(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170690
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】経口組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20231124BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20231124BHJP
A61K 36/8945 20060101ALI20231124BHJP
A61P 21/06 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A61K36/8945
A61P21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082607
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】山下 繭香
(72)【発明者】
【氏名】高島 麻都花
(72)【発明者】
【氏名】尾上 貴俊
(72)【発明者】
【氏名】糸数 創太
(72)【発明者】
【氏名】本岡 香奈
(72)【発明者】
【氏名】高野 晃
【テーマコード(参考)】
4B018
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018LE02
4B018LE03
4B018MD05
4B018MD10
4B018MD15
4B018MD19
4B018MD20
4B018MD23
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4B018MD61
4B018MD76
4B018MD86
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C088AB84
4C088AC11
4C088BA10
4C088CA08
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA94
4C088ZB22
(57)【要約】
【課題】本発明は、筋肉を増強するための組成物の提供を目的とするものである。また、本発明は、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上するための組成物の提供を目的とするものである。
【解決手段】本発明者らは、筋肉を増強する組成物を探索する中で、ワイルドヤムが筋肉を増強させる効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。本発明者らは、運動パフォーマンスを維持及び/又は向上する組成物を探索する中で、ワイルドヤムが運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させる効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイルドヤムを含有することを特徴とする筋肉の増強用組成物。
【請求項2】
ワイルドヤムを含有することを特徴とする運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイルドヤムを含有する筋肉増強用組成物に関する。また、本発明は、ワイルドヤムを含有することを特徴とする運動パフォーマンス向上用組成物。
【背景技術】
【0002】
日常生活を有意義に、健康的に過ごすためには、運動機能は極めて重要であるといえる。しかし、近年、日常生活の活動性の低下や加齢、運動不足、運動の不能などから、筋肉量の減少、筋肉の分解、筋肉の疲労といった筋機能の低下が起こったり、運動パフォーマンスが低下し、有意義に、健康的に日常生活を過ごせないことが問題となっている。
【0003】
筋肉量の減少、筋肉の分解、筋肉の疲労といった筋機能の低下を予防、改善又は緩和するものとして、筋肉増強作用を有する成分や該成分を含有する組成物が望まれている。例えば筋肉増強作用を有する化合物としてはステロイド剤や成長ホルモンが知られている。しかしステロイド剤や成長ホルモンは、摂取することにより循環器疾患、肝障害等の重篤な副作用や、血圧、コレステロール値が上昇することが知られている。また、筋肉増強作用を有し経口摂取されるものとして、ホエー蛋白質を特定条件で加水分解した組成物(特許文献1)やトゲドコロ(Dioscorea esculenta)(特許文献2)が報告されている。しかし、特許文献1で確認できているホエー蛋白質による筋肉増強作用は、萎縮した筋肉を回復させることだけであり、正常な筋肉を増強させる作用は確認されていない。また、ドゲドコロの筋肉増強作用は十分なものではないため、筋肉増強作用を有する成分の更なる検討が必要であった。
【0004】
運動における強度や速度、持久力等の能力の低下を抑止し、運動能力を維持、向上するものとして、運動パフォーマンスの維持、向上作用を有する成分や外成分を含有する組成物が望まれている。例えば運動パフォーマンスの維持、向上作用を有し経口摂取されるものとして、ホエー蛋白質を特定条件で加水分解した組成物(特許文献1)やナガイモ(Dioscorea batatas)の抽出物(非特許文献1)が報告されている。しかし、特許文献1で確認できているホエー蛋白質による運動パフォーマンスの維持、向上作用は、萎縮した筋肉の回復による場合だけであり、正常な筋肉の増強による運動パフォーマンスの維持、向上作用は確認されていない。また、ナガイモ抽出物の運動パフォーマンスの維持、向上作用は十分なものではないため、運動パフォーマンスの維持、向上作用を有する成分の更なる検討が必要であった。
【0005】
また、日常生活を有意義に、健康的に過ごすために、近年、健康志向の高まりを背景に種々の健康食品の開発が行われており、健康食品に用いられる様々な素材の研究が行われている。さらに、健康志向と同様に安全志向の高い昨今、安全な素材を用いることが好まれており、日常的に食されていたり、食すことが可能な植物素材が有する有用な機能を活用することが望まれている。例えばワイルドヤムやその抽出物は、健康食品の素材として使用されており、白髪の予防効果(特許文献3)等の機能性について広く研究されており、更なる有用な機能の研究が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010-150160号公報
【特許文献2】国際公開第2008/123417号公報
【特許文献3】特開2010-195730号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】「Molecules」、MDPI、2018年,23,2023、「Effects of Rhizome Extract of Dioscorea batatas and Its Active Compound, Allantoin, on the Regulation of Myoblast Differentiation and Mitochondrial Biogenesis in C2C12 Myotubes」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の背景を鑑みてなされたものであり、筋肉を増強させたり、運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させるための組成物の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、筋肉を増強させる組成物を探索する中で、ワイルドヤムが筋肉を増強させる効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。また、本発明者らは、運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させる組成物を探索する中で、ワイルドヤムが運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させる効果を奏することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。
[1]ワイルドヤムを含有することを特徴とする筋肉増強用組成物。
[2]ワイルドヤムがワイルドヤム抽出物であることを特徴とする、[1]に記載の筋肉増強用組成物。
[3]運動パフォーマンスを高めるために使用される、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4]ワイルドヤムを含有することを特徴とする運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用組成物。
[5]ワイルドヤムがワイルドヤム抽出物であることを特徴とする、[4]に記載の筋肉増強用組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の組成物は、筋肉を増強させる効果を奏する。また、本発明の組成物は運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例1及び比較例1の筋芽細胞の細胞賦活活性評価における生細胞数の測定結果を示す図である。
【
図2】実施例1及び比較例2のPGC-1α遺伝子のmRNA発現量の測定結果を示す図である。
【
図3】実施例2及び比較例3の筋肉増強、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上に関する経口摂取による実感評価のアンケート結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ワイルドヤム]
本発明の組成物は、ワイルドヤムを含有することを特徴とする。ワイルドヤムは、ヤマノイモとも呼ばれ、ヤマノイモ科の植物の総称であるが、本発明の組成物に含有されるワイルドヤムとしては、学名がDioscorea oppositifolia又はDioscorea oppositaの植物である。
【0014】
ワイルドヤムは、葉、茎、花、根などを使用することができるが、本発明の組成物に含有されるワイルドヤムの使用部位は、筋肉増強や、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上の観点から根であることが好ましい。なお、ワイルドヤムの根を使用する場合、根とともに葉、茎、花の部位を含んでもよい。
【0015】
本発明の組成物に含有されるワイルドヤムは、収穫されたワイルドヤムをそのまま用いてもよいし、加工されたワイルドヤムを用いてもよい。加工されたワルイドヤムを用いる場合、例えば粉末、顆粒などの粉砕物や、搾汁物や抽出物を用いることができる。搾汁物や抽出物は、液状やスラリー状であってもよいが、乾燥粉末を用いることが好ましい。これらの中でも、筋肉増強作用や、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上作用の観点から粉砕物、抽出物が好ましく、抽出物が特に好ましい。なお、本発明において抽出物とは、抽出物の乾燥粉末(抽出物を乾燥して粉末化したもの)を包含する概念である。ワイルドヤムの加工物は、当業者により通常知られている方法によって製造されたものでもよいし、市場に流通しているものでもよい。
【0016】
本発明の組成物に含有されるワイルドヤム抽出物は、抽出液や、その希釈液もしくは濃縮液、又はそれらの乾燥粉末などを挙げることができる。抽出に使用される溶媒は、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどの低級アルコール;酢酸エチル、酢酸メチルなどの低級エステル;アセトン;これらと水との混合溶媒などが挙げられる。これらの中でも、筋肉増強作用や運動パフォーマンス向上作用の観点から水、エタノール又は含水エタノールが好ましく、含水エタノールが特に好ましい。含水エタノールの場合、エタノールを85容量%未満含有するものが好ましく、10~80容量%含有するものがより好ましく、30~75容量%含有するものがさらに好ましく、筋肉増強作用や、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上作用の観点から70容量%含有するものが特に好ましい。また、得られた抽出物を必要に応じてスプレードライ、フリーズドライなどによって粉末化してもよく、粉末化を行う際に賦形剤を添加してもよい。
【0017】
ワイルドヤム抽出物を得る際の抽出方法は特に限定されず、通常用いられる方法(例えば、浸漬抽出、還流抽出、超臨界流体抽出など)によって抽出することができる。また、ワイルドヤム抽出物を得る際の抽出温度は、室温~溶媒の沸点の間で任意に設定でき、例えば室温~抽出溶媒の沸点の温度で、振盪下、非振盪下又は還流下にて抽出することができる。抽出温度が沸点付近の場合には必要に応じて還流してもよい。
【0018】
本発明の組成物におけるワイルドヤムの配合量は、その効果の奏する範囲で適宜含有されればよい。例えば本発明の組成物中に、乾燥質量換算で0.1~100質量%含有させることができ、0.75~95質量%含有させることが好ましく、1.5~80質量%含有させることがより好ましく、筋肉増強作用や、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上作用の観点から3~60質量%含有させることが特に好ましい。
【0019】
本発明におけるワイルドヤムの摂取量としては特に制限はないが、その効果をより効果的に享受できる点からワイルドヤムの摂取量が、成人の1日当たり10mg以上となるように摂取することが好ましく、50mg以上となるように摂取することがより好ましく、100mg以上となるように摂取することがさらに好ましい。
【0020】
[筋肉増強用組成物]
本発明の組成物は、ワイルドヤムを含有することで、優れた筋芽細胞賦活作用を有する。筋芽細胞を賦活することで筋芽細胞の増殖が促進され、筋力の増加を助けるとともに、怪我や病気等により使用せずに低下した筋力の回復を助けることができ、筋肉量を維持したり増加することで筋肉を増強することができる。本発明の組成物は、ワイルドヤムを含有することで、優れた筋肉増強効果を奏する。また、筋肉量の増加や、筋力の増加、回復により運動量を維持することができ、運動パフォーマンスを維持及び/又は向上効果を奏するため、本発明の組成物は、ワイルドヤムによる優れた筋肉増強効果により、運動パフォーマンスの維持及び/又向上効果や体力増進(向上)効果を奏する。
【0021】
[運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用組成物]
本発明において運動パフォーマンスの維持及び/又は向上とは、運動で発揮される能力を維持したり向上することを意味し、より具体的には、運動において強度や速度、持久力、精度等に関して所望の結果を達することができる能力を維持したり向上することを意味する。本発明の組成物は、ワイルドヤムを含有することで、優れたPGC-1αの遺伝子発現促進作用を有する。PGC-1αの遺伝子発現を促進することで、褐色脂肪細胞におけるミトコンドリアが増加されて、エネルギー代謝を促進することで運動パフォーマンスを維持したり、向上したりすることができる。本発明の組成物は、ワイルドヤムを含有することで、優れた運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果を奏する。
【0022】
本発明の組成物は、筋肉増強用経口組成物として用いることができ、かかる経口組成物としては、ワイルドヤムが含有され、筋肉を増強させる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(広告媒体)のいずれかに、筋肉増強、筋合成の亢進、筋分解の抑制、筋肉量(筋肉重量、筋断面積、筋肉密度)の低下抑制・維持・増加、筋肉の質の低下抑制・維持・向上、筋力(パワー、持久力)の低下抑制・維持・増加、運動能力の低下抑制・維持・向上、代謝(基礎代謝、安静時及び運動時代謝)の低下抑制・維持・向上、除脂肪体重の低下抑制・維持・増加、筋肉疲労の予防・改善、筋肉増強による代謝向上効果、ロコモティブシンドロームの予防・改善効果、サルコペニアの予防・改善効果の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。本発明の筋肉増強用経口組成物は、ワイルドヤムを有効成分として表示するものであってもよいが、製品の包装等に、ワイルドヤムが有効成分として表示されているものに限られない。例えば有効成分を特定していないものであってもよい。また、一般的な食品であっても、用途を示唆して製造販売されるものは本発明の範囲に含まれる。例えば摂取した人の個人的感想として筋肉向上に言及する体験談をホームページ等に記載して販売される食品等についても、本発明の範囲に含まれる。また、筋肉増強を示す論文等を機能性の科学的根拠とし、ワイルドヤムを機能性関与成分とする機能性表示食品であって筋肉を増強する機能を届出表示とする機能性表示食品についても、実質的に当該届出表示は筋肉増強のことを意味しているため、本発明の範囲に含まれる。
【0023】
具体的に、本発明の筋肉増強用組成物としては、医薬品(医薬部外品を含む)やいわゆる健康食品が挙げられ、いわゆる健康食品においては、「筋肉をつくる力をサポートする」、「筋肉の分解を抑える」、「筋力を増強する」、「歩行能力の低下抑制・維持・改善・向上」、「筋肉増強による代謝向上を図る」、「代謝の衰えを抑える」、「筋肉疲労の予防・回復」、「バランス能力の低下抑制・維持」、「シェイプアップ」、「マッチョ」、「細マッチョ」、「美ボディ」、「寝たきり予防」、「寝たきり防止」、「転倒予防」、「筋肉増強による代謝向上を図る」、「筋肉量や筋力を維持する」等を表示したものを例示することができる。本発明の経口組成物を摂取する対象としては、筋肉の増強を必要とする人であれば特に限定されないが、シェイプアップを目的とする人や、スポーツ選手や、足腰の弱った高齢者等を好ましく例示することができる。
【0024】
本発明の組成物は、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用経口組成物として用いることができ、かかる経口組成物としては、ワイルドヤムが含有され、運動パフォーマンスを維持させたり向上させる点において、製品として他の製品と区別することができるものであれば特に制限されるものではなく、例えば本発明に係る製品の本体、包装、説明書、宣伝物(広告媒体)のいずれかに、運動パフォーマンスの維持、運動パフォーマンスの向上、運動における持久力の向上、エネルギー代謝促進の機能がある旨を表示したものが本発明の範囲に含まれる。本発明の運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用組成物は、ワイルドヤムを有効成分として表示するものであってもよいが、製品の包装等に、ワイルドヤムが有効成分として表示されているものに限られない。例えば有効成分を特定していないものであってもよい。また、一般的な食品であっても、用途を示唆して製造販売されるものは本発明の範囲に含まれる。例えば摂取した人の個人的感想として運動パフォーマンスの維持や向上に言及する体験談をホームページ等に記載して販売される食品等についても、本発明の範囲に含まれる。また、運動パフォーマンスの維持や向上を示す論文等を機能性の科学的根拠とし、ワイルドヤムを機能性関与成分とする機能性表示食品であって運動パフォーマンスを維持及び/又は向上する機能を届出表示とする機能性表示食品についても、実質的に当該届出表示は運動パフォーマンスの維持及び/又は向上のことを意味しているため、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
具体的に、本発明の運動パフォーマンスの維持及び/又は向上用組成物としては、医薬品(医薬部外品を含む)やいわゆる健康食品が挙げられ、いわゆる健康食品においては、「高い運動パフォーマンスを維持・向上」、「高い身体レベルを維持・向上」、「運動能力を向上」、「持久力を高める」、「持久力アップ」等を表示したものを例示することができる。本発明の経口組成物を摂取する対象としては、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上を必要とする人であれば特に限定されないが、シェイプアップを目的とする人や、スポーツ選手や、足腰の弱った高齢者等を好ましく例示することができる。
【0026】
本発明の組成物は、例えば、医薬品(医薬部外品を含む)や、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養機能食品等の所定機関より効能の表示が認められた機能性食品等のいわゆる健康食品等として用いることができる。
【0027】
本発明の組成物の形態は、例えばカプセル状、ソフトカプセル状、錠状、粉末状、顆粒状、液状、粒状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、ペースト状、クリーム状、カプレット状、ゲル状、チュアブル錠状、スティック状等を挙げることができる。アイス、ゼリー、クッキー、ケーキ、チョコレート、ペットボトル飲料等の形態であってもよい。これらの中でも、カプセル状、ソフトカプセル状、錠状、粉末状、顆粒状、丸状、チュアブル錠状の形態が好ましく、カプセル状、ソフトカプセル状、錠状、粉末状、顆粒状が特に好ましい。
【0028】
本発明の組成物は、必要に応じて、ワイルドヤム以外の他の成分を添加して、公知の方法によって製造することができる。ワイルドヤム以外の他の成分としては、例えば水溶性ビタミン(ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB3、ビタミンB5、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンB13、ビタミンB15、ビタミンB17、ビオチン、葉酸、ビタミンC、ビタミンP)、油溶性ビタミン(ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK)等のビタミン類;カルシウム、マグネシウム、リン、鉄等のミネラル類;ヘスペリジン、ケルセチン等のフラバノイドあるいはフラボノイド類;コラーゲン等のタンパク質;ペプチド;アミノ酸;動物性油脂;植物性油脂;動物・植物の粉砕物又は抽出物;賦形剤、滑沢剤、流動化剤等を挙げることができる。
【実施例0029】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0030】
[試験1:筋芽細胞賦活試験]
実施例1 ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を70%エタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥した後、粉砕して得た、ワイルドヤムの根の含水エタノール抽出物(白色粉末状) 10μg/mL
比較例1 トゲドコロ(Dioscorea esculenta)の根の含水エタノール抽出物(淡褐色粉末状) 10μg/mL
【0031】
(1)マウス骨格筋由来筋芽細胞(C2C12、理化学研究所)を37℃、5容量%CO2インキュベーター内で、10%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM培地を入れた75cm2フラスコを用いて、培養した。
(2)培養した細胞をトリプシン処理により浮遊させて回収し、コラーゲンコートした96 well plateの各wellに、8.0×103cells/wellの細胞密度で播種した後、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間前培養した。
(3)各wellより培地を除去後、各wellをDMEM 200μL/wellで2回洗浄し、2%ウマ血清(HS)含有DMEM培地(分化誘導培地)を添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で6日間培養し、筋管への分化を誘導した。
(4)培地を除去し、所定濃度に調製した被験物質含有分化誘導培地を100μL/well添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。被験物質の培地中の合計濃度は10μg/mLとした。
(5)培地を除去し、PBS 200μL/wellで2回洗浄し、無血清DMEMで30容量倍に希釈したCell Counting Kit-8(同仁化学製) 150μL/wellを添加した。
(6)37℃、5%CO2インキュベーター内に静置して適度に発色させた後、各wellの450nmにおける吸光度を測定した。得られたデータを元に、コントロールに対する生細胞数の割合(% of control)を下記式に基づいて算出し、筋芽細胞賦活活性を評価した。
% of control= ( Data sample - Data blank ) / ( Data control - Data blank ) × 100
Data sample : 実施例1及び比較例1の吸光度
Data control : controlの吸光度
Data blank:細胞がないときのブランク
【0032】
コントロールを100%として、実施例1、比較例1の生細胞数の割合の算出結果をまとめたものを
図1に示す。
【0033】
図1に示すように、ワイルドヤム抽出物を含有する実施例1では、比較例1に比して、大幅に筋芽細胞の賦活活性が高かった。したがって、本発明に係るワイルドヤムを含有する経口組成物は、筋肉増強において有用である。
【0034】
[試験2:PGC-1α遺伝子発現試験]
実施例1 ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を70%エタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥した後、粉砕して得た、ワイルドヤムの根の含水エタノール抽出物(白色粉末状) 10μg/mL
比較例2 ナガイモ(Dioscorea batatas)の根の粉砕物(茶色粉末状) 10μg/mL
【0035】
(1)マウス骨格筋由来筋芽細胞(C2C12、理化学研究所)を37℃、5容量%CO2インキュベーター内で、10%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM培地を入れた75cm2フラスコを用いて、培養した。
(2)培養した細胞をトリプシン処理により浮遊させて回収し、コラーゲンコートした24 well plateの各wellに、5.0×104cells/wellの細胞密度で播種した後、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間前培養した。
(3)各wellより培地を除去後、各wellをDMEMで2回洗浄し、2%ウマ血清(HS)含有DMEM培地(分化誘導培地)を添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で6日間培養し、筋管への分化を誘導した。
(4)培地を除去し、所定濃度に調製した被験物質含有分化誘導培地を500μL/well添加し、37℃、5%CO2インキュベーター内で24時間培養した。被験物質の培地中の合計濃度は10μg/mLとした。
(5)培地を除去し、PBSで2回洗浄し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN製)を用いてRNAを回収し、ReverTra Ace(登録商標) qPCR RT Master Mix with gDNA Remover(東洋紡製)を用いてcDNAを合成した。
(6)得られたcDNAを鋳型として、PGC-1αのプライマー(QIAGEN製)を用いて、QuantiNova SYBR Green PCR Master Mix(QIAGEN製)により定量リアルタイムPCRを行い、PGC-1α遺伝子発現量を測定した。内在性コントロールとして、GAPDHのプライマー(QIAGEN製)を用いて、GAPDH遺伝子の発現量を測定し、コントロールの遺伝子発現量を1とした相対値を算出した。
【0036】
コントロールを1として、実施例1、比較例2の遺伝子発現量の結果をまとめたものを
図2に示す。
【0037】
図2に示すように、ワイルドヤム抽出物を含有する実施例1では、比較例2に比して、大幅にPGC-1α遺伝子発現量が多かった。したがって、本発明に係るワイルドヤムを含有する経口組成物は、運動パフォーマンスの維持及び/向上において有用である。
【0038】
[試験3:経口摂取による実感評価]
以下に記載の方法により、ワイルドヤムの経口摂取が筋肉の増強、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上に及ぼす影響を評価することを目的とし、健常な成人男性3名を対象とする二重盲検プラセボ対照クロスオーバー比較試験を実施した。
【0039】
(1)試験食品
ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を70%エタノール水溶液で抽出し、得られた抽出物を乾燥した後、粉砕して得た、ワイルドヤムの根の含水エタノール抽出物を、白色で中が見えないカプセルに封入して試験食品A(実施例2)のカプセル剤を製造した。なお、試験食品B(比較例3)は、外観で実施例のカプセルとの区別がつかないように、試験食品Aで使用したカプセルと同様に、白色で中が見えないカプセルを使ってカプセル剤を製造した。
試験食品A(実施例2) ワイルドヤムの根の含水エタノール抽出物(粉末状) 300mg/1カプセル
試験食品B(比較例3) ワイルドヤムの根の含水エタノール抽出物(粉末状) 0mg/1カプセル
【0040】
(2)試験方法
健常な成人男性3名に、試験食品A、Bのいずれか1種類を夕食時に2カプセルずつ、各観察期で3日間摂取させ、試験食品の摂取前と3日間摂取後の筋力の低下を感じるかについて以下のアンケートの内容及び評価基準で評価させた。各観察期の間には2日間のウォッシュアウト期間を設けた。
【0041】
アンケートの内容
(評価項目)筋力が低下してきた、弱くなってきた。
【0042】
アンケートの評価基準
感じない:1点
軽度に感じる(わずかに感じる):2点
中程度感じる:3点
重度に感じる(強く感じる):4点
極めて重度に感じる(感じずにはいられない):5点
【0043】
得られた点数の合計点を算出し、摂取前の合計点を1とした3日間摂取後の合計点の相対値(摂取後/摂取前)を算出した。すなわち、数値が小さいほど、試験食品の摂取前に比べて、3日間摂取後に筋力の低下を感じる割合が減っており、試験食品の摂取により筋力の低下の抑制や、筋力の維持、向上の効果が高いことを意味する。得られた結果を
図3に示す。
【0044】
図3に示されるように、本発明の実施例2に係る、ワイルドヤム抽出物を含有する組成物は、ワイルドヤムを含有しない比較例3に比べて筋力の低下に関するアンケートの評価の点数が低く、すなわち、筋力が低下してきた、弱くなってきたと感じることが少なかった。筋力の増加や回復により筋肉量を維持したり増加することで筋肉を増強することができる。また、筋力の増加、回復や、これらに基づく筋肉量の増加により、運動パフォーマンスを維持及び/又は向上させることができる。したがって、本発明に係るワイルドヤムを含有する経口組成物は、筋肉増強、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/向上において有用である。
【0045】
以下に本発明の種々の態様の例を挙げる。ただし、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【0046】
[処方例1~3](カプセル)
表1に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を含水エタノールで抽出して得たワイルドヤム抽出物を混合した後、ゼラチンを含む被膜に充填しカプセルを製造した(1粒あたり内容物200mg、皮膜80mg)。得られたカプセルを摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0047】
【0048】
[処方例4~6](ソフトカプセル)
表2に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を含水エタノールで抽出して得たワイルドヤム抽出物と他の原料を混合してソフトカプセルの内容物を製造した(1カプセルあたり300mg)。続いて、ソフトカプセルの内容物を、常法に従って、ゼラチン製のカプセル被膜(1カプセルあたり150mg)で被包しソフトカプセルを製造した。得られたソフトカプセルを摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0049】
【0050】
[処方例7~9](錠剤)
表3に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を含水エタノールで抽出して得たワイルドヤム抽出物と他の原料を混合した後、打錠装置を用いて成形し、錠剤を製造した(1粒あたり250mg)。得られた錠剤を摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0051】
【0052】
[製造例10~12](粉末飲料)
表4に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を含水エタノールで抽出して得たワイルドヤム抽出物と他の原料を混合して粉末(飲料用)を製造した。得られた粉末(飲料用)3gを水100mLと混合し摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0053】
【0054】
[製造例13~15](顆粒)
表5に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根を含水エタノールで抽出して得たワイルドヤム抽出物と他の原料を混合した後、流動層造粒機に投入し、気流で数分間混合し、これに水300mLを1分間に30mL噴霧して造粒を行った。得られた造粒物を30メッシュの篩いで選別し、顆粒を製造した。得られた顆粒を摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0055】
【0056】
[製造例16~18](飲料)
表6に示すように、ワイルドヤム(Dioscorea oppositifolia)の根の含水エタノール抽出物(ワイルドヤム抽出物)と他の原料を混合して飲料を製造し、500mLの容器に充填した。得られた飲料を摂取したところ、筋肉増強効果、並びに、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果に優れるものであった。
【0057】
本発明の経口組成物は、筋肉増強効果を有する食品として用いることができるため、産業上の有用性は高い。また、本発明の経口組成物は、運動パフォーマンスの維持及び/又は向上効果を有する食品として用いることができるため、産業上の有用性は高い。