(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170575
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】半導体モジュールおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231124BHJP
H01L 23/48 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/48 P
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082426
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石野 寛
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 克也
(72)【発明者】
【氏名】成川 勝
(57)【要約】
【課題】樹脂モールド部が損傷することを抑制する。
【解決手段】接続端子15は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に樹脂モールド部19内に封止され、樹脂モールド部19に形成された開口部193から露出する内部端子15aと、開口部193で内部端子15aと接続されて樹脂モールド部19から突出する外部端子15bと、内部端子15aと接続され、内部端子15aの延設方向と交差する方向であって、内部端子15aの面方向に沿った方向に延設されて樹脂モールド部19から突出する突出部150cを有するタイバー残部15cと、を有し、接続端子15は、開口部193から露出する部分と突出部150cとの間に溝部160が形成されており、樹脂モールド部19は、溝部160に入り込んでおり、溝部160は、突出部側の開口端部も樹脂モールド部19で覆われるようにする。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールであって、
半導体チップ(10)と、
前記半導体チップを樹脂封止する樹脂モールド部(19)と、
前記半導体チップと電気的に接続され、前記樹脂モールド部から突出した部分を有する接続端子(15)と、を備え、
前記接続端子は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に前記樹脂モールド部内に封止され、前記樹脂モールド部に形成された開口部(193)から露出する内部端子(15a)と、前記開口部で前記内部端子と接続されて前記樹脂モールド部から突出する外部端子(15b)と、前記内部端子と接続され、前記内部端子の延設方向と交差する方向であって、前記内部端子の面方向に沿った方向に延設されて前記樹脂モールド部から突出する突出部(150c)を有するタイバー残部(15c)と、を有し、
前記接続端子は、前記開口部から露出する部分と前記突出部との間に溝部(160)が形成されており、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでおり、
前記溝部は、前記突出部側の開口端部も前記樹脂モールド部で覆われている半導体モジュール。
【請求項2】
前記溝部は、前記タイバー残部に形成されている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項3】
前記接続端子は、前記樹脂モールド部に封止される部分であって、前記溝部が形成される部分と異なる部分に粗化部(170)が形成され、
前記溝部は、前記粗化部よりも表面粗さが大きくされている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項4】
前記溝部は、複数の凹部(161)を有し、
前記複数の凹部は、前記タイバー残部の延設方向と交差する方向に延設されている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項5】
前記溝部は、前記タイバー残部の延設方向に沿った幅が50μm以上とされている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項6】
前記溝部は、深さが、前記溝部が形成される部分と異なる部分の厚さの1/10以上とされ、
前記接続端子は、前記溝部が形成されている部分の厚さが、前記溝部が形成される部分と異なる部分の厚さの1/2以上とされている請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項7】
前記接続端子を第1接続端子とし、
板状とされ、前記半導体チップと電気的に接続されると共に前記樹脂モールド部から突出した部分を有する第2接続端子(16)を備え、
前記第1接続端子および前記第2接続端子は、所定間隔離れる状態で積層され、
前記第2接続端子は、前記樹脂モールド部における所定面(191c)から突出しており、
前記第1接続端子の内部端子は、前記樹脂モールド部における前記所定面と異なる面(191b)に前記開口部が形成されて露出している請求項1に記載の半導体モジュール。
【請求項8】
半導体チップ(10)と、
前記半導体チップを樹脂封止する樹脂モールド部(19)と、
前記半導体チップと電気的に接続され、前記樹脂モールド部から突出した部分を有する接続端子(15)と、を備え、
前記接続端子は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に前記樹脂モールド部内に封止され、前記樹脂モールド部に形成された開口部(193)から露出する内部端子(15a)と、前記開口部で前記内部端子と接続されて前記樹脂モールド部から突出する外部端子(15b)と、前記内部端子と接続され、前記内部端子の延設方向と交差する方向であって、前記内部端子の面方向に沿った方向に延設されて前記樹脂モールド部から突出する突出部(150c)を有するタイバー残部(15c)と、を有し、
前記接続端子は、前記開口部から露出する部分と前記突出部との間に溝部(160)が形成されており、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでおり、
前記溝部は、前記突出部側の開口端部も前記樹脂モールド部で覆われている半導体モジュールの製造方法であって、
前記内部端子がタイバー(210)と一体化された端子構成部材(200)を用意することと、
前記内部端子および前記タイバーのうちの前記樹脂モールド部で封止される部分に前記溝部を形成することと、
前記端子構成部材における前記内部端子を前記半導体チップに電気的に接続して構成部材(300)を構成することと、
第1型(410)と第2型(420)とが嵌合されることで内部にキャビティ(400a)が構成される金型(400)を用意し、前記構成部材を前記キャビティに配置することと、
前記金型に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、前記樹脂モールド部を形成することと、
前記タイバーを切断し、前記内部端子と接続されると共に前記樹脂モールド部から突出した前記突出部を有する前記タイバー残部を形成することと、
前記内部端子に前記外部端子を超音波接合することと、を行う半導体モジュールの製造方法。
【請求項9】
前記溝部を形成することでは、前記内部端子および前記タイバーのうちの前記樹脂モールド部で封止される部分であって、前記溝部と異なる部分に、前記溝部よりも表面粗さが小さい粗化部(170)を形成することも行い、
前記溝部を形成すること、および前記粗化部を形成することは、同じレーザ装置を用いてレーザ光を照射することで前記溝部および前記粗化部を形成する請求項8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体素子と、半導体素子と接続される接続端子と、半導体素子および接続端子がモールド樹脂で一体的に封止された樹脂モールド部とを有する半導体モジュールが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このような半導体モジュールは、次のように製造される。すなわち、接続端子がタイバーで他の部材と連結された端子構成部材を用意し、端子構成部材の接続端子を半導体素子と電気的に接続して構成部材を構成する。次に、タイバーが金型で挟持されるように構成部材を金型内に配置する。続いて、金型内に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、樹脂モールド部を形成する。その後、タイバーを切断することにより、上記半導体モジュールが製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、本発明者らは、樹脂モールド部に開口部を形成して接続端子を露出させ、開口部に別の接続端子を超音波接合して半導体モジュールを構成することを検討している。つまり、本発明者らは、樹脂モールド部内に配置される内部端子と、内部端子と超音波接合される外部端子とを有する半導体モジュールを検討している。
【0006】
そして、本発明者らは、このような半導体モジュールを製造するため、次のような製造方法を検討している。すなわち、端子構成部材を用意する際には、樹脂モールド部内に配置される内部端子がタイバーで他の部材と連結された端子構成部材を用意する。また、樹脂モールド部を形成する際には、開口部から内部端子が露出するように樹脂モールド部を形成する。そして、タイバーを切断した後、開口部から露出する内部端子と接続されるように外部端子を超音波接合して半導体モジュールを構成することを検討している。
【0007】
しかしながら、上記のような半導体モジュールの製造方法では、樹脂モールド部を形成した後にタイバーを切断するため、内部端子は、樹脂モールド部から突出するタイバー残部を有する構成となる。そして、本発明者らの検討によれば、内部端子に外部端子を超音波接合しようとすると、樹脂モールド部から突出する部分のタイバー残部の変位が大きくなり易いことが確認された。このため、上記のような製造方法で半導体モジュールを製造しようとすると、樹脂モールド部から突出するタイバー残部の周囲に位置する樹脂モールド部が損傷する可能性がある。
【0008】
本発明は上記点に鑑み、樹脂モールド部が損傷することを抑制できる半導体モジュールおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための請求項1は、半導体モジュールであって、半導体チップ(10)と、半導体チップを樹脂封止する樹脂モールド部(19)と、半導体チップと電気的に接続され、樹脂モールド部から突出した部分を有する接続端子(15)と、を備え、接続端子は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に樹脂モールド部内に封止され、樹脂モールド部に形成された開口部(193)から露出する内部端子(15a)と、開口部で内部端子と接続されて樹脂モールド部から突出する外部端子(15b)と、内部端子と接続され、内部端子の延設方向と交差する方向であって、内部端子の面方向に沿った方向に延設されて樹脂モールド部から突出する突出部(150c)を有するタイバー残部(15c)と、を有し、接続端子は、開口部から露出する部分と突出部との間に溝部(160)が形成されており、樹脂モールド部は、溝部に入り込んでおり、溝部は、突出部側の開口端部も樹脂モールド部で覆われている。
【0010】
これによれば、接続端子には、開口部から露出する部分と突出部との間に溝部が形成されている。このため、開口部にて内部端子に外部端子を超音波接合する際、応力を分散させることができ、突出部と樹脂モールド部との境界部に発生する最大応力を小さくできる。したがって、樹脂モールド部が損傷することを抑制できる。
【0011】
請求項8は、請求項1に記載の半導体モジュールに関する製造方法であり、内部端子がタイバー(210)と一体化された端子構成部材(200)を用意することと、内部端子およびタイバーのうちの樹脂モールド部で封止される部分に溝部を形成することと、端子構成部材における内部端子を半導体チップに電気的に接続して構成部材(300)を構成することと、第1型(410)と第2型(420)とが嵌合されることで内部にキャビティ(400a)が構成される金型(400)を用意し、構成部材をキャビティに配置することと、金型に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、樹脂モールド部を形成することと、タイバーを切断し、内部端子と接続されると共に樹脂モールド部から突出した突出部を有するタイバー残部を形成することと、内部端子に外部端子を超音波接合することと、を行う。
【0012】
これによれば、開口部から露出する部分と突出部との間に溝部が形成されている。このため、開口部にて内部端子に外部端子を超音波接合する際、応力を分散させることができ、突出部と樹脂モールド部との境界部に発生する最大応力を小さくできる。したがって、樹脂モールド部が損傷することを抑制した半導体モジュールを製造できる。
【0013】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態における半導体モジュールを用いて構成した三相インバータ回路の回路図である。
【
図2】半導体モジュールの内部構造を示す図である。
【
図3】半導体モジュールを樹脂モールド部の一面側から視た平面図である。
【
図4】外部端子を接合する前の半導体モジュールを樹脂モールド部の他面側から視た平面図である。
【
図5】外部端子を接合した後の半導体モジュールを樹脂モールド部の他面側から視た平面図である。
【
図6】
図4中のVI-VI線に沿った断面図である。
【
図7】
図5中のVII-VII線に沿った断面図である。
【
図9】
図3中のIX-IX線に沿った断面図である。
【
図12】内部端子に外部端子を超音波接合する際に発生する応力を説明するための図である。
【
図13A】外側境界部と一致するように溝部を形成した際の断面図である。
【
図13B】内側境界部と一致するように溝部を形成した際の断面図である。
【
図14】溝位置と最大応力との関係を示す図である。
【
図15】外側境界部と一致するように溝部を形成した際の、内部端子に外部端子を超音波接合する際に発生する応力を説明するための図である。
【
図16】溝深さと最大応力との関係を示す図である。
【
図17】溝深さと最大応力との関係を示す図である。
【
図18】溝深さと最大応力との関係を示す図である。
【
図19】溝深さと最大応力との関係を示す図である。
【
図20】突出部長さと最大応力との関係を示す図である。
【
図21】半導体モジュールの製造工程を示す平面図である。
【
図22】構成部材を金型に配置した際の断面図である。
【
図23】構成部材を金型に配置した際の断面図である。
【
図24】樹脂モールド部を形成した後の製造工程を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0016】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、三相交流モータを駆動する三相インバータ回路を構成する半導体モジュールについて説明する。
【0017】
まず、三相インバータ回路について、
図1を参照しつつ説明する。三相インバータ回路1は、直流電源2に基づいて三相交流モータである負荷3を駆動するためのものである。本実施形態の三相インバータ回路1には、平滑コンデンサ4が並列接続されており、スイッチング時のリプルの低減やノイズの影響を抑制して一定な電源電圧が形成できるようにしてある。
【0018】
三相インバータ回路1は、直列接続した上下アーム51~56が三相分並列接続された構成とされている。そして、三相インバータ回路1は、上アーム51、53、55と下アーム52、54、56との各中間電位を負荷3となる三相交流モータのU相、V相、W相の各相に順番に入れ替えながら印加する。
【0019】
具体的には、上下アーム51~56は、それぞれ、IGBTやMOSFETなどの半導体スイッチング素子51a~56aと、FWDなどの還流を目的とした整流素子51b~56bとを備えている。そして、三相インバータ回路1は、各相の上下アーム51~56の半導体スイッチング素子51a~56aがオン、オフ制御されることで、負荷3に対して周期の異なる三相の交流電流を供給する。IGBTはInsulated Gate Bipolar Transistorの略である。MOSFETはMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略である。FWDはFree Wheeling Diodeの略である。
【0020】
本実施形態では、三相インバータ回路1を構成する半導体スイッチング素子51a~56aおよび整流素子51b~56bが形成された半導体チップをモジュール化して一体化している。つまり、6つのアームを一体化した6in1構造の半導体モジュールを用いて三相インバータ回路1を構成している。
【0021】
以下、本実施形態の半導体モジュール6の詳細構造について、
図2~
図8を参照しつつ説明する。本実施形態の半導体モジュール6は、半導体チップ10と、第1、第2リードフレーム11、12と、出力端子13と、制御端子14と、第1、第2接続端子15、16と、第1、第2放熱板17、18とを備えている。また、半導体モジュール6は、これらの構成要素を一体的に封止する樹脂モールド部19を備えている。
【0022】
樹脂モールド部19は、平面略矩形状とされた略直方体状とされており、一面19aおよび他面19bと、一面19aと他面19bとの間を繋ぐ第1~第4側面19c~19fとを有する構成とされている。例えば、
図2の樹脂モールド部19は、紙面左右方向に延びる相対する2面が第1側面19cおよび第3側面19eとされ、紙面上下方向に延びる相対する2面が第2側面19dおよび第4側面19fとされている。そして、本実施形態では、第3側面19eに、第3側面19eの法線方向に沿って突出する凸部191が形成されている。なお、凸部191は、具体的には後述するが、第1、第2接続端子15、16が配置される部分に構成されている。また、本実施形態では、第1、第2リードフレーム11、12等を封止する部分を主部192とすると、凸部191は、主部192よりも厚さが薄くされている。
【0023】
半導体チップ10は、上下アーム51~56に対応して6つ備えられている。以下では、上下アーム51~56を構成する半導体チップ10を、それぞれ半導体チップ101~106として説明する。
【0024】
図2に示されるように、6つの半導体チップ10は、3列に並ぶように配置されている。具体的には、上アーム51、53、55を構成する半導体チップ101、103、105は、樹脂モールド部19の一面19aに平行な一方向に沿って、半導体チップ101、103、105の順に並んでいる。そして、半導体チップ102、104、106は、半導体チップ101、103、105の並びに沿って、半導体チップ102、104、106の順に並んでいる。
【0025】
第1、第2リードフレーム11、12は、例えば、銅や鉄等の導電性材料によって構成され、略矩形状の搭載部を構成している。そして、平面視において、第1リードフレーム11は、第1側面19c側に位置するように配置され、第2リードフレーム12は、第3側面19e側に位置するように配置されている。
【0026】
上アーム51、53、55の半導体チップ101、103、105は、第1リードフレーム11の表面側に搭載されており、下アーム52、54、56の半導体チップ102、104、106は、第2リードフレーム12の裏面側に搭載されている。なお、第1リードフレーム11の表面側とは、樹脂モールド部19の一面19a側の面のことである。第2リードフレーム12の裏面側とは、樹脂モールド部19の他面19b側の面のことである。
【0027】
また、半導体チップ101、103、105は、第1リードフレーム11を介して、出力端子13に接続されている。半導体チップ102、104、106は、第2リードフレーム12、図示しない配線層、および第1リードフレーム11を介して、出力端子13に接続されている。
【0028】
半導体モジュール6は、3つの出力端子13を備えている。そして、3つの出力端子13は、それぞれ負荷3のU相、V相、W相に接続される。本実施形態では、出力端子13は、板状の導電性部材で構成されており、樹脂モールド部19の第1側面19cから突出している。
【0029】
各半導体チップ101~106は、制御端子14に接続されている。制御端子14は、各半導体チップ101~106に形成されるゲート電極等と接続される端子である。制御端子14は、棒状の導電性部材で構成され、一端が半導体チップ101~106に接続されていると共に、他端が樹脂モールド部19の第1側面19cまたは第3側面19eから突出している。そして、制御端子14のうち樹脂モールド部19から露出した部分は、樹脂モールド部19の一面19a側に突出するように屈曲させられている。
【0030】
具体的には、制御端子14は、各半導体チップ101~106に対して設けられている。そして、上アーム51、53、55の半導体チップ101、103、105に接続される制御端子14は、樹脂モールド部19のうち、出力端子13と同じ第1側面19cから突出している。下アーム52、54、56の半導体チップ102、104、106に接続される制御端子14は、樹脂モールド部19のうち、出力端子13とは反対側の第3側面19eから突出している。
【0031】
第1、第2接続端子15、16は、半導体チップ10を平滑コンデンサ4に接続するものである。第1、第2接続端子15、16は、板状とされており、
図6~
図8に示されるように、互いに積層された状態で樹脂モールド部19の第3側面19e側から突出している。つまり、第1、第2接続端子15、16は、下アーム52、54、56の半導体チップ102、104、106に接続される制御端子14と同じ第3側面19e側から突出している。ここで、凸部191において、樹脂モールド部19の一面19a側の面を一面191aとし、他面19b側の面を他面191bとし、主部192と反対側の面を先端面191cとし、先端面191cと繋がる面を第1、第2側面191d、191eとする。なお、先端面191cは、凸部191における突出方向の先端側に位置する面ということもできる。そして、本実施形態では、第1、第2接続端子15、16は、凸部191に配置されている部分において、第1接続端子15が一面191a側に位置し、第2接続端子16が他面191b側に位置するように積層されている。
【0032】
なお、第1、第2接続端子15、16は、所定間隔離れた状態で積層されており、間に樹脂モールド部19が配置されて電気的に絶縁されている。また、第1、第2接続端子15、16は、下アーム52、54、56の半導体チップ102、104、106に接続される制御端子14と所定の間隔を離して配置されている。例えば、制御端子14と第1、第2接続端子15、16との間隔は、所定のインパルス電圧の印加時に制御端子14と第1、第2接続端子15、16との絶縁が確保される距離よりも長くなるように設計される。
【0033】
第1接続端子15は、半導体チップ101、103、105に、平滑コンデンサ4を介して直流電源2の正極に接続する端子である。第2接続端子16は、半導体チップ102、104、106に、平滑コンデンサ4を介して直流電源2の負極に接続する端子である。
【0034】
本実施形態の第1接続端子15は、樹脂モールド部19に封止された内部端子15aと、樹脂モールド部19の外部に配置された外部端子15bとを有する構成とされている。内部端子15aは、板状の導電性部材で構成されており、第1リードフレーム11を介して上アーム51、53、55の半導体チップ101、103、105に接続されている。
【0035】
本実施形態の半導体モジュール6は、2つの第1接続端子15を備えている。そして、2つの第1接続端子15は、3列に並んだ6つの半導体チップ10のうち、中央の列に配置された半導体チップ103、104を挟むように配置されている。具体的には、一方の第1接続端子15における内部端子15aは、半導体チップ101、103の間と、半導体チップ102、104の間とを通るように配置されている。そして、他方の第1接続端子15における内部端子15aは、半導体チップ103、105の間と、半導体チップ104、106の間とを通るように配置されている。
【0036】
内部端子15aは、長手方向の一端で第1リードフレーム11を介して半導体チップ101、103、105に接続されており、他端は凸部191に覆われている。そして、内部端子15aは、凸部191の他面191bに形成された開口部193から露出している。
【0037】
外部端子15bは、板状の導電性部材で構成されており、側面から見て略クランク状となるように屈曲している。そして、外部端子15bの屈曲部を挟んだ両端部のうち、一方の端部は、超音波接合によって内部端子15aに接続されている。また、外部端子15bの屈曲部を挟んだ他方の端部は、凸部191の他面191bから離された状態で、凸部191の他面191bに沿って突出している。特に限定されるものではないが、外部端子15bの他方の端部側の部分と凸部191との間隔は、異物の噛み込みを抑制するために、例えば0.1mm以上であって2mm以下とされる。そして、外部端子15bは、この突出した部分が平滑コンデンサ4に接続される。
【0038】
また、本実施形態の第1接続端子15は、凸部191の第1、第2側面191d、191eから突出するタイバー残部15cを有している。このタイバー残部15cは、後述するように、内部端子15aと制御端子14とを接続するタイバー210を切断した際の残りとなるものである。本実施形態では、タイバー残部15cは、内部端子15aを挟んで2つ備えられており、それぞれ内部端子15aと接続されている。そして、タイバー残部15cは、内部端子15aの延設方向と交差する方向であって、内部端子15aの面方向に沿った方向に延設されて第1、第2側面191d、191eから突出している。また、内部端子15aと制御端子14とは、後述するように、半導体モジュール6が構成される前の状態では、タイバー210にて連結されている。このため、制御端子14、内部端子15a、およびタイバー残部15cは、同一平面上に位置している。
【0039】
外部端子15bは、上記のように内部端子15aに超音波接合によって接合される。ここで、
図9に示されるように、タイバー残部15cの延設方向に沿った方向を第1方向とし、第1方向と交差する方向であって、内部端子15aの面方向に沿った方向を第2方向とする。なお、
図9中では、紙面左右方向が第1方向となり、紙面垂直方向が第2方向となる。
【0040】
そして、本実施形態の超音波接合は、外部端子15bを第1方向に沿って超音波振動させることで行われる。この際、内部端子15aは、超音波接合される際の振動によって振動する。そして、内部端子15aと接続されているタイバー残部15cも振動する。この場合、タイバー残部15cのうちの樹脂モールド部19から突出する部分を突出部150cとすると、突出部150cは、樹脂モールド部19で封止されていないため、振動の影響が大きくなる。このため、内部端子15aに超音波接合によって外部端子15bを接合する場合、凸部191の第1、第2側面191d、191eと突出部150cとの境界部に最も大きな応力が発生する。
【0041】
したがって、本実施形態では、
図9に示されるように、第1接続端子15には、開口部193から露出する部分と、タイバー残部15cのうちの樹脂モールド部19から露出する突出部150cとの間に溝部160が形成されている。本実施形態では、タイバー残部15cのうちの樹脂モールド部19で封止される部分に溝部160が形成されている。また、本実施形態の溝部160は、第1接続端子15のうちの第2接続端子16と対向する面を一面150aとし、一面150aと反対側の面を他面150bとすると、一面150aおよび他面150bにそれぞれ形成されている。そして、樹脂モールド部19は、溝部160に入り込んだ状態で形成されている。
【0042】
なお、本実施形態では、第1接続端子15のうちの内部端子15aは、第1接続端子15と第2接続端子16との積層方向において、樹脂モールド部19を挟んで第2接続端子16と対向する部分である。タイバー残部15cは、内部端子15aと接続され、積層方向において第2接続端子16と重ならない部分である。また、本実施形態のような半導体モジュール6では、電流は、第1接続端子15および第2接続端子16の延設方向に沿って流れる。このため、タイバー残部15cは、第1接続端子15のうちの主に電流が流れる部分と異なる部分であり、溝部160は、第1接続端子15のうちの主に電流が流れる部分と異なる部分に形成されているといえる。
【0043】
本実施形態の溝部160は、
図10に示されるように、複数の凹部161が形成されて構成されている。具体的には、溝部160は、複数の凹部161が第2方向を長手方向としたストライプ状となるように形成されて構成されている。言い換えると、溝部160は、超音波振動の方向と交差する方向に延びる複数の凹部161によって構成されている。
【0044】
また、本実施形態の内部端子15aおよびタイバー残部15cは、
図9等では詳細を省略しているが、溝部160と異なる部分であって、樹脂モールド部19に封止される部分に粗化部170が形成されている。具体的には、粗化部170は、
図11に示されるように、複数の凹部171が点在して形成されている。但し、溝部160および粗化部170は、溝部160(すなわち、凹部161)の方が粗化部170(すなわち、凹部171)よりも深さが深くなるように形成されている。言い換えると、溝部160および粗化部170は、溝部160の方が粗化部170よりも表面粗さが大きくなるように形成されている。特に限定されるものではないが、溝部160は、例えば、深さが8μm程度とされ、溝部160を形成していない際の表面積を基準とした表面積比が110%程度とさる。粗化部170は、例えば、深さが1μm程度とされ、粗化部170を形成していない際の表面積を基準とした表面積比が104%程度とされる。
【0045】
なお、本実施形態の溝部160および粗化部170は、共通のレーザ装置からレーザ光が照射されて形成される。但し、溝部160および粗化部170は、溝部160を形成する際のエネルギの方が粗化部170を形成する際のエネルギより大きくされて形成される。また、粗化部170は、後述の第2接続端子16にも形成されている。
【0046】
そして、本実施形態の第1接続端子15には、上記の溝部160が形成されているため、内部端子15aに外部端子15bが超音波接合される際、応力集中箇所を分散させることができる。例えば、
図12に示されるように、内部端子15aに外部端子15bが超音波接合されることでタイバー残部15cの突出部150cが凸部191の他面191b側に変位したとする。この場合、樹脂モールド部19における応力集中箇所は、第1側面191dのうちの突出部150cとの境界部、および溝部160に入り込んだ部分であることが確認される。なお、溝部160が形成されていない場合には、応力を分散させる箇所が存在しないため、樹脂モールド部19における応力は、第1側面191dのうちの突出部150cとの境界部に集中する。したがって、本実施形態では、樹脂モールド部19に封止されている部分に溝部160が形成されていることにより、応力を分散させることができ、樹脂モールド部19が損傷することを抑制できる。
【0047】
ここで、
図13Aに示されるように、溝部160における突出部150c側の端部が第1側面191dと一致している場合を、溝部160が外側境界部に形成されているとする。なお、溝部160が外側境界部に形成されているとは、溝部160における突出部150c側の開口端部が樹脂モールド部19から露出している構成であるともいえる。また、
図13Bに示されるように、内部端子15aと第2接続端子16との積層方向において、溝部160における内部端子15a側の端部が第2接続端子16と重なる場合を溝部160が内側境界部に形成されているとする。なお、
図13Aおよび
図13Bでは、樹脂モールド部19における第1側面191d側の部分を示しているが、第2側面191e側の部分も同様である。
【0048】
この場合、
図14に示されるように、溝部160が形成されていない場合に発生する最大応力を基準応力(すなわち、
図14中の最大応力が1)とすると、溝部160が外側境界部に形成されると最大応力が基準応力よりも高くなることが確認される。そして、溝部160を内側境界部側に少しずらして形成すると最大応力が急峻に低くなり、溝部160をさらに内側境界部側にずらして形成すると最大応力が徐々に高くなることが確認される。なお、
図14は、溝部160の第1方向に沿った長さを幅として溝部160の幅を0.3mmとし、深さを0.1mmとした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0049】
以下、最大応力が上記のようになる理由について説明する。まず、溝部160が外側境界部に形成されると、
図15に示されるように、応力集中箇所を分散させ難くなることが確認される。そして、突出部150cと第1側面191dとの境界部には、樹脂モールド部19のうちの溝部160に入り込んだ部分の変形による応力も加わる。このため、溝部160が外側境界部に形成されると、最大応力が基準応力よりも大きくなる可能性がある。なお、
図15は、
図12と同様に、内部端子15aに外部端子15bが超音波接合されることで突出部150cが凸部191の他面191b側に変位したとした場合のシミュレーション結果を示す図である。
【0050】
また、溝部160を内側境界部に近くするというのは、開口部193側に近づけることであり、外部端子15bとの接合箇所に近づけるということである。このため、溝部160を内側境界部に近づけすぎると内部端子15aに外部端子15bを接続する際の振動の影響を低減し難くなり、徐々に最大応力が大きくなる。したがって、溝部160は、樹脂モールド部19で封止される部分であって、外側境界部よりも内側に形成されることが好ましく、さらに、タイバー残部15cのうちの内部端子15aと反対側の部分に形成されることが好ましい。なお、樹脂モールド部19で封止される部分であって、外側境界部よりも内側に溝部160を形成するとは、言い換えると、溝部160における突出部150c側の開口端部も樹脂モールド部19で封止される状態のことである。
【0051】
また、溝部160は、
図16に示されるように、溝部160の深さを深くするほど最大応力を低減できることが確認される。なお、
図16は、溝部160の幅を0.5mmとし、溝部160が形成される部分と異なる部分のタイバー残部15cの厚さを0.5mmとした場合のシミュレーション結果を示す図である。この場合、
図16では、溝部160の深さを0.15mmとした場合の結果まで示している。しかしながら、本実施形態の溝部160は、タイバー残部15cの一面150a側および他面150b側に形成されている。そして、溝部160が形成されることで残る部分の厚さは、タイバー残部15cが折れないようにするため、タイバー残部15cの厚さの1/2以上とされることが好ましい。このため、本実施形態のように、タイバー残部15cの一面150a側および他面150b側に溝部160を形成する場合、各溝部160の深さは、0.125mm未満とされることが好ましい。
【0052】
また、溝部160は、外部端子15bを内部端子15aに超音波接合する際の振動を抑制する機能も発揮する。この場合、溝部160の深さは、本発明者らの検討によれば、タイバー残部15cの厚さの1/10以上とされることが好ましいことが確認された。したがって、溝部160は、タイバー残部15cの厚さの1/10以上の深さとされている。
【0053】
さらに、本発明者らは、溝部160の幅についても鋭意検討を行い、
図17~
図19に示される結果を得た。
図17は、溝部160の深さを0.05mmとして溝部160の幅を変化させた場合のシミュレーション結果である。
図18は、溝部160の深さを0.10mmとして溝部160の幅を変化させた場合のシミュレーション結果を示す図である。
図19は、溝部160の深さを0.15mmとして溝部160の幅を変化させた場合のシミュレーション結果を示す図である。そして、溝部160は、
図17~
図19に示されるように、幅を変化させても、最大応力がそれほど変化しないことが確認される。このため、溝部160は、外部端子15bが超音波接合される際の条件に応じ、深さが調整されることが好ましい。但し、溝部160の幅は、樹脂モールド部19が十分に入り込んで配置されることが必要であり、50μm以上とされることが好ましい。また、溝部160の幅は、レーザ光を照射することで構成されるが、製造を容易にするため、50μm以上とされることが好ましい。したがって、本実施形態の溝部160は、幅が50μm以上とされている。
【0054】
さらに、タイバー残部15cは、上記のように凸部191の第1、第2側面191d、191eから突出した突出部150cを有している。この場合、最大応力は、
図20に示されるように、突出部150cの突出方向に沿った長さ(すなわち、第1方向の長さ)が長くなるほど大きくなる。このため、タイバー残部15cの突出部150cの長さは、短い方が好ましく、例えば、1mm以下とされることが好ましい。
【0055】
第2接続端子16は、板状の導電性部材で構成されており、第2リードフレーム12を介して下アーム52、54、56の半導体チップ10に接続されている。第2接続端子16は、長手方向の一端で第2リードフレーム12を介して半導体チップ102、104、106に接続されており、他端は樹脂モールド部19の第3側面19eから外部端子15bの突出方向と同じ方向に突出している。具体的には、第2接続端子16は、第3側面19eに設けられた凸部191において、凸部191の先端面191cから突出するように配置されている。なお、本実施形態では、先端面191cが所定面に相当する。
【0056】
半導体モジュール6は第2接続端子16を2つ備えている。また、上記のように、半導体モジュール6は第1接続端子15を2つ備えている。そして、各第1、第2接続端子15、16は、それぞれ積層されて配置されている。
【0057】
また、本実施形態では、絶縁耐性を維持できるように、平面視におけるタイバー残部15cのうちの凸部191から突出する部分と第2接続端子16との間の樹脂モールド部19に沿った沿面距離が調整されている。特に限定されるものではないが、本実施形態では、沿面距離が4mm以上とされている。言い換えると、タイバー残部15cは、平面視において、絶縁耐性を維持できるように、第2接続端子16との間の樹脂モールド部19に沿った沿面距離が所望の距離となるように配置される場所が調整されている。
【0058】
外部端子15bは、内部端子15aおよび第2接続端子16の積層方向を法線方向とする面の形状が、第2接続端子16と同じ形状とされている。そして、本実施形態では、外部端子15bおよび第2接続端子16の凸部191から突出した部分の先端部は、平滑コンデンサ4と接続可能となるように、ボルト等の締結部材に対応した形状とされている。具体的には、外部端子15b、および第2接続端子16のうちの凸部191から突出した部分の先端部は、2つに分離された略U字状とされている。そして、このU字状の部分は、外部端子15bと第2接続端子16とで同一または略同一の形状とされており、外部端子15b、第2接続端子16の突出方向において、外部端子15bの突出長さと、第2接続端子16の突出長さとが、同一または略同一となっている。
【0059】
第1、第2放熱板17、18は、ヒートシンクに相当するものであり、一面側が半導体チップ10に向けられている。半導体チップ101~106は、第1、第2リードフレーム11、12を介して第1、第2放熱板17、18に接続されており、第1、第2放熱板17、18のうちの第1、第2リードフレーム11、12と反対側の面は、樹脂モールド部19から露出している。このように、各半導体チップ101~106は、第1、第2放熱板17、18に挟み込まれており、半導体モジュール6は、厚さ方向の両側を図示しない冷却機器によって挟み込まれることで、放熱を行いながら負荷3の駆動を行うものとして使用される。
【0060】
以上が本実施形態における半導体モジュール6の構成である。そして、この半導体モジュール6は、詳細は省略するが、平滑コンデンサ4に各第1、第2接続端子15、16が接続され、出力端子13が負荷3に接続されて用いられる。
【0061】
次に、上記半導体モジュール6の製造方法について、
図21~
図24を参照しつつ説明する。なお、
図21、
図24は、第1接続端子15側から視た平面図である。
【0062】
まず、第1、第2リードフレーム11、12に各半導体チップ101~106を搭載する。そして、出力端子13および第2接続端子16が各半導体チップ101~106に電気的に接続されるようにする。また、
図21に示されるように、第1接続端子15のうちの内部端子15aおよび制御端子14がタイバー210で一体的に連結された端子構成部材200を用意する。そして、共通のレーザ装置を用い、レーザ光を照射してタイバー210のうちの樹脂モールド部19で封止される部分に溝部160を形成すると共に、内部端子15aおよび制御端子14のうちの樹脂モールド部19で封止される部分に粗化部170を形成する。この際、エネルギ等の照射条件を変更し、溝部160の方が粗化部170よりも深くなるように溝部160および粗化部170を形成する。
【0063】
その後、内部端子15aおよび制御端子14が各半導体チップ101~106に電気的に接続されるようにする。さらに、第1、第2放熱板17、18を配置する。このようにして、内部端子15aおよび第2接続端子16が半導体チップ101~106に接続された構成部材300を用意する。
【0064】
続いて、
図22および
図23に示されるように、第1型410および第2型420が嵌合されてキャビティ400aが構成される金型400内に構成部材300を配置する。具体的には、
図22に示されるように、第2接続端子16のうちの樹脂モールド部19の凸部191から露出する部分が第1型410と第2型420とで挟持されるように、構成部材300を配置する。また、
図23に示されるように、構成部材300のうちのタイバー210や制御端子14のうちの樹脂モールド部19から露出する部分が第1型410と第2型420とで挟持されるように、構成部材300を配置する。つまり、内部端子15aがタイバー210と連結されているため、内部端子15aが金型400内の所定位置で固定されるように、構成部材300を配置する。本実施形態では、このように、内部端子15aと第2接続端子16との積層方向において、異なる部分を第1型410と第2型420との間に挟持する。
【0065】
なお、
図22に示す構成部材300は、
図21中のXXII-XXII線に沿った断面図に相当している。
図23に示す構成部材300は、
図21中のXXIII-XXIII線に沿った断面図に相当している。
【0066】
また、本実施形態では、内部端子15aのうちの開口部193から露出する部分に、緩衝材430を介して第1型410が当接されるようにする。言い換えると、内部端子15aのうちの開口部193から露出する部分と、第1型410との間に緩衝材430を配置する。これにより、内部端子15aのうちの開口部193から露出する部分が損傷することを抑制できる。なお、緩衝材430は、金型400よりも柔らかい材料で構成され、例えば、フッ素樹脂、フッ素ゴム、シリコンゴム等で構成される。
【0067】
次に、特に図示しないが、金型400内に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、開口部193が形成された上記樹脂モールド部19を構成する。この場合、本実施形態では、内部端子15aおよび第2接続端子16がそれぞれ金型400で固定されている。このため、内部端子15aと第2接続端子16との間隔がばらつくことを抑制でき、インダクタンスが変化することを抑制できる。また、本実施形態では、粗化部170が溝部160よりも深さが浅くされ、表面粗さが小さくなるようにしている。このため、例えば、内部端子15aおよび第2接続端子16のうちの樹脂モールド部19で封止される部分の全体に溝部160を形成した場合と比較して、溶融樹脂の樹脂流れが低下することを抑制でき、巻き込みボイド等が発生することを抑制できる。
【0068】
次に、
図24に示されるように、制御端子14と内部端子15aとを接続するタイバー210等を切断する。これにより、内部端子15aと接続され、凸部191の第1、第2側面191d、191eから突出するタイバー残部15cが構成される。
【0069】
続いて、特に図示しないが、内部端子15aに外部端子15bを超音波接合によって接合する。この場合、突出部150cが樹脂モールド部19から突出しているため、第1、第2側面191d、191eのうちの突出部150cとの境界部に応力集中が発生し易い。しかしながら、本実施形態では、タイバー残部15cのうちの樹脂モールド部19で封止される部分に溝部160が形成されている。このため、内部端子15aに外部端子15bを超音波接合する際、応力を分散させることができ、第1、第2側面191d、191eのうちの突出部150cとの境界部に発生する応力を小さくし易くできる。したがって、内部端子15aに外部端子15bを超音波接合する際に樹脂モールド部19が破壊されることを抑制できる。
【0070】
その後は、特に図示しないが、制御端子14を屈曲させることにより、上記の半導体モジュール6が製造される。
【0071】
以上説明した本実施形態によれば、第1接続端子15には、開口部193から露出する部分と突出部150cとの間に溝部160が形成されている。このため、開口部193にて内部端子15aに外部端子15bを超音波接合する際、応力を分散させることができ、突出部150と第1、第2側面191d、191eとの境界部に発生する最大応力を小さくできる。したがって、樹脂モールド部19が損傷することを抑制できる。なお、第1接続端子15のうちの開口部193から露出する部分と突出部150cとの間隔を長くすることによっても、突出部150と第1、第2側面191d、191eとの境界部に発生する最大応力を小さくできる。しかしながら、第1接続端子15のうちの開口部193から露出する部分と突出部150cとの間隔を長くすると、半導体モジュール6の平面方向の大きさが大きくなってしまう。したがって、本実施形態のように溝部160を形成することにより、半導体モジュール6が大型化することを抑制しつつ、樹脂モールド部19が損傷することを抑制できる。
【0072】
(1)本実施形態では、溝部160は、タイバー残部15cに形成されている。つまり、第1接続端子15のうちの主に電流が流れる部分と異なる部分に溝部160が形成されている。このため、電流性能が低下することを抑制しつつ、樹脂モールド部19が損傷することを抑制できる。
【0073】
(2)本実施形態では、第1接続端子15および第2接続端子16における樹脂モールド部19で封止される部分であって、溝部160が形成される部分と異なる部分に粗化部170が形成されている。このため、粗化部170によって樹脂モールド部19との密着性を向上できる。また、粗化部170は、溝部160よりも深さが浅くされている。このため、金型400に溶融樹脂を流し込んで樹脂モールド部19を形成する際、樹脂流れが低下することを抑制でき、巻き込みボイドが発生することを抑制できる。
【0074】
(3)本実施形態では、溝部160は、第2方向に沿って複数の凹部161が形成されることで構成されている。つまり、外部端子15bを超音波接合する際の振動方向と交差する方向に延設された複数の凹部161で溝部160が構成されている。このため、超音波接合する際の振動を効果的に抑制することができる。
【0075】
(4)本実施形態では、溝部160は、幅が50μm以上とされている。このため、溝部160に十分に樹脂モールド部19が入り込んだ状態とできると共に、レーザ光を照射して溝部160を形成する際の加工を容易にできる。
【0076】
(5)本実施形態では、溝部160は、深さが溝部160が形成される部分と異なる部分の厚さの1/10以上とされている。このため、外部端子15bを内部端子15aに超音波接合する際の振動を抑制し易くできる。また、タイバー残部15cは、溝部160が形成されている部分の厚さが、溝部160が形成される部分と異なる部分の厚さの1/2以上とされている。このため、タイバー残部15cが折れることを抑制できる。
【0077】
(6)本実施形態では、第1接続端子15および第2接続端子16が積層して配置されている。このため、第1接続端子15と第2接続端子16との間のインダクタンスを低減できる。
【0078】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0079】
例えば、上記第1実施形態では、第1接続端子15および第2接続端子16が積層されている例について説明したが、第1接続端子15および第2接続端子16は積層されていなくてもよい。また、上記第1実施形態では、第1接続端子15および第2接続端子16を有する例について説明したが、第2接続端子16は備えられていなくてもよい。
【0080】
また、上記第1実施形態の半導体モジュール6は、三相インバータ回路以外の回路を構成するのに適用されてもよい。また、樹脂モールド部19に封止される半導体チップ10の数も適宜変更可能である。
【0081】
また、上記第1実施形態において、各半導体チップ101~106と第1、第2接続端子15、16との接続の仕方は適宜変更可能である。
【0082】
そして、上記第1実施形態において、粗化部170は形成されていなくてもよい。
【0083】
また、上記第1実施形態において、溝部160は、タイバー残部15cに形成されるのではなく、内部端子15aに形成されていてもよい。
【0084】
そして、溝部160は、タイバー残部15cの一面150aおよび他面150bに形成されるのではなく、一面150aおよび他面150bの一方の面に形成されていてもよい。
【0085】
また、溝部160を構成する凹部161は、内部端子15aに外部端子15bを超音波接合する際の方向と交差する方向に形成されるのであれば、第2方向と異なる方向に沿って形成されていてもよい。
【0086】
そして、溝部50は、幅が50μm未満とされていてもよい。さらに、溝部160は、深さがタイバー残部15cの厚さの1/10未満とされていてもよいし、溝部160が形成された部分のタイバー残部15cの厚さがタイバー残部15cの厚さの1/2未満となるように深さが調整されていてもよい。
【0087】
さらに、上記第1実施形態において、樹脂モールド部19に凸部191が備えられていなくてもよい。例えば、半導体モジュール6は、第2接続端子16が樹脂モールド部19の第3側面19eから突出し、内部端子15aが樹脂モールド部19の他面19bから露出するように構成されていてもよい。
【0088】
また、上記第1実施形態において、粗化部170は形成されていなくてもよい。さらに、粗化部170を形成する場合には、溝部160を形成するレーザ装置と別のレーザ装置を用いて粗化部170を形成してもよいし、ブラスト処理等の他の方法で粗化部170を形成してもよい。
【0089】
(本発明の特徴)
[請求項1]
半導体モジュールであって、
半導体チップ(10)と、
前記半導体チップを樹脂封止する樹脂モールド部(19)と、
前記半導体チップと電気的に接続され、前記樹脂モールド部から突出した部分を有する接続端子(15)と、を備え、
前記接続端子は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に前記樹脂モールド部内に封止され、前記樹脂モールド部に形成された開口部(193)から露出する内部端子(15a)と、前記開口部で前記内部端子と接続されて前記樹脂モールド部から突出する外部端子(15b)と、前記内部端子と接続され、前記内部端子の延設方向と交差する方向であって、前記内部端子の面方向に沿った方向に延設されて前記樹脂モールド部から突出する突出部(150c)を有するタイバー残部(15c)と、を有し、
前記接続端子は、前記開口部から露出する部分と前記突出部との間に溝部(160)が形成されており、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでおり、
前記溝部は、前記突出部側の開口端部も前記樹脂モールド部で覆われている半導体モジュール。
[請求項2]
前記溝部は、前記タイバー残部に形成されている請求項1に記載の半導体モジュール。
[請求項3]
前記接続端子は、前記樹脂モールド部に封止される部分であって、前記溝部が形成される部分と異なる部分に粗化部(170)が形成され、
前記溝部は、前記粗化部よりも表面粗さが大きくされている請求項1または2に記載の半導体モジュール。
[請求項4]
前記溝部は、複数の凹部(161)を有し、
前記複数の凹部は、前記タイバー残部の延設方向と交差する方向に延設されている請求項1ないし3のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[請求項5]
前記溝部は、前記タイバー残部の延設方向に沿った幅が50μm以上とされている請求項1ないし4のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[請求項6]
前記溝部は、深さが、前記溝部が形成される部分と異なる部分の厚さの1/10以上とされ、
前記接続端子は、前記溝部が形成されている部分の厚さが、前記溝部が形成される部分と異なる部分の厚さの1/2以上とされている請求項1ないし5のいずれか1つに記載の半導体モジュール。
[請求項7]
前記接続端子を第1接続端子とし、
板状とされ、前記半導体チップと電気的に接続されると共に前記樹脂モールド部から突出した部分を有する第2接続端子(16)を備え、
前記第1接続端子および前記第2接続端子は、所定間隔離れる状態で積層され、
前記第2接続端子は、前記樹脂モールド部における所定面(191c)から突出しており、
前記第1接続端子の内部端子は、前記樹脂モールド部における前記所定面と異なる面(191b)に前記開口部が形成されて露出している半導体モジュール。
[請求項8]
半導体チップ(10)と、
前記半導体チップを樹脂封止する樹脂モールド部(19)と、
前記半導体チップと電気的に接続され、前記樹脂モールド部から突出した部分を有する接続端子(15)と、を備え、
前記接続端子は、板状とされ、面方向における一方向に延設されると共に前記樹脂モールド部内に封止され、前記樹脂モールド部に形成された開口部(193)から露出する内部端子(15a)と、前記開口部で前記内部端子と接続されて前記樹脂モールド部から突出する外部端子(15b)と、前記内部端子と接続され、前記内部端子の延設方向と交差する方向であって、前記内部端子の面方向に沿った方向に延設されて前記樹脂モールド部から突出する突出部(150c)を有するタイバー残部(15c)と、を有し、
前記接続端子は、前記開口部から露出する部分と前記突出部との間に溝部(160)が形成されており、
前記樹脂モールド部は、前記溝部に入り込んでおり、
前記溝部は、前記内部端子側と反対側に位置する開口端部も前記樹脂モールド部で覆われている半導体モジュールの製造方法であって、
前記内部端子がタイバー(210)と一体化された端子構成部材(200)を用意することと、
前記内部端子および前記タイバーのうちの前記樹脂モールド部で封止される部分に前記溝部を形成することと、
前記端子構成部材における前記内部端子を前記半導体チップに電気的に接続して構成部材(300)を構成することと、
第1型(410)と第2型(420)とが嵌合されることで内部にキャビティ(400a)が構成される金型(400)を用意し、前記構成部材を前記キャビティに配置することと、
前記金型に溶融樹脂を流し込んで固化することにより、前記樹脂モールド部を形成することと、
前記タイバーを切断し、前記内部端子と接続されると共に前記樹脂モールド部から突出した前記突出部を有する前記タイバー残部を形成することと、
前記内部端子に前記外部端子を超音波接合することと、を行う半導体モジュールの製造方法。
[請求項9]
前記溝部を形成することでは、前記内部端子および前記タイバーのうちの前記樹脂モールド部で封止される部分であって、前記溝部と異なる部分に、前記溝部よりも表面粗さが小さい粗化部(170)を形成することも行い、
前記溝部を形成すること、および前記粗化部を形成することは、同じレーザ装置を用いてレーザ光を照射することで前記溝部および前記粗化部を形成する請求項8に記載の半導体モジュールの製造方法。
【符号の説明】
【0090】
10 半導体チップ
15 第1接続端子
15a 内部端子
15b 外部端子
15c タイバー残部
19 樹脂モールド部
150c 突出部
160 溝部