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特開2023-170605被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法
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  • 特開-被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法 図1
  • 特開-被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170605
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法
(51)【国際特許分類】
   B03B 5/20 20060101AFI20231124BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20231124BHJP
   B03B 9/06 20060101ALI20231124BHJP
   B07C 5/34 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B03B5/20
B29B17/02
B03B9/06
B07C5/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082478
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】末松 諒一
(72)【発明者】
【氏名】武藤 恭宗
(72)【発明者】
【氏名】春日 友明
(72)【発明者】
【氏名】石田 泰之
【テーマコード(参考)】
3F079
4D071
4F401
【Fターム(参考)】
3F079AD06
3F079BA00
3F079CA09
4D071AA18
4D071AA20
4D071AB04
4D071AB13
4D071DA15
4D071DA20
4F401AA13
4F401AA26
4F401AC08
4F401AD03
4F401BA10
4F401CA27
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の効率的な選別方法を提供すること。
【解決手段】被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気する第1の工程と、脱気物を湿式比重選別し、被覆金属線材を含む重産物と、被覆材を含む中間産物と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物とに選別する第2の工程を含む、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気する第1の工程と、
脱気物を湿式比重選別し、被覆金属線材を含む重産物と、被覆材を含む中間産物と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物とに選別する第2の工程
を含む、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法。
【請求項2】
第1の工程において、前記混合廃棄物を密閉容器に収容し、該密閉容器内の内圧を150Pa以下に減圧して脱気する、請求項1記載の選別方法。
【請求項3】
第2の工程において、湿式比重選別機に充填された水に減圧状態の密閉容器を浸漬し、水中で前記密閉容器から前記混合廃棄物を取り出して湿式比重選別する、請求項2記載の選別方法。
【請求項4】
湿式比重選別がジグ選別である、請求項1~3のいずれか1項に記載の選別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の電装部材や、家電製品、自動販売機、通信機器、コンピュータ等の電子・電気機器の構成部材として、例えば、被覆銅線等の被覆金属線材、ステンレス等の有価金属、プラスチックが多量に使用されている。被覆金属線材の被覆材として、絶縁性及び耐久性の観点から、通常ポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂が使用されているが、マテリアルリサイクルやセメント製造においては、塩化物(Cl)成分が忌避成分であるため、十分に除去する必要がある。
【0003】
そこで、従来、廃棄物に含まれる塩化物(Cl)成分を除去する方法が種々検討されている。例えば、自動車シュレッダーダストやタイヤ等の鉄、塩ビ、ゴムを含む廃棄物を、生石灰、消石灰等の石灰系物質とともに、焼却、抑制燃焼、外部からの間接加熱のいずれかの方法により熱分解して脱塩素処理する方法が提案されている(特許文献1)。また、被覆銅線を破砕機により粉砕し、粉砕物を湿式比重選別して軽量被覆物と、中量被覆物と、銅線くずとに分離し、銅線くずを回収するとともに、中量被覆物を湿式分級機に送入して浮遊被覆物と沈降被覆物とに分離し、塩化ビニルを軽量被覆物として回収する方法も報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4388292号明細書
【特許文献2】特開平1-94955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、廃棄物の熱分解が必要であるため、熱分解時にダイオキシンの発生が危惧される。また、特許文献2に記載の方法は、被覆銅線を対象とするため粉砕機による粉砕が可能であるが、小型家電等のシュレッダーダストには被覆銅線以外に金属板、セラミックス、樹脂等が含まれるため、特許文献2に記載の方法をシュレッダーダストに適用することは困難である。
シュレッダーダスト等の混合廃棄物には、被覆金属線材のみならず、被覆金属線材から金属線材が抜けた筒状の被覆材も存在する。本発明者らは、このような混合廃棄物を湿式比重選別に供したところ、被覆材は塩素含有樹脂により構成され、比重が大きいため、本来沈降すべきであるが、被覆材が浮いて軽量樹脂と混入し、被覆材と軽量樹脂とを選別できないことを見出した。
本発明の課題は、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の効率的な選別方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、混合廃棄物の湿式比重選別において、被覆材が軽量樹脂と混入する要因について詳細に検討したところ、被覆材が筒状の形状を有しているため、その筒状体内に空気を含むことで本来の比重よりも小さくなることが要因であることを見出した。そして、被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気して被覆材中の空気を除去したうえで、脱気物を湿式比重選別に供することにより、被覆材が浮き難くなるため、軽量樹脂への混入が抑制され、混合廃棄物中の被覆材を効率よく選別できること見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の〔1〕~〔4〕を提供するものである。
〔1〕被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気する第1の工程と、
脱気物を湿式比重選別し、被覆金属線材を含む重産物と、被覆材を含む中間産物と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物とに選別する第2の工程
を含む、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材の選別方法。
〔2〕第1の工程において、前記混合廃棄物を密閉容器に収容し、該密閉容器内の内圧を150Pa以下に減圧して脱気する、前記〔1〕記載の選別方法。
〔3〕第2の工程において、湿式比重選別機に充填された水に減圧状態の密閉容器を浸漬し、水中で前記密閉容器から前記混合廃棄物を取り出して湿式比重選別する、前記〔2〕記載の選別方法。
〔4〕湿式比重選別がジグ選別である、前記〔1〕~〔3〕のいずれか一に記載の選別方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材を効率よく選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る選別方法の一実施形態を示すフローチャートである。
図2】本発明に係る選別方法の一実施形態に適用可能な湿式比重選別機を示す模式図である。
図3】本発明に係る選別方法の他の実施形態に適用可能な湿式比重選別機を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る選別方法は、第1の工程及び第2の工程を含むものである。図1は、本発明に係る選別方法の一実施形態を示すフローチャートである。
【0011】
(第1の工程)
本発明に係る選別方法は、図1に示されるように、先ず、被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気する第1の工程を行う。
本発明で使用する混合廃棄物は、被覆金属線材だけでなく、被覆金属線材から金属線材が抜けた被覆材や、抜け出た金属線材が混入している。
被覆材は、金属線材の周囲を覆うべく筒状の形状を有しており、また絶縁性及び耐久性の向上を目的に、通常ポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂で構成されている。
湿式比重選別では、通常被選別物が比重順に成層するが、このような被覆材を含む混合廃棄物を湿式比重選別に供すると、被覆材の筒状体内に空気が含まれているため、本来の比重よりも小さくなって浮いてしまい、被覆材以外の樹脂を含む軽産物と分離することができない。このため、本発明においては、混合廃棄物に含まれる被覆材中の空気を抜くために、混合廃棄物を脱気するものである。
【0012】
ここで、本明細書において「混合廃棄物」とは、被覆金属線材以外に金属や、プラスチック等が混合した状態で排出される廃棄物であって、種類ごとに分けることが難しい廃棄物をいう。
混合廃棄物の具体例としては、例えば、自動車シュレダーダスト(ASR)、シュレダーダスト(SR)を挙げることができる。シュレッダーダストとしては、自動車以外の産業廃棄物の破砕によって発生するものであれば特に限定されない。自動車以外の産業廃棄物としては、例えば、家電、自動販売機、OA機器を挙げることができる。これら混合廃棄物には、被覆金属線材とともに、例えば、銅、真鍮、アルミニウム等の金属、金属箔、スプリング、固定・接続治具(ネジ、バンド、ステーブル等)、取っ手、装飾品、ステンレス鋼又は炭素鋼製のフレキシブルチューブや支持線の金属類の他、プラスチックが含まれているが、紙、ゴム、木くず、ガラスくず、コンクリートくず、陶磁器くず、鉱さい、がれき等の異物が含まれていても構わない。
混合廃棄物は、1種又は2種以上を使用することができる。
【0013】
混合廃棄物の大きさは、次工程に係る湿式比重選別に供することができれば特に限定されないが、選別効率の観点から、長径が150mm以下であることが好ましく、100mm以下であることがより好ましく、50mm以下であることが更に好ましい。ここで、本明細書において「混合廃棄物の長径」とは、混合廃棄物のうち、最も大きな廃棄物を採取し、当該廃棄物の径が最大となる箇所を測定した値をいう。
【0014】
本発明においては、第1の工程前に、混合廃棄物を所望の大きさに調整するために、混合廃棄物を破砕してもよい。
混合廃棄物の破砕には、破砕機を使用することができる。破砕機としては公知のものを使用することが可能であり、例えば、ジョークラッシャー、インパクトクラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、ロータリークラッシャー、カッターミルを挙げることができる。破砕処理は、2回以上行ってもよい。2回以上行う場合には、同一又は異なる破砕機を使用することができる。
【0015】
破砕後、破砕物を篩選別に供して、所望の大きさの混合廃棄物を採取してもよい。篩選別には、篩選別機を使用することができる。篩選別機としては公知のものを使用することが可能であり、例えば、振動式、面内運動式、回転式及び固定式のいずれでも構わない。また、篩選別の篩目は、所望の大きさの混合廃棄物が得られるように適宜選択することができる。
【0016】
混合廃棄物の脱気は、被覆材に含まれる空気を除去することができれば特に限定されないが、例えば、混合廃棄物を密閉容器に入れ、密閉容器内を真空ポンプで減圧すればよい。真空ポンプは、市販品を使用することができる。
密閉容器としては、外気との遮断が可能で、かつ減圧に耐え得るものであれば特に限定されないが、例えば、デシケータ、ポリ容器、ポリ袋を挙げることができる。また、密閉容器の材質は、例えば、金属、ガラス、プラスチックが挙げられ、減圧に耐え得るものであれば特に限定されない。なお、密閉容器の大きさは、混合廃棄物の使用量により適宜選択することができる。
【0017】
密閉容器内の内圧は、密閉容器の容積や混合廃棄物の使用量等に応じて適宜設定可能であるが、選別効率の観点から、例えば、150Pa以下が好ましく、130Pa以下がより好ましく、110Pa以下が更に好ましく、100Pa以下がより更に好ましい。かかる内圧の下限値は、圧力調整の容易さから、60Pa以上が好ましく、70Pa以上がより好ましく、80Pa以上が更に好ましい。
【0018】
(第2の工程)
次に、脱気物を湿式比重選別する第2の工程を行う。これにより、被覆金属線材を含む重産物と、被覆材を含む中間産物と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物とに選別することができる。ここでいう「重産物、中間産物及び軽産物」は、相対的な比重の違いを意味するものである。例えば、重産物は、比重が通常1.8g/cm3以上であり、軽産物は、比重が通常1.0g/cm3以下であり、中間産物の比重は、重産物と軽産物との間である。なお、各産物の比重は、幾何学的測定法(容積がわかっているバケツ等の容器に産物を入れ、その重量を測定)により測定することができる。
【0019】
湿式比重選別としては、比重の違いにより被処理物を選別できれば特に限定されないが、例えば、ジグ選別、遠心式比重選別、湿式サイクロンを挙げることができる。中でも、選別効率の観点から、ジグ選別が好ましい。ここで、本明細書において「ジグ選別」とは、沈んだ被選別物を上下に脈動(揺動)させることによって、比重の重いものほど早く沈むという現象を利用し、比重ごとの層を形成させることによって選別する技術をいう。被選別物を上下に脈動させるために、例えば、網を上下に動かす可動網型ジグを使用しても、空気を用いる空気ジグを使用してもよい。
【0020】
網としては、少なくとも一部に選別媒体が流通可能な網目構造を有するものであれば特に限定されないが、例えば、スクリーンを挙げることができる。スクリーンの目開きは、選別媒体が流通可能であり、被選別物が通過できない大きさであれば特に限定されないが、例えば、0.1mm以上5.0mm以下が好ましく、0.1mm以上1.0mm以下が更に好ましい。
選別媒体は通常水が使用され、温度は通常常温(20±15℃)である。
【0021】
脈動(揺動)方向は、混合廃棄物を比重順に成層することができれば特に制限はないが、鉛直方向(上下方向)とすることが好ましい。
脈動幅(揺動幅)は、混合廃棄物の種類、大きさや形状等により適宜設定可能であるが、通常5mm以上100mm以下であり、10mm以上40mm以下が好ましい。なお、脈動幅(揺動幅)とは、往復運動させる際の振幅をいう。
【0022】
脈動数(揺動数)は、混合廃棄物の種類、大きさや形状等により適宜設定可能であるが、通常10~150サイクル/分であり、50~100サイクル/分が好ましい。
脈動(揺動)を与える時間(処理時間)は、混合廃棄物の種類、大きさや形状等により適宜設定可能であるが、通常1~20分であり、3~10分が好ましい。
【0023】
混合廃棄物の使用量は、選別効率の観点から、湿式比重選別機内の水槽の容積に対して、10容量%以上が好ましく、15容量%以上がより好ましく、20容量%以上が更に好ましく、そして95容量%以下が好ましく、90容量%以下がより好ましく、85容量%以下が更に好ましい。
【0024】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、図示の便宜上、図面の寸法比率は説明のものと必ずしも一致しない。
【0025】
(第1実施形形態)
本実施形態に適用可能な湿式比重選別機の一例を図2に示す。図2は、網下気室型湿式比重選別機10である。
網下気室型湿式比重選別機10は、被選別物が投入される選別室3と、選別室3の下方に位置する脈動室4と、選別室3と脈動室4との間に位置する網5を備えており、選別室3及び脈動室4には水が充填されている。
【0026】
先ず、混合廃棄物を密閉容器に収容して密閉容器内を減圧して混合廃棄物を脱気する。次に、図2(a)に示すように、水を充填した湿式比重選別機10の網5の上方に減圧状態の密閉容器2を浸漬し、水中で密閉容器2内を常圧に戻した後、密閉容器2から混合廃棄物1を網5上に取り出す。なお、混合廃棄物、密閉容器、脱気等の具体的態様は、上記において説明したとおりである。また、選別室3の水量は、網5の上方に減圧状態の密閉容器2を浸漬させ、外気と接触することなく密閉容器2内から混合廃棄物1を取り出すのに十分な量であればよい。
【0027】
次に、図2(b)に示すように、網5の下方の脈動室4内の空気室6の入排気口7から周期的に空気を出し入れして上下水流(矢印方向)を発生させ、選別室3に入れた混合廃棄物1に脈動を与え、比重別に廃棄物の層を形成させる。その結果、被覆金属線材を含む重産物11と、被覆材を含む中間産物12と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物13とに選別することができる。なお、選別条件は、上記において説明したとおりである。
【0028】
〔第2実施形態〕
本実施形態に適用可能な湿式比重選別機の一例を図3に示す。図3は、網下気室型湿式比重選別機20である。
網下気室型湿式比重選別機20は、被選別物が投入される選別室と、選別室の下方に位置する脈動室と、選別室と脈動室との間に位置する網を備える点で、第1実施形態に係る網下気室型湿式比重選別機10と同様の構成を具備している。但し、網下気室型湿式比重選別機20は、1つの水槽内に、選別室3a、3bが直列に連結され、選別室3a、3bの下方にそれぞれ脈動室4a、4bが設けられている点で異なっている。また、選別室3aの下部には、網5a上に堆積した廃棄物を排出するための排出口が設けられ、通常ダムゲートにて閉鎖されている。また、排出路21には、ダムゲートに隣接して選別室3aからの廃棄物の排出を制御するスターホイール8aが設置されている。なお、選別室3b、排出路22は、それぞれ選別室3a、排出路21と同様の構成を具備している。
【0029】
先ず、混合廃棄物を密閉容器に収容して密閉容器内を減圧して混合廃棄物を脱気する。次に、水を充填した湿式比重選別機20内の網5aの上方に減圧状態の密閉容器を浸漬し、水中で密閉容器内を常圧に戻した後、密閉容器から混合廃棄物を網5a上に取り出す。なお、混合廃棄物、密閉容器、脱気等の具体的態様は、上記において説明したとおりである。
【0030】
次に、図3に示すように、網5aの下方の脈動室4a内の空気室6aの入排気口7aから周期的に空気を出し入れして上下水流(矢印方向)を発生させ、選別室3aに入れた混合廃棄物に脈動を与え、網5a上に比重別の廃棄物の層、即ち、被覆金属線材を含む重産物11と、被覆材を含む中間産物12と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物13を形成させる。なお、選別条件は、上記において説明したとおりである。
【0031】
選別室3aに設置された検出器(図示せず)により、被覆金属線材を含む重産物11の層厚を検出する。そして、所定の層厚となったときに、ダムゲートの開口と同時にスターホイール8aを回転させ、被覆金属線材を含む重産物11を排出し、排出路21から被覆金属線材を含む重産物11を回収する。
【0032】
一方、混合廃棄物のうち、被覆金属線材を含む重産物11を除く軽量の廃棄物は、排出路21の上端を越流するオーバーフロー水とともに選別室3bに排出される。そして、網5bの下方の脈動室4b内の空気室6bの入排気口7bから周期的に空気を出し入れして上下水流(矢印方向)を発生させ、網5b上の廃棄物に脈動を与え、網5b上に比重別の廃棄物の層、即ち、被覆材を含む中間産物12と、被覆材以外の樹脂を含む軽産物13を形成させる。なお、選別条件は、上記において説明したとおりである。
【0033】
選別室3bに設置された検出器(図示せず)により、被覆材を含む中間産物12の層厚を検出する。そして、所定の層厚となったときに、ダムゲートの開口と同時にスターホイール8bを回転させ、被覆材を含む中間産物12を排出し、排出路22から被覆材を含む中間産物12を回収する。
一方、被覆材以外の樹脂を含む軽産物13は、排出路22の上端を越流するオーバーフロー水とともに排出路23に排出され、回収される。
【0034】
このようにして、被覆金属線材を含む混合廃棄物中の被覆材を効率よく選別することができる。
【0035】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態においては、1つの水槽内に単一の選別室を有する網下気室型湿式比重選別機、又は2つの選別室が直列に連結された網下気室型湿式比重選別機を使用した選別方法について説明したが、1つの水槽内に3以上の選別室が直列に連結された網下気室型湿式比重選別機を使用しても構わない。また、被覆材以外の樹脂を含む軽産物を固体燃料として再利用してもよく、また被覆金属線材を含む重産物をナゲット選別等に供して金属線材を回収してもよい。
【実施例0036】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例で使用したサンプル及び装置は、以下のとおりである。
(1)サンプル
被覆銅線を多く含む小型家電破砕ダスト、長径30mm以下
(2)デシケータ
三商製、型番:SPD-WV240、寸法:φ239×185mm
(3)真空ポンプ
タカトテクニカ製、型番:TVP-115
(4)湿式比重選別機
日本エリーズマグネティックス社製、図3に示す網下気室型湿式比重選別機
【0038】
実施例1
(第1の工程)
小型家電破砕ダスト3.6kgをデシケータに入れ、真空ポンプを用いて90Paまで減圧した。
(第2の工程)
サンプルの入ったデシケータを、水を張った湿式比重選別機に沈めた後に、デシケータ内を常圧にすることでサンプルを取り出し、層が形成されるまで10min運転し、軽産物(主にウレタン、塩化ビニル以外の軽量プラスチック)、中間産物(主に塩化ビニル)、重産物(被覆銅線、裸銅線)の3層に選別した。サンプル使用量は、選別機の水槽の容積に対して70vol%であった。
【0039】
実施例2、3
第2の工程において、サンプル使用量を表1に示す量に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、軽産物、中間産物及び重産物の3層に選別した。
【0040】
実施例4、5
第1の工程において、表1に示す内圧に変更したこと以外は、実施例1と同様の操作により、軽産物、中間産物及び重産物の3層に選別した。
【0041】
比較例1
第1の工程を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作により、軽産物、中間産物及び重産物の3層に選別した。
【0042】
分析・評価
各実施例及び比較例で得られた軽産物、中間産物及び重産物のCl量を、下記の方法により定量した。その結果を表1に示す。
【0043】
Cl量の定量法
エシュカ法により塩素を抽出した後、イオンクロマトグラフシステム(島津製作所社製、HIC-20A SUPER)を用いてイオンクロマトグラフ法により塩素を定量した。
【0044】
【表1】
【0045】
表1に示されるように、実施例は比較例よりも軽産物中の塩素濃度が大きく低減していることから、被覆金属線材を含む混合廃棄物を脱気し、脱気物を湿式比重選別することで、混合廃棄物に含まれる被覆材を効率よく選別できることがわかる。
【符号の説明】
【0046】
1 被覆金属線材を含む混合廃棄物
2 密閉容器
3(3a、3b) 選別室
4(4a、4b) 脈動室
5(5a、5b) 網
6(6a、6b) 空気室
7(7a、7b) 入排気口
8a、8b スターホイール
10 網下気室型湿式比重選別機
11 被覆金属線材を含む重産物
12 被覆材を含む中間産物
13 被覆材以外の樹脂を含む軽産物
20 網下気室型湿式比重選別機
21、22、23 排出路
図1
図2
図3