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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170678
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20231124BHJP
   G06F 3/044 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
G06F3/041 595
G06F3/041 580
G06F3/044 124
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082588
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柿木 雄飛
(57)【要約】
【課題】検出領域上の空間における被検出体の動きに応じたジェスチャを検出する構成において、決定操作(決定ジェスチャ)の検出精度を高めることができる検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置は、センサ部10と被検出体Fとの距離Dが第1距離D1th以下である場合に、所定の決定ジェスチャが行われたことを検出する。また、センサ部10と被検出体Fと距離Dが第1距離D1thよりも大きい第2距離D2th以下であり、且つ、第1距離D1thよりも大きく、さらに、被検出体Fの検出領域上の空間における移動速度が所定値以下となった場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【選択図】図6B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極が並ぶ検出領域を有するセンサ部と、
複数の前記電極ごとの検出値に基づき、前記検出領域上の空間における被検出体の動きに応じたジェスチャを検出する検出部と、
を備え、
前記検出部は、
前記センサ部と前記被検出体との距離が第1距離以下である場合に、所定の決定ジェスチャが行われたことを検出し、
前記センサ部と前記被検出体と距離が前記第1距離よりも大きい第2距離以下であり、且つ、前記第1距離よりも大きく、さらに、前記被検出体の前記検出領域上の空間における移動速度が所定値以下となった場合に、前記決定ジェスチャが行われたことを検出する、
検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記センサ部と前記被検出体と距離が前記第2距離以下であり、且つ、前記第1距離よりも大きく、さらに、前記被検出体が前記センサ部から離れる速度が所定値以上となった場合に、前記決定ジェスチャが行われたことを検出する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、
複数の前記電極ごとの検出値に基づき、前記検出領域上の空間における被検出体の空間座標を算出する座標算出部と、
前記空間座標に基づき、前記決定ジェスチャが行われたか否かを判定するジェスチャ判定処理部と、
を備え、
前記座標算出部は、
X方向の座標データを示す第1データと、
X方向に直交するY方向の座標データを示す第2データと、
XY平面に直交するZ方向の座標データを示す第3データと、
を算出し、
前記第3データは、前記センサ部と前記被検出体との距離が近いほど大きくなり、
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記第3データが前記第1距離に対応する第1決定操作判定閾値以上である場合に、前記決定ジェスチャが行われたと判定し、
前記第3データが前記第1決定操作判定閾値未満であり、且つ、前記第2距離に対応する第2決定操作判定閾値以上であり、さらに、XY平面における単位時間当たりの移動量が移動量閾値以下であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさが第1移動量閾値以下である場合に、前記決定ジェスチャが行われたと判定する、
請求項1に記載の検出装置。
【請求項4】
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記第3データが前記第1決定操作判定閾値以下となって前記決定ジェスチャが行われたと判定した後、前記第3データが前記第1決定操作判定閾値から所定のオフセット値を差し引いた値未満となった場合に、前記決定ジェスチャの判定待機状態に移行する、
請求項3に記載の検出装置。
【請求項5】
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記第3データが前記第2決定操作判定閾値以下となって前記決定ジェスチャが行われたと判定した後、前記第3データが前記第1決定操作判定閾値未満の範囲内において最大となった値から前記オフセット値を差し引いた値未満となった場合に、前記判定待機状態に移行する、
請求項4に記載の検出装置。
【請求項6】
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記判定待機状態に移行した後、前記第3データに前記オフセット値を加えた値を前記第2決定操作判定閾値として設定する、
請求項5に記載の検出装置。
【請求項7】
前記第2決定操作判定閾値は、前記第1決定操作判定閾値よりも小さい第2決定操作判定閾値最小値に制限され、
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記判定待機状態に移行した後、前記第3データが前記第2決定操作判定閾値から前記オフセット値を差し引いた値未満となり、且つ、前記第3データに前記オフセット値を加えた値が前記第2決定操作判定閾値最小値未満となった場合に、前記第2決定操作判定閾値を前記第2決定操作判定閾値最小値に制限する、
請求項6に記載の検出装置。
【請求項8】
前記ジェスチャ判定処理部は、
前記第3データが前記第1決定操作判定閾値未満であり、且つ、前記第2決定操作判定閾値以上であり、さらに、Z方向の単位時間当たりの移動量が負値であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさが第2移動量閾値以上である場合に、前記決定ジェスチャが行われたと判定する、
請求項3から7の何れか一項に記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるタッチパネルと呼ばれる、外部近接物体を検出可能な検出装置が液晶表示装置等の表示装置上に装着又は一体化された検出システムが知られている(例えば、特許文献1から特許文献3参照)。このような検出システムにおいて、例えば操作者の手指等の被検出体の検出面への接触を検出するタッチ検出機能に加え、検出面に手指が触れていない状態で、検出領域上の空間における手指の近接状態やジェスチャ等の手指の動きを検出する、所謂ホバー検出機能が注目されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2014/0049486号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0342498号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2014/0049508号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検出領域に重なる表示領域に表示されたボタン等のオブジェクトを選択する等の決定操作(決定ジェスチャ)は、一般に、タッチパネルへのタッチ操作によって実現されるが、近年、衛生面への配慮から、タッチパネルに触れることなく決定操作を実現することが望まれている。ホバー検出機能を用いた決定操作手法として、例えば、被検出体が検出面に近づいた後に離れるといった操作者の手指の動きを検出することが考えられるが、操作のバラツキによって正常に決定操作として判定されない、あるいは、他のジェスチャとして誤判定される可能性がある。
【0005】
本発明は、検出領域上の空間における被検出体の動きに応じたジェスチャを検出する構成において、決定操作(決定ジェスチャ)の検出精度を高めることができる検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る検出装置は、複数の電極が並ぶ検出領域を有するセンサ部と、複数の前記電極ごとの検出値に基づき、前記検出領域上の空間における被検出体の動きに応じたジェスチャを検出する検出部と、を備え、前記検出部は、前記センサ部と前記被検出体との距離が第1距離以下である場合に、所定の決定ジェスチャが行われたことを検出し、前記センサ部と前記被検出体と距離が前記第1距離よりも大きい第2距離以下であり、且つ、前記第1距離よりも大きく、さらに、前記被検出体の前記検出領域上の空間における移動速度が所定値以下となった場合に、前記決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態に係る検出装置の概略構成を示す平面図である。
図2図2は、実施形態に係る検出装置が適用される検出システムの概略断面構成を示す模式図である。
図3図3は、実施形態に係る検出装置の検出部の構成例を示すブロック図である。
図4A図4Aは、検出領域上の空間における被検出体の位置と各電極との位置関係を示す模式図である。
図4B図4Bは、検出領域上の空間における被検出体の空間座標を示す模式図である。
図5図5は、被検出体の空間座標の抽出手法の一例を示す概念図である。
図6A図6Aは、センサ部と被検出体との距離と決定操作との関係について説明する概略図である。
図6B図6Bは、センサ部と被検出体との距離と決定操作との関係について説明する概略図である。
図6C図6Cは、センサ部と被検出体との距離と決定操作との関係について説明する概略図である。
図7図7は、実施形態に係る検出装置におけるジェスチャ判定処理の一例を示すフローチャートである。
図8図8は、図7に示す決定操作判定閾値更新処理の一例を示すサブフローチャートである。
図9図9は、図7に示す空間座標移動速度算出処理の一例を示すサブフローチャートである。
図10図10は、図7に示す決定操作判定処理の一例を示すサブフローチャートである。
図11図11は、図7に示す決定操作待機移行判定閾値更新処理の一例を示すサブフローチャートである。
図12図12は、ジェスチャ判定処理における各種閾値を示す概念図である。
図13図13は、図7に示すジェスチャ判定処理フローによる具体的な動作例の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、開示はあくまで一例にすぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0009】
図1は、実施形態に係る検出装置の概略構成を示す平面図である。図1に示すように、検出装置1は、センサ部10と、検出部20と、を備える。
【0010】
センサ部10は、センサ基板11と、センサ基板11の検出領域AAに設けられる複数の電極12と、複数の各電極12から延びる配線13と、を有する。検出部20は、制御基板21と、検出回路22と、処理回路23と、電源回路24と、インターフェース回路25と、を有する。
【0011】
センサ基板11の検出領域AAは、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)にマトリクス状に並ぶ複数の電極12が設けられた領域である。センサ基板11は、例えば、ガラス基板又は透光性を有するフレキシブルプリント基板(FPC:Flexible Printed Circuits)である。
【0012】
本実施形態に係る検出装置1は、センサ基板11の検出領域AA上の空間に存在する被検出体の位置を検出し、当該被検出体の動きに応じたジェスチャを判定する構成である。本開示において、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)は、検出領域AAにおいて直交する。また、本開示では、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)に直交する方向をDz方向(第3方向)としている。
【0013】
図1に示す例では、Dx方向に5個の電極12が並び、Dy方向に4個の電極12が並ぶ5×4(=20)個の電極12が設けられた例を示したが、センサ基板11の検出領域AAに設けられる電極12の数はこれに限定されない。
【0014】
センサ基板11には、配線基板31を介して制御基板21が電気的に接続される。配線基板31は、例えばフレキシブルプリント基板である。センサ部10の各電極12は、配線基板31を介して、検出部20の検出回路22と接続される。
【0015】
制御基板21には、検出回路22、処理回路23、電源回路24、及びインターフェース回路25が設けられている。制御基板21は、例えばリジット基板である。
【0016】
検出回路22は、センサ基板11から出力される各電極12の検出信号に基づき、各電極12の検出値を生成する。検出回路22は、例えばアナログフロントエンド(AFE:Analog Front End)ICである。
【0017】
処理回路23は、検出回路22から出力される各電極12の検出値に基づき、検出領域AA上において被検出体(例えば、操作者の手指等)が存在する位置を示す空間座標を生成する。処理回路23は、例えばFPGA(Field Programmable Gate Array)等のPLD(Programmable Logic Device)であっても良いし、例えばMCU(Micro Control Unit)であっても良い。
【0018】
電源回路24は、検出回路22及び処理回路23に電源を供給する回路である。
【0019】
インターフェース回路25は、例えばUSBコントローラICであり、処理回路23と検出システムが搭載されるホストデバイスのホストコントローラ(不図示)との間の通信制御を行う回路である。
【0020】
図2は、実施形態に係る検出装置が適用される検出システムの概略断面構成を示す模式図である。
【0021】
検出システム100は、検出装置1と、表示パネル200と、を含む。表示パネル200は、エアギャップAGを介して検出装置1のセンサ部10に対向配置される。検出装置1のセンサ部10は、平面視においてセンサ部10の検出領域AAと表示パネル200の表示領域DAとがDz方向(第3方向)に重なるように配置される。表示パネル200は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)が例示される。表示パネル200は、例えば、有機ELディスプレイ(OLED:Organic Light Emitting Diode)や無機ELディスプレイ(マイクロLED、ミニLED)、透過性を有する表示面に画像を表示させる透明ディスプレイであっても良い。
【0022】
センサ部10は、センサ基板11と、電極12と、シールド14と、カバーガラス15と、を備える。センサ部10は、表示パネル200側から、シールド14、センサ基板11、電極12、カバーガラス15の順に積層される。以下、最上層に設けられるカバーガラス15の表面を、「検出面S」とも称する。なお、検出面Sはカバーガラス15の表面に限定されない。本開示において、検出面Sは、被検出体とのDz方向(第3方向)の距離を定義するための基準面であり、例えば、電極12の表面であっても良い。
【0023】
シールド14は、センサ基板11の表示パネル200側の第1面に設けられている。電極12は、センサ基板11の第1面の裏側の第2面に設けられている。カバーガラス15は、センサ基板11の第2面に接着層OCを介して設けられている。接着層OCは、透光性を有する接着剤が採用されることが望ましい。接着層OCは、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)のように両面粘着性を有する透光性フィルムによって形成されても良い。
【0024】
図3は、実施形態に係る検出装置の検出部の構成例を示すブロック図である。本開示において、検出部20は、検出領域AA上の空間における被検出体の動きに応じた操作(ジェスチャ)を検出する。
【0025】
図3に示すように、検出部20は、信号検出部42と、A/D変換部43と、座標算出部44と、ジェスチャ判定処理部45と、記憶部46と、を備える。信号検出部42及びA/D変換部43は、検出回路22に含まれる。座標算出部44、ジェスチャ判定処理部45、及び記憶部46は、処理回路23に含まれる。
【0026】
信号検出部42は、センサ基板11から出力される各電極12の検出信号Det(n)(nは、1からNまでの自然数、Nは、検出領域AA内の電極数)に基づき、各電極12の出力値Rawdata(n)を生成する。A/D変換部43は、各電極12の出力値をそれぞれサンプリングしてデジタル信号に変換する。
【0027】
座標算出部44は、各電極12の出力値Rawdata(n)に基づき、被検出体が存在する位置の空間座標R(Rx,Ry,Rz)を算出する。
【0028】
ジェスチャ判定処理部45は、座標算出部44によって算出された空間座標R(Rx,Ry,Rz)の変化に応じたジェスチャを判定する。
【0029】
記憶部46には、ジェスチャ判定処理部45の処理において用いられる各種パラメータが格納されている。また、記憶部46には、ジェスチャ判定処理部45の処理の際に生成される各種パラメータが一時記憶される。また、記憶部46は、座標算出部44において算出された空間座標を一時記憶する機能を有している。
【0030】
図4Aは、検出領域上の空間における被検出体の位置と各電極との位置関係を示す模式図である。図4Bは、検出領域上の空間における被検出体の空間座標を示す模式図である。図4A及び図4Bでは、検出領域AA上の空間に被検出体Fが存在する例を示している。
【0031】
図4Aに示すように、検出領域AAの各電極12には、検出領域AA上の空間に存在する被検出体Fと各電極12との距離に応じた静電容量が生じ、当該静電容量に応じた出力値Rawdata(n)が検出回路22によって取得される。
【0032】
処理回路23は、検出回路22によって生成された各電極12の出力値Rawdata(n)を用いて、図4Bに示す検出領域AA上の空間における被検出体Fの位置を示す空間座標R(Rx,Ry,Rz)を抽出する。
【0033】
本開示において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)は、検出面S上の空間に存在する被検出体Fの位置に対応する。空間座標R(Rx,Ry,Rz)は、検出領域AA上におけるDx方向(第1方向)の位置に対応するX方向の第1データRx、検出領域AA上におけるDy方向(第2方向)の位置に対応するY方向の第2データRy、Dx方向(第1方向)及びDy方向(第2方向)に直交するDz方向(第3方向)の位置に対応するZ方向の第3データRzを含む。
【0034】
処理回路23は、ジェスチャ判定処理部45の処理結果、すなわち被検出体Fの検出領域AA上の空間における動きによって判定されたジェスチャを示す指令を、例えばUSBコントローラICであるインターフェース回路25を介してホストデバイスに送信する。ホストデバイスは、処理回路23から送信された指令、すなわちジェスチャ判定処理部45の処理結果に応じた制御を行う。具体的には、後述するジェスチャ判定処理フロー(図7参照)によって送信された決定操作指令に基づき、検出領域AAに重なる表示領域DAに表示されたオブジェクトObj(図12参照)を選択したことによる処理を実行する。ホストデバイス側の処理としては、例えば、選択したオブジェクトObjをドラッグする、さらには、ドラッグしたオブジェクトObjを空間座標R(Rx,Ry,Rz)の遷移に応じて移動させる等の処理を含む態様であっても良い。なお、ホストデバイス側の処理により本開示が限定されるものではない。
【0035】
図5は、被検出体の空間座標の抽出手法の一例を示す概念図である。図5において、横軸は空間座標R(Rx,Ry,Rz)のX方向の第1データRx(検出領域AAにおける被検出体FのDx方向の位置に対応)を示し、縦軸は空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRz(被検出体FのDz方向の位置に対応)を示している。
【0036】
図5に実線で示す算出値は、例えば、各電極12の出力値Rawdata(n)を用いて補間処理を行うことで得られる。図5に示す算出値の算出手法は、補間処理に限定されず、例えば、近似処理を行って算出する態様であっても良い。
【0037】
本開示において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzは、被検出体Fを検出できない場合に「Rz=0」とする。すなわち、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzは、被検出体Fが検出面Sから離れた位置にあるほど小さい値となり、検出面Sに近い位置にあるほど大きい値となる。
【0038】
ここで、後述するジェスチャ判定処理におけるセンサ部10と被検出体Fとの距離と決定操作との関係について、図6A図6B図6Cを参照して説明する。図6A図6B図6Cは、センサ部と被検出体との距離と決定操作との関係について説明する概略図である。以下の説明において、検出領域AA上の空間における被検出体Fの動きに応じた決定操作を「決定ジェスチャ」とも称する。
【0039】
実施形態に係る検出装置1は、図6Aに示すように、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第1距離D1th以下である場合に(D≦D1th)、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0040】
また、実施形態に係る検出装置1は、図6Bに示すように、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第1距離D1thよりも大きい第2距離D2th以下であり、且つ、第1距離D1thよりも大きく(D1th<D≦D2th)、さらに、被検出体Fの検出領域AA上の空間における移動速度(後述する空間座標R(Rx,Ry,Rz)のXY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxy、Z方向の単位時間当たりの移動量ΔRzに対応)が所定値(後述する空間座標R(Rx,Ry,Rz)のXY平面における移動量閾値ΔRxy_th、Z方向の第1移動量閾値ΔRz_th1に対応)以下となった場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。すなわち、センサ部10の検出面Sから第2距離D2thよりも近く第1距離D1thよりも遠い位置で被検出体Fが静止していると見做せる場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0041】
また、実施形態に係る検出装置1は、図6Cに示すように、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第2距離D2th以下であり、且つ、第1距離D1thよりも大きく(D1th<D≦D2th)、さらに、被検出体Fがセンサ部10の検出面SからDz方向(第3方向)に離れる速度、すなわち、被検出体Fが図6Cに示す矢示方向に移動する速度(後述する空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の単位時間当たりの負値の移動量ΔRzの大きさ|ΔRz|に対応)が所定値(後述する空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第2移動量閾値ΔRz_th2に対応)以上となった場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。すなわち、センサ部10の検出面Sから第2距離D2thよりも近く第1距離D1thよりも遠い位置から被検出体Fが所定速度以上で離れていると見做せる場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0042】
これにより、被検出体Fの移動速度に制限を加えつつ、決定操作範囲を拡大することができ、決定操作(決定ジェスチャ)の検出精度を高めることができる。
【0043】
以下、実施形態に係る検出装置1におけるジェスチャ判定処理の具体例について、図7図8図9図10図11、及び図12を参照して説明する。図7は、実施形態に係る検出装置におけるジェスチャ判定処理の一例を示すフローチャートである。図8は、図7に示す決定操作判定閾値更新処理の一例を示すサブフローチャートである。図9は、図7に示す空間座標移動速度算出処理の一例を示すサブフローチャートである。図10は、図7に示す決定操作判定処理の一例を示すサブフローチャートである。図11は、図7に示す決定操作待機移行判定閾値更新処理の一例を示すサブフローチャートである。図12は、ジェスチャ判定処理における各種閾値を示す概念図である。
【0044】
本実施形態では、図12に示すように、検出領域AAに重なる表示領域DAに表示されたオブジェクトObjを選択する決定ジェスチャについて説明する。図7に示すジェスチャ判定処理フローを実行するためのパラメータとして、記憶部46には、図12に示す第1決定操作判定閾値Sel_th1(図6A,6B,6Cに示す第1距離D1thに対応)、第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min、オフセット値Cont_rangeが格納されている。第1決定操作判定閾値Sel_th1、第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minは、被検出体FのDz方向の位置、すなわち、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzに対する設定値である。また、オフセット値Cont_rangeは、ジェスチャ判定処理の各処理において、第2決定操作判定閾値Sel_th2(図6A,6B,6Cに示す第2距離D2thに対応)や決定操作待機判定閾値Rel_thを算出する際に適用される。
【0045】
ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャの判定待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1以上となると、決定ジェスチャが行われたと判定し(図7に示すジェスチャ判定処理フローのステップS101~ステップS108)、解除待機状態に移行する。決定操作判定後の解除待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値未満となると(図7に示すステップS109~ステップS113)、判定待機状態に移行する。
【0046】
また、ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャの判定待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上であり、且つ、第1決定操作判定閾値Sel_th1未満である場合に、検出領域AA内の空間における空間座標R(Rx,Ry,Rz)の移動速度が所定値以下となるか、又は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzのマイナス方向の移動速度が所定値以上となると、決定ジェスチャが行われたと判定し(図7に示すジェスチャ判定処理フローのステップS101~ステップS108)、解除待機状態に移行する。決定操作判定後の解除待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上第1決定操作判定閾値Sel_th1未満の範囲において最大となった位置からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値未満となると(図7に示すステップS109~ステップS113)、判定待機状態に移行する。
【0047】
図7に示すジェスチャ判定処理フローの前提条件として、記憶部46には、前処理(後述するステップS103、ステップS106、ステップS111、ステップS113)における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)の第1データRx’、第2データRy’、第3データRz’、第2決定操作判定閾値Sel_th2、及び決定操作待機判定閾値Rel_thが一時記憶されている。まず、処理回路23のジェスチャ判定処理部45は、図8に示す決定操作閾値更新処理を実行する(図7のステップS101)。
【0048】
ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャの判定待機状態において、記憶部46から前処理における第3データRz’を読み出し、前処理における第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値未満(Rz’<Sel_th2-Cont_range)であるか否かを判定する(ステップS201)。
【0049】
前処理における第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以上(Rz’≧Sel_th2-Cont_range)である場合(ステップS201;No)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0050】
前処理における第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値未満(Rz’<Sel_th2-Cont_range)である場合(ステップS201;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、第2決定操作判定閾値Sel_th2を前処理における第3データRz’にオフセット値Cont_rangeを加えた値とし(Sel_th2=Rz’+Cont_range)(ステップS202)、続いて、第2決定操作判定閾値Sel_th2が第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min未満(Sel_th2<Sel_th2_min)であるか否かを判定する(ステップS203)。
【0051】
第2決定操作判定閾値Sel_th2が第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上(Sel_th2≧Sel_th2_min)である場合(ステップS203;No)、ステップS202において算出した第2決定操作判定閾値Sel_th2を記憶部46に一時記憶し、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0052】
第2決定操作判定閾値Sel_th2が第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min未満(Sel_th2<Sel_th2_min)である場合(ステップS203;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minを第2決定操作判定閾値Sel_th2として記憶部46に一時記憶し(ステップS204)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0053】
図7に戻り、ジェスチャ判定処理部45は、座標算出部44から空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得処理を実行し(ステップS102)、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得可否を判定する(ステップS103)。空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得できなかった場合(ステップS103;No)、ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)を、X方向の第1データRx’=0、Y方向の第2データRy’=0、Z方向の第3データRz’=0として記憶部46に一時記憶し、ステップS101の決定操作閾値更新処理(図8)に戻る。
【0054】
空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得すると(ステップS103;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、図9に示す空間座標移動速度算出処理を実行する(図7のステップS104)。
【0055】
ジェスチャ判定処理部45は、記憶部46から前処理における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)のX方向の第1データRx’、Y方向の第2データRy’、Z方向の第3データRz’を読み出し、前処理における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)がX方向の第1データRx’=0、Y方向の第2データRy’=0、Z方向の第3データRz’=0であるか否かを判定する(ステップS301)。ここで、前処理における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)がX方向の第1データRx’=0、Y方向の第2データRy’=0、Z方向の第3データRz’=0である場合、前処理において空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得できなかった(ステップS103;No)ことを示している。
【0056】
前処理における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)がX方向の第1データRx’=0、Y方向の第2データRy’=0、Z方向の第3データRz’=0でない場合(ステップS301、No)、言い換えると、前処理において空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得した場合(ステップS103;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、Dx-Dy平面における移動速度及びDz方向の移動速度を算出して(ステップS302)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0057】
なお、Dx-Dy平面における移動速度は、換言すれば、XY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyであり、Dz方向の移動速度は、換言すれば、Z方向の単位時間当たりの移動量ΔRzである。図9では、下記(1)式に示すように、Dx-Dy平面における移動速度として、XY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyを算出し、下記(2)式に示すように、Dz方向の移動速度として、Z方向の単位時間当たりの移動量ΔRzを算出する例を示している。本開示において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得処理は、A/D変換部43におけるサンプリング周期で実行される態様であっても良いし、複数サンプリング周期ごとに空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得する態様であっても良い。空間座標R(Rx,Ry,Rz)は、所定周期で取得される態様であれば良く、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得周期により本開示が限定されるものではない。
【0058】
ΔRxy=√{(Rx-Rx’)+(Ry-Ry’)}・・・(1)
【0059】
ΔRz=Rz-Rz’・・・(2)
【0060】
前処理における空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)がX方向の第1データRx’=0、Y方向の第2データRy’=0、Z方向の第3データRz’=0である場合(ステップS301、Yes)、言い換えると、前処理において空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得できなかった場合(ステップS103;No)、ジェスチャ判定処理部45は、XY平面における移動量ΔRxy=0、Z方向の移動量ΔRz=0とし(ステップS303)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0061】
続いて、ジェスチャ判定処理部45は、図10に示す決定操作判定処理を実行する(図7のステップS105)。
【0062】
ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1以上(Rz≧Sel_th1)であるか否かを判定する(ステップS401)。第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1以上(Rz≧Sel_th1)である場合(ステップS401;Yes)、決定ジェスチャが行われたものとして(ステップS402)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0063】
第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1未満(Rz<Sel_th1)である場合(ステップS401;No)、続いて、ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値Sel_th2以上(Rz≧Sel_th2)であるか否かを判定する(ステップS403)。空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値Sel_th2未満(Rz<Sel_th2)である場合(ステップS403;No)、ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャが行われていないものとして(ステップS404)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0064】
第3データRzが第2決定操作判定閾値Sel_th2以上(Rz≧Sel_th2)である場合(ステップS403;Yes)、続いて、ジェスチャ判定処理部45は、XY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyがXY平面における移動量閾値ΔRxy_th以下であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第1移動量閾値ΔRz_th1以下であるか否か(ΔRxy≦ΔRxy_th and |ΔRz|≦ΔRz_th1)を判定する(ステップS405)。
【0065】
XY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyがXY平面における移動量閾値ΔRxy_th以下であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第1移動量閾値ΔRz_th1以下である場合(ΔRxy≦ΔRxy_th and |ΔRz|≦ΔRz_th1)(ステップS405;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャが行われたものとして(ステップS402)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0066】
XY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyがXY平面における移動量閾値ΔRxy_thより大きいか、又は、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第1移動量閾値ΔRz_th1より大きい場合(ΔRxy>ΔRxy_th or |ΔRz|>ΔRz_th1)(ステップS405;No)、続いて、ジェスチャ判定処理部45は、Z方向の単位時間当たりの移動量が負値であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第2移動量閾値ΔRz_th2以上であるか否か(ΔRz<0 and |ΔRz|≧ΔRz_th2)を判定する(ステップS406)。
【0067】
Z方向の単位時間当たりの移動量が負値であり、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第2移動量閾値ΔRz_th2以上である場合(ΔRz<0 and |ΔRz|≧ΔRz_th2)(ステップS406;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、決定ジェスチャが行われたものとして(ステップS402)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0068】
Z方向の単位時間当たりの移動量が正値であるか、又は、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|がZ方向の第2移動量閾値ΔRz_th2未満である場合(ΔRz>0 or |ΔRz|<ΔRz_th2)(ステップS406;No)、決定ジェスチャが行われていないものとして(ステップS404)、ジェスチャ判定処理部45は、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0069】
図7に戻り、ジェスチャ判定処理部45は、図10に示す決定操作判定処理結果を判定する(ステップS106)。
【0070】
決定ジェスチャが行われていない場合(ステップS106;No)、ジェスチャ判定処理部45は、ステップS102において取得した空間座標R(Rx,Ry,Rz)を、空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)として記憶部46に一時記憶し、ステップS101の決定操作閾値更新処理(図8)に戻る。
【0071】
決定ジェスチャが行われた場合(ステップS106;Yes)、処理回路23は、決定ジェスチャが行われたことを示す決定操作指令を、例えばUSBコントローラICであるインターフェース回路25を介してホストデバイスに送信する。
【0072】
続いて、ジェスチャ判定処理部45は、決定操作待機判定閾値Rel_thを設定する。具体的に、ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値を、決定操作待機判定閾値Rel_thとして設定して(Rel_th=Rz-Cont_range)(ステップS108)、解除待機状態に移行し、図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理を実行する(図7のステップS109)。
【0073】
決定操作判定後の解除待機状態において、ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値より大きいか否か(Rz>Rel_th-Cont_range)を判定する(ステップS501)。
【0074】
第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値以下(Rz≦Rel_th-Cont_range)である場合(ステップS501;No)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0075】
第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値より大きい(Rz>Rel_th-Cont_range)場合(ステップS501;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、決定操作待機判定閾値Rel_thを第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値とし(Rel_th=Rz-Cont_range)(ステップS502)、続いて、決定操作待機判定閾値Rel_thが第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値より大きいか否か(Rel_th>Sel_th1-Cont_range)を判定する(ステップS503)。
【0076】
決定操作待機判定閾値Rel_thが第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以下(Rel_th≦Sel_th1-Cont_range)である場合(ステップS503;No)、ステップS502において算出した決定操作待機判定閾値Rel_thを記憶部46に一時記憶し、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0077】
決定操作待機判定閾値Rel_thが第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値より大きい(Rel_th>Sel_th1-Cont_range)場合(ステップS503;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値を決定操作待機判定閾値Rel_thとして記憶部46に一時記憶し(ステップS504)、図7に示すジェスチャ判定処理フローに戻る。
【0078】
図7に戻り、ジェスチャ判定処理部45は、座標算出部44から空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得処理を実行し(ステップS110)、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の取得可否を判定する(ステップS111)。空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得できなかった場合(ステップS111;No)、ジェスチャ判定処理部45は、空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)を、第1データRx’=0、第2データRy’=0、第3データRz’=0として記憶部46に一時記憶し、ステップS101の決定操作閾値更新処理(図8)に戻る。
【0079】
空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得すると(ステップS111;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、取得した第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thより小さいか否か(Rz<Rel_th)を判定する(ステップS112)。第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_th以上(Rz≧Rel_th)である場合(ステップS112;No)、ステップS109の決定操作待機判定閾値更新処理(図11)に戻る。
【0080】
第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thより小さい(Rz<Rel_th)場合(ステップS112;Yes)、ジェスチャ判定処理部45は、第3データRzにオフセット値Cont_rangeを加えた値を第2決定操作判定閾値Sel_th2とし(ステップS113)、ステップS111において取得した空間座標R(Rx,Ry,Rz)を、空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)として記憶部46に一時記憶して、決定ジェスチャの判定待機状態に移行し、ステップS101の決定操作閾値更新処理(図8)に戻る。
【0081】
上述したジェスチャ判定処理フローにより、決定ジェスチャの判定待機状態において、第2決定操作判定閾値Sel_th2として取り得る範囲Sel_th2_rangeは、図12に示すように、第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上であり、且つ、第1決定操作判定閾値Sel_th1以下の範囲(Sel_th2_min≦Sel_th2≦Sel_th1)となる。この第2決定操作判定閾値Sel_th2として取り得る範囲Sel_th2_range内において、被検出体Fの移動速度(空間座標R(Rx,Ry,Rz)の単位時間当たりの移動量)が所定値以下となるか(図10に示す決定操作判定処理のステップS405;Yes)、又は、被検出体FのDz方向の負の移動速度(空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzのマイナス方向の単位時間当たりの移動量)が所定値以上となると(図10に示す決定操作判定処理のステップS406;Yes)、決定ジェスチャが行われたと判定される。
【0082】
そして、決定操作判定後の解除待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値よりも大きい値であるとき(図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理のステップS501;Yes)、第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値が決定操作待機判定閾値Rel_th(Rel_th=Rz-Cont_range)とされる(図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理のステップS502)。
【0083】
また、決定操作判定後の解除待機状態において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1以下となったとき(図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理のステップS503;Yes)、第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値が決定操作待機判定閾値Rel_th(Rel_th=Sel_th1-Cont_range)とされる(図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理のステップS504)。
【0084】
これにより、決定操作待機判定閾値Rel_thとして取り得る範囲Rel_th_rangeは、図12に示すように、第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以上であり、且つ、第1決定操作判定閾値Sel_th1からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以下の範囲(Sel_th2_min-Cont_range≦Rel_th≦Sel_th1-Cont_range)となる。
【0085】
以上のジェスチャ判定処理フローによる具体的な動作例について、図13を参照して詳細に説明する。図13は、図7に示すジェスチャ判定処理フローによる具体的な動作例の一例を示すタイミングチャートである。
【0086】
図13に示す例では、時刻t0において空間座標R(Rx,Ry,Rz)を取得できたことを示している(ステップS103;Yes)。そして、時刻t1において空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minを下回り、時刻t2において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の単位時間当たりの移動量)が所定値以下となり(図10に示す決定操作判定処理のステップS405;Yes)、決定ジェスチャが行われたと判定される(ステップS402)。このとき、決定操作待機判定閾値Rel_thは、第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値(Rel_th=Rz-Cont_range)に設定され(ステップS108)、解除待機状態に移行する。
【0087】
その後の時刻t3までの期間は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値以下(図11に示す決定操作待機判定閾値更新処理のステップS501;No)であるので、決定操作待機判定閾値Rel_thは更新されない。時刻t3において第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値を下回ると(ステップS501;Yes)、時刻t4までの期間において、第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値が決定操作待機判定閾値Rel_th(Rel_th=Rz-Cont_range)として設定される(ステップS502)。
【0088】
その後の時刻t5までの期間は、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thにオフセット値Cont_rangeを加えた値以下(ステップS501;No)であるので、決定操作待機判定閾値Rel_thは更新されない。時刻t5において第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thを下回ると(ステップS112;Yes)、決定ジェスチャの判定待機状態に移行して、第3データRzにオフセット値Cont_rangeを加えた値が第2決定操作判定閾値Sel_th2(Sel_th2=Rz-Cont_range)として設定され(ステップS113)、判定待機状態に移行する。
【0089】
時刻t6において、ステップS103で一時記憶された空間座標R’(Rx’,Ry’,Rz’)の第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値を下回ると(Rz’<Sel_th2-Cont_range、図8に示す決定操作閾値更新処理のステップS201;Yes)、その後の時刻t7までの期間は、第3データRz’にオフセット値Cont_rangeを加えた値(Sel_th2=Rz’+Cont_range、ステップS202)が第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minを下回ることとなり(Sel_th2<Sel_th2_min、ステップS203;Yes)、第2決定操作判定閾値Sel_th2が第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minに設定される(ステップS204)。さらに、その後の時刻t9までの期間は、ステップS103において一時記憶された第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以上となるので(Rz’≧Sel_th2-Cont_range、ステップS201;No)、第2決定操作判定閾値Sel_th2は第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minのまま更新されない。
【0090】
時刻t8において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_minを下回り、その後の時刻t9までの期間において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)の単位時間当たりの移動量が所定値より大きく(図10に示す決定操作判定処理のステップS405;No)、且つ、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzのマイナス方向の単位時間当たりの移動量)が所定値未満(ステップS406;No)である状態を維持したまま、時刻t9において第1決定操作判定閾値Sel_th1を下回ると(ステップS401;Yes)、決定ジェスチャが行われたと判定される(ステップS402)。このとき、決定操作待機判定閾値Rel_thは、第3データRzからオフセット値Cont_rangeを差し引いた値(Rel_th=Rz-Cont_range)に設定され(ステップS108)、解除待機状態に移行する。
【0091】
その後の時刻t12までの期間は、ステップS103において一時記憶された第3データRz’が第2決定操作判定閾値Sel_th2からオフセット値Cont_rangeを差し引いた値以上となるので、(Rz’≧Sel_th2-Cont_range、ステップS201;No)、決定操作待機判定閾値Rel_thは更新されない。すなわち、第1決定操作判定閾値Sel_th1を下回った時刻t9から時刻t12までの間の時刻t10において第1決定操作判定閾値Sel_th1を上回った場合に、決定ジェスチャの判定待機状態に移行することなく、その後の時刻t11において第1決定操作判定閾値Sel_th1を下回った場合でも、決定ジェスチャが行われたと判定されない。
【0092】
その後の時刻t12において、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが決定操作待機判定閾値Rel_thを下回ると(ステップS113;Yes)、決定ジェスチャの判定待機状態に移行して、第3データRzにオフセット値Cont_rangeを加えた値が第2決定操作判定閾値Sel_th2(Sel_th2=Rz-Cont_range)として設定され(ステップS113)、判定待機状態に移行する。
【0093】
このように、実施形態に係るジェスチャ判定処理フローによれば、検出領域AA上の空間における被検出体Fの位置を示す空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第1決定操作判定閾値Sel_th1以上である場合に、決定ジェスチャが行われたと判定する。
【0094】
また、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上であり、且つ、第1決定操作判定閾値Sel_th1未満である場合に、検出領域AA内の空間における空間座標R(Rx,Ry,Rz)のXY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxyが移動量閾値ΔRxy_th以下(ΔRxy≦ΔRxy_th)、且つ、Z方向の移動量ΔRzが第1移動量閾値ΔRz_th1以下(|ΔRz|≦ΔRz_th1)となると、決定ジェスチャが行われたと判定する。
【0095】
また、空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第3データRzが第2決定操作判定閾値最小値Sel_th2_min以上であり、且つ、第1決定操作判定閾値Sel_th1未満である場合に、Z方向の単位時間当たりの移動量ΔRzが負値(ΔRz<0)、且つ、Z方向の単位時間当たりの移動量の大きさ|ΔRz|が第2移動量閾値ΔRz_th2以上(|ΔRz|≧ΔRz_th2)となると、決定ジェスチャが行われたと判定する。
【0096】
言い換えると、実施形態に係る検出装置1は、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第1決定操作判定閾値Sel_th1に対応する第1距離D1th以下である場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0097】
また、実施形態に係る検出装置1は、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第2決定操作判定閾値Sel_th2に対応する第2距離D2th以下であり、且つ、第1距離D1thよりも大きく、さらに、被検出体Fの検出領域AA上の空間における移動速度(空間座標R(Rx,Ry,Rz)のXY平面における単位時間当たりの移動量ΔRxy、Z方向の単位時間当たりの移動量ΔRzに対応)が所定値(空間座標R(Rx,Ry,Rz)のXY平面における移動量閾値ΔRxy_th、Z方向の第1移動量閾値ΔRz_th1に対応)以下となった場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0098】
また、実施形態に係る検出装置1は、センサ部10の検出面Sと被検出体FとのDz方向(第3方向)の距離Dが、第2距離D2th以下であり、且つ、第1距離D1thよりも大きく、さらに、被検出体Fがセンサ部10の検出面SからDz方向(第3方向)に離れる速度(空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の単位時間当たりの負値の移動量ΔRzの大きさ|ΔRz|に対応)が所定値(空間座標R(Rx,Ry,Rz)のZ方向の第2移動量閾値ΔRz_th2に対応)以上となった場合に、決定ジェスチャが行われたことを検出する。
【0099】
これにより、被検出体Fの移動速度に制限を加えつつ、決定操作範囲を拡大することができ、決定ジェスチャの検出精度を高めることができる。
【0100】
以上、本開示の好適な実施の形態を説明したが、本開示このような実施の形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本開示の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本開示の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0101】
1 検出装置
10 センサ部
11 センサ基板
12 電極
13 配線
14 シールド
15 カバーガラス
20 検出部
21 制御基板
22 検出回路
23 処理回路
24 電源回路
25 インターフェース回路
31 配線基板
42 信号検出部
43 A/D変換部
44 座標算出部
45 ジェスチャ判定処理部
46 記憶部
200 表示パネル
AA 検出領域
AG エアギャップ
DA 表示領域
F 被検出体
OC 接着層
Rx,Rx’ 第1データ
Ry,Ry’ 第2データ
Rz,Rz’ 第3データ
S 検出面
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
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図13