(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170656
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】地域活性化装置及び地域活性化方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0207 20230101AFI20231124BHJP
【FI】
G06Q30/02 320
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082554
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣井 和重
(72)【発明者】
【氏名】望月 智之
(72)【発明者】
【氏名】岩松 季恵
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049BB07
(57)【要約】
【課題】地域間の買物客の移動を積極的に増加させる。
【解決手段】本発明の地域活性化装置は、顧客の移動情報及び前記顧客による商品の購買情報に基づき、地域における店舗の配置を変更し、前記地域における店舗を訪問するための画面を前記顧客に表示する店舗配置部と、前記地域における店舗を実際に訪問した前記顧客に経済的価値を付与するポイント付与部と、を備えることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の移動情報及び前記顧客による商品の購買情報に基づき、地域における店舗の配置を変更し、
前記地域における店舗を訪問するための画面を前記顧客に表示する店舗配置部と、
前記地域における店舗を実際に訪問した前記顧客に経済的価値を付与するポイント付与部と、
を備えることを特徴とする地域活性化装置。
【請求項2】
前記店舗配置部は、
前記配置を変更した店舗を訪問するための画面を前記顧客に表示し、
前記ポイント付与部は、
前記配置を変更した店舗を実際に訪問した前記顧客に経済的価値を付与すること、
を特徴とする請求項1に記載の地域活性化装置。
【請求項3】
前記店舗配置部は、
前記顧客の移動情報及び前記顧客による商品の購買情報に基づき、ある属性を有するターゲット顧客を決定し、前記ターゲット顧客向けのターゲット店舗を決定すること、
を特徴とする請求項2に記載の地域活性化装置。
【請求項4】
前記店舗配置部は、
複数の前記店舗の組合せ及び前記店舗を訪問する順序を決定し、
前記ポイント付与部は、
前記組合せに含まれるすべての店舗を訪問した前記顧客に、又は、前記順序で前記組合せに含まれるすべての店舗を訪問した前記顧客に、前記経済的価値を付与すること、
を特徴とする請求項3に記載の地域活性化装置。
【請求項5】
前記店舗配置部は、
前記配置を変更した後の店舗による重要業績評価指標を算出し、
前記算出した重要業績評価指標と所定の閾値との大小関係に基づき、前記配置を変更した店舗を訪問する画面を前記顧客に表示するか否かを決定すること、
を特徴とする請求項4に記載の地域活性化装置。
【請求項6】
前記店舗配置部は、
前記店舗の重要業績評価指標に応じて、顧客の移動が停滞する領域と前記ターゲット店舗との距離を決定すること、
を特徴とする請求項5に記載の地域活性化装置。
【請求項7】
前記ポイント付与部は、
前記店舗における購買金額に応じて、線形的又は非線形的に前記経済的価値を算出すること、
を特徴とする請求項6に記載の地域活性化装置。
【請求項8】
前記地域は、
鉄道駅の周辺に存在すること、
を特徴とする請求項7に記載の地域活性化装置。
【請求項9】
地域活性化装置の店舗配置部は、
顧客の移動情報及び前記顧客による商品の購買情報に基づき、地域における店舗の配置を変更し、
前記地域における店舗を訪問するための画面を前記顧客に表示し、
前記地域活性化装置のポイント付与部は、
前記地域における店舗を実際に訪問した前記顧客に経済的価値を付与すること、
を特徴とする地域活性化装置の地域活性化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地域活性化装置及び地域活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国では、長期的には人口が減少する傾向にあり、短期的には感染症拡大防止が徹底されている。これらに起因して、街に出歩く人の数は減少し、店舗事業者及び交通事業者の収益も減少している。もちろん感染は収束させなければならないが、このような状況において、如何にして人を外出させ、店舗に向かわせるかということが国民経済的には急務である。
【0003】
特許文献1の移動店舗車の配置決定装置は、イベント会場等の広いフリースペースにおいて、複数の移動店舗車(自走式屋台)の配置を決定する。当該装置は、例えば、女性高齢者が多く集まりそうな時間帯には、女性高齢者をターゲットとする店舗を入口から見て奥のエリアに配置する。なぜならば、多くの女性高齢者は、購買やサービス利用とは無関係に殆どの店舗を見てまわるということが経験的にわかっているからである。
【0004】
当該装置は、例えば、男性高齢者が多く集まりそうな時間帯には、男性高齢者をターゲットとする店舗を入口から見て手前のエリアに配置する。なぜならば、多くの男性高齢者は、目的の店舗に向かい、そこでの買い物を済ませると、他の店舗に立ち寄ることなく帰宅するということが経験的にわかっているからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
地域の事業組合、駅等の交通拠点の周辺の地域開発を兼業する交通事業者等が、特許文献1の考え方を採用し、地域の店舗を再配置することはもちろん可能である。しかしながら、特許文献1の配置決定装置は、顧客に対し積極的に働きかける観点を有さない。結局、配置変更後の店舗の売上は、顧客次第である。さらに、特許文献1は、イベント会場の内部における売上の最大化に焦点を合わせており、当該イベント会場を含む地域全体を他の地域の人に知らしめるという発想に欠ける。
そこで本発明は、地域間の買物客の移動を積極的に増加させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の地域活性化装置は、顧客の移動情報及び前記顧客による商品の購買情報に基づき、地域における店舗の配置を変更し、前記地域における店舗を訪問するための画面を前記顧客に表示する店舗配置部と、前記地域における店舗を実際に訪問した前記顧客に経済的価値を付与するポイント付与部と、を備えることを特徴とする。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、地域間の買物客の移動を積極的に増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【発明を実施するための形態】
【0010】
以降、本発明を実施するための形態(“本実施形態”という)を、図等を参照しながら詳細に説明する。本実施形態は、交通事業者が駅周辺の地域を活性化する例である。活性化とは、人流を増加させることであり、結果として地域の事業者及び交通事業者の収益を増加させることである。
【0011】
(地域活性化装置)
図1は、地域活性化装置1の構成等を示す図である。地域活性化装置1は、一般的なコンピュータであり、中央制御装置11、マイクロフォン、マウス、キーボード等の入力装置12、スピーカ、ディスプレイ等の出力装置13、主記憶装置14、補助記憶装置15及び通信装置16を備える。これらは、バスで相互に接続されている。補助記憶装置15は、購買情報31、ОD(Origin Destination)情報32、移動情報33及びポイント情報34(詳細後記)を格納している。
【0012】
主記憶装置14における店舗配置部21及びポイント付与部22は、プログラムである。中央制御装置11は、これらのプログラムを補助記憶装置15から読み出して主記憶装置14にロードすることによって、それぞれのプログラムの機能(詳細後記)を実現する。補助記憶装置15は、地域活性化装置1から独立した構成となっていてもよい。地域活性化装置1は、有線又は無線のネットワーク6を介して、顧客端末装置2、店舗サーバ3、交通事業者サーバ4及び通信事業者サーバ5と通信可能である。
【0013】
顧客端末装置2は、顧客が携帯するコンピュータである。顧客とは、地域の店舗に来店する個人であり、地域に通じる交通手段(鉄道、路線バス等)の乗客でもある。店舗サーバ3は、地域の店舗が購買情報31を管理するコンピュータである。交通事業者サーバ4は、交通事業者がОD情報32を管理するコンピュータである。通信事業者サーバ5は、通信事業者が移動情報34を管理するコンピュータである。
【0014】
(地域)
図2は、地域を説明する図である。地域41は、例えば、ある鉄道路線の駅Aの片側に広がる商業地域である。縦横に走る道路で画定された区画のそれぞれに、その区画を一意に特定する識別子である場所ID(B11、B12、・・・、B66)が付されている。1つの区画には、1つの店舗が入居可能である。駅Aから降車した顧客は、ある特定の店舗を目指して最短距離で地域41の道路を歩くこともできるし、特に目的を有さずに道路を散策(回遊)することも可能である。
【0015】
店舗のそれぞれに、店舗を一意に特定する識別子である店舗IDが付されている。
図2の合計36個の区画のうち、実線の区画B11等には、1つの場所ID及び1つの店舗IDが付されている。破線の区画B23等には、1つの場所IDのみが付されている。これらのことは、実線の区画には店舗が既に入居済であり、破線の区画には店舗が未だ入居していないことを示している。
図2の地域は、説明目的で単純化されている。実際の地域では、
図2のように道路が碁盤目状に通っていることは稀であり、1つの区画に複数の店舗が入居することも可能である。さらに、鉄道の両側に区画が存在していてもよい。
【0016】
(購買情報)
図3は、購買情報31の一例である。購買情報31においては、店舗ID欄101に記憶された店舗IDに関連付けて、場所ID欄102には場所IDが、店舗種類欄103には店舗種類が、日時欄104には日時が、商品名欄105には商品名が、金額欄106には金額が、顧客ID欄107には顧客IDが記憶されている。
【0017】
店舗ID欄101の店舗IDは、前記した店舗IDである。
場所ID欄102の場所IDは、前記した場所IDである。
店舗種類欄103の店舗種類は、店舗の種類である。
日時欄104の日時は、その商品が販売された時刻の年月日時分である。
商品名欄105の商品名は、商品の名称である。同じ商品名の商品が複数販売された場合、当該欄にその数量が記憶される。
金額欄106の金額は、その商品の金額である。同じ商品名の商品が複数販売された場合、当該欄にその合計金額が記憶される。
顧客ID欄107の顧客IDは、その商品を購買した顧客を一意に特定する識別子である。但し、ここでの顧客IDは、顧客の個人情報(氏名等)を特定することはできない。
【0018】
(ОD情報)
図4は、ОD情報32の一例である。ОD情報32においては、期間欄111に記憶された期間に関連付けて、起点欄112には起点(Origin)が、終点欄113には終点(Destination)が、人数欄114には人数が記憶されている。
【0019】
期間欄111の期間は、旅客流動を計測する単位となる任意の長さの期間である。
図4の例では期間は“1日”であり、
図4には期間として年月日を示している。
起点欄112の起点は、顧客(乗客)が乗車した駅の駅IDである。駅IDは、駅を一意に特定する識別子である。
終点欄113の終点は、顧客(乗客)が降車した駅の駅IDである。
人数欄114の人数は、起点の駅で乗車し終点の駅で降車した顧客(乗客)の人数である。当該人数は、各駅の改札口を通過した人数をカウントしたものである。
【0020】
ОD情報32のレコードは、“上り”及び“下り”の方向性を有する。つまり、例えば起点がG01であり終点がG02であるレコードと、起点がG02であり終点がG01であるレコードとは、別々に管理される。但し、両者の人数は、ほぼ同じである。
【0021】
(移動情報)
図5は、移動情報33の一例である。移動情報33においては、端末ID欄121に記憶された端末IDに関連付けて、日時欄122には日時が、位置欄123には位置が記憶されている。
端末ID欄121は、顧客端末装置2を一意に特定する識別子である。1人の顧客が1台の顧客端末装置2を携帯している場合、端末IDは、
図2の顧客IDとほぼ同義となる。当然のことながら、通信事業者は、個人情報を取得する目的ではなく、人流を解析する公共的な目的で端末IDを管理している。
【0022】
日時欄122の日時は、顧客端末装置2の位置が計測された時点の年月日時分である。
位置欄123の位置は、顧客端末装置2の位置(緯度及び経度)である。顧客端末装置2は、顧客の承諾のもとに、複数の通信衛星からの電波を取得することによって自身の位置を計測し、ネットワーク6を介してその位置を通信事業者サーバ5に送信する。“#”は、異なる数値を省略的に示している。
【0023】
(ポイント情報)
図6は、ポイント情報34の一例である。ポイント情報34においては、顧客ID欄131に記憶された顧客IDに関連付けて、年齢欄132には年齢が、性別欄133には性別が、職業欄134には職業が、日時欄135には日時が、起点欄136には起点が、終点欄137には終点が、店舗ID欄138には店舗IDが、金額欄139には金額が、ポイント欄140にはポイントが、累計ポイント欄141には累計ポイントが記憶されている。
【0024】
顧客ID欄131の顧客IDは、
図3の顧客IDと同じである。なお、ここでの顧客は、ポイントを付与してもらうために充分な、最小限度の個人情報を開示することを承諾している。
年齢欄132の年齢は、顧客の年齢である。
性別欄133の性別は、顧客の性別である。
職業欄134の職業は、顧客の職業である。
【0025】
日時欄135の日時は、顧客が終点の駅の改札口を通過した時刻の年月日時分である。
起点欄136の起点は、
図4の起点と同じである。
終点欄137の終点は、
図4の終点と同じである。
店舗ID欄138の店舗IDは、前記した店舗IDである。
【0026】
金額欄139の金額は、顧客が終点の駅で支払った運賃の金額、又は、店舗で商品等を購買した金額である。
ポイント欄140のポイントは、金額に応じて顧客に対して付与された経済的価値(電子マネー)である。ポイントは、顧客が鉄道の運賃を支払ったこと又は店舗で商品等を購買したことに対する報奨(インセンティブ)である。
累計ポイント欄141の累計ポイントは、ポイントの累計額である。
【0027】
本実施形態において“属性”とは、年齢、性別、職業等、その顧客が属するカテゴリの性質だけでなく、その顧客自身の行動特性等も含む。
【0028】
図6に注目すると、以下のことがわかる。
・2022年4月6日、顧客P01は、駅G01で鉄道に乗車し、駅G02で降車した。運賃は、600円であった。
・その後、顧客P01は、店舗M01、店舗M02、店舗M03及び店舗04にこの順番で来店し、それぞれの店舗で、800円、1500円、1000円及び3000円の買い物をした。
・その後、顧客P01は、駅G02で鉄道に乗車し、駅G01で降車した。運賃は、600円であった。
・これらの結果、顧客P01は、75ポイントを付与された。
【0029】
(店舗案内画面)
図7は、店舗案内画面51の一例である。地域活性化装置1が、新たに配置替えされた3つの店舗への来店を勧める店舗案内画面51aを、ある属性(若く運動好きな男性)を有するターゲット顧客の顧客端末装置2に表示する。地域活性化装置1は、ターゲット顧客に対して以下の回遊をその順に勧めている。
・ターゲット顧客は、駅Aで降車する。
・ターゲット顧客は、カフェ52に行き、友人と待ち合わせをする。
・ターゲット顧客は、友人とともにボウリング場53に行く。
・ターゲット顧客は、友人とともにレストラン54に行く。
【0030】
地域活性化装置1が最初にカフェ52での待ち合わせを勧めているのは、カフェ52及び後続の店舗での売上を大きくするためである。地域活性化装置1がボウリング場53の後にレストラン54に行くことを勧めているのは、その逆であると、レストラン54の酒類の売上が増加せず、食事後の満腹感がボウリング場53でのゲーム時間を短くするからである。地域活性化装置1は、ターゲット顧客をこのような回遊に誘導するために、特典的なポイント付与を提案している(符号58a)。
【0031】
図8もまた、店舗案内画面51の一例である。地域活性化装置1が、新たに配置替えされた他の3つの店舗への来店を勧める店舗案内画面51bを、他の属性(幼児を連れた母親)を有するターゲット顧客の顧客端末装置2に表示する。地域活性化装置1は、ターゲット顧客に対して以下の回遊をその順に勧めている。
・ターゲット顧客は、駅Aで降車する。
・ターゲット顧客は、遊技場55に行く。
・ターゲット顧客は、玩具店56に行く。
・ターゲット顧客は、ファストフード店57に行く。
【0032】
地域活性化装置1が最初に遊技場55に行くことを勧めているのは、近辺に玩具店56があることを幼児に気付かせるためである。地域活性化装置1が玩具店56の後にファストフード店57に行くことを勧めているのは、幼児が買ってもらったばかりの玩具に夢中になり、静かに食事をするからである。地域活性化装置1は、ターゲット顧客をこのような回遊に誘導するために、特典的なポイント付与を提案している(符号58)。
【0033】
(処理手順)
図9は、処理手順のフローチャートである。処理手順を開始する前提として、店舗サーバ3は購買情報31を、交通事業者サーバ4はОD情報32を、通信事業者サーバ5は移動情報33を、それぞれ最新の状態で記憶しているものとする。
【0034】
ステップS201において、地域活性化装置1の店舗配置部21は、購買情報31等を取得する。具体的には、店舗配置部21は、店舗サーバ3から購買情報31を、交通事業者サーバ4からОD情報32を、通信事業者サーバ5から移動情報33を、それぞれ最新の状態で取得する。
【0035】
ステップS202において、店舗配置部21は、購買情報31等を分析する。具体的には、店舗配置部21は、任意の方法で購買情報31、ОD情報32及び移動情報33を分析する。例えば、店舗配置部21は、ある沿線の各駅を含む所定の面積の地域を比較し分析した結果、以下のことを認識したとする。
・駅A周辺の地域における飲食店の数が、他の駅周辺の地域に比して少ない。
・駅A周辺の人流が、他の駅周辺の地域に比して少ない。
・駅Aにおける若年層の男性の乗降が、他の駅に比して少ない。
【0036】
ステップS203において、店舗配置部21は、重点施策を決定する。具体的には、店舗配置部21は、ステップS202の分析結果に基づき重点施策を決定する。ここでの重点施策は、例えば“駅A周辺において、若年層の男性に飲食店を回遊させる”である。この重点施策のうち、“駅A周辺”はターゲット地域と呼ばれ、“若年層の男性”はターゲット顧客と呼ばれ、ターゲット顧客向けの“飲食店”はターゲット店舗と呼ばれる。あるターゲット店舗(例えば
図7の符号54)の売上高増加に資する他の店舗(例えば
図7の符号52及び53)もまた、ターゲット店舗と呼ばれる。
【0037】
ステップS204において、店舗配置部21は、シミュレーションを実行する。具体的には、店舗配置部21は、KPI算出モデル(図示せず)を使用して、重点施策を実行した場合のKPIを算出する。KPIとは、売上高、来店客数等の重要業績評価指標(Key Performance Indicator)である。
【0038】
KPI算出モデルは、例えば、ターゲット地域に関するデータ、ターゲット店舗に関するデータ及びターゲット顧客に関するデータを入力変数とし、当該地域の所定のKPI(例えば売上高)を出力変数とする関数(数理モデル)である。店舗配置部21は、過去における購買情報31、ОD情報32及び移動情報33を学習データとしてKPI算出モデルを機械学習する。説明の便宜上、ユーザはKPIとして売上高を指定したとする。
【0039】
店舗配置部21は、例えば以下の〈1〉~〈3〉のように入力変数を無作為的に変化させたうえでKPI算出モデルに入力し、出力変数として駅A周辺の地域の売上高を取得する。
〈1〉店舗配置部21は、駅A周辺の地域における店舗が未入居である区画に他の地域の店舗を入居させる。入居させる店舗は、ターゲット店舗であることが好ましい。
〈2〉店舗配置部21は、駅A周辺の地域における店舗が入居済である複数の区画間で店舗を入れ替える。入れ替える店舗の一方は、ターゲット店舗であることが好ましい。
〈3〉店舗配置部21は、駅A周辺の地域に配置された複数の店舗間に順序を付け、各店舗の来客のタイミングを調整する。
【0040】
つまり、前記〈1〉及び〈2〉において、店舗配置部21は、
図2のように場所IDと店舗IDとを関連付けた情報(“店舗配置”と呼ぶ)を多数作成し、それらのそれぞれを入力変数とする。前記〈3〉において、店舗配置部21は、ターゲット顧客が一度に連続して訪問し得る所定の数の店舗に順序を関連付けた情報(“訪問順序”と呼ぶ)を多数作成し、それらのそれぞれを入力変数とすることになる。当該所定の数の店舗のうちに、ターゲット店舗が含まれていることが好ましい。
【0041】
駅A周辺の地域の売上高とは、当該地域のすべての店舗における売上高の総計である。店舗配置部21は、売上高が最大となる店舗配置及び訪問順序を解とする。
【0042】
ステップS205において、店舗配置部21は、KPIを評価する。具体的には、ステップS204において算出した売上高の最大値を所定の閾値と比較する。
【0043】
ステップS206において、店舗配置部21は、KPIが閾値を超えているか否かを判断する。具体的には、店舗配置部21は、売上高の最大値が閾値を超えている場合(ステップS206“Yes”)、解を保持したうえでステップS207に進み、それ以外の場合(ステップS206“Nо”)、処理手順を終了する。
【0044】
ステップS207において、店舗配置部21は、店舗案内画面51を作成する。具体的には、店舗配置部21は、平面上に、解となった店舗配置におけるターゲット店舗をアイコンで表示し、解となった訪問順序を矢印で表現することによって店舗案内画面51(
図7及び
図8)を作成する。
図7及び
図8においては、アイコンで表示されたターゲット店舗が3つ存在し、矢印は4本存在する。店舗配置部21は、ターゲット店舗を含むすべての店舗を親しみやすい図案のアイコンで表現してもよいさらに、店舗配置部21は、配置を変更した店舗を任意の態様で強調表示してもよい。
【0045】
このとき、地域活性化装置1のポイント付与部22は、各店舗52~57が商品の金額に応じて顧客に付与するポイント(“商品金額100円につき5ポイント”等)を各店舗のアイコンに関連付ける。また、ポイント付与部22は、顧客がすべてのターゲット店舗を訪問して買い物をした場合に顧客に付与されるポイント(組合せポイント)を店舗案内画面51に併記する(符号58)。さらに、ポイント付与部22は、顧客が矢印の訪問順序ですべてのターゲット店舗を訪問して買い物をした場合に顧客に付与されるポイント(順序ポイント)を店舗案内画面51に併記する(符号58)。
【0046】
ステップS208において、地域活性化装置1の店舗配置部21は、店舗案内画面51を表示する。具体的には、店舗配置部21は、ターゲット顧客の顧客端末装置2に店舗案内画面51(
図7及び
図8)を表示する。
その後ターゲット顧客は、店舗案内画面51を参考にして駅Aで降車しその周辺の地域を訪問する。ターゲット顧客がターゲット店舗を含むすべての店舗で買い物をした結果は、購買情報31(
図3)として蓄積され、鉄道を利用した結果は、ОD情報32(
図4)として蓄積される。その後、所定のポイント付与時点(例えば毎月末日)が到来したとする。
【0047】
ステップS209において、地域活性化装置1のポイント付与部22は、購買実績を取得する。具体的には、ポイント付与部22は、店舗サーバ3から購買情報31を、交通事業者サーバ4からОD情報32を、通信事業者サーバ5から移動情報33を、それぞれ最新の状態で取得する。
【0048】
ステップS210において、ポイント付与部22は、ポイントを付与する。具体的には、第1に、ポイント付与部22は、購買情報31、ОD情報32及び移動情報33を参照してその1か月間のポイント情報34(
図6)を作成する。この段階では、ポイント情報34のポイント欄140及び累計ポイント欄141は空欄である。
【0049】
第2に、ポイント付与部22は、ポイント情報34のレコードのそれぞれに、金額に応じたポイント及び累計ポイントを記憶する。ポイント付与部22は、購買情報31、ОD情報32及び移動情報33を参照した結果、組合せポイント及び/又は順序ポイントを付与することができると判断した場合は、最後に訪問した店舗のレコードのポイントに組合せポイント及び/又は順序ポイントを加算する。
第3に、ポイント付与部22は、ターゲット顧客の顧客端末装置2に対し、その顧客の累計ポイントを送信する。その後、処理手順を終了する。
【0050】
(変形例1:滞留する場所との距離)
店舗配置部21は、移動情報33(
図5)を参照することによって、地域のうち特に人流が停滞する傾向の強い滞留領域を特定することができる。店舗配置部21は、ターゲット店舗を滞留領域の付近の区画に配置することができる。さらに、店舗配置部21は、過去のKPI(来店客等)を店舗ごとに算出し、KPIが大きいほど、その店舗が配置される区画と滞留地域との距離を大きく又は小さく決定することができる。
【0051】
(変形例2:複数のターゲット顧客に対する同時提案)
店舗配置部21は、異なる複数のターゲット顧客に対して、その属性に応じて、同時に異なる店舗案内画面51(
図7及び
図8)を表示することができる。
【0052】
(変形例3:非線形ポイント)
ポイント付与部22は、顧客に付与されるポイントを、商品の購買金額に比例して線形的に増加させる以外に、商品の購買金額に対して非線形的に増加させてもよい。非線形的に増加させるとは、例えば、高次的に、指数的に、対数的に、階段状に、又は、所定の値に収束するように漸近的に増加させることである。このようにすることによって、ポイント付与部22は、顧客が店舗で買い物をする動機をより的確に制御することができる(販促と品切れ防止との両立)。
【0053】
(変形例4:KPIの評価)
前記では、店舗配置部21は、KPIが閾値を超えているか否かを判断する。具体的には、店舗配置部21は、売上高の最大値が閾値を超えていない場合(ステップS206“Yes”)、解を保持したうえでステップS207に進み、それ以外の場合(ステップS206“Nо”)、処理手順を終了してもよい。つまり、店舗配置部21は、シミュレーションの結果、大きなKPIが期待できる場合に処理を継続することを決定してもよいし、逆に、大きなKPIが期待できない場合、真に地域再生のために処理を継続することを決定してもよい。
【0054】
(本実施形態の効果)
本実施形態の地域活性化装置の効果は以下の通りである。
(1)地域活性化装置は、店舗に顧客を誘導し、顧客に経済的価値を付与することができる。
(2)地域活性化装置は、配置を変更した店舗に顧客を誘導し、顧客に経済的価値を付与することができる。
(3)地域活性化装置は、ターゲット顧客向けのターゲット店舗を決定することができる。
(4)地域活性化装置は、特定の組合せの店舗を特定の順序で顧客に訪問させることができる。
【0055】
(5)地域活性化装置は、シミュレーション結果のKPIの大小に応じて、店舗に顧客を誘導する画面を表示するか否かを決定することができる。
(6)地域活性化装置は、店舗のKPIの大きさに応じて、顧客が滞留する領域と店舗との距離を決定することができる。
(7)地域活性化装置は、経済的価値を線形的又は非線形的に決定することができる。
(8)地域活性化装置は、鉄道駅周辺の地域を活性化することができる。
【0056】
なお、本発明は前記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0057】
1 地域活性化装置
2 顧客端末装置
3 店舗サーバ
4 交通事業者サーバ
5 通信事業者サーバ
6 ネットワーク
11 中央制御装置
12 入力装置
13 出力装置
14 主記憶装置
15 補助記憶装置
16 通信装置
21 店舗配置部
22 ポイント付与部
31 購買情報
32 ОD情報
33 移動情報
34 ポイント情報