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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001707
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】植物製品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A01G 24/28 20180101AFI20221226BHJP
   A01G 24/25 20180101ALI20221226BHJP
   A01G 22/60 20180101ALI20221226BHJP
【FI】
A01G24/28
A01G24/25
A01G22/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021102599
(22)【出願日】2021-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】521271990
【氏名又は名称】梅原 明美
(74)【代理人】
【識別番号】100165423
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 雅久
(72)【発明者】
【氏名】梅原 明美
【テーマコード(参考)】
2B022
【Fターム(参考)】
2B022AB17
2B022BA14
2B022BB04
(57)【要約】
【課題】水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい植物製品及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 植物製品1は、植物体2と、水苔5を含み植物体2の根部3を覆う保水材部4と、植物性材料8から形成され容器9の内部に設けられて保水材部4を覆う栽培基材部7と、を具備する。また、植物製品1の製造方法は、水苔5を水に浸して吸水させる工程と、根部3を水洗して露出させる工程と、露出した根部3を吸水した水苔5で覆い保水材部4を形成する工程と、保水材部4で覆われた根部3を容器9の内部に挿入すると共に植物性材料8を容器9の内部に導入して植物体2を容器9に植え付ける工程と、を具備する。これにより、優れた水分調整能力が発揮されて根腐れの発生が抑えられ、美しく且つ環境に優しい観賞に適した植物製品1が得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体と、
水苔を含み前記植物体の根部を覆う保水材部と、
植物性材料から形成され容器の内部に設けられて前記保水材部を覆う栽培基材部と、を具備することを特徴とする観葉植物。
【請求項2】
前記保水材部は、球状の形態を成し、前記植物体を前記容器に植え付ける時点において前記根部の全体を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の観葉植物。
【請求項3】
前記保水材部の外周は、天然繊維から成る支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の観葉植物。
【請求項4】
前記植物性材料は、椰子殻であることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の観葉植物。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の観葉植物を製造する方法であって、
前記水苔を水に浸して吸水させる工程と、
前記根部を水洗して露出させる工程と、
露出した前記根部を吸水した前記水苔で覆い前記保水材部を形成する工程と、
前記保水材部で覆われた前記根部を前記容器の内部に挿入すると共に前記植物性材料を前記容器の内部に導入して前記植物体を前記容器に植え付ける工程と、を具備することを特徴とする観葉植物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に植え付けられた観葉植物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、観葉植物を鉢に植えて栽培することが知られている。例えば、特許文献1には、植木鉢と、植木鉢の収納容器に充填される充填材と、この充填材により支持される植物と、を有する鉢植えの観葉植物が開示されている。
【0003】
また例えば、特許文献2には、観葉植物を栽培する際に、繊維を集合してなる繊維塊状体を有する人工土壌粒子を利用し、その人工土壌培地を、当該観葉植物の栽培に適した水分環境に調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3160200号公報
【特許文献2】特開2016-101160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物の生育には植物の種類や栽培環境等に適した好適な土壌の管理が重要である。即ち、栽培する植物に適した土壌を選択し、栽培時には頻繁に適量の散水を行い、水分を正確に調整する必要がある。しかしながら、従来の観葉植物の栽培方法では、水分の調整が難しく、根腐れ等が発生するという問題点があった。
【0006】
具体的には、従来技術の観葉植物は、根腐れを防止するために、少なくとも2から3日に一度は、植木鉢等の容器から古い水を排出し、適量の新しい水を供給する水替えが必要であった。適切な水替え作業が行われず、水質及び水量が適切に調整されなければ、根腐れ等が起こり、植物が枯れてしまうこともある。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来技術のように、人工土壌培地を利用して植物を栽培する方法は、人工土壌培地に合成樹脂が含まれていることが環境上の問題となる。即ち、合成樹脂は、土壌中で分解されず、観葉植物の栽培を終了した後の分別も容易ではない。使用後に正しく分別処理がされなければ、微細化による微粒子の拡散及びそれに伴う有毒物質の拡散、土壌の汚染、水質の汚濁、大気の汚染、生態系へ影響等が問題となる。また、分別廃棄が行われても、廃棄処分後の再利用は容易ではなく、焼却処分時には有毒ガスの発生等が問題となる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい観葉植物及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の観葉植物は、植物体と、水苔を含み前記植物体の根部を覆う保水材部と、植物性材料から形成され容器の内部に設けられて前記保水材部を覆う栽培基材部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の観葉植物の製造方法は、上記の観葉植物を製造する方法であって、前記水苔を水に浸して吸水させる工程と、前記根部を水洗して露出させる工程と、露出した前記根部を吸水した前記水苔で覆い前記保水材部を形成する工程と、前記保水材部で覆われた前記根部を前記容器の内部に挿入すると共に前記植物性材料を前記容器の内部に導入して前記植物体を前記容器に植え付ける工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の観葉植物によれば、植物体と、水苔を含み植物体の根部を覆う保水材部と、植物性材料から形成され容器の内部に設けられて保水材部を覆う栽培基材部と、を具備する。このような構成により、容易な作業で植物体の栽培に好適な水分調整を行うことができる。これにより、根腐れの発生が抑えられ、観賞に適した美しい植物体を栽培することができる。
【0012】
具体的には、保水材部は、優れた保水性を有する水苔を含み、この保水材部によって植物体の根部が覆われている。そして、根部を覆う保水材部は、植物性材料から形成された栽培基材部で覆われている。このような構成により、保水材部の優れた保水性と、栽培基材部の培地としての基本的な性能及び排水性等を利用して、優れた水分調整能力が発揮される。これにより、植物体の根部は、長期間、好適な水分量に維持される。
【0013】
例えば、従来技術によれば、2から3日毎に水替えや散水等の水分調整作業が必要であったが、本発明の観葉植物は、1週間から1か月に1回程度の水分調整作業であっても好適な水分量を維持することができる。よって、作業者が行う水分調整作業の負担を減らし、且つ根腐れのない良好な植物体の生育が得られる。
【0014】
また、保水材部は水苔を含む構成であり、栽培基材部は植物性材料から形成されているので、従来の合成樹脂から成る培地を利用する場合のような環境問題の恐れもない。このように保水材部及び栽培基材部は、天然素材から形成されているので、観賞を終えた後の処分も容易であって、土壌中に廃棄されても有害物質を発生することなく自然に分解される。また、天然素材の利用は、温室効果ガス削減の観点からも優れている。
【0015】
また、本発明の観葉植物によれば、前記保水材部は、球状の形態を成し、前記植物体を前記容器に植え付ける時点において前記根部の全体を覆っていても良い。これにより、植物体を容器に植え付ける作業が容易になると共に、植え付け後の根部全体の水分調整が好適となり、植物体の生育が良好になる。
【0016】
また、本発明の観葉植物によれば、前記保水材部の外周は、天然繊維から成る支持部材に支持されても良い。このような構成により、保水材部は、根部から離れ落ちることなく安定して根部を覆うことになる。よって、植物体の植え付け作業が容易になると共に、植え付け後の水分調整が好適となる。
【0017】
また、支持部材は天然繊維から構成されているので、観賞中は勿論、観賞後においても、有害物質が発生する等の環境問題の要因にならない。また、観賞後の処分も容易である。
【0018】
また、本発明の観葉植物によれば、前記植物性材料は、椰子殻であっても良い。これにより栽培基材部は、培地としての優れた性能が得られ、特に優れた排水性が得られる。よって、植物体を栽培するための水分の調整が更に良好になる。
【0019】
また、本発明の観葉植物の製造方法によれば、水苔を水に浸して吸水させる工程と、根部を水洗して露出させる工程と、露出した根部を吸水した水苔で覆い保水材部を形成する工程と、保水材部で覆われた根部を容器の内部に挿入すると共に植物性材料を容器の内部に導入して植物体を容器に植え付ける工程と、を具備する。これにより、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい観葉植物を、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る観葉植物の概略を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る観葉植物の(A)水苔に吸水させる状態、(B)根部を露出する状態、を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る観葉植物の(A)根部を保水材部で覆う状態、(B)保水材部を支持部材で固定する状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る観葉植物の保水材部を形成する他の例を示す図であり、図4(A)は、布帛状の支持部材に水苔を載置する状態、図4(B)は、袋状の支持部材を利用して水苔を根部に取り付ける状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る観葉植物の植物体を容器に植え付ける状態を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る観葉植物の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る観葉植物及びその製造方法を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る観葉植物1の概略を示す図である。
【0022】
図1を参照して、観葉植物1は、室内または室外に置かれて栽培される観賞用の植物製品である。
観葉植物1は、容器9に植え込まれた植物体2と、植物体2の根部3を覆う保水材部4と、保水材部4を覆う栽培基材部7と、を具備する。
【0023】
植物体2は、観賞用の園芸品種の植物であり、いわゆる観葉植物である。なお、本発明では、植物体2、容器9、保水材部4、栽培基材部7等をまとめて植物製品の全体を観葉植物1と称している。
【0024】
植物体2としては、例えば、ポトス、オオゴンカズラ、フラッシュ、ゴールデンポトス、マングーカズラ、ポトスライム、ハワイアン、ビレンス、ハブカズラ、パーフェクトグリーン、マーブルクイーン、エンジョイ、パキラ、フィカス、ドラセナ、コルディリネ、チャメドリア、ステノカーパス、シルクジャスミン、オーガスタ、シナモン、ゲッケイジュ、ボストンタマシダ、ゴムノキ、セイヨウキヅタ、ベンジャミン、ブラキシトン、ステルクリア、ピレア、ブラッサイア、シェフレラ、シペラス、アフェランドラ、カラテア、クテナンテ、アルトカルプス、ペペロミア、ピペル、アグラオネマ、アロカシア、エクメア、アナナス、ヘルナンディア、チャセンシダ、アンスリウム、スパティフィラム、ディフェンバキア、オリヅルラン、クロトン、センネンボク、サンセベリア、アルテシマ、アレカヤシ、テーブルヤシ、カジュマル、シッサス、コーヒーの木、ソングオブインディア、ソングオブジャマイカ、ユッカ、マッサン、モンステラ等を採用することができる。
【0025】
植物体2の根部3は、保水材部4に覆われている。保水材部4は、水苔5から構成され、略球状の形態を成す。
なお、図1から図6において植物体2は1本のみ示されているが、植物体2の本数は1本に限定されるものではない。植物体2は複数本、即ち複数株、設けられても良い。例えば、3本の植物体2が設けられても良い。このように複数本の植物体2が設けられた場合においても、複数本の植物体2の根部3の全体が、1つの略球状の形態を成す保水材部4で覆われている。
【0026】
水苔5は、湿地に生育するミズゴケ科の蘚類の植物である。水苔5は、保水性に優れており、通気性も良い。特に本発明では、水苔5の優れた保水性を利用して、観葉植物1の水分調整機能が高められている。
また、水苔5は、適度な柔らかさであり、植物体2の根部3を綺麗に覆うことができ、その覆うための作業も容易であるので、観葉植物1の生産性の観点からも好ましい。
【0027】
水苔5としては、例えば、オオミズゴケ、ハクサンミズゴケ、キレハミズゴケ、コバノミズゴケ、キダチミズゴケ、カワラミズゴケ、イトナシミズゴケ、ハリミズゴケ、ノコギリミズゴケ、シワミズゴケ、ヤマミズゴケ、ヘリトリミズゴケ、ヒメミズゴケ、ヒロハノヒメミズゴケ、ノリクラミズゴケ、チャミズゴケ、ホソバミズゴケ、チャボホソバミズゴケ、ガッサンミズゴケ、イトミズゴケ、ミツアナミズゴケ、フナガタミズゴケ、ハリマミズゴケ、ミネミズゴケ、シナノミズゴケ、ホソベリミズゴケ、コバノホソベリミズゴケ、クシロミズゴケ、フサバミズゴケ、ムラサキミズゴケ、コアナミズゴケ、スギハミズゴケ、シロミズゴケ、ウスアオミズゴケ、アオオオミズゴケ、イボミズゴケ、フトミズゴケ、ウツクシミズゴケ、ゴレツミズゴケ、サンカクミズゴケ、サケバミズゴケ、セイタカミズゴケ、ウスベニミズゴケ、フシミズゴケ、ウロコミズゴケ、オオウロコミズゴケ、スギバミズゴケモドキ、シタミズゴケ、ユガミミズゴケ、ワタミズゴケ、ホソミズゴケ、トサミズゴケ、ワルンストロフミズゴケ、その他を採用することができる。
【0028】
水苔5のグレードは、一般的に利用されているAA級からAAAA級が好ましく、特に、長さ約15から40cm程度のAAA級が好ましい。これにより、水苔5は、適切な柔らかさ及び弾力性を有し根部3に好適に巻き付く。よって、保水材部4を形成する作業がやり易くなる。
【0029】
保水材部4の外周は、天然繊維から成る支持部材6に支持されても良い。具体的には、保水材部4には、例えば、麻紐、綿糸、絹紐、その他天然繊維から成る糸や紐である支持部材6が巻き付けられている。また、支持部材6は、天然繊維から成る布帛等でも良い。即ち、保水材部4は、布帛等に覆われるように支持されていても良い。
【0030】
このような構成により、保水材部4は、植物体2の根部3から離れ落ちることなく安定して根部3を覆うことになる。よって、植物体2の植え付け作業が容易になると共に、植え付け後の水分調整が好適となる。
【0031】
支持部材6で支持された保水材部4は、栽培基材部7に覆われている。栽培基材部7は、植物性材料8から形成され、保水材部4の全体を覆うよう容器9の内部に設けられている。
即ち、植物体2は、根部3が略球状の形態を成す保水材部4の水苔5で覆われ、水苔5を介して、容器9内部に設けられた栽培基材部7に埋め込まれている。
【0032】
栽培基材部7は、植物体2を育成するための培養土となる植物性材料8から形成されている。栽培基材部7を構成する植物性材料8は、例えば、椰子殻である。また、栽培基材部7を構成する植物性材料8として、木質チップ等が利用されても良い。また、植物性材料8として、椰子殻と木質チップが混合され利用されても良いし、椰子殻や木質チップ等にバーク、軽石等が混合されても良い。このような構成により、植物体2の栽培に適した培地が得られる。
【0033】
特に、椰子殻は、栽培基材部7を構成する植物性材料8として好適である。椰子殻は、例えば、熱帯から亜熱帯にかけて分布するココヤシ等の実の果皮から得られる。このように植物性材料8として椰子殻が用いられることにより、栽培基材部7は、培地としての優れた性能を発揮し、保水性、排水性、通気性、耐久性、膨張収縮性が良い。特に、椰子殻は、優れた排水性が得られる。これにより、植物体2を栽培するための水分が更に良好に調整される。
【0034】
容器9は、植物性材料8としての椰子殻等を収容する入れ物であり、例えば、植木鉢等である。容器9は、植物性材料8を外部に漏れ出さないよう収納可能であり、且つ植物体2を倒れないように支持することができれば良い。例えば、容器9は、袋等でも良い。
【0035】
また、容器9は、布帛や麻紐等から形成され栽培基材部7の全体を覆う構成でも良い。容器9の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な植木鉢のように略逆円錐台形状でも良いし、略円錐形状、略角錐形状、略半球形状、略球形状、略半楕円形状、略楕円球形状等でも良い。
【0036】
また、容器9は、麻、綿、絹等から成る布帛や、和紙、木材、竹材、その他の天然素材から形成されることが望ましい。これにより、環境上の問題もなく、観賞後の処分も容易である。
【0037】
上述の如く構成された本実施形態の観葉植物1は、植物体2の栽培に好適な水分調整を行うことができる。これにより、植物体2の根腐れの発生が抑えられ、観賞に適した美しい植物体2を栽培することができる。
【0038】
具体的には、保水材部4は、優れた保水性を有する水苔5を含み、この水苔5によって植物体2の根部3が覆われている。そして、根部3を覆う水苔5は、椰子殻等の植物性材料8から形成された栽培基材部7で覆われている。このような構成により、水苔5の優れた保水性と、植物性材料8の培地としての基本的な性能及び排水性等を利用して、優れた水分調整能力が発揮される。これにより、植物体2の根部3は、長期間、好適な水分量に維持される。
【0039】
例えば、従来技術によれば、2から3日毎に水替えや散水等の水分調整作業が必要であったが、本実施形態に係る観葉植物1は、1週間から1か月に1回程度の水分調整作業であっても好適な水分量を維持することができる。よって、作業者が行う水分調整作業の負担を減らし、且つ根腐れのない良好な植物体2の生育が得られる。
【0040】
また、保水材部4は水苔5を含む構成であり、栽培基材部7は植物性材料8から形成されているので、従来の合成樹脂から成る培地を利用する場合のような環境問題の恐れもない。このように保水材部4及び栽培基材部7は、天然素材から形成されているので、観賞を終えた後の処分も容易であって、土壌中に廃棄されても有害物質を発生することなく自然に分解される。また、天然素材の利用は、温室効果ガス削減の観点からも優れている。
【0041】
また、前述のとおり支持部材6も麻紐や麻布等の天然繊維から成る素材から構成されているので、観賞中は勿論、観賞後においても、有害物質が発生する等の環境問題の要因にならない。また、観賞後の処分も容易である。
【0042】
次に、図2ないし図5を参照して、観葉植物1を製造する工程について詳細に説明する。
図2(A)は、水苔5に吸水させる状態を示す図であり、図2(B)は、植物体2の根部3を露出する状態を示す図である。
【0043】
図2(A)に示すように、先ず、水苔5に吸水させる工程が行われる。具体的には、作業者は、吸水用容器10に水11を入れ、乾燥した水苔5を吸水用容器10に入れて水11に浸す。吸水用容器10は、例えば、桶やバケツ等である。
【0044】
次いで、図2(B)に示すように、植物体2の根部3を水洗して露出させる工程が行われる。
根部3を水洗して露出させる工程は、図2(A)に示す水苔5に吸水させる工程を開始してから行われる。
【0045】
具体的には、根部3を水洗して露出させた時点で、水苔5が十分に吸水しており、直ちに、水苔5を根部3に取り付けることができる状態になっていることが望ましい。これにより、乾燥に弱い植物体2について、根部3が乾燥して枯れてしまうことを防止できる。
【0046】
図3(A)は、植物体2の根部3を保水材部4で覆う状態を示す図であり、図3(B)は、保水材部4を支持部材6で固定する状態を示す図である。
根部3を水洗して露出させた後、図3(A)に示すように、根部3の周囲に保水材部4を形成する工程が行われる。保水材部4を形成する工程では、植物体2の露出した根部3に、吸水した水苔5が取り付けられ、根部3の略全体が水苔5で覆われる。即ち、根部3の全体を覆う略球状の形態を成す保水材部4が形成される。
【0047】
そして、図3(B)に示すように、保水材部4を固定する工程が実行される。保水材部4を固定する工程では、保水材部4の周囲に麻紐等の支持部材6が巻き付けられ、保水材部4が支持部材6で固定される。なお、前述のとおり、支持部材6は、麻布等の布帛であっても良く、その場合、保水材部4は、支持部材6に覆われて固定される。
【0048】
図4(A)、(B)は、観葉植物1に保水材部4を形成する他の例を示す図であり、図4(A)は、布帛状の支持部材6に保水材部4を構成する水苔5を載置する状態を示し、図4(B)は、袋状の支持部材6を利用して水苔5を根部3に取り付ける状態を示している。
【0049】
図4(A)に示すように、布帛状の支持部材6を利用して保水材部4を形成する工程が行われても良い。詳しくは、先ず、布帛状の支持部材6の上に水苔5を載置する工程が行われる。即ち、麻布等の布帛から成る支持部材6の上面に、保水材部4を形成する水苔5が載せられる。
【0050】
その後、水苔5が載せられた支持部材6が、図3(B)に示すように、植物体2の根部3の全体を覆うように根部3に取り付けられ、固定されても良い。このような工程によっても、支持部材6に支持され植物体2の根部3を覆う略球状の形態を成す保水材部4を効率良く形成することができる。
【0051】
また、図4(B)に示すように、観葉植物1に保水材部4を形成する他の例として、袋状の支持部材6を利用して保水材部4を形成する工程が行われても良い。具体的には、先ず、麻布等の布帛によって袋状の形態を成す支持部材6が形成され、その袋状の支持部材6に植物体2の根部3が挿入される。そして、根部3が挿入されている袋状の支持部材6の内部に水苔5が入れられ、根部3の全体を覆う略球状の形態を成す保水材部4が形成される。このような工程によっても、保水材部4を効率良く形成することができる。
【0052】
図5は、植物体2を容器9に植え付ける状態を示す図である。
保水材部4が形成された後、図5に示すように、植物体2を容器9に植え付ける工程が行われる。植物体2を容器9に植え付ける工程では、保水材部4で覆われた根部3が容器9の内部に挿入されると共に、栽培基材部7を形成する植物性材料8が容器9の内部に導入される。これにより、植物体2が容器9に植え付けられる。
【0053】
前述のとおり、保水材部4は、略球状の形態を成し、植物体2を容器9に植え付ける時点において根部3の全体を覆っている。これにより、植物体2を容器9に植え付ける作業が容易になる。
【0054】
また、植物体2を容器9に植え付ける工程により、略球形状の保水材部4は、図1に示すように、略全周が栽培基材部7で覆われることになる。これにより、植え付け後の根部3全体の水分調整が好適となり、植物体2の生育が良好になる。
【0055】
このように、本実施形態に係る観葉植物1の製造方法によれば、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい観葉植物1を、効率的に製造することができる。
【0056】
次に、図6を参照して、実施形態を変形した例として、観葉植物101について詳細に説明する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る観葉植物101の概略を示す図である。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、栽培基材部7の上面には、栽培基材部7を覆うように水苔105が設けられても良い。
【0058】
即ち、観葉植物101は、容器9内の保水材部4として植物体2の根部3の周りを覆う水苔5が設けられており、且つ栽培基材部7の上面も水苔105で覆われている。なお、水苔105は、水苔5と同品種のものでも良い。
このような構成によっても、水苔5、105によって優れた保水性能が発揮され、水分調整が容易で綺麗な観葉植物101が得られる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、101 観葉植物
2 植物体
3 根部
4 保水材部
5 水苔
6 支持部材
7 栽培基材部
8 植物性材料
9 容器
10 吸水用容器
11 水
105 水苔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物体と、
水苔を含み前記植物体の根部を覆う保水材部と、
植物性材料から形成され容器の内部に設けられて前記保水材部を覆う栽培基材部と、を具備することを特徴とする植物製品
【請求項2】
前記保水材部は、球状の形態を成し、前記植物体を前記容器に植え付ける時点において前記根部の全体を覆っていることを特徴とする請求項1に記載の植物製品
【請求項3】
前記保水材部の外周は、天然繊維から成る支持部材に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の植物製品
【請求項4】
前記植物性材料は、椰子殻、木質チップ及びバークの少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の植物製品
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れか1項に記載の植物製品を製造する方法であって、
前記水苔を水に浸して吸水させる工程と、
前記根部を水洗して露出させる工程と、
露出した前記根部を吸水した前記水苔で覆い前記保水材部を形成する工程と、
前記保水材部で覆われた前記根部を前記容器の内部に挿入すると共に前記植物性材料を前記容器の内部に導入して前記植物体を前記容器に植え付ける工程と、を具備することを特徴とする植物製品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物が容器に植え付けられた植物製品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、観葉植物等の植物を鉢に植えて栽培することが知られている。例えば、特許文献1には、植木鉢と、植木鉢の収納容器に充填される充填材と、この充填材により支持される植物と、を有する鉢植えの観葉植物が開示されている。
【0003】
また例えば、特許文献2には、観葉植物を栽培する際に、繊維を集合してなる繊維塊状体を有する人工土壌粒子を利用し、その人工土壌培地を、当該観葉植物の栽培に適した水分環境に調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3160200号公報
【特許文献2】特開2016-101160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
植物の生育には植物の種類や栽培環境等に適した好適な土壌の管理が重要である。即ち、栽培する植物に適した土壌を選択し、栽培時には頻繁に適量の散水を行い、水分を正確に調整する必要がある。しかしながら、従来の植物製品の栽培方法では、水分の調整が難しく、根腐れ等が発生するという問題点があった。
【0006】
具体的には、従来技術の植物製品は、根腐れを防止するために、少なくとも2から3日に一度は、植木鉢等の容器から古い水を排出し、適量の新しい水を供給する水替えが必要であった。適切な水替え作業が行われず、水質及び水量が適切に調整されなければ、根腐れ等が起こり、植物が枯れてしまうこともある。
【0007】
また、特許文献2に開示された従来技術のように、人工土壌培地を利用して植物を栽培する方法は、人工土壌培地に合成樹脂が含まれていることが環境上の問題となる。即ち、合成樹脂は、土壌中で分解されず、観葉植物の栽培を終了した後の分別も容易ではない。使用後に正しく分別処理がされなければ、微細化による微粒子の拡散及びそれに伴う有毒物質の拡散、土壌の汚染、水質の汚濁、大気の汚染、生態系へ影響等が問題となる。また、分別廃棄が行われても、廃棄処分後の再利用は容易ではなく、焼却処分時には有毒ガスの発生等が問題となる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい植物製品及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の植物製品は、植物体と、水苔を含み前記植物体の根部を覆う保水材部と、植物性材料から形成され容器の内部に設けられて前記保水材部を覆う栽培基材部と、を具備することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の植物製品の製造方法は、上記の植物製品を製造する方法であって、前記水苔を水に浸して吸水させる工程と、前記根部を水洗して露出させる工程と、露出した前記根部を吸水した前記水苔で覆い前記保水材部を形成する工程と、前記保水材部で覆われた前記根部を前記容器の内部に挿入すると共に前記植物性材料を前記容器の内部に導入して前記植物体を前記容器に植え付ける工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の植物製品によれば、植物体と、水苔を含み植物体の根部を覆う保水材部と、植物性材料から形成され容器の内部に設けられて保水材部を覆う栽培基材部と、を具備する。このような構成により、容易な作業で植物体の栽培に好適な水分調整を行うことができる。これにより、根腐れの発生が抑えられ、観賞に適した美しい植物体を栽培することができる。
【0012】
具体的には、保水材部は、優れた保水性を有する水苔を含み、この保水材部によって植物体の根部が覆われている。そして、根部を覆う保水材部は、植物性材料から形成された栽培基材部で覆われている。このような構成により、保水材部の優れた保水性と、栽培基材部の培地としての基本的な性能及び排水性等を利用して、優れた水分調整能力が発揮される。これにより、植物体の根部は、長期間、好適な水分量に維持される。
【0013】
例えば、従来技術によれば、2から3日毎に水替えや散水等の水分調整作業が必要であったが、本発明の植物製品は、1週間から1か月に1回程度の水分調整作業であっても好適な水分量を維持することができる。よって、作業者が行う水分調整作業の負担を減らし、且つ根腐れのない良好な植物体の生育が得られる。
【0014】
また、保水材部は水苔を含む構成であり、栽培基材部は植物性材料から形成されているので、従来の合成樹脂から成る培地を利用する場合のような環境問題の恐れもない。このように保水材部及び栽培基材部は、天然素材から形成されているので、観賞を終えた後の処分も容易であって、土壌中に廃棄されても有害物質を発生することなく自然に分解される。また、天然素材の利用は、温室効果ガス削減の観点からも優れている。
【0015】
また、本発明の植物製品によれば、前記保水材部は、球状の形態を成し、前記植物体を前記容器に植え付ける時点において前記根部の全体を覆っていても良い。これにより、植物体を容器に植え付ける作業が容易になると共に、植え付け後の根部全体の水分調整が好適となり、植物体の生育が良好になる。
【0016】
また、本発明の植物製品によれば、前記保水材部の外周は、天然繊維から成る支持部材に支持されても良い。このような構成により、保水材部は、根部から離れ落ちることなく安定して根部を覆うことになる。よって、植物体の植え付け作業が容易になると共に、植え付け後の水分調整が好適となる。
【0017】
また、支持部材は天然繊維から構成されているので、観賞中は勿論、観賞後においても、有害物質が発生する等の環境問題の要因にならない。また、観賞後の処分も容易である。
【0018】
また、本発明の植物製品によれば、前記植物性材料は、椰子殻、木質チップ及びバークの少なくとも一種を含んでいても良い。これにより栽培基材部は、培地としての優れた性能が得られ、特に優れた排水性が得られる。よって、植物体を栽培するための水分の調整が更に良好になる。
【0019】
また、本発明の植物製品の製造方法によれば、水苔を水に浸して吸水させる工程と、根部を水洗して露出させる工程と、露出した根部を吸水した水苔で覆い保水材部を形成する工程と、保水材部で覆われた根部を容器の内部に挿入すると共に植物性材料を容器の内部に導入して植物体を容器に植え付ける工程と、を具備する。これにより、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい植物製品を、効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態に係る植物製品の概略を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る植物製品の(A)水苔に吸水させる状態、(B)根部を露出する状態、を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る植物製品の(A)根部を保水材部で覆う状態、(B)保水材部を支持部材で固定する状態を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る植物製品の保水材部を形成する他の例を示す図であり、図4(A)は、布帛状の支持部材に水苔を載置する状態、図4(B)は、袋状の支持部材を利用して水苔を根部に取り付ける状態を示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る植物製品の植物体を容器に植え付ける状態を示す図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る植物製品の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る植物製品及びその製造方法を図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る植物製品1の概略を示す図である。
【0022】
図1を参照して、植物製品1は、室内または室外に置かれて栽培される観賞に適した植物製品である。
植物製品1は、容器9に植え込まれた植物体2と、植物体2の根部3を覆う保水材部4と、保水材部4を覆う栽培基材部7と、を具備する。
【0023】
植物体2は、観賞用の園芸品種の植物であり、いわゆる観葉植物である。なお、本発明では、植物体2、容器9、保水材部4、栽培基材部7等をまとめて植物製品の全体を植物製品1と称している。
【0024】
植物体2としては、例えば、ポトス、オオゴンカズラ、フラッシュ、ゴールデンポトス、マングーカズラ、ポトスライム、ハワイアン、ビレンス、ハブカズラ、パーフェクトグリーン、マーブルクイーン、エンジョイ、パキラ、フィカス、ドラセナ、コルディリネ、チャメドリア、ステノカーパス、シルクジャスミン、オーガスタ、シナモン、ゲッケイジュ、ボストンタマシダ、ゴムノキ、セイヨウキヅタ、ベンジャミン、ブラキシトン、ステルクリア、ピレア、ブラッサイア、シェフレラ、シペラス、アフェランドラ、カラテア、クテナンテ、アルトカルプス、ペペロミア、ピペル、アグラオネマ、アロカシア、エクメア、アナナス、ヘルナンディア、チャセンシダ、アンスリウム、スパティフィラム、ディフェンバキア、オリヅルラン、クロトン、センネンボク、サンセベリア、アルテシマ、アレカヤシ、テーブルヤシ、カジュマル、シッサス、コーヒーの木、ソングオブインディア、ソングオブジャマイカ、ユッカ、マッサン、モンステラ等を採用することができる。
【0025】
植物体2の根部3は、保水材部4に覆われている。保水材部4は、水苔5から構成され、略球状の形態を成す。
なお、図1から図6において植物体2は1本のみ示されているが、植物体2の本数は1本に限定されるものではない。植物体2は複数本、即ち複数株、設けられても良い。例えば、3本の植物体2が設けられても良い。このように複数本の植物体2が設けられた場合においても、複数本の植物体2の根部3の全体が、1つの略球状の形態を成す保水材部4で覆われている。
【0026】
水苔5は、湿地に生育するミズゴケ科の蘚類の植物である。水苔5は、保水性に優れており、通気性も良い。特に本発明では、水苔5の優れた保水性を利用して、植物製品1の水分調整機能が高められている。
また、水苔5は、適度な柔らかさであり、植物体2の根部3を綺麗に覆うことができ、その覆うための作業も容易であるので、植物製品1の生産性の観点からも好ましい。
【0027】
水苔5としては、例えば、オオミズゴケ、ハクサンミズゴケ、キレハミズゴケ、コバノミズゴケ、キダチミズゴケ、カワラミズゴケ、イトナシミズゴケ、ハリミズゴケ、ノコギリミズゴケ、シワミズゴケ、ヤマミズゴケ、ヘリトリミズゴケ、ヒメミズゴケ、ヒロハノヒメミズゴケ、ノリクラミズゴケ、チャミズゴケ、ホソバミズゴケ、チャボホソバミズゴケ、ガッサンミズゴケ、イトミズゴケ、ミツアナミズゴケ、フナガタミズゴケ、ハリマミズゴケ、ミネミズゴケ、シナノミズゴケ、ホソベリミズゴケ、コバノホソベリミズゴケ、クシロミズゴケ、フサバミズゴケ、ムラサキミズゴケ、コアナミズゴケ、スギハミズゴケ、シロミズゴケ、ウスアオミズゴケ、アオオオミズゴケ、イボミズゴケ、フトミズゴケ、ウツクシミズゴケ、ゴレツミズゴケ、サンカクミズゴケ、サケバミズゴケ、セイタカミズゴケ、ウスベニミズゴケ、フシミズゴケ、ウロコミズゴケ、オオウロコミズゴケ、スギバミズゴケモドキ、シタミズゴケ、ユガミミズゴケ、ワタミズゴケ、ホソミズゴケ、トサミズゴケ、ワルンストロフミズゴケ、その他を採用することができる。
【0028】
水苔5のグレードは、一般的に利用されているAA級からAAAA級が好ましく、特に、長さ約15から40cm程度のAAA級が好ましい。これにより、水苔5は、適切な柔らかさ及び弾力性を有し根部3に好適に巻き付く。よって、保水材部4を形成する作業がやり易くなる。
【0029】
保水材部4の外周は、天然繊維から成る支持部材6に支持されても良い。具体的には、保水材部4には、例えば、麻紐、綿糸、絹紐、その他天然繊維から成る糸や紐である支持部材6が巻き付けられている。また、支持部材6は、天然繊維から成る布帛等でも良い。即ち、保水材部4は、布帛等に覆われるように支持されていても良い。
【0030】
このような構成により、保水材部4は、植物体2の根部3から離れ落ちることなく安定して根部3を覆うことになる。よって、植物体2の植え付け作業が容易になると共に、植え付け後の水分調整が好適となる。
【0031】
支持部材6で支持された保水材部4は、栽培基材部7に覆われている。栽培基材部7は、植物性材料8から形成され、保水材部4の全体を覆うよう容器9の内部に設けられている。
即ち、植物体2は、根部3が略球状の形態を成す保水材部4の水苔5で覆われ、水苔5を介して、容器9内部に設けられた栽培基材部7に埋め込まれている。
【0032】
栽培基材部7は、植物体2を育成するための培養土となる植物性材料8から形成されている。栽培基材部7を構成する植物性材料8は、例えば、椰子殻である。また、栽培基材部7を構成する植物性材料8として、木質チップ、バーク等が利用されても良い。また、植物性材料8として、椰子殻木質チップ及びバーク等が混合され利用されても良いし、椰子殻木質チップ及びバーク等に軽石等が混合されても良い。このような構成により、植物体2の栽培に適した培地が得られる。
【0033】
特に、椰子殻は、栽培基材部7を構成する植物性材料8として好適である。椰子殻は、例えば、熱帯から亜熱帯にかけて分布するココヤシ等の実の果皮から得られる。このように植物性材料8として椰子殻が用いられることにより、栽培基材部7は、培地としての優れた性能を発揮し、保水性、排水性、通気性、耐久性、膨張収縮性が良い。特に、椰子殻は、優れた排水性が得られる。これにより、植物体2を栽培するための水分が更に良好に調整される。
【0034】
容器9は、植物性材料8としての椰子殻等を収容する入れ物であり、例えば、植木鉢等である。容器9は、植物性材料8を外部に漏れ出さないよう収納可能であり、且つ植物体2を倒れないように支持することができれば良い。例えば、容器9は、袋等でも良い。
【0035】
また、容器9は、布帛や麻紐等から形成され栽培基材部7の全体を覆う構成でも良い。容器9の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、一般的な植木鉢のように略逆円錐台形状でも良いし、略円錐形状、略角錐形状、略半球形状、略球形状、略半楕円形状、略楕円球形状等でも良い。
【0036】
また、容器9は、麻、綿、絹等から成る布帛や、和紙、木材、竹材、その他の天然素材から形成されることが望ましい。これにより、環境上の問題もなく、観賞後の処分も容易である。
【0037】
上述の如く構成された本実施形態の植物製品1は、植物体2の栽培に好適な水分調整を行うことができる。これにより、植物体2の根腐れの発生が抑えられ、観賞に適した美しい植物体2を栽培することができる。
【0038】
具体的には、保水材部4は、優れた保水性を有する水苔5を含み、この水苔5によって植物体2の根部3が覆われている。そして、根部3を覆う水苔5は、椰子殻等の植物性材料8から形成された栽培基材部7で覆われている。このような構成により、水苔5の優れた保水性と、植物性材料8の培地としての基本的な性能及び排水性等を利用して、優れた水分調整能力が発揮される。これにより、植物体2の根部3は、長期間、好適な水分量に維持される。
【0039】
例えば、従来技術によれば、2から3日毎に水替えや散水等の水分調整作業が必要であったが、本実施形態に係る植物製品1は、1週間から1か月に1回程度の水分調整作業であっても好適な水分量を維持することができる。よって、作業者が行う水分調整作業の負担を減らし、且つ根腐れのない良好な植物体2の生育が得られる。
【0040】
また、保水材部4は水苔5を含む構成であり、栽培基材部7は植物性材料8から形成されているので、従来の合成樹脂から成る培地を利用する場合のような環境問題の恐れもない。このように保水材部4及び栽培基材部7は、天然素材から形成されているので、観賞を終えた後の処分も容易であって、土壌中に廃棄されても有害物質を発生することなく自然に分解される。また、天然素材の利用は、温室効果ガス削減の観点からも優れている。
【0041】
また、前述のとおり支持部材6も麻紐や麻布等の天然繊維から成る素材から構成されているので、観賞中は勿論、観賞後においても、有害物質が発生する等の環境問題の要因にならない。また、観賞後の処分も容易である。
【0042】
次に、図2ないし図5を参照して、植物製品1を製造する工程について詳細に説明する。
図2(A)は、水苔5に吸水させる状態を示す図であり、図2(B)は、植物体2の根部3を露出する状態を示す図である。
【0043】
図2(A)に示すように、先ず、水苔5に吸水させる工程が行われる。具体的には、作業者は、吸水用容器10に水11を入れ、乾燥した水苔5を吸水用容器10に入れて水11に浸す。吸水用容器10は、例えば、桶やバケツ等である。
【0044】
次いで、図2(B)に示すように、植物体2の根部3を水洗して露出させる工程が行われる。
根部3を水洗して露出させる工程は、図2(A)に示す水苔5に吸水させる工程を開始してから行われる。
【0045】
具体的には、根部3を水洗して露出させた時点で、水苔5が十分に吸水しており、直ちに、水苔5を根部3に取り付けることができる状態になっていることが望ましい。これにより、乾燥に弱い植物体2について、根部3が乾燥して枯れてしまうことを防止できる。
【0046】
図3(A)は、植物体2の根部3を保水材部4で覆う状態を示す図であり、図3(B)は、保水材部4を支持部材6で固定する状態を示す図である。
根部3を水洗して露出させた後、図3(A)に示すように、根部3の周囲に保水材部4を形成する工程が行われる。保水材部4を形成する工程では、植物体2の露出した根部3に、吸水した水苔5が取り付けられ、根部3の略全体が水苔5で覆われる。即ち、根部3の全体を覆う略球状の形態を成す保水材部4が形成される。
【0047】
そして、図3(B)に示すように、保水材部4を固定する工程が実行される。保水材部4を固定する工程では、保水材部4の周囲に麻紐等の支持部材6が巻き付けられ、保水材部4が支持部材6で固定される。なお、前述のとおり、支持部材6は、麻布等の布帛であっても良く、その場合、保水材部4は、支持部材6に覆われて固定される。
【0048】
図4(A)、(B)は、植物製品1に保水材部4を形成する他の例を示す図であり、図4(A)は、布帛状の支持部材6に保水材部4を構成する水苔5を載置する状態を示し、図4(B)は、袋状の支持部材6を利用して水苔5を根部3に取り付ける状態を示している。
【0049】
図4(A)に示すように、布帛状の支持部材6を利用して保水材部4を形成する工程が行われても良い。詳しくは、先ず、布帛状の支持部材6の上に水苔5を載置する工程が行われる。即ち、麻布等の布帛から成る支持部材6の上面に、保水材部4を形成する水苔5が載せられる。
【0050】
その後、水苔5が載せられた支持部材6が、図3(B)に示すように、植物体2の根部3の全体を覆うように根部3に取り付けられ、固定されても良い。このような工程によっても、支持部材6に支持され植物体2の根部3を覆う略球状の形態を成す保水材部4を効率良く形成することができる。
【0051】
また、図4(B)に示すように、植物製品1に保水材部4を形成する他の例として、袋状の支持部材6を利用して保水材部4を形成する工程が行われても良い。具体的には、先ず、麻布等の布帛によって袋状の形態を成す支持部材6が形成され、その袋状の支持部材6に植物体2の根部3が挿入される。そして、根部3が挿入されている袋状の支持部材6の内部に水苔5が入れられ、根部3の全体を覆う略球状の形態を成す保水材部4が形成される。このような工程によっても、保水材部4を効率良く形成することができる。
【0052】
図5は、植物体2を容器9に植え付ける状態を示す図である。
保水材部4が形成された後、図5に示すように、植物体2を容器9に植え付ける工程が行われる。植物体2を容器9に植え付ける工程では、保水材部4で覆われた根部3が容器9の内部に挿入されると共に、栽培基材部7を形成する植物性材料8が容器9の内部に導入される。これにより、植物体2が容器9に植え付けられる。
【0053】
前述のとおり、保水材部4は、略球状の形態を成し、植物体2を容器9に植え付ける時点において根部3の全体を覆っている。これにより、植物体2を容器9に植え付ける作業が容易になる。
【0054】
また、植物体2を容器9に植え付ける工程により、略球形状の保水材部4は、図1に示すように、略全周が栽培基材部7で覆われることになる。これにより、植え付け後の根部3全体の水分調整が好適となり、植物体2の生育が良好になる。
【0055】
このように、本実施形態に係る植物製品1の製造方法によれば、水分調整が容易で根腐れが発生し難く、且つ有害物質の発生が少なく環境に優しい植物製品1を、効率的に製造することができる。
【0056】
次に、図6を参照して、実施形態を変形した例として、植物製品101について詳細に説明する。
図6は、本発明の他の実施形態に係る植物製品101の概略を示す図である。なお、既に説明した実施形態と同一若しくは同様の作用、効果を奏する構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
図6に示すように、栽培基材部7の上面には、栽培基材部7を覆うように水苔105が設けられても良い。
【0058】
即ち、植物製品101は、容器9内の保水材部4として植物体2の根部3の周りを覆う水苔5が設けられており、且つ栽培基材部7の上面も水苔105で覆われている。なお、水苔105は、水苔5と同品種のものでも良い。
このような構成によっても、水苔5、105によって優れた保水性能が発揮され、水分調整が容易で綺麗な植物製品101が得られる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更実施が可能である。
【符号の説明】
【0060】
1、101 植物製品
2 植物体
3 根部
4 保水材部
5 水苔
6 支持部材
7 栽培基材部
8 植物性材料
9 容器
10 吸水用容器
11 水
105 水苔