(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170664
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】清掃具
(51)【国際特許分類】
A47L 13/38 20060101AFI20231124BHJP
F23J 3/00 20060101ALI20231124BHJP
B08B 1/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A47L13/38 Z
F23J3/00 Z
B08B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082565
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三宅 大地
【テーマコード(参考)】
3B116
3K261
【Fターム(参考)】
3B116AA23
3B116AA33
3B116AB52
3B116BA03
3B116BA23
3K261GA11
3K261GA16
(57)【要約】
【課題】EPホッパ等の構造物の内部に固着したEP灰等の物質の除去作業を効率よく行う。
【解決手段】清掃具は、伸縮自在に構成された把持棒と、把持棒の一端に軸支され、把持棒から離れる方向に回動させた状態で、構造物の内部に存在する物質に当接される一つ以上のアームと、アームを、把持棒の他端からの操作により、把持棒に近づく方向及び把持棒から離れる方向に回動させるアーム回動部と、を備える。アーム回動部は、把持棒の内部に挿通された操作紐を含み、操作紐が把持棒の一端から他端に向かう方向に引っ張られることに連動して、アームを把持棒から離れる方向に回動させる。アーム回動部は、把持棒の他端の近傍に、アームが把持棒から離れた方向に回動した状態が維持されるように、操作紐を引っ張った状態に保持する保持部を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮自在に構成された把持棒と、
前記把持棒の一端に軸支され、前記把持棒から離れる方向に回動させた状態で、構造物の内部に存在する物質に当接される一つ以上のアームと、
前記アームを、前記把持棒の他端からの操作により、前記把持棒に近づく方向及び前記把持棒から離れる方向に回動させるアーム回動部と、
を備える、清掃具。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃具であって、
前記アーム回動部は、
前記把持棒の内部に挿通された操作紐を含み、
前記操作紐が前記把持棒の前記一端から前記他端に向かう方向に引っ張られることに連動して、前記アームを前記把持棒から離れる方向に回動させる、
清掃具。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃具であって、
前記アーム回動部は、前記把持棒の前記他端の近傍に、前記アームが前記把持棒から離れた方向に回動した状態が維持されるように、前記操作紐を引っ張った状態に保持する保持部を含む、
清掃具。
【請求項4】
請求項2に記載の清掃具であって、
前記アーム回動部は、前記把持棒の内部に設けられた、噛合歯を有し前記操作紐と結合される平板と、前記平板の前記噛合歯と噛合し前記操作紐の操作に伴って前記平板が前記把持棒の長手方向に沿って移動することにより回動する円筒型歯車と、を有し、
前記アームは、前記円筒型歯車の中心軸を回動軸として支持される、
清掃具。
【請求項5】
請求項1に記載の清掃具であって、
前記把持棒は、円筒形状を呈し第1の径を有する第1の筒体と、円筒形状を呈し前記第1の径よりも小さい第2の径を有し前記アームが軸支される第2の筒体と、を有し、
前記第2の筒体は、前記第1の筒体の内側に挿入され、
前記第1の筒体の一部と前記第2の筒体の一部は重なり合った状態で固定されている、
清掃具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の内部に固着した物質の除去に用いる清掃具に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所において、ボイラーで重油・石炭を燃焼させる工程で生じた大量の重油灰・石炭灰の一部は、火力発電所に設けられた電気集塵器によりEP(Electron particle)灰としてEPホッパに捕集された後、ベルトコンベア等を介して他の設備へと移送される(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ここでEPホッパに捕集されたEP灰は、湿度の影響によりEPホッパの内壁に固着してしまうことがあり、その場合、作業者は、EPホッパの下部に設けられた点検口から清掃具を挿入し、内壁に固着したEP灰を崩して掻き落とす作業(以下、「除去作業」と称する。)を行っている。
【0004】
図8は、除去作業を行っている様子を示す図である。同図に示すように、例示するEPホッパ100は、逆四角推台形状を呈し、上側開口110、下側開口120、及び側面の点検口130を有する。EP灰140は上側開口110からEPホッパ100の内部に捕集される。作業者は、例えば、曲げ加工が施された長尺の金属棒を清掃具150として用いる。
【0005】
EP灰140の除去作業に際し、作業者は、まず、清掃具150をEPホッパ100の下部に設けられた点検口130からEPホッパ100の内部に挿入する。続いて、作業者は、清掃具150の下端を手で支持しつつ清掃具150を上下に動かし、EPホッパ100の内壁に固着しているEP灰140を崩して下側開口120に向けて掻き落とす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の除去作業に際しては、清掃具150を狭幅の点検口130からEPホッパ100の内部に挿入する必要があり、作業者は、清掃具150として点検口130からEPホッパ100の内部に挿入可能な棒状のものを用いている。そのため、EPホッパ100の内壁に固着しているEP灰140を崩すもしくは掻き落とす際、作業者は清掃具150の先端部分を広い範囲に亘って動かす必要があった。また、除去作業に際し、作業者は、点検口130からEPホッパ100の内部に腕を入れた状態で重量物である清掃具150を支持しつつ清掃具150を上下に動かす必要があり重労働を強いられる。このように、従来の除去作業には作業性の面で課題があった。
【0008】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、構造物の内部に固着した物質の除去作業を効率よく行うことが可能な清掃具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段の一つは、清掃具であって、伸縮自在に構成された把持棒と、前記把持棒の一端に軸支され、前記把持棒から離れる方向に回動させた状態で、構造物の内部に存在する物質に当接される一つ以上のアームと、前記アームを、前記把持棒の他端からの操作により、前記把持棒に近づく方向及び前記把持棒から離れる方向に回動させるアーム回動部と、を備える。
【0010】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、EPホッパ等の構造物の内部に固着したEP灰等の物質の除去作業を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】把持棒を最長の状態に伸長し、かつ、アームを開いた状態の清掃具の斜視図である。
【
図2】把持棒を最短の状態とし、かつ、アームを閉じた状態の清掃具の斜視図である。
【
図3】把持棒を最長の状態に伸長し、かつ、アームを閉じた状態の清掃具の斜視図である。
【
図4】把持棒を最長の状態に伸長した状態を示す側面図である。
【
図5A】アーム回動部の構成及び動作を説明する図である。
【
図5B】アーム回動部の構成及び動作を説明する図である。
【
図6A】アーム回動部の構成を説明する分解斜視図である。
【
図6B】アーム回動部の構成を示す一部拡大上面図である。
【
図7】清掃具を用いてEPホッパの内壁に固着したEP灰の除去作業を行っている様子を示す図である。
【
図8】一般の清掃具でEPホッパの内部を清掃する様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下、本発明をその一実施形態に即して添付図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る、EPホッパ100の内壁に固着したEP灰を掻き落とす作業(以下、「除去作業」と称する。)に用いる清掃具200の構成を示す斜視図である。同図に示すように、清掃具200は、主な構造として、把持棒300と一対のアーム410,420を有する。把持棒300及びアーム410,420は、例えば、ステンレス鋼(Stainless Used Steel)やアルミニウム等の軽量の金属や樹脂等を素材として構成される。
【0015】
尚、以下の説明において、清掃具200を用いたEP灰の除去作業の対象となるEPホッパは、
図8に示した構造を有するものとする。また、本実施形態では、EPホッパとして、上側開口110の一辺が10m程度、下側開口120及び点検口130の径が30~50cm程度のものを想定するが、除去作業の対象となるEPホッパのサイズや形状は必ずしも限定されない。
【0016】
清掃具200の把持棒300は、3つの筒体310,320,330を組み合わせた入れ子構造からなり、長手方向に沿って伸縮することが可能である。アーム410,420は、長尺の部材であり、その長手方向の長さは、筒体310,320,330の夫々の長手方向の長さと同程度である。また、アーム410,420は、いずれも把持棒300の先端部付近に回動可能に軸支され、作業者は、後述するアーム回動部500を手元から操作することで、アーム410,420を開閉(アーム410,420の長手方向がいずれも把持棒300に対して垂直になった状態(以下、「開いた状態」と称する。)と、アーム410,420の長手方向がいずれも把持棒300に対して平行になった状態(以下、「閉じた状態」と称する。)のいずれかの状態に移行させること)することができるようになっている。
【0017】
図1は、把持棒300を最長の状態に伸長し、かつ、アーム410,420を開いた状態における清掃具200の斜視図である。また、
図2は、把持棒300を最短の状態とし、かつ、アーム410,420を閉じた状態における清掃具200の斜視図である。また、
図3は、把持棒300を最長の状態に伸長し、かつ、アーム410,420を閉じた状態における清掃具200の斜視図である。
【0018】
除去作業に際し、作業者は、まず、
図2に示す状態、即ち、把持棒300を最短の状態とし、かつ、アーム410,420を閉じた状態とした清掃具200をEPホッパ100の点検口130から挿入する。
【0019】
続いて、作業者は、清掃具200をEPホッパ100の内部に挿入した状態で把持棒300を伸長し、清掃具200を
図3に示す状態とする。
【0020】
続いて、作業者は、後述するアーム回動部500を手元から操作することで、アーム410,420を開いて清掃具200を
図1に示す状態とし、この状態で除去作業を開始する。尚、作業者は、例えば、アーム410,420をEPホッパ100の内壁に固着しているEP灰140に当てて清掃具200を上下に動かすことによりEP灰140を崩しつつ、EP灰140をEPホッパ100の内壁から下側開口120に向けて掻き落とすことにより除去作業を行う。
【0021】
このように、本実施形態の清掃具200は、把持棒300の長手方向の長さを調節することができる。また、本実施形態の清掃具200は、清掃具200をEPホッパ100の内部に挿入した状態でアーム410,420の開閉を、作業者が後述するアーム回動部500を手元から操作して行うことができるようになっている。
【0022】
また、アーム410,420の長手方向の長さは、筒体310,320,330の夫々の長手方向の長さと同程度であり、把持棒300を最短の長さに縮めるとともにアーム410,420を閉じた状態(
図2の状態)とすることで、清掃具200をコンパクトな状態にすることができる。このため、作業者は、把持棒300を縮めるとともにアーム410,420を閉じて清掃具200をコンパクトな大きさにすることができ、清掃具200をEPホッパ100の内部に容易に出し入れすることができる。また、コンパクトな大きさにすることができるため、清掃具200は可搬性も優れる。
【0023】
また、本実施形態の清掃具200は、把持棒300の先端に一対のアーム410,420が設けられた構造を有するので、作業者は、点検口130を介して行われる除去作業を効率よく行うことができる。
【0024】
また、本実施形態の清掃具200は、ステンレス鋼やアルミニウム等の軽量な金属や樹脂等の軽量な素材で構成されているので、作業性に優れるとともに作業時の安全性を向上することができる。
【0025】
このように、本実施形態の清掃具200によれば、EPホッパ100の内壁に固着したEP灰140の除去作業を効率よく行うことができる。
【0026】
続いて、清掃具200のより詳細な構成について、図面を参照しつつ説明する。
【0027】
図4は、把持棒300の側面図(把持棒300を最長の状態に伸長した状態を示す側面図)である。同図に示すように、筒体310,320,330は、いずれも円筒形状を呈する。筒体310,320,330の長手方向の長さはいずれも同程度である。筒体310,320,330は、筒体310、筒体320、及び筒体330の順(-Z方向から+方向の順)に径が少しずつ(段階的又は連続的に)細くなるように形成されている。
【0028】
同図に示すように、把持棒300を最長に伸長した状態で最下段(-Z側)に位置する筒体310の上端(+Z側の端部近傍)の内面には、雌ネジ311が形成されている。また、筒体310の下側(-Z側の端部近傍)の互いに対向する面には、アーム410,420の開閉操作に際し、開状態時に後述する取っ手を引っ掛けるための一対の係止孔312(保持部)が、内面から外面へ貫通形成されている。
【0029】
把持棒300を最長に伸長した状態で中段に位置する筒体320は、筒体310の長手方向に沿ってスライド可能な状態で筒体310の内側に挿入されている。筒体320の下端の外面には、筒体310の雌ネジ311と螺合するための雄ネジ321が形成されている。作業者は、筒体310から筒体320を引き出した後、筒体310の雌ネジ311と筒体320の雄ネジ321を螺合することにより、把持棒300を伸長することができる。筒体320の上端の内面には、雌ネジ322が形成されている。
【0030】
把持棒300を最長に伸長した状態で最上段に位置する筒体330は、筒体320の長手方向に沿ってスライド可能な状態で筒体320の内側に挿入されている。筒体330の下端の外面には、筒体320の雌ネジ322と螺合するための雄ネジ331が形成されている。作業者は、筒体320から筒体330を引き出した後、筒体320の雌ネジ322と筒体330の雄ネジ331を螺合することにより、把持棒300を伸長することができる。
【0031】
尚、例えば、筒体320をその径が筒体320の下端ほど太くなるようにテーパ状に構成し、筒体320の外表面と筒体310の内表面との間の摩擦により筒体320を伸長させた状態が維持されるようにしてもよい。その場合、ネジを併用してより確実に筒体320を筒体310に固定するようにしてもよい。同様に、筒体330をその径が筒体330の下端ほど大きくなるようにテーパ状に構成し、筒体330の外表面と筒体320の内表面との間の摩擦により筒体330を伸長させた状態が維持されるようにしてもよい。その場合、ネジを併用してより確実に筒体330を筒体320に固定するようにしてもよい。
【0032】
以上の構造により、清掃具200の把持棒300は、EPホッパ100の側面に設けられている点検口130から清掃具200の全体をEPホッパ100の内部に容易に出し入れすることができる程度の長さまで縮めることができる。また、以上の構造により、作業者は、掻き落とそうとするEP灰140の位置に応じて把持棒300の長さを適切な長さに容易に調節することができ、EPホッパ100の内部の様々な位置に固着しているEP灰140を効率よく掻き落すことができる。
【0033】
図1等に示すように、アーム410,420は、長手方向に沿う折り曲げ線430でL字に折り曲げられた形状を呈し、L字に折れ曲がった先の辺411、421をEPホッパ100の内壁に付着したEP灰140に当てることで、EP灰140を効率よく掻き落とすことができる。尚、アーム410,420の形状や大きさは必ずしも限定されない。EP灰140を効率よく掻き落とすことができるとともに閉じた際に清掃具200の全体をコンパクトにすることが可能な形状や大きさであれば、他の形状や大きさでもよい。例えば、アーム410,420の形状をEPホッパ100の内壁の形状に沿った形状としてもよい。
【0034】
図5A及び
図5Bは、把持棒300の最上段に位置する筒体330の先端部付近の様子を示す図であり、アーム回動部500の構成及び動作を説明する図である。アーム回動部500は、これらの図に示す、ラックとして機能する平板510、一対の円筒型歯車520,530(ピニオン)、操作紐540、及び取っ手550を構成要素として含む。
【0035】
図5Aに示すように、アーム回動部500は、作業者が操作紐540の張力を緩めた際は、その自重により一対のアーム410,420を把持棒300に近づく方向に回動させるように作用する。
【0036】
一方、
図5Bに示すように、作業者が操作紐540を下方に引く操作を行った際は、アーム回動部500は、一対のアーム410,420を把持棒300から遠ざかる方向に回動させるように作用する。
【0037】
図6Aは、アーム回動部500の構成を説明する分解斜視図である。また、
図6Bは、アーム回動部500が把持棒300の内部に組み立てられた状態を示す一部拡大上面図(把持棒300の上端側(
図1の+Z方向)から眺めた図)である。
【0038】
図6Aに示すように、筒体330の先端部は、筒体330の長手方向に沿って2つの半円型筒体330A,330Bに分割されている。
【0039】
平板510は、略四角柱形状を呈し、一方の面に噛合歯511を、他方の面に噛合歯512を夫々有する。また、平板510の長尺側の両側面の中央には、夫々、平板510の長手方向に沿って連続する溝513,514が形成されている。
【0040】
円筒型歯車520の円筒の外周面には噛合歯521が形成されている。円筒型歯車520の中心軸が通る面からは、中心軸と同軸の回動軸522が突出している。円筒型歯車520の噛合歯521は、平板510の噛合歯511と噛合しており、円筒型歯車520は、平板510の上方向又は下方向への移動に伴って回動する。
【0041】
円筒型歯車530の円筒の外周面には、噛合歯531が形成されている。円筒型歯車530の中心軸が通る面からは、中心軸と同軸の回動軸532が突出している。円筒型歯車530の噛合歯531は、平板510の噛合歯512と噛合しており、円筒型歯車530は、平板510の上方向又は下方向への移動に伴って、円筒型歯車520の回動方向とは反対方向に回動する。
【0042】
操作紐540の一端は、平板510の下端に結合されている。操作紐540の平板510に結合されている側とは反対側の他端は、取っ手550と結合されている。これにより、作業者は、取っ手550を下方向に引くことにより、平板510を下方向に移動させることができる。
【0043】
半円型筒体330Aの内面には、アーム回動部500を構成する円筒型歯車520,530を位置決めするための位置決め部331Aが突出して設けられている。位置決め部331Aには、円筒型歯車520,530夫々の一方側の回動軸522,532が回動自在に挿入される径の回動孔332Aが穿設されている。
【0044】
また、半円型筒体330Aの内面には、アーム回動部500を構成する平板510を位置決めするための位置決め部333Aが、半円型筒体330Aの長手方向に沿って突出して設けられている。また、半円型筒体330Aの半円型筒体330Bと対向する結合面334Aには、半円型筒体330Aの長手方向に沿って複数の突片335Aが設けられている。
【0045】
一方、半円型筒体330Bの内面には、円筒型歯車520,530を位置決めするための位置決め部331Bが突出して設けられている。位置決め部331Bには、円筒型歯車520,530夫々の他方側の回動軸522,532が回動自在に挿入される径の回動孔332Bが穿設されている。回動孔332Bは、半円型筒体330Bの外面と内面との間を貫通するように穿設されている。
【0046】
また、半円型筒体330Bの内面には、平板510を位置決めするための位置決め部333Bが、半円型筒体330Bの長手方向に沿って突出して設けられている。
【0047】
また、半円型筒体330Bの半円型筒体330Aと対向する結合面334Bには、半円型筒体330Bの長手方向に沿って複数の突片335Aが圧入される複数の圧入孔335Bが設けられている。
【0048】
続いて、アーム回動部500を筒体330の内側に組み込む手順の一例について説明する。
【0049】
まず、円筒型歯車520,530夫々の一方側の回動軸522,532を、半円型筒体330Aの位置決め部331Aの回動孔332Aに挿入する。
【0050】
続いて、円筒型歯車520,530夫々の他方側の回動軸522,532を、半円型筒体330Bの位置決め部331Bの回動孔332Bに挿入しつつ、半円型筒体330Aの突片335Aを半円型筒体330Bの圧入孔335Bに圧入し、半円型筒体330A,330Bを一体化して筒体330とする。このとき、円筒型歯車520,530の中心軸が通る両側の面は位置決め部331A、331Bで挟まれるため、円筒型歯車520,530は、筒体330の中に位置決めされた状態で回動することとなる。
【0051】
尚、半円型筒体330Bの回動孔332Bからは、円筒型歯車520,530夫々の回動軸522,532が突出した状態となっている。ここで、円筒型歯車520と円筒型歯車530との間の距離は、円筒型歯車520の噛合歯521が平板510の噛合歯511と噛合するとともに、円筒型歯車530の噛合歯531が平板510の噛合歯512と噛合する距離となっている。
【0052】
続いて、半円型筒体330Bから突出している回動軸522,532の夫々に対し、円筒型歯車520,530とともに回動する、例えば、直方体形状の回動体440,450を圧入して固定する。本実施形態では、アーム410,420は、円筒型歯車520,530の回動軸522,532と同軸で回動することとする。そのため、回動体440,450は、回動軸522,532と同軸となっている。
【0053】
続いて、平板510を、筒体310の下側から挿入した後、筒体330の位置決め部333Aが平板510の溝513内を摺動するとともに、筒体330の位置決め部333Bが平板510の溝514内を摺動するように、溝513,514と位置決め部333A,333Bの位置を合わせ、この状態から平板510を押し上げる。これにより、平板510は、円筒型歯車520,530の間に挟まれ、平板510の噛合歯511,512が夫々円筒型歯車520,530の噛合歯521,531と噛合した状態となる。筒体330の筒体310側とは反対側の開口は、蓋で閉じておくようにしてもよい。
【0054】
以上によりアーム回動部500を筒体330の内側に組み込む作業が完了すると、続いて、アーム410,420を回動体440,450に固定する。具体的には、回動体440を、アーム410の端部に形成されている圧入孔412に圧入する。同様に、回動体450を、アーム420の端部に形成されている圧入孔422に圧入する。尚、アーム410,420は、平板510が筒体330の筒体310とは反対側の開口まで移動した位置で、アーム410,420の長手方向が筒体330の長手方向に沿った方向となるように、回動体440,450に固定されている。
【0055】
図5Aに示したように、操作紐540を操作していない状態では、アーム410,420の自重によって円筒型歯車520,530が回動し、アーム410,420の長手方向は、把持棒300の長手方向に沿った方向となる(
図3に示す「閉じた状態」)。また、このとき、平板510は、筒体310から遠い側の筒体330の開口まで移動した状態となる。
【0056】
図5Bに示したように、操作紐540を下方に引ききった状態では、アーム410,420の長手方向は、把持棒300の長手方向に垂直な状態(
図1に示す「開いた状態」)となる。尚、作業者は、この状態で取っ手550を係止孔312(
図1乃至
図3を参照)に引っ掛ける。これにより、平板510は
図5Bに示す位置で停止し、アーム410,420は、把持棒300の長手方向に対して垂直となった位置に固定(「開いた状態」に固定)される。
【0057】
以上のように、清掃具200は、平板510の噛合歯511,512と円筒型歯車520,530の噛合歯521,531の噛合による機構からなるアーム回動部500を有するので、アーム410,420の開閉操作を確実に行うことができるとともに、作業中はアーム410,420を開いた状態に確実に固定することができる。
【0058】
続いて、EPホッパ100の内部を清掃する際に作業者が行う清掃具200の操作について説明する。
【0059】
まず、作業者は、把持棒300が最短の長さになっており、アーム410,420の長手方向が把持棒300の長手方向に沿う方向となっている状態の清掃具200(
図2に示すコンパクトな状態の清掃具200)を、EPホッパ100の点検口130から挿入する。このとき、把持棒300の長さは最短になっているので、作業者は、狭幅の点検口130が支障となることなく、清掃具200をEPホッパ100の内部に挿入することができる。
【0060】
続いて、作業者は、点検口130からEPホッパ100の内部に両手を挿入し、EPホッパ100の内部で筒体310から筒体320を引き出し、筒体310の雌ネジ311と筒体320の雄ネジ321を螺合し、更に、筒体320から筒体330を引き出して、筒体320の雌ネジ322と筒体330の雄ネジ331を螺合する。これにより、把持棒300の長さは、筒体310,320,330の長さを合わせた最長の長さに調節され、EPホッパ100の内部を広範囲に亘ってまんべんなく清掃することが可能となる。
【0061】
図7に、本実施形態の清掃具200を用いてEPホッパ100の内壁に固着したEP灰140の除去作業を行っている様子を示す。同図に示すように、作業者は、把持棒300が最長の長さに調節されるとともに、アーム410,420が把持棒300の長手方向に対して直角となった状態の清掃具200を用いて、EPホッパ100の内部に収納されているEP灰140を掻き落とす。
【0062】
以上に説明したように、本実施形態の清掃具200は、把持棒300を縮めるとともにアーム410,420を閉じることによりコンパクトな大きさにすることができるので、作業者は、清掃具200をEPホッパ100の内部に容易に出し入れすることができ、また、可搬性に優れる。また、本実施形態の清掃具200は、EPホッパ100の内部で開いた状態にすることができる一対のアーム410,420を有するので、作業者は、EPホッパ100の内壁に固着したEP灰140の除去作業を効率よく行うことができる。また、本実施形態の清掃具200は、軽量であるため作業性に優れるとともに、作業時における安全性も向上することができる。
【0063】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【0064】
例えば、以上の実施形態では、清掃具による除去作業の対象がEPホッパ100の内壁に固着したEP灰140である場合を例として説明したが、清掃具による除去作業の対象は必ずしも限定されず、他の種類の構造物の内部に付着した様々な物質の除去に際し広く適用することができる。
【0065】
また、例えば、以上の実施形態では、アーム410,420を開いた状態(把持棒300の長手方向に対して垂直となった状態)で作業者が清掃作業を行うものとして説明したが、アーム410,420を、作業がし易くなるように、例えば、EPホッパ100の内部の形状にあわせて垂直を超えない位置又は垂直を超えた位置で固定できるようにし、その状態で作業者が清掃作業を行えるようにしてもよい。
【0066】
また、例えば、以上の実施形態では、把持棒300の先端付近に一対のアーム410,420を設けたが、アームの数は必ずしも限定されず、例えば、アームの数を一つとしてもよいし3つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0067】
100 EPホッパ
110 上側開口
120 下側開口
130 点検口
140 EP灰
150、200 清掃具
300 把持棒
310,320,330 筒体
311、322 雌ネジ
312 係止孔
321、331 雄ネジ
330A,330B 半円型筒体
331A、333A、331B、333B 位置決め部
332A、332B 回動孔
334A、334B 結合面
335A 突片
335B 圧入孔
400、410,420 アーム
411、421 辺
412、422 圧入孔
430 折り曲げ線
440,450 回動体
500 アーム回動部
510 平板
511,512 噛合歯
513,514 溝
520,530 円筒型歯車
521,531 噛合歯
522,532 回動軸
540 操作紐
550 取っ手