(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170571
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】電流検出装置
(51)【国際特許分類】
G01R 15/20 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082421
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青 建一
(72)【発明者】
【氏名】河野 欣
(72)【発明者】
【氏名】吉村 政洋
(72)【発明者】
【氏名】好田 誠
(72)【発明者】
【氏名】輕部 修太郎
(72)【発明者】
【氏名】新田 淳作
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB02
2G025AC01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で精度良く電流値を検出可能な電流検出装置を提供すること。
【解決手段】
電流検出装置は、導電性を有する第1電極部10と、導電性を有する第2電極部20と、第1電極部と第2電極部との間に設けられ、自身の周囲に磁界を発生するとともに、第1電極部から第2電極部に向かう方向に電流が流れる際に発生するホール効果によって自身の内部に起電力を発生させるホール効果発生部30と、ホール効果発生部に接続され、ホール効果発生部が発生させる起電力を検出し、検出した起電力に基づいて第1電極部と第2電極部との間に流れる電流の大きさを検出する算出部60と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流検出装置であって、
導電性を有する第1電極部(10)と、
導電性を有する第2電極部(20)と、
前記第1電極部と前記第2電極部との間に設けられ、自身が磁化しているとともに、前記第1電極部から前記第2電極部に向かう方向に電流が流れる際に発生するホール効果によって自身の内部に起電力を発生させるホール効果発生部(30)と、
前記ホール効果発生部に接続され、前記ホール効果発生部が発生させる起電力を検出し、検出した起電力に基づいて前記第1電極部と前記第2電極部との間に流れる電流の大きさを検出する算出部(60)と、を備える電流検出装置。
【請求項2】
前記ホール効果発生部は、自発磁化を有するとともに、該ホール効果発生部の外部からの磁界の影響を受けなくとも、自発磁化の方向を維持する磁性体で構成される請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項3】
前記ホール効果発生部は、ホイスラー合金を含む請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項4】
前記ホール効果発生部は、コバルトおよび鉄のうち、少なくともどちらか一方を含む請求項3に記載の電流検出装置。
【請求項5】
前記ホール効果発生部は、自発磁化の方向が、前記第1電極部から前記第2電極部に向かって流れる電流の流れ方向に直交するように配置される請求項2ないし4のいずれか1つに記載の電流検出装置。
【請求項6】
前記ホール効果発生部は、前記ホール効果発生部自身が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度が設定されている請求項2に記載の電流検出装置。
【請求項7】
前記ホール効果発生部は、磁界を発生させる磁石(31)と、前記磁石が発生させる磁界の影響によって磁化する磁性体(32)とを有し、
前記磁性体は、前記磁石が発生させる磁界の影響によって磁化する方向を維持する請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項8】
前記磁性体は、ホイスラー合金を含む請求項7に記載の電流検出装置。
【請求項9】
前記磁性体は、コバルトおよび鉄のうち、少なくともどちらか一方を含む請求項8に記載の電流検出装置。
【請求項10】
前記磁石は、前記磁性体に対して磁界の影響を与える際の磁界の方向が、前記第1電極部から前記第2電極部に向かって流れる電流の流れ方向に直交するように配置される請求項7ないし9のいずれか1つに記載の電流検出装置。
【請求項11】
前記磁石は、前記磁性体が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となる磁界強度を発生する請求項7に記載の電流検出装置。
【請求項12】
前記ホール効果発生部は、磁界を発生させる磁石(31)と、前記磁石が発生させる磁界と相互作用を及ぼさない非磁性体(33)とで構成される請求項1に記載の電流検出装置。
【請求項13】
前記非磁性体は、銅およびマンガンを含んで構成される請求項12に記載の電流検出装置。
【請求項14】
前記磁石は、前記非磁性体に対して磁界の影響を与える際の磁界の方向が、前記第1電極部から前記第2電極部に向かって流れる電流の流れ方向に直交するように配置される請求項12または13に記載の電流検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電流検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの電極部と、2つの電極部の間に配置された抵抗体と、2つの電極部それぞれに設けられた電圧検出端子と、を備えたシャント抵抗器を用いた電流検出装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。そして、このシャント抵抗器は、電極部および抵抗体それぞれが互いに異なる部材で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電流検出装置は、2つの電極部に設けられた電圧検出端子間の電位差を検出し、オームの法則を用いて抵抗体による電圧降下を算出することで、当該シャント抵抗器に流れる電流の値を検出する。
【0005】
ところで、電極部および抵抗体が組み合わされて構成されるシャント抵抗器は、電流が流れることによって電極部および抵抗体が発熱し、これら電極部および抵抗体の抵抗値が変化する場合がある。しかし、特許文献1に記載の電流検出装置は、オームの法則を用いてシャント抵抗器に流れる電流の値を検出するため、当該電極部および抵抗体の温度変化に起因する抵抗値の変化は、電流検出装置が検出する電流値に誤差が生じる要因となる。これに対して、シャント抵抗器を用いた電流検出装置では、当該電極部および抵抗体の温度変化に起因する電流値の誤差を補正する方法がある。
【0006】
しかし、シャント抵抗器の電極部および抵抗体が互いに異なる部材で構成される場合、それぞれの温度変化量に対する抵抗値の変化量の比率である温度特性が異なる。このため、電流値の誤差を補正する場合、電極部および抵抗体それぞれの温度特性を考慮する必要がある。
【0007】
これに対して、特許文献1に記載の電流検出装置は、2つの電極部および抵抗体それぞれの温度を検出する3つの温度センサを有する温度補償回路を備え、当該温度補償回路によって検出する電流値を補正する。しかし、このような複数の温度センサを有する温度補償回路を備える場合、電流検出装置の構成部材が多くなるため好ましくない。
【0008】
本開示は、簡易な構成で精度良く電流値を検出可能な電流検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、
電流検出装置であって、
導電性を有する第1電極部(10)と、
導電性を有する第2電極部(20)と、
第1電極部と第2電極部との間に設けられ、自身が磁化しているとともに、第1電極部から第2電極部に向かう方向に電流が流れる際に発生するホール効果によって自身の内部に起電力を発生させるホール効果発生部(30)と、
ホール効果発生部に接続され、ホール効果発生部が発生させる起電力を検出し、検出した起電力に基づいて第1電極部と第2電極部との間に流れる電流の大きさを検出する算出部(60)と、を備える。
【0010】
これによれば、電流検出装置は、ホール効果発生部に発生する起電力をホール効果発生部に接続された算出部が検出する。このため、第1電極部および第2電極部に電流が流れることによって第1電極部および第2電極部の温度が変化してこれらの抵抗値が変化する場合であっても、算出部が検出するホール効果発生部の起電力の検出結果に影響が与えられ難い。したがって、第1電極部および第2電極部の温度変化に起因する検出値の誤差を補償する補償回路等を不要にできるので、簡易な構成で精度良く電流値を検出することができる。
【0011】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る電流検出装置の概略構成図である。
【
図2】第1実施形態に係る電流検出装置の作動を説明するためのである。
【
図3】磁界強度と磁化の大きさとの関係を示す図である。
【
図5】第2実施形態に係る電流検出装置の概略構成図である。
【
図6】第3実施形態に係る電流検出装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態において、先行する実施形態で説明した事項と同一もしくは均等である部分には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、実施形態において、構成要素の一部だけを説明している場合、構成要素の他の部分に関しては、先行する実施形態において説明した構成要素を適用することができる。以下の実施形態は、特に組み合わせに支障が生じない範囲であれば、特に明示していない場合であっても、各実施形態同士を部分的に組み合わせることができる。
【0014】
(第1実施形態)
本実施形態について、
図1および
図2を参照して説明する。本実施形態の電流検出装置1は、電気自動車に搭載されており、電気自動車のバッテリに流れる電流の大きさを測定するために用いられる。電流検出装置1は、
図1に示すように、第1電極部10と、第2電極部20と、ホール効果発生部30と、端子部40と、電線50と、算出部60とを備える。
【0015】
第1電極部10および第2電極部20は、導電性を有する導体であって、電流検出装置1に電流を導くためのバスバーである。第1電極部10および第2電極部20は、直方体であって、薄板状に形成されている。本実施形態の第1電極部10および第2電極部20は、互いに同じ部材および同じ形状であって、例えば、導電性を有する金属である銅で構成されている。第1電極部10と第2電極部20との間には、ホール効果発生部30が設けられている。なお、第1電極部10および第2電極部20は、互いに異なる部材で構成されていてもよいし、互いの形状が異なって形成されてもよい。
【0016】
なお、以下の説明において、
図1に示すように、第1電極部10と、ホール効果発生部30と、第2電極部20とが並ぶ方向をX方向とし、X方向に直交し、第1電極部10および第2電極部20の板厚方向をY方向とする。また、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向とする。本実施形態の電流検出装置1は、第1電極部10側から第2電極部20側に向かう方向に沿って第1電極部10から第2電極部20に流れる電流の電流値を測定する。
【0017】
このため、以下においては、X方向のうち、第1電極部10側から第2電極部20側に向かう方向を電流流れ方向とする。そして、Y方向のうち、
図1における上側に向かう方向を上方向、下側に向かう方向を下方向とし、Z方向のうち、
図1における奥側に向かう方向を奥方向、手前側に向かう方向を手前方向とする。
【0018】
ホール効果発生部30は、電流がホール効果発生部30を跨って第1電極部10から第2電極部20に向かって電流流れ方向に沿って流れる際に、ホール効果によって自身の内部に起電力を発生させる部材である。ホール効果発生部30は、直方体形状であって、Y方向の大きさが第1電極部10および第2電極部20のY方向の大きさと同じであって、Z方向の大きさも第1電極部10および第2電極部20のZ方向の大きさと同じ大きさで形成されている。これに対して、ホール効果発生部30のX方向の大きさは、第1電極部10および第2電極部20のX方向の大きさより小さく形成されている。
【0019】
また、ホール効果発生部30は、自身が磁化することが可能な磁性体で構成されている。ここで、磁化するとは、外部からの磁界の作用を受けずに、自身の内部で自発的に形成される自発磁化によって自身の周囲に磁界を発生させるものおよび外部から加えられる磁界の影響で磁化することによって自身の周囲に磁界を発生させるものを含む。
【0020】
また、ホール効果とは、物体に電流を流す際に、磁界の影響によって当該物体における電流が流れる方向および磁化する方向に直交する方向に起電力が発生するものである。ホール効果には、異常ホール効果および正常ホール効果の2種類がある。異常ホール効果は、自発磁化を有する磁性体に電流が流れることで発生する。そして、異常ホール効果によって発生する起電力は、自発磁化を有する磁性体の磁界強度が大きいほど大きくなる。
【0021】
これに対して、正常ホール効果は、強磁性を有さない物体(例えば、非磁性体)が外部から磁界の影響を受けることによって発生するローレンツ力により電子の起動が曲げられることで当該物体に電流が流れることで発生する。また、正常ホール効果によって発生する起電力は、外部の磁界強度が大きいほど大きくなる。なお、一般的に、正常ホール効果によって発生する起電力は、異常ホール効果によって発生する起電力に比較して小さい傾向がある。
【0022】
本実施形態のホール効果発生部30は、予め着磁されることによって、ホール効果発生部30の外部からの磁界の影響を受けなくとも、自発磁化を維持することが可能となるように構成されている。換言すれば、ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30の周囲環境における磁界強度が0であっても、予め着磁されることによって、自発磁化の方向を維持可能に構成されている。以下、磁化の方向を磁化方向とも呼ぶ。
【0023】
本実施形態のホール効果発生部30は、磁化方向が、電流流れ方向に直交するように配置されている。具体的に、ホール効果発生部30は、磁化方向が上方向と重なるように配置されている。このようにホール効果発生部30が配置されることで、当該ホール効果発生部30において電流流れ方向に電流が流れると、着磁したホール効果発生部30には、異常ホール効果が発生する。そして、ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30におけるZ方向の手前方向側の部位および奥方向側の部位に起電力が発生する。
【0024】
ホール効果発生部30は、予め着磁された状態で、圧着などの接続手段によって第1電極部10および第2電極部20に接続される。なお、ホール効果発生部30は、第1電極部10および第2電極部20に接続された後に着磁させてもよい。
【0025】
また、本実施形態のホール効果発生部30は、比較的高い異常ホール係数を有し、自発磁化が消失されるキュリー温度が室温以上(例えば、30℃)であるホイスラー合金を含んで構成されている。
【0026】
ホイスラー合金は、例えば、「XYZ」または「X2YZ」の組成を有するものである。ここで、前記「X」は、例えば、周期表上のCo(すなわち、コバルト)である。また、前記「Y」は、例えば、周期表上のV(すなわち、バナジウム)、Cr(すなわち、クロム)、Mn(すなわち、マンガン)およびFe(すなわち、鉄)よりなる群から選択された少なくとも1つでる。また、前記「Z」は、周期表上のAl(すなわち、アルミ)、Si(すなわち、珪素)、Ga(すなわち、ガリウム)およびGe(すなわち、ゲルマニウム)よりなる群から選択された少なくとも1つである。
【0027】
このようなホイスラー合金は、例えば、Co2FeSi、Co2FeGe、Co2FeGa、Co2MnSi、Co2MnAl、Co2FeGe等が挙げられる。本実施形態では、ホイスラー合金のうち、コバルトが含まれるCo2MnAlが採用されており、ホール効果発生部30がCo2MnAlによって構成されている。なお、ホール効果発生部30は、ホイスラー合金のうち、鉄が含まれるCo2FeSiで構成されてもよい。
【0028】
ホール効果発生部30には、Z方向の手前方向側の部位および奥方向側の部位それぞれに、異常ホール効果によってホール効果発生部30に発生する起電力(すなわち、異常ホール電圧)を検出するための端子部40が設けられている。すなわち、端子部40は、ホール効果発生部30のうち、電流流れ方向および磁化方向に直交する方向の面に取り付けられている。そして、端子部40には、電線50を介して算出部60が接続されている。これにより、算出部60は、端子部40および電線50を介してホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の値を検出可能となる。
【0029】
算出部60は、ホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の値に基づいてホール効果発生部30に流れる電流の値を算出するものである。算出部60は、ホール効果発生部30が出力する異常ホール電圧の値に関する信号を増幅する増幅回路、CPU、ROM、RAM等の記憶部を含んで構成されるマイクロコンピュータ、およびその周辺回路から構成されている。
【0030】
算出部60は、記憶部に記憶されたホール効果発生部30の異常ホール電圧の値およびホール効果発生部30に流れる電流の値に基づいて定められた制御マップに基づいて各種演算、処理を行うことでホール効果発生部30に流れる電流の値を算出する。ホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の値およびホール効果発生部30に流れる電流の値に基づいて定められる制御マップは、予め行う実験結果等から得ることができる。
【0031】
なお、算出部60は、ホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の値およびホール効果発生部30が自発磁化する際の磁界強度に基づいてホール効果発生部30に流れる電流の値を算出してもよい。
【0032】
以下、このような構成の電流検出装置1の作動について
図2を参照して説明する。電流検出装置1は、電流の大きさを検出する対称物である不図示のバッテリに、第1電極部10および第2電極部20が直列的に接続される。これにより、
図2に示すように、電流が第1電極部10から第2電極部20に向かって流れる。この際、第1電極部10および第2電極部20を介してホール効果発生部30において電流が電流流れ方向に流れる。
【0033】
ここで、ホール効果発生部30は、予め着磁されることにより、ホール効果発生部30の外部からの磁界の影響を受けなくとも、
図2に示すように、磁化方向を上方向に維持する。このため、ホール効果発生部30に電流が流れることによってホール効果発生部30に異常ホール効果が発生し、ホール効果発生部30における電流流れ方向および磁化方向に直交するZ方向に異常ホール電圧が発生する。具体的に、ホール効果発生部30は、奥側が正極に帯電し、手前側が負極に帯電する。
【0034】
ところで、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧は、ホール効果発生部30に流れる電流が一定である場合、ホール効果発生部30の磁化の大きさが大きくなるに伴い大きくなる。そして、当該磁化の大きさは、
図3に示すように、ホール効果発生部30の磁界強度が大きいほど大きくなる。なお、
図3において、縦軸がホール効果発生部30の磁化の大きさを示し、横軸がホール効果発生部30の磁界強度を示す。
【0035】
具体的に、ホール効果発生部30の磁界強度が0から所定の値までの範囲では、磁化の大きさは、ホール効果発生部30の磁界強度に略比例して大きくなる。そして、ホール効果発生部30の磁界強度が所定の値よりも大きくなると、ホール効果発生部30の磁界強度の大きさの変化に対する磁化の大きさの増加量は急激に小さくなる。さらに、ホール効果発生部30の磁界強度が大きくなると、ホール効果発生部30の磁化の大きさは、ホール効果発生部30の磁界強度が大きくなっても磁化が略増加しない飽和磁化となる。
【0036】
このため、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧をできるだけ大きくすることを目的とする場合、ホール効果発生部30の磁界強度をできるだけ大きく設定して、ホール効果発生部30の磁化の大きさを飽和磁化に近付けることが考えられる。
【0037】
しかしながら、ホール効果発生部30の磁化の大きさは、外部温度やホール効果発生部30自身の温度変化の影響を受ける。具体的に、ホール効果発生部30の磁界強度が飽和磁化となるように設定した場合、
図3に示すように、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が低いほどホール効果発生部30の磁化の大きさが大きくなる。これに対して、ホール効果発生部30の磁界強度が飽和磁化となるように設定した場合、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が高いほど、ホール効果発生部30の磁化の大きさが小さくなる。
【0038】
なお、
図3における実線は、外部気温が25℃である場合におけるホール効果発生部30の磁界強度と磁化の大きさとの関係を示している。また、
図3における破線は、外部気温が100℃である場合におけるホール効果発生部30の磁界強度と磁化の大きさとの関係を示している。そして、
図3における一点鎖線は、外部気温が150℃である場合におけるホール効果発生部30の磁界強度と磁化の大きさとの関係を示している。
【0039】
また、
図3におけるx1、x2、x3のそれぞれは、外部気温が25℃、100℃、150℃である場合それぞれにおけるホール効果発生部30が飽和磁化する際の磁界強度を示している。そして、
図3におけるy1、y2、y3のそれぞれは、外部気温が25℃、100℃、150℃である場合それぞれの飽和磁化を示している。
【0040】
ホール効果発生部30の磁界強度の大きさの変化に対する磁化の大きさの増加量が急激に小さくなる磁界強度は、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が低いほど大きくなる。換言すれば、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が低いほど、ホール効果発生部30の磁界強度に略比例して大きくなる磁化の大きさの範囲が大きくなる。すなわち、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が高いほど、ホール効果発生部30の磁界強度に略比例して大きくなる磁化の大きさの範囲が小さくなる。
【0041】
このため、ホール効果発生部30の磁化の大きさが飽和磁化に近付くようにホール効果発生部30の磁界強度を設定すると、外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化に対してホール効果発生部30の磁化の大きさの変化に与える影響が大きくなり易い。すなわち、ホール効果発生部30の磁化の大きさが飽和磁化に近付くようにホール効果発生部30の磁界強度を設定すると、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化の影響を受け易くなる。
【0042】
このため、ホール効果発生部30は、外部気温が所定温度である場合におけるホール効果発生部30の磁化の大きさが飽和磁化する磁界強度の大きさよりも小さくなるように磁界強度の大きさが設定される。具体的に、ホール効果発生部30は、磁界強度の大きさを、外部気温が25℃である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下の大きさとなるように設定してもよい。
【0043】
なお、
図3におけるx4は、外部気温が25℃である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する際の磁界強度に対する80%の磁界強度を示している。
【0044】
例えば、外部気温が150℃以下である環境で電流検出装置1が用いられる場合、ホール効果発生部30の磁界強度の大きさを、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下で設定する場合、
図3に示すように、外部温度やホール効果発生部30自身の温度に関わらず、磁化の大きさは略等しくなる。また、外部気温が150℃以下である環境で電流検出装置1が用いられる場合、ホール効果発生部30の磁界強度の大きさを、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下で設定する場合、磁界の大きさは、ホール効果発生部30の磁界強度に略比例する。
【0045】
したがって、本実施形態のホール効果発生部30は、外部気温が25℃である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度の大きさが設定されている。これにより、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化の影響を受け難くなる。
【0046】
また、一般的に、ホール効果発生部30は、磁界強度の設定値を大きくするほど、ホール効果発生部30のコストが上昇し易い。このため、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるようにホール効果発生部30の磁界強度を設定することで、ホール効果発生部30のコストの上昇を抑制し易くできる。そして、このように構成されるホール効果発生部30によって発生する異常ホール電圧は算出部60によって検出される。
【0047】
なお、上述したように、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が高いほど、ホール効果発生部30の磁界強度に略比例して大きくなる磁化の大きさの範囲が小さくなる。すなわち、外部温度やホール効果発生部30自身の温度が高いほど、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧に対する外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化の影響を受け易い範囲が小さくなる。
【0048】
これに対して、ホール効果発生部30の磁界強度の大きさをホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさに対して小さく設定することで、外部温度やホール効果発生部30自身の温度の上昇に対する異常ホール電圧の影響を抑制し易くできる。
【0049】
このため、ホール効果発生部30は、磁界強度の大きさを、外部気温が25℃である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの1/2以下となるように設定してもよい。
【0050】
これによれば、外部気温が150℃より高い温度であっても、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化の影響を受け難くすることができる。また、ホール効果発生部30のコストの上昇をさらに抑制し易くできる。
【0051】
なお、ホール効果発生部30は、外部気温が25℃とは異なる温度である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度の大きさが設定されてもよい。例えば、ホール効果発生部30は、外部気温が25℃より低い温度である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度の大きさが設定されてもよい。また、ホール効果発生部30は、外部気温が25℃より高い温度である場合におけるホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度の大きさが設定されてもよい。
【0052】
算出部60は、端子部40および電線50を介してホール効果発生部30に接続されており、ホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の値を検出する。そして、算出部60は、検出した異常ホール電圧の値および定められた制御マップに基づいてホール効果発生部30に流れる電流の大きさを算出する。
【0053】
以上の如く、本実施形態の電流検出装置1は、電流がホール効果発生部30に流れる際に異常ホール効果によってホール効果発生部30に発生する起電力に基づいて電流値を算出する。
【0054】
ここで、シャント抵抗器を用いた比較例となる電流検出装置100を用いて本願発明の効果について説明する。比較例となる電流検出装置100は、
図4に示すように、電極部101、102と、当該電極部101、102の間に設けられる抵抗体103と、抵抗体103の電圧降下を検出するために電極部101、102に設けられる2つの端子104と、2つの端子104間の電位差に基づいて電流値を算出する電流算出部105を有する。
【0055】
そして、当該比較例となる電流検出装置100は、電流算出部105が、電極部101、102に設けられた2つの端子104間を用いて抵抗体103の電圧降下を検出し、オームの法則を用いて抵抗体103に流れる電流の電流値を算出する。
【0056】
ところで、当該比較例となる電流検出装置100では、電極部101、102および抵抗体103に電流が流れることによって電極部101、102および抵抗体103の温度が変化する虞がある。特に、比較例の電流検出装置100を電気自動車のバッテリに流れる電流を検出するために用いる場合、電気自動車のバッテリには1000アンペア以上の電流が流れることがあるため、電極部101、102および抵抗体103の温度が上昇し易い。
【0057】
電極部101、102および抵抗体103の温度が変化する場合、これら電極部101、102および抵抗体103の抵抗値が変化する。そして、電極部101、102の抵抗値の変化および抵抗体103の抵抗値の変化それぞれは、2つの端子104間の電圧降下の値が変化する要因となる。すなわち、電極部101、102および抵抗体103の温度変化に起因する抵抗値の変化は、電圧降下に基づいて算出する電流値に誤差が生じる原因となる。
【0058】
また、電流算出部105は、オームの法則を用いて抵抗体103に流れる電流の電流値を算出する。このため、電極部101、102および抵抗体103の温度変化に起因する抵抗値の変化は、検出した電流値に生じる誤差を大きくし易い。
【0059】
これに対して、本実施形態の電流検出装置1は、ホール効果発生部30に発生する起電力を検出するための端子部40がホール効果発生部30に設けられている。このため、第1電極部10および第2電極部20の温度変化に起因して、第1電極部10および第2電極部20の抵抗値が変化する場合であっても電流検出装置1が検出するホール効果発生部30の起電力の検出結果に影響が与えられ難い。このため、第1電極部10および第2電極部20の温度変化に起因する検出値の誤差を補償する補償回路等を不要にできるので、簡易な構成で精度良く電流値を検出することができる。
【0060】
また、電流検出装置1は、異常ホール効果によってホール効果発生部30に発生する起電力を検出する。そして、異常ホール効果によって発生する起電力は、ホール効果発生部30の温度およびホール効果発生部30の電気抵抗値の大きさに対して比較的影響を受け難い。
【0061】
このため、ホール効果発生部30に電流が流れることによってホール効果発生部30の温度が変化する場合であっても、比較例の電流検出装置100のようなオームの法則を用いて電流値を算出する方法に比較して、精度良く電流値を検出することができる。
【0062】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0063】
(1)上記実施形態では、ホール効果発生部30は、自発磁化を有するとともに、ホール効果発生部30の外部からの磁界の影響を受けなくとも、自発磁化の方向を維持する磁性体で構成されている。
【0064】
このため、ホール効果発生部30を磁化させるための磁界を発生させる部材をホール効果発生部30とは独立して別途設けなくとも、ホール効果発生部30に異常ホール効果を発生させることができるので、電流検出装置1の構成を簡易にできる。
【0065】
また、仮に、ホール効果発生部30とは独立してホール効果発生部30を磁化させる部材を設ける場合、当該磁界を発生させる部材の磁界を受けてホール効果発生部30に起電力が発生する。しかし、当該磁界を発生させる部材の磁界強度は、外部環境等から受ける影響によって変化する場合がある。そして、ホール効果発生部30に発生する起電力は、磁界を発生させる部材の磁界強度の変化に伴って変化するため、外部環境等から受ける影響によって磁界を発生させる部材の磁界強度が変化すると、電流検出装置1が検出する電流値に誤差が発生する虞がある。
【0066】
これに対して、自発磁化を有するホール効果発生部30を用いることで、ホール効果発生部30を磁化させる部材を不要にできるので、外部環境等から受ける影響によって電流検出装置1が検出する電流値に誤差が発生する要因を減らすことができる。このため、ホール効果発生部30とは独立してホール効果発生部30を磁化させる部材を設ける場合に比較して電流検出装置1が検出する電流値に誤差を発生し難くすることができる。
【0067】
(2)上記実施形態では、ホール効果発生部30は、比較的高い異常ホール係数を有するホイスラー合金で構成されている。そして、ホール効果発生部30の異常ホール係数が高いほど、異常ホール効果によってホール効果発生部30に発生する起電力を大きくすることができる。
【0068】
また、ホール効果発生部30に発生する起電力が大きいほど、ホール効果発生部30に流れる電流値の変化を検出し易い。したがって、電流検出装置1は、ホール効果発生部30がホイスラー合金とは異なる金属で構成される場合に比較して、精度良く電流値を検出することができる。
【0069】
(3)上記実施形態では、ホール効果発生部30は、ホイスラー合金であって、コバルトおよび鉄のうち、少なくともどちらか一方を含んで構成される。そして、ホール効果発生部30は、コバルトおよび鉄を含まない構成である場合に比較して、異常ホール係数を大きくし易い。このため、電流検出装置1は、ホール効果発生部30がコバルトおよび鉄を含まない構成である場合に比較して、精度良く電流値を検出することができる。
【0070】
(4)上記実施形態では、ホール効果発生部30の磁化方向が、電流流れ方向に直交するようにホール効果発生部30が配置される。ところで、異常ホール効果は、ホール効果発生部30における電流が流れる方向および磁化方向に直交する方向に起電力が発生する。このため、ホール効果発生部30の磁化方向において電流流れ方向に直交する方向の成分が少なくなるほど、ホール効果発生部30に発生する起電力が小さくなる。
【0071】
これに対して、本実施形態では、ホール効果発生部30の磁化方向が電流流れ方向に直交するようにホール効果発生部30が配置されるため、このように配置されない場合に比較して、ホール効果発生部30に発生する起電力を大きくすることができる。したがって、電流検出装置1は、ホール効果発生部30がホイスラー合金とは異なる金属で構成される場合に比較して、精度良く電流値を検出することができる。
【0072】
(5)上記実施形態では、ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度が設定されている。これにより、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化の影響を受け難くなる。したがって、外部温度やホール効果発生部30自身の温度の変化によってホール電圧が変化し難くなるので、このように構成されない場合に比較して精度良く電流値を検出することができる。また、このように構成されない場合に比較して、ホール効果発生部30のコストの上昇を抑制し易くできる。
【0073】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について、
図5を参照して説明する。本実施形態では、ホール効果発生部30が、磁石31および異常ホール効果材32とで構成されている点が第1実施形態と相違している。本実施形態では、第1実施形態と異なる部分について主に説明し、第1実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0074】
磁石31は、自身の周囲に所定の磁界強度の磁界を発生させるとともに、自身の磁化する方向を維持することで、異常ホール効果材32に一定の磁界を印加する磁界発生部である。磁石31は、
図5に示すように、直方体形状であって、異常ホール効果材32の下側に設けられている。
【0075】
また、磁石31は、上側がN極であって下側がS極となるように配置されている。そして、磁石31は、異常ホール効果材32に対して与える磁界の磁化方向が上方向となるように配置されている。換言すれば、磁石31は、異常ホール効果材32に対して、電流流れ方向に直交する方向の磁界を印加可能に配置されている。
【0076】
本実施形態の異常ホール効果材32は、第1実施形態のホール効果発生部30と同様、ホイスラー合金であって、コバルトが含まれるCo2MnAlが採用されている。ただし、異常ホール効果材32は、第1実施形態のホール効果発生部30と異なり、着磁されておらず、外部からの磁界の影響を受けていない状態においては、自身の周囲に磁界を発生させることができない。
【0077】
しかし、異常ホール効果材32は、磁石31が発生させる磁界の影響によって磁化するとともに、磁石31が発生させる磁界の影響によって磁化方向を、磁石31から受ける磁化の方向に維持可能に構成されている。すなわち、異常ホール効果材32は、磁石31が発生させる磁界の影響によって電流流れ方向に直交する方向に磁化し、且つ、磁化方向を維持可能に構成されている。換言すれば、異常ホール効果材32は、磁石31から磁界の影響が与えられなくなる場合、電流流れ方向に直交する方向に磁化する状態を維持できず、磁石31によって位置付けられていた磁化方向を維持することができない。
【0078】
具体的に、本実施形態の異常ホール効果材32は、磁石31から与えられる上方向の磁界によって、磁化方向を上方向、すなわち、電流流れ方向に直交する方向に維持可能に構成されている。
【0079】
なお、異常ホール効果材32は、磁石31から磁界の影響を受けていない状態において、電流流れ方向に直交する方向以外の方向に磁化するものが採用されてもよい。
【0080】
このため、磁石31が発生させる磁界の影響によって磁化した状態の異常ホール効果材32に電流が流れると、磁化した異常ホール効果材32には、異常ホール効果が発生し、異常ホール電圧が発生する。
【0081】
異常ホール効果材32に発生する異常ホール電圧は、第1実施形態で説明したホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧と同様に、磁石31の磁界強度が大きくなるに伴い大きくなる。また、異常ホール効果材32に発生する異常ホール電圧の変化もホール効果発生部30に発生する異常ホール電圧の変化と同様に変化する。
【0082】
したがって、本実施形態の磁石31は、異常ホール効果材32が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となる磁界強度を発生するものが採用されている。これにより、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度や異常ホール効果材32自身の温度の変化の影響を受け難くなる。
【0083】
また、磁石31は、発生可能な磁界強度が大きいほど、磁石31自身のコストが上昇し易い。このため、異常ホール効果材32が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となる磁界を発生させる磁石31が採用されることによって、磁石31のコストの上昇を抑制し易くできる。
【0084】
このように構成される電流検出装置1は、第1電極部10および第2電極部20を介して、磁石31から磁界が印加された状態の異常ホール効果材32において電流流れ方向に電流が流れると、異常ホール効果材32に異常ホール効果が発生する。これにより、異常ホール効果材32における電流流れ方向および上方向に直交するZ方向に起電力が発生する。
【0085】
算出部60は、端子部40および電線50を介して異常ホール効果材32に接続されており、異常ホール効果材32に発生する異常ホール電圧の値を検出する。そして、算出部60は、検出した異常ホール電圧の値および定められた制御マップに基づいて異常ホール効果材32に流れる電流の大きさを算出する。
【0086】
以上の如く、本実施形態の電流検出装置1は、電流が異常ホール効果材32に流れる際に異常ホール効果によって異常ホール効果材32に発生する起電力に基づいて電流値を算出する。
【0087】
このように、本実施形態の電流検出装置1は、ホール効果発生部30が磁石31および異常ホール効果材32に置き換わっている点が第1実施形態と異なる。そして、磁石31から磁界が印加されることで磁化方向を維持する異常ホール効果材32に電流が流れることによって、異常ホール効果材32に異常ホール効果を発生させることができる。これによれば、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0088】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0089】
(1)上記実施形態では、磁石31は、異常ホール効果材32が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となる磁界強度を発生するものが採用されている。これにより、異常ホール効果によって発生する異常ホール電圧が外部温度や異常ホール効果材32自身の温度の変化の影響を受け難くなる。したがって、外部温度や異常ホール効果材32自身の温度の変化によってホール電圧が変化し難くなるので、このように構成されない場合に比較して精度良く電流値を検出することができる。また、このように構成されない場合に比較して、磁石31のコストの上昇を抑制し易くできる。
【0090】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について、
図6を参照して説明する。本実施形態では、異常ホール効果材32が正常ホール効果材33に置き換わっている点が第2実施形態と相違している。本実施形態では、第2実施形態と異なる部分について主に説明し、第2実施形態と同様の部分について説明を省略することがある。
【0091】
本実施形態の正常ホール効果材33は、磁石31が発生させる磁界と相互作用を及ぼさない特性を有する非磁性体で構成されている。換言すれば、本実施形態の正常ホール効果材33は、磁石31が発生させる磁界から影響を受けることによって自身の周囲に磁界をほぼ発生させない非磁性体で構成されている。
【0092】
具体的に、正常ホール効果材33は、銅およびマンガンを含む合金で構成されている。さらに、具体的に、正常ホール効果材33は、銅、マンガン、ニッケルの3つの部材で主に構成されるマンガニン(登録商標)で構成されている。
【0093】
このように構成される正常ホール効果材33では、正常ホール効果材33に電流が流れる際に、当該電流は、正常ホール効果材33からは略磁界の影響を受けず、磁石31が発生させる磁界から影響を受ける。このため、磁石31が発生させる磁界の影響を略受けない正常ホール効果材33に電流が流れると、正常ホール効果材33には、正常ホール効果が発生する。
【0094】
このように構成される電流検出装置1は、第1電極部10および第2電極部20を介して正常ホール効果材33に電流流れ方向に電流が流れると、磁石31から磁界が印加されて、正常ホール効果材33に正常ホール効果が発生する。これにより、正常ホール効果材33における電流流れ方向および上方向に直交するZ方向に起電力(すなわち、正常ホール電圧)が発生する。
【0095】
算出部60は、端子部40および電線50を介して正常ホール効果材33に接続されており、正常ホール効果材33に発生する正常ホール電圧の値を検出する。そして、算出部60は、検出した正常ホール電圧の値および定められた制御マップに基づいて正常ホール効果材33に流れる電流の大きさを算出する。
【0096】
以上の如く、本実施形態の電流検出装置1は、電流が正常ホール効果材33に流れる際に正常ホール効果によって正常ホール効果材33に発生する起電力に基づいて電流値を算出する。
【0097】
このように、本実施形態の電流検出装置1は、異常ホール効果材32が正常ホール効果材33に置き換わっている点が第2実施形態と異なる。そして、正常ホール効果材33に電流が流れることによって、正常ホール効果材33に正常ホール効果を発生させることができる。これによれば、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0099】
(1)上記実施形態では、正常ホール効果材33が銅およびマンガンのいずれも含んで構成される。そして、正常ホール効果材33が銅およびマンガンを含まない構成である場合に比較して、正常ホール係数を大きくし易い。このため、電流検出装置1は、正常ホール効果材33が銅およびマンガンを含まない構成である場合に比較して、精度良く電流値を検出することができる。
【0100】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0101】
上述の実施形態では、電流検出装置1が電気自動車のバッテリの電流を検出するために用いられる例について説明したが、これに限定されない。電流検出装置1が電流値を検出する対象物は電気自動車のバッテリに限定されず、電流検出装置1は、様々な対象物に流れる電流値を測定することができる。
【0102】
上述の実施形態では、ホール効果発生部30および異常ホール効果材32がホイスラー合金で構成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、ホール効果発生部30および異常ホール効果材32は、ホイスラー合金とは異なる部材で構成されてもよい。
【0103】
上述の実施形態では、ホール効果発生部30および異常ホール効果材32がコバルトおよび鉄のうち、少なくともどちらか一方を含むホイスラー合金で構成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、ホール効果発生部30および異常ホール効果材32は、コバルトおよび鉄を含まないでホイスラー合金で構成されてもよい。
【0104】
上述の実施形態では、ホール効果発生部30の自発磁化の方向が電流流れ方向に直交するように、ホール効果発生部30が配置される例について説明したが、これに限定されない。ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30の自発磁化の方向が電流流れ方向に平行な方向とは異なる方向であれば、特に配置される方向が限定されない。
【0105】
上述の第1実施形態では、ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となるように磁界強度が設定されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、ホール効果発生部30は、ホール効果発生部30が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%より大きくなるように磁界強度が設定されてもよい。
【0106】
上述の実施形態では、正常ホール効果材33が銅およびマンガンを含んで構成される例について説明したが、これに限定されない。例えば、正常ホール効果材33は、銅およびマンガンの少なくともどちらか一方を含まず構成されてもよい。
【0107】
上述の第2実施形態では、磁石31は、異常ホール効果材32が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%以下となる磁界強度を発生するものが採用されている例について説明したが、これに限定されない。例えば、磁石31は、異常ホール効果材32が飽和磁化する磁界強度の大きさの80%より大きな磁界強度を発生するものが採用されてもよい。
【0108】
上述の実施形態では、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が電流流れ方向に直交するように磁石31が配置される例について説明したが、これに限定されない。磁石31は、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が電流流れ方向に平行な方向とは異なる方向であれば、特に配置される方向が限定されない。
【0109】
上述の実施形態では、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が上方向となるように、磁石31が異常ホール効果材32または正常ホール効果材33の下側に設けられ、磁石31の上側がN極であって下側がS極となるように配置される例について説明したが、これに限定されない。例えば、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が上方向となるように、磁石31が異常ホール効果材32または正常ホール効果材33の上側に設けられ、磁石31の上側がN極であって下側がS極となるように配置されてもよい。
【0110】
または、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が上下方向となるように、磁石31が異常ホール効果材32または正常ホール効果材33の下側に設けられ、磁石31の上側がS極であって下側がN極となるように配置されてもよい。さらに、異常ホール効果材32または正常ホール効果材33に対して与える磁界の磁化方向が下方向となるように、磁石31が異常ホール効果材32または正常ホール効果材33の上側に設けられ、磁石31の上側がS極であって下側がN極となるように配置されてもよい。
【0111】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0112】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0113】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【符号の説明】
【0114】
10 第1電極部
20 第2電極部
30 ホール効果発生部
60 算出部