(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170641
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】鞍乗車両
(51)【国際特許分類】
B62J 43/23 20200101AFI20231124BHJP
B62J 43/16 20200101ALI20231124BHJP
B62J 9/18 20200101ALI20231124BHJP
【FI】
B62J43/23
B62J43/16
B62J9/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082538
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】521431099
【氏名又は名称】カワサキモータース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西山 隆史
(57)【要約】
【課題】収容物の収容空間への収容作業および収容空間からの取り出し作業を容易化できる鞍乗車両を提供する。
【解決手段】鞍乗車両は、収容物を収容するための収容空間と、前後方向における前記収容空間より後方に配置された、運転者が跨って着座するシートと、前記シートの前端部より上方かつ前方に配置され、左右方向に延びるヒンジ軸と、前記収容空間を上方に開放する開位置と前記収容空間を上方から覆う閉位置との間で前記ヒンジ軸を中心に回動可能な蓋体と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容物を収容するための収容空間と、
前後方向における前記収容空間より後方に配置された、運転者が跨って着座するシートと、
前記シートの前端部より上方かつ前方に配置され、左右方向に延びるヒンジ軸と、
前記収容空間を上方に開放する開位置と前記収容空間を上方から覆う閉位置との間で前記ヒンジ軸を中心に回動可能な蓋体と、を備える、鞍乗車両。
【請求項2】
前記シートの前端部から斜め前上方にせり出して、運転者の着座範囲の前端位置を規制するせり出し部を更に備え、
前記ヒンジ軸は、前記せり出し部のうち前方を向く面と前後方向に対向する、請求項1に記載の鞍乗車両。
【請求項3】
前記ヒンジ軸と前記蓋体とを接続し、前記蓋体とともに前記ヒンジ軸を中心に回動可能なアームを更に備え、
前記アームは、左右方向に見て、前記蓋体が前記開位置にあるときの前記アームの最前端部が、前記ベースの前記せり出し部の前端部よりも前方に位置する屈曲形状を有する、請求項2に記載の鞍乗車両。
【請求項4】
前記ヒンジ軸は、左右方向における前記鞍乗車両の中心面上に位置する、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項5】
前記アームは、左右方向における前記鞍乗車両の中心面上に位置する、請求項3に記載の鞍乗車両。
【請求項6】
枠形状を有し、前記蓋体に閉塞される上開口と、前記上開口の下方に位置する下開口と、を含むベースを備える、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項7】
枠形状を有し、前記閉位置に位置する前記蓋体により閉塞される上開口と、前記上開口の下方に位置する下開口と、を含むベースを備え、
前記ベースは、前記シートの前端部から斜め前上方にせり出して、運転者の着座範囲の前端位置を規制するせり出し部を含む、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【請求項8】
前記収容空間に収容された前記収容物であるバッテリパックを支持するケース本体を備え、
前記ベース、前記ヒンジ軸、前記蓋体および前記ケース本体が、互いに結合されてバッテリ収容ユニットとしてユニット化されている、請求項6に記載の鞍乗車両。
【請求項9】
前記収容空間は、収容された前記収容物であるバッテリパックが占有するバッテリ空間と、残余の空間を含み、
前記残余の空間は、前記ヒンジ軸が配置される軸収容空間と、荷物を収容するための荷物収容空間とを含み、
前記鞍乗車両は、前記軸収容空間と前記荷物収容空間とに仕切る仕切り壁を更に備える、請求項1または2に記載の鞍乗車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、収容物を収容する収容空間を備える鞍乗車両に関する。
【背景技術】
【0002】
収容物を収容する収容空間が形成される鞍乗車両が知られている。例えば特許文献1の
図2には、収容物であるバッテリパックを収容したり取り出したりすることが可能なバッテリケースを備えた鞍乗車両が開示されている。このバッテリケースの開口は、ケースカバーの後部の軸を中心に閉位置と開位置との間で回転可能なケースカバーにより覆われている。また、ケースカバーの上方には、シートが配置されている。バッテリパックを取り外すためにはシートを取り外す必要があり、作業性が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリパックなどの収容物の収容および取り出し作業が容易化できる鞍乗車両が望まれる。
【0005】
そこで、本開示は、収容物の収容および取り出し作業を容易化できる鞍乗車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る鞍乗車両は、収容物を収容するための収容空間と、前後方向における前記収容空間より後方に配置された、運転者が跨って着座するシートと、前記シートの前端部より上方かつ前方に配置され、左右方向に延びるヒンジ軸と、前記収容空間を上方に開放する開位置と前記収容空間を上方から覆う閉位置との間で前記ヒンジ軸を中心に回動可能な蓋体と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、収容物の収容および取り出し作業を容易化できる鞍乗車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【
図3】
図1に示す外蓋が閉状態にあるときのバッテリケース近傍を拡大した側面断面図である。
【
図4】
図1に示す外蓋が開状態にあるときのバッテリケース近傍を拡大した側面断面図である。
【
図5】
図1に示すバッテリケース上部近傍を拡大した側面断面図である。
【
図7】
図1に示す内蓋の押圧解除操作を説明するための内蓋近傍の側面断面図である。
【
図8】
図1に示す内蓋の開操作を説明するための内蓋近傍の側面断面図である。
【
図9】第2実施形態に係る自動二輪車の押圧状態のリテーナ近傍の拡大斜視図である。
【
図10】第2実施形態におけるリテーナの側面断面図である。
【
図11】第2実施形態において内蓋を少し開いた状態を説明するための図である。
【
図12】第3実施形態に係る自動二輪車のバッテリケース上部の近傍を拡大した側面断面図である。
【
図13】第3実施形態における内蓋の上面図である。
【
図14】第3実施形態における押圧機構の構成を説明するための斜視図である。
【
図15】第3実施形態における押圧状態のリテーナの近傍を示す側面断面図である。
【
図16】第4実施形態に係る自動二輪車のバッテリケース上部の近傍を拡大した側面断面図である。
【
図17】第4実施形態における収容空間内の一部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態を説明する。
【0010】
<第1実施形態>
(全体構成)
図1は、第1実施形態に係る自動二輪車1の側面図である。
図2は、
図1に示す自動二輪車1の上面図である。なお、
図2では、後述の外蓋30、ケーシング70および内蓋51などの要素が省略して示される。
図1に示すように、自動二輪車1は、運転者が跨って乗る鞍乗車両の一例である。以下の説明における方向は、自動二輪車1の運転手から見た方向を基準とし、前後方向は車長方向と対応し、左右方向は車幅方向と対応する。
【0011】
自動二輪車1は、前輪2と、後輪3と、車体フレーム4と、前輪2を車体フレーム4の前部に接続する前サスペンション5と、後輪3を車体フレーム4の後部に接続する後サスペンション(図示せず)とを備える。本実施形態において、前輪2は従動輪であり、後輪3は駆動輪である。前サスペンション5は、上下方向に間隔をあけて配置されるブラケット6に連結される。ブラケット6に接続される操舵軸が車体フレーム4の一部であるヘッドパイプ4aに角変位可能に支持される。
【0012】
操舵軸には、運転者が手で握るハンドル7が設けられている。ハンドル7の後方には、運転者が着座するシート9が配置されている。シート9は、車体フレーム4に支持されている。
【0013】
前輪2と後輪3と間には、走行駆動源となる電動モータ10、およびバッテリケース20が配置されている。電動モータ10およびバッテリケース20は、それぞれ車体フレーム4に支持されている。電動モータ10は、駆動輪である後輪3に伝達される回転駆動力を発生させる。電動モータ10は、シート9の下方に位置する。また、電動モータ10は、シート9の左右方向中央部分の前端部(以下、「シート前端部」と称する)9aより前方に位置する。
【0014】
電動モータ10は、収容室を形成するバッテリケース20(バッテリサポートに対応)に収容される収容物であるバッテリパック11(
図2参照)から電力が供給される。バッテリケース20には外蓋30が接続されており、自動二輪車1は、外蓋30を開閉することで、バッテリパック11を着脱可能となっている。
【0015】
バッテリパック11は、略直方体状である。本実施形態において、
図2に示すように、バッテリケース20は、同形状の2つのバッテリパック11が左右方向に並ぶように、2つのバッテリパック11を収容可能である。
【0016】
(バッテリケース)
図3は、外蓋30が閉状態にあるときのバッテリケース20近傍を拡大した側面断面図である。
図4は、外蓋30が開状態にあるときのバッテリケース20近傍を拡大した側面断面図である。バッテリケース20は、バッテリパック11を収容する収容空間Sを有する。バッテリケース20は、収容空間Sを開放する開口P1(
図2参照)を有しており、当該開口P1は、蓋体である外蓋30により開放したり閉塞したりすることが可能である。開口P1は、バッテリパック11を着脱するための開口である。すなわち、開口P1は、バッテリパック11が通過可能な大きさを有する。また、開口P1は、上方に向けて開放している。すなわち、バッテリパック11は、開口P1を通過させて、バッテリケース20内に収容されたり、バッテリケース20から外部に取り出されたりする。
【0017】
図3に示すように、収容空間Sは、前後方向におけるシート9より前方において、バッテリケース20と外蓋30とにより囲まれている。バッテリケース20は、上方に開口したケース本体21と、枠形状のベース22とを含む。ベース22は、ケース本体21の上端部を囲うようにケース本体21に接続されている。ベース22は、外蓋30により閉塞される開口P1(以下、「上開口P1」とも称する)と、当該上開口P1の下方に位置する下開口P2を含む。ケース本体21とベース22とは、ケース本体21の開口とベース22の下開口P2とが一致するように互いに接続されている。
【0018】
収容空間Sは、当該収容空間Sに配置される内蓋51やケーシング70により複数の空間に大きく分けられる。例えば内蓋51は、ケース本体21の開口、すなわちベース22の下開口P2を閉塞するように配置されている。また、内蓋51は、収容空間Sを、ケース本体21と内蓋51とに囲まれた第1空間S1と、残余の空間とに仕切る。第1空間S1は、収容されたバッテリパック11が占有する空間である。
【0019】
また、内蓋51の上面に、ケーシング70が載置されている。ケーシング70は上方に開口した凹状である。ケーシング70は、内蓋51に平行な底壁71と、底壁71の前側の端縁部から上方に立ち上がる第1仕切り壁72と、底壁71の後ろ側の端縁部から上方に立ち上がる第2仕切り壁73とを有する。内蓋51とベース22と閉状態の外蓋30とにより囲まれた空間(すなわち、前述の残余の空間)は、第1仕切り壁72および第2仕切り壁73により、第2空間S2、第3空間S3および第4空間S4の3つの空間に仕切られている。
【0020】
第2空間S2、第3空間S3および第4空間S4は前後方向に並んでいる。第2空間S2は、前後方向における第1仕切り壁72および第2仕切り壁73に挟まれた空間である。第2空間S2は、ケーシング70の内方の空間であり、収容物として荷物を収容するための荷物収容空間として機能する。第3空間S3は、第2空間S2の前方の空間であり、第4空間S4は、第2空間S2の後方の空間である。第3空間S3には、後述のロック機構40や係合部材52などが配置されており、第4空間S4には、後述のヒンジ軸32やリテーナ53などが配置されている。第3空間S3および第4空間S4は、各種機構の様々な要素が収容された機構要素収容空間とも称し得る。特に、ヒンジ軸32を収容する第4空間S4は、軸収容空間とも称し得る。
【0021】
ケーシング70は、一対の側壁74を有する。一対の側壁74のうちの一方は、第1仕切り壁72と第2仕切り壁73の右端部同士を接続し、他方は、第1仕切り壁72と第2仕切り壁73の左端部同士を接続する。各側壁74の上端部には、車幅方向外方に延びるフランジ75が接続されている。フランジ75は、閉状態の外蓋30の下面の一部に当接し上方から押さえられる。これにより、収容空間S内でケーシング70が上下動することが防がれる。
【0022】
ケース本体21は、上方に開口した箱状である。ケース本体21は、バッテリパック11の下面を支持する方形状の底壁21aと、底壁21aの全周から立ち上がる周壁21bとを含む。バッテリケース20は、鉛直上向き方向に対して後方に傾斜している。より詳しくは、底壁21aは、前にいくにしたがって上に向かうように傾斜しており、周壁21bにおける後ろ側部分は、後方にいくにしたがって上方へ向かうように傾斜している。ベース22の上開口P1の後端部は、ケース本体21の開口縁の後端部の後方に位置する。このように、ケース本体21は、バッテリパック11を斜め方向に挿入したり抜き出したりできるように配置されている。
【0023】
ケース本体21は、第1空間S1(以下、「バッテリ空間」とも称し得る)を有する。ケース本体21は、周壁21bの上端に位置する開口の周りにフランジ21cを有する。フランジ21cは、ベース22に対してボルトなどの締結手段により固定される。
【0024】
底壁21aの上面には、サポート側コネクタ21dが配置されている。バッテリパック11の下面には、バッテリ側コネクタ11aが配置されている。サポート側コネクタ21dとバッテリ側コネクタ11aとは、バッテリパック11が周壁21bにより底壁21aに向かって下方に案内されることにより、サポート側コネクタ21dとバッテリ側コネクタ11aの互いの端子が接触して電気的に接続可能となるように構成されている。
【0025】
このように、バッテリパック11を周壁21bにより下方に案内するという簡単な方法で、サポート側コネクタ21dとバッテリ側コネクタ11aとの電気的な接続を実現できる。言い換えれば、バッテリケース20内でバッテリパック11が上方に移動するだけで、サポート側コネクタ21dとバッテリ側コネクタ11aの互いの端子の接触が解除され得る。しかし、後述の押圧機構50が、バッテリパック11の上下動を抑制するため、バッテリパック11から電動モータ10への電力供給が切断されることは防がれる。
【0026】
ケース本体21の底壁21aには、下方からハーネスカバー25が取り付けられている。ハーネスカバー25は、凹状であり、ボルトなどの締結手段によりケース本体21に取り付けられることにより、サポート側コネクタ21dから底壁21aを貫通して延びるハーネス26を部分的に覆うハーネス空間を形成する。ハーネス空間に、バッテリパック11から出力された電力の電圧を下げる降圧回路基板など、ハーネス以外の部品が配置されてもよい。ハーネスカバー25は、ケース本体21と別体であるが、ハーネスカバー25とケース本体21とが一体的に成形されていてもよい。
【0027】
枠形状のベース22は、ベース22の上側部分を構成する上側ベース枠23と、ベース22の下側部分を構成する下側ベース枠24とを含む。上側ベース枠23の下端部と下側ベース枠24の上端部とが互いに接続されている。
図2に示すように、上側ベース枠23は、外蓋30により閉塞される上開口P1を含み、下側ベース枠24は、上開口P1の下方に位置する下開口P2を含む。下開口P2は、内蓋51により閉塞される。なお、外蓋30(蓋体に対応)の厚み方向寸法が、内蓋51(当接部材に対応)の厚み方向寸法よりも小さい。すなわち、外蓋30が、内蓋51よりも薄い。これにより、内蓋51として押圧反力を受け止めやすくできるとともに、外蓋30の軽量化を図ることができる。
【0028】
上側ベース枠23は、自動二輪車1を上面視して、略楕円状の外形を有する環状である(
図2も参照)。上側ベース枠23とその上開口P1を塞ぐ外蓋30とにより、下方に開口するドーム形状をなす。下側ベース枠24は、自動二輪車1を上面視して、略楕円状の外形を有する環状である。下側ベース枠24とその下開口P2を塞ぐ内蓋51とにより、上方に開口する凹状をなす。
【0029】
ベース22は、シート前端部9aから斜め前上方にせり出すせり出し部23aを含む。せり出し部23aは、上側ベース枠23における左右方向中央付近に位置し且つ上開口P1より後方に位置する部分である。せり出し部23aは、車幅方向中央部が後方に膨らむ形状を有する。せり出し部23aは、運転者の着座範囲の前端位置を規制する規制部として機能する。せり出し部23aは、自動二輪車1の減速時に運転者が前方に慣性力を受けた際、シート9の着座範囲より前に逸脱しないよう運転者を支える役割を果たす。
【0030】
(開閉機構)
図5は、バッテリケース20の上部近傍を拡大した側面断面図である。自動二輪車1は、外蓋30を開閉する開閉機構31を備える。開閉機構31は、収容空間Sを上方に開放する開位置と収容空間Sを上方から覆う閉位置との間でヒンジ軸32を中心に外蓋30を回動する。
図5に示すように、開閉機構31は、ヒンジ軸32と、ヒンジサポート33と、アーム34とを備える。
【0031】
ヒンジ軸32は、外蓋30の回動中心となる軸である。ヒンジ軸32は、左右方向に延びている。ヒンジ軸32は、シート前端部9aより上方かつ前方に配置されている。ヒンジ軸32は、左右方向における自動二輪車1の中心面を通過するように、左右方向中央に位置する。また、ヒンジ軸32は、閉位置にある状態、すなわち閉状態の外蓋30の左右方向中央部分から下方および後方の少なくとも一方に離間した位置に配置されている。本実施形態では、
図3に示すように、閉状態の外蓋30の左右方向中央部分の後端部30aが、外蓋30の左右方向中央部分の中で最下端であり、ヒンジ軸32は、当該後端部30aから下方に離間した位置に配置されている。また、ヒンジ軸32は、前後方向において当該後端部30aと同じ位置に配置されている。
【0032】
ヒンジサポート33は、ベース22に固定されている。ヒンジサポート33は、ベース22とヒンジ軸32とを互いに接続し、ヒンジ軸32を支持する。ヒンジ軸32およびヒンジサポート33が、車体フレーム4より上方で且つ閉状態の外蓋30の左右方向中央部分より下方に位置する。すなわち、ヒンジ軸32およびヒンジサポート33は、外蓋30よりも車体フレーム4に近い位置に配置でき、ヒンジの支持剛性を高めやすい。
【0033】
アーム34は、外蓋30とヒンジ軸32とを接続し、外蓋30とともにヒンジ軸32を中心に回動する。アーム34は、左右方向における自動二輪車1の中心面上、すなわち車幅方向中央に位置する。上述の通り、せり出し部23aは、車幅方向中央部が後方に膨らむ形状を有する。したがって、アーム34が車幅方向中央に位置することで、ヒンジ軸32を車体フレーム4に近い位置に配置でき、ヒンジの支持剛性を高めやすい。
【0034】
外蓋30が閉位置にあるときにアーム34の後端部となる基端部34aは、ヒンジ軸32に接続されており、外蓋30が閉位置にあるときにアーム34の前端部となる先端部34bは、閉状態の外蓋30の下面に接続されている。外蓋30は、後述の押圧機構50を迂回してバッテリケース20に接続されている。アーム34の後端部となるヒンジ軸32を回動中心として外蓋30が角変位するために、外蓋30は、開状態では、ベース22から上方に離間した位置に配置可能に構成される。アーム34は、外蓋30が開位置と閉位置との間で移動させてもベース22と干渉しない形状となっている。アーム34は、左右方向に見て、外蓋30が開位置にあるときのアーム34の最前端部が、ベース22のせり出し部23aの前端部よりも前方に位置する屈曲形状を有する(
図4参照)。
【0035】
ベース22の形状、および当該ベース22と干渉しないためのアーム34の形状について、より詳しく説明する。ベース22のせり出し部23aは、外蓋30が閉位置にあるときに、後方または上方から見て露出した部分(以下、「露出部」とも称する)23a1と、当該露出部23a1の前端から前方に延在する部分であり、閉位置にある外蓋30によって上方から覆われる部分(以下、「非露出部」とも称する)23a2とを含む。露出部23a1は、閉位置にある外蓋30の後端部30aとシート前端部9aの間を塞ぎ、運転者の着座範囲の前端位置を規制する規制部として機能する部分である。露出部23a1(具体的には、露出部23a1の前方を向く面)とヒンジ軸32とは、前後方向に対向する。すなわち、露出部23a1は、後方から見てヒンジ軸32の全体を覆うように、ヒンジ軸32と前後方向に重なる。
【0036】
図5に示すように、外蓋30には、シール27が取り付けられている。シール27は、外蓋30の周縁部に沿うように延びる環形状を有する。シール27の後端部は、外蓋30が閉位置にきたときにベース22に密着して、外蓋30とベース22との間を流体が通過するのを防ぐ。外蓋30が閉位置にきたとき、非露出部23a2の上面にシール27が密着する。このため、非露出部23a2は、シール受け部とも称し得る。非露出部23a2におけるシール27が密着する箇所は、凹状に形成されている。具体的には、非露出部23a2における、外蓋30が閉位置にきたときにシール27が密着する部分は、非露出部23a2における、当該部分よりも後方に隣接する部分に比べて下方に突出する。
【0037】
本例では、外蓋30が閉位置にある状態で、アーム34は、下方に突出するU字状に形成される。具体的には、アーム34は、基端部34aから前方に進むにつれて下方に延びて前後方向中間位置に位置する下端部に達する。下端部からさらに前方に進むにつれて上方に延びて前端部である先端部34bに達する。このようにアーム34がU字に形成されることで、せり出し部23a(より詳細には非露出部23a2)とアーム34との干渉を防ぐとともに、外蓋30の回動範囲を広げることができる。
【0038】
外蓋30の閉状態において、アーム34の先端部34b(外蓋30との接続部分)は、アーム34の基端部34a(ヒンジ軸32との接続部分)よりも上方に配置される。ヒンジ軸32が、外蓋30の下端部よりも下方に配置されることで、外蓋30を全開放させた場合に、外蓋30を上開口P1から遠ざけることができ、バッテリパック11の収容作業または取り出し作業時に、外蓋30とバッテリパック11との干渉を生じにくくすることができる。
【0039】
ケーシング70の第2仕切り壁73には、ケーシング70がアーム34と干渉しないよう、アーム34を挿通させるための切欠き73aが形成されている。
【0040】
また、開閉機構31は、外蓋30の回動範囲を制限するストッパ構造を備えている。具体的には、アーム34の基端部34aは、ヒンジ軸32を中心として径方向に突き出た突起35を有する。突起35は、アーム34が外蓋30の回動とともに回動し、外蓋30が閉位置から所定角度だけ回動した開位置にあるときにベース22に固定された受止め部36に当接する。これら突起35および受止め部(ストッパ)36により、ストッパ構造は構成される。これにより、外蓋30の回動範囲を制限する。突起35の位置は、外蓋30を開位置に移動させたときに、アーム34がベース22に接触せず、且つ、せり出し部23aに外蓋30の後端部が接触しない範囲に外蓋30の回動範囲が制限されるよう調整されている。外蓋30の回動範囲を制限するストッパ構造を、ヒンジ軸32の周りに配置することで、せり出し部23aに覆われるスペースである第4空間S4を有効利用できる。
【0041】
また、自動二輪車1は、ロック機構40を備える。ロック機構40は、外蓋30を閉位置に保持する機構である。ロック機構40は、差込口41と、ロック移動部42と、ロック固定部43とを含む。差込口41は、ベース22の前側部分、より詳しくは上側ベース枠23の前側部分に設けられている。ロック移動部42は、差込口41に運転者の有するキーが差し込まれ操作されることにより、ロック位置とロック解除位置との間で移動可能である。ロック固定部43は、ロック位置にあるロック移動部42に対し、外蓋30が閉位置から開位置に移動しないよう係止される。ロック移動部42は、上側ベース枠23に取り付けられており、ロック固定部43は、外蓋30に固定されている。このようにロック機構40により、外蓋30を閉位置に保持された状態であるロック状態と、外蓋30を閉位置に保持された状態が解除されている状態であるロック解除状態との間で切り替え可能となっている。
【0042】
本実施形態において、ベース22と、外蓋30と、開閉機構31と、ロック機構40とが、カバーユニットとしてユニット化されている。また、ケース本体21に対して、当該カバーユニットを固定する、つまりケース本体21のフランジ21cに対して、ベース22を締結することにより、バッテリ収容ユニットとしてユニット化されている。このようにバッテリパック11の着脱に関連する要素がユニット化されていることで、バッテリパック11の着脱作業が容易となるよう自動二輪車1の設計や組立を行いやすくなる。例えば、ケース本体21からバッテリパック11を抜き出す方向に上開口P1が位置づけるような設計、例えばアーム34などのカバーユニットの要素を避けるためにバッテリパック11を抜き出す方向を途中で変更する必要を生じない設計が容易となる(
図4の二点鎖線参照)。例えばケース本体21の開口縁に対するベース22が有する下開口P2や上開口P1の位置の調整が容易となる。
【0043】
(押圧機構)
自動二輪車1は、押圧機構50を備える。押圧機構50が収容空間S内に配置される。押圧機構50は、内蓋51と、係合部材52と、リテーナ53とを含む。
【0044】
内蓋51は、バッテリケース20の収容空間Sに収容された状態のバッテリパック11に当接可能な当接部材である。本実施形態において、バッテリケース20にバッテリパック11が収容された状態において、バッテリパック11の上部は、ケース本体21の開口から若干上方に突き出ている。このため、内蓋51は、バッテリパック11におけるケース本体21から突き出た部分を覆いつつ、バッテリ空間S1を閉塞するよう、下方に開口する凹状をなしている。下方を向く内蓋51の凹面は、収容されたバッテリパック11の上面に当接する。以下、バッテリパック11に当接するときの内蓋51の位置を、当接位置または閉位置と称する。
【0045】
本実施形態では、バッテリケース20が、左右方向に並ぶ2つのバッテリパック11をそれらの上面の高さが互いに一致するように下方から支持しており、2つのバッテリパック11の双方の上面が、1つの内蓋51と当接している。
【0046】
内蓋51は、バッテリケース20から着脱可能となっている。
図6は、内蓋51の上面図である。内蓋51は、蓋本体51aと、被係合部51bと、支持部51cとを含む。蓋本体151aは、内蓋151が当接位置にあるとき、開口P2を閉塞する。被係合部51bは、蓋本体51aの前端部に固定されている。被係合部51bは、バッテリケース20に固定された係合部材52と係合可能である。被係合部51bは、左右方向に延びる棒状である。以下、被係合部51bを被係合軸51bとも称し得る。
【0047】
係合部材52は、内蓋51に対して着脱可能な係合構造を有する。内蓋51は、被係合軸51bが係合部材52と係合した状態で、被係合軸51bの軸線C1を中心に回動可能となっている。具体的には、係合部材52は、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の前方に配置されている。係合部材52は、第3空間S3内に配置される。係合部材52は、ベース22に固定され、フック形状である。以下、係合部材52は、係合フック52とも称し得る。内蓋51の被係合軸51bを、係合フック52に対して引っ掛けることにより、内蓋51は、被係合軸51bの軸線C1を中心に回動可能となる。内蓋51が、回動することで、バッテリパック11に当接するとともにバッテリ空間S1を閉塞したり、バッテリパック11から離間してバッテリ空間S1を開放したりする。
【0048】
支持部51cは、蓋本体51aの後端部に固定されている。支持部51cは、リテーナ53の構成要素である後述の圧縮ばね61などを支持する。
【0049】
図5に示すように、リテーナ53は、内蓋51が当接位置にあるとき、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の後方に配置されている。言い換えれば、リテーナ53は、バッテリパック11の上面が下方に傾斜している側に配置されている。リテーナ53は、バッテリパック11に対して、ヒンジ軸32と同じ側に配置されている。すなわち、ケーシング70を収容空間Sに配置した状態において、リテーナ53は、開閉機構31のヒンジ軸32と同様、第4空間S4に収容される。このため、ヒンジ軸32や押圧機構50のリテーナ53は、第2仕切り壁73により隠された位置、つまり、外蓋30を開けただけではユーザにより視認されにくい位置にある。
【0050】
リテーナ53は、バッテリパック11に当接した内蓋51をバッテリパック11に向けて押圧した状態で保持する。すなわち、リテーナ53は、内蓋51が当接位置にあるときに、内蓋51を下方に押圧する押圧機能を備える。また、リテーナ53は、内蓋51が当接位置にあるときに、内蓋51をバッテリケース20に対して係止する係止機能も備える。
【0051】
リテーナ53は、圧縮ばね61と、第1ばね座62と、第2ばね座63と、操作部材64と、被係止部68を含む。リテーナ53の構成要素のうち、圧縮ばね61、第1ばね座62、第2ばね座63、操作部材64は、内蓋51の支持部51cに支持されており、内蓋51と一体的に移動可能である。圧縮ばね61はコイルばねである。第1ばね座62および第2ばね座63は、環状である。操作部材64は、ユーザにより操作される部材である。
【0052】
リテーナ53の構成要素のうち被係止部68は、バッテリケース20に設けられている。具体的には、被係止部68は、下側ベース枠24の開口P2の後ろ側において、下側ベース枠24に配置されている。被係止部68は、自動二輪車1を上面視して上開口P1と重なる位置にある(
図2参照)。すなわち、被係止部68を含むリテーナ53は、自動二輪車1を上面視して上開口P1と重なる位置にある。このため、リテーナ53は、ユーザにとってアクセスしやすい位置にある。
【0053】
被係止部68は、操作部材64の後述の係止部66bにより係止される。本実施形態において、被係止部68は、所定方向に延びる穴である。例えば被係止部68は、長穴状または鍵穴形状である。以下、被係止部68は、被係止孔68とも称し得る。本例では、被係止孔68は左右方向に延びるが、例えば前後方向に延びてもよい。
【0054】
図5に示すように、第1ばね座62は、圧縮ばね61の第1端部61aを受け、第2ばね座63は、圧縮ばね61の第2端部61bを受ける。
図5に示すように、内蓋51が当接位置にあるとき、第1端部61aは圧縮ばね61の下端部であり、第2端部61bは圧縮ばね61の上端部である。すなわち、内蓋51が当接位置にあるとき、圧縮ばね61の下側に第1ばね座62が位置し、圧縮ばね61の上側に第2ばね座63が位置する。
【0055】
第1ばね座62は、内蓋51に固定されている。具体的には、内蓋51の支持部51cは、上方に開口した有底円筒状の筒部101を含み、当該筒部101の底102に第1ばね座62が配置されている。また、第1ばね座62が圧縮ばね61の第1端部61aを受けるように、支持部51cの筒部101に圧縮ばね61が収容されている。すなわち、内蓋51は、圧縮ばね61を収容する収容部(本例では筒部101)を有している。第1ばね座62が、内蓋51の一部により構成されてもよい。なお、第1ばね座62が配置される支持部51cの筒部101の底102には、後述のカムサポート66が挿通する貫通孔103が形成されている。
【0056】
第2ばね座63は、内蓋51に対し相対移動可能に内蓋51に接続されている。本実施形態では、第2ばね座63は、操作部材64を介して内蓋51に接続されている。
【0057】
操作部材64は、カムレバー65と、カムサポート66とを含む。カムレバー65は、第2ばね座63に対して圧縮ばね61とは反対側に配置されている。第2ばね座63は、カムレバー65と圧縮ばね61とにより挟まれている。カムレバー65は、カムサポート66により左右方向に延びる支持軸67を介して、支持軸67の軸線C2を中心に回動可能に支持されている。
【0058】
カムレバー65は、ユーザが手に触れる箇所であるレバー部65aと、レバー部65aが操作されることにより変位する押圧部65bとを含む。カムレバー65は、ユーザが操作しやすいよう支持軸67から径方向に延在した形状を有しており、当該延在した部分がレバー部65aである。レバー部65aは、操作子に対応する。押圧部65bは、支持軸67の軸線C2方向に見て、カムレバー65の回転角度に対応して支持軸67との距離が変化する曲面部分である。
【0059】
押圧部65bは、第2ばね座63を圧縮ばね61側に押圧する。軸線C2を中心にカムレバー65を回動させることで、押圧部65bは、内蓋51をバッテリパック11に押圧する押圧位置と、前記押圧位置にあるときの押圧力を解除する押圧解除位置とに変位可能である。なお、押圧部65bが押圧位置にあるリテーナ83の状態を押圧状態といい、押圧部65bが押圧解除位置にあるリテーナ83の状態を押圧解除状態と称する。本実施形態において、押圧解除位置にある押圧部65bは、内蓋51をバッテリパック11に押圧する押圧力を発生させない。ただし、押圧解除位置にある押圧部65bは、押圧部65bが押圧位置にあるときに発生させる押圧力より低減した押圧力を発生させてもよい。
【0060】
カムサポート66は、内蓋51に接続されており、支持軸67を介してカムレバー65を支持する。カムサポート66は、筒部101の軸線C3に沿って延びる棒状部66aを有する。棒状部66aの一端部に支持軸67が支持されている。棒状部66aは、第2ばね座63、圧縮ばね61、および第1ばね座62の径方向内方を挿通する。また、棒状部66aは、支持部51cの筒部101の底102の貫通孔103も挿通する。
【0061】
カムサポート66は、棒状部66aの他端部から軸線C3に垂直なある方向に突出する突起である係止部66bを有する。係止部66bは、棒状部66aの貫通孔103から圧縮ばね61とは反対側に突き出た箇所に位置する。すなわち、係止部66bは、筒部101の底102より下方に位置する。
【0062】
係止部66bが、軸線C3を中心に回転して所定の係止解除位置にあるとき、係止部66bは、被係止孔68を挿通可能となる。本実施形態では、係止解除位置は、被係止孔68の延在方向と、係止部66bの突出方向とが一致する位置である。本例では、被係止孔68が左右方向に延びるため、係止部66bの突出方向が左右方向に一致するときに、係止部66bが被係止孔68を挿通可能となる。係止部66bが、軸線C3を中心に回転して前記係止解除位置以外の位置である係止位置にあるとき、係止部66bは、被係止孔68を挿通不能となる。すなわち、操作部材64を操作して、係止部66bが被係止孔68を通過させた後に、係止部66bが被係止孔68を挿通不能となるよう軸線C3を中心に係止部66bを回転させることで、内蓋51は被係止孔68から離間しないよう係止される。
【0063】
また、棒状部66aにおける貫通孔103から下方に突き出た部分には、案内部66cが設けられている。案内部66cは、フランジ状であり、係止部66bによる係止または係止解除を行う際に、被係止孔68の周りに当接して、軸線C3を中心する操作部材64の回転を案内する。例えば、案内部66cと係止部66bとの間の寸法は、被係止孔68の貫通方向の寸法と概ね一致する。
【0064】
案内部66cは、貫通孔103にも被係止孔68にも挿通不能な大きさまたは形状である。従って、操作部材64を上方に持ち上げる操作を行ったとき、案内部66cに支持されて内蓋51も持ち上がる。操作部材64は、内蓋51に対して変位可能に接続されている。例えば操作部材64は、カムサポート66の軸線C3を中心に回転可能に、内蓋51の支持部51cに接続されている。また、操作部材64は、内蓋51に対して、カムサポート66の軸線C3方向に対して変位可能に、内蓋51の支持部51cに接続されている。
【0065】
この押圧機構50では、カムレバー65を操作することにより、内蓋51をバッテリケース20に対して係止することと、内蓋51を下方に押圧することの双方を実行できる。内蓋51が当接位置にある状態、より詳しくは係止部66bが被係止孔68を通過させた状態で、カムレバー65を操作して、軸線C3を中心に係止部66bを回転させる。係止部66bが係止解除位置から係止位置に変位すると、係止部66bが被係止孔68を挿通不能となり、被係止孔68が係止部66bにより係止される。その結果、支持軸67の位置が固定される。
【0066】
その後、カムレバー65を支持軸67の軸線C2を中心に回動することにより、軸線C2に対して押圧部65bを押圧解除位置から押圧位置に変位させる。その結果、第2ばね座63が第1ばね座62に対し近づく。これにより、圧縮ばね61が圧縮され、圧縮ばね61の付勢力が、カムサポート66の支持軸67から遠ざかる方向、すなわち下方に内蓋51に発生するまたは増大する。このように、リテーナ53は、圧縮ばね61により内蓋51がバッテリパック11に向けて付勢されるよう第1ばね座62に対し第2ばね座63を変位させた状態で、第2ばね座63を保持可能に構成されている。
【0067】
本実施形態では、押圧機構50によって押圧されていない内蓋51またはバッテリパック11は、下開口P2を完全に閉塞しない構造になっている。すなわち、内蓋51が押圧機構50によって押圧されていない場合、蓋本体51aの周縁の一部と、ベース22との間に若干隙間が形成される。この隙間は、内蓋51が押圧機構50によって押圧されることで、消滅する。内蓋51が押圧機構50によって押圧されていない場合、内蓋51はバッテリパック11に当接しなくてもよく、押圧された場合にバッテリパック11に当接してもよい。
【0068】
(バッテリパックの取り出し手順)
バッテリパック11を自動二輪車1(より詳しくはバッテリケース20)から取り出す手順について説明する。まず、キー操作により、ロック機構40による外蓋30のロックを解除し、その後、
図4に示すように、外蓋30を閉位置から開位置に回動させる。
【0069】
次に、ケーシング70を、上開口P1を通じて収容空間Sから外部へ取り出す。
【0070】
次に、
図7に示すように、軸線C2を中心にカムレバー65を回動させて、圧縮ばね61の押圧力を低減する。その後、軸線C3を中心にカムレバー65を回動させて、被係止孔68を挿通可能な向きに係止部66bを合わせる。その後、
図8に示すように、カムレバー65を上方に持ち上げることで、被係合軸51bの軸線C1を中心に内蓋51を回動させる。次に、被係合軸51bが係合フック52に引っ掛かった状態が解除されるよう内蓋51を動かした後、内蓋51を、上開口P1を通じて収容空間Sから外部へ取り出す。その後、ケース本体21内部のバッテリパック11を上方に引き抜き、上開口P1を通じて収容空間Sから外部へ取り出す。
【0071】
こうして、自動二輪車1からのバッテリパック11の取り出しが完了する。なお、自動二輪車1へのバッテリパック11の収容作業は、バッテリパック11の取り出し作業とは逆の手順により行うことができる。
【0072】
(作用効果)
以上に説明したように、本実施形態の自動二輪車1によれば、ヒンジ軸32が、シート前端部9aより上方かつ前方に配置されている。このため、外蓋30を閉位置から開位置に移動させるにあたって、シート9によって外蓋30の回動範囲が制限されることを抑制できる。従って、バッテリパック11を収容空間Sに収容したり収容空間Sから取り出したりしやすい蓋の開閉構造を備えた自動二輪車1を提供できる。また、シート9が前後方向におけるバッテリ空間S1より後方に配置されているため、バッテリパック11着脱時にシート9を自動二輪車1の車体から取り外す必要がない。
【0073】
また、本実施形態では、せり出し部23aが覆うスペースに外蓋30の回動中心となるヒンジ軸32を配置するため、せり出し部23aに覆われるスペースを有効利用できる。
【0074】
また、本実施形態では、アーム34が、左右方向に見て外蓋30が開位置にあるときのアーム34の最前端部が、ベース22のせり出し部23aの前端部よりも前方に位置する屈曲形状を有する。このため、ユーザの目に触れるせり出し部23aがアーム34に干渉するのを防ぐことができる。
【0075】
また、本実施形態では、ヒンジ軸32が、左右方向における自動二輪車1の中心面上に位置するため、左右方向の寸法が小さくなるようにベース22のせり出し部23aおよび外蓋30を設計できる。
【0076】
また、本実施形態では、アーム34が、左右方向における自動二輪車1の中心面上に位置するため、左右方向の寸法が小さくなるようにベース22のせり出し部23aおよび外蓋30を設計できる。
【0077】
また、本実施形態では、ベース22を枠状にすることで、バッテリパック11をバッテリ空間S1に収容するまたはバッテリ空間S1から取り出す際にバッテリパック11を通過させる通路を形成できる。
【0078】
また、本実施形態では、第2仕切り壁73により、荷物がヒンジ軸32およびそれを支持する部材に当たるのを防ぐことができる。例えば車体が斜め前方に傾いていたとしても、第2仕切り壁73で軸収容空間S4に荷物が移動するのを防ぐことができる。
【0079】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る自動二輪車について、
図9乃至11を参照して説明する。なお、第2実施形態について、第1実施形態の構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付し説明を省略する。
図9は、第2実施形態における押圧機構80の押圧状態のリテーナ83近傍の拡大斜視図である。
図10は、リテーナ83の側面断面図である。
図11は、押圧機構80の内蓋51を少し開いた状態を説明する図である。
【0080】
本実施形態と第1実施形態とは、押圧機構におけるリテーナの構造が異なる。より詳しくは、第1実施形態の押圧機構50ではリテーナ53がカムレバー式であったのに対して、本実施形態における押圧機構80では、リテーナ83が円筒カム式である。リテーナ83は、第1実施形態のリテーナ53と同様、内蓋51が閉位置にあるとき、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の後方に配置されている。リテーナ83は、リテーナ53と同様、内蓋51を押圧する押圧機能と、内蓋51をバッテリケース20に対して係止する係止機能の双方の機能を備える。
【0081】
リテーナ83は、圧縮ばね61と、第1ばね座62と、第2ばね座63と、操作部材84と、被係止部88を含む。圧縮ばね61と、第1ばね座62と、第2ばね座63およびこれらを支持する内蓋51の支持部51cの構成は、上記実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0082】
操作部材84は、内蓋51に対して変位可能に接続されている。例えば操作部材84は、軸線C3を中心に回転可能に内蓋51の支持部51cに接続されている。また、操作部材84は、内蓋51に対して、軸線C3方向に変位可能に、内蓋51の支持部51cに接続されている。
【0083】
操作部材84は、ユーザが手に触れて操作する回転ハンドル85と、回転軸86とを含む。回転ハンドル85は、操作子に対応する。回転ハンドル85は、第2ばね座63に対して圧縮ばね61とは反対側に配置されている。回転ハンドル85は、筒部101の軸線C3を中心に回転するためのハンドルである。本実施形態では、回転ハンドル85は、軸線C3を中心に点対称な形状を有する。
【0084】
回転ハンドル85は、回転軸86の一端部に固定されている。回転軸86は、第2ばね座63、圧縮ばね61、および第1ばね座62の径方向内方を挿通する。また、回転軸86は、支持部51cの筒部101の底102の貫通孔103も挿通する。
【0085】
回転軸86は、押圧部86aと係止部86bとを有する。押圧部86aは、第2ばね座63に対して圧縮ばね61と反対側に位置する。押圧部86aは、第2ばね座63を圧縮ばね61側に押圧する。第2ばね座63は、押圧部86aと圧縮ばね61とにより挟まれている。
【0086】
係止部86bは、軸線C3に垂直なある方向に突出するピン状の突起である。以下、係止部86bは、係止ピン86bと称し得る。係止ピン86bは、貫通孔103から圧縮ばね61とは反対側に位置する。
【0087】
係止ピン86bは、貫通孔103に挿通不能な大きさまたは形状である。従って、操作部材84を上方に持ち上げる操作を行ったとき、係止ピン86bに支持されて内蓋51も持ち上がる。
【0088】
被係止部88は、バッテリケース20に固定された中空円筒状の円筒カム89を含む。円筒カム89は、係止ピン86bと係合可能な大きさである。すなわち、円筒カム89の内径は、軸線C3から係止ピン86bの径方向外方側の端部までの長さより短い。
【0089】
円筒カム89は、係止ピン86bと係合可能な係合孔89aを有する。係合孔89aの上端は、円筒カム89の上端縁にあり、係止ピン86bは、係合孔89aの上端から係合孔89aに対して上下方向に出入り可能である。係合孔89aは、操作部材84が圧縮ばね61の付勢方向に延びる軸線C3を中心に回転することによって係止ピン86bを下方へ案内する螺旋形状を有する。また、係合孔89aの下端部は、係止ピン86bを保持する形状を有する。例えば、係合孔89aの下端部は、円筒カム89の中心軸に対して垂直な面に沿って延びる形状でもよい。
【0090】
この押圧機構80では、内蓋51が当接位置にあるときに回転ハンドル85を、軸線C3を中心に回転操作することにより、バッテリケース20に対する内蓋51の係止と、内蓋51を下方に押圧した状態での保持の双方を一度に行うことができる。内蓋51が当接位置にある状態、より詳しくは、回転ハンドル85を下方に押圧しながら回転させることにより、係止ピン86bが係合孔89aに挿通し、螺旋状に下方へ案内され、係合孔89aの下端部に到達する。こうして、圧縮ばね61の付勢力が内蓋51を下方に押さえ付ける方向に発生するまたは増大する。係合孔89aの下端部に係止ピン86bが保持されることで、内蓋51を下方に押圧した状態でバッテリケース20に係止できる。
【0091】
押圧機構80を備えた自動二輪車1(より詳しくはバッテリケース20)からバッテリパック11を取り出す手順について説明する。外蓋30を閉位置から開位置に回動させること、および、上開口P1を通じてケーシング70を収容空間Sから外部へ取り出すことは、上記実施形態で説明したバッテリパック11の取り出す手順と同じである。
【0092】
外蓋30の開位置への移動およびケーシング70の取り出しの後、
図9に示す押圧状態のリテーナ83の回転ハンドル85を、軸線C3を中心に回動させることで、係止ピン86bが係合孔89aの下端部(すなわち係止位置)から螺旋状に上方に向かう。係止ピン86bとともに押圧部86aも徐々に上昇するため、圧縮ばね61の付勢力も徐々に低減する。回転ハンドル85を、係止ピン86bを係合孔89aから抜け出せる回転位置(すなわち係止解除位置)まで回転させた後、回転ハンドル85を上方に持ち上げる。これにより、
図11に示すように、係止ピン86bが円筒カム89の上端から係合孔89aを出て、内蓋51が被係合軸51bの軸線C1を中心に回動する。以降の手順は、上記第1実施形態で説明した手順と重複するため、説明を省略する。
【0093】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態に係る自動二輪車について、
図12乃至15を参照して説明する。なお、第3実施形態について、第1および第2実施形態の構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付し説明を省略する。
図12は、第3実施形態に係る自動二輪車のバッテリケース120上部の近傍を拡大した側面断面図である。
【0094】
本実施形態における押圧機構150は、内蓋151と、係合部材152と、リテーナ183とを含む。基本的に、押圧機構150における内蓋151、係合部材152およびリテーナ183の役割は、それぞれ、第1及び第2実施形態の押圧機構50,80における内蓋51、係合部材52およびリテーナ53,83の役割と同じである。ただし、押圧機構150における内蓋151、係合部材152およびリテーナ183の位置や構造が、それぞれ、第1及び第2実施形態の押圧機構150における内蓋51、係合部材52およびリテーナ53,83のそれとは若干異なる。
【0095】
例えば、本実施形態における押圧機構150では、係合部材152とリテーナ183の位置が、第1及び第2実施形態の押圧機構80における係合部材52とリテーナ53,83の位置とは逆である。
図12に示すように、係合部材152は、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の後方に配置されている。また、リテーナ183は、内蓋151が当接位置にあるとき、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の前方に配置されている。
【0096】
図13は、第3実施形態における内蓋151の上面図である。
図14は、第3実施形態における押圧機構150の構成を説明するための斜視図である。なお、
図14において、リテーナ183の構造を視認しやすいよう、内蓋151はその左半分を省略して示される。
【0097】
本実施形態でも、内蓋151は、バッテリケース120から着脱可能となっている。
図13に示すように、内蓋151は、蓋本体151aと、被係合部151bと、支持部151cとを含む。蓋本体151aは、内蓋151がバッテリパック11に当接する当接位置にあるとき、開口P2を閉塞する。
【0098】
本実施形態では、蓋本体151aの上面には、仕切り壁172および一対の側壁174が設けられている。仕切り壁172は、蓋本体151aの後ろ側の端縁部近傍から上方に立ち上がる。一対の側壁174は、当該仕切り壁172の左右方向両端からそれぞれ前方に延在する。一対の側壁174により作用方向に挟まれた空間は、収容物として荷物を収容するための荷物収容空間として機能する。仕切り壁172は、蓋本体151aの上面に載置された収容物が蓋本体151aの後方、すなわち係合部材152が配置された空間に移動するのを防ぐ(
図12参照)。このように、本実施形態では、内蓋151自体が収容物を載置するケーシングとして機能するため、第1および第2実施形態のように別途ケーシング70を内蓋151に載置する必要はない。
【0099】
被係合部151bは、蓋本体151aの後端部に固定されている。被係合部51bは、バッテリケース20に固定された係合部材152と係合可能である。被係合部151bは、左右方向に延びる棒状である。以下、被係合部151bを被係合軸151bとも称し得る。
【0100】
図14に示すように、係合部材152は、内蓋151に対して着脱可能な係合構造を有する。内蓋151は、被係合軸151bが係合部材152と係合した状態で、被係合軸151bの軸線C1を中心に回動可能となっている。係合部材152の形状は、係合部材52と同様にフック形状である。なお、係合部材152のフック形状は、下開口P2に開いたフック形状であるが、下開口P2が位置する側とは反対側に開いたフック形状であってもよい。
【0101】
図14に示すように、支持部151cは、蓋本体151aにおける被係合部151bと反対側、すなわち、蓋本体151aの前端部に固定されている。支持部151cは、リテーナ53の構成要素である後述の圧縮ばね61などを支持する。リテーナ183は、内蓋151が当接位置にあるとき、ベース22(より詳しくは下側ベース枠24)における下開口P2の前方に配置されている。
【0102】
リテーナ183は、バッテリパック11に当接した内蓋151をバッテリパック11に向けて押圧した状態で保持する。すなわち、リテーナ183は、内蓋151が当接位置にあるときに、内蓋151を下方に押圧する押圧機能を備える。また、リテーナ183は、内蓋151が当接位置にあるときに、内蓋151をバッテリケース120に対して係止する係止機能も備える。
【0103】
リテーナ183は、圧縮ばね61と、第1ばね座62と、第2ばね座63と、操作部材184と、被係止部188を含む。リテーナ183における圧縮ばね61と、第1ばね座62と、第2ばね座63およびこれらを支持する内蓋151の支持部151cの構成は、第1および第2実施形態と同じであるため、説明を省略する。
【0104】
本実施形態におけるリテーナ183は、第2実施形態のリテーナ83と同様に、円筒カム式である。操作部材184は、ユーザが手に触れて操作する回転ハンドル185と、回転軸86とを含む。第2実施形態の操作部材84の回転ハンドル85が、軸線C3を中心に点対称な形状を有していたのに対し、本実施形態の操作部材184では、回転ハンドル185が軸線C3から一方向にのみ延在した形状を有する。回転ハンドル185の形状以外は、リテーナ183における操作部材184と第2実施形態の操作部材84とはほぼ同じ構成であるため、操作部材184の回転軸86などの説明を省略する。
【0105】
被係止部188は、第2実施形態と同様に、円筒カム89を含む。リテーナ183における被係止部188は、第2実施形態の被係止部88と同じ構成であるため、被係止部188の説明を省略する。
【0106】
本実施形態でも、第2実施形態と同様、内蓋151が当接位置にあるときに回転ハンドル185を、軸線C3を中心に回転操作することにより、バッテリケース120に対する内蓋151の係止と、内蓋151を下方に押圧した状態での保持の双方を一度に行うことができる。内蓋151が当接位置にある状態、より詳しくは、回転ハンドル185を下方に押圧しながら回転させることにより、係止ピン86bが係合孔89aに挿通し、螺旋状に下方へ案内され、係合孔89aの下端部(すなわち係止位置)に到達する。このとき、
図13に示すように、本実施形態では、回転ハンドル185が軸線C3から左方向に延びた状態にある。係合孔89aの下端部に係止ピン86bが保持されることで、内蓋151を下方に押圧した状態でバッテリケース120に係止できる。
【0107】
また、本実施形態では、
図12に示すように、外蓋30には、外蓋30の裏面、すなわち閉位置にある外蓋30から下方に突出する突出部材90が配置されている。本例では、突出部材90は、外蓋30に取り付けられた棒状体であるが、突出部材の形状は特に制限されない。突出部材90は、外蓋30を閉じた場合に、押圧解除状態のリテーナ183とは干渉するが、押圧状態のリテーナ183とは干渉しないように、外蓋からの突出位置および突出方向の長さが調整されている。これについて、
図15を参照して説明する。
【0108】
図15は、第3実施形態における押圧状態のリテーナ183近傍を拡大して示す側面断面図である。また、
図15には、外蓋30が閉位置にあるときの突出部材90の下端が示されている。本実施形態では、外蓋30を閉じたときに、突出部材90が操作部材184の回転軸86の軸線C3上に位置するように、突出部材90が外蓋30に取り付けられている。押圧状態のリテーナ183と、閉状態の外蓋30から突出する突出部材90との間には、若干の隙間Gがあるため、押圧状態のリテーナ183と突出部材90とは干渉しない。
【0109】
また、
図15には、押圧解除状態のリテーナ183の回転ハンドル185が二点鎖線で示されている。押圧解除状態のリテーナ183の操作部材184の位置は、押圧状態のリテーナ183の操作部材184の位置よりも高く、押圧解除状態のリテーナ183の操作部材184と突出部材90とは干渉する。このため、リテーナ183が押圧解除状態のまま外蓋30を開位置から回動させた場合でも、操作部材184と突出部材90との干渉によりリテーナ183が押圧解除状態のまま外蓋30が閉じるのを防止できる。
【0110】
図15に示すように、本実施形態では、突出部材90が、押圧解除状態のリテーナ183の回転軸86と干渉するように外蓋30に設けられていたが、突出部材90は、押圧解除状態のリテーナ183の他の要素、例えば回転ハンドル185と干渉するように外蓋30に設けられてもよい。
【0111】
なお、本実施形態では、外蓋30を閉位置に保持するロック機構140も、第1実施形態で説明されたロック機構40とは異なる。具体的には、本実施形態のロック機構140は、第1実施形態のロック機構40と同様、差込口141と、ロック移動部142と、ロック固定部143とを含む。ただし、差込口141とロック移動部142とが、ベース22ではなく、外蓋30に設けられている。また、ロック固定部43が、外蓋30ではなく、ベース22に、より詳しくは上側ベース枠23に設けられている。このように、可動部であるロック移動部142を外蓋30側に設けることで、上側ベース枠23における外蓋30より前側の部分を小さくでき、その結果、上開口P1が大きくなるよう設計できる。これにより、バッテリパック11や内蓋151を通過させやすい上開口P1に設計しやすい。
【0112】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態に係る自動二輪車について、
図16および17を参照して説明する。なお、第4実施形態について、第1乃至第3実施形態の構成要素と同様の構成要素には同じ符号を付し説明を省略する。
図16は、第4実施形態に係る自動二輪車のバッテリケース上部の近傍を拡大した側面断面図である。
図17は、第4実施形態における収容空間内の一部を拡大して示す斜視図である。
【0113】
図16に示すように、本実施形態では、閉位置にある外蓋30から、突出部材として仕切板91が下方に突出している。仕切板91は、外蓋30を閉じた場合に、押圧解除状態のリテーナ183とは干渉するが、押圧状態のリテーナ183とは干渉しないように、外蓋30からの突出位置および突出方向の長さが調整されている。
【0114】
具体的には、
図17に示すように、リテーナ183が押圧状態にあるとき、回転ハンドル185は、軸線C3から左方向に延びた状態にある(
図13も参照)。すなわち、リテーナ183が押圧状態にあるとき、内蓋151を上面視して、蓋本体151aと回転ハンドル185とは重ならない。
【0115】
一方、仕切板91は、外蓋30を閉じたときに、蓋本体151aの前端部、つまり蓋本体151aにおける支持部51cが位置する側の端部の真上に位置するように外蓋30に設けられている。このため、リテーナ183が押圧状態にある場合に外蓋30を閉じると、仕切板91は、回転ハンドル185に干渉しない。
【0116】
また、
図16および17には、押圧解除状態のリテーナ183の回転ハンドル185が二点鎖線で示されている。リテーナ183が押圧解除状態にあるとき、回転ハンドル185は、軸線C3から蓋本体151aに向かって延びた状態にある(
図13の二点鎖線も参照)。すなわち、リテーナ183が押圧解除状態にあるとき、内蓋151を上面視して、蓋本体151aと回転ハンドル185とが重なる。このため、リテーナ183が押圧解除状態にある場合に外蓋30を閉じると、仕切板91は、回転ハンドル185に干渉する。
【0117】
従って、リテーナ183が押圧解除状態のまま外蓋30を開位置から回動させた場合でも、操作部材184と突出部としての仕切板91との干渉によりリテーナ183が押圧解除状態のまま外蓋30が閉じるのを防止できる。
【0118】
また、本実施形態では、リテーナ183が押圧状態のまま外蓋30を閉じた場合に、仕切板91が、収容空間Sを、リテーナ183が配置される空間と、蓋本体151aの上方の荷物収容空間とに仕切る。このため、仕切板91は、蓋本体151aの上面に載置された収容物が蓋本体151aの前方、すなわちリテーナ183が配置される空間に移動するのを防ぐ。
【0119】
<その他の実施形態>
本開示は前述した実施形態に限定されるものではなく、その構成を変更、追加、又は削除することができる。
【0120】
例えば、上記実施形態では、鞍乗車両は、走行駆動源を電動モータとする電動車両であったが、走行駆動源としてのエンジンを備えた車両でもよい。バッテリパックは、走行駆動源ではなくエンジン駆動をアシストする電動モータに電力を供給可能なバッテリパックでもよい。鞍乗車両は、電動モータにより人力を補助する電動アシスト自転車でもよい。
【0121】
バッテリケースの構成、姿勢なども上記実施形態で説明されたものに限定されない。上記実施形態では、バッテリケースは、ケース本体とベースとが互いに接続された構成であったが、バッテリケースは、ケース本体とベースとが一体であってもよい。例えば、上記実施形態において、ベース22は、上側ベース枠23のみで、下側ベース枠24が、ケース本体21の一部であってもよい。この場合、係合部材52や被係止部68は、ベース22ではなくケース本体21に固定されていてもよい。
【0122】
上記実施形態では、ベースがせり出し部を含む構成であったが、ベースとせり出し部とが別体であってもよい。
【0123】
押圧機構は、圧縮ばねの他、空気ばねでもよい。あるいは、押圧機構は、内蓋が弾性をもつものならボルトなどの締結具で押圧するものであってもよい。すなわち、内蓋が弾性をもつ場合、当接部材自体が押圧する機能を備えていてもよい。
【0124】
内蓋は、バッテリパックとの当接箇所に緩衝材を有していてもよい。また、上記実施形態では、当接部材は、内蓋であったが、当接部材は、バッテリパックを上方から覆う蓋体でなくてもよい。例えば、開口P2を閉塞することなくバッテリパックに当接するものであってもよい。例えば当接部材は、棒状の部材でもよいし、メッシュ状の部材でもよい。内蓋は、バッテリケースから着脱可能でなくてもよい。
【0125】
押圧機構の操作子は、ユーザが押圧機構を操作する際に手で触れる部分である。操作子の形状や構成などは、上記実施形態で説明されたものに限定されない。例えば操作子は、レバー、ハンドル、ノブ、またはボタンなどであり得る。
【0126】
荷物入れケースとしてのケーシングが仕切り壁を含んでいたが、荷物入れケースと仕切り壁とは別体でもよい。
【0127】
上記実施形態では、収容空間Sに収容したり収容空間Sから取り出されたりする収容物として、第1空間S1に収容されるバッテリパック11や第2空間S2に収容される荷物などが説明されたがが、収容物はこれに限定されない。例えば収容物にバッテリパックが含まれなくてもよい。収容空間を形成するケースも、バッテリケースでなくてもよく、例えば荷物のみを収容可能な形状のケースであってもよい。例えば、バッテリパックは、車体に着脱式ではなくてもよい。また、鞍乗車両は、バッテリパックなしで走行可能な車両であってもよい。鞍乗車両は、電動モータ以外の走行駆動源、たとえば内燃機関を走行駆動源とする車両であってもよい。例えば、収容物は、ヘルメット、グローブ等の運転時に運転者が装着する装備品であってもよい。またツールボックス、説明書などであってもよいし、車体から着脱されることが前提の車両部品であってもよい。
【0128】
[開示項目]
以下の項目のそれぞれは、好ましい実施形態の開示である。
【0129】
[項目1]
収容物を収容するための収容空間と、
前後方向における前記収容空間より後方に配置された、運転者が跨って着座するシートと、
前記シートの前端部より上方かつ前方に配置され、左右方向に延びるヒンジ軸と、
前記収容空間を上方に開放する開位置と前記収容空間を上方から覆う閉位置との間で前記ヒンジ軸を中心に回動可能な蓋体と、を備える、鞍乗車両。
上記項目によれば、ヒンジ軸が、シート前端部より上方かつ前方に配置されている。このため、外蓋を閉位置から開位置に移動させるにあたって、シートによって外蓋の回動範囲が制限されることを抑制できる。従って、収容物を収容空間に収容したり収容空間から取り出したりしやすい蓋の開閉構造を備えた鞍乗車両を提供できる。また、シートが前後方向における収容空間より後方に配置されているため、収容物の収容および取り出し作業時にシートを車体から取り外す必要がない。
【0130】
[項目2]
前記シートの前端部から斜め前上方にせり出して、運転者の着座範囲の前端位置を規制するせり出し部を更に備え、
前記ヒンジ軸は、前記せり出し部のうち前方を向く面と前後方向に対向する、項目1に記載の鞍乗車両。
上記項目によれば、せり出し部が覆うスペースに外蓋の回動中心となるヒンジ軸を配置するため、せり出し部に覆われるスペースを有効利用できる。
【0131】
[項目3]
前記ヒンジ軸と前記蓋体とを接続し、前記蓋体とともに前記ヒンジ軸を中心に回動可能なアームを更に備え、
前記アームは、左右方向に見て、前記蓋体が前記開位置にあるときの前記アームの最前端部が、前記ベースの前記せり出し部の前端部よりも前方に位置する屈曲形状を有する、項目2に記載の鞍乗車両。
上記項目によれば、ユーザの目に触れるせり出し部がアームに干渉するのを防ぐことができる。
【0132】
[項目4]
前記ヒンジ軸は、左右方向における前記鞍乗車両の中心面上に位置する、項目1または2に記載の鞍乗車両。
上記の項目によれば、左右方向の寸法が小さくなるようにベースのせり出し部および外蓋を設計できる。
【0133】
[項目5]
前記アームは、左右方向における前記鞍乗車両の中心面上に位置する、項目3に記載の鞍乗車両。
上記の項目によれば、左右方向の寸法が小さくなるようにベースのせり出し部および外蓋を設計できる。
【0134】
[項目6]
枠形状を有し、前記蓋体に閉塞される上開口と、前記上開口の下方に位置する下開口と、を含むベースを備える、項目1乃至5のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
上記項目によれば、ベースを枠状にすることで、バッテリパックをバッテリ空間に収容するまたはバッテリ空間から取り出す際にバッテリパックを通過させる通路を形成できる。
【0135】
[項目7]
枠形状を有し、前記閉位置に位置する前記蓋体により閉塞される上開口と、前記上開口の下方に位置する下開口と、を含むベースを備え、
前記ベースは、前記シートの前端部から斜め前上方にせり出して、運転者の着座範囲の前端位置を規制するせり出し部を含む、項目1乃至6のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
【0136】
[項目8]
前記収容空間に収容された前記収容物であるバッテリパックを支持するケース本体を備え、
前記ベース、前記ヒンジ軸、前記蓋体および前記ケース本体が、互いに結合されてバッテリ収容ユニットとしてユニット化されている、項目6または7に記載の鞍乗車両。
上記項目によれば、ベース、ヒンジ軸、外蓋およびケース本体が、バッテリ収容ユニットとしてユニット化されているため、鞍乗車両の組立がより容易となる。例えばバッテリケース本体の開口縁に対するベースが有する開口の位置の調整が容易となる。
【0137】
[項目9]
前記収容空間は、収容された前記収容物であるバッテリパックが占有するバッテリ空間と、残余の空間を含み、
前記残余の空間は、前記ヒンジ軸が配置される軸収容空間と、荷物を収容するための荷物収容空間とを含み、
前記鞍乗車両は、前記軸収容空間と前記荷物収容空間とに仕切る仕切り壁を更に備える、項目1乃至8のいずれか1項に記載の鞍乗車両。
上記項目によれば、仕切り壁により、荷物がヒンジ軸およびそれを支持する部材に当たるのを防ぐことができる。例えば車体が斜め前方に傾いていたとしても、仕切り壁で軸収容空間に荷物が移動するのを防ぐことができる。
【0138】
さらに、上記項目1乃至9の鞍乗車両は、以下の特徴を備えてもよい。
【0139】
例えば上記の鞍乗車両は、前記ヒンジ軸を支持するヒンジサポートを更に備え、前記ベース、前記ヒンジ軸、前記外蓋および前記ヒンジサポートが、カバーユニットとしてユニット化されていてもよい。上記構成によれば、ベース、ヒンジ軸、外蓋およびヒンジサポートがカバーユニットとしてユニット化されているため、鞍乗車両の組立が容易となる。
【0140】
また、前記カバーユニットは、前記ヒンジ軸と平行な被係合軸と、前記被係合軸を中心に回動することにより、前記下開口を閉塞可能な内蓋とを更に含んでもよい。上記構成によれば、内蓋があることで、バッテリの内部の空間と枠状のベースの内方の空間とを仕切ることができる。また、内蓋もカバーユニットの一部であるため、鞍乗車両の組立がより容易となる。
【0141】
また、前記被係合軸は、前後方向における前記下開口より前方に配置されてもよい。上記構成によれば、内蓋の回動中心である被係合軸が下開口の前方に位置するため、内蓋を回動する際に、外蓋の回動構造(例えば外蓋とヒンジ軸とを接続するアームなど)に干渉しにくい内蓋の開閉構造を実現できる。
【0142】
また、前記内蓋および前記ベースの一方に、前記被係合軸が固定され、前記内蓋および前記ベースの他方は、前記被係合軸に着脱可能に係合する係合構造を有してもよい。上記構成によれば、内蓋を取り外した状態でバッテリパックを収容したり取り出したりすることが可能となるため、バッテリパックの取り付けおよび取り外しが容易となる。
【0143】
また、前記バッテリ収容ユニットは、鉛直上向き方向に対して後方に傾斜しており、前記ベースの前記上開口の後端部が、前記バッテリケースの開口縁の後端部の後方に位置してもよい。上記構成によれば、ベースの上開口の後端部が、バッテリケースの開口縁の後端部の後方に位置するため、鉛直上向き方向に対して後方に傾斜したバッテリパックケースにバッテリパックを収容しやすい。
【0144】
また、上記の鞍乗車両は、前記ヒンジ軸の周りに配置された、前記外蓋の回動とともに回動する突起と、前記ヒンジ軸の周りに配置された、前記外蓋が開位置にあるときに前記突起が当接して、前記外蓋の回動範囲を制限するストッパとを更に備えてもよい。上記構成によれば、外蓋の回動範囲を制限する構造をヒンジ軸の周りに配置することで、せり出し部に覆われるスペースを有効利用できる。
【符号の説明】
【0145】
1 :自動二輪車
7 :ハンドル
9 :シート
9a :シート前端部
10 :電動モータ
11 :バッテリパック
11a :バッテリ側コネクタ
20 :バッテリケース
21 :ケース本体
22 :ベース
23a :せり出し部
30 :外蓋
31 :開閉機構
32 :ヒンジ軸
33 :ヒンジサポート
34 :アーム
50 :押圧機構
51 :内蓋
51a :蓋本体
51b :被係合部
51c :支持部
52 :係合部材
53 :リテーナ
61 :圧縮ばね
62 :第1ばね座
63 :第2ばね座
64 :操作部材
65 :カムレバー
65a :レバー部
65b :押圧部
66 :カムサポート
67 :支持軸
68 :被係止部
70 :ケーシング
72 :第1仕切り壁
73 :第2仕切り壁
80 :押圧機構
83 :リテーナ
84 :操作部材
85 :回転ハンドル
86 :回転軸
86a :押圧部
86b :係止部
88 :被係止部
89 :円筒カム
89a :係合孔
90 :突出部材
91 :仕切板
101 :筒部
102 :底
103 :貫通孔
120 :バッテリケース
140 :ロック機構
141 :差込口
142 :ロック移動部
143 :ロック固定部
150 :押圧機構
151 :内蓋
151a :蓋本体
151b :被係合部
151c :支持部
152 :係合部材
172 :仕切り壁
174 :側壁
183 :リテーナ
184 :操作部材
185 :回転ハンドル
188 :被係止部