(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170566
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/20 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
B60N2/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082412
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BD01
(57)【要約】
【課題】リヤシートのシートバックを前倒させる際の操作性をさらに向上させることが可能な車両用シートを得る。
【解決手段】操作部42は、車室内80から凹部94を介して当該操作部42を引っ張り、又は、ラゲージスペース15側から突設部90を押圧することによって、当該操作部42を前方移動させることができ、これにより、ロック機構44によるシートバック部28のロック状態を解除することができる。すなわち、車室内80からの操作とラゲージスペース15側からの操作とで操作部42に対して操作する位置がシート前後方向の前方側と後方側とで真逆であるにも拘わらず、操作部42の操作方向を同じにすることによって、操作部42の操作に対して違和感を生じさせないようにしてシートバック部28を前倒させる際の操作性を向上させている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内の前部に配置されたフロントシートよりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシートにおいて着座する乗員の大腿部及び臀部を支持するシートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックが起立した起立状態を維持するロック機構と、
前記シートバックよりもシート前後方向の前方側及び前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から操作可能とし、シート前後方向の前方側へ向かって移動する前方移動によって前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する操作機構と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記操作機構は、
前記前方移動が可能な操作部材を含み、
前記操作部材は、
手指が掛止可能な凹部と、
前記凹部よりもシート前後方向の後方側に配置されると共に、シート上下方向の上方側へ向かって突設され、前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から押圧可能な突設部と、
を含んで構成されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記操作部材は、前記凹部及び前記突設部が内側に設けられ前記シートバックの意匠面を構成する表皮に当接するフランジが外側に設けられたカバー部をさらに含んで構成され、
前記突設部は、シート側面視で台形状を成しており、当該突設部の上面は前記フランジに略沿うように構成されている請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記突設部は、
当該突設部の後壁部にシート上下方向に沿って凹凸状に形成されたローレット部が設けられている請求項2又は請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記ロック機構は、
車体側に設けられたストライカに当接可能とされ、前記操作機構の前記前方移動により移動する第1移動部材と、
前記第1移動部材と共に前記ストライカを挟持して当該ストライカに対して係止され前記シートバックの起立状態を維持し、前記操作機構の前記前方移動により移動して前記ストライカに対して係止された状態を解除する第2移動部材と、
を含んで構成されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項6】
前記第1移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第1軸部を中心に回動可能に設けられた第1回動部材であると共に、前記第2移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第2軸部を中心に回動可能に設けられた第2回動部材であり、
前記ロック機構は、
前記第1回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記ストライカに対して当接する当接部と、
前記第2回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記当接部と共に前記ストライカを挟持する挟持部と、
前記第1回動部材におけるシート前後方向の前部に一端部が装着され、前記第2回動部材におけるシート前後方向の前部に他端部が装着されて、前記挟持部が前記当接部と共に前記ストライカを挟持する状態を維持する方向へ付勢する付勢部材と、
をさらに含んで構成されている請求項5に記載の車両用シート。
【請求項7】
前記操作機構は、
前記前方移動が可能な操作部材と、
前記操作部材による前記前方移動によって移動し、前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する方向へ前記第2回動部材を回動させるロッドと、
を含んで構成されている請求項6に記載の車両用シート。
【請求項8】
前記当接部と前記挟持部とで前記ストライカが挟持された当該ストライカの標準位置から前記ロック機構による前記シートバックのロック状態が解除された後、前記ストライカを前記標準位置に案内するガイド機構が設けられている請求項7に記載の車両用シート。
【請求項9】
前記ガイド機構は、
前記第2移動部材を回動可能に支持するベース部材と、
前記ストライカを介してシート前後方向の前方側へ向かう外力に対して前記第2軸部を中心に回動し、前記ベース部材との隙間を形成する第2移動部材と、
を含んで構成されている請求項8に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、車体フロアに設けられシートクッションのシート前後方向の前方側に設けられた格納凹部内に当該シートクッションを移動させ、シートバックをシートクッションの上に前倒しさせることによって、シートクッションを格納凹部内に収納させる車両用シート格納構造に関する技術が開示されている。
【0003】
この先行技術では、シートクッションを格納する際、シートバックの上部に配設されたロック解除手段の操作部を操作することで、シートクッションを使用位置に保持しているロック手段を解除可能としている。
【0004】
当該操作部は、シート前後方向の前方側及びシート前後方向の後方側へ向かって回転可能とされ、当該操作部がシート前後方向の前方側及びシート前後方向の後方側の何れか一方側へ向かって回転することによって当該ロック手段の解除を可能としている。そして、ロック手段の解除により、シートバックがシートクッションの上に前倒し可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、操作部をシート前後方向の前方側へ向かって回転させ、シートバックをシートクッションの上に前倒させる場合、操作部を操作する方向とシートバックを倒す方向が同じため操作に対する違和感は生じない。一方、操作部をシート前後方向の後方側へ向かって回転させる場合、操作部を操作する方向とシートバックを倒す方向が逆のため、操作部の操作に対して違和感が生じ、操作し辛い可能性がある。
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、リヤシートのシートバックを前倒させる際の操作性をさらに向上させることが可能な車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートは、車室内の前部に配置されたフロントシートよりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシートにおいて着座する乗員の大腿部及び臀部を支持するシートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックが起立した起立状態を維持するロック機構と、 前記シートバックよりもシート前後方向の前方側及び前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から操作可能とし、シート前後方向の前方側へ向かって移動する前方移動によって前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する操作機構と、を有している。
【0009】
請求項1に記載の発明に係る車両用シートでは、リヤシートにおいて、ロック機構及び操作機構を備えている。ロック機構は、シートバックが起立した起立状態を維持する。一方、操作機構は、シートバックよりもシート前後方向の前方側及び当該シートバックよりもシート前後方向の後方側からの操作可能としており、操作機構によるシート前後方向の前方側へ向かって移動する前方移動によって、ロック機構によるシートバックのロック状態が解除される。つまり、シートバックは前倒可能となる。
【0010】
比較例として、例えば、シートバックを前倒させるに当たって、当該シートバックのロック状態を解除させる操作機構をシート前後方向の後方側へ向かって操作する場合、操作機構の操作方向とシートバックを前倒させる方向が逆になるため、操作機構の操作に対して違和感が生じてしまう。
【0011】
これに対して、本発明では、シートバックを前倒させるに当たって、シートバックよりもシート前後方向の前方側及び当該シートバックよりもシート前後方向の後方側からの操作機構の操作を可能とし、かつ操作機構に対して操作する位置に関係なく当該操作機構を前方移動させ、ロック機構によるシートバックのロック状態を解除させることができる。
【0012】
つまり、本発明では、操作機構に対して操作する位置に関係なく、シートバックを前倒させる方向と操作機構を操作する方向を同じにしている。これにより、本発明では、操作機構の操作に対する違和感は生じない。その結果、リヤシートのシートバックを前倒させる際の操作性が向上する。
【0013】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記操作機構は、前記前方移動が可能な操作部材を含み、前記操作部材は、手指が掛止可能な凹部と、前記凹部よりもシート前後方向の後方側に配置されると共に、シート上下方向の上方側へ向かって突設され、前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から押圧可能な突設部と、を含んで構成されている。
【0014】
請求項2に記載の発明に係る車両用シートでは、操作機構は、前方移動が可能な操作部材を含んで構成されており、当該操作部材は、凹部及び突設部を含んで構成されている。凹部は、手指が掛止可能とされており、突設部は、当該凹部よりもシート前後方向の後方側に配置されると共に、シート上下方向の上方側へ向かって突設され、シートバックよりもシート前後方向の後方側から押圧可能としている。
【0015】
操作部材は、シートバックよりもシート前後方向の前方側及び当該シートバックよりもシート前後方向の後方側からの操作により、当該操作部材の前方移動を可能としている。シートバックよりもシート前後方向の前方側から操作部材を前方移動させる場合、当該操作部材を操作する乗員は、凹部内に手指を掛止させ操作部材を引っ張り、当該操作部材をシート前後方向の前方側へ向かって移動(前方移動)させる。一方、シートバックよりもシート前後方向の後方側から操作部材を前方移動させる場合、当該操作部材を操作する乗員は、突設部を介して操作部材を押圧し、当該操作部材を前方移動させる。
【0016】
つまり、本発明では、シートバックに対して、操作部材の形状(凹部、突設部)を変えることによって、操作部材を操作する位置に応じて、操作部材を引っ張り又は押圧し易くして操作部材の操作性を向上させることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記操作部材は、前記凹部及び前記突設部が内側に設けられ前記シートバックの意匠面を構成する表皮に当接するフランジが外側に設けられたカバー部をさらに含んで構成され、前記突設部は、シート側面視で台形状を成しており、当該突設部の上面は前記フランジに略沿うように構成されている。
【0018】
請求項3に記載の発明に係る車両用シートでは、操作部材は、凹部及び突設部が内側に設けられたカバー部をさらに含んで構成されており、カバー部の外側にはフランジが設けられ、当該フランジはシートバックの意匠面を構成する表皮に当接する。ここで、本発明では、突設部がシート側面視で台形状を成しており、当該突設部の上面がフランジに略沿うように構成されるため、意匠性がよく、操作部材の誤作動を抑制することができる。
【0019】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートは、請求項2又は請求項3に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記突設部は、当該突設部の後壁部にシート上下方向に沿って凹凸状に形成されたローレット部が設けられている。
【0020】
請求項4に記載の発明に係る車両用シートでは、突設部の後壁部において、シート上下方向に沿って凹凸状に形成されたローレット部が設けられることによって、ラゲッジスペースから操作部材を押圧する(前方移動させる)際の手指の滑り止め機能が得られる。
【0021】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートは、請求項1に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記ロック機構は、車体側に設けられたストライカに当接可能とされ、前記操作機構の前記前方移動により移動する第1移動部材と、前記第1移動部材と共に前記ストライカを挟持して当該ストライカに対して係止され前記シートバックの起立状態を維持し、前記操作機構の前記前方移動により移動して前記ストライカに対して係止された状態を解除する第2移動部材と、を含んで構成されている。
【0022】
請求項5に記載の発明に係る車両用シートでは、ロック機構は、第1移動部材及び第2移動部材を含んで構成されている。第1移動部材は、車体側に設けられたストライカに当接可能とされており、操作機構の前方移動により移動する。一方、第2移動部材は、第1移動部材と共にストライカを挟持して当該ストライカに対して係止され、シートバックの起立状態を維持する。また、第2移動部材は、操作機構の前方移動により移動し、ストライカに対して係止された状態を解除する。
【0023】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートは、請求項5に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記第1移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第1軸部を中心に回動可能に設けられた第1回動部材であると共に、前記第2移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第2軸部を中心に回動可能に設けられた第2回動部材であり、前記ロック機構は、前記第1回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記ストライカに対して当接する当接部と、前記第2回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記当接部と共に前記ストライカを挟持する挟持部と、前記第1回動部材におけるシート前後方向の前部に一端部が装着され、前記第2回動部材におけるシート前後方向の前部に他端部が装着されて、前記挟持部が前記当接部と共に前記ストライカを挟持する状態を維持する方向へ付勢する付勢部材と、をさらに含んで構成されている。
【0024】
請求項6に記載の発明に係る車両用シートでは、第1移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第1軸部を中心に回動可能に設けられた第1回動部材である。また、第2移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第2軸部を中心に回動可能に設けられた第2回動部材である。
【0025】
そして、ロック機構は、当接部と挟持部と付勢部材をさらに含んで構成されている。当接部は、第1回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられており、ストライカに対して当接する。また、挟持部は、第2回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられており、当該当接部と共にストライカを挟持する。
【0026】
さらに、付勢部材は、当該付勢部材の一端部が第1回動部材におけるシート前後方向の前部に装着され、当該付勢部材の他端部は第2回動部材におけるシート前後方向の前部に装着されており、挟持部が当接部と共にストライカを挟持する状態を維持する方向へ付勢している。
【0027】
つまり、当該付勢部材により、ストライカが挟持されロック機構によりシートバックがロックされシートバックの起立状態が維持される。なお、ロック機構によるシートバックのロック状態が解除されるとき、付勢部材には付勢力に抗する方向へ外力が作用する(弾性エネルギが蓄積される)ことになる。
【0028】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートは、請求項6に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記操作機構は、前記前方移動が可能な操作部材と、前記操作部材による前記前方移動によって移動し、前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する方向へ前記第2回動部材を回動させるロッドと、を含んで構成されている。
【0029】
請求項7に記載の発明に係る車両用シートでは、操作機構は、操作部材及びロッドを含んで構成されている。操作部材は、前方移動が可能とされており、ロッドは、当該操作部材による前方移動によって移動し、ロック機構によるシートバックのロック状態を解除する方向へ第2回動部材を回動させる。つまり、本発明では、操作部材による前方移動によって、ロッドが移動し、第2回動部材を回動させる。これにより、ロック機構によるシートバックのロック状態が解除される。
【0030】
請求項8に記載の発明に係る車両用シートは、請求項7に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記当接部と前記挟持部とで前記ストライカが挟持された当該ストライカの標準位置から前記ロック機構による前記シートバックのロック状態が解除された後、前記ストライカを前記標準位置に案内するガイド機構が設けられている。
【0031】
請求項8に記載の発明に係る車両用シートでは、第1回動部材に設けられた当接部と第2回動部材に設けられた挟持部とでストライカが挟持された当該ストライカの標準位置からロック機構によるシートバックのロック状態が解除された後、当該ストライカはガイド機構によって、当該標準位置に案内される。
【0032】
請求項9に記載の発明に係る車両用シートは、請求項8に記載の発明に係る車両用シートにおいて、前記ガイド機構は、前記第2移動部材を回動可能に支持するベース部材と、前記ストライカを介してシート前後方向の前方側へ向かう外力に対して前記第2軸部を中心に回動し、前記ベース部材との隙間を形成する第2移動部材と、を含んで構成されている。
【0033】
請求項9に記載の発明に係る車両用シートでは、ガイド機構は、ベース部材及び第2回動部材を含んで構成されている。ベース部材は、第2移動部材を回動可能に支持しており、第2回動部材は、ストライカを介してシート前後方向の前方側へ向かう外力に対して第2軸部を中心に回動することによってベース部材との間に隙間を形成し、当該隙間を通じて、ストライカを標準位置に戻すことができる。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、本発明に係る車両用シートによれば、リヤシートのシートバックを前倒させる際の操作性をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本実施の形態に係る車両用シートを左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施の形態に係る車両用シートに設けられたロック機構においてストライカがロックされた状態を実線で簡易的に示したシートバックの側面図である。
【
図3】本実施の形態に係る車両用シートに設けられたロック機構によるロック状態及び操作機構を拡大して示す拡大断面図である。
【
図4】本実施の形態に係る車両用シートに設けられたロック機構においてストライカがロック解除された状態を実線で簡易的に示したシートバックの側面図である。
【
図5】本実施の形態に係る車両用シートに設けられたロック機構によるロック状態が解除された状態及び操作機構を拡大して示す拡大断面図である。
【
図6】本実施の形態に係る車両用シートに設けられた操作機構を左斜め前方側から見た斜視図である。
【
図7】本実施の形態に係る車両用シートに設けられた操作機構を左斜め後方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態に係る車両用シートについて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印RHは、車両用シート10の前方、上方、右方をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、車両幅方向の左右を示すものとする。
【0037】
<車両用シートの構成>
まず、本実施の形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0038】
図1に示されるように、本実施の形態に係る車両用シート10は、フロントシート(図示省略)よりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシート12である。
【0039】
このリヤシート12は、乗員が着座可能なシートクッション14と、当該シートクッション14に着座した着座乗員の上体を支持可能とし、ラゲージスペース15の車両前後方向の略前端を区画するシートバック16と、当該着座乗員の頭部を支持可能なヘッドレスト18と、に大別されている。当該シートクッション14は、例えば、シートクッション14の右側を構成するシートクッション部20と、当該シートクッション20の左側を構成するシートクッション部22と、を含んで構成されている。
【0040】
本実施形態では、シートクッション部20とシートクッション部22は一体的に形成されており、シートクッション部20とシートクッション部22の間には、センタシートクッション部24が設けられている。当該センタシートクッション部24は、シートクッション部20及びシートクッション部22よりもシート幅方向の寸法が短く形成されているが、当該センタシートクッション部24には乗員が着座可能としている。
【0041】
なお、本実施形態では、センタシートクッション部24、シートクッション部20及びシートクッション部22は一体的に形成されているが、シートクッション部20とシートクッション部22が独立して形成されてもよい。
【0042】
一方、シートバック16は、シートクッション部20、シートクッション部22、センタシートクッション部24に対応してそれぞれシートバック部26、シートバック部28、センタシートバック部30が連結されている。
【0043】
なお、本実施形態では、シートバック部26とセンタシートバック部30は一体化されており、センタシートバック部30を含むシートバック部26とシートバック部28との車両幅方向の寸法比は、例えば、60:40に設定され、シートバック部26とシートバック部28に分割可能としている。
【0044】
当該シートバック部26及びシートバック部28は、シートバック部26、シートバック部28の下端部にそれぞれ設けられた図示しないヒンジ部を介してシート幅方向に沿った軸線回りに互いに独立して回動可能とされており、それぞれ前倒可能とされている(後述する)。
【0045】
なお、当該シートバック部26、シートバック部28、センタシートバック部30の上端部には、ヘッドレスト部32、ヘッドレスト部34、センタヘッドレスト部36が、それぞれ昇降可能に連結されている。
【0046】
前述のように、シートバック部26は、センタシートバック部30と一体化されている。このため、シートバック部26が前倒すると、当該シートバック部26と一体にセンタシートバック部30はセンタシートクッション部24側へ移動することになる。
【0047】
当該センタシートバック部30は、シートバック部26のヒンジ部の上方側に設けられ当該ヒンジ部とは異なる図示しないヒンジ部を介してシート幅方向に沿った軸線回りに回動可能とされており、前倒可能とされている。
【0048】
このセンタシートバック部30をシートバック部26及びシートバック部28に対して前倒させることによって、シートクッション部20、シートクッション部22に着座した着座乗員は、前倒されたセンタシートバック部30を、アームレスト、カップホルダ等として使用することができる。
【0049】
ところで、前述のように、シートバック16は前倒可能とされている。本実施形態では、シートバック部26の上端部26A及びシートバック部28の上端部28Aにおける車両幅方向の外側において、操作機構38、40がそれぞれ設けられている。この操作機構38、40の一部を構成する操作部42を操作する(シート前後方向の前方側へ移動させる)ことによって、ロック機構44によるシートバック部26、28のロック状態がそれぞれ解除され、シートバック部26、28は、それぞれ前倒可能とされる。
【0050】
ここで、シートバック部26、シートバック部28を前倒させる機構について、両者は略同じ構成である。このため、以下の説明では、両者を代表して、シートバック部28についての説明を行う。
【0051】
(ロック機構)
車体側(図示省略)には、車両幅方向の外側を開口としてU字状を成すストライカ46(
図2ではストライカ46の一部が図示されている)が固定されており、当該ストライカ46に対して
図2、
図3に示されるように、シートバック部28側に設けられたロック機構44を構成する係止部48が係止されることによってシートバック部28は起立した状態が維持される。このため、
図4、
図5に示されるように、係止部48によるストライカ46への係止状態が解除されると、シートバック部28は前倒が可能となる。
【0052】
なお、
図2、
図4は、ロック機構44を実線で簡易的に示したシートバック部28の側面図であり、
図3、
図5は、
図2、
図4におけるロック機構44をそれぞれ拡大して示す断面図である。
【0053】
図3に示されるように、ロック機構44は、それぞれ金属製のベース部材(ガイド機構)50、回動部材(第1移動部材)52及び回動部材(ガイド機構、第2移動部材)54を含んで構成されている。当該ベース部材50は、シート側面視で矩形板状を成しており、シート前後方向及びシート上下方向に沿って配置されている。また、ベース部材50は、シートバック部28の骨格を構成し略矩形枠状を成すシートバックフレーム56における車両幅方向の外側に配置されるサイドフレーム58に固定されている。
【0054】
当該回動部材52は、シート前後方向に延在する長板状を成しており、回動部材52の後端部52Aには、ベース部材50に固定されシート幅方向に沿って設けられた軸部60が挿通され、当該軸部60を中心に回動部材52は回動可能とされている。
【0055】
また、回動部材52の前部53側には、コイルスプリング(付勢部材)62の一端部62Aが装着されている。さらに、回動部材52の後端部52Aからは垂下部64が垂下されており、垂下部64にはシート前方側へ向かって切り欠かれ係止部48の一部を構成する切欠き部(当接部)64Aが形成されている。当該切欠き部64A内にはストライカ46が収容可能とされ、回動部材54と共にストライカ46を挟持可能としている。
【0056】
一方、回動部材54は、回動部材52よりもシート上下方向の下方側に配置され、シート側面視で略逆T字状を成しており、ベース部材50に固定されシート幅方向に沿って設けられた軸部66を中心に回動可能とされている。回動部材54の前端部54Aには、コイルスプリング62の他端部62Bが装着されている。
【0057】
また、回動部材54の後端部54Bには、回動部材54の中心部54Cと略平行に延出され係止部48の他部を構成する延出部(挟持部)68が形成されており、延出部68は、回動部材52に形成された切欠き部64Aと対向可能とされている。
【0058】
当該回動部材54の延出部68が回動部材52の切欠き部64Aに対して対向して配置された状態で、シートバック部28の回動動作に伴う延出部68の移動軌跡上に配置されたストライカ46が挟持可能とされる。回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aとでストライカ46が挟持された状態で、シートバック部28がストライカ46に対して係止され、いわゆるシートバック部28のロック状態とされる。
【0059】
(操作機構)
ところで、シートバックフレーム56における上端に配置されるアッパフレーム70におけるサイドフレーム58と交叉する部位には、操作機構40が設けられている。操作機構40の一部を構成する操作部本体72は、シート幅方向に沿った線を軸線とする三角筒状を成しており、シート下方側を頂部72Aとして配置され、内部が収容部74とされている。
【0060】
図3、
図6に示されるように、操作部本体72の上端には、平面視で矩形枠状を成すカバー部76が、表皮78に形成された図示しない開口部を通じて嵌め込まれており、当該カバー部76は車室内80側に露出している。
【0061】
なお、カバー部76には、当該開口部の周辺部に当接するフランジ82が設けられており、シート前後方向に沿って延在された左右のフランジ部82Aの内側には、表皮78と操作部本体72との高低差を吸収する縦壁部84が形成されている。
【0062】
操作部本体72の収容部74内には、操作部42が収容されている。当該操作部42は、操作部本体72の頂部72A側を中心に回動可能とされている。操作部42は、シート上下方向に沿って切断したときの断面形状が上方側を開口とする略U字状を成しており、互いに対向する前壁42A、後壁42Bの上端からは、それぞれシート前方側へ向かって延出するリップ部86、シート後方側へ向かって延出するリップ部88が設けられている。
【0063】
リップ部88の上方側には、上方側へ向かって突設する突設部90が当該リップ部88と一体となって形成されている。突設部90はシート側面視で略台形状を成しており、突設部90の上面90Aは、カバー部76のフランジ82に略沿うように形成されている。また、
図7に示されるように、突設部90の後壁部90Bには、シート上下方向に沿って凹凸状に形成されたローレット部92が設けられており、手指の滑り止め機能を有している。
【0064】
また、操作部42におけるシート前後方向の中央部には、下方側へ向かって凹む凹部94が形成されており、凹部94内には乗員の手指が挿入可能とされ当該凹部94内に手指を掛止させ、車室内80側からの操作を容易にできるようにしている。
【0065】
操作部42は、シート前後方向の前方側へ向かって回動可能とされており、車室内80からは凹部94を介してシート前後方向の前方側へ向かって操作部42を引っ張り、ラゲージスペース15側からは突設部90を介して操作部42を押圧することで、当該操作部42をシート前後方向の前方側へ向かって頂部72A側を中心に回動(前方移動)させることができる。
【0066】
ここで、操作部本体72の頂部72A側には、軸孔96が設けられている。軸孔96には、シート前後方向の後方側へ向かうにつれてシート上下方向の下方側へ向かって傾斜するように配置されたリンク98の前端部98Aに設けられたピン98A1が挿通されており、軸孔96に沿ってピン98A1と一体にリンク98を回動可能としている。
【0067】
リンク98の後端部98Bには、ロッド100の一端部100Aが係合されており、当該ロッド100の他端部100Bは、回動部材52の前端部52Bに係合されている。このため、ロッド100の上下移動により、軸部60を中心に回動部材52は回動可能とされる。
【0068】
<車両用シートの作用及び効果>
次に、本実施の形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0069】
以上のような構成により、本実施形態では、
図2、
図3に示されるように、シートバック部28側に設けられたロック機構44を構成する係止部48によりストライカ46が係止されることによってシートバック部28は起立した状態が維持される。
【0070】
具体的に説明すると、本実施形態では、係止部48は、回動部材52に形成された切欠き部64Aと、回動部材54に形成された延出部68と、を含んで構成されており、当該回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aとでストライカ46が挟持された状態で、シートバック部28がストライカ46に対して係止され、シートバック部28のロック状態とされる。
【0071】
このようなシートバック部28のロック状態において、本実施形態では、
図3に示す操作機構40を構成する操作部42の凹部94内に車室内80から乗員が手指を掛止させ操作部42を引っ張り、又は、ラゲージスペース15側から突設部90を介してシート前後方向の前方側へ向かって押圧することによって、当該操作部42を前方移動させることができる。
【0072】
当該操作部42が前方移動すると、
図5に示されるように、当該操作部42の前方移動(回動移動)に伴って、軸孔96に沿ってピン98A1と共にリンク98が回動する。その結果、リンク98の後端部98Bがシート上下方向の上方側へ移動し、ロッド100がシート上下方向の上方側へ移動する。これに伴い、回動部材52が軸部60を中心に回動し、回動部材52の前端部52Bがシート上下方向の上方側へ移動する。
【0073】
これにより、回動部材54は、軸部66を中心に回動し、回動部材54の前端部54Aがシート上下方向の上方側へ移動する。そして、回動部材54は図示しないストッパに当接した状態で移動が規制され、コイルスプリング62には弾性エネルギが蓄積される。
【0074】
この状態で、当該回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aとでストライカ46が挟持された状態が解除される。このとき、ストライカ46のシート前後方向の後方側には当該ストライカ46の相対移動を阻害する壁は存在しないため、この状態でシートバック部28の下端部を中心に当該シートバック部28の上端部28Aをシート前後方向の前方側へ向かって押圧すると、当該シートバック部28を前倒させることができる(
図4の二点鎖線参照)。
【0075】
なお、
図2、
図3で示すシートバック部28のロック状態において、シートバック部28には、当該シートバック部28を前倒させる方向へ付勢するトーションバー、スパイラルスプリング等の付勢手段が設けられている場合、ストライカ46が挟持された状態が解除されると、当該シートバック部28は自動的に前倒可能とされる。
【0076】
一方、
図5に示されるように、ストライカ46が挟持された状態が解除された状態で操作部42から手指を離すと、コイルスプリング62の付勢力により、回動部材54は軸部66を中心に回動し当該回動部材54の延出部68が回動部材52の切欠き部64Aと対向する位置に復帰する。
【0077】
この状態からシートバック部28の下端部を中心に当該シートバック部28の上端部28Aをシート前後方向の後方側へ向かって押圧しシートバック部28を起立した状態に戻そうとすると、図示はしないが、ストライカ46が回動部材54の延出部68(ガイド機構)の上端68Aとベース部材50との間に当接する。
【0078】
この状態からさらにシートバック部28の上端部28Aをシート前後方向の後方側へ向かって押圧すると、ストライカ46によってコイルスプリング62の付勢力に抗して回動部材54の延出部68の上端68Aを介して当該回動部材54が軸部66を中心に回動する。
【0079】
これにより、
図3に示されるように、回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aの間にストライカ46を配置(標準位置P)させることができ、当該回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aとでストライカ46を挟持させ、シートバック部28をロック状態とすることができる。
【0080】
以上のように、本実施形態では、操作部42は、車室内80から凹部94を介して当該操作部42を引っ張り、又は、ラゲージスペース15側から突設部90を介してシート前後方向の前方側へ向かって押圧することによって、当該操作部42を前方移動させることができ、これにより、
図4、
図5に示されるように、ロック機構44によるシートバック部28のロック状態を解除することができる。
【0081】
比較例として、例えば、図示はしないが、ラゲージスペース15側から操作部を操作する場合において、当該操作部を上方側へ向かって引き上げる構成では、力を入れ辛く特に女性では操作が困難である。また、シートバック部28を前倒させるに当たって、ラゲージスペース15側から操作部を引っ張りシートバック部28のロック状態を解除する場合、操作部の操作方向とシートバックを前倒させる方向が逆になるため、操作部の操作に対して違和感が生じてしまう。
【0082】
これに対して、本実施形態では、車室内80から凹部94を介して操作部42を引っ張り、又は、ラゲージスペース15側から突設部90を介して操作部42を押圧することによって、当該操作部42を前方移動させることができる。つまり、操作部42の操作方向とシートバック部28を前倒させる方向が同じであるため、操作部42の操作に対して違和感が生じることはなく、シートバック部28を前倒させる際の操作性が向上する。
【0083】
本実施形態では、操作部42の形状を工夫することによって、車室内80からの操作とラゲージスペース15側からの操作とで操作部42に対して操作する位置がシート前後方向の前方側と後方側とで真逆であるにも拘わらず、操作部42の操作方向を同じにしている。
【0084】
そして、本実施形態では、操作部42の操作方向をシートバック部28を前倒させる方向と同じにすることによって、操作部42の操作に対して違和感を生じさせないようにしてシートバック部28を前倒させる際の操作性を向上させている。
【0085】
具体的に説明すると、本実施形態では、
図3、
図5に示されるように、ロック機構44は、回動部材52及び回動部材54を含んで構成されている。回動部材52は、シート幅方向に沿って設けられた軸部60を中心に回動可能に設けられ、車体側に設けられたストライカ46に当接可能とされており、操作機構40の前方移動により移動する。
【0086】
一方、本実施形態では、回動部材54は、シート幅方向に沿って設けられた軸部66を中心に回動可能に設けられ、回動部材52と共にストライカ46を挟持して当該ストライカ46に対して係止され、シートバック部28の起立状態を維持する。また、回動部材54は、操作機構40の前方移動により移動し、ストライカ46に対して係止された状態を解除する。
【0087】
また、本実施形態では、ロック機構44は、切欠き部64Aと延出部68とコイルスプリング62をさらに含んで構成されている。切欠き部64Aは、回動部材52におけるシート前後方向の後部に設けられており、ストライカ46に対して当接する。また、延出部68は、回動部材54におけるシート前後方向の後部に設けられており、当該切欠き部64Aと共にストライカ46を挟持する。
【0088】
さらに、本実施形態では、コイルスプリング62は、一端部62Aが回動部材52の前部53に装着され、他端部62Bは回動部材54の前端部54Aに装着されており、延出部68が切欠き部64Aと共にストライカ46を挟持する状態を維持する方向へ付勢している。
【0089】
つまり、当該コイルスプリング62により、ストライカ46が挟持されロック機構44によりシートバック部28がロックされシートバック部28の起立状態が維持される(
図2参照)。一方、ロック機構44によるシートバック部28のロック状態が解除されるとき、コイルスプリング62には付勢力に抗する方向へ弾性エネルギが蓄積される。
【0090】
また、本実施形態では、操作機構40は、操作部42及びロッド100を含んで構成されている。操作部42は、前方移動が可能とされており、ロッド100は、当該操作部42による前方移動によって移動し、ロック機構44によるシートバック部28のロック状態を解除する方向へ回動部材54を回動させる。
【0091】
つまり、本実施形態では、では、操作部42による前方移動によって、ロッド100が移動し、回動部材54を回動させる。これにより、ロック機構44によるシートバック部28のロック状態が解除される。
【0092】
また、本実施形態では、回動部材52に設けられた切欠き部64Aと回動部材54に設けられた延出部68とでストライカ46が挟持された当該ストライカ46の標準位置Pからロック機構44によるシートバック部28のロック状態が解除された後、当該ストライカ46は回動部材54の延出部68によって、当該標準位置Pに案内される。
【0093】
このため、本実施形態では、ストライカ46が回動部材54の延出部68の上端68Aとベース部材50との間に当接した状態からさらにシートバック部28の上端部28Aをシート前後方向の後方側へ向かって押圧すると、ストライカ46によってコイルスプリング62の付勢力に抗して回動部材54の延出部68の上端68Aを介して当該回動部材54が軸部66を中心に回動する。
【0094】
これにより、回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aの間にストライカ46を配置させることができ、当該回動部材54の延出部68と回動部材52の切欠き部64Aとでストライカ46を挟持させ、シートバック部28をロック状態、すなわち、ストライカ46の標準位置Pとすることができる。
【0095】
さらに、本実施形態では、操作部42は、凹部94及び突設部90を含んで構成されている。凹部94は、手指が掛止可能とされており、突設部90は、当該凹部94よりもシート前後方向の後方側に配置されると共に、シート上下方向の上方側へ向かって突設され、シートバック部28よりもシート前後方向の後方側から押圧可能としている。
【0096】
本実施形態では、操作部42は、シートバック部28よりもシート前後方向の前方側及び当該シートバック部28よりもシート前後方向の後方側からの操作により、当該操作部42の前方移動を可能としている。シートバック部28よりもシート前後方向の前方側から操作部42を前方移動させる場合、つまり、車室内80側から当該操作部42を操作する乗員は、凹部94内に手指を掛止させ当該乗員側へ操作部42を引っ張り、当該操作部42を前方移動させる。
【0097】
一方、本実施形態では、シートバック部28よりもシート前後方向の後方側から操作部42を前方移動させる場合、つまり、ラゲージスペース15側から当該操作部42を操作する乗員は、突設部90を介して操作部42を押圧し、当該操作部42を前方移動させる。
【0098】
以上のような構成により、本実施形態では、シートバック部28に対して、操作部42の形状(凹部94、突設部90)を変えることによって、操作部42を操作する位置に応じて、操作部42を引っ張り又は押圧し易くして操作部42の操作性を向上させることができる。
【0099】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施できる。また、本発明の権利範囲が上記実施形態に限定されないことは勿論である。例えば、回動部材52及び回動部材54は、それぞれ軸部60、66を中心に回動可能となっているが、操作部42の移動によりストライカ46を挟持しているロック状態を解除することができればよいため、これに限るものではない。例えば、回動部材54のみが回動移動可能とされてもよいし、また、回動部材52及び回動部材54が直線移動可能とされてもよい。
【0100】
<付記>
なお、下記の構成を適宜組み合わせて本発明に係る車両用シートとしてもよい。
【0101】
(構成1)
車両用シートは、車室内の前部に配置されたフロントシートよりも車両前後方向の後方側に配置されたリヤシートにおいて着座する乗員の大腿部及び臀部を支持するシートクッションに着座した着座乗員の上体を支持するシートバックが起立した起立状態を維持するロック機構と、前記シートバックよりもシート前後方向の前方側及び前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から操作可能とし、シート前後方向の前方側へ向かって移動する前方移動によって前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する操作機構と、を有する。
【0102】
(構成2)
前記操作機構は、前記前方移動が可能な操作部材を含み、前記操作部材は、手指が掛止可能な凹部と、前記凹部よりもシート前後方向の後方側に配置されると共に、シート上下方向の上方側へ向かって突設され、前記シートバックよりもシート前後方向の後方側から押圧可能な突設部と、を含んで構成されている。
【0103】
(構成3)
前記操作部材は、前記凹部及び前記突設部が内側に設けられ前記シートバックの意匠面を構成する表皮に当接するフランジが外側に設けられたカバー部をさらに含んで構成され、前記突設部は、シート側面視で台形状を成しており、当該突設部の上面は前記フランジに略沿うように構成されている。
【0104】
(構成4)
前記突設部は、当該突設部の後壁部にシート上下方向に沿って凹凸状に形成されたローレット部が設けられている。
【0105】
(構成5)
前記ロック機構は、車体側に設けられたストライカに当接可能とされ、前記操作機構の前記前方移動により移動する第1移動部材と、前記第1移動部材と共に前記ストライカを挟持して当該ストライカに対して係止され前記シートバックの起立状態を維持し、前記操作機構の前記前方移動により移動して前記ストライカに対して係止された状態を解除する第2移動部材と、を含んで構成されている。
【0106】
(構成6)
前記第1移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第1軸部を中心に回動可能に設けられた第1回動部材であると共に、前記第2移動部材は、シート幅方向に沿って設けられた第2軸部を中心に回動可能に設けられた第2回動部材であり、前記ロック機構は、前記第1回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記ストライカに対して当接する当接部と、前記第2回動部材におけるシート前後方向の後部に設けられ、前記当接部と共に前記ストライカを挟持する挟持部と、前記第1回動部材におけるシート前後方向の前部に一端部が装着され、前記第2回動部材におけるシート前後方向の前部に他端部が装着されて、前記挟持部が前記当接部と共に前記ストライカを挟持する状態を維持する方向へ付勢する付勢部材と、をさらに含んで構成されている。
【0107】
(構成7)
前記操作機構は、前記前方移動が可能な操作部材と、前記操作部材による前記前方移動によって移動し、前記ロック機構による前記シートバックのロック状態を解除する方向へ前記第2回動部材を回動させるロッドと、を含んで構成されている。
【0108】
(構成8)
前記当接部と前記挟持部とで前記ストライカが挟持された当該ストライカの標準位置から前記ロック機構による前記シートバックのロック状態が解除された後、前記ストライカを前記標準位置に案内するガイド機構が設けられている。
【0109】
(構成9)
前記ガイド機構は、前記第2移動部材を回動可能に支持するベース部材と、前記ストライカを介してシート前後方向の前方側へ向かう外力に対して前記第2軸部を中心に回動し、前記ベース部材との隙間を形成する第2移動部材と、を含んで構成されている。
【符号の説明】
【0110】
10 車両用シート
12 リヤシート
14 シートクッション
15 ラゲージスペース(シートバックよりもシート前後方向の後方側)
16 シートバック
20 シートクッション部(シートクッション)
22 シートクッション部(シートクッション)
24 センタシートクッション部(シートクッション)
26 シートバック部(シートバック)
28 シートバック部(シートバック)
30 センタシートバック部(シートバック)
38 操作機構
40 操作機構
42 操作部(操作部材)
44 ロック機構
46 ストライカ
50 ベース部材(ガイド機構)
52 回動部材(第1移動部材)
54 回動部材(ガイド機構、第2移動部材)
60 軸部(第1軸部)
62 コイルスプリング(付勢部材)
64A 切欠き部(当接部)
66 軸部(第2軸部)
68 延出部(挟持部)
68A 上端(ガイド機構)
76 カバー部
80 車室内(シートバックよりもシート前後方向の前方側)
82 フランジ
90 突設部
92 ローレット部
94 凹部
100 ロッド
P 標準位置