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特開2023-170546超音波映像装置および接合ウェハへの液体浸入防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170546
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】超音波映像装置および接合ウェハへの液体浸入防止方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/28 20060101AFI20231124BHJP
   G01N 29/32 20060101ALI20231124BHJP
   G01N 29/265 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G01N29/28
G01N29/32
G01N29/265
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082383
(22)【出願日】2022-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】000233044
【氏名又は名称】株式会社日立パワーソリューションズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】大野 茂
(72)【発明者】
【氏名】野田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】菊川 耕太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 夏樹
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA05
2G047AB05
2G047BA03
2G047BB05
2G047BC09
2G047DB03
2G047EA09
2G047GE02
2G047GE03
2G047GH06
(57)【要約】
【課題】超音波探触子の走査速度を低下させることなくウェハ同士の接合面への液体の浸入を防止する。
【解決手段】超音波映像装置100は、2枚以上のウェハ191が接合された接合ウェハ109に超音波を照射してウェハ同士の接合面193の映像を生成する装置であって、接合ウェハ109の下側において、接合ウェハに超音波を照射する超音波探触子110と、接合ウェハ109の底面109aとの間において、底面109aに接する液膜106が形成されるように液体を連続的に底面109aに向けて吐出しながら、超音波探触子110とともに移動する液体吐出部111と、気体を吐出する気体吐出装置102と、を備え、気体吐出装置102は、液体吐出部111から吐出される液体が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入しないように、液体を押し下げるための気体を接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚以上のウェハが接合された接合ウェハに超音波を照射し、その反射波を取得して前記ウェハ同士の接合面の映像を生成する超音波映像装置であって、
前記接合ウェハの底面の下側において、前記底面に沿って移動しながら、前記接合ウェハに超音波を照射し、その反射波を取得する超音波探触子と、
前記接合ウェハの前記底面との間において、前記底面に接する液膜が形成されるように、超音波を伝播させる液体を連続的に前記底面に向けて吐出しながら、前記超音波探触子とともに移動する液体吐出部と、
気体を吐出する気体吐出装置と、を備え、
前記気体吐出装置は、前記液体吐出部から吐出される液体が前記接合ウェハの外周端部から前記接合面に浸入しないように、前記液体を押し下げるための気体を前記接合ウェハの外周端部に向けて吐出する気体吐出部を有する、
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波映像装置において、
前記液体吐出部の上面に形成される前記液膜が一定の厚みに保持されるように、前記液体吐出部に液体を供給する液体供給装置を備える、
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の超音波映像装置において、
前記気体吐出部は、
気体を取り込む複数の気体取込部と、
前記複数の気体取込部に連通し、前記複数の気体取込部から取り込まれた気体を前記接合ウェハの前記外周端部に向けて吐出する吐出開口部と、
前記吐出開口部に設けられ前記複数の気体取込部から取り込まれた気体を整流する整流部と、を有し、
前記吐出開口部は、前記接合ウェハの前記外周端部の上方において前記外周端部に沿うように環状に形成され、
前記整流部は、前記吐出開口部の全域に亘って設けられている、
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項4】
請求項1に記載の超音波映像装置において、
前記気体吐出部は、当該気体吐出部から吐出される気体の向きが鉛直軸に対して傾斜するように形成されている、
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の超音波映像装置において、
前記気体吐出装置は、前記接合ウェハを水平に保持する保持部を有し、
前記保持部は、前記液体吐出部の上面から前記接合ウェハの前記底面までの距離が、所定の離間距離で維持されるように、前記接合ウェハを保持する、
ことを特徴とする超音波映像装置。
【請求項6】
2枚以上のウェハが接合された接合ウェハの底面と超音波探触子との間に超音波を伝播する液体を供給し、前記超音波探触子から前記接合ウェハに超音波を照射して、前記ウェハ同士の接合面の映像を生成する際に、前記接合ウェハの外周端部から前記接合面に液体が浸入することを防止する液体浸入防止方法であって、
気体を吐出する気体吐出部と前記接合ウェハとを位置決めする位置決め工程と、
位置決めされた前記接合ウェハを保持部によって保持するウェハ保持工程と、
前記保持部によって保持された前記接合ウェハの前記底面の下側に前記超音波探触子を配置する探触子配置工程と、
前記超音波探触子を収容するケースに液体を供給し、前記超音波探触子と前記接合ウェハの前記底面との間を液体で満たすとともに前記ケースの上面に前記接合ウェハに接する液膜を形成する液体供給工程と、
前記ケースの上面に形成される液膜が前記接合ウェハの前記底面に接するように前記ケースの上面に形成された液体出口部から液体を連続的に吐出しながら前記超音波探触子を前記ケースとともに前記底面に沿って走査する走査工程と、を含み、
前記走査工程において、前記接合ウェハの外周端部の下方に前記超音波探触子が位置しているときに、前記ケースから吐出される液体が前記接合ウェハの前記外周端部から前記接合面に浸入しないように、前記気体吐出部から気体を前記外周端部に向けて吐出し、前記気体吐出部から吐出される気体によって前記ケースから吐出される液体を押し下げる、
ことを特徴とする液体浸入防止方法。
【請求項7】
請求項6に記載の液体浸入防止方法において、
前記走査工程において、前記気体吐出部から鉛直軸に対して傾斜する方向に気体を吐出する、
ことを特徴とする液体浸入防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を介して超音波探触子から超音波を接合ウェハに照射して接合ウェハの接合面の映像を生成する超音波映像装置、および超音波映像装置により接合面の映像を生成する際に超音波を伝播する液体が接合ウェハの外周端部から接合面に浸入することを防止する液体浸入防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波探触子から対象物に超音波を照射し、その反射波を取得して対象物の内部の映像を生成する超音波映像装置が知られている。超音波映像装置により生成された映像は、例えば、対象物内の微細な欠陥(剥離やボイド)の有無の検査に用いられる。超音波映像装置(超音波検査装置)は、使用する超音波の周波数が高いと、高い分解能が得られるが、その反面として減衰が大きくなりS/N比が低下するおそれがある。ここで、水は空気に比べて高周波の超音波の減衰の程度が小さい。このため、対象物を水に浸漬させ、超音波探触子と対象物との間を水で満たした状態で、超音波探触子の走査が行われることがある。しかしながら、この方法では、対象物が水に浸漬されることに起因して対象物に含まれる金属が腐食するなどの不具合が生じるおそれがある。
【0003】
そこで、被検体(対象物)における水の接触領域を被検体の検査面(底面)に限定することを目的とした発明が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1には、検査面を下に向けて被検体を保持する被検体保持機構と、被検体を超音波で探触するアレイ型探触子と、超音波を伝播させる液体にアレイ型探触子を浸す槽と、被検体の検査面の下方にアレイ型探触子を相対するように保持する探触子保持機構と、槽に蓄えた液体の表面張力によって被検体の検査面に液面が接触した状態で、被検体およびアレイ型探触子の一方または双方を水平に走査する水平走査手段と、を備えた超音波検査装置(超音波映像装置)が開示されている。
【0004】
特許文献1に記載の発明では、被検体と超音波探触子との間を水などの液体で満たし、槽の上面に形成される液膜を被検体の検査面(底面)に接触させることにより、超音波の伝播経路が確保される。このため、特許文献1に記載の発明では、被検体を液体に浸漬させることなく超音波探触子によって被検体を走査(スキャン)することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-148493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
超音波探触子は、対象物を走査する際、対象物の第1外周端部側から反対の第2外周端部側に向かって加速し、第2外周端部側で減速して停止し、第2外周端部側から第1外周端部側に向かって加速し、第1外周端部側で減速して停止するという一連の動作を繰り返し行う。このため、対象物の外周端部近傍での加減速度が大きいと超音波を伝播させる液体の表面が波打ち、液体が外周端部に付着するおそれがある。ここで、対象物が2枚以上のウェハが接合された接合ウェハである場合、外周端部に付着した液体が、毛細管現象によりウェハ同士の接合面に浸入するおそれがある。このため、特許文献1に記載の超音波探触子によって接合ウェハを走査する場合には、液面が波立たないように、走査速度(移動速度)を低く抑え、接合ウェハの外周端部を走査する際の超音波探触子の加減速度を小さくする必要がある。
【0007】
しかしながら、超音波探触子の走査速度を低く抑えると、接合ウェハの走査に要する時間が長くなり、超音波映像装置による接合ウェハの接合面の映像の生成効率が低下する。このため、特許文献1に記載の発明では、接合ウェハの接合面の映像の生成効率の観点で改善の余地がある。
【0008】
本発明は、超音波探触子の走査速度を低下させることなくウェハ同士の接合面への液体の浸入を防止し、接合ウェハに対する超音波探触子の走査時間を短縮し、接合面の映像の生成効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様による超音波映像装置は、2枚以上のウェハが接合された接合ウェハに超音波を照射し、その反射波を取得して前記ウェハ同士の接合面の映像を生成する超音波映像装置であって、前記接合ウェハの底面の下側において、前記底面に沿って移動しながら、前記接合ウェハに超音波を照射し、その反射波を取得する超音波探触子と、前記接合ウェハの前記底面との間において、前記底面に接する液膜が形成されるように、超音波を伝播させる液体を連続的に前記底面に向けて吐出しながら、前記超音波探触子とともに移動する液体吐出部と、気体を吐出する気体吐出装置と、を備え、前記気体吐出装置は、前記液体吐出部から吐出される液体が前記接合ウェハの外周端部から前記接合面に浸入しないように、前記液体を押し下げるための気体を前記接合ウェハの外周端部に向けて吐出する気体吐出部を有する。
【0010】
また、本発明の一態様による液体浸入防止方法は、2枚以上のウェハが接合された接合ウェハの底面と超音波探触子との間に超音波を伝播する液体を供給し、前記超音波探触子から前記接合ウェハに超音波を照射して、前記ウェハ同士の接合面の映像を生成する際に、前記接合ウェハの外周端部から前記接合面に液体が浸入することを防止する液体浸入防止方法であって、気体を吐出する気体吐出部と前記接合ウェハとを位置決めする位置決め工程と、位置決めされた前記接合ウェハを保持部によって保持するウェハ保持工程と、前記保持部によって保持された前記接合ウェハの前記底面の下側に前記超音波探触子を配置する探触子配置工程と、前記超音波探触子を収容するケースに液体を供給し、前記超音波探触子と前記接合ウェハの前記底面との間を液体で満たすとともに前記ケースの上面に前記接合ウェハに接する液膜を形成する液体供給工程と、前記ケースの上面に形成される液膜が前記接合ウェハの前記底面に接するように前記ケースの上面に形成された液体出口部から液体を連続的に吐出しながら前記超音波探触子を前記ケースとともに前記底面に沿って走査する走査工程と、を含み、前記走査工程において、前記接合ウェハの外周端部の下方に前記超音波探触子が位置しているときに、前記ケースから吐出される液体が前記接合ウェハの前記外周端部から前記接合面に浸入しないように、前記気体吐出部から気体を前記外周端部に向けて吐出し、前記気体吐出部から吐出される気体によって前記ケースから吐出される液体を押し下げる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超音波探触子の走査速度を低下させることなくウェハ同士の接合面への液体の浸入を防止し、接合ウェハに対する超音波探触子の走査時間を短縮し、接合面の映像の生成効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、第1実施形態に係る超音波映像装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1実施形態に係る超音波映像装置により接合ウェハの接合面の映像を生成する際の各部の動作を説明する図である。
図3図3は、超音波検査方法の実施手順の一例を示すフローチャートである。
図4A図4Aは、吐出開口部と接合ウェハの外周端部の部分拡大図であり、接合ウェハの接合面の外周端縁が吐出開口部の径方向中心軸から内径方向にd/2だけずれた位置に配置された状態を示す。
図4B図4Bは、吐出開口部と接合ウェハの外周端部の部分拡大図であり、接合ウェハの接合面の外周端縁が吐出開口部の径方向中心軸から外径方向にd/4だけずれた位置に配置された状態を示す。
図4C図4Cは、吐出開口部と接合ウェハの外周端部の部分拡大図であり、接合ウェハの接合面の外周端縁の位置ずれ許容範囲について示す。
図5図5は、接合ウェハの下面図であり、プローブが接合ウェハを走査する様子を示す。
図6図6は、第2実施形態に係る超音波映像装置の空気吐出部の形状について示す図である。
図7図7は、空気吐出部から鉛直下方に向かって吐出される空気の接合ウェハの外周端部近傍の流れの模式図である。
図8図8は、変形例1-1に係る空気吐出部の一部を示す斜視図である。
図9図9は、図8のIX-IX線断面模式図である。
図10図10は、図9のX-X線断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、本件発明を実施するための形態を、各図を参照して詳細に説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1図5を用いて、第1実施形態に係る超音波映像装置100の構成および超音波映像装置100による接合ウェハ109の接合面193の映像生成方法を説明する。図1は、超音波映像装置100の構成を示す図である。図2は、超音波映像装置100により接合ウェハ109の接合面193の映像を生成する際の各部の動作を説明する図である。
【0015】
なお、図示するようにX軸、Y軸およびZ軸を定義し、X軸、Y軸およびZ軸を用いて各構成の構造、配置関係等について説明する。X軸およびY軸は、水平方向に平行であり、Z軸は、鉛直方向(重力方向、上下方向)に平行である。X軸、Y軸およびZ軸は、それぞれ直交する。
【0016】
図1に示すように、超音波映像装置100は、2枚以上の半導体ウェハ(単にウェハとも記す)191が層状に接合された接合ウェハ(積層ウェハ)109の下側から接合ウェハ109に超音波119(図2参照)を照射し、その反射波を取得してウェハ191同士の接合面193の映像を生成する。超音波映像装置100により生成された接合面193の映像は、検査員あるいは検査システム(不図示)によって分析される。検査員あるいは検査システムは、接合面193の映像に基づいて、接合面193における剥離やボイド等の微細な欠陥の有無を判定し、欠陥が有る場合にはその位置、大きさを特定する。つまり、超音波映像装置100は、接合ウェハ109を被検体(検査対象)として、被検体内部の欠陥の検査を行う超音波検査装置ともいえる。
【0017】
本実施形態に係る超音波映像装置100の超音波探触子(以下、プローブとも記す)110の走査対象となる接合ウェハ109は、2枚の円板状のウェハ191が層状に接合された積層ウェハである。以下、接合ウェハ(積層ウェハ)109における下側のウェハ191を最下層ウェハ191aとも記し、接合ウェハ(積層ウェハ)109における上側のウェハ191を最上層ウェハ191bとも記す。
【0018】
超音波映像装置100は、接合ウェハ109を保持する保持装置102と、接合ウェハ109を走査するプローブ110と、プローブ110を収容するとともに超音波を伝播させる液体である水を貯留するプローブケース(以下、単にケースと記す)111と、水平面内でプローブ110を移動させるX軸スキャナ152xおよびY軸スキャナ152yと、プローブ110を高さ方向に調整または移動させるZ軸スキャナ152zと、を備える。
【0019】
プローブ110はケース111に固定され、プローブ110とケース111とによってプローブユニット101が構成される。なお、プローブ110とケース111とは、例えば、ねじにより接続され、一体となっている。プローブ110は、単一の送信素子(超音波振動素子)を有するシングル型プローブであってもよいし、多数の送信素子が配列されたアレイ型プローブであってもよい。スキャナ152x,152y,152zは、プローブ110のハウジング110c及びケース111の少なくとも一方に接続され、プローブユニット101をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させる。つまり、プローブ110は、スキャナ152x,152y,152zによってケース111と一体的に移動する。
【0020】
超音波映像装置100は、映像を表示する液晶ディスプレイ等の表示部155と、プローブ110との間で電気信号を入出力する送受信装置151と、スキャナ152x,152y,スキャナ152zの動作を制御するスキャナ駆動制御装置153と、超音波映像装置100の各部(表示部155、送受信装置151、スキャナ駆動制御装置153)を統括制御する統括制御装置150と、を備えている。
【0021】
統括制御装置150は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の処理装置、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリ、所謂RAM(Random Access Memory)と呼ばれる揮発性メモリ、入出力インタフェース、および、その他の周辺回路を備えたコンピュータで構成される。これらのハードウェアは、協働してソフトウェアを動作させ、複数の機能を実現する。なお、統括制御装置150は、1つのコンピュータで構成してもよいし、複数のコンピュータで構成してもよい。
【0022】
不揮発性メモリには、各種演算が実行可能なプログラムが格納されている。すなわち、不揮発性メモリは、本実施形態の機能を実現するプログラムを読み取り可能な記憶媒体(記憶装置)である。揮発性メモリは、処理装置による演算結果および入出力インタフェースから入力された信号を一時的に記憶する記憶媒体(記憶装置)である。処理装置は、不揮発性メモリに記憶されたプログラムを揮発性メモリに展開して演算実行する装置であって、プログラムに従って入出力インタフェース、不揮発性メモリおよび揮発性メモリから取り入れたデータに対して所定の演算処理を行う。
【0023】
入出力インタフェースの入力部は、送受信装置151、スキャナ駆動制御装置153等の各種装置から入力された信号を処理装置で演算可能なデータに変換する。また、入出力インタフェースの出力部は、処理装置での演算結果に応じた出力用の信号を生成し、その信号を送受信装置151、スキャナ駆動制御装置153、表示部155等の各種装置に出力する。
【0024】
プローブ110は、接合ウェハ109の底面109aの下側において、底面109aに沿ってX軸方向およびY軸方向に移動しながら、接合ウェハ109に超音波を照射し、その反射波を取得する。つまり、プローブ110は、接合ウェハ109の下側において、接合ウェハ109に対して相対移動することにより、接合ウェハ109に対する走査を行う。
【0025】
プローブ110は、超音波を送信し、接合ウェハ109で反射された超音波の反射波を受信する送受信素子110aと、プローブ110の走査位置を検出するエンコーダ110bと、送受信素子110aおよびエンコーダ110bを収容するハウジング110cと、を有してる。送受信素子110aは、制御線110dによって送受信装置151に接続され、エンコーダ110bは制御線110eによってスキャナ駆動制御装置153に接続される。
【0026】
送受信装置151は、統括制御装置150からの制御信号に基づき、素子動作信号をプローブ110に出力する。プローブ110の送受信素子110aは、入力された素子動作信号に応じて超音波を接合ウェハ109に照射する。接合ウェハ109で反射した超音波は送受信素子110aによって受信される。送受信装置151は、プローブ110から超音波の反射波の信号を受信し、受信した信号の信号強度を統括制御装置150に送信する。
【0027】
統括制御装置150は、送受信装置151からの反射波の信号強度とともに、スキャナ駆動制御装置153を介してエンコーダ110bからプローブ110の走査位置(走査点)の情報を取得する。統括制御装置150は、走査位置(走査点)と反射波の信号強度とを紐付けて不揮発性メモリに記憶する。統括制御装置150は、走査位置毎の反射波の信号強度を、例えば、0~255の階調度に変換する。統括制御装置150は、走査位置毎の階調度に応じて、映像データを生成し、生成した映像データを表示部155に出力する。表示部155は、入力された映像データに基づき、接合面193の映像を表示画面に表示させる。
【0028】
接合ウェハ109におけるウェハ191の接合面193に剥離、ボイドなどの欠陥があると、プローブ110から送信された超音波が欠陥で反射する。このため、正常な領域と欠陥が生じている領域とでは、プローブ110で受信される反射波の信号強度が異なる。したがって、検査員は、表示部155に表示された映像から欠陥の有無を判定し、欠陥がある場合はその欠陥の位置および大きさを特定することができる。
【0029】
本実施形態に係る超音波映像装置100は、接合ウェハ109の底面109a(最下層ウェハ191aの下面)とプローブ110との間を水で満たした状態で、プローブ110を走査する。なお、本実施形態では、超音波の伝播媒体(液状媒体)として水を用いる例について説明するが、液状媒体は水に限定されない。液状媒体は、超音波を伝播させることが可能な液体であればよい。
【0030】
ケース111は、水を保持可能な箱状になっている。ケース111は、底板112と、底板112の外周端部から上方に向かって延在する側壁113とを有している。底板112には、プローブ110が挿通される貫通孔117が形成されている。側壁113は、プローブ110の外周を囲むように設けられる。側壁113の上端部には天板114が設けられている。天板114におけるプローブ110の直上には、水出口部115が形成されている。水出口部115は、プローブ110と接合ウェハ109との間の超音波の伝播経路を妨げることのない位置および大きさに形成された開口である。
【0031】
図2に示すように、ケース111の側壁113には、ケース111の中空部への水の入口となる水入口部116が形成されている。水入口部116は、水供給装置(液体供給装置)160に接続される。水供給装置160は、水を吐出するポンプ161と、ポンプ161に接続されポンプ161から吐出された水をケース111に供給する配管である給水チューブ162と、を備える。
【0032】
水入口部116は、ケース111の中空部と給水チューブ162とを連通する連通路である。ケース111は、中空部(内部)に水が蓄えられ、ケース111の内側に配置されるプローブ110が水に浸されている。ケース111に蓄えられた水は、水出口部115から上方に吐出されてケース111の上面(天板114の上面)111aに供給される。ケース111の上面111aには、水の表面張力によって所定厚みの液膜106が形成される。液膜106は、接合ウェハ109の底面109aに接触する。水入口部116に供給される水の流量は、液膜106の表面(液面)が波立たない程度の流量に設定される。
【0033】
図2に示すように、ポンプ161から吐出された水は、給水チューブ162を通じてケース111に流入する(矢印Fb1参照)。水入口部116からケース111内に流入した水は、プローブ110の外周面とケース111の側壁113の内周面との間の流路を上方に向かって流れ(矢印Fb2参照)、水出口部115からケース111の上面111aに流れ出る(矢印Fb3参照)。水出口部115から吐出された水は、ケース111の上面111aをプローブユニット101の中心軸側から離れる方向に向かって流れ、上面111aの外周端部から流れ落ちる。
【0034】
ポンプ161は、液膜106の形状を保持するために必要となる所定の吐出圧となるように、回転速度が設定される。なお、水供給装置160は、ポンプ161とケース111との間に、水入口部116に供給される水の流量を調整可能な流量制御機構163を設けてもよい。流量制御機構163は、例えば、開口面積を調節可能なバルブと、余分な水を排出するための配管とを含む。この場合、統括制御装置150は、流量制御機構163のバルブを制御することにより、水入口部116に供給される水の流量を調節する。さらに、水供給装置160は、ポンプ161と流量制御機構163との間に、ポンプ161の吐出圧を減圧する圧力レギュレータを設けてもよい。つまり、ポンプ161の回転速度を一定値として、圧力レギュレータによって、水供給装置160からケース111へ吐出される水の吐出圧を規定してもよい。
【0035】
このように、ケース111は、水出口部115から水などの液体を接合ウェハ109の底面109aに向けて吐出する液体吐出部(水吐出部)として機能する。また、水供給装置160は、ケース111の上面111aに形成される液膜106が一定の厚みに保持されるように、所定の吐出圧および所定の流量で連続的に水をケース111に供給する。これにより、ケース111の上面111aに形成される液膜106は、プローブ110の走査中、常に、接合ウェハ109の底面109aに接した状態となる。
【0036】
なお、上述したように、ケース111は、プローブ110に接続されプローブ110と一体となっている。したがって、ケース111は、接合ウェハ109の底面109aとの間において、底面109aに接する液膜106が形成されるように、超音波を伝播させる水を連続的に底面109aに向けて吐出しながら、プローブ110とともに移動する。
【0037】
図1および図2を用いて、接合ウェハ109の保持装置102について説明する。図1および図2に示すように、保持装置102は、円板状の基部120と、基部120に取り付けられる複数の真空吸着パッド129と、基部120の外周端部に設けられ空気を吐出する空気吐出部121と、を有する。
【0038】
真空吸着パッド129は、図示しない真空ポンプに接続され、接合ウェハ109の上面(最上層ウェハ191bの上面)109bを真空吸着し、接合ウェハ109を水平に保持する保持部である。真空吸着パッド129は、ケース111の上面111aから接合ウェハ109の底面109aまでの距離(鉛直方向距離)が、所定の離間距離で維持されるように、接合ウェハ109を保持する。なお、保持装置102は、空気吐出部121を有しているため、空気(気体)を吐出する空気吐出装置(気体吐出装置)ともいえる。つまり、本実施形態に係る保持装置(空気吐出装置)102は、接合ウェハ109を保持する機能と、空気を吐出する機能とを備えている。
【0039】
空気吐出部121は、基部120から下方に向かって突出するように設けられる。空気吐出部121には、空気吐出部121の下面から上方に窪む凹状の吐出開口部122が形成されている。吐出開口部122は、真空吸着パッド129によって保持された接合ウェハ109の外周端部199の上方において外周端部199に沿うように平面視で円環状に形成されている。図示するように、空気吐出部121の側面断面における外形形状および吐出開口部122の側面断面における形状は、それぞれ矩形状である。吐出開口部122の底部には、吐出開口部122と図示しない空気供給配管とを連通し、空気供給配管から空気を取り込む複数の空気取込部(気体取込部)169が形成されている。
【0040】
吐出開口部122は、複数の空気取込部169に連通し、複数の空気取込部169から取り込まれた所定の圧力の空気(矢印Fa1参照)を吐出開口部122の開口端面123から鉛直下方に向かって吐出する(矢印Fa2参照)。吐出開口部122は、内周面と、外周面と、内周面と外周面を接続する底面と、を有している。吐出開口部122の内周面及び外周面は、鉛直軸に平行となるように形成される。本実施形態では、吐出開口部122は、接合ウェハ109の外周端部199に上下方向(鉛直方向)で重なる位置に設けられる。つまり、空気吐出部121の吐出開口部122は、複数の空気取込部169から取り込まれた空気を接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出する。
【0041】
本実施形態に係る空気吐出部121は、円環状の吐出開口部122の周方向に所定の間隔をあけて設けられる複数の空気取込部169を通じて吐出開口部122に空気を取り込み、吐出開口部122の開口端面123全体から空気を下方に吐出する構成である。このため、環状の開口端面123の全域において、空気の流速分布(流量分布)がばらつくおそれがある。例えば、空気取込部169の直下の領域における空気の流速と、空気取込部169の直下でない領域における空気の流速との間に差が生じる。そこで、本実施形態では、平面視で環状の吐出開口部122の全域に亘って、複数の空気取込部169から取り込まれた空気を整流する整流部130が設けられている。
【0042】
本実施形態に係る整流部130は、空気貫通孔が複数形成された発泡体などの板状の多孔質体からなるフィルタである。複数の空気取込部169から吐出開口部122内に取り込まれた空気は、整流部130によって分散され、環状の吐出開口部122の全域に亘って均一の吐出圧および均一の流速で吐出される。つまり、本実施形態によれば、整流部130を設けない場合に比べて、環状の吐出開口部122から吐出される空気の流速分布(流量分布)のばらつきを抑制することができる。
【0043】
なお、整流部130は、板状の多孔質体を上下方向に多層に重ねて形成してもよい。この場合、下層側に配設する多孔質体は、上層側に配設する多孔質体よりも小径の空気貫通孔を多く有したものとすることが好ましい。これにより、吐出開口部122から吐出される空気の吐出圧をより均一にすることができる。整流部130に用いられる多孔質体は、樹脂製、金属製あるいはセラミックス製のものを適用できるが、加工性を考慮すると樹脂製のものを適用するのが好適である。
【0044】
プローブ110が接合ウェハ109を走査している間、空気吐出部121から常時空気が吐出される。つまり、本実施形態では、接合ウェハ109の外周端部199の下方にプローブ110が位置しているときには、空気吐出部121は、ケース111の水出口部115から吐出される水により形成される液膜106の一部の領域(接合ウェハ109が上方に存在しない外周端部199の近傍領域)に向けて空気を吐出することになる。外周端部199の近傍領域上の液膜106に、上側から空気が当てられることにより、外周端部199の近傍領域の液面が押し下げられる。このため、外周端部199の近傍領域上の水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入することが防止される。
【0045】
ここで、接合ウェハ109の外周端部199に向けて空気を吐出する空気吐出部121を備えていない超音波映像装置(以下、比較例に係る超音波映像装置と記す)では、プローブ110によって接合ウェハ109を走査する工程において、接合ウェハ109の外周端部199で加減速する際に液膜106の表面が波打ち、水が外周端部199に付着し、ウェハ191同士の接合面193に浸入するおそれがある。このため、比較例では、液膜106の表面が波立たないように、走査速度を低く抑え、接合ウェハ109の外周端部199の周辺を走査する際のプローブ110の加減速度を小さくする必要がある。このため、比較例に係る超音波映像装置では、走査速度を低く抑えることに起因して接合ウェハ109の走査に要する時間が長くなり、超音波映像装置による接合面193の映像の生成効率が低下してしまう。
【0046】
これに対して、本実施形態に係る超音波映像装置100は、ケース111から吐出される水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入しないように、水を押し下げるための空気を接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出する空気吐出部121を備えている。これにより、本実施形態では、比較例に比べてプローブ110の走査速度が速く、接合ウェハ109の外周端部199の周辺でのプローブ110の加減速度が高い場合であっても、水が接合面193に浸入することが防止される。
【0047】
図3を用いて、超音波映像装置100による接合ウェハ109の超音波検査方法について説明する。図3は、超音波検査方法の実施手順の一例を示すフローチャートである。なお、この超音波検査方法には、接合ウェハ109の底面109aとプローブ110との間に超音波を伝播する水を供給し、プローブ110から接合ウェハ109に超音波を照射して、ウェハ191同士の接合面193の映像を生成する際に、接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に水が浸入することを防止する水浸入防止方法(液体浸入防止方法)が含まれる(S20~S70)。
【0048】
図3に示すように、接合ウェハ109の超音波検査は、準備工程S10、位置決め工程S20、ウェハ保持工程S30、プローブ配置工程S40、水供給工程(液体供給工程)S50、空気吐出工程(気体吐出工程)S60、走査工程S70、映像生成工程S80、欠陥確認工程S90が、この順番で行われる。
【0049】
準備工程S10では、各装置が起動され、検査対象となる接合ウェハ109が選択される。位置決め工程S20では、空気吐出部121を有する保持装置102と接合ウェハ109との位置決めが行われる。図4A図4Cを用いて、保持装置102と接合ウェハ109との位置決めについて詳しく説明する。
【0050】
空気吐出部121と接合ウェハ109との間で大きな位置ずれが生じると、空気吐出部121から吐出される空気によって、適切に水を押し下げることができない可能性がある。本願発明者らは、空気吐出部121から吐出される空気によって、適切に水を押し下げることが可能な、空気吐出部121と接合ウェハ109の外周端部199との位置関係について検討を重ねた。
【0051】
なお、以下では、平面視で円形状を呈する保持装置102の直径方向を径方向と記し、図4A図4Cに示される断面における吐出開口部122の径方向幅の中心軸を径方向中心軸Cとして、空気吐出部121と接合ウェハ109との位置関係について説明する。
【0052】
数値流体シミュレーション上では、吐出開口部122が接合ウェハ109の外周端部199の鉛直上方に位置している場合、吐出された空気の多くが接合ウェハ109の外周端部199をかすめてプローブ110の周囲の液面に向かう。このため、図4Aに示すように、接合ウェハ109の下側から見たときの吐出開口部122の開口端面123の径方向幅が広くなる方向には、接合面193の外周端縁194を吐出開口部122の内周縁ぎりぎりまで寄せることができる。換言すれば、接合面193の外周端縁194の鉛直上方に吐出開口部122の内周縁が位置している場合には、吐出開口部122から吐出され、接合ウェハ109の外周端部199に沿って下方に流れる空気によってプローブユニット101上の水を押し下げることができる。つまり、吐出開口部122の径方向の幅をdとすると、吐出開口部122の径方向中心軸Cに対する接合ウェハ109の内径方向のずれの許容量は、d/2未満である。
【0053】
一方、図4Bに示すように、接合ウェハ109を下側から見たときの吐出開口部122の開口端面123の径方向幅が狭まる方向には、接合面193の外周端縁194を吐出開口部122の外周縁までずらすと、吐出開口部122から吐出される空気の大半が接合ウェハ109の上面109bに沿って流れてしまうため、プローブユニット101上の水を押し下げる効果が小さくなってしまう。したがって、吐出開口部122の径方向の幅をdとすると、吐出開口部122の径方向中心軸Cに対する接合ウェハ109の外径方向の位置ずれの許容量は、実験結果からd/4以下とすることが好ましい。
【0054】
したがって、位置決め工程S20において、接合ウェハ109は、図4Cに示すように、接合面193の外周端縁194が吐出開口部122の径方向中心軸Cから内径方向にd/2未満かつ径方向中心軸Cから外径方向にd/4以下の範囲(以下、許容範囲とも記す)内に収まるように、保持装置102に対して位置決めされる。なお、この位置決め条件は、空気吐出部121の吐出開口部122および接合ウェハ109の外周端部199の全周に亘って満足することが好ましい。
【0055】
つまり、空気吐出部121の吐出開口部122は、接合ウェハ109を保持装置102によって保持する際の位置ずれや、保持装置102等の製造公差等に起因した位置ずれが生じた場合であっても、接合ウェハ109の外周端部199の全周に亘って、接合面193の外周端縁194を上記許容範囲内に収めることができるように形成されていることが好ましい。これにより、接合ウェハ109の外周端部199の全周に亘り、空気吐出部121の吐出開口部122から吐出される空気によって、プローブユニット101の上面の水を押し下げることができる。その結果、接合ウェハ109の外周端部199の全周に亘って、接合面193への水の浸入を防止することができる。
【0056】
本実施形態では、接合ウェハ109は、接合面193の外周端縁194が、空気吐出部121の吐出開口部122の径方向中心軸Cに位置するように、位置決めが行われる。
【0057】
図3に示すウェハ保持工程S30において、保持装置102は、位置決め工程S20で位置決めされた接合ウェハ109の上面109bを複数の真空吸着パッド129に吸着させる。複数の真空吸着パッド129は、接合ウェハ109を水平に保持する。なお、接合ウェハ109を水平に保持するとは、接合ウェハ109の基準面(上面109b、底面109a、接合面193等)が水平になることを目標として保持することを指す。
【0058】
接合ウェハ109と吐出開口部122の開口端面123との鉛直方向の距離は、全周に亘って一定である。なお、本実施形態では、接合ウェハ109の底面109a(検査面)の反対側の面を真空吸着することにより固定保持しているが、プローブ110の走査の妨げにならなければ、他の方法で接合ウェハ109を保持してもかまわない。
【0059】
プローブ配置工程S40において、プローブユニット101は、走査初期位置に配置される。走査初期位置は、真空吸着パッド129によって保持された接合ウェハ109の底面109aの下側の位置である。プローブ110と接合ウェハ109との間の鉛直方向の距離は、プローブ110の焦点距離および観察対象である接合面193の深さ(接合ウェハ109の底面109aから接合面193までの鉛直方向の距離)によって決まる。ケース111の上面111aと接合ウェハ109の底面109aとの間の鉛直方向の距離は、例えば、0.3~3mm程度に設定することが好適である。
【0060】
水供給工程S50では、ポンプ161から吐出される水のプローブユニット101への供給が開始される。プローブ110と接合ウェハ109との間の距離に応じて、ケース111の上面111aの液膜106の厚さが決定される。
【0061】
なお、プローブ110と接合ウェハ109との間の距離が大きくなるほど液膜106の厚さを大きくする必要がある。このため、プローブ110と接合ウェハ109との間の距離が大きくなることが予め分かっている場合には、疎水性(撥水性)の高い材料によって形成されたケース111を用いることが好ましい。なお、ケース111の上面111aに、疎水性の高いコーティング材料を塗布してもよい。これに対して、プローブ110と接合ウェハ109との間の距離が小さくなることが予め分かっている場合には、親水性の高い材料によって形成されたケース111を用いることができる。
【0062】
換言すれば、プローブユニット101のケース111の上面111aの疎水性(撥水性)が高い場合には、液膜106の厚みが大きくなるため、ケース111の上面111aから接合ウェハ109の底面109aまでの距離を大きく設定することができる。一方、プローブユニット101のケース111の上面111aの親水性が高い場合には、液膜106の厚みが小さくなるため、ケース111の上面111aから接合ウェハ109の底面109aまでの距離は小さく設定する必要がある。
【0063】
プローブユニット101に供給される水の流量や圧力は、水の表面張力によりケース111の上面111aに形成される液膜106の表面(液面)が波立たず、ほぼ静水面とみなせる程度の流量や圧力に設定される。
【0064】
このように、水供給工程S50では、プローブ110を収容するケース111に水が供給され、プローブ110と接合ウェハ109の底面109aとの間に水が満たされるとともに、ケース111の上面111aに接合ウェハ109に接する液膜106が形成される。
【0065】
空気吐出工程S60では、空気吐出部121からの空気の吐出が開始される。空気吐出部121の吐出開口部122の全域に亘って、環状の整流部(フィルタ)130が設けられている。このため、空気取込部169から取り込んだ空気は、整流部130によって吐出開口部122の開口端面123の全域に亘って一様な吐出圧で吐出される。
【0066】
吐出開口部122の開口端面123の高さと接合ウェハ109の上面109bの高さとの差(以下、高度差とも記す)は、1~3mm程度とすることが好適である。もっと大きい高度差があってもかまわないが、吐出した空気が拡散することにより、接合ウェハ109の上面109bに沿って空気が逃げやすくなるため、高度差が大きい場合は空気流の流速を大きくする必要がある。しかしながら、高度差を大きく設定し、空気流の流速を大きくする場合、空気供給源(空気圧縮機等)のエネルギー効率が低下するため、高度差はできるだけ小さく設定することが好ましい。
【0067】
本実施形態では、真空吸着パッド129を保持する基部120に比べて、接合ウェハ109側に突出するように空気吐出部121が形成されている。このため、空気吐出部121の開口端面123を接合ウェハ109に近づけることができ、空気流の流速を小さくすることができる。その結果、空気供給源のエネルギー効率の向上を図ることができる。
【0068】
なお、図示しないが、空気供給源から供給される空気の圧力は、圧力レギュレータによって制御され、空気供給源から供給される空気の流量は、空気流量センサと、空気流量を調節可能な流量制御機構とを備える空気流量制御装置によって制御される。空気流量制御装置は、統括制御装置150からの制御信号に基づき、空気供給源から保持装置102の空気取込部169に供給される空気の流量を制御する。
【0069】
走査工程S70では、プローブユニット101が接合ウェハ109の底面109aに沿って走査される。図2および図5を用いて、走査工程S70について詳しく説明する。図5は、接合ウェハ109の下面図であり、プローブ110が接合ウェハ109を走査する様子を示す。図2に示すように、プローブユニット101のケース111の上面111aには、水が連続的に供給されている。また、空気吐出部121から、空気が連続的に吐出されている。走査工程S70において、統括制御装置150は、ケース111の上面111aに形成される液膜106が接合ウェハ109の底面109aに接するようにケース111の上面111aに形成された水出口部115から水を連続的に吐出しながらプローブ110をケース111とともに底面109aに沿って走査する。
【0070】
走査工程S70において、統括制御装置150は、図5に示すように、接合ウェハ109の最下層ウェハ191aの底面109aの下側において、接合ウェハ109の一方側(図示左側)の外周端部(以下、第1外周端部199Aとも記す)を開始点(走査初期位置)、第1外周端部199Aとは反対の外周端部(以下、第2外周端部199Bとも記す)を終点としてプローブ110をX軸方向に移動させる往動処理を行う。その後、統括制御装置150は、プローブ110をY軸方向に所定距離だけシフト移動させるシフト処理を行う。さらに、統括制御装置150は、第2外周端部199Bを開始点、第1外周端部199Aを終点としてプローブ110をX軸方向に移動させる復動処理を行う。その後、統括制御装置150は、再びプローブ110をY軸方向に所定距離だけシフト移動させるシフト処理を行う。このように、統括制御装置150は、スキャナ駆動制御装置153を介してX軸スキャナ152x、Y軸スキャナ152y、Z軸スキャナ152zを駆動し、往動処理、シフト処理、復動処理、シフト処理の一連の処理を繰り返し行いながら、送受信装置151を介して、底面109aの下方向からプローブ110によって接合ウェハ109に超音波119を照射し、その反射波を取得する。
【0071】
図2に示すように、プローブ110とケース111は同期して移動する。図2では、プローブ110の送受信素子110aの中心が接合ウェハ109の第1外周端部199A、接合ウェハ109の中心、および接合ウェハ109の第2外周端部199Bに位置したときのプローブユニット101を図示している。走査工程S70において、プローブユニット101は、接合ウェハ109の第1外周端部199Aから第2外周端部199Bに向かって加速し、第2外周端部199Bの手前で減速し始め、第2外周端部199Bで停止する。さらに、プローブユニット101は、接合ウェハ109の第2外周端部199Bから第1外周端部199Aに向かって加速し、第1外周端部199Aの手前で減速し始め、第1外周端部199Aで停止する。プローブユニット101が、接合ウェハ109の外周端部199に位置すると、ケース111の上面111aに形成された液膜106の上方に接合ウェハ109が存在しなくなる。
【0072】
ここで、空気吐出部121を備えていない比較例に係る超音波映像装置では、プローブユニット101の上面の領域のうち、上方に接合ウェハ109の存在しない領域では、液膜106の厚みが、上方に接合ウェハ109が存在する領域に比べて厚くなる。また、プローブユニット101の加速開始直後や停止直後において、液面が波打つことに起因して、水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入するおそれがある。
【0073】
これに対して、本実施形態では、走査工程S70において、接合ウェハ109の外周端部199の下方にプローブ110が位置しているときに、ケース111から吐出される水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入しないように、空気吐出部121から空気を外周端部199に向けて吐出し、空気吐出部121から吐出される空気によってケース111から吐出される水を押し下げる。このように、本実施形態では、空気吐出部121からの空気流が、プローブユニット101の上面の領域のうち、上方に接合ウェハ109が存在しない領域の液面を押し下げる。このため、水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入することが防止される。
【0074】
なお、空気吐出部121から吐出される空気の流速が大きすぎる場合には、接合ウェハ109の底面109aとケース111の上面111aとの間に空気流が入り込み、水(液状媒体)による超音波の伝播経路が妨げられてしまう。一方、空気吐出部121から吐出される空気の流速が小さすぎる場合には、ケース111の上面111aの液膜の表面を押し下げる力が弱くなり、水が接合面193に浸入するおそれがある。本願発明者らは、数値流体シミュレーションおよび実験により、空気吐出部121から接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出される空気の流速は、2.5~7.5[m/s]とするのが好適であることを確認した。
【0075】
図3に示す走査工程S70において、統括制御装置150は、走査位置毎の反射波の信号強度を取得し、記憶する。走査工程S70が完了すると、映像生成工程S80に進み、統括制御装置150は、走査位置毎の反射波の信号強度に基づいて、映像データを生成し、生成した映像データを表示部155に出力する。表示部155は、入力された映像データに基づき、映像を表示画面に表示させる。
【0076】
映像生成工程S80が完了し、表示部155に接合ウェハ109の接合面193の映像が表示されると、工程が欠陥確認工程S90に進む。欠陥確認工程S90において、検査員は、接合面193に剥離、ボイド等の欠陥が生じているか否かを確認する。欠陥が生じている場合、検査員は、欠陥の位置、大きさを特定する。
【0077】
欠陥確認工程S90が完了すると、準備工程S10で選択された接合ウェハ109の検査が完了し、次の接合ウェハ109の検査が開始され、工程S10~S90が再び行われる。
【0078】
なお、工程の順序は、図3で示す例に限定されない。例えば、水供給工程S50と空気吐出工程S60の順序は逆であってもよい。しかしながら、所定の仕様の接合ウェハ109を初めて検査する場合には、図3に示すように、水供給工程S50において水の吐出圧や流量を設定し、その後、空気流の吐出圧や流量を設定することが好ましい。これにより、空気吐出工程S60において、プローブユニット101の上面に形成される水を効果的に押し下げることが可能な空気流の吐出圧や流量を適切に設定することができる。
【0079】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0080】
(1)図1および図2を用いて説明したように、本実施形態に係る超音波映像装置100は、2枚以上のウェハ191が接合された接合ウェハ109に超音波を照射し、その反射波を取得してウェハ191同士の接合面193の映像を生成する。超音波映像装置100は、接合ウェハ109の底面109aの下側において、底面109aに沿って移動しながら、接合ウェハ109に超音波を照射し、その反射波を取得するプローブ(超音波探触子)110と、接合ウェハ109の底面109aとの間において、底面109aに接する液膜106が形成されるように、超音波を伝播させる水(液体)を連続的に底面109aに向けて吐出しながら、プローブ110とともに移動するケース(液体吐出部)111と、空気(気体)を吐出する空気吐出部(気体吐出部)121を有する保持装置(気体吐出装置)102と、を備える。空気吐出部121は、ケース111から吐出される水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入しないように、水を押し下げるための空気を接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出する。
【0081】
また、図2図3および図5を用いて説明したように、本実施形態に係る水浸入防止方法(液体浸入防止方法)は、空気を吐出する空気吐出部121と接合ウェハ109とを位置決めする位置決め工程S20と、位置決めされた接合ウェハ109を真空吸着パッド(保持部)129によって保持するウェハ保持工程S30と、真空吸着パッド129によって保持された接合ウェハ109の底面109aの下側にプローブ110を配置するプローブ配置工程(探触子配置工程)S40と、プローブ110を収容するケース111に水を供給し、プローブ110と接合ウェハ109の底面109aとの間を水で満たすとともにケース111の上面111aに接合ウェハ109に接する液膜106を形成する水供給工程(液体供給工程)S50と、ケース111の上面111aに形成される液膜106が接合ウェハ109の底面109aに接するようにケース111の上面111aに形成された水出口部(液体出口部)115から水を連続的に吐出しながらプローブ110をケース111とともに底面109aに沿って走査する走査工程S70と、を含む。走査工程S70において、接合ウェハ109の外周端部199の下方にプローブ110が位置しているときに、ケース111から吐出される水が接合ウェハ109の外周端部199から接合面193に浸入しないように、空気吐出部121から空気を外周端部199に向けて吐出し、空気吐出部121から吐出される空気によってケース111から吐出される水を押し下げる。
【0082】
ケース111は、底面109aとの間で所定の離間距離を保持し、底面109aとの間に形成する所定厚みを有する液膜106の形状を保持するように、所定の吐出圧で連続的に水を供給しながら、プローブ110と同期して移動する。これにより、水の接触領域を底面109aだけに限定することができる。空気吐出部121から吐出される空気によって、ケース111の上面111aのうち接合ウェハ109が上方に存在しない領域に形成される液膜106の表面を強制的に押し下げ、水が接合ウェハ109の接合面193の外周端縁194に近づくことを防ぐことができる。したがって、本実施形態によれば、プローブ110の走査速度を低下させることなくウェハ191同士の接合面193への水の浸入を防止することができる。その結果、接合ウェハ109に対するプローブ110の走査時間を短縮し、接合面193の映像の生成効率を向上させることができる。接合面193の映像の生成効率の向上は、映像を用いた検査の効率の向上につながり、接合ウェハ109を用いた製品の生産効率の向上につながる。
【0083】
また、接合面193への水の浸入が防止されるため、水の浸入に起因した不具合の発生を防止できる。例えば、接合面193に存在する金属の腐食を防止できる。また、接合ウェハ109の検査が、ウェハ191の金属同士を接合する前に行われる場合、接合面193に水が浸入すると金属に酸化被膜が形成されることにより、検査後の金属同士の接合を適切に行うことができなくなるおそれがある。本実施形態では、接合面193に水が浸入することが防止されるため、接合ウェハ109の検査後の金属同士の接合を適切に行うことができる。
【0084】
(2)超音波映像装置100は、ケース111の上面111aに形成される液膜106が一定の厚みに保持されるように、ケース111に水(液体)を供給する水供給装置(液体供給装置)160を備えている。この構成によれば、液膜106の厚みが変動するような場合に比べて、接合面193の映像を適切に生成することができ、接合面193への水の浸入を適切に防止することができる。
【0085】
(3)空気吐出部121は、空気を取り込む複数の空気取込部(気体取込部)169と、複数の空気取込部169に連通し、複数の空気取込部169から取り込まれた空気を接合ウェハ109の外周端部199に向けて吐出する吐出開口部122と、吐出開口部122に設けられ複数の空気取込部169から取り込まれた空気を整流する整流部130と、を有している。吐出開口部122は、接合ウェハ109の外周端部199の上方において外周端部199に沿うように環状に形成されている。整流部130は、吐出開口部122の全域に亘って設けられている。
【0086】
この構成では、空気取込部169から取り込んだ空気が、整流部130によって吐出開口部122の開口端面123の全域に亘って一様な吐出圧で吐出される。これにより、接合ウェハ109の外周端部199の全周において、接合面193の外周端縁194からの水の浸入を適切に防止することができる。
【0087】
保持装置(気体吐出装置)102は、接合ウェハ109を水平に保持する保持部としての真空吸着パッド129を有している。真空吸着パッド129は、ケース111の上面111aから接合ウェハ109の底面109aまでの距離が、所定の離間距離で維持されるように、接合ウェハ109を保持する。この構成では、保持装置102が、接合ウェハ109の外周端部199に向けて空気を吐出する機能と、接合ウェハ109を保持する機能とを有する。このため、接合ウェハ109を保持する装置と、接合ウェハ109に空気を吐出する装置とを個別に設ける場合に比べて、部品点数を低減できるとともに、精度よく接合ウェハ109の外周端部199に向けて空気を吐出することができる。
【0088】
<第2実施形態>
図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態に係る超音波映像装置200について説明する。なお、第1実施形態で説明した構成と同一もしくは相当する構成には同一の参照記号を付し、相違点を主に説明する。
【0089】
図6は、第2実施形態に係る超音波映像装置200の空気吐出部221の形状について示す図である。第2実施形態では、図示するように、空気吐出部221の吐出開口部222から吐出される空気の向きが鉛直軸Vに対して傾斜角度θだけ傾斜するように、吐出開口部222が形成されている(θ>0)。
【0090】
第1実施形態では、空気吐出部121の吐出開口部122から鉛直下方向に空気が吐出される例について説明した。しかしながら、図7に示すように、接合ウェハ109を構成するウェハ191の外周端部のそれぞれに対して面取りが施されている場合、接合ウェハ109の外周端部199の一部に空気流が付与されない部分ができてしまうおそれがある。この場合、接合ウェハ109の接合面193の外周端縁194の近傍で渦流が発生し、負圧領域A0が形成される。その結果、負圧領域A0によって液膜106の一部が吸い上げられ、水が接合面193に浸入するおそれがある。
【0091】
そこで、第2実施形態では、図6に示すように、互いに接合される最上層ウェハ191bと最下層ウェハ191aの外周端部同士の間に負圧領域A0が形成されることを防止するために、最上層ウェハ191bと最下層ウェハ191aの外周端部同士の間に向けて、斜めから空気を当てる。
【0092】
本実施形態では、空気吐出部221の吐出開口部222の径方向中心軸Cが、接合面193の外周端縁194(面取りが始まる部分)を通る鉛直軸Vと接合ウェハ109の底面109aとの交点Pを通過するように、吐出開口部222が形成されている。つまり、吐出開口部222の外周面および内周面も、吐出開口部222の径方向中心軸Cと同様、鉛直方向(接合ウェハ109の底面109aの法線方向)に対して傾斜している。吐出開口部222の径方向中心軸Cと、鉛直軸Vとのなす角である傾斜角度θは、数値流体シミュレーションや実験により、最も好適な角度を設定することが好ましい。なお、数値流体シミュレーションや実験により、傾斜角度θが10度以上30度以下であれば、渦流の発生を抑制できることが確認された。
【0093】
接合ウェハ109の外周端部199と吐出開口部222の位置関係において、多少の位置ずれが許容される。接合ウェハ109の接合面193の外周端縁194は、図6に示す位置から内径方向に(d/2)×cosθ未満の範囲、あるいは、図6に示す位置から外径方向に(d/4)×cosθ以下の範囲に収めることが好ましい。
【0094】
本第2実施形態では、走査工程S70において、空気吐出部221の吐出開口部222から鉛直軸Vに対して傾斜する方向に空気を吐出する。このような第2実施形態によれば、接合ウェハ109を構成するウェハ191の外周端部のそれぞれに対して面取りが施されている場合において、互いに接合されるウェハ191の外周端部同士の間に負圧領域A0が形成されることを防止できる。したがって、第2実施形態によれば、ウェハ191の外周端部に面取りが施されている場合において、接合ウェハ109の接合面193への水の浸入を適切に防止することができる。
【0095】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、上述の異なる実施形態で説明した構成同士を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせることも可能である。
【0096】
<変形例1>
上記実施形態では、空気吐出部121に設けられる整流部130が、多孔質体からなるフィルタである例について説明したが、本発明はこれに限定されない。以下、空気吐出部に設けられる整流部の変形例について説明する。
【0097】
<変形例1-1>
図8は変形例1-1に係る空気吐出部121Aの一部を示す斜視図であり、図9図8のIX-IX線断面模式図であり、図10図9のX-X線断面模式図である。図10は、図9に示す吐出開口部122Aの流路に沿って切断した断面模式図である。
【0098】
図8図10に示すように、本変形例1-1では、吐出開口部122Aに、複数の整流部130Aが設けられている。複数の整流部130Aは、空気吐出部121Aの周方向に沿って等間隔で設けられている。隣り合う整流部130A間には、隣り合う整流部130A同士を隔てる縦板136が形成されている。整流部130Aは、空気の上流側から下流側に向かって第1空気室131、第2空気室132および第3空気室133を有している。
【0099】
第1空気室131は、上流側で空気取込部169Aに連通している。第1空気室131と第2空気室132とを隔てる横板137には、2つの貫通孔134が形成されている。第1空気室131は、下流側で2つの貫通孔134を介して第2空気室132に連通している。第2空気室132と第3空気室133とを隔てる横板138には、4つの貫通孔135が形成されている。第2空気室132は、下流側で4つの貫通孔135を介して第3空気室133に連通している。第3空気室133は、下流側で吐出開口部122Aの出口部139に連通している。
【0100】
このように、本変形例に係る整流部130Aは、円形状の貫通孔134,135が形成された横板137,138を複数段設け、吐出開口部122Aの出口部139に近づくにつれて貫通孔の数が増える構成である。なお、複数段の横板137,138に設けられた複数の貫通孔134,135は、開口面積が同じである。各段の横板137,138に設けられた貫通孔134,135は、中心軸が互いにずれて配置される。
【0101】
図10に示すように、例えば、各貫通孔134,135は、後段の横板138に設けられた貫通孔135から前段の横板137に設けられた貫通孔134が見通せないように、かつ、横板137,138の長手方向の長さを2等分する軸であって横板137,138の短手方向に平行な軸を対称軸とした線対称に配置される。なお、図9および図10では、吐出開口部122Aに3つの空気室が設けられる例について図示しているが、空気室の数は4つ以上であってもよい。この場合、上流側から下流側の空気室に連通する貫通孔の数は、下流側ほど多くすることが好ましい。
【0102】
このような変形例によれば、第1実施形態で説明した多孔質体からなるフィルタを設けることなく、空気取込部169Aから取り込んだ空気を、平面視で環状の吐出開口部122Aの全域から均一な吐出圧で吐出することができる。
【0103】
<変形例1-2>
整流部は、空気取込部169Aと吐出開口部122Aの出口部139との間にクランク状の流路を有する形態であってもよい。この構成では、各段のクランク状に折れ曲がった流路の下流側から上流側を見通せない構造とする。例えば、整流部は、空気取込部169Aから取り込まれて鉛直下方に流れる空気を、クランク状の流路によって外径方向に90度方向を変換させ、その後、鉛直下方に90度方向を変換させ、その後、内径方向に90度方向を変換させ、その後、鉛直下方に90度方向を変換させて吐出開口部122Aの出口部139に導く構成とすることができる。
【0104】
<変形例1-3>
整流部は、変形例1-1および変形例1-2で説明した整流部の特徴を有していてもよい。つまり、変形例1-2で説明した整流部のクランク状の流路の途中に貫通孔が形成された横板を空気の流れ方向に複数段設けてもよい。横板に設けられる貫通孔の数は、下流側ほど多くする。
【0105】
<変形例2>
上記実施形態では、接合ウェハ109が円板状のウェハ191を層状に接合した構成である例について説明したが、本発明はこれに限定されない。接合ウェハ109は、矩形状のウェハ191を層状に接合した構成であってもよい。
【0106】
<変形例3>
上記実施形態では、接合ウェハ109が2枚のウェハ191によって構成される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。接合ウェハ109は、3枚以上のウェハ191が層状に接合された構成であってもよい。
【0107】
<変形例4>
上記実施形態では、気体吐出部(空気吐出部121,221)から吐出する気体が空気である例について説明したが、気体吐出部は、空気以外の気体(例えば、窒素)を吐出してもよい。なお、空気を用いることで、他の気体を用いる場合に比べて、低コストで検査を実施することができる。
【0108】
<変形例5>
上記実施形態では、X軸スキャナ152x、Y軸スキャナ152y、およびZ軸スキャナ152zがプローブユニット101を移動させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。X軸スキャナ152x、Y軸スキャナ152y、およびZ軸スキャナ152zは、それぞれプローブユニット101および保持装置102のうちの一方を移動させる構成であればよい。例えば、X軸スキャナ152xおよびZ軸スキャナ152zはプローブユニット101を移動させ、Y軸スキャナ152yは保持装置102を移動させる構成としてもよい。
【0109】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。各実施形態において、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0110】
100…超音波映像装置、101…プローブユニット、102…保持装置(気体吐出装置)、106…液膜、109…接合ウェハ(積層ウェハ)、109a…接合ウェハの底面、109b…接合ウェハの上面、110…プローブ(超音波探触子)、110a…送受信素子、110b…エンコーダ、110c…ハウジング、110d,110e…制御線、111…ケース(液体吐出部)、111a…ケースの上面、115…水出口部(液体出口部)、116…水入口部、117…貫通孔、119…超音波、120…基部、121,121A…空気吐出部(気体吐出部)、122,122A…吐出開口部、123…開口端面、129…真空吸着パッド(保持部)、130…整流部(フィルタ)、130A…整流部、150…統括制御装置、151…送受信装置、152x…X軸スキャナ、152y…Y軸スキャナ、152z…Z軸スキャナ、153…スキャナ駆動制御装置、155…表示部、160…水供給装置(液体供給装置)、161…ポンプ、162…給水チューブ(配管)、163…流量制御機構、169,169A…空気取込部(気体取込部)、191…ウェハ(半導体ウェハ)、191a…最下層ウェハ、191b…最上層ウェハ、193…接合面、194…外周端縁、199…外周端部、200…超音波映像装置、221…空気吐出部、222…吐出開口部、S10…準備工程、S20…位置決め工程、S30…ウェハ保持工程、S40…プローブ配置工程(探触子配置工程)、S50…水供給工程(液体供給工程)、S60…空気吐出工程(気体吐出工程)、S70…走査工程、S80…映像生成工程、S90…欠陥確認工程、V…鉛直軸、θ…傾斜角度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10