間及び第2フィルム32と第3フィルム33の間に空隙が見られない場合でも、これらは密着することなく軽く触れている程度であり、滅菌ガスが通気可能に積層されている。すなわち、本実施例からは、フィルム状部材を一定の空隙(約0~3mm)を隔てて積層することで、滅菌の効果が発揮されることが分かる。
【0123】
また、実施例1~11に係るフィルム積層体サンプルは、フック部材34の係合を外すことで第1フィルム31、第2フィルム32及び第3フィルム33の剥離が可能であり、コンタミ評価が○、すなわち、フィルムに形成されたモスアイ構造体を剥がす方向へ力が作用せず剥がれが生じるリスクがない。
【0124】
粘着剤35を第1フィルム31~第3フィルム33の一側縁部に設けて積層させた比較例3でも、実施例11~11と同様の滅菌効果が確認されたが、粘着剤によって第1フィルム31~第3フィルム33を積層させているため、コンタミ評価が△、すなわち第1フィルム31、第2フィルム32及び第3フィルム33の剥離時にフィルムに形成されたモスアイ構造体が剥がれる方向に力が作用し、モスアイ構造体の剥離リスクが生じる。なお、比較例2は、粘着剤35を第1フィルム31~第3フィルム33の全面に設けて積層させているため、コンタミ評価が×、すなわちモスアイ構造の剥離が明確に予見される。比較例1は、第1フィルム31~第3フィルム33にモスアイ構造体を形成していないため、評価の対象外である。
【符号の説明】
【0125】
1 フィルム積層体、2 フィルム状部材、3 突起部材、4 挿通孔、7 ベース、9 凸部、10 スリット、11 基体、12 構造体、13 基底層、20 タブ、21 保護具、22 開口部、23 接着層、36 転写材料、37 エネルギー線源、41 ロール原盤、42 構造体
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