(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170609
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 29/44 20060101AFI20231124BHJP
F04D 13/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
F04D29/44 A
F04D13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082482
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000152170
【氏名又は名称】株式会社酉島製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】兼森 祐治
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB02
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC01
3H130AC06
3H130AC07
3H130AC10
3H130BA72J
3H130BA77J
3H130BA95J
3H130CA13
3H130DA02Z
3H130DD01Z
3H130DG04X
3H130DG09X
3H130EA03J
(57)【要約】
【課題】駆動源を必要としない弁を用い、運転状態に応じて弁を自動開閉できるポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ10は、ポンプケーシング12、羽根車16、及びポンプケーシング12を通して排出する揚水の一部をポンプケーシング12の外部に流出させるためのバイパス管20を備える。バイパス管20には、ポンプケーシング12内の圧力がバイパス管20内の圧力よりも高くなると、閉状態から開状態に回動可能なフラップ弁35と、フラップ弁35を閉状態に維持する力を調整するための調整機構50とが設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水槽内に一部が配置される筒状のポンプケーシングと、
前記ポンプケーシング内に回転可能に配置され、前記吸水槽内の水を排出するための羽根車と、
前記ポンプケーシングの外部に配置されて前記ポンプケーシングのうち前記羽根車の下流側に分岐接続され、前記ポンプケーシングを通して排出する揚水の一部を前記ポンプケーシングの外部に流出させるためのバイパス管と、
前記バイパス管に回動可能に支持された回転軸を有し、前記ポンプケーシング内の圧力が前記バイパス管内の圧力よりも高くなると、前記揚水の流出を遮断した閉状態から前記揚水の流出を許容する開状態に、前記ポンプケーシングから離れる向きに回動可能なフラップ弁と、
前記回転軸に取り付けられ、前記フラップ弁を前記閉状態に維持する力を調整するための調整機構と
を備える、ポンプ。
【請求項2】
前記回転軸の少なくとも一端は、前記バイパス管を貫通して外部に突出しており、
前記回転軸の前記一端にはアームが取り付けられている、
請求項1に記載のポンプ。
【請求項3】
前記調整機構は、前記アームに接続され、前記アーム及び前記回転軸を介して前記フラップ弁を閉位置に付勢する付勢部材を備える、請求項2に記載のポンプ。
【請求項4】
前記付勢部材は定荷重式のゼンマイバネである、請求項3に記載のポンプ。
【請求項5】
前記ゼンマイバネは、前記アームに接続された帯状のバネ材と、前記バネ材を巻出可能に巻き取る巻取部材とを備え、
前記バイパス管、前記ポンプケーシング、及び前記ポンプケーシングが固定された据付床のうちのいずれかは、前記巻取部材からの前記バネ材の巻き出し長が異なるように前記巻取部材を取り付ける取付部を備える、
請求項4に記載のポンプ。
【請求項6】
前記調整機構は、前記アームに着脱可能に取り付けられる錘を備える、請求項2から5のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項7】
前記アームには、前記フラップ弁の振動を減衰させる減衰部材が取り付けられている、請求項2から5のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項8】
前記バイパス管は、
前記ポンプケーシングに対して交差する方向に延びる第1配管と、
前記第1配管に分岐接続された第1端と、前記吸水槽内に配置された第2端とを有し、前記流出した揚水を前記吸水槽内に吐出するための第2配管と
を備え、
前記フラップ弁は、前記第1配管のうち前記第2配管の前記第1端と前記ポンプケーシングの間に配置されている、請求項1から5のいずれか1項に記載のポンプ。
【請求項9】
前記第1配管の前記ポンプケーシングとは反対側の端部は、少なくとも一部が透光性を有する扉によって開閉可能に塞がれている、請求項8に記載のポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポンプケーシングにバイパス管を接続するとともに、バイパス管に開閉弁を配置し、排水を目的としない管理運転時に開閉弁を開き、バイパス管を通して揚水の一部を吸水槽に還流できるようにしたポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のポンプでは、開閉弁として電動バタフライ弁が用いられており、駆動源を必要としない弁を用い、運転状態に応じて弁を自動開閉することについて何ら考慮されていない。
【0005】
本発明は、駆動源を必要としない弁を用い、運転状態に応じて弁を自動開閉できるポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、吸水槽内に一部が配置される筒状のポンプケーシングと、前記ポンプケーシング内に回転可能に配置され、前記吸水槽内の水を排出するための羽根車と、前記ポンプケーシングの外部に配置されて前記ポンプケーシングのうち前記羽根車の下流側に分岐接続され、前記ポンプケーシングを通して排出する揚水の一部を前記ポンプケーシングの外部に流出させるためのバイパス管と、前記バイパス管に回動可能に支持された回転軸を有し、前記ポンプケーシング内の圧力が前記バイパス管内の圧力よりも高くなると、前記揚水の流出を遮断した閉状態から前記揚水の流出を許容する開状態に、前記ポンプケーシングから離れる向きに回動可能なフラップ弁と、前記回転軸に取り付けられ、前記フラップ弁を前記閉状態に維持する力を調整するための調整機構とを備える、ポンプを提供する。
【0007】
バイパス管には、ポンプケーシング内の圧力がバイパス管内の圧力よりも高くなると、閉状態から開状態に回動可能なフラップ弁が取り付けられている。バイパス管内の圧力は、排水を目的とした通常運転時にはポンプケーシング内の圧力よりも高くなり、排水を目的としない管理運転時にはポンプケーシング内の圧力よりも低くなる。そのため、フラップ弁は、通常運転時には閉状態になり、管理運転には開状態になる。フラップ弁には開状態と閉状態の切り換えに駆動源が不要のため、ポンプ設備のランニングコストを低減できる。しかも、フラップ弁の回転軸には、フラップ弁を閉状態に維持する力を調整するための調整機構が取り付けられているため、フラップ弁が開閉する圧力差(タイミング)を調整できる。そのため、通常運転時には閉状態に切り換わり管理運転時には開状態に切り換わるように、運転状態に応じてフラップ弁を確実に自動開閉できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明のポンプでは、駆動源を必要としない弁を用い、運転状態に応じて弁を自動開閉できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図7】アーム、錘、及びゼンマイバネの関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係る立軸ポンプ(ポンプ)10は、排水機場の据付床1に固定され、据付床1の下側に位置する吸水槽2に流入した雨水等を下流側へ排出する。
【0012】
立軸ポンプ10は、ポンプケーシング12、回転軸15、羽根車16、モータ17、及び制御部18を備え、制御部18によって、排水を目的とした通常運転と、排水を目的としない管理運転とを実行可能である。管理運転は、通常運転が長期にわたって実行されない場合等に、立軸ポンプ10の性能維持等の目的で実行され、吐出し量が最小限になるようにモータ17(羽根車16)が通常運転時よりも低速(低回転数)で回転される。この管理運転には、仕切弁6を開状態として行われるミニフロー運転と、仕切弁6を閉状態として実行される締切運転とが含まれる。
【0013】
本実施形態の立軸ポンプ10では、ポンプケーシング12に、排出する揚水の一部をポンプケーシング12の外部に流出させるためのバイパス管20が分岐接続されている。また、駆動源が不要なフラップ弁35がバイパス管20内に取り付けられ、管理運転時のみ揚水の一部の流出可能とする。そして、フラップ弁35の開閉状態の切り換えタイミングを調整するために、バイパス管20に調整機構50が設けられている。
【0014】
以下、本実施形態の立軸ポンプ10の構成を具体的に説明する。
【0015】
図1を参照すると、ポンプケーシング12は、据付床1に形成された貫通孔に差し込まれ、据付床1に固定されている。ポンプケーシング12は、吸水槽2内に配置された揚水管13と、据付床1上に配置された吐出エルボ14とを備える。揚水管13は、上下方向に延びており、吸水槽2の底3に間隔をあけて配置される吸込口13aを備える。吐出エルボ14は、軸線が90度湾曲した曲がり管であり、仕切弁6(本実施形態では常閉で手動開閉可能)を介設した吐出管5に接続されている。
【0016】
回転軸15は、吐出エルボ14を貫通して揚水管13の軸線Aに沿って配置されている。回転軸15は、揚水管13内に配置された軸受によって回転可能に支持されている。
【0017】
羽根車16は、揚水管13内の下部に位置するように、回転軸15の下端に取り付けられている。羽根車16は、回転軸15と一体に回転し、ポンプケーシング12内を通して吸水槽2内の水を排出する。
【0018】
モータ17は、ポンプケーシング12外に位置する回転軸15の上端に機械的に接続された駆動源である。モータ17は駆動回路を介して制御部18に電気的に接続され、制御部18によって所定の回転数で回転軸15を介して羽根車16を回転させる。
【0019】
制御部18は、パーソナルコンピュータによって構成されている。但し、制御部18は、単一又は複数のマイクロコンピュータ、及びその他の電子デバイスにより構成されてもよい。制御部18は、例えば吸水槽2内に配置した水位センサによる水位の検出結果に基づいて、通常運転、管理運転、及び運転停止のいずれを実行するかの判断を下し、実行する運転に応じて定められた回転数で回転軸15が回転するように、モータ17を制御する。制御部18は、運転停止の場合にはモータ17の回転を停止させ、管理運転の場合には最小限の吐出し量になるようにモータ17を定速回転させ、通常運転の場合には管理運転よりも高回転数になるようにモータ17を定速回転させる。
【0020】
引き続いて
図1を参照すると、バイパス管20は、揚水管13の外部の対向位置に2本設けられている。但し、バイパス管20の数は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。個々のバイパス管20は、羽根車16の下流側(上側)である吐出エルボ14に分岐接続された横配管(第1配管)21と、横配管21に分岐接続された縦配管(第2配管)22とを備える。
【0021】
図2を参照すると、横配管21は、吐出エルボ14に接続された内端21aと、吐出エルボ14から離れた外端(端部)21bとを有し、揚水管13(
図1参照)の軸線Aに対して直交する方向に延びる直管である。横配管21内とポンプケーシング12内は空間的に連通しており、ポンプケーシング12内の揚水の一部は横配管21内に流入可能である。横配管21の内径は、ポンプケーシング12の内径よりも小さい(例えば30~40%)。但し、横配管21が延びる方向は、外端21bの開口から内部を見て、内端21aの開口を通してポンプケーシング12内が見える範囲であれば、幾何学的に厳密な意味での直交方向でなくてもよい。また、横配管21は曲がり管であってもよい。
【0022】
図3を参照すると、横配管21には、縦配管22を接続する筒状の接続部21cが下向きに突設されている。横配管21のうち接続部21cと対向する位置には、上向きに突出した筒部21dが設けられている。筒部21dは透明な蓋24によって塞がれている。これにより、蓋24を介して縦配管22内を透視できる。
【0023】
図3及び
図6を参照すると、横配管21には、フラップ弁35を取り付けるために、軸受部21e、挿通部21f、及び固定弁座39が設けられている。これらの具体的構成については、後に詳述する。
【0024】
図1を参照すると、縦配管22は直管であり、揚水管13に沿って延びている。縦配管22は、横配管21の接続部21cに接続された上端(第1端)22aと、吸水槽2内に配置された下端(第2端)22bとを有する。縦配管22内は、横配管21内に空間的に連通しており、横配管21内に流入した水を下端22bから吸水槽2の底3に流出できる全長である。但し、縦配管22は、水を吸水槽2内に流出可能で全長あればよいし、曲がり管であってもよい。縦配管22の直径は、吸水槽2内に水を流出できる範囲であれば横配管21の直径と異なっていてもよい。
【0025】
2本の縦配管22の下端22bには、揚水管13を取り囲む無端状の環状配管23が接続されている。環状配管23は、揚水管13の軸線Aを中心とする円環状であり、吸込口13aと羽根車16の間に配置されている。環状配管23には、水を吸水槽2の底3に向けて吐出する複数のノズル23aが、周方向に間隔をあけて設けられている。これにより、ノズル23aから吐出された水によって吸水槽2の底3上のヘドロを掻き揚げて、吸水槽2内の水と一緒に排出できる。なお、縦配管22には環状配管23を設けることなく、縦配管22の下端22bにノズル23aを設けてもよいし、縦配管22の下端22bを吸水槽2内で開放してもよい。
【0026】
図3及び
図5を参照すると、横配管21の外端21bは、開閉可能な扉26が取り付けられた端板25によって塞がれている。
【0027】
端板25は、開口部25aを有する金属製の円環状である。端板25が横配管21の外端21bに液密に取り付けられ、横配管21の軸線に中心が一致するように開口部25aが形成されている。端板25には、扉26を閉状態に締結するためのボルト穴(図示せず)と、開状態の扉26を保持する保持部28が設けられている。保持部28は、開口部25aの下方に取り付けられた板体からなり、据付床1(
図1参照)に沿って延びている。
【0028】
扉26は、開口部25aの直径よりも大径の円板状であり、閉状態では端板25との間がシール部材(図示せず)によってシールされている。扉26は、透光性を有する透明な板体からなり、開口部25aを通して横配管21内を外部から透視できる。そのため、通常運転時と管理運転時の両方で、扉26を透してフラップ弁35の開閉状態を容易に確認できる。また、管理運転時には扉26を透して揚水の一部の還流状態を容易に確認できる。但し、扉26は、開口部25aと対応する部分だけが透光性を有していれば、その他の部分は透光性がなく不透明であってもよい。
【0029】
扉26には、下端にヒンジ27が取り付けられ、ヒンジ27とは反対の上側に周方向に間隔をあけて一対のアイボルト(締結部材)29が取り付けられている。
図3に最も明瞭に示すように、ヒンジ27は保持部28に取り付けられている。保持部28へのヒンジ27の当接によって、扉26が、横配管21の軸線に沿って延びるように開いた姿勢(開位置)に保持される。これにより、ポンプケーシング12内の点検時、内視鏡のような測定器を挿入する際の支持台として扉26を利用可能としている。アイボルト29は、ブラケット30を介して扉26に取り付けられている。開位置の扉26を閉位置に回転させ、ボルト穴にアイボルト29を締め付けることで、扉26が閉状態に維持される。
【0030】
図1を参照すると、フラップ弁35は、吐出エルボ14内の圧力P、吐出エルボ14の外部であるバイパス管20のうちフラップ弁35の外側の圧力Pd(以下「横配管21内の圧力」という。)、及び吸水槽2内の圧力Psの差によって開閉する。
図3及び
図6を参照すると、フラップ弁35は、回転軸37を有する弁体36と、横配管21内に設けられた固定弁座39とを備える。
【0031】
弁体36は水平方向に延びる回転軸37とアームを介して一体に回転可能であり、この回転軸37が横配管21に形成された挿通部21fに挿通されて軸受部21eに支持されている。軸受部21eと挿通部21fは、横配管21のうち接続部21cよりも内端21a側の上部に設けられている。軸受部21eは、横配管21の内部空間から径方向外向きに窪む凹部からなる。挿通部21fは、横配管21の軸線に対して軸受部21eとは反対側に設けられ、横配管21の内部空間から外部に貫通した孔からなる。挿通部21fには、回転軸37との間をシールするシール部材40が取り付けられている。回転軸37のうち挿通部21fから突出した部分は、ボール軸受41を備える軸受部材42によって支持されている。
【0032】
図3を参照すると、弁体36のうち、閉状態で吐出エルボ14側に位置する面には、環状の可動弁座38が設けられている。横配管21のうち、軸受部21eと挿通部21fの下側かつ閉状態の弁体36の吐出エルボ14側には、環状の固定弁座39が設けられている。吐出エルボ14から離れる向きへの弁体36の回動(開弁)によって可動弁座38が固定弁座39から離間し、吐出エルボ14に近づく向きへの弁体36の回動(閉弁)によって可動弁座38が固定弁座39に圧接される。
【0033】
通常運転時には、吐出エルボ14内の圧力Pが、横配管21内の圧力Pd及び吸水槽2内の圧力Psよりも小さくなる(P<Pd≦Ps)。これにより、フラップ弁35は、
図3に実線で示す閉位置に回動して可動弁座38が固定弁座39に圧接して、吐出エルボ14内から横配管21内への揚水を遮断する(閉状態)。管理運転のうち、締切運転時は勿論であるがミニフロー運転時にも、吐出エルボ14内の圧力Pは、横配管21内の圧力Pd及び吸水槽2内の圧力Psよりも大きくなる(P>Pd≧Ps)。これにより、フラップ弁35は、可動弁座38が固定弁座39から離れるように
図3に破線で示す開位置側に回動し、吐出エルボ14内の揚水の一部の流入を許容する(開状態)。開状態とは、
図3に破線で示す開位置に回転した状態は勿論、フラップ弁35の可動弁座38が固定弁座39から離間して、吐出エルボ14内の揚水が流入可能な状態を意味する。弁開度であるフラップ弁35の開き角度は、吐出エルボ14内の圧力Pと横配管21内の圧力Pdの差によって異なる。
【0034】
図4及び
図6を参照すると、調整機構50は、フラップ弁35を閉状態に維持する力を調整するために設けられており、回転軸37のうち挿通部21fを通して横配管21から外部に突出した部分に取り付けられている。調整機構50は、回転軸37に取り付けられたアーム51、及びアーム51に取り付けられたゼンマイバネ52と錘56を備える。また、アーム51には更にダンパ57が取り付けられている。
【0035】
アーム51は、回転軸37の外端に取り付けられ、回転軸37から離れる向きに延びる棒体であり、
図4において回転軸37から右側に突出した第1部分51aと、
図4において回転軸37から左側に突出した第2部分51bとを備える。アーム51は、フラップ弁35が閉位置にあるときに水平方向に延びており、
図4において反時計周り手動操作されることで、フラップ弁35を開位置側に回動できる。フラップ弁35が閉位置にあるとき、フラップ弁35が固定弁座39に当接しているため、アーム51は、
図4において時計周りには操作できない。アーム51を開操作した状態で手を離すと、フラップ弁35の重量、アーム51の重量、ゼンマイバネ52の付勢力、及び錘56の重量によって、フラップ弁35が閉位置に回動する。
【0036】
図4及び
図7を参照すると、ゼンマイバネ52は、錘56を介してアーム51の第1部分51aに接続され、アーム51及び回転軸37を介してフラップ弁35を閉位置に付勢する付勢部材である。ゼンマイバネ52は定荷重式であり、錘56に機械的に接続された帯状のバネ材53と、バネ材53を巻出可能に巻き取る巻取部材54とを備える。
【0037】
図8を参照すると、バネ材53は、先端側の先端部53aと、先端部53aに連なる基端側の線形部53bとを備える。バネ材53の先端部53aには、錘56に接続するための接続孔53cが設けられている。
図9を参照すると、先端部53aでは荷重(復帰付勢力)と巻き出し長の関係が非線形になるため(初期たわみe)、巻取部材54からの巻き出し長が先端部53aの範囲内に相当する場合、巻取部材54からの巻き出しが進むに従って荷重は大きくなる。線形部53bでは荷重と巻き出し長の関係が線形(一定)になるため、巻取部材54からの巻き出し長が線形部53bに至ると、巻取部材54からの巻き出しがそれ以上進んでも荷重は一定になる。後述する巻取部54aの直径が大きくなれば、先端部53a(初期たわみeが生じる部分)の長さも長くなる。例えば巻取部54aの直径が100mmの場合、先端部53aの長さは概ね30mm~330mmになる。但し、バネ材53の形状や材料によって、先端部53a(初期たわみeが生じる部分)の長さは変化し得る。
【0038】
図7及び
図8を参照すると、巻取部材54は、バネ材53を螺旋状に巻き取ることが可能なボビンであり、筒状の巻取部54aの一端に横配管21に取り付けるための取付フランジ54bを備える。巻取部54aの中心C1と取付フランジ54bの中心C2とは異なる位置に偏心している。取付フランジ54bには、複数(本実施形態では4つ)の取付孔54cが中心C2まわりに間隔(本実施形態では等間隔で90度)をあけて設けられている。
【0039】
図7及び
図10を参照すると、取付部55は、横配管21の外表面に隆起して設けられている。但し、取付部55は、固定された剛体であれば、ポンプケーシング12に設けられてもよいし、据付床1に設けられてもよい。取付部55には、取付孔54cに対応する複数のボルト穴55aが中心C3まわりに間隔をあけて設けられている。巻取部54aの中心C1と取付フランジ54bの中心C2とは偏心しているため、取付部55に対する巻取部54aの姿勢(位置)を変更することで、取付部55に対する巻取部54aの中心C1の位置と、巻取部54aからのバネ材53の巻き出し長を変更できる。これにより、錘56を介してゼンマイバネ52によってアーム51に与える
図4中時計周りの荷重、つまりフラップ弁35が閉弁する向きの負荷を変更でき、閉状態のフラップ弁35が開状態に切り換わる圧力差(タイミング)を調整できる。
【0040】
より具体的には、
図10に実線で示すように、取付部55の中心C3の上側に巻取部54aの中心C1が位置する姿勢で巻取部材54を取り付けると、バネ材53の巻き出し長は最も短くなり、ゼンマイバネ52によるフラップ弁35の付勢力は最も小さくなる(第1取付状態)。
図10に一点鎖線で示すように、取付部55の中心C3の右側に巻取部54aの中心C1が位置する姿勢で巻取部材54を取り付けると、バネ材53の巻き出し長は第1取付状態よりも長くなり、ゼンマイバネ52によるフラップ弁35の付勢力は第1取付状態よりも大きくなる(第2取付状態)。
図10に二点鎖線で示すように、取付部55の中心C3の下側に巻取部54aの中心C1が位置する姿勢で巻取部材54を取り付けると、バネ材53の巻き出し長は最も長くなり、ゼンマイバネ52によるフラップ弁35の付勢力は最も大きくなる(第3取付状態)。この第3取付状態でバネ材53が巻き出されると、巻き出される部分は線形部53bになり、付勢力は一定になる。このように、本実施形態では、付勢部材として定荷重のゼンマイバネ52を用いているが、取付状態の変更によって、初期たわみの範囲内においてフラップ弁35に対する付勢力を微調整可能である。
【0041】
図4及び
図7を参照すると、錘56は、円板状であり、
図4においてアーム51の第1部分51aに着脱可能に取り付けられている。錘56は、アーム51に対して時計周りの荷重、つまりフラップ弁35が閉弁する向きの負荷を加える。重量が異なる複数種の錘56が準備されており、異なる重量の錘56に交換することによって、閉状態のフラップ弁35が開状態に切り換わる圧力差(タイミング)を調整できる。
【0042】
錘56は、アーム51を挿通可能な挿通孔56aを備え、図示しない周知の保持機構によってアーム51に脱落不可能に保持される。錘56は、アーム51に対する取付位置の変更、つまり回転軸37からの距離の変更によって、同一の錘56であってもフラップ弁35に対する負荷を調整できる。また、錘56には、バネ材53を機械的に接続するネジ孔(接続部)56bが設けられている。
【0043】
図4を参照すると、ダンパ57は、アーム51のうち錘56とは反対側である第2部分51bに取り付けられた上端と、横配管21に取り付けられた下端とを備え、開閉に伴うフラップ弁35の振動と振幅を減衰する。本実施形態のダンパ57は、減衰力を調整可能な減衰部材である。但し、ダンパ57の下端は、固定された剛体であれば、ポンプケーシング12に設けられてもよいし、据付床1に設けられてもよい。減衰部材は、動摩擦抵抗によるクーロン減衰が得られる構成、粘性抵抗による粘性減衰が得られる構成、及び弾性部材等であってもよく、フラップ弁35の開閉を阻害することなく、フラップ弁35の振動を減衰できる構成であれば、いずれでも使用できる。
【0044】
図11は、本実施形態の立軸ポンプ10のポンプ性能の変化を示すグラフである。
図11において、横軸は最適流量Qoptに対する流量Qの割合Q/Qoptで、縦軸は最適揚程Hoptに対する揚程Hの割合H/Hoptである。比速度にもよるが、
図11において、Q/Qoptが約70%未満の領域が部分流量域であり、Q/Qoptが約120%以上の領域が過大流量域であり、これらの間の範囲は定格運転域である。通常運転では定格運転域又は過大流量域になるようにモータ17が制御され、管理運転では部分流量域になるようにモータ17が制御される。
【0045】
図11において、Qb1は、ゼンマイバネ52のみによってフラップ弁35の開閉タイミングを調整したときのポンプ揚程Hを示す。Qb2は、錘56のみによってフラップ弁35の開閉タイミングを調整したときのポンプ揚程Hを示す。Qb3は、一般的なコイルバネ(図示せず)のみによってフラップ弁35の開閉タイミングを調整したときのポンプ揚程Hを示す。ゼンマイバネ52、錘56、及びコイルバネを用いた全てのフラップ弁35の閉止力は同一である。
【0046】
図11を参照すると、過大流量域での運転では、部分流量域での運転よりもポンプ揚程Hが低く、
図1に示す吐出エルボ14内の圧力Pは、横配管21内の圧力Pd及び吸水槽2内の圧力Psよりも低くなる。その結果、フラップ弁35は閉状態になり、バイパス管20を通して吸水槽2に揚水は全く還流されない。但し、吐出し流量Qが増大するため、排水によって水位が低下した吸水槽2内では、水と一緒に水面上の空気を吸い込むという空気吸込渦が発生し得る。しかし、本実施形態では、
図1に示すように、揚水管13の周囲に配置したバイパス管20の縦配管22によって、空気吸込渦の発生を抑制できる。そのため、本実施形態の立軸ポンプ10では、通常運転時に過大流量域での排水が可能になる。なお、定格運転域での通常運転では、過大流量域での運転と比較して吐出し流量Qは少なくなるが、安定した排水が可能である。
【0047】
部分流量域での運転では、過大流量域での運転よりもポンプ揚程Hが高く、
図1に示す吐出エルボ14内の圧力Pは、横配管21内の圧力Pd及び吸水槽2内の圧力Psよりも高くなる。その結果、還流開始揚程Hb以上になると、フラップ弁35は開状態になり、バイパス管20を通して吸水槽2内に揚水の一部が還流される。これにより、揚水の一部がバイパス管20を介して吸込口13aの近辺に吐出されるため、吸水槽2の底3のヘドロを掻き揚げて立軸ポンプ10によって排出できる。そのため、吸水槽2内を清掃できる。また、バイパス管20を通した還流が無い場合、羽根車16の入口(吸込口13a側)には逆流が発生し、キャビテーションや振動が発生し得るが、本実施形態では、バイパス管20を通した揚水の一部が還流されるため、羽根車16での逆流を抑制できる。そのため、本実施形態の立軸ポンプ10では、部分流量域から締切点までの羽根車16の運転が軽減されるため、小流量域での運転範囲を拡大できる。
【0048】
図11のQb3を参照すると、コイルバネを使用した場合、フラップ弁35が開いても開度に比例してコイルバネによる閉止力(付勢力)が増大するため、バイパス流量の確保が困難なことが解る。
図11のQb1を参照すると、定荷重式のゼンマイバネ52を使用した場合、フラップ弁35が開いた後、開度に関係なく閉止力(付勢力)が一定になるため、バイパス流量の確保が容易であることが解る。また、付勢力が異なるゼンマイバネ52又はコイルバネに変更し、重量が異なる錘56に変更することで、バイパス開始揚程Hbを調整し、バイパス揚程Hbとバイパス吐出し量Qbを調整できることが解る。
【0049】
一方、本実施形態の立軸ポンプ10のポンプケーシング12内を点検する場合、モータ17を止めて運転を停止する。そして、
図3に示すように、アイボルト29を操作して扉26を開放した後、アーム51を操作してフラップ弁35を手動で開く。この状態で、開放したフラップ弁35を支持台として利用して、内視鏡のような測定器を、開口部25aを通してポンプケーシング12内に挿入する。挿入時に測定器が安定しない場合、ガイド用の専用治具として断面U字形状の支持台60を扉26の上に載置する(
図3参照)。これにより、ポンプケーシング12内を正確に点検することができる。また、図示しないロッドやチェーンによってアーム51を固定し、フラップ弁35を開状態に保持することで、測定器を用いた点検作業性を向上できる。
【0050】
このように構成した立軸ポンプ10は、以下の特徴を有する。
【0051】
バイパス管20には、ポンプケーシング12内の圧力Pがバイパス管20内の圧力Pdよりも高くなると、閉状態から開状態に回動可能なフラップ弁35が取り付けられている。バイパス管20内の圧力Pdは、排水を目的とした通常運転時にはポンプケーシング12内の圧力Pよりも高くなり、排水を目的としない管理運転時にはポンプケーシング12内の圧力Pよりも低くなる。そのため、フラップ弁35は、通常運転時には閉状態になり、管理運転には開状態になる。フラップ弁35には開状態と閉状態の切り換えに駆動源が不要のため、ポンプ設備のランニングコストを低減できる。
【0052】
フラップ弁35の回転軸37には、フラップ弁35を閉状態に維持する力を調整するための調整機構50が取り付けられているため、フラップ弁35が開閉する圧力差(タイミング)を調整できる。そのため、通常運転時には閉状態に切り換わり管理運転時には開状態に切り換わるように、運転状態に応じてフラップ弁35を確実に自動開閉できる。
【0053】
フラップ弁35の回転軸37のうち、バイパス管20から突出した外端にアーム51が取り付けられている。そのため、アーム51の操作によってフラップ弁35を手動で開閉できる。よって、横配管21から測定器を挿入してポンプケーシング12内を点検することができる。
【0054】
調整機構50は、アーム51及び回転軸37を介してフラップ弁35を閉位置に付勢するゼンマイバネ52を備える。そのため、適した付勢力のゼンマイバネ52を用いることによって、フラップ弁35が開閉するタイミングを確実に調整できる。よって、運転状態に応じてフラップ弁35を確実に自動開閉できる。
【0055】
定荷重式のゼンマイバネ52が用いられているため、ポンプケーシング12内とバイパス管20内が所定の圧力差になり、閉状態のフラップ弁35が開状態に切り換わると、弁開度であるフラップ弁35の開き角度が一定に維持される。そのため、管理運転時にポンプケーシング12の外部への揚水の流出量を一定に維持かつ確保できる。
【0056】
バイパス管20、ポンプケーシング12、及び据付床1のうちのいずれかに、巻取部材54からのバネ材53の巻き出し長が異なるように巻取部材54を取り付ける取付部55が設けられている。定荷重式のゼンマイバネ52は初期たわみを有し、この初期たわみの範囲内では付勢力(荷重)が徐々に増加するため、取付部55に取り付ける巻取部材54の姿勢変更によって、フラップ弁35が回動する圧力差(タイミング)を調整できる。よって、運転状態に応じてフラップ弁35を確実に自動開閉できる。
【0057】
調整機構50は、アーム51に着脱可能に取り付けられる錘56を備える。そのため、適した重量の錘56を用いることによって、フラップ弁35が開閉するタイミングを確実に調整できる。よって、運転状態に応じてフラップ弁35を確実に自動開閉できる。
【0058】
アーム51には、フラップ弁35の振動を減衰させるダンパ57が取り付けられている。そのため、フラップ弁35の開閉に伴うチャタリングを防止できる。
【0059】
バイパス管20は、ポンプケーシング12に接続された横配管21と、流出した揚水を吸水槽2内に吐出するための縦配管22とを備える。通常運転時には、フラップ弁35が閉状態に切り換わるため、バイパス管20によってポンプケーシング12を通した排水に影響が及ぶことを抑制でき、吸水槽2内の水を効率的に排出できる。しかも、吸水槽2内に配置された縦配管22によって、通常運転時に吸水槽2内に生じ得る空気吸込渦の発生を抑制できる。管理運転時にはフラップ弁35が開状態に切り換わるため、バイパス管20を通して揚水の一部を吸水槽2内に還流させ、ポンプケーシング12の周辺を清掃(保守)できる。
【0060】
横配管21の端部が扉26によって開閉可能に塞がれている。そのため、扉26を開放し、フラップ弁35を開状態とすることによって、内視鏡のような測定器を挿入してポンプケーシング12内を点検できる。通常運転時には扉26に揚水の圧力が加わることはないため、扉26のシール構造に必要な耐久性を低減できる。
【0061】
扉26の少なくとも一部が透光性を有するため、通常運転時と管理運転時の両方で、扉26を透してフラップ弁35の開閉状態を容易に確認できる。また、管理運転時には扉26を透して揚水の一部の還流状態を容易に確認できる。
【0062】
横配管21の軸線に沿って延びるように開いた姿勢に扉26を保持する保持部28を備える。これにより、バイパス管20の横配管21からポンプケーシング12内に測定器を挿入する際、扉26を支持台として用いることができるため、点検時の作業性を向上できる。
【0063】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0064】
例えば、付勢部材として、ゼンマイバネ52の代わりに引っ張りばねが用いられてもよい。また、付勢部材はアーム51の第1部分51aに直接接続されてもよい。
【0065】
横配管21に対して取付部55を上下方向に間隔をあけて複数設け、ゼンマイバネ52の巻取部材54を姿勢変更することなく、巻取部材54からのバネ材53の巻き出し長が異なるように構成してもよい。つまり、取付部55は、巻取部材54からのバネ材53の巻き出し長を変更可能な構成であれば、必要に応じて変更可能である。
【0066】
バイパス管20には、揚水の一部を吸水槽2以外に吐出するための配管が接続されてもよい。この場合、バイパス管20は横配管21のみによって構成され、縦配管22と環状配管23は無い構成としてもよい。縦配管22は、ポンプケーシング12の下端近傍まで延在することなく、吸水槽2の上部で開放されていてもよい。
【0067】
ポンプは、筒状のポンプケーシングと、水を排出するための羽根車とを備え、通常運転と管理運転に切り換えられる構成であれば、どのような形式であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 据付床
2 吸水槽
3 底
5 吐出管
6 仕切弁
10 立軸ポンプ(ポンプ)
12 ポンプケーシング
13 揚水管
13a 吸込口
14 吐出エルボ
15 回転軸
16 羽根車
17 モータ
18 制御部
20 バイパス管
21 横配管(第1配管)
21a 内端
21b 外端
21c 接続部
21d 筒部
21e 軸受部
21f 挿通部
22 縦配管(第2配管)
22a 上端(第1端)
22b 下端(第2端)
23 環状配管(第3配管)
23a ノズル
24 蓋
25 取付板
25a 開口部
26 扉
27 ヒンジ
28 保持部
29 アイボルト
30 ブラケット
35 フラップ弁
36 弁体
37 回転軸
38 可動弁座
39 固定弁座
40 シール部材
41 ボール軸受
42 軸受部材
50 調整機構
51 アーム
51a 第1部分
51b 第2部分
52 ゼンマイバネ(付勢部材)
53 バネ材
53a 先端部
53b 線形部
53c 接続孔
54 巻取部材
54a 巻取部
54b 取付フランジ
54c 取付孔
55 取付部
55a ボルト穴
56 錘
56a 挿通孔
56b ネジ孔
57 ダンパ(減衰部材)
60 支持台