(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170585
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉を原料とする粉末食品の加工方法。
(51)【国際特許分類】
A23L 13/10 20160101AFI20231124BHJP
A23L 13/50 20160101ALI20231124BHJP
A23J 1/02 20060101ALN20231124BHJP
A23J 3/04 20060101ALN20231124BHJP
【FI】
A23L13/10
A23L13/50
A23J1/02
A23J3/04 501
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082440
(22)【出願日】2022-05-19
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】511012145
【氏名又は名称】宮崎食研有限会社
(71)【出願人】
【識別番号】514113038
【氏名又は名称】株式会社SUNAO製薬
(72)【発明者】
【氏名】坂元 浩一
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC01
4B042AD39
4B042AE01
4B042AG02
4B042AG06
4B042AG07
4B042AH01
4B042AH06
4B042AH07
4B042AP03
4B042AP06
4B042AP17
4B042AP22
4B042AP30
(57)【要約】 (修正有)
【課題】従来には無い、生存細菌数が極めて少なく、原料由来の臭気が抑えられ、利便性や汎用性が高い、家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末食品の加工方法を提供する。
【解決手段】100℃以上の耐熱性・遮光性・気密性を有する袋に家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末を脱気包装し、それを14mm以下の厚みに延ばし、加圧下で加熱・冷却して得られる、香ばしい風味を有し、一般生菌数1g当たり300個未満、大腸菌群及び病原性細菌陰性である事を特徴とする動物性たんぱく質高含有粉末食品の加工方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末で、原料特有の臭気や生臭さが弱く、香ばしい風味を有し、一般生菌数1g当たり300個未満、大腸菌群及び病原性細菌陰性が特徴の粉末食品であって、100℃以上の耐熱性・遮光性・気密性を有する袋に家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末を脱気包装し、それを均一に薄く延ばし、加圧下で加熱・冷却して得られる事を特徴とする粉末食品の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉を原料とする粉末食品の加工方法に関するものである。
【0002】
食用家禽を代表する鶏や食用家畜を代表する豚及び牛の肝臓並びに筋肉は、たんぱく質に富み、ミネラル分やビタミン類も含み、古来より貴重な食料として重宝されている。
【0003】
これら滋養に富む肝臓並びに筋肉ではあるが、洗浄・カット等の前処理や加熱調理等の手間を必要とし、また、特に肝臓は、独特の臭気や風味を有する為、嗜好が分かれる食材の一つでもある。
【背景技術】
【0004】
特開昭55-162935「乾燥肉粉末の製造方法」の方法で加工する場合、加熱洗浄時の残存細菌若しくは加熱洗浄から乾燥終了までの汚染細菌が加工中に増殖する可能性及び粉砕時から製品化の間の細菌汚染の可能性が考えられ、このような細菌の多い製品は、その使用方法が限られてしまう。
【0005】
また、特開昭55-162935「乾燥肉粉末の製造方法」の方法で鶏の肝臓を加工して得られた粉末は、鶏の肝臓の特有の臭いが感じられ、好ましい品質ではなかった。
【0006】
特開2021-080784「鶏レバーパウダーおよびその製造方法」も先述と同様に細菌の管理が難しい為製品の使用方法が限られてしまい、かつ、鶏の肝臓の特有の臭いが感じられ、好ましい品質の物は得られなかった。
【0007】
粉末食品の殺菌方法として、一般的に、気流過熱蒸気殺菌法、オゾンガス殺菌法、放射線やマイクロ波殺菌法及び極超短時間加熱瞬時減圧粉体殺菌等が知られている。
【0008】
0007の従来の方法で、家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末の殺菌は可能であるが、原料由来の臭気や生臭さを減少させる事は出来ず、また、気流過熱蒸気殺菌法では、動物性たんぱく質高含有粉末が装置内に付着して残存してしまう為、回収率が低下し、かつ、他殺菌品への混入の可能性がある。
【0009】
これら従来の課題を解決すると同時に、昨今の安全志向、健康志向、高たんぱく低脂肪低炭水化物志向、さらに食品添加物等の無添加志向を満足させるべく鋭意研究の結果、本発明者は、従来には無い、生存細菌数が極めて少なく、原料由来の臭気が抑えられ、利便性や汎用性が高い、家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末食品の加工方法を開発した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
特開昭55-162935「乾燥肉粉末の製造方法」
【0011】
特開2021-080784「鶏レバーパウダーおよびその製造方法」
【非特許文献】
【0012】
日本食品科学工学会誌2021年68巻10号p.413「粉体殺菌技術」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来には無い、生存細菌数が極めて少なく、原料由来の臭気が抑えられ、利便性や汎用性が高い、家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末食品の加工方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
先述の課題を解決するために、100℃以上の耐熱性・遮光性・気密性を有する袋に家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする動物性たんぱく質高含有粉末を脱気包装し、それを14mm以下の厚みに延ばし、加圧下で加熱・冷却して得られる、香ばしい風味を有し、一般生菌数1g当たり300個未満、大腸菌群及び病原性細菌陰性である事を特徴とする動物性たんぱく質高含有粉末食品の加工方法を発明するに至った。
【発明の効果】
【0015】
本発明で得られる家禽若しくは家畜の肝臓並びに筋肉のみを原料とする粉末食品は、離乳食に混ぜて食するベビーフード、流動食に混ぜて食する介護食、病院食及び高齢者向け食品、粉末のまま若しくはカプセルやタブレットに加工し栄養分を補うための食品、さらに、食品にコク味や旨味を付与させる食品等種々の場面で使用可能な、滋養豊かで利便性や汎用性が高い粉末食品であり、乳幼児、病人や体力の劣る人、高齢者等への豊かな食生活に貢献する。
【0016】
以下、実施例でその詳細を説明する。
【実施例0017】
鶏の肝臓480kgを流水洗浄し、20kgずつ95℃以上の熱湯中で15分間以上加熱した後2分間流水冷却し、4mm目のミンチ機で細断し、60℃の温風で14時間以上乾燥させ、その乾燥品を破砕後0.1mmスクリーンの粉砕機で粉砕し、60メッシュ通過の鶏肝臓粉末品105kgを得た。
【0018】
0017の原料の鶏の肝臓は、心臓が付着した肝臓でも構わない。
【0019】
尚、粉末品の製造方法は、0017の方法に限らない。
【0020】
0017で得られた粉末品は、鶏肝臓特有の臭いと生臭さが感じられ、また、一般生菌数が1g当たり3000個で大腸菌群が陰性であった。
【0021】
0017で得られた粉末品500gずつを100℃以上の耐熱性・遮光性・気密性を有する縦32cm、横23cmの袋に入れ、真空度-40~-60cmHgで脱気包装し、その後、袋の厚みが14mm以下になるよう均一に延ばした。
【0022】
0021で使用する袋は、任意に変更出来るが、後工程で100℃の加熱を行う為100℃以上の耐熱性を有し、かつ、動物性たんぱく質高含有粉末が酸化等の品質低下しない様、遮光性と気密性を有する物が好ましい。
【0023】
0021で使用する袋の大きさや粉末の充填量は、脱気包装、延伸後の袋の厚みが14mm以下であれば任意に変更出来る。
【0024】
0021の脱気は、真空包装機を用いて脱気しても手で袋を圧迫して脱気しても良く、脱気が弱過ぎると含気が多くなり、後工程の加熱の効果が十分に得られず、逆に脱気が強過ぎると袋の厚さを14mm以下に均一に延ばす事が出来ず、後工程の加熱の効果が十分に得られない。
【0025】
0021の脱気包装品をアルミトレーに重ならない様に並べ、高温高圧加熱殺菌装置で0.04MPaの加圧下、100℃で40~60分間加熱し、その後、0.06MPaの加圧下で15分間冷却した。
【0026】
脱気包装する事で熱伝導を阻害する空気を適度に除去し、かつ、加圧下で加熱・冷却する事で包装品中に残存する空気の膨張を抑え、熱伝導の阻害や包装品の破裂を防止する。
【0027】
0025の加熱条件は、任意に変更出来るが、加熱温度が100℃より低い若しくは加熱時間が40分間より短い場合、加熱の効果が十分に得られず、かつ、鶏肝臓特有の臭いや生臭さが残り、加熱温度が100℃より高い若しくは加熱時間が60分間より長い場合、焦げたような臭いが発生する為、粉末の品質上好ましくない。
【0028】
0025の処理で得られた粉末品は、一袋から三検体を細菌検査した結果、一般生菌数1g当たり300個未満、大腸菌群及び病原性細菌、具体的にはサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌が陰性であり、また、三名で官能検査した結果、0017で得られた粉末品と比べ、鶏肝臓特有の臭いと生臭さが弱く香ばしい風味を有する好ましい品質であった。
鶏のささみ396kgを20kgずつ95℃以上の熱湯中で15分間以上加熱した後2分間流水冷却し、4mm目のミンチ機で細断し、60℃の温風で14時間以上乾燥させ、その乾燥品を破砕後0.1mmスクリーンの粉砕機で粉砕し、60メッシュ通過の鶏ささみ粉末品78kgを得た。
0033の処理で得られた粉末品は、一袋から三検体を細菌検査した結果、一般生菌数1g当たり300個未満、大腸菌群及び病原性細菌、具体的にはサルモネラ属菌及び黄色ブドウ球菌が陰性であり、また、三名で官能検査した結果、0029で得られた粉末品と比べ、鶏肉特有の臭いと生臭さが弱く香ばしい風味を有する好ましい品質であった。