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  • -探傷試験の欠陥検出方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170549
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】探傷試験の欠陥検出方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/91 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01N21/91 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082387
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】390002808
【氏名又は名称】マークテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直樹
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA90
2G051AB02
2G051GC03
2G051GD01
2G051GD06
(57)【要約】
【課題】
探傷試験後の探傷画像と、該探傷画像と同一領域の検査体の形状を表す形状画像との類似度を算出して欠陥を検出する方法であって、形状画像が探傷画像と同一の方法で撮影した画像であるから、正確に類似度を算出することができるので、欠陥の検出精度に優れると共に作業効率にも優れ、また、探傷試験時に形状変化部分をマスクして検査対象から除外する必要がなく、形状変化の近傍に発生した欠陥も検出可能である欠陥検出方法を提供する。
【解決手段】
探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の検査体の形状画像との類似度を算出することにより欠陥を検出する欠陥検出方法において、前記形状画像が、探傷試験後であり、検査体と同一形状であり、探傷画像と同一の方法で撮影した欠陥を有さない無欠陥画像である欠陥検出方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁粉探傷試験及び浸透探傷試験の欠陥検出方法であって、
探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の検査体の形状画像との類似度を算出することにより欠陥を検出する欠陥検出方法において、
前記形状画像が、探傷試験後であり、検査体と同一形状であり、探傷画像と同一の方法で撮影した欠陥を有さない無欠陥画像である欠陥検出方法。
【請求項2】
前記形状画像が2枚以上の画像を平均してなる無欠陥画像である請求項1記載の欠陥検出方法。
【請求項3】
前記探傷試験が蛍光探傷試験であって、前記形状画像が蛍光探傷試験後の蛍光の無欠陥画像である請求項1又は2記載の欠陥検出方法。
【請求項4】
前記探傷画像及び/又は形状画像が画像処理した画像である請求項1又は2記載の欠陥検出方法。
【請求項5】
請求項1又は2記載の方法で欠陥を検出することを特徴とする探傷試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は探傷試験における欠陥検出方法に関する。詳しくは、探傷試験後の探傷画像と、探傷画像と同一領域の検査体の形状を表す形状画像との類似度を算出して欠陥を検出する方法であって、形状画像が探傷画像と同一の方法で撮影した画像であるから、正確な類似度を算出することができるので欠陥の検出精度に優れると共に作業効率にも優れ、また、探傷試験時に形状変化部分をマスクして検査対象から除外する必要がなく、形状変化の近傍に発生した欠陥も検出可能である欠陥検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は磁粉探傷試験及び浸透探傷試験の欠陥検出方法である。
【0003】
強磁性の検査体表面や表面付近に磁束をさえぎるような欠陥部があると、その近くで磁束の一部が空間に漏洩し、磁極が形成される。
【0004】
磁粉探傷試験とは、検査体を磁化し、生じた磁極によって吸着された磁粉模様から表層部の欠陥を検出する方法である。
【0005】
しかし、磁極は欠陥部のみではなく、歯車の歯のように溝や突出部等の形状変化があると、該形状変化部分にも発生する。
【0006】
形状変化部分に発生した磁極に付着した磁粉は欠陥部でない部分に付着した磁粉であるからいわゆるノイズである。
【0007】
ノイズは、欠陥検出精度を低下させるから、形状変化部分はマスクして検査対象から外す必要がある。
【0008】
したがって、形状変化を有する検査体の場合は形状変化の近傍に欠陥部があったとしてもマスクで覆われるので、欠陥部を検出できない虞がある。
【0009】
また、マスクをする工程が必要なため作業効率が悪いという問題がある。
【0010】
浸透探傷試験においても、余剰の浸透液を洗浄除去する際に、形状変化部分では洗浄不足が発生し、余剰の浸透液が十分に除去できずノイズとなる。
【0011】
ノイズは、欠陥検出精度を低下させるから、磁粉探傷試験と同様に形状変化部分はマスクして検査対象から外す必要があるため作業効率が悪いという問題がある。
【0012】
近年、ディープラーニング等に代表される機械学習により、欠陥に由来する指示模様の特徴を学習して検査を行うことが試みられている。
【0013】
しかし、機械学習のためには、多くの欠陥画像を用意する必要があるが、一般に工業製品における欠陥の発生率は低いため、欠陥画像を得るのが難しいという問題がある。
【0014】
正常品を学習させることで異常を検知する異常検知という手法も用いられることがある。
【0015】
しかし、検査体の検査領域に対して一般に欠陥の領域は小さく、検査画像において欠陥品と正常品との差を学習させるのが難しいという問題がある。
【0016】
そこで、形状変化がある検査体であっても、形状変化部分にマスクをして検査対象から除去しなくても、形状変化に発生した磁極によるノイズを除去でき、高い検出精度で欠陥を検出できると共に作業効率にも優れる欠陥検出方法の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2000-11528
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
特許文献1には、磁化された鋼片の表面に蛍光磁粉を付着させ、該鋼片に付着した蛍光磁粉が発する蛍光を撮像し、得られた撮像画像の微分画像を生成し、前記微分画像から欠陥候補領域を抽出すると共に、前記撮像画像を2値化した画像に現れた領域の大きさ及び形状に基づいて前記欠陥候補領域から欠陥を特定することでノイズ成分から欠陥を分離する方法が記載されている。
【0019】
しかし、特許文献1記載の方法は、蛍光磁粉の分散不足等により蛍光磁粉が凝集した、いわゆる磁粉溜まりによるノイズであって、比較的小さく、点状に現れるノイズを除去する方法であるため、形状変化部に生じる磁極によって生じるノイズを除去することはできないという問題がある。
【0020】
本発明者は、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、試行錯誤的な数多くの試作・実験を重ねた結果、探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の検査体の形状画像との類似度を算出することにより欠陥を検出する欠陥検出方法において、前記形状画像が、探傷画像と同一の方法で撮影した検査体と同一形状の無欠陥画像であれば、形状が指示模様に対して及ぼす影響が似たものとなるため正確な類似度が算出できるから、欠陥の検出精度に優れると共に作業効率にも優れ、また、探傷試験時に形状変化部分をマスクして検査対象から除外する必要がなく、形状変化の近傍に発生した欠陥も検出可能な欠陥検出方法になるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記技術的課題は、次のとおり本発明によって解決できる。
【0022】
本発明は、磁粉探傷試験及び浸透探傷試験の欠陥検出方法であって、探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の検査体の形状画像との類似度を算出することにより欠陥を検出する欠陥検出方法において、前記形状画像が、探傷試験後であり、検査体と同一形状であり、探傷画像と同一の方法で撮影した欠陥を有さない無欠陥画像である欠陥検出方法である。
【0023】
また本発明は、前記形状画像が2枚以上の画像を平均してなる無欠陥画像である前記の欠陥検出方法である。
【0024】
また本発明は、前記探傷試験が蛍光探傷試験であって、前記形状画像が蛍光探傷試験後の蛍光の無欠陥画像である前記の欠陥検出方法である。
【0025】
また本発明は、前記探傷画像及び/又は形状画像が画像処理した画像である前記の欠陥検出方法である。
【0026】
また本発明は、前記の方法で欠陥を検出することを特徴とする探傷試験装置である
【発明の効果】
【0027】
本明細書において「無欠陥画像」とは、探傷試験後であり、検査対象と同一形状であり、探傷画像と同一の方法で撮影した画像であり、該画像には検査対象の欠陥がない画像をいう。
【0028】
「探傷試験」とは、磁粉探傷試験及び浸透探傷試験を含む語として使用する。
【0029】
欠陥に由来する指示模様を「欠陥指示模様」といい、欠陥以外の原因で現出する指示模様は単に「指示模様」という。
【0030】
本発明は、探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の検査体の形状画像との類似度を算出して、欠陥部を検出する方法であるから、検査体の形状変化部分をマスクして検査対象から外さなくても、形状変化に起因するノイズを除去して高い検出精度で欠陥を検出することができる欠陥検出方法である。
【0031】
また、形状変化部分をマスクしないので、形状変化の近傍に発生した欠陥も検出することができる。
【0032】
また、形状画像が探傷画像と同一の方法で撮影した無欠陥画像なので、形状が指示模様に対して及ぼす影響が似たものとなるため、正確な類似度を算出することができるから高い精度で欠陥を検出できる欠陥検出方法である。
【0033】
また、2以上の画像を平均して作製した無欠陥画像を形状画像とすれば、形状変化による指示模様の位置は探傷試験ごとに変化し難いため、平均すれば形状変化による指示模様が増強されて現出する一方、探傷試験ごとのバラつきは平均化されるため、形状変化による指示模様との差が明瞭になり、さらに高い精度で欠陥を検出できる欠陥検出方法になる。
【0034】
特に、蛍光探傷試験後の蛍光の画像を2枚以上平均して形状画像を作製すれば、形状変化による指示模様は明瞭であるのに対し、探傷試験ごとのバラつきは低く、暗く現出するので、形状変化による指示模様と欠陥指示模様との差をさらに明瞭にすることができる。
【0035】
また、探傷画像及び/又は形状画像に欠陥指示模様や検査体の形状を強調する画像処理を行なえば、さらに高い検出精度で欠陥を検出できる欠陥検出方法になる。
【0036】
また、本発明に係る欠陥検出方法を備える探傷試験装置であれば、高い精度で欠陥を検出できる探傷試験装置になる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】SSIMの閾値を示す探傷画像である。
図2】蛍光画像から作製した形状画像である。
図3】可視光画像から作製した形状画像である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明は、検査体の探傷試験後の探傷画像と、前記探傷画像と同一領域の無欠陥画像との類似度を算出することにより、欠陥を検出する方法である。
【0039】
本発明における探傷画像とは、探傷試験後の検査体をカメラ等の画像取得手段で取得した画像であればよく、蛍光画像であっても、可視光画像であってもよい。
【0040】
探傷画像の例として、グレースケールで取り込んだ画像、RGB画像、RGB画像から赤(R)、緑(G)又は青(B)の色を抽出した画像、HSV色空間画像、HSL色空間画像を使用することができる。
【0041】
本発明における形状画像とは、検査体と同一形状であり、探傷試験後の無欠陥画像であって、探傷画像と同一の方法で撮影した画像である。
【0042】
同一の方法とはカメラ等の撮影方法が同一であり、使用する照明装置や照明を当てる位置が同一である状態をいう。
【0043】
探傷画像と形状画像の撮影時の照明装置や、照明の位置が異なると、同一のカメラ等で撮影したとしても異なる位置から照明が当たることになるため、探傷画像と形状画像とで形状にずれが生じる虞がある。
【0044】
また、磁粉探傷試験であると磁化に方向性がある場合、可視光で撮影された形状画像と磁化時に得られる形状変化による指示模様が異なった位置に現出することがあり、このような部分においては類似度が低下するため、いわゆるノイズを欠陥として検出することになり、検出精度が低下する。
【0045】
探傷画像と形状画像を同一の方法で撮影すれば、探傷画像と形状画像との形状のずれや、形状画像と形状変化による指示模様との間にずれが生じ難いため、より正確に類似度を算出することができ、高い精度で欠陥を検出することができる。
【0046】
また、探傷画像の撮影方法と同一の方法であれば、探傷画像の撮影状態のまま形状画像の撮影ができるので、探傷画像と形状画像で照明装置等を変更する手間がかからないから作業効率に資する。
【0047】
無欠陥画像は画像処理により欠陥を消去して無欠陥にした画像でもよい。
【0048】
形状画像は、2枚以上の画像を平均してなる無欠陥画像であることが好ましい。
【0049】
形状変化による指示模様が現出する位置は、探傷試験ごとに変化し難いが、欠陥による指示模様であると探傷試験ごとにわずかにずれるため、複数の形状画像を平均した画像であると、形状変化による指示模様は強調されるが、探傷試験ごとのバラつきによる指示模様は平均化されるから、形状変化による指示模様とバラつきによる指示模様との差が明瞭になり、正確に類似度を算出することができるため、高い精度で欠陥を検出できる。
【0050】
特に、蛍光探傷試験であれば、複数の蛍光画像を平均化すると、形状変化による指示模様は明瞭になる一方、探傷試験ごとのバラつきによる指示模様は平均化されて暗くなるので形状変化部分がさらに明瞭な形状画像になる。
【0051】
2枚以上を平均してなる無欠陥画像の場合、平均する複数の画像の一部に欠陥がある画像が含まれていても良い。
【0052】
平均することで、欠陥指示模様も平均化されて、形状変化による指示模様と区別できるようになるからである。
【0053】
複数の形状画像を平均した形状画像は複数の形状画像の同じ位置のピクセルの平均値を算出することで作製することができる。
【0054】
公知の画像ソフトを使用すれば、複数の形状画像を平均した形状画像を作製することができる。
【0055】
本発明における探傷画像及び形状画像には各種画像処理を行ってもよい。
【0056】
画像処理としては、直線検出処理を例示する。
【0057】
本明細書における直線検出処理とは、画像中の直線部分が強調されるようにする処理を言い、詳しくは、明るさの変化を強調することで輪郭を明瞭にする処理を言う。
【0058】
探傷画像に直線検出処理を行うと、蛍光磁粉探傷試験であると蛍光部分が、浸透探傷試験であると、現像剤層に吸い上げられた浸透液部分の輪郭が強調されるので類似度の算出に資する場合がある。
【0059】
ギアに使用される歯車のように直線部が多い検査体には、直線検出処理を行なえば形状が強調されるので類似度の算出に資する場合がある。
【0060】
欠陥指示模様が途切れている場合には、領域を結合して一つの欠陥指示模様にする処理を行ってもよい。
【0061】
領域を結合する方法の一例として、ある閾値で画像を二値化した後、結合したい方向に対して膨張処理を行った後に、膨張とは反対方向に収縮処理を行うことで近傍領域を連結して一つの領域とするものがある。
【0062】
画像処理は公知の画像処理手段を使用すればよい。
【0063】
本発明においては、探傷画像から指示模様が現出している領域(以下、「欠陥指示模様候補領域」と言う)を切り出した後、切り出した領域と同一の領域を形状画像から切り出し、類似度を算出する。
【0064】
領域を切り出す画像は元の画像を使用してもよいし、各種画像処理した画像を使用してもよい。
【0065】
類似度の算出方法としては特に限定されず、平均二乗誤差(MSE)やStructural Similarity(SSIM)を例示する。
【0066】
本発明における類似度の算出方法は乖離度を算出して類似度を求める方法であってもよい。
【0067】
MSEは、探傷画像と同一領域の形状画像の同じ位置のピクセルの輝度の差を2乗した値を使用する。
【0068】
MSEの算出方法は[数1]のとおりである。
【0069】
【数1】
SSIMはピクセル平均、分散、共分散を使用して周囲のピクセルとの相関を取り込んだ指標である。
【0070】
SSIMの算出方法は[数2]の通りである。
【0071】
【数2】
【0072】
類似度を算出した後、閾値の類似度より高ければ正常部、閾値の類似度よりも低ければ欠陥部として評価することができる。
【0073】
閾値は模擬欠陥部との類似度との比較により適宜決定すればよい。
【0074】
例えば、予め、模擬欠陥部を有する検査体を使用して探傷試験を行い、該模擬欠陥部の探傷画像と形状画像との類似度を算出し、該類似度を基準として決定すればよい。
【0075】
本発明における画像処理は公知の画像処理ソフトを使用することができる。
【実施例0076】
本発明を実施例及び比較例を挙げてより詳しく説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0077】
ギアの歯車の歯を模した形状の検査体を使用した。なお、検査体は模擬欠陥部を有する。
【0078】
(探傷画像)
軸通電法で検査体を磁化し、検査液を連続法で適用しながら蛍光磁粉探傷試験を行った。
【0079】
探傷試験後の検査体をカラー(RGB)画像として撮影して、緑成分のみを抽出した画像を探傷画像とした。
【0080】
得られたRGB画像から蛍光色である緑に対応するチャンネルを抽出した。
【0081】
抽出した画像に直線検出処理を行った(図1)。
【0082】
直線検出処理には、5×5のフィルタ([数3])を使って畳み込み演算を行った。
【0083】
【数3】
【0084】
直線検出処理を行った探傷画像の輝度が150未満のピクセルの輝度を0とし、輝度が150以上の領域を連結し、ピクセル数が20以上、かつ、10000未満の領域を欠陥指示模様候補領域として残した。
【0085】
(形状画像)
検査体と同一形状の無欠陥体を検査体と同様の蛍光探傷試験を行い、探傷画像と同一の方法で画像を得た後、探傷画像と同様に直線検出処理を行った。
【0086】
直線検出処理を行った5枚の画像の各ピクセルにおける平均値を算出し、平均した形状画像を作製した(図2)。
【0087】
平均した形状画像から輝度140未満のピクセルの輝度を0としたものを実施例の形状画像とした。
【0088】
また、比較例として、検査体と同一形状の無欠陥体を検査体と同様の蛍光探傷試験を行った後、可視光下でカラー(RGB)画像として撮影した。
【0089】
可視光下で撮影したRGB画像をグレースケールに変換した後、実施例の形状画像と同様の直線検出処理を行った(図3)。
【0090】
輝度140未満のピクセルの輝度を0として、比較例の形状画像を得た。
【0091】
取得した類似度算出用の探傷画像の欠陥指示模様候補領域と同一の領域を実施例及び比較例の形状画像から切り出し、SSIM[数2](C1=(0.01*255)C2= (0.03*255))によって類似度を算出した。
【0092】
模擬欠陥部のSSIMを算出し、模擬欠陥部のSSIMよりも類似度が低い部分を欠陥部として抽出した。
【0093】
結果を表1に示す。
なお、「閾値」とは、模擬欠陥部のSSIMの値をいう。
【0094】
【表1】
【0095】
表1より、探傷画像と同一の方法である蛍光を使用して撮影した画像を形状画像とすれば、可視光を使用して撮影した形状画像よりも欠陥指示模様候補領域が少なくなるので、欠陥の検出精度が高くなることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、探傷試験後の探傷画像と、該探傷画像と同一領域の検査体の形状を表す形状画像との類似度を算出して欠陥を検出する方法であって、形状画像が探傷画像と同一の方法で撮影した画像を使用するため、正確な類似度を算出でき、精度の高い探傷試験を実施することができる。
また形状変化部分をマスクして検査対象から除外する必要がないので、形状変化の近傍に発生した欠陥も検出可能であり、また、探傷画像と形状画像を同一の撮影装置を使用することができるため作業効率に優れる欠陥検出方法である。
よって、本発明の産業上の利用可能性は高い。
図1
図2
図3