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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170680
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】バルブの弁棒およびバルブ
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
F16K5/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082590
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100179947
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 晃太郎
(72)【発明者】
【氏名】船瀬 忠明
【テーマコード(参考)】
3H054
【Fターム(参考)】
3H054AA03
3H054BB24
3H054CD11
3H054CE03
3H054EE04
3H054GG02
(57)【要約】
【課題】樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有した、バルブの弁棒およびバルブを提供する。
【解決手段】弁棒1は、軸線O1の周りを延在するとともに環状シール部材14を収容可能な環状溝2を備える。弁棒1は、軸線方向一方側の端部1aに弁体12を取り付けることができ、軸線方向他方側の端部1bに操作部13を取り付けることができる。弁棒1は、樹脂によって形成されており、環状溝2よりも操作部取付側に、軸線O1の周りを延在するとともに径方向内側に凹んだ脆弱部3を備える。バルブ10は、内部流路R1を備えるバルブ本体11と、内部流路1Rに配置される弁体12と、弁体12を操作するための操作部13と、弁棒1と、弁棒1に取り付けられる環状シール部材12と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線の周りを周方向に延在するとともに環状シール部材を収容可能な環状溝を備えており、軸線方向一方側の端部にバルブの弁体を取り付けることができ、軸線方向他方側の端部に操作部を取り付けることができる、バルブの弁棒であって、
前記弁棒は、樹脂によって形成されており、かつ、
前記弁棒は、前記環状溝よりも操作部取付側に、前記軸線の周りを周方向に延在するとともに径方向内側に凹んだ脆弱部を備えている、バルブの弁棒。
【請求項2】
前記脆弱部の最深部は、当該脆弱部において、前記脆弱部の環状溝側端よりも当該脆弱部の操作部取付側端に近い位置に配置されている、請求項1に記載された、バルブの弁棒。
【請求項3】
前記脆弱部の2つの側面のうち、当該脆弱部の操作部取付側側面は、軸線方向に対して垂直な面である、請求項2に記載された、バルブの弁棒。
【請求項4】
前記脆弱部の最深部は、前記環状溝の最深部よりも深い、請求項1~3のいずれか1項に記載された、バルブの弁棒。
【請求項5】
前記脆弱部の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該脆弱部の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっている、請求項1に記載された、バルブの弁棒。
【請求項6】
前記環状溝の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該環状溝の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっている、請求項1に記載された、バルブの弁棒。
【請求項7】
前記脆弱部の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該脆弱部の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっており、
前記環状溝の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該環状溝の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっており、
前記脆弱部の前記曲面の曲率半径は、前記環状溝の前記曲面の曲率半径よりも小さい、 請求項1に記載された、バルブの弁棒。
【請求項8】
内部流路を備えるバルブ本体と、前記内部流路に配置される弁体と、前記弁体を操作するための操作部と、前記弁体と前記操作部との間に配置された請求項1に記載されたバルブの弁棒と、前記弁棒に取り付けられる環状シール部材と、を備える、バルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブの弁棒およびバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のバルブには、バルブ本体に設けられた内部流路に配置された弁体を操作部によって操作するために弁棒を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-145219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記弁棒は、金属によって形成することが一般的である。その一方で、前記弁棒は、金属に代えて樹脂によって形成することも可能である。
【0005】
しかしながら、前記弁棒を樹脂によって形成した場合、当該弁棒の強度を低下させる虞がある。そのため、樹脂によって形成された弁棒には、樹脂化に伴って生じ得る問題に対するフェールセーフ機能を付加することが好ましい。
【0006】
本発明の目的は、バルブの弁棒の樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有した、バルブの弁棒およびバルブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る、バルブの弁棒は、軸線の周りを周方向に延在するとともに環状シール部材を収容可能な環状溝を備えており、軸線方向一方側の端部にバルブの弁体を取り付けることができ、軸線方向他方側の端部に操作部を取り付けることができる、バルブの弁棒であって、前記弁棒は、樹脂によって形成されており、かつ、前記弁棒は、前記環状溝よりも操作部取付側に、前記軸線の周りを周方向に延在するとともに径方向内側に凹んだ脆弱部を備えている。本発明に係る、バルブの弁棒によれば、当該弁棒は、樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0008】
(2)上記(1)の、バルブの弁棒において、前記脆弱部の最深部は、当該脆弱部において、前記脆弱部の環状溝側端よりも当該脆弱部の操作部取付側端に近い位置に配置されていることが好ましい。この場合、弁棒は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0009】
(3)上記(2)の、バルブの弁棒において、脆弱部の2つの側面のうち、当該脆弱部の操作部取付側側面は、軸線方向に対して垂直な面であることが好ましい。この場合、弁棒は、より一層信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0010】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの、バルブの弁棒において、前記脆弱部の最深部は、前記環状溝の最深部よりも深いことが好ましい。この場合、弁棒は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0011】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの、バルブの弁棒において、前記脆弱部の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該脆弱部の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっていることが好ましい。この場合、過度な外力で破損するという脆弱部の機能を確保しつつ、通常使用時には当該脆弱部が容易に破損しないようにすることができる。
【0012】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの、バルブの弁棒において、前記環状溝の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該環状溝の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっていることが好ましい。この場合、弁棒は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0013】
(7)上記(1)~(4)のいずれかの、バルブの弁棒において、前記脆弱部の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該脆弱部の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっており、前記環状溝の2つの側面のうちの少なくともいずれか一方と当該環状溝の最深部とは、内側に向かって凹んだ曲面によって連なっており、前記脆弱部の前記曲面の曲率半径は、前記環状溝の前記曲面の曲率半径よりも小さいことが好ましい。この場合、弁棒は、より一層信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0014】
(8)本発明に係る、バルブは、内部流路を備えるバルブ本体と、前記内部流路に配置される弁体と、前記弁体を操作するための操作部と、前記弁体と前記操作部との間に配置された上記(1)~(7)のいずれかの、バルブの弁棒と、前記弁棒に取り付けられる環状シール部材と、を備える。本発明に係る、バルブによれば、当該バルブは、弁棒の樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、バルブの弁棒の樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有した、バルブの弁棒およびバルブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る、バルブの弁棒を備えた、本発明の一実施形態に係る、バルブを概略的に示す断面図である。
図2図1の弁棒の正面図である。
図3図1の弁棒の側面図である。
図4図3の領域Aを拡大して示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る、バルブの弁棒およびバルブについて説明をする。
【0018】
図1中、符号10は、本発明の一実施形態に係る、バルブである。図1は、X―Y軸線を含む断面で示されている。本開示において、X軸線は、バルブ10の中心軸線である。また、本開示において、Y軸線は、X軸線に対して直交している。
【0019】
バルブ10は、内部流路1Rを備えるバルブ本体11と、内部流路1Rに配置される弁体12と、弁体12を操作するための操作部13と、弁体12と操作部13との間に配置された、本発明の一実施形態に係る、弁棒1と、当該弁棒1に取り付けられる環状シール部材14と、を備えている。
【0020】
本開示において、バルブ本体11は、第1バルブ本体部11aと、第2バルブ本体部11bとを備えている。
【0021】
第1バルブ本体部11aは、操作側部材である。第1バルブ本体部11aは、例えば、2つの配管(図示省略)の一方を接続可能な接続部11Cを備えている。本開示において、接続部11Cは、おねじ部によって形成されている。また、第1バルブ本体部11aは、第2バルブ本体部11bに結合させるための結合部11Dを備えている。本開示において、結合部11Dは、めねじ部によって形成されている。さらに、第1バルブ本体部11aの内部には、内部流路1Rの一方側を形成する第1内部流路1Raが形成されている。第1内部流路1Raは、X軸線に沿って延在する貫通穴である。第1内部流路1Raの一方側開口部は、接続部11Cの軸線方向端に開口している。また、第1内部流路1Raの他方側開口部は、結合部11Dの軸線方向端に開口している。加えて、第1バルブ本体部11aの内部には、第1内部流路1Raに通じる弁棒貫通穴1Hが形成されている。弁棒貫通穴1Hは、Y軸線に沿って延在している。
【0022】
第2バルブ本体部11bは、継手側部材である。第2バルブ本体部11bは、例えば、前記2つの配管の他方を接続可能な継手40を備えている。また、第2バルブ本体部11bは、第1バルブ本体部11aに結合させるための結合部11Eを備えている。本開示において、結合部11Eは、結合部11Dと結合させることができるおねじ部によって形成されている。本開示において、第1バルブ本体部11aの結合部11Dと第2バルブ本体部11bの結合部11Eとの間は、例えば、Оリング15によってシールされている。さらに、第2バルブ本体部11bの内部には、内部流路1Rの他方側を形成する第2内部流路1Rbが形成されている。第2内部流路1Rbは、X軸線に沿って延在する貫通穴である。第2内部流路1Rbの一方側開口部は、結合部11Eの軸線方向端に開口している。また、第2内部流路1Rbの他方側開口部は、継手40の側の、当該第2内部流路1Rbの軸線方向端に開口している。
【0023】
継手40は、第2バルブ本体部11bをX軸線の周りで包囲して当該第2バルブ本体部11bに固定される筒状のカバー部材41と、当該カバー部材41の先端側部分をX軸線の周りで包囲して当該カバー部材41に固定されるリング部材42とを備えている。加えて、継手40は、カバー部材41とリング部材42との間に、ロックリング43を備えている。ロックリング43は、当該ロックリング43と第2バルブ本体部11bとの間に挿入された前記他方の配管に引っ掛かって、当該配管を抜け止め保持する。さらに、継手40は、解放リング44を備えている。解放リング44は、リング部材42の内周面に、X軸線に沿ってスライド可能に保持されている。解放リング44は、X軸線に沿ってバルブ本体11の内部に押し込まれることでロックリング43を押圧し、前記他方の配管に対するロックリング43の引っ掛かりを解除することができる。なお、本開示において、第2バルブ本体部11bには、当該第2バルブ本体部11bと継手40との間に接続された前記他方の配管の内周面を、第2バルブ本体部11bの外周面に対して気密又は液密に封止するための、Оリング16が取り付けられている。
【0024】
弁体12は、弁棒1の軸線方向一方側の端部1aに取り付けられている。本開示において、弁体12は、ボールである。弁体12の内部には、第1内部流路1Raと第2内部流路1Rbとを連通させる第3内部流路1Rcが形成されている。第3内部流路1Rcは、ボールの内部に形成された貫通穴である。第3内部流路1Rcは、第1内部流路1Raと第2内部流路1Rbとともに内部流路1Rを形成する。弁体12は、Y軸線の周りを周方向に回転させることによって、第1内部流路1Raと第2内部流路1Rbとの間を開閉させることができる。即ち、本開示において、バルブ10は、いわゆるボールバルブである。
【0025】
さらに、本開示において、バルブ本体11は、2つのボールシート17を備えている。ボールシート17は、X軸線方向において、弁体12の両側に配置されている。2つのボールシート17はそれぞれ、弁体12をY軸線の周りを周方向に回転可能に保持している。2つのボールシート17にはそれぞれ、第1内部流路1Ra又は第2内部流路1Rbと、第3内部流路1Rcと、を連通可能な第4内部流路1Rdが形成されている。第4内部流路1Rdは、ボールシート17を貫通する貫通穴である。本開示において、第4内部流路1Rdは、第1内部流路1Ra、第2内部流路1Rbおよび第3内部流路1Rcとともに内部流路1Rを形成する。
【0026】
操作部13は、弁棒1の軸線方向他方側の端部1bに取り付けられている。本開示において、操作部13は、把持部13aを備えるハンドルである。本開示において、操作部13は、レバーハンドルである。ただし、ハンドルの形態は、レバーハンドルに限定されない。例えば、操作部13は、把持部13aをホイール状の部分とした、ホイールハンドルとすることができる。
【0027】
弁棒1は、軸線О1の周りを周方向に延在するとともに環状シール部材14を収容可能な環状溝2を備えている。弁棒1は、軸線方向一方側の端部1aに弁体12を取り付けることができ、軸線方向他方側の端部1bに操作部13を取り付けることができる。弁棒1は、樹脂によって形成されており、かつ、弁棒1は、環状溝2よりも操作部取付側に、軸線О1の周りを周方向に延在するとともに径方向内側に凹んだ脆弱部3を備えている。
【0028】
図2には、弁棒1が示されている。本開示において、弁棒1は、軸線О1に沿って延在する円柱状部材である。ここで、軸線О1は、弁棒1の中心軸線である。弁棒1は、当該弁棒1の軸線О1がY軸線と同軸になるように、バルブ本体11の弁棒貫通穴1Hに配置される。ここで、本開示において、軸線方向とは、軸線О1の延在方向をいう。特に、本開示において、軸線方向一方側とは、弁棒1の軸線方向の両側のうちの、弁体12が取り付けられる側をいい、軸線方向他方側とは、弁棒1の軸線方向の両側のうちの、操作部13が取り付けられる側をいう。また、本開示において、径方向とは、軸線О1に対して直交する方向をいう。特に、本開示において、径方向内側とは、径方向の両側のうちの、軸線О1に近い側をいい、径方向外側とは、径方向の両側のうちの、軸線О1から遠い側をいう。
【0029】
弁棒1は、樹脂によって形成されている。前記樹脂としては、例えば、強化プラスチック、具体例としては、エンジニアリングプラスチックが挙げられる。エンジニアリングプラスチックには、例えば、タルク樹脂や、炭素繊維やガラス繊維を含んだ繊維強化プラスチック等を採用することができる。また樹脂としては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を採用することもできる。
【0030】
環状溝2は、径方向内側に凹んだ、軸線О1の周りを周方向に延在する環状凹部である。環状溝2には、図1に示すように、環状シール部材14を収容することができる。図2に示すように、本開示において、環状溝2は、最深部21と、2つの側面22とを有している。ここで、環状溝2の最深部21は、環状溝2のうちで、最も径方向内側に凹んだ、軸線О1の周りを周方向に延在する環状部分である。本開示において、最深部21は、図2等に示すように、軸線О1の周りを周方向に延在する円柱面である。具体的には、最深部21は、図2等に示すように、径方向視において、当該最深部21の輪郭線が軸線О1に沿って延在する、長さL21(図3参照)の直線によって形成されている。ただし、最深部21は、軸線О1の周りを周方向に延在する環状線(即ち、径方向視において、当該最深部21の輪郭線の軸線O1に沿った長さが、実質的に0(ゼロ)である、環状線)とすることができる。また、環状溝2の側面22は、軸線方向に間隔を置いて配置された、軸線О1の周りを周方向に延在する環状面である。本開示において、側面22は、図2等に示すように、径方向視において、当該側面22の輪郭線が軸線О1と直交する方向に延在している。即ち、本開示において、環状溝2の側面22は、軸線方向に対して垂直な環状の平面である。
【0031】
環状溝2は、少なくとも1つとすることができる。本開示において、弁棒1は、2つの環状溝2を備えている。2つの環状溝2は、軸線方向に間隔を置いて配置されている。また、環状溝2に収容される環状シール部材14は、弾性を有する環状部材である。環状シール部材14は、例えば、樹脂又はゴムによって形成することができる。環状シール部材14の具体例としては、Оリングが挙げられる。
【0032】
ここで、弁棒1の低コスト化、軽量化等を目的に、当該弁棒1を金属に代えて樹脂によって形成した場合、弁棒1の強度低下が懸念される。
【0033】
その一方で、弁棒1の強度低下を補う対策としては、弁棒1の直径を増加させる方法がある。しかしながら、弁棒1の直径を増加させる場合、バルブ本体全体の寸法を大きくする等、当該バルブ本体の設計変更も併せて行う必要がある。しかも、バルブ本体の設計変更は、例えば、バルブ本体のコストアップが懸念されるため、低コスト化という点でみれば、結果的にメリットが出にくい。
【0034】
そのため、バルブ本体の設計変更を行うことなく、弁棒を樹脂化する場合には、当該弁棒の強度低下に対するフェールセーフ機能を付加することが好ましい。弁棒の強度低下によって懸念される問題の具体例としては、予期せぬ弁棒の破損による漏水が考えられる。
【0035】
これに対し、本開示において、弁棒1は樹脂化されており、当該弁棒1の脆弱部3は、径方向内側に凹んだ、軸線О1の周りを周方向に延在する環状凹部である。この場合、脆弱部3の強度は、当該脆弱部3の周辺部分に比べて低くなる。このため、弁棒1に対して外部から過度な外力が入力されると、脆弱部3を優先的に破損させることができる。例えば、弁棒1に対して軸線О1の周りに過度なねじれが生じたとき、脆弱部3を優先的に破損させることができる。加えて、弁棒1の脆弱部3は、環状溝2よりも操作部取付側に配置されている。この場合、弁棒1の脆弱部3が破損しても、環状シール部材14が配置された止水機能を司る環状溝2は維持される。これによって、弁棒1が過度な外力によって脆弱部3において破損しても、止水機能は維持される。このように、弁棒1によれば、当該弁棒1は、樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0036】
より具体的には、本開示において、脆弱部3は、最深部31と、2つの側面32とを有している。ここで、脆弱部3の最深部31は、脆弱部3のうちで、最も径方向内側に凹んだ、軸線О1の周りを周方向に延在する環状部分である。本開示において、最深部31は、軸線О1の周りを周方向に延在する円柱面である。具体的には、最深部31は、図4に示すように、径方向視において、当該最深部31の輪郭線が軸線О1に沿って延在する、長さL31(図4参照)の直線によって形成されている。ただし、最深部31は、軸線О1の周りを周方向に延在する曲面とすることができる。また、最深部31は、軸線О1の周りを周方向に延在する環状線(即ち、径方向視において、当該最深部21の輪郭線の軸線O1に沿った長さが、実質的に0(ゼロ)である、環状線)とすることができる。本開示の弁棒1では、環状溝2における最深部21の長さL21が脆弱部3における最深部31の長さL31よりも大きい(L31<L21)。この場合、脆弱部3でより破損しやすくなることから、より良好なフェールセーフ機能を発揮させることができる。
【0037】
ここで、例えば、図3を参照すれば、本開示において、脆弱部3の最深部31は、当該脆弱部3において、脆弱部3の環状溝2側端よりも当該脆弱部3の操作部取付側端に近い位置に配置されている。本開示において、脆弱部3の環状溝2側端は、後述の、脆弱部3の弁体取付側側面32aの軸線方向弁体取付側傾斜端であり、脆弱部3の操作部取付側端は、後述の、脆弱部3の操作部取付側側面32bに一致している。この場合、弁棒1の脆弱部3において、外部からの過度な外力によってクラック(例えば、ひび割れ、裂け目)を生じたとき、当該クラックは、環状シール部材14が配置された止水機能を司る環状溝2の部分に達し難くなる。この場合、弁棒1は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0038】
さらに、具体的には、図2に示すように、脆弱部3の側面32は、軸線方向に間隔を置いて配置された、軸線О1の周りを周方向に延在する環状面である。特に、本開示において、脆弱部3の2つの側面32のうち、当該脆弱部3の操作部取付側側面32bは、軸線方向に対して垂直な面である。詳細には、操作部取付側側面32bは、図2に示すように、径方向視において、当該操作部取付側側面32bの輪郭線が軸線О1と直交する方向に延在している。即ち、本開示において、操作部取付側側面32bは、軸線方向に対して垂直な環状の平面である。この場合、脆弱部3は、図3等に示すように、径方向視において、操作部取付側に向かって深くなる切り欠きである。ただし、本開示において、脆弱部3の操作部取付側端は、軸線О1に対して垂直である。言い換えれば、脆弱部3の最深部31は、当該脆弱部3のうちで、環状溝2から最も遠い位置に配置されることになる。したがって、この場合、脆弱部3に生じたクラックを環状溝2の部分まで最も伝え難くすることができる。即ち、この場合、弁棒1は、より一層信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0039】
なお、本開示において、脆弱部3の2つの側面32のうち、当該脆弱部3の弁体取付側側面32aは、弁体取付側に向かうにしたがって、その直径が拡大する傾斜面である。弁体取付側側面32aは、図2に示すように、径方向視において、当該弁体取付側側面32aの輪郭線が弁体取付側に向かうにしたがって、軸線О1に対して径方向外側に傾斜している。即ち、本開示において、脆弱部3の弁体取付側側面32aは、弁体取付側に向かうにしたがって拡径する、環状の平面である。ただし、本開示において、脆弱部3の弁体取付側側面32aは、弁体取付側に向かうにしたがって拡径する、環状の曲面とすることができる。
【0040】
さらに、本開示において、脆弱部3の最深部31は、環状溝2の最深部21よりも深い。図3を参照すれば、脆弱部3の最深部31における直径D3は、環状溝2の最深部21における直径D2よりも小さい(D3<D2)。即ち、本開示において、脆弱部3の最深部31は、環状溝2の最深部21よりも、Δd(=(D2-D3)/2)だけ深い。この場合、弁棒1の脆弱部3は、環状溝2の部分よりも強度が低い。このため、脆弱部3は、弁棒1に対して外部から過度な外力が入力されると、環状溝2の部分に先んじて破損させることができる。これによって、脆弱部3は、止水機能を司る環状溝2の部分に比べて早い段階で、より確実に破損することになる。したがって、この場合、弁棒1は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0041】
さらに、図4に示すように、脆弱部3の最深部31と当該脆弱部3の2つの側面32のうちの少なくともいずれか一方とは、内側に向かって凹んだ曲面33によって連なっていることが好ましい。本開示において、脆弱部3の最深部31と当該脆弱部3の操作部取付側側面32bとは、内側に向かって凹んだ曲面33によって連なっている。曲面33は、軸線О1の周りを周方向に延在する環状の曲面である。本開示において、曲面33は、曲率半径r3の曲面で形成されている。具体的には、曲面33は、図4に示すように、径方向視において、当該曲面33の輪郭線が曲率半径r3の曲線によって形成されている。この場合、最深部31と操作部取付側側面32bとの間にエッジ(角部)を生じないことにより、最深部31と操作部取付側側面32bとの間に生じ得る応力集中を軽減させることができる。これによって、弁棒1に脆弱部3を設けつつ、当該脆弱部3の強度を、一定の強度に確保することができる。即ち、この場合、過度な外力で破損するという脆弱部3の機能を確保しつつ、通常使用時には当該脆弱部3が容易に破損しないようにすることができる。
【0042】
特に、本開示において、脆弱部3の曲面33の曲率半径r3は、環状溝2の曲面23の曲率半径r2よりも小さい(r3<r2)。この場合、環状溝2の曲面23の部分には、脆弱部3の曲面33の部分に比べて、応力集中が生じ難くなる。これによって、例えば、弁棒1が軸線О1の周りに過度にねじれたとき、脆弱部3を、環状溝2の部分に先んじて、より破損しやすくさせることができる。これによって、過度な外力で破損するという脆弱部3の機能を確保しつつ、通常使用時には当該脆弱部3が容易に破損しないようにすることができるとともに、弁棒1に過度な外力が入力されても、止水機能を司る環状溝2は破損し難く、止水機能は維持されるようになる。この場合、弁棒1は、より一層信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0043】
加えて、本開示において、環状溝2の最深部21と当該環状溝2の2つの側面22のうちの少なくともいずれか一方とは、内側に向かって凹んだ曲面23によって連なっている。図2を参照すれば、環状溝2の曲面23は、軸線О1の周りを周方向に延在する環状の曲面である。本開示において、曲面23は、曲率半径r2の曲面で形成されている。具体的には、曲面23は、図2等に示すように、径方向視において、当該曲面23の輪郭線が曲率半径r2の曲線によって形成されている。この場合、最深部21と側面22との間にエッジ(角部)を生じさせないことにより、最深部21と側面22との間に生じ得る応力集中を軽減させることができる。これによって、弁棒1において、環状溝2の部分は、弁棒1に対して外部から過度な外力が入力されても破損し難くなる。即ち、弁棒1に過度な外力が入力されても、止水機能を司る環状溝2は破損し難く、止水機能は維持される。この場合、弁棒1は、より信頼性の高いフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0044】
また、図1に示すように、バルブ10は、内部流路1Rを備えるバルブ本体11と、内部流路1Rに配置される弁体12と、弁体12を操作するための操作部13と、弁体12と操作部13との間に配置された弁棒1と、弁棒1に取り付けられる環状シール部材14と、を備えている。上述のとおり、弁棒1を備えるバルブ10によれば、当該バルブ10は、弁棒の樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0045】
次に、図1等を参照して、弁棒1及びバルブ10において、フェールセーフ機能が発揮されるときの、一例について説明する。
【0046】
バルブ10は、操作部13をY軸線の周りに回転させることによって内部流路1Rの開閉を行うことができる。具体的には、操作部13とともに弁体12を回転させることによって内部流路1Rの開閉を行うことができる。
【0047】
しかしながら、バルブ本体11において、例えば、ボールシート17が何らかの影響によって変形した場合、弁体12がY軸線の周りに回転しないことが考えられる。このとき、弁棒1は樹脂化されているため、例えば、当該弁棒1に対して軸線О1の周りに過度なねじれが生じると、当該弁棒1が破損する虞がある。
【0048】
これに対し、本実施形態に係る、弁棒1は、上述のとおり、当該弁棒1に対して外部から過度な外力が入力された場合、当該弁棒1の脆弱部3が優先的に破損するように構成されている。この場合、樹脂化された弁棒1の環状溝2は、脆弱部3が先んじて破損しても、維持される。これによって、弁棒1が過度な外力によって破損しても、環状溝2が維持されることによって、環状シール部材14の止水機能は維持される。したがって、弁棒1によれば、当該弁棒1は、樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。言い換えれば、弁棒1を備えたバルブ10もまた、弁棒1の樹脂化に伴うフェールセーフ機能を有したものとなる。
【0049】
なお、弁棒1が破損した場合、最終的には、弁棒1は脆弱部3を基点に、弁体側と操作部側との2つの部材に切断される。このため、使用者は、操作部13が空転することによって、或いは、操作部13がバルブ本体11から分離されることによって、弁棒1の破損を検知することができる。
【0050】
上述したところは、本発明の例示的な実施形態を説明したものであり、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で様々な変更を行うことができる。例えば、弁棒1は、環状溝2及び脆弱部3を備えるものであれば、その具体的な構成は、適宜変更することができる。バルブ10もまた同様である。例えば、バルブ本体11は、複数の部材(バルブ本体部)によって構成したが、1つの部材で構成することができる。また、本発明に係るバルブは、弁棒を軸線の周りを回転させるものであれば、ボールバルブに限定されるものではない。例えば、本発明に係るバルブは、スピンドルバルブとすることができる。この場合、弁棒1は、弁体を弁座に着座させるためのスピンドルである。
【符号の説明】
【0051】
1:弁棒, 1a:弁棒の軸線方向一方側の端部, 1b:弁棒の軸線方向他方側の端部, 1H:弁棒貫通穴, 1R:内部流路, 1Ra:第1内部流路, 1Rb:第2内部流路, 1Rc:第3内部流路, 1Rd:第4内部流路, 2:環状溝, 21:環状溝の最深部, 22:環状溝の側面, 23:環状溝の曲面, 3:脆弱部, 31:脆弱部の最深部, 32:脆弱部の側面, 32a:弁体取付側側面, 32b:操作部取付側側面, 33:脆弱部の曲面, 10:バルブ, 11:バルブ本体, 11a:第1バルブ本体部, 11b:第2バルブ本体部, 12:弁体, 13:操作部, 13a:操作部の把持部, 14:環状シール部材, 15,16:Оリング, 17:ボールシート, О1:軸線
図1
図2
図3
図4