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特開2023-170692圧電素子及び超音波トランスデューサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170692
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】圧電素子及び超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20231124BHJP
   H10N 30/87 20230101ALI20231124BHJP
   H10N 30/853 20230101ALI20231124BHJP
   H10N 30/20 20230101ALI20231124BHJP
   H10N 30/097 20230101ALI20231124BHJP
   H10N 30/081 20230101ALI20231124BHJP
   H10N 30/088 20230101ALI20231124BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
H04R17/00 330G
H01L41/047
H01L41/187
H01L41/09
H01L41/43
H01L41/331
H01L41/338
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082626
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】清水 優作
(72)【発明者】
【氏名】山腰 清
(72)【発明者】
【氏名】福井 隆文
(72)【発明者】
【氏名】河野 清彦
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB10
5D019BB13
5D019BB25
5D019EE04
5D019FF01
5D019HH01
(57)【要約】
【課題】圧電素子の屈曲振動の変位量を増加させることが可能な圧電素子及び超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】圧電素子1は、金属基板2と、下部電極4と、圧電体層5と、上部電極6と、を備える。金属基板2は、少なくとも鉄及びクロムを含む。下部電極4は、金属基板2上に設けられている。圧電体層5は、下部電極4上に設けられている。上部電極6は、圧電体層5上に設けられている。金属基板2は、金属基板2の厚さ方向に沿って形成された貫通孔25を有する。下部電極4は、貫通孔25に連通する第1開口部45を有する。圧電体層5は、貫通孔25に連通する第2開口部55を有する。上部電極6は、貫通孔25に連通する第3開口部65を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも鉄及びクロムを含む金属基板と、
前記金属基板上に設けられている下部電極と、
前記下部電極上に設けられている圧電体層と、
前記圧電体層上に設けられている上部電極と、を備え、
前記金属基板は、前記金属基板の厚さ方向に沿って形成された貫通孔を有し、
前記下部電極は、前記貫通孔に連通する第1開口部を有し、
前記圧電体層は、前記貫通孔に連通する第2開口部を有し、
前記上部電極は、前記貫通孔に連通する第3開口部を有する、
圧電素子。
【請求項2】
前記金属基板と前記下部電極との間に介在しているアルミナ層を更に含み、
前記金属基板は、アルミニウムを更に含み、
前記アルミナ層の上面は、前記アルミナ層の有する複数の鱗片状の粒子の表面の一部を含む、
請求項1に記載の圧電素子。
【請求項3】
前記アルミナ層は、前記金属基板の上面の全域を覆っており、
前記アルミナ層は、前記金属基板の前記貫通孔に連通する貫通孔を有する、
請求項2に記載の圧電素子。
【請求項4】
平面視で、前記下部電極の第1外縁は、前記金属基板の第2外縁よりも内側に位置しており、
前記平面視で、前記圧電体層の第3外縁は、前記下部電極の前記第1外縁よりも内側に位置しており、
前記平面視で、前記上部電極の第4外縁は、前記圧電体層の前記第3外縁よりも内側に位置している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の圧電素子。
【請求項5】
前記平面視で、前記下部電極における前記第1開口部の開口縁は、前記金属基板における前記貫通孔の開口縁よりも外側に位置しており、
前記平面視で、前記圧電体層における前記第2開口部の開口縁は、前記下部電極における前記第1開口部の前記開口縁よりも外側に位置しており、
前記平面視で、前記上部電極における前記第3開口部の開口縁は、前記圧電体層における前記第2開口部の前記開口縁よりも外側に位置している、
請求項4に記載の圧電素子。
【請求項6】
前記平面視で、前記第1開口部の前記開口縁、前記貫通孔の前記開口縁、前記第2開口部の前記開口縁及び前記第3開口部の前記開口縁は、前記上部電極の前記第4外縁の形状における幾何中心を囲んでいる、
請求項5に記載の圧電素子。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の圧電素子と、
前記圧電素子の前記金属基板と接合されている振動板部と、
前記圧電素子の前記下部電極に接続される第1導通部材と、
前記圧電素子の前記上部電極に接続される第2導通部材と、
前記下部電極と前記第1導通部材とを接合している第1導電性接合部と、
前記上部電極と前記第2導通部材とを接合している第2導電性接合部と、を備える、
超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記圧電素子を収容しているケースを更に備え、
前記ケースは、
平板状の底板部と、
前記底板部の一面の周部から前記底板部の厚さ方向に突出しており、前記圧電素子を囲んでいる筒部と、を有し、
前記底板部のうち前記筒部により囲まれた部分が、前記振動板部を兼ねている、
請求項7に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧電素子及び超音波トランスデューサに関し、より詳細には、下部電極及び上部電極を有する圧電素子、及び、圧電素子を備える超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金属基板と、下部電極と、圧電体層と、上部電極と、を備える圧電素子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2012/111279号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圧電素子では、屈曲振動の変位量を増加させることが望まれる場合がある。
【0005】
本開示の目的は、圧電素子の屈曲振動の変位量を増加させることが可能な圧電素子及び超音波トランスデューサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る圧電素子は、金属基板と、下部電極と、圧電体層と、上部電極と、を備える。前記金属基板は、少なくとも鉄及びクロムを含む。前記下部電極は、前記金属基板上に設けられている。前記圧電体層は、前記下部電極上に設けられている。前記上部電極は、前記圧電体層上に設けられている。前記金属基板は、前記金属基板の厚さ方向に沿って形成された貫通孔を有する。前記下部電極は、前記貫通孔に連通する第1開口部を有する。前記圧電体層は、前記貫通孔に連通する第2開口部を有する。前記上部電極は、前記貫通孔に連通する第3開口部を有する。
【0007】
本開示の一態様に係る超音波トランスデューサは、前記圧電素子と、振動板部と、第1導通部材と、第2導通部材と、第1導電性接合部と、第2導電性接合部と、を備える。前記振動板部は、前記圧電素子の前記金属基板と接合されている。前記第1導通部材は、前記圧電素子の前記下部電極に接続される。前記第2導通部材は、前記圧電素子の前記上部電極に接続される。前記第1導電性接合部は、前記下部電極と前記第1導通部材とを接合している。前記第2導電性接合部は、前記上部電極と前記第2導通部材とを接合している。
【発明の効果】
【0008】
本開示の圧電素子及び超音波トランスデューサでは、圧電素子の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に係る圧電素子の平面図である。
図2図2は、同上の圧電素子に関し、図1のA1-A1線断面図である。
図3図3Aは、同上の圧電素子において上部電極と下部電極との間に上部電極が下部電極に対して高電位となる電圧が印加されたときの圧電素子の動作説明図である。図3Bは、同上の圧電素子において上部電極と下部電極との間に下部電極が上部電極に対して高電位となる電圧が印加されたときの圧電素子の動作説明図である。
図4図4は、同上の圧電素子の屈曲振動の変位量の説明図である。
図5図5は、同上の圧電素子を備える超音波トランスデューサの平面図である。
図6図6は、同上の圧電素子を備える超音波トランスデューサに関し、図5のA2-A2線断面図である。
図7図7は、同上の圧電素子を備える超音波トランスデューサ及び比較例の特性説明図である。
図8図8は、実施形態2に係る超音波トランスデューサの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の実施形態1~2等において参照する各図は、いずれも模式的な図であり、図中の各構成要素の大きさや厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(実施形態1)
以下、圧電素子1について図1~4に基づいて説明した後、圧電素子1を備える超音波トランスデューサ100について図5及び6に基づいて説明する。
【0012】
(1)圧電素子及び超音波センサの概要
圧電素子1は、図1及び2に示すように、金属基板2と、アルミナ層3と、下部電極4と、圧電体層5と、上部電極6と、を備える。金属基板2は、少なくとも鉄及びクロムを含む。下部電極4は、金属基板2上に設けられている。圧電体層5は、下部電極4上に設けられている。上部電極6は、圧電体層5上に設けられている。平面視で、圧電素子1の外縁は、例えば、四角形状である。「平面視で、」とは、「金属基板2の厚さ方向に沿った方向において金属基板2の上側から見て、」と同じ意味である。言い換えれば、「平面視で」とは、「金属基板2の厚さ方向からの平面視で、」と同じ意味である。
【0013】
超音波トランスデューサ100は、図5及び6に示すように、圧電素子1と、振動板部120と、第1リード線141と、第2リード線142と、第1導電性接合部131と、第2導電性接合部132と、を備える。超音波トランスデューサ100では、第1リード線141が、第1導通部材を構成し、第2リード線142が、第2導通部材を構成している。振動板部120は、圧電素子1の金属基板2と接合されている。より詳細には、振動板部120は、接合部105により、圧電素子1の金属基板2と接合されている。第1リード線141は、圧電素子1の下部電極4に接続される。第2リード線142は、圧電素子1の上部電極6に接続される。第1導電性接合部131は、下部電極4と第1リード線141とを接合している。第2導電性接合部132は、上部電極6と第2リード線142とを接合している。
【0014】
超音波トランスデューサ100は、圧電素子1において第1電気信号(所定の駆動周波数の交流電圧)を第1機械振動に変換することにより、超音波を送波する。超音波トランスデューサ100では、第1電気信号が圧電素子1に印加されたときの圧電素子1の水平方向の伸縮運動による圧電素子1の垂直方向の振動に伴って振動板部120が振動板部120の厚さ方向に振動し、超音波が送波される。また、超音波トランスデューサ100は、例えば、この超音波トランスデューサ100から送波された超音波の反射波が振動板部120に入射したときの振動板部120の厚さ方向の振動に伴う圧電素子1の第2機械振動を、圧電素子1において第2電気信号に変換する。
【0015】
超音波トランスデューサ100では、振動板部120は、平板状である。超音波トランスデューサ100は、圧電素子1を収容しているケース101を更に備える。ケース101は、底板部102と、筒部103と、を有する。底板部102は、平板状である。筒部103は、底板部102の一面の周部から底板部102の厚さ方向に突出しており、圧電素子1を囲んでいる。底板部102のうち筒部103により囲まれた部分が、振動板部120を兼ねている。
【0016】
また、超音波トランスデューサ100は、図6に示すように、ケース101内において圧電素子1の上方に配置されている吸音部材150と、ケース101内において吸音部材150上に配置されている封止部160と、を更に備える。なお、図5では、吸音部材150及び封止部160の図示を省略してある。
【0017】
(2)詳細
(2.1)圧電素子
以下、実施形態1に係る圧電素子1について、図1及び2を参照して、より詳細に説明する。
【0018】
(2.1.1)金属基板
金属基板2は、平板状である。金属基板2は、上面(第1主面)21及び下面(第2主面)22を有する。平面視で、金属基板2の外縁20は、四角形状(例えば、長方形状)である。金属基板2の厚さは、例えば、0.1mmであるが、これに限らない。
【0019】
金属基板2は、鉄とクロムとアルミニウムとを含む。金属基板2は、鉄を主成分として含むステンレス鋼基板であり、鉄の他にクロム及びアルミニウムを含む。金属基板2を構成するステンレス鋼基板は、例えば、アルミニウム含有フェライト系ステンレス鋼基板である。アルミニウム含有フェライト系ステンレス鋼基板は、例えば、クロムの含有量が18wt%であり、アルミニウムの含有量が3wt%であるが、これらの数値に限定されない。金属基板2は、鉄、クロム及びアルミニウム以外の元素を更に含んでいてもよい。
【0020】
金属基板2は、金属基板2の厚さ方向に沿って形成された貫通孔25を有する。平面視で、金属基板2における貫通孔25の開口縁26は、円形状であるが、これに限らない。
【0021】
(2.1.2)アルミナ層
アルミナ層3は、金属基板2の上面21上に設けられている。平面視で、アルミナ層3の外縁30は、四角形状(例えば、長方形状)である。アルミナ層3の厚さは、例えば、1μmであるが、これに限らない。
【0022】
アルミナ層3を形成するアルミナの主相は、γ-アルミナ相である。すなわち、アルミナ層3は、主としてγ-アルミナ相の粒子で形成されている。「主としてγ-アルミナ相の粒子で形成されている」とは、アルミナ層3の50重量%を超える部分がγ-アルミナ相の粒子で形成されていることを意味する。アルミナ層3を構成する材料(粒子)の結晶相は、アルミナ層3の露出した部位のX線回折パターンをX線回折装置によって測定することによって同定することができる。アルミナ層3の上面は、アルミナ層3の有する複数の鱗片状の粒子の表面の一部を含んでいる。アルミナ層3の上面のSEM(Scanning Electron Microscope)像及びX線回折パターンの測定結果をあわせて考えると、鱗片状の粒子は、γ-アルミナ粒子であると推定される。
【0023】
アルミナ層3は、金属基板2の貫通孔25に連通する貫通孔35を有する。平面視で、アルミナ層3における貫通孔35の開口縁36は、円形状であるが、これに限らない。
【0024】
(2.1.3)下部電極
下部電極4は、アルミナ層3の上面31上に設けられている。平面視で、下部電極4の外縁40は、例えば、四角形状であるが、これに限らない。下部電極4の厚さは、例えば、3μmであるが、これに限らない。
【0025】
下部電極4の材料は、例えば、銀(Ag)及びパラジウム(Pd)を含む。より詳細には、下部電極4の材料は、例えば、Ag-Pd合金を含む。
【0026】
下部電極4は、貫通孔25に連通する第1開口部45を有する。平面視で、下部電極4における第1開口部45の開口縁46は、円形状であるが、これに限らない。
【0027】
(2.1.4)圧電体層
圧電体層5は、下部電極4の上面41上に設けられている。平面視で、圧電体層5の外縁50は、例えば、四角形状であるが、これに限らない。圧電体層5の厚さは、例えば、5μm以上40μm以下であり、好ましくは、10μm以上30μm以下である。圧電体層5の厚さは、一例として11μmであるが、これに限らない。
【0028】
圧電体層5の材料は、例えば、PbとZrとZnとNbとOとを含むが、これに限らない。より詳細には、圧電体層5の材料は、例えば、Pb1.015Zr0.44(Zn1/3Nb2/30.103.015を含むが、圧電体層5の材料の組成比は、これに限らない。
【0029】
圧電体層5は、貫通孔25に連通する第2開口部55を有する。平面視で、圧電体層5における第2開口部55の開口縁56は、円形状であるが、これに限らない。
【0030】
(2.1.5)上部電極
上部電極6は、圧電体層5の上面51上に設けられている。平面視で、上部電極6の外縁60は、例えば、四角形状であるが、これに限らない。上部電極6の厚さは、例えば、3μmであるが、これに限らない。
【0031】
上部電極6の材料は、例えば、Ag及びPdを含む。より詳細には、上部電極6の材料は、例えば、Ag-Pd合金を含む。
【0032】
上部電極6は、貫通孔25に連通する第3開口部65を有する。平面視で、上部電極6における第3開口部65の開口縁66は、円形状であるが、これに限らない。
【0033】
(2.1.6)圧電素子における、下部電極、圧電体層及び上部電極のレイアウト
圧電素子1では、平面視で、下部電極4の外縁40(第1外縁)は、金属基板2の外縁20(第2外縁)よりも内側に位置している。平面視で、圧電体層5の外縁50(第3外縁)は、下部電極4の外縁40よりも内側に位置している。平面視で、上部電極6の外縁60(第4外縁)は、圧電体層5の外縁50よりも内側に位置している。圧電素子1では、下部電極4の上面41の面積が金属基板2の上面21の面積よりも小さく、圧電体層5の上面51の面積が下部電極4の上面41の面積よりも小さく、上部電極6の上面61の面積が圧電体層5の上面51の面積よりも小さい。
【0034】
以下では、図1に示すように、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸の3軸を有する直交座標を規定し、特に、金属基板2の厚さ方向に沿った軸を「Z軸」とし、金属基板2の長手方向に沿った軸を「X軸」とし、金属基板2の短手方向に沿った軸を「Y軸」として説明する。X軸、Y軸、及びZ軸は、いずれも仮想的な軸であり、図面中の「X」、「Y」、「Z」を示す矢印は、説明のために表記しているに過ぎず、いずれも実体を伴わない。
【0035】
圧電素子1では、下部電極4の上面41のうち圧電体層5に覆われていない部位411の一部が、外部接続用の端子部を兼ねている。圧電素子1では、図1に示すように、平面視で、下部電極4の外縁40と圧電体層5の外縁50との距離が一様ではなく、第1幅W1が第2幅W2よりも広い。第1幅W1は、X軸に沿った方向の圧電素子1の第1端における、下部電極4の外縁40と圧電体層5の外縁50との間の幅である。第2幅W2は、X軸に沿った方向の圧電素子1の第2端における、下部電極4の外縁40と圧電体層5の外縁50との間の幅である。
【0036】
また、圧電素子1では、貫通孔25、貫通孔35、第1開口部45、第2開口部55及び第3開口部65の全部が連通している。
【0037】
また、圧電素子1では、平面視で、下部電極4における第1開口部45の開口縁46は、金属基板2における貫通孔25の開口縁26よりも外側に位置している。つまり、平面視で、第1開口部45を通して金属基板2の貫通孔25の開口縁26に沿った枠状の部分が見える。平面視で、圧電体層5における第2開口部55の開口縁56は、下部電極4における第1開口部45の開口縁46よりも外側に位置している。つまり、平面視で、第2開口部55を通して下部電極4の第1開口部45の開口縁46に沿った枠状の部分が見える。平面視で、上部電極6における第3開口部65の開口縁66は、圧電体層5における第2開口部55の開口縁56よりも外側に位置している。つまり、平面視で、第3開口部65を通して圧電体層5の第2開口部55の開口縁56に沿った枠状の部分が見える。
【0038】
圧電素子1では、平面視で、第1開口部45の開口縁46、貫通孔25の開口縁26、第2開口部55の開口縁56及び第3開口部65の開口縁66は、上部電極6の外縁60の形状における幾何中心600を囲んでいる。
【0039】
(2.1.7)圧電素子の動作
圧電素子1では、例えば、上部電極6と下部電極4との間に上部電極6が下部電極4に対して高電位となる電圧が印加されたとき、図3Aに示すように、圧電素子1の圧電体層5が伸びるので、上部電極6の上面61が凸面となるように圧電素子1が屈曲する。
【0040】
また、圧電素子1では、例えば、上部電極6と下部電極4との間に下部電極4が上部電極6に対して高電位となる電圧が印加されたとき、図3Bに示すように、圧電素子1の圧電体層5が縮むので、上部電極6の上面61が凹面となるように圧電素子1が屈曲する。
【0041】
また、圧電素子1は、圧電素子1の上部電極6と下部電極4との間に圧電素子1の共振周波数を駆動周波数とする交流電圧(第1電気信号)Vs1が印加された場合、図4に示すように、圧電素子1が屈曲振動する。つまり、圧電素子1は、ベンディングモードで振動する。図4では、交流電圧が印加されていないときの圧電素子1を二点鎖線で示し、上部電極6が下部電極4に対して高電位となる電圧が印加されたときの圧電素子1を実線で示し、下部電極4が上部電極6に対して高電位となる電圧が印加されたときの圧電素子を点線で示してある。
【0042】
圧電素子1では、圧電素子の厚さ方向に貫通する開口部を有していない比較例の圧電素子と比べて、圧電素子1の屈曲振動の変位量を増加させることができる。
【0043】
(2.1.8)圧電素子の製造方法
実施形態1に係る圧電素子1の製造方法について、簡単に説明する。
【0044】
実施形態1に係る圧電素子1の製造方法では、まず、金属基板2の多数個取りが可能なベース金属基板を準備し、その後、第1工程、第2工程、第3工程、第4工程、第5工程、第6工程及び第7工程を順次行う。
【0045】
第1工程では、鉄とクロムとアルミニウムとを含むベース金属基板を大気中で加熱処理することにより、ベース金属基板の上面の全域を覆うアルミナ層を形成する。加熱処理の条件に関し、熱処理温度は、例えば、850℃以上900℃以下であり、熱処理時間は、例えば、2時間である。なお、第1工程では、アルミナ層である第1アルミナ層の他に、ベース金属基板の下面の全域を覆う第2アルミナ層が形成されてもよい。
【0046】
第2工程では、ベース金属基板及びアルミナ層を貫通する複数の貫通孔をエッチング又はドリル加工によって形成する。複数の貫通孔の各々は、圧電素子1の金属基板2の貫通孔25及びアルミナ層3の貫通孔35を含む。
【0047】
第3工程では、下部電極4の材料を含むペースト(例えば、Ag-Pd合金ペースト)をスクリーン印刷することによって、複数の下部電極材料部を含む第1パターン部をアルミナ層上に形成する。
【0048】
第4工程では、圧電体層5の材料を含むペーストをメタルマスク印刷することによって、複数の圧電体材料部を含む第2パターン部を第1パターン部上に形成する。圧電体層5の材料は、例えば、Pb1.015Zr0.44(Zn1/3Nb2/30.103.015である。
【0049】
第5工程では、上部電極6の材料を含むペースト(例えば、Ag-Pd合金ペースト)をスクリーン印刷することによって、第2パターン部上に複数の上部電極材料部を含む第3パターン部を形成する。
【0050】
第6工程では、第1パターン部、第2パターン部及び第3パターン部を所定の焼成温度(例えば、875℃)で焼成することによって、複数の下部電極4を含む下部電極パターン部、複数の圧電体層5を含む圧電体層パターン部及び複数の上部電極6を含む上部電極パターン部を形成する。これにより、複数の圧電素子1を含む構造体が形成される。
【0051】
第7工程では、ダイシングブレードにより構造体をダイシングすることによって、構造体を個々の圧電素子1に分離する。構造体においてダイシングレーンには、ベース金属基板及びアルミナ層は存在するが、下部電極パターン部、圧電体層パターン部及び上部電極パターン部は存在しない。ここで、ダイシングブレードの厚みは、構造体においてダイシングレーンを挟んで隣り合う2つの下部電極4間の第1距離よりも小さい。また、ダイシングブレードの厚みは、構造体においてダイシングレーンを挟んで隣り合う2つの圧電体層5間の第2距離よりも小さい。また、ダイシングブレードの厚みは、構造体においてダイシングレーンを挟んで隣り合う2つの上部電極6間の第3距離よりも小さい。以上より、第6工程では、ダイシングブレードの厚み<第1距離<第2距離<第3距離、の関係を満たす。
【0052】
圧電素子1の製造方法によれば、第7工程において、下部電極4、圧電体層5及び上部電極6の割れ及び欠け(チッピング)が発生し難い。したがって、圧電素子1の製造方法によれば、製造歩留まりの向上を図れる。また、圧電素子1では、ハンドリングする際にハンドリング用のツールが下部電極4、圧電体層5及び上部電極6に接触するのを防止することができるので、下部電極4、圧電体層5及び上部電極6の破損を防止することができる。よって、圧電素子1は、圧電体層5の薄型化が可能である。
【0053】
なお、第7工程では、ダイシングブレードにより構造体をダイシングしているが、ダイシングブレードを用いた方法に限らず、構造体のダイシングレーンに沿ってレーザ光を照射してダイシングするレーザダイシングを行ってもよい。ダイシングブレードを用いた方法、レーザダイシングのいずれの場合も、ダイシングレーンの幅寸法がダイシングによる切削幅(最大幅)よりも広くなるように、第3工程で用いる第1スクリーン印刷用マスク、第4工程で用いるメタルマスク及び第5工程で用いる第2スクリーン印刷用マスクを設計してある。
【0054】
(2.2)超音波トランスデューサ
以下、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100について、図5及び6を参照して、より詳細に説明する。
【0055】
超音波トランスデューサ100は、超音波の送波(送信)と超音波の受波(受信)との両方が可能に構成されている。超音波トランスデューサ100は、例えば、自動車等の車両に搭載されて車両の周囲の物体(障害物等)を検知する超音波センサに用いられる。超音波センサは、例えば、超音波トランスデューサ100と、駆動回路と、信号処理回路と、を備える。超音波センサは、例えば、TOF(Time of Flight)型の超音波センサである。駆動回路は、超音波トランスデューサ100から超音波を送波させるために超音波トランスデューサ100の圧電素子1を駆動する電気信号を圧電素子1へ印加する。信号処理回路は、超音波トランスデューサ100が超音波の反射波を受波したときに圧電素子1から出力される電気信号を処理する。信号処理回路は、例えば、超音波センサの検知エリア内の物体の有無と、超音波トランスデューサ100から物体までの距離と、の少なくとも一方を検知する。超音波センサの超音波トランスデューサは、例えば、自動車のバンパーに取り付けられる。超音波トランスデューサ100を自動車用の超音波センサとして用いる場合、超音波トランスデューサ100は、例えば、X軸方向(図5での左右方向)が垂直方向となり、Y軸方向(図5での上下方向)が水平方向となり、Z軸方向(図5での紙面に直交する方向)が検知方向(超音波の送受波方向)となるように設置される。なお、超音波トランスデューサ100の取り付けの向きは、例えば、超音波トランスデューサ100の用途に応じて適宜変更可能である。なお、超音波トランスデューサ100が駆動回路及び信号処理回路の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0056】
(2.2.1)ケース
ケース101では、底板部102と筒部103とが一体に形成されている。ケース101の形状は、有底筒状である。平面視で、ケース101の外縁は、円形状である。振動板部120は、上面121及び下面122を有する。振動板部120の厚さは、例えば、0.3mm以上1.0mm以下であり、一例として、0.9mmである。平面視で、ケース101の外径は、例えば、14mmであるが、これに限らず、例えば、15.5mmでもよい。また、Z軸方向におけるケース101の長さは、例えば、9mmであるが、これに限らない。ケース101では、振動板部120の下面122が超音波の送受波面を構成している。
【0057】
ケース101の材料は、例えば、アルミニウム合金であるが、これに限らず、例えば、マグネシウム合金、ステンレス鋼、チタン合金又はエンジニアプラスチックでもよい。
【0058】
平面視で、振動板部120は、第1方向(X軸方向)における第1最大長さR1が第2方向(Y軸方向)における第2最大長さR2に比べて長くなる形状としてある。これにより、超音波トランスデューサ100では、X軸方向の指向角をY軸方向の指向角よりも狭くできる。なお、第1最大長さR1は、12.6mm、第2最大長さR2は、8mmであるが、これらの数値に限定されない。
【0059】
(2.2.2)接合部
接合部105は、圧電素子1の金属基板2の下面22と振動板部120の上面121との間に介在している。接合部105の材料は、例えば、樹脂系接着剤、導電性接合材料又はDAF(Die Attach Film)である。樹脂系接着剤は、例えば、エポキシ接着剤を含む。導電性接合材料は、例えば、導電性ペースト(銀ペースト等)を含む。
【0060】
(2.2.3)第1リード線、第2リード線、第1導電性接合部、第2導電性接合部
超音波トランスデューサ100では、第1リード線141が、圧電素子1の下部電極4に接続される第1導通部材を構成し、第2リード線142が、圧電素子1の上部電極6に接続される第2導通部材を構成している。第1リード線141の第1端は、第1導電性接合部131によって下部電極4に接合されて下部電極4と電気的に接続されており、第2リード線142の第1端は、第2導電性接合部132によって上部電極6に接合されて上部電極6と電気的に接続されている。
【0061】
第1リード線141及び第2リード線142は、可撓性を有する電線である。第1リード線141の一部及び第2リード線142の一部は、ケース101の外に導出されている。第1リード線141の第2端及び第2リード線142の第2端は、例えば、超音波センサの備える駆動回路と超音波センサの備える信号処理回路とに接続される。
【0062】
第1導電性接合部131及び第2導電性接合部132の材料は、例えば、はんだを含む。
【0063】
なお、超音波センサでは、超音波トランスデューサ100を超音波の送波(送信)に用いる場合には、超音波トランスデューサ100が駆動回路に接続され、超音波トランスデューサ100を超音波の受波(受信)に用いる場合には、超音波トランスデューサ100が信号処理回路に接続される。
【0064】
(2.2.4)吸音部材
吸音部材150は、ケース101内において圧電素子1の上方に配置されている。吸音部材150の材料は、例えば、発泡体を含む。発泡体は、例えば、ウレタン系の発泡体、発泡シリコーンを含む。
【0065】
(2.2.5)封止部
封止部160は、ケース101内において吸音部材150上に配置されている。封止部160の材料は、例えば、シリコーン樹脂を含む。
【0066】
(2.2.6)超音波トランスデューサの特性
図7では、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100の特性説明図であり、圧電素子1の駆動周波数と、超音波トランスデューサ100から送波される超音波の音圧との関係を黒丸のプロットで示してある。また、図7では、超音波トランスデューサ100の比較例における圧電素子の駆動周波数と音圧との関係を白抜きの四角で示してある。比較例の超音波トランスデューサにおける圧電素子は、圧電素子の厚さ方向に貫通する開口部を有していない。図7の横軸は、駆動周波数である。図7の縦軸は、複数の比較例の音圧の平均値を1として規格化したときの音圧である。
【0067】
図7から、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100では、比較例と比べて、圧電素子1の駆動周波数の高速化を図りつつ高音圧化を図れることが分かる。
【0068】
(3)効果
(3.1)圧電素子
実施形態1に係る圧電素子1では、金属基板2が、金属基板2の厚さ方向に沿って形成された貫通孔25を有し、下部電極4が、貫通孔25に連通する第1開口部45を有し、圧電体層5が、貫通孔25に連通する第2開口部55を有し、上部電極6が、貫通孔25に連通する第3開口部65を有する。これにより、実施形態1に係る圧電素子1は、水平方向の伸縮運動の変位を大きくでき、圧電素子1の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。
【0069】
また、実施形態1に係る圧電素子1は、下部電極4と金属基板2との間に介在しているアルミナ層3を備え、アルミナ層3の上面31が、アルミナ層3の有する複数の鱗片状の粒子の表面の一部を含むので、下部電極4の剥離を抑制することが可能となる。
【0070】
実施形態1に係る圧電素子1では、アルミナ層3が金属基板2の上面21の全域を覆っており、金属基板2の貫通孔25に連通する貫通孔35を有するので、圧電特性を向上させることが可能となる。より詳細には、実施形態1に係る圧電素子1では、製造時において金属基板2と圧電体層5との間で熱拡散が起こることを抑制でき、圧電特性を向上させることが可能となる。
【0071】
また、実施形態1に係る圧電素子1では、平面視で、下部電極4の外縁40(第1外縁)が、金属基板2の外縁20(第2外縁)よりも内側に位置し、圧電体層5の外縁50(第3外縁)が、下部電極4の外縁40よりも内側に位置し、上部電極6の外縁60(第4外縁)が、圧電体層5の外縁50(第3外縁)よりも内側に位置している。これにより、実施形態1に係る圧電素子1によれば、圧電素子1の動作周波数(共振周波数)の高速化を図ることが可能となる。より詳細には、実施形態1に係る圧電素子1は、圧電体層5の薄型化を図ることができるので、圧電素子1の共振周波数をより高くすることが可能となり、駆動周波数をより高くすることが可能となる。
【0072】
(3.2)超音波トランスデューサ
実施形態1に係る超音波トランスデューサ100は、圧電素子1と、圧電素子1の金属基板2と接合されている振動板部120と、を備えるので、圧電素子の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。これにより、超音波トランスデューサ100では、高音圧化を図ることが可能となる。よって、例えば、超音波トランスデューサ100を備える超音波センサを自動車に設置して用いる場合に、超音波センサのS/N比を向上させることが可能となり、検知対象の物体を検知可能な距離をより長くすることが可能となる。
【0073】
また、超音波トランスデューサ100では、圧電素子1における圧電体層5の薄型化により、超音波の指向角の挟角化を図ることができる。これにより、超音波トランスデューサ100から送波された超音波が路面、縁石等に入射することを抑制でき、路面、縁石等からの反射波が超音波トランスデューサ100で受波されることを抑制でき、超音波センサのS/N比を向上させることが可能となり、検知対象の物体を検知可能な距離をより長くすることが可能となる。
【0074】
(実施形態2)
以下、実施形態2に係る超音波トランスデューサ100aについて、図8を参照しながら説明する。なお、実施形態2に係る超音波トランスデューサ100aに関し、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100と同様の構成要素には、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0075】
実施形態2に係る超音波トランスデューサ100aは、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100における振動板部120の代わりに、底面が開口した円錐状の振動板部120aを備える。
【0076】
また、実施形態2に係る超音波トランスデューサ100aは、実施形態1に係る超音波トランスデューサ100におけるケース101の代わりに、ケース101aを備える。
【0077】
超音波トランスデューサ100aでは、ケース101a内に、圧電素子1及び振動板部120aが収容されている。振動板部120aは、圧電素子1の金属基板2の下面22に接合されている。振動板部120aは、ケース101aとは別部材であり、ケース101aから離れている。
【0078】
ケース101aは、台座170と、キャップ106と、メッシュ部材165と、を含む。また、超音波トランスデューサ100aは、台座170から突出しており、圧電素子1を支持している支持部180を備える。また、超音波トランスデューサ100aは、第1導電性接合部131及び第2導電性接合部132と、第1リード線141及び第2リード線142と、第1リード端子191及び第2リード端子192と、を備える。
【0079】
台座170は、円盤状である。台座170の材料は、例えば、アルミニウム合金であるが、これに限らず、例えば、マグネシウム合金、ステンレス鋼、チタン合金又はエンジニアプラスチックでもよい。
【0080】
キャップ106は、底壁161と円筒状の周壁162とを有する有底円筒状であり、圧電素子1及び振動板部120aを覆うように台座170に固着されている。キャップ106の材料は、例えば、アルミニウム合金であるが、これに限らず、例えば、マグネシウム合金、ステンレス鋼、チタン合金又はエンジニアプラスチックでもよい。
【0081】
メッシュ部材165は、キャップ106の底壁161に形成された窓孔163内に配置されており、振動板部120aの前方に位置している。メッシュ部材165は、超音波を通すことができるように複数の開口部166を有する。
【0082】
第1リード線141及び第2リード線142は、可撓性を有する電線である。超音波トランスデューサ100aでは、第1リード線141の第1端は、第1導電性接合部131により圧電素子1の下部電極4に接合されて電気的に接続され、第1リード線141の第2端は、第1リード端子191に接合されて電気的に接続されている。また、超音波トランスデューサ100aでは、第2リード線142の第1端は、第2導電性接合部132により圧電素子1の上部電極6に接合されて電気的に接続され、第2リード線142の第2端は、第2リード端子192に接合されて電気的に接続されている。
【0083】
第1リード端子191及び第2リード端子192の各々は、ピン状である。第1リード端子191及び第2リード端子192は、台座170の厚さ方向において台座170を貫通している。第1リード端子191と第2リード端子192とは電気的に絶縁されている。第1リード端子191及び第2リード端子192は、台座170とは第1リード端子191及び第2リード端子192と台座170との間に介在する第1絶縁部及び第2絶縁部により電気的に絶縁されているが、これに限らない。例えば、第1リード端子191及び第2リード端子192のうちの一方が台座170と電気的に接続されていてもよい。
【0084】
実施形態2に係る超音波トランスデューサ100aは、圧電素子1と、圧電素子1の金属基板2と接合されている振動板部120aと、を備えるので、圧電素子1の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。これにより、超音波トランスデューサ100aでは、超音波の高音圧化を図ることが可能となる。
【0085】
(変形例)
実施形態1~2は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。実施形態1~2は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0086】
例えば、平面視での金属基板2の外縁20は、長方形状である場合に限らず、例えば、正方形状であってもよい。
【0087】
金属基板2は、アルミニウムを含むことは必須ではなく、少なくとも鉄及びクロムを含んでいればよい。
【0088】
また、圧電素子1においてアルミナ層3を含むことは必須ではない。つまり、圧電素子1は、アルミナ層3を含まず、下部電極4が金属基板2上に直接設けられていてもよい。
【0089】
また、圧電体層5の材料は、PbとZrとZnとNbとOとを含む材料、例えば、Pb1.015Zr0.44(Zn1/3Nb2/30.103.015に限らず、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、マグネシウムニオブ酸鉛(PMN)、KNbO、NaNbO又はK0.5Na0.5NbOであってもよい。
【0090】
また、圧電素子1では、圧電体層5が下部電極4上に直接設けられているが、これに限らず、圧電体層5がバッファ層を介して下部電極4上に設けられていてもよい。バッファ層は、例えば、下部電極4の材料の少なくとも一部と圧電体層5の材料の少なくとも一部とを含む。
【0091】
また、圧電素子1は、金属基板2の貫通孔25と下部電極4の第1開口部45と圧電体層5の第2開口部55と上部電極6の第3開口部65とを含んで圧電素子1の厚さ方向に貫通する貫通孔を1つだけ有する構成に限らず、当該貫通孔を複数有する構成であってもよい。
【0092】
超音波トランスデューサ100において、第1導通部材及び第2導通部材は、第1リード線141及び第2リード線142に限らず、例えば、フレキシブルプリント配線板の導体パターン部に含まれる第1リード電極(第1導体部)及び第2リード電極(第2導体部)であってもよい。
【0093】
また、超音波トランスデューサ100aにおいて、第1導通部材及び第2導通部材は、第1リード線141及び第2リード線142に限らず、例えば、第1導電性ワイヤ及び第2導電性ワイヤであってもよい。
【0094】
(態様)
以上説明した実施形態1~2等から、本明細書には以下の態様が開示されている。
【0095】
第1の態様に係る圧電素子(1)は、金属基板(2)と、下部電極(4)と、圧電体層(5)と、上部電極(6)と、を備える。金属基板(2)は、少なくとも鉄及びクロムを含む。下部電極(4)は、金属基板(2)上に設けられている。圧電体層(5)は、下部電極(4)上に設けられている。上部電極(6)は、圧電体層(5)上に設けられている。金属基板(2)は、金属基板(2)の厚さ方向に沿って形成された貫通孔(25)を有する。下部電極(4)は、貫通孔(25)に連通する第1開口部(45)を有する。圧電体層(5)は、貫通孔(25)に連通する第2開口部(55)を有する。上部電極(6)は、貫通孔(25)に連通する第3開口部(65)を有する。
【0096】
第1の態様に係る圧電素子(1)によれば、圧電素子(1)の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。
【0097】
第2の態様に係る圧電素子(1)は、第1の態様において、アルミナ層(3)を更に含む。アルミナ層(3)は、金属基板(2)と下部電極(4)との間に介在している。金属基板(2)は、アルミニウムを更に含む。アルミナ層(3)の上面(31)は、アルミナ層(3)の有する複数の鱗片状の粒子の表面の一部を含む。
【0098】
第2の態様に係る圧電素子(1)は、下部電極(4)の剥離を抑制することが可能となる。
【0099】
第3の態様に係る圧電素子では、第2の態様において、アルミナ層(3)は、金属基板(2)の上面(21)の全域を覆っている。アルミナ層(3)は、金属基板(2)の貫通孔(25)に連通する貫通孔(35)を有する。
【0100】
第3の態様に係る圧電素子(1)では、圧電特性を向上させることが可能となる。
【0101】
第4の態様に係る圧電素子(1)では、第1~3の態様のいずれか一つにおいて、平面視で、下部電極(4)の第1外縁(外縁40)は、金属基板(2)の第2外縁(外縁20)よりも内側に位置している。平面視で、圧電体層(5)の第3外縁(外縁50)は、下部電極(4)の第1外縁(外縁40)よりも内側に位置している。平面視で、上部電極(6)の第4外縁(外縁60)は、圧電体層(5)の第3外縁(外縁50)よりも内側に位置している。
【0102】
第4の態様に係る圧電素子(1)によれば、圧電体層(5)をより薄くすることが可能となり、圧電素子(1)の動作周波数の高速化を図ることが可能となる。
【0103】
第5の態様に係る圧電素子(1)では、第4の態様において、平面視で、下部電極(4)における第1開口部(45)の開口縁(46)は、金属基板(2)における貫通孔(25)の開口縁(26)よりも外側に位置している。平面視で、圧電体層(5)における第2開口部(55)の開口縁(56)は、下部電極(4)における第1開口部(45)の開口縁(46)よりも外側に位置している。平面視で、上部電極(6)における第3開口部(65)の開口縁(66)は、圧電体層(5)における第2開口部(55)の開口縁(56)よりも外側に位置している。
【0104】
第5の態様に係る圧電素子(1)によれば、下部電極(4)の第1開口部(45)、圧電体層(5)の第2開口部(55)及び上部電極(6)の第3開口部(65)それぞれを容易に形成することが可能となるとともに、位置精度の向上を図れるとともに、下部電極(4)の第1開口部(45)、圧電体層(5)の第2開口部(55)及び上部電極(6)の第3開口部(65)それぞれの位置精度の向上を図れる。
【0105】
第6の態様に係る圧電素子(1)では、第5の態様において、平面視で、第1開口部(45)の開口縁(46)、貫通孔(25)の開口縁(26)、第2開口部(55)の開口縁(56)及び第3開口部(65)の開口縁(66)は、上部電極(6)の第4外縁(外縁60)の形状における幾何中心(600)を囲んでいる。
【0106】
第6の態様に係る圧電素子(1)によれば、圧電素子(1)の屈曲振動の変位量を、より増加させることが可能となる。
【0107】
第7の態様に係る超音波トランスデューサ(100;100a)は、第1~6の態様のいずれか一つの圧電素子(1)と、振動板部(120;120a)と、第1導通部材(第1リード線141)と、第2導通部材(第2リード線142)と、第1導電性接合部(131)と、第2導電性接合部(132)と、を備える。振動板部(120;120a)は、圧電素子(1)の金属基板(2)と接合されている。第1導通部材(第1リード線141)は、圧電素子(1)の下部電極(4)に接続される。第2導通部材(第2リード線142)は、圧電素子(1)の上部電極(6)に接続される。第1導電性接合部(131)は、下部電極(4)と第1導通部材(第1リード線141)とを接合している。第2導電性接合部(132)は、上部電極(6)と第2導通部材(第2リード線142)とを接合している。
【0108】
第7の態様に係る超音波トランスデューサ(100;100a)は、圧電素子(1)の屈曲振動の変位量を増加させることが可能となる。
【0109】
第8の態様に係る超音波トランスデューサ(100)では、第7の態様において、圧電素子(1)を収容しているケース(101)を更に備える。ケース(101)は、底板部(102)と、筒部(103)と、を有する。底板部(102)は、平板状である。筒部(103)は、底板部(102)の一面の周部から底板部(102)の厚さ方向に突出しており、圧電素子(1)を囲んでいる。底板部(102)のうち筒部(103)により囲まれた部分が、振動板部(120)を兼ねている。
【0110】
第8の態様に係る超音波トランスデューサ(100)は、例えば、車両に取り付けられて車両の外部の物体を検知する超音波センサに用いることができる。
【符号の説明】
【0111】
1 圧電素子
2 金属基板
20 外縁(第2外縁)
25 貫通孔
26 開口縁
3 アルミナ層
30 外縁
31 上面
35 貫通孔
36 開口縁
4 下部電極
40 外縁(第1外縁)
41 上面
411 部位
45 第1開口部
46 開口縁
5 圧電体層
50 外縁(第3外縁)
51 上面
55 第2開口部
56 開口縁
6 上部電極
60 外縁(第4外縁)
61 上面
65 第3開口部
66 開口縁
600 幾何中心
100、100a 超音波トランスデューサ
101 ケース
102 底板部
103 筒部
120、120a 振動板部
131 第1導電性接合部
132 第2導電性接合部
141 第1リード線(第1導通部材)
142 第2リード線(第2導通部材)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8