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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170708
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】乗員保護装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/18 20060101AFI20231124BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20231124BHJP
   B60R 21/26 20110101ALI20231124BHJP
【FI】
B60R21/18
B60R21/207
B60R21/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082655
(22)【出願日】2022-05-19
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】折▲高▼ 早苗
(72)【発明者】
【氏名】増田 泰士
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 利仁
(72)【発明者】
【氏名】山田 真史
(72)【発明者】
【氏名】酒井 崇
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054AA03
3D054AA07
3D054AA25
3D054DD14
3D054DD17
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】側方からの衝撃力の作用時にも、エアバッグを円滑に膨張させることが可能な乗員保護装置を提供すること。
【解決手段】シートに着座した乗員を保護する構成の乗員保護装置。乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持されるエアバッグ45と、インフレーター20と、を備える。インフレーターが、シートにおける座部の後面下部側の領域に取り付けられるインフレーター本体21と、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして座部の側方の領域に配置されてインフレーター本体とエアバッグとを接続する接続パイプ部25と、を備える。インフレーター本体が、左右の側方からの座部側への外力の作用時において、接続パイプ部に作用する押圧力を受けて、シートフレーム4に対して接続パイプ部とともにスライド移動可能に、シートフレーム側に取り付けられている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートに着座した乗員を保護する構成とされて、
該乗員の前方を覆うように膨張可能な袋状とされるとともに、折り畳まれた状態で、前記乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持される構成のエアバッグと、
該エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備える構成の乗員保護装置であって、
前記インフレーターが、
略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして前記シートにおける座部の後面下部側の領域に取り付けられるインフレーター本体と、
該インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして、前記座部の側方の領域に配置されて、前記インフレーター本体と前記エアバッグとを接続する接続パイプ部と、
を備える構成とされ、
前記インフレーター本体が、左右の側方からの前記座部側への外力の作用時において、前記接続パイプ部に作用する押圧力を受けて、シートフレームに対して前記接続パイプ部とともにスライド移動可能に、該シートフレーム側に取り付けられていることを特徴とする乗員保護装置。
【請求項2】
前記インフレーター本体が、前記シートフレームに対してスライド移動可能に保持されているスライド部材に、取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【請求項3】
前記インフレーター本体が、取付手段を、前記シートフレームに形成される取付穴に挿通させることにより、前記シートフレームに取り付けられる構成であり、
前記取付穴が、前記取付手段を内部でスライド移動可能に、左右方向に略沿った長孔状として、構成されていることを特徴とする請求項1に記載の乗員保護装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートに着座した乗員を保護する構成の乗員保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗員保護装置としては、乗員の腰部の周囲において折り畳まれて収納されているエアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターを、乗員の着座しているシートの座部の後面下部側の領域に、配置させる構成のものがあった(例えば、特許文献1参照)。詳細には、従来の乗員保護装置では、インフレーターは、略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして座部の後面下部側に配置されるインフレーター本体と、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるように配置されて座部の側方においてエアバッグと接続される接続パイプ部と、を備える構成であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-66425公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の乗員保護装置では、インフレーター本体から延びる接続パイプ部が、屈曲されて、座部の側方となる位置で、エアバッグに接続されている。そのため、例えば車両が側方から進入する等、左右の側方から大きな衝撃力が作用した際に、接続パイプ部が変形して、エアバッグに膨張用ガスを円滑に供給できず、エアバッグを円滑に膨張させることができない虞れがあった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、側方からの衝撃力の作用時にも、エアバッグを円滑に膨張させることが可能な乗員保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、シートに着座した乗員を保護する構成とされて、
乗員の前方を覆うように膨張可能な袋状とされるとともに、折り畳まれた状態で、乗員の腰部の周囲に巻き掛けられる保持ベルト部によって保持される構成のエアバッグと、
エアバッグに膨張用ガスを供給するインフレーターと、
を備える構成の乗員保護装置であって、
インフレーターが、
略円柱状として、軸方向を左右方向に略沿わせるようにしてシートにおける座部の後面下部側の領域に取り付けられるインフレーター本体と、
インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして、座部の側方の領域に配置されて、インフレーター本体とエアバッグとを接続する接続パイプ部と、
を備える構成とされ、
インフレーター本体が、左右の側方からの座部側への外力の作用時において、接続パイプ部に作用する押圧力を受けて、シートフレームに対して接続パイプ部とともにスライド移動可能に、シートフレーム側に取り付けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明の乗員保護装置では、インフレーターにおいて、インフレーター本体とエアバッグとを接続している接続パイプ部が、インフレーター本体から延びつつ屈曲されるようにして、座部の側方の領域に配置される構成であるものの、インフレーター本体が、シートフレームに対して接続パイプ部とともにスライド移動可能とされていることから、車両の側方からの進入等、左右の側方から座部側に外力が作用する際に、この外力が、接続パイプ部を押圧するように作用することとなっても、接続パイプ部を、インフレーター本体とともに、シートフレームに対してスライド移動させることにより、接続パイプ部が外力を受けて瞬時に変形することを、抑制することができる。また、このとき、インフレーター本体をシートフレームに対してスライド移動させることにより、接続パイプ部に作用する押圧力を、ある程度エネルギー吸収させることもできる。すなわち、本発明の乗員保護装置では、インフレーターのシートフレームに対するスライド移動と、このスライド移動に伴うエネルギー吸収と、により、側方からの外力作用時の接続パイプ部の変形開始を遅らせることができ、接続パイプ部の変形前に、インフレーター本体から吐出される膨張用ガスを、接続パイプ部を経て、エアバッグ内に流入させることができて、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【0008】
したがって、本発明の乗員保護装置では、側方からの衝撃力の作用時にも、エアバッグを円滑に膨張させることができる。
【0009】
具体的には、インフレーター本体のシートフレーム側への取付としては、インフレーター本体を、シートフレームに対してスライド移動可能に保持されているスライド部材に、取り付ける構成や、シートフレームに形成されて、インフレーター本体から延びる取付手段を挿通させる取付穴を、取付手段を内部でスライド移動可能とするように左右方向に略沿った長孔状とする構成を、例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態である乗員保護装置を搭載させたシートの斜視図である。
図2図1のシートの側面図である。
図3図1のシートにおいて、インフレーターの配置部位付近の部分拡大側面図である。
図4図1のシートの正面図であり、シートベルトが装着された状態を示す。
図5図1のシートにおける座部の下端側の領域を示す部分拡大背面図である。
図6図1のシートにおいて、インフレーターの配置部位付近の部分拡大背面図である。
図7】実施形態の乗員保護装置において、インフレーターにおけるブラケット配置部位の部分拡大縦断面図である。
図8】実施形態の乗員保護装置において、インフレーターの配置部位付近を示す部分拡大横断面図であり、スライド移動前(車両搭載状態)と、スライド移動後と、の状態を示す。
図9】実施形態の乗員保護装置において使用されるエアバッグを、単体で膨張させた状態を示す概略斜視図である。
図10図9のエアバッグの概略縦断面図である。
図11】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの正面図である。
図12】実施形態の乗員保護装置において、エアバッグが膨張を完了させた状態のシートの側面図である。
図13】本発明の他の実施形態の乗員保護装置において、インフレーターのシートフレームへの取付対応を示す部分拡大概略正面図である。
図14図13の乗員保護装置において、インフレーターにおけるブラケット配置部位の部分拡大縦断面図である。
図15図13の乗員保護装置において、インフレーターの配置部位付近を示す部分拡大横断面図であり、スライド移動前(車両搭載状態)と、スライド移動後と、の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。実施形態の乗員保護装置Sは、図1~5に示すように、車両のシート1に搭載されるもので、エアバッグ45を保持する保持ベルト部を構成するシートベルト7と、エアバッグ45と、エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター20と、インフレーター20(インフレーター本体21及び接続パイプ部25)を後述するシートフレーム4に対してスライドさせるスライド機構35と、を備える構成とされている。
【0012】
シート1は、背もたれ部2と座部3とを備えて、シートフレーム4に支持されている。実施形態の場合、シート1を搭載させる車両は、詳細な図示は省略するが、右ハンドル車であり、シート1は、助手席である。すなわち、シート1は、右側を車両における車幅方向の中央側とし、左側を車両における車幅方向の外側として、車両に搭載されている。
【0013】
シートベルト7は、実施形態の場合、シート1に搭載されるもので、シート1に着座した乗員MPを保護するためのベルト本体8と、ベルト本体8に取り付けられるタングプレート12と、タングプレート12を連結させるためのバックル13と、を備える構成とされている。ベルト本体8は、背もたれ部2内に配置される図示しないリトラクタの巻取軸に一端を係止され、他端側を、シート1における座部3の後端3a左方に配置されるアンカ部材14(図1,2参照)に係止されている。詳細には、ベルト本体8は、背もたれ部2の上端左縁側から外部に露出されるように配置されるもので、実施形態の場合、乗員MPの非着座状態においては、図1,2に示すように、エアバッグ45を保持させている保持ベルト部としてのラップベルト10を、背もたれ部2の前面に露出させるように、構成されている。詳細には、ラップベルト10は、乗員MPの非着座状態において、図1に示すように、背もたれ部2の左縁2a側において、上下方向に略沿うようにして、背もたれ部2の前面に露出されている。ベルト本体8は、ラップベルト10と、背もたれ部2内に収納されるショルダーベルト9と、を有し、乗員着座時においてタングプレート12をバックル13に連結させた状態で、アンカ部材14とバックル13との間において左右方向に略沿うように配置されるラップベルト10によって乗員MPの下半身MD(腰部MW)を拘束し、背もたれ部2の上端左縁側から延びつつバックル13にかけて斜めに配置されるショルダーベルト9によって乗員MPの上半身MU(肩MSから胸部MBにかけて)を拘束する構成とされている(図4参照)。そして、実施形態の場合、乗員着座時に、シート1に着座した乗員MPの腰部MWの前方に配置されるラップベルト10が、折り畳まれたエアバッグ45を収納させて保持する保持ベルト部を、構成しており、エアバッグ45は、折り畳まれた周囲をカバー60に覆われた状態で、ラップベルト10に保持されている。シートベルト7において、背もたれ部2内に配置されている図示しないリトラクタは、プリテンショナー機構を有している。
【0014】
エアバッグ45に膨張用ガスを供給するインフレーター20は、図4,5に示すように、インフレーター本体21と、インフレーター本体21から延びるように配置されてインフレーター本体21とエアバッグ45とを接続する接続パイプ部25と、を備えている。
【0015】
インフレーター本体21は、外形形状を略円柱状として、図5に示すように、軸方向を左右方向に略沿わせるようにして、シート1における座部3の後面下部側の領域に、配設される。インフレーター本体21は、膨張用ガスを吐出可能なガス吐出部22を軸方向の一端側に配設させる構成とされており、実施形態の場合、ガス吐出部22側の端部を左側(車幅方向の外側)に向けるようにして、外周側に配置されるブラケット30を用いて、座部3の下部側となるシートフレーム4の後面側に配設されるスライド機構35に、取り付けられる構成である。さらに具体的には、インフレーター本体21は、左端21a側に配置されるガス吐出部22を、シートフレーム4の左端の位置に略一致させるようにして、シートフレーム4の後面側における左半分程度の領域に、配置されている(図5参照)。インフレーター本体21における軸方向の他端側(右端21b側)には、リード線23aを結線させたコネクタ23が、接続されることとなる。インフレーター本体21は、具体的には、スライド機構35を構成しているスライド部材としてのスライド板部36に、取り付けられる構成である。インフレーター本体21をスライド部材としてのスライド板部36に取り付けるためのブラケット30は、外形形状を略円環状としてインフレーター本体21を保持可能な保持環部30aと、保持環部30aから突出するボルト30bと、を備えている。保持環部30aは、縮径させるようにかしめられることにより、インフレーター本体21を保持する構成である(図7参照)。ブラケット30は、インフレーター本体21の軸方向に沿って離れた2箇所に配置されるもので、それぞれ、保持環部30aによってインフレーター本体21を保持させて、保持環部30aから突出しているボルト30bを、スライド板部36に形成されている取付孔36aに挿通させてナット31止めすることにより、インフレーター本体21をスライド板部36に取り付けている(図6,7参照)。実施形態の場合、インフレーター本体21は、エアバッグ45の膨張に伴うシートベルト7のベルト本体8の引き出しを規制するために、作動開始を、シートベルト7のプリテンショナー機構よりも遅らせるように、設定されている。また、実施形態の場合、インフレーター本体21は、車両前方側に向けるようにシート1を配置させた状態で、前方側と側方側(左方側)とからの衝撃力の作用時に、作動するように、構成されている。
【0016】
インフレーター本体21とエアバッグ45とを接続させる接続パイプ部25は、鋼等からなる金属パイプから形成されるもので、インフレーター本体21から延びつつ屈曲されるようにして、座部3の側方(左方、すなわち、車幅方向の外方)の領域(具体的には、座部3の下方に配置されるシートフレーム4の左方(車幅方向の外方)の領域)に配置されている。実施形態の場合、接続パイプ部25は、インフレーター本体21の左端21a(ガス吐出部22)側から延びつつ屈曲されるようにして、シートフレーム4の左方(シートフレーム4における車両の車幅方向の外側の領域)に配置されるもので、インフレーター本体21側となる元部側部位26と、元部側部位26と交差するように配置される先端側部位27と、を有して、外形形状を略L字形状とされている。詳細には、接続パイプ部25において、先端側部位27が、座部3の下方のシートフレーム4の側方(左方)の領域に配置されることとなる(図3,8参照)。この接続パイプ部25は、詳細な説明を省略するが、元部側部位26の元部端26aを、かしめによる接合によって、インフレーター本体21のガス吐出部22に接続されている。また、接続パイプ部25は、先端側部位27の先端27aを、クランプ33を利用して、エアバッグ45における後述する導管部55の先端55aと接続される構成である。
【0017】
インフレーター本体21をシートフレーム4側に取り付けるスライド機構35は、インフレーター本体21を取り付けるスライド板部36と、シートフレーム4側に配置されてスライド板部36をスライド可能に保持させるためのスライドレール部38U,38Dと、を備える構成とされている。スライド板部36は、左右に幅広の略長方形状として構成されるもので、インフレーター本体21よりも上下に幅広に構成されている。スライド板部36は、シートフレーム4に対してスライド移動可能に保持されているスライド部材を、構成している。スライド板部36には、インフレーター本体21を保持しているブラケット30のボルト30bを挿通させるための取付孔36aが、左右方向側で2箇所に、形成されている。そして、実施形態の場合、インフレーター本体21は、取付孔36aにボルト30bを挿通させてナット31止めすることにより、スライド板部36に取り付けられている(図7,8参照)。スライドレール部38U,38Dは、シートフレーム4の後面側に固着されるもので、スライド板部36の上端側と下端側とをそれぞれ挿入させて、左右方向側にスライド可能に保持可能に、断面略U字形状(若しくは断面逆U字形状)とされて左右方向に略沿った長尺状とされている(図7,8参照)。実施形態では、スライド板部36は、移動方向の先端側となる右端側における上縁側と下縁側とを、シェアピン40により、スライドレール部38U,38Dに対して、仮固定されている(図6参照)。このシェアピン40は、図7,8のAの二点鎖線に示すように、スライドレール部38U,38Dとスライド板部36とを貫通するように配置されるもので、接続パイプ部25(先端側部位27)に、左方から所定以上の押圧力が作用した際に、剪断されて仮固定状態を解除するように、強度を設定されるもので、シェアピン40の剪断後には、スライド板部36が、スライドレール部38U,38Dに対して、右方にスライド移動することとなり(図8のB参照)、換言すれば、インフレーター20(インフレーター本体21)が、シートフレーム4に対して接続パイプ部25とともに右方にスライド移動することとなる。シェアピン40は、剪断強度を、車両の側突時における進入車両の接続パイプ部25との接触時に、剪断可能に、設定されている。実施形態では、シートフレーム4において、インフレーター本体21が移動する領域には、インフレーター本体21をスライド板部36に取り付けているボルト30b及びナット31と接触しないように、開口4aが、形成されている(図6~8参照)。
【0018】
そして、実施形態では、インフレーター20は、車両搭載状態においては、接続パイプ部25とシートフレーム4(具体的には、先端側部位27とシートフレーム4の左側面)との間に隙間を有するようにして、スライド機構35を介してシートフレーム4側に取り付けられている。車両搭載時における接続パイプ部25(先端側部位27)とシートフレーム4との間の隙間H(図6参照、シェアピン40剪断後のインフレーター本体21の移動ストローク)は、実施形態の場合、30mm程度に、設定されている。
【0019】
エアバッグ45は、シートベルト7のラップベルト10を保持ベルト部として、ラップベルト10に保持されつつ、長尺状に折り畳まれて、周囲をカバー60に覆われるもので、具体的には、シートベルト7の装着時におけるラップベルト10の上面側に重ねられるようにして、周囲をカバー60に覆われて、ラップベルト10の領域に配置されている(図4参照)。換言すれば、エアバッグ45は、ラップベルト10とカバー60との間の隙間に、折り畳まれて収納される構成である。また、図1に示すような非装着状態においては、エアバッグ45は、背もたれ部2の前面に露出しているラップベルト10の背面側(背もたれ部2側)に、配置されている。カバー60は、可撓性を有したシート体から構成されて、エアバッグ45の展開膨張時に所定箇所を破断されて、エアバッグ45における後述するバッグ本体46を突出可能に、構成されている。
【0020】
エアバッグ45は、図9,10に示すように、乗員MPを保護可能に膨張するバッグ本体46と、インフレーター20と接続されてバッグ本体46に膨張用ガスを流入させる導管部55と、バッグ本体46をラップベルト10に保持させるための取付部57と、を備えている。
【0021】
バッグ本体46は、膨張完了時の外形形状を、軸方向を左右方向に略沿わせた略三角柱状として構成されるもので、左右の側方から見た状態での膨張完了形状を、前側に斜辺を有するような略直角三角形状とし、前後方向側から見た状態での膨張完了形状を、上下に幅広とした略長方形状とするように、構成されている(図11,12参照)。バッグ本体46は、図9,10に示すように、膨張完了時に乗員MP側(後側)に配置される後壁部48と、後壁部48と前後方向側で対向して配置される前壁部47と、膨張完了時の下端側に配置される下壁部49と、膨張完了時に左右方向側で対向して配置される左壁部50,右壁部51と、を有している。このバッグ本体46は、膨張完了時に、後壁部48によって乗員MPの上半身MUを受け止め、かつ、この後壁部48による上半身MUの受止時に、下壁部49を、乗員MPの大腿部MTと当接させて、大腿部MTに支持させることにより、乗員MPを保護する構成とされている(図12参照)。このバッグ本体46は、下壁部49における後端49a側の下面側に、導管部55を配置させ、この導管部55を介して、インフレーター20(インフレーター本体21)からの膨張用ガスを内部に流入させる構成である。下壁部49における後端49a側の領域には、導管部55と連通される連通孔53が、円形に開口して、実施形態の場合、左右方向側で2個並設されている。そして、バッグ本体46は、この連通孔53周縁の部位で、導管部55と連結されている。
【0022】
導管部55は、バッグ本体46から左方に延びるように構成されるもので、先端55a側を開口させた略筒形状として、接続パイプ部25と接続されている。導管部55は、エアバッグ45の膨張完了時に、ラップベルト10に略沿うように左右方向に略沿って配置される構成である(図11,12参照)。この導管部55は、先端55a側を、上述したごとく、クランプ33を用いて、接続パイプ部25の先端27aに接続される構成である。バッグ本体46をラップベルト10に取り付ける取付部57は、図9に示すように、導管部55の下面側に縫着されている。取付部57は、ラップベルト10を挿通可能に、両端側を開口させた略筒状とされている。そして、この取付部57にラップベルト10を挿通させることにより、エアバッグ45は、ラップベルト10に連結されて、ラップベルト10に保持される構成である。
【0023】
実施形態の乗員保護装置Sでは、車両に搭載されたシート1にシートベルト7を装着しつつ乗員MPが着座した状態で、インフレーター20が作動すれば、インフレーター本体21から吐出される膨張用ガスが、接続パイプ部25と導管部55とを経て、バッグ本体46内に流入することとなり、エアバッグ45におけるバッグ本体46が、カバー60を破断させるようにして、保持ベルト部としてのラップベルト10から前上方に突出しつつ、図11,12に示すように、膨張を完了させることとなる。
【0024】
そして、実施形態の乗員保護装置Sでは、インフレーター20において、インフレーター本体21とエアバッグ45とを接続している接続パイプ部25が、インフレーター本体21から延びつつ屈曲されるようにして、座部3の側方(左方)の領域(具体的には、シートフレーム4の左方の領域)に配置される構成であるものの、インフレーター本体21が、シートフレーム4に対して接続パイプ部25とともにスライド移動可能とされていることから、車両の側方からの進入等、左右の側方(実施形態の場合、左方)から座部3側に外力Fが作用する際に、この外力Fが、接続パイプ部25(具体的には、先端側部位27)を押圧するように作用することとなっても、接続パイプ部25を、インフレーター本体21とともに、シートフレーム4に対してスライド移動させることにより(図8のA,B参照)、接続パイプ部25が外力Fを受けて瞬時に変形することを、抑制することができる。また、このとき、インフレーター本体21をシートフレーム4に対してスライド移動させることにより、接続パイプ部25に作用する押圧力を、ある程度エネルギー吸収させることもできる。すなわち、実施形態の乗員保護装置Sでは、インフレーター20のシートフレーム4に対するスライド移動と、このスライド移動に伴うエネルギー吸収と、により、側方からの外力作用時の接続パイプ部25の変形開始を遅らせることができ、接続パイプ部25の変形前に、インフレーター本体21から吐出される膨張用ガスを、接続パイプ部25を経て、エアバッグ45内に流入させることができて、エアバッグ45を円滑に膨張させることができる。
【0025】
したがって、実施形態の乗員保護装置Sでは、側方からの衝撃力の作用時にも、エアバッグ45を円滑に膨張させることができる。
【0026】
具体的には、実施形態の乗員保護装置Sでは、インフレーター本体21が、シートフレーム4に対してスライド移動可能に保持されているスライド部材としてのスライド板部36に、取り付けられる構成である。詳細には、スライド板部36は、シートフレーム4側に配置されるスライドレール部38U,38Dにシェアピン40によって仮固定された状態で、車両に搭載されており、外力Fの作用時に、この外力Fを受けてシェアピン40を剪断させ、スライド板部36をスライドレール部38U,38Dに対してスライドさせる構成である。そのため、実施形態の乗員保護装置Sでは、外力F作用前の車両搭載状態においては、インフレーター20(インフレーター本体21及び接続パイプ部25)の右方への移動を的確に抑制できて、インフレーター20のシートフレーム4側への十分な移動ストロークを確保することができ、また、外力Fの作用時には、接続パイプ部25に作用する押圧力を、シェアピン40を剪断させることによって、エネルギー吸収させることもできる。
【0027】
また、インフレーター20のシートフレーム4A側への取付態様(スライド機構65)としては、図13~15に示すような構成としてもよい。図13~15に示す取付態様では、インフレーター20は、シートフレーム4Aに直接取り付けられる構成である。シートフレーム4Aには、インフレーター20のボルト30bを挿通させて取付可能な取付孔4bが、形成されており、この取付孔4bが、内部でボルト30bを左右方向側で移動可能に、左右方向に略沿った長孔状とされている(図13参照)。車両搭載状態においては、インフレーター20は、各ボルト30bを各取付孔4bの左縁側に位置させるようにして、シートフレーム4Aに取り付けられる構成であり、外力Fの作用時に、インフレーター本体21自体が、各ボルト30bを、取付孔4b内を移動させるようにして、シートフレーム4Aに対して右方にスライド移動することとなる(図15のA,B参照)。すなわち、シートフレーム4Aに形成される取付孔4b自体が、インフレーター20(インフレーター本体21及び接続パイプ部25)をシートフレーム4Aに対してスライド可能なスライド機構65を、構成している。各取付孔4bの長さ寸法L(図13参照)は、車両搭載時における接続パイプ部25とシートフレーム4Aとの間の隙間(インフレーター本体21の移動ストローク)と同等もしくはこの隙間よりも大きく設定されて、実施形態の場合、30mm程度に、設定されている。なお、取付孔4bに挿通されているボルト30bは、ナット31止めされていることから、車両搭載状態において、軽い力(例えば、手や足で押すような力)では、インフレーター20は移動せず、前述のスライド機構35と同様に、車両の進入等による外力Fの作用時に、移動することとなる。このような構成により、インフレーター20をシートフレーム4Aに取り付ける構成とした場合にも、車両の側方からの進入等、左右の側方(実施形態の場合、左方)から座部3側に外力Fが作用する際に、この外力Fによって、接続パイプ部25を、インフレーター本体21とともに、シートフレーム4Aに対してスライド移動させることにより、接続パイプ部25が外力Fを受けて瞬時に変形することを、抑制することができる。また、このとき、インフレーター本体21をシートフレーム4Aに取り付けているボルト30bが、取付孔4b内を摺動されることから、この摺動によって、接続パイプ部25に作用する押圧力を、エネルギー吸収させることもできる。そのため、上記構成とした場合にも、インフレーター20のシートフレーム4Aに対するスライド移動と、このスライド移動に伴うエネルギー吸収と、により、側方からの外力作用時の接続パイプ部25の変形開始を遅らせることができ、接続パイプ部25の変形前に、インフレーター本体21から吐出される膨張用ガスを、接続パイプ部25を経て、エアバッグ45内に流入させることができて、エアバッグ45を円滑に膨張させることができる。
【0028】
実施形態の乗員保護装置Sでは、エアバッグ45を保持させる保持ベルト部として、シートベルト7のラップベルト10を利用しているが、エアバッグを保持させる保持ベルト部は、ラップベルトに限定されるものではなく、例えば、シートベルトとは別体のベルトを、シートに着座した状態の腰部の前方に配置させ、このベルトに、エアバッグを保持させる構成としてもよい。また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7のラップベルト10によりエアバッグ45を保持させる構成であるものの、インフレーター20が、シートベルト7のプリテンショナー機構の作動よりも遅れて作動することから、シートベルト7により乗員MPのシート1に対する着座状態を安定して維持させた状態で、エアバッグ45を膨張させることができ、エアバッグ45とシートベルト7とにより、乗員MPを安定して保護することができる。
【0029】
また、実施形態の乗員保護装置Sでは、シートベルト7とインフレーター20とが、シート1に搭載される構成とされている。そのため、シート1を前後で大きくスライドさせたり回転させたりして、車両に対して移動させた状態で使用する場合にも、シート1に着座した乗員MPを、エアバッグ45によって的確に保護することができる。
【符号の説明】
【0030】
1…シート、3…座部、4,4A…シートフレーム、4b…取付穴、20…インフレーター、21…インフレーター本体、25…接続パイプ部、30…ブラケット、30b…ボルト、31…ナット、35…スライド機構、36…スライド板部(スライド部材)、38U,38D…スライドレール部、45…エアバッグ、65…スライド機構、MP…乗員、S…乗員保護装置。
図1
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