(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170731
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】医療用ポンプ管理システム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/17 20180101AFI20231124BHJP
G16H 10/00 20180101ALI20231124BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20231124BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20231124BHJP
G16Y 20/40 20200101ALI20231124BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20231124BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20231124BHJP
【FI】
G16H20/17
G16H10/00
G16Y10/60
G16Y20/20
G16Y20/40
G16Y40/10
G16Y40/30
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082702
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】510072009
【氏名又は名称】株式会社イードクトル
(74)【代理人】
【識別番号】100085316
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 三雄
(74)【代理人】
【識別番号】100099977
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 章吾
(74)【代理人】
【識別番号】100104259
【弁理士】
【氏名又は名称】寒川 潔
(72)【発明者】
【氏名】吉永 大祐
(72)【発明者】
【氏名】山本 亮太
(72)【発明者】
【氏名】正田 直人
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA01
5L099AA25
(57)【要約】
【課題】運用状況に応じて対応が必要な医療用ポンプ装置を効率的かつ的確に把握できる医療用ポンプ管理システムを提供する。
【解決手段】ポンプ管理サーバ3は、医療用ポンプ装置2ごとにポンプステータス情報と予報発報条件とを記憶し、それぞれの医療用ポンプ装置2について、ポンプステータス情報を使って予報発報条件を満たしたか否かを判定する。条件を満たしたと判定すると、満たした予報発報条件の内容と、当該医療用ポンプ装置2のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報を含んだ予報発報指令を、ナースコールシステム6に送信する。ナースコールシステム6は、予報発報指令に含まれる情報を端末装置63を介して看護師に報知する。これにより看護師は、どの医療用ポンプ装置(またはどの患者)でどのような予報発報条件が満たされたかを知ることができ、適切な対応を迅速にとることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に対して液体を供給する複数の医療用ポンプ装置と、
前記医療用ポンプ装置と通信接続されたポンプ管理サーバと、
前記ポンプ管理サーバと通信接続された医療支援用システムとからなる医療用ポンプ管理システムにおいて、
前記医療用ポンプ装置は、
定期的およびイベント発生時に、当該医療用ポンプ装置のステータスを示すポンプステータス情報を出力する構成を備え、
前記ポンプ管理サーバは、データベースと制御装置とを有し、
前記データベースは、患者を特定する患者ID情報と前記医療用ポンプ装置を特定するポンプID情報とを用い、前記医療用ポンプ装置から液体の供給を受ける患者に関して、当該患者と当該医療用ポンプ装置とを対応付けて記憶する患者-ポンプ対応テーブルと、
前記医療用ポンプ装置から定期的およびイベント発生時に送信されるポンプステータス情報を医療用ポンプ装置ごとに記憶するポンプステータス記録テーブルと、
前記医療用ポンプ装置ごとに設定される予報発報条件を記憶する予報条件記録テーブルと、を有し、
前記制御装置は、前記医療用ポンプ装置ごとに、前記データベースに記憶されたポンプステータス情報および予報発報条件に基づいて、それぞれの医療用ポンプ装置があらかじめ設定された予報発報条件を満たしたか否かを判定して、予報発報条件を満たしたと判定したときには、当該予報発報条件の内容を示す予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および/または当該ポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを含んだ予報発報指令を、前記医療支援用システムに送信する制御構成を備えている
ことを特徴とする医療用ポンプ管理システム。
【請求項2】
前記医療支援用システムは、前記制御装置から送信された前記予報発報指令を受信したときは、受信した予報発報指令に含まれる予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および/または当該医療用ポンプ装置のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを報知する報知手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の医療用ポンプ管理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記予報発報指令の送信先を設定する送信先設定手段を備えており、前記予報発報指令を送信するときには、当該予報発報指令を前記送信先設定手段で設定された医療支援用システムで読み取り可能なデータ形式に変換して送信する制御構成を備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の医療用ポンプ管理システム。
【請求項4】
前記データベースの患者-ポンプ対応テーブルは、前記患者ID情報に当該患者の所在地を特定する患者所在地情報を対応付けて記憶し、
前記制御装置は、前記医療支援用システムに前記患者ID情報を送信するときには、当該患者ID情報に対応づけられた患者所在地情報も併せて送信する制御構成を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の医療用ポンプ管理システム。
【請求項5】
前記予報発報条件は、前記医療用ポンプ装置の液切れまでの猶予時間とされ、
前記制御装置は、前記ポンプステータス情報に含まれる液体の投与予定量と設定流量とに基づいて前記液切れまでの猶予時間を算出して、予報発報条件を満たしたか否かを判定する制御構成を備えている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の医療用ポンプ管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は医療用ポンプ管理システムに関し、より詳細には、複数の医療用ポンプ装置を運用する医療機関における医療用ポンプ装置の運用・管理に係るコンピュータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院などの医療機関では、決められた量の薬液(液体)を時間をかけて患者に注入(供給)する場合に、薬液の供給を機械的に補助する機構を備えた輸液ポンプやシリンジポンプなどの医療用ポンプ装置を用いている。
【0003】
この種の医療用ポンプ装置は、周知のとおり、機械的な機構を用いて、薬液が入ったチューブをしごくタイプ(いわゆるフィンガ方式の輸液ポンプ)、点滴筒内の薬液滴下数を制御するタイプ(滴数制御方式の輸液ポンプ)、送液の流量を制御するタイプ(流量制御方式の輸液ポンプ)、外筒が固定されたシリンジの内筒の動きを制御するタイプ(シリンジポンプ)など様々なものが提案されているが、いずれのタイプの装置においても、近年では装置自体に各種センサを搭載し、これらのセンサで得られる情報に基づいて、医療用ポンプ装置の制御部が、液切れ(残量不足)、液詰まり(送液管の閉塞)、液漏れ(流量異常)などの異常を検知するようになっており、異常が検知されたときには警報音を鳴動させるなどの所定の警報動作を行い、医療用ポンプ装置に異常が生じていることを看護師などのスタッフに報知するようになっている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のやり方には以下のような問題があった。
(1)従来の医療用ポンプ装置は、装置本体に備えられた警報音の発生装置などを用いて装置の異常を外部に報知するようになっている。たとえば、液切れが生じた場合、それを知らせる警報音が病室内(より具体的には病床の近傍)で鳴動するので、看護師は病室から漏れ聞こえる警報音を聞きつけて病室に向かうか、あるいは、警報音を認識した患者によるナースコールによって病室に向かい、そこで医療用ポンプ装置の液切れを確認して対応(たとえば、薬液の交換など)することになる。そのため、装置の異常に対する対応がどうしても遅くなる傾向があった。
【0006】
(2)近年では、装置に備えられたセンサによって薬液の流量を監視するなどして、液切れが発生する前に事前に予備的な警報(予報)を発するように構成された医療用ポンプ装置も提供されているが、予報が必要なタイミングは、医療用ポンプ装置が運用される状況(たとえば、患者と看護師の人数比率や、病棟・病室の広さ、薬液の種類(重要度・緊急度)、時間帯など)によって変化するので、医療用ポンプ装置が備える画一的な予報機能だけでは医療用ポンプ装置の運用状況に応じたきめ細かな対応が困難であった。
【0007】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、運用状況に応じて対応が必要な医療用ポンプ装置を効率的かつ的確に把握できる医療用ポンプ管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る医療用ポンプ管理システムは、
患者に対して液体を供給する複数の医療用ポンプ装置と、
上記医療用ポンプ装置と通信接続されたポンプ管理サーバと、
上記ポンプ管理サーバと通信接続された医療支援用システムとからなる医療用ポンプ管理システムにおいて、
上記医療用ポンプ装置は、
定期的およびイベント発生時に、当該医療用ポンプ装置のステータスを示すポンプステータス情報を出力する構成を備え、
上記ポンプ管理サーバは、データベースと制御装置とを有し、
上記データベースは、患者を特定する患者ID情報と上記医療用ポンプ装置を特定するポンプID情報とを用い、上記医療用ポンプ装置から液体の供給を受ける患者に関して、当該患者と当該医療用ポンプ装置とを対応付けて記憶する患者-ポンプ対応テーブルと、
上記医療用ポンプ装置から定期的およびイベント発生時に送信されるポンプステータス情報を医療用ポンプ装置ごとに記憶するポンプステータス記録テーブルと、
上記医療用ポンプ装置ごとに設定される予報発報条件を記憶する予報条件記録テーブルと、を有し、
上記制御装置は、上記医療用ポンプ装置ごとに、上記データベースに記憶されたポンプステータス情報および予報発報条件に基づいて、それぞれの医療用ポンプ装置があらかじめ設定された予報発報条件を満たしたか否かを判定して、予報発報条件を満たしたと判定したときには、当該予報発報条件の内容を示す予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および/または当該ポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを含んだ予報発報指令を、上記医療支援用システムに送信する制御構成を備えている
ことを特徴とする。
【0009】
そして、本発明はその好適な実施態様として、以下の構成を備えている。
(1)上記医療支援用システムは、上記制御装置から送信された上記予報発報指令を受信したときは、受信した予報発報指令に含まれる予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および/または当該医療用ポンプ装置のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを報知する報知手段を備えていることを特徴とする。
【0010】
(2)上記制御装置は、上記予報発報指令の送信先を設定する送信先設定手段を備えており、上記予報発報指令を送信するときには、当該予報発報指令を上記送信先設定手段で設定された医療支援用システムで読み取り可能なデータ形式に変換して送信する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0011】
(3)上記データベースの患者-ポンプ対応テーブルは、上記患者ID情報に当該患者の所在地を特定する患者所在地情報を対応付けて記憶し、上記制御装置は、上記医療支援用システムに上記患者ID情報を送信するときには、当該患者ID情報に対応づけられた患者所在地情報も併せて送信する制御構成を備えていることを特徴とする。
【0012】
(4)上記予報発報条件は、上記医療用ポンプ装置の液切れまでの猶予時間とされ、
上記制御装置は、上記ポンプステータス情報に含まれる液体の投与予定量と設定流量とに基づいて上記液切れまでの猶予時間を算出して、予報発報条件を満たしたか否かを判定する制御構成を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポンプ管理サーバが、医療用ポンプ装置ごとに、データベースに記憶されたポンプステータス情報および予報発報条件に基づいて、それぞれの医療用ポンプ装置について、あらかじめ設定された予報発報条件を満たしたか否かを判定して、条件を満たしたと判定したときには、当該条予報発報条件の内容を示す予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および/または当該医療用ポンプ装置のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを含んだ予報発報指令を、ナースコールシステムや電子カルテシステムなどの医療支援用システムに送信するように構成されているので、予報発報指令を受け付けた医療用支援システム側は、予報発報指令に含まれる情報によって、どの医療用ポンプ装置(またはどの患者)でどのような予報発報条件が満たされたかを知ることができる。そのため、この情報に接した看護師などのスタッフは、通知された予報種別に応じた適切な対応を迅速にとることができる。
【0014】
しかも、予報発報条件は医療用ポンプ装置ごとに設定されるので、たとえば、ナースセンターからの距離に応じて、液切れの予報を発報するタイミングを変えておくことで、液切れの予報発報からその対応まで(たとえば、薬液の交換など)を余裕をもって行うことができるようになり、対応の遅れをを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る医療用ポンプ管理システムの概略構成の一例を示すシステム構成図である。
【
図2】シリンジポンプにおいて、ポンプステータス情報を出力するイベントの一例を示しており、
図2(a)は正常動作中のイベントを、
図2(b)は異常検出に伴うアラームイベントをそれぞれ示している。
【
図3】本発明に係る医療用ポンプ管理システムにおけるポンプ管理サーバの概略構成の一例を機能的に示したブロック構成図である。
【
図4】同医療用ポンプ管理システムにおける看護支援システムを用いた患者情報の登録手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0017】
図1は、本発明が適用される医療用ポンプ管理システム1の概略構成を示している。
医療用ポンプ管理システム1は、病院などの医療機関において使用される医療用ポンプ装置2の運用を支援するシステムであって、複数の医療用ポンプ装置2(図示例では、2a,2b,2c,…2x)と、ポンプ管理サーバ3と、電子カルテシステム4、看護支援システム5、ナースコールシステム6などの医療支援系のシステム(医療支援用システム)とを主要部として備えており、これらが有線または無線のネットワークNによって通信接続されている。
【0018】
医療用ポンプ装置2は、患者に薬液などの液体を供給する装置であって、たとえば、輸液ポンプやシリンジポンプなどが例示される。医療用ポンプ装置2としては、機械的な機構を用いて液体の供給を補助する装置が好適に用いられる。また、医療用ポンプ装置2は、装置の状態を監視する制御部(図示せず)を備えており、この制御部によって、定期的(一定時間ごと)および所定のイベント発生時に当該医療用ポンプ装置2のステータス(状態)を示すポンプステータス情報(たとえば、送液の有無、投与予定量、設定流量、検出流量など医療用ポンプ装置2の状態を示す各種情報や所定のイベントの発生を知らせる情報)を外部に出力するように構成されている。なお、医療用ポンプ装置2はネットワークNと通信接続されており、ネットワークNを介してポンプステータス情報がポンプ管理サーバ3で受信できるようになっている。
【0019】
図2は、医療用ポンプ装置2の一例であるシリンジポンプにおけるポンプステータス情報の出力イベントの一例を示している。この図に示すように、ポンプステータス情報を出力するイベントは、正常動作中の状態通知イベント(
図2(a)参照)と、アラーム発生(警報発報)時のアラームイベント(
図2(b)参照)とに大別される。
【0020】
図2(a)では、状態通知イベントとして、「送液開始」、「早送り開始」、「ボーラス(HOB,HFB)開始」、「KOR開始」、「送液中の流量変更」、「早送り終了」、「ボーラス(HOB,HFB)終了」、「送液状態から送液停止」、「積算クリア」、「電源OFF」、「薬剤ライブラリ選択確定時」が例示されており、これらの状態通知イベントが発生すると、当該イベントの発生を知らせるポンプステータス情報がシリンジポンプからネットワークNに出力される。
【0021】
図2(b)では、アラームイベントとして、「シャットダウン予告警報」、「連携中断警報」、「完了警報」、「閉塞警報 輸液ポンプは下流」、「閉塞警報 上」、「シリンジ外れ警報」、「押子外れ警報」、「クラッチ外れ警報」、「シリンジ検出警報」、「クリップ外れ警報」、「点滴プローブ外れ警報」、「フリーフロー警報」、「空液警報」、「流量異常警報」、「気泡混入警報」、「ドア警報」、「残量警報」、「残量設定時間前通知」、「電源異常警報」、「ACケーブル外れ警報」、「流量未設定警報」、「流量・予定量大小判定警報」、「予定量未設定警報」、「バッテリ低下警報」、「開始忘れ警報」、「閉塞プリコーション」、「メンテナンスタイマ」、「バッテリ交換時期/故障警報」が例示されている。制御部は、これらの異常のいずれかを検出すると、検出した異常を報知するアラームイベントを発生させ、当該アラームの発生を知らせるポンプステータス情報がシリンジポンプからネットワークNに出力される。
【0022】
なお、ポンプステータス情報には、当該医療用ポンプ装置2の状態や発生したイベントの種別(
図2に例示したイベントの区別)の他、当該医療用ポンプ装置2を特定する情報(たとえば、医療用ポンプ装置2の製造番号など)も含まれる。
【0023】
ポンプ管理サーバ3は、複数の医療用ポンプ装置2の運用支援を主たる目的とするサーバコンピュータであって、
図3に示すように、データベース31と制御装置32とを主要部として備えている。
【0024】
データベース31は、医療用ポンプ装置2の運用支援に必要な情報を記憶する記憶装置である。データベース31は、患者を特定する患者ID情報と医療用ポンプ装置2を特定するポンプID情報とを用い、少なくとも、医療用ポンプ装置2から液体の供給を受ける患者に関して、当該患者と当該医療用ポンプ装置2とを対応付けて記憶する患者-ポンプ対応テーブル101と、医療用ポンプ装置2から定期的およびイベント発生時に送信されるポンプステータス情報を医療用ポンプ装置2ごとに記憶するポンプステータス記録テーブル102と、医療用ポンプ装置2ごとに設定される予報発報条件を記憶する予報条件記録テーブル103とを有している。そして、本実施形態では、患者-ポンプ対応テーブル101は、患者ID情報を記憶するにあたり、患者ID情報に当該患者の所在地を特定する患者所在地情報を対応付けて記憶する構成を採用している。
【0025】
ここで、患者を特定する患者ID情報は、患者ごとに設定される個別のIDである。患者ID情報としては、たとえば、記号や数字などを組み合わせた文字列が好適に用いられるが、患者の氏名などを患者IDとして用いることも可能である。なお、本実施形態では、患者ID情報はバーコード化され、患者が装着するリストバンドなどに印刷される。
【0026】
一方、医療用ポンプ装置2を特定するポンプID情報は、医療用ポンプ装置2ごとに設定される個別のIDである。ポンプID情報としては、たとえば、医療用ポンプ装置2の製造番号(シリアルナンバー)が好適に用いられる。製造番号が好適に用いられるのは、医療用ポンプ装置2から出力されるポンプステータス情報に含まれる装置を特定する情報として製造番号が用いられることが多いからである。したがって、ポンプステータス情報において製造番号以外の他の情報を用いて医療用ポンプ装置2が特定されるような場合には、当該他の情報をポンプID情報として用いるのが好ましい。
【0027】
患者所在地情報は、患者が所在する位置の情報である。この患者所在地情報としては、たとえば、どの病棟のどの病室のどの病床であるといった情報のように、看護師などのスタッフが患者の居場所を容易に特定できる情報が用いられる。
【0028】
患者-ポンプ対応テーブル101は、ネットワークNを介して受信する、患者ID情報とポンプID情報とを対応付けて記憶するデータテーブルである。本実施形態では、後述するように看護支援システム5から、患者ID情報と患者所在地情報とポンプID情報とが対応付けられて送信されてくるので(詳細は後述する)、この対応付けられた情報が患者-ポンプ対応テーブル101に記憶される。
【0029】
ポンプステータス記録テーブル102は、定期的およびイベント発生時に医療用ポンプ装置2から送信されてくるポンプステータス情報を、医療用ポンプ装置2ごとに記憶するデータテーブルである。ポンプステータス記録テーブル102は、少なくとも前回分と今回分のポンプステータス情報を比較できるように記憶するように構成されている。
【0030】
たとえば、シリンジポンプ2aから状態通知イベントである「送液開始」によってポンプステータス情報が送信されると、ポンプステータス記録テーブル102には、シリンジポンプ2aのポンプステータス情報としての「送液開始」という情報が記憶される。そして、シリンジポンプ2aから次のポンプステータス情報が送信される(たとえば、次の状態通知イベントが発生する前に定期的なポンプステータス情報が送信される)と、当該ポンプステータス情報を前回とは別の記憶領域に記憶する。このように、ポンプステータス記録テーブル102は、ネットワークNを介して次々と送信されてくるポンプステータス情報について、医療用ポンプ装置2ごとに、少なくとも、前回分と比較できるようにポンプステータス情報を記憶するように構成されるので、制御装置32は、ポンプステータス記録テーブル102に記憶されたポンプステータス情報を比較参照することによって、医療用ポンプ装置2の状態変化を検出することができる。
【0031】
予報条件記憶テーブル103は、医療用ポンプ装置2ごとに設定される予報発報条件を記憶するデータテーブルである。予報発報条件は、医療用ポンプ装置2側で設定されるイベント(たとえば、
図2に示す状態通知イベントやアラームイベント参照)とは別に、ポンプ管理サーバ3側で、ユーザが任意に設定する予報イベントの発生条件であり、制御装置32は、各医療用ポンプ装置2について、それぞれ設定された予報発報条件を満たすか否か(条件の成就/未成就)の判定するようになっている。
【0032】
制御装置32は、データベース31に記憶されたデータを用いて医療用ポンプ装置2の運用支援を行う装置であって、上記データベース31と一体又は別体のコンピュータで構成されている。そして、制御装置32は、
図3に示すように、機能構成上、制御手段201と、予報条件設定手段202と、送信先設定手段203と、通信手段204とを有している。
【0033】
制御手段201は、医療用ポンプ装置2の運用支援用のソフトウェアを実行するプロセッサを備えており、このソフトウェアの実行によって後述する医療用ポンプ装置2の運用支援が実現される。なお、制御手段201は、制御装置32に備えられた図示しない入力装置(キーボードやマウスなど)や表示装置(液晶表示装置など)などの制御手段としても機能する。
【0034】
予報条件設定手段202は、医療用ポンプ装置2ごとに設定される予報発報条件の設定(設定・解除・変更など)をするための手段である。予報条件設定手段202としては、制御装置32に備えられた入力装置が好適に用いられるが、たとえば、ネットワークNを介して制御装置32と通信接続される他の端末装置(たとえば、看護支援システム5のクライアント端末を構成するPCやタブレット端末、スマートフォンなど)を予報条件設定手段202として用いてもよい。
【0035】
予報条件設定手段202で設定される予報発報条件は、ポンプステータス記録テーブル102に記憶されたポンプステータス情報(医療用ポンプ装置2から送信されるポンプステータス情報)に含まれる情報に基づいて、制御手段201が予報発報の前提となる条件の成就/未成就を判定ができるものであれば、具体的な条件は任意に設定可能である。たとえば、ポンプステータス情報に、薬液の投与予定量と設定流量とが含まれていれば、これらの情報を基にして制御手段201は液切れまでの猶予時間を演算することができるので、液切れまでの猶予時間を予報発報条件(たとえば、液切れ5分前、液切れ10分前など)として設定することができる。
【0036】
送信先設定手段203は、医療用ポンプ装置2の運用支援に関連して、後述する予報発報指令の送信先を設定するための手段である。この送信先設定手段203としては、制御装置32に備えられた入力装置が好適に使用されるが、上記予報条件設定手段202と同様、ネットワークNを介して制御装置32と通信接続された他の端末装置を送信先設定手段203として用いることも可能である。
【0037】
本実施形態では、後述するように、医療用ポンプ装置2に関するイベントの発生をナースコールシステム6を介して看護師などのスタッフに報知するようにしているので、予報発報指令の送信先としてナースコールシステムサーバ61が設定される。これにより、制御装置32の制御手段201は、予報発報指令を出力する際には、生成した予報発報指令を送信先であるナースコールシステムサーバ61で読み取り可能なデータ形式に変換して送信する。
【0038】
なお、本実施形態では、この送信先設定手段203は、後述するアラームイベントの発報指令の送信先を設定する手段としても機能するようになっており、予報発報指令の送信先として設定された医療支援用システムがアラームイベントの発報指令の送信先となるようになっている。そのため、制御装置32の制御手段201がアラームイベントの発報指令を出力する際には、生成したアラームイベントの発報指令はナースコールシステムサーバ61で読み取り可能なデータ形式に変換して送信される。
【0039】
通信手段204は、制御装置32がネットワークNを介して医療支援用システムと通信するための通信装置である。具体的には、この通信手段204は、ネットワークNがローカルエリアネットワークで構成される場合、ローカルエリアネットワークに通信接続するためのネットワークインターフェースを含んで構成される。
【0040】
医療支援用システムは、患者に対する医療行為や看護行為など(たとえば、診察・診療・検査・健診など)を支援するコンピュータシステムであって、
図1に示す例では、この医療支援用システムとして、電子カルテシステム4、看護支援システム5、ナースコールシステム6が例示されている。なお、医療支援用システムは、これら例示されシステムに限らず、たとえば、検査や薬の処方などのオーダー情報の伝達に使われるオーダリングシステムなど、例示したシステム以外の他のシステムが含まれていてもよく、また反対に一部のシステムを除いて医療用支援システムが構成されていてもよい。
【0041】
電子カルテシステム4は、電子化された患者の診療録(カルテ)をクライアント端末に提供するコンピュータシステムであって、
図1ではこの電子カルテシステムを提供するサーバコンピュータ41を図示している。電子カルテシステム4の構成は周知であるので詳細な説明は省略するが、この電子カルテシステム4により、診察室やナースステーションなどに配置されたクライアント端末を使ってカルテの閲覧・編集などができるようになっている。
【0042】
看護支援システム5は、看護師などのスタッフが行う業務(たとえば、患者の基本情報の登録、病床管理、経過記録の作成など)を支援するコンピュータシステムであって、
図1では看護支援システムを提供するサーバコンピュータ51が図示されている。看護支援システム5の構成も周知であるので詳細な説明は省略するが、看護支援システム5では、クライアント端末として、看護師などが携行できる端末(たとえば、タブレット端末やスマートフォンなど)が好適に用いられる。なお、符号300は、看護支援システム5のクライアント端末としても機能するスマートフォンを示している。
【0043】
そして、本実施形態では、上述した患者ID情報と患者所在地情報とポンプID情報は、この看護支援システム5を使って、看護支援システム5のサーバ51に登録されるようになっている。
【0044】
図4は、患者ID情報、患者所在地情報およびポンプID情報の登録手順の一例を示している。図示例では、患者ID情報と患者所在地情報は、患者が装着するリストバンドにあらかじめバーコード化して印刷されている(バーコードBC1)。また、ポンプID情報は、医療用ポンプ装置2に貼付するラベルにあらかじめバーコード化して印刷されている(バーコードBC2)。
【0045】
看護支援システム5では、クライアント端末(たとえば、スマートフォン300)を用いて患者のリストバンドのバーコードBC1を読み取ることで(
図4ステップS1参照)、リストバンドが装着された患者の患者ID情報と患者所在地情報とが対応付け(紐付け)られてサーバ51に登録される(
図4ステップS2参照)。また、同様に、看護支援システム5は、クライアント端末を用いて医療用ポンプ装置2に貼付されたラベルのバーコードBC2を読み取ることで(
図4ステップS3参照)、医療用ポンプ装置2のポンプID情報が登録される。なおその際、あらかじめ患者を特定した状態でバーコードBC2を読み取ることにより、特定した患者の患者ID情報と読み取ったポンプID情報とを対応付けてサーバ51に登録することができるようになっている(
図4ステップ4参照)。
【0046】
このようにしてサーバ51に登録された患者ID情報、患者所在地情報、ポンプID情報は、ポンプ管理サーバ3のデータベース31に送信され(
図4ステップS5参照)、データベース31の患者-ポンプ対応テーブル101に記憶される。つまり、医療用ポンプ装置2から液体の供給を受ける患者に関して、患者と患者所在地と医療用ポンプ装置2とが対応付けられてデータベース31に記憶される。なお、患者の入退院、病室・病床の変更や、医療用ポンプ装置2の交換などがあったときには、その都度、バーコードBC1,BC2を読み取ることで、データベース31に記憶された患者と患者所在地と医療用ポンプ装置2とを対応付けた情報を常に最新の情報に保つことができる。
【0047】
ナースコールシステム6は、主として、患者が看護師などのスタッフを呼び出すためのシステムであって、
図1ではナースコールシステム6を提供するサーバコンピュータ61が図示されている。他の医療支援用システムと同様に、ナースコールシステム6の構成も周知であるので詳細な説明は省略するが、本実施形態に示すナースコールシステム6は、サービスを提供するソフトウェアを備えたサーバ61と、病棟ごとなどの所定単位ごとに配置される制御器62と、ナースコールの報知手段となる端末装置63とを主要部として備えている。
【0048】
サーバ61は、複数の制御器62と有線または無線で通信接続されたサーバコンピュータであり、各制御器62から送信されるナースコールの履歴などを閲覧可能に記憶したり、また、ポンプ管理サーバ3と連携して、医療用ポンプ装置2に関する情報を端末装置63に報知するなど、ナースコールシステム6を使った各種サービスを提供するように構成されている。
【0049】
制御器62は、サーバ61と端末装置63とのインターフェースを構成する装置であって、図示例では、制御器62には、液晶パネルなどの表示装置400と、端末コンピュータ500と、表示機能付きのナースコール用親機600と、スマートフォン300を端末装置63とするための無線LAN用のアクセスポイント64とが接続されている。
【0050】
ナースコール用親機600には、図示しないが複数のナースコール用子機(たとえば、呼出握りボタンを備えた壁埋め込み型の子機など)が有線または無線により通信接続されており、ナースコール用子機の呼出握りボタンの操作によって、ナースコール親機600を介して表示装置400や端末コンピュータ500、ナースコル用親機600、さらにはアクセスポイント64を介してスマートフォン300などに、ナースコールの呼び出しが行われるようになっている。なお、
図1に示す表示装置400、端末コンピュータ500およびナースコール用親機600は、通常、看護師などのスタッフが常駐するナースステーションなどに配置される。また、スマートフォン300は、病棟に勤務する看護師などのスタッフが所持するようになっている。
【0051】
端末装置63は、ナースコールシステム6によるナースコルの呼び出しを報知する装置である。本実施例では、端末装置63としては、後述する予報発報指令の内容を表示できるように、文字や記号の表示が可能な画面を備えた装置が用いられる。なお、図示例では、端末装置63として、表示装置400、端末コンピュータ500、ナースコール用親機600、スマートフォン300を例示したが、これらの組み合わせは適宜自由に変更できるのは勿論である。
【0052】
ネットワークNは、データ通信を行うコンピュータネットワークである。本実施形態では、ネットワークNは、医療用ポンプ管理システム1が設けられる病院などの医療機関内に構築されたローカルエリアネットワークで構成されている。
図1では、医療用ポンプ装置2、ポンプ管理サーバ3、電子カルテシステムサーバ41、看護支援システムサーバ51、ナースコールシステムサーバ61を単独のネットワークNで接続した場合を示したが、これらは複数のネットワークで接続される構成であってもよい。
【0053】
次に、ポンプ管理サーバ3による医療用ポンプ装置2の運用支援の一例について説明する。
【0054】
A:アラームイベントの発報
本発明に係る医療用ポンプ管理システム1では、医療用ポンプ装置2においてアラームイベントが発生し、当該医療用ポンプ装置2からアラームイベントの発生を知らせるポンプステータス情報が出力されると、このポンプステータス情報を受信したポンプ管理サーバ3がアラームイベントの発生をナースコールシステム6を介して看護師などのスタッフに報知する。
【0055】
(1)たとえば、患者に薬液を供給中のシリンジポンプ2aにおいて、液切れを示す「空液警報」(アラームイベント)が発生すると、当該アラームイベントが発生したシリンジポンプ2aからアラームイベントの発生を知らせるポンプステータス情報が出力される。
【0056】
(2)ネットワークNに出力されたポンプステータス情報は、ポンプ管理サーバ3で受信・解析される。ポンプ管理サーバ3は、受信したポンプステータス情報に含まれるシリンジポンプ2aの製造番号(ポンプID情報)から、データベース31の患者-ポンプ対応テーブル101に記憶された情報を使ってアラームイベントが発生したシリンジポンプ2aと対応付けられた患者ID情報と当該患者の所在地情報とを特定する。
【0057】
(3)このようにしてアラームイベントが発生したシリンジポンプ2aと、当該シリンジポンプ2aに対応付けられた患者ID情報および患者所在地情報が特定されると、次に制御装置32は、発生したアラームイベントの種別の情報(「空液警報」であることを示す情報)と、アラームイベントが発生したシリンジポンプ2aに対応づけられた患者ID情報および患者所在地情報とを含んだアラームイベント発報指令を生成するとともに、生成したアラームイベント発報指令をナースコールシステム6で読み取り可能なデータ形式に変換して、ナースコールシステムサーバ61に送信する。
【0058】
(4)ナースコールシステムサーバ61は、ネットワークNを介してポンプ管理サーバ3からのアラームイベント発報指令を受信すると、受信したアラームイベント発報指令を解析する。ナースコールシステムサーバ61では、受信したアラームイベント発報指令を解析することで、発生したアラームイベントの種別と、アラームイベントが発生したシリンジポンプ2aに対応づけられた患者ID情報および患者所在地情報が特定されるので、これら特定された情報を、ナースコールシステム6の機能を使って看護師などのスタッフに報知する。
【0059】
(5)すなわち、ナースコールシステムサーバ61は、発生したアラームイベントの種別(「空液警報」であることを示す情報)と、患者ID情報と、当該患者の所在地情報とをナースコールシステム6の端末装置63を通じて看護師などのスタッフに報知する(たとえば、端末装置63の画面に上記情報を表示したり、端末装置63で警告音を鳴動させるなどの報知を行う)。これにより、看護師などのスタッフは、端末装置63(たとえば、スマートフォン300)を通じて、どの病室のどの病床の誰の医療用ポンプ装置2にどのようなアラームが発生しているかをアラームイベントの発生とほぼ同時(即時)に把握することができるようになり、迅速にアラームに対処できるようになる。
【0060】
なお、この報知に際しては、たとえば、患者ID情報と患者氏名や患者氏名を含む患者情報(たとえば、性別、年齢など)を対応付けるテーブルをポンプ管理サーバ3またはナースコールシステムサーバ61などに備えさせておき、患者ID情報とともに、または患者ID情報に代えて、これら患者の氏名などを報知するように構成してもよい。また、ポンプID情報と医療用ポンプ装置2の種別(どのような医療用ポンプ装置2であるかが理解できる情報、たとえば、機種名など)を対応付けたテーブルをポンプ管理サーバ3またはナースコールシステムサーバ61などに備えさせておき、ポンプID情報から機種名などの情報を特定して、上記アラームイベントの発生の報知の際に、医療用ポンプ装置2の種別も併せて報知するように構成してもよい。
【0061】
B:予報イベントの発報
本発明に係る医療用ポンプ管理システム1では、上述したアラームイベントの発報に加えて、医療用ポンプ装置2について、あらかじめ個別にポンプ管理サーバ3に設定した予報発報条件が満たされると、ポンプ管理サーバ3が予報発報イベントを発生させるとともに、当該イベントの発生をナースコールシステム6を介して看護師などのスタッフに報知する。
【0062】
(1)たとえば、患者に液体を供給中のシリンジポンプ2aについて、予報発報条件として、「液切れの10分前」が設定されたとする。
【0063】
(2)このように予報発報条件が設定されると、ポンプ管理サーバ3の制御装置32は、予報発報条件が設定されたシリンジポンプ2aのポンプステータス情報を監視して、予報発報条件が成就したか否かを判定する。
【0064】
具体的には、シリンジポンプ2aのポンプステータス情報は、データベース31のポンプステータス記録テーブル102に記憶されているので、制御装置32は、ポンプステータス記録テーブル102に記憶されたシリンジポンプ2aのポンプステータス情報を監視して予報発報条件が満たされたか否か(条件成就/未成就)を判定する。
【0065】
ここでは予報発報条件として「液切れ10分前」が設定されているので、制御装置32は、液切れまでの猶予時間の演算に必要なポンプステータス情報(たとえば、「投与予定量」および「設定流量」)をポンプステータス記録テーブル102から読み出して、液切れまでの猶予時間を演算する。この演算は、予報発報条件が成就するまで、定期的に繰り返し実行される。そして、この演算の結果、予報発報条件が満たされると、制御装置32は、当該シリンジポンプ2aに関する予報発報イベントを発生させる。
【0066】
(3)予報発報イベントを発生させる際には、制御装置32は、シリンジポンプ2aのポンプステータス情報に含まれるシリンジポンプ2aの製造番号(ポンプID情報)から、データベース31の患者-ポンプ対応テーブル101に記憶された情報を使って予報発報イベントが発生したシリンジポンプ2aと対応付けられた患者ID情報と当該患者の所在地情報とを特定する。
【0067】
(4)そして、予報発報イベントが発生したシリンジポンプ2aと、当該シリンジポンプ2aに対応付けられた患者ID情報および患者所在地情報が特定されると、次に制御装置32は、発生した予報発報イベントの内容を示す予報種別情報(「液切れ10分前」であることを示す情報)と、予報発報イベントが発生したシリンジポンプ2aに対応づけられた患者ID情報および患者所在地情報とを含んだ予報発報指令を生成するとともに、生成した予報発報指令をナースコールシステム6で読み取り可能なデータ形式に変換して、ナースコールシステムサーバ61に送信する。
【0068】
(5)ナースコールシステムサーバ61は、ネットワークNを介してポンプ管理サーバ3からの予報発報指令を受信すると、受信した予報発報指令を解析する。ナースコールシステムサーバ61では、受信したアラームイベント発報指令を解析することで、発生した予報発報イベント(成就した予報発報条件)の内容と、予報発報イベントが発生したシリンジポンプ2aに対応づけられた患者ID情報および患者所在地情報とが特定されるので、これら特定された情報を、ナースコールシステム6の機能を使って看護師などのスタッフに報知する。
【0069】
(6)すなわち、ナースコールシステムサーバ61は、発生した予報発報イベントの内容(「液切れ10分前」であることを示す情報)と、患者ID情報と、当該患者の所在地情報とをナースコールシステム6の端末装置63を通じて看護師などのスタッフに報知する。これにより、看護師などのスタッフは、端末装置63(たとえば、スマートフォン300)を通じて、どの病室のどの病床の誰の医療用ポンプ装置2でどのような予報発報条件が満たされたかを予報発報イベントの発生とほぼ同時(即時)に把握することができるようになり、予報に迅速に対処(たとえば、薬液の交換などが)できるようになる。
【0070】
なお、予報発報イベントの報知に関して、たとえば、患者ID情報と患者氏名や患者氏名を含む患者情報(たとえば、性別、年齢など)を対応付けるテーブルを備えさせておき、患者ID情報とともに、または患者ID情報に代えて、当該患者の氏名などを報知するように構成してもよいこと、および、ポンプID情報と医療用ポンプ装置2の種別を対応付けたテーブルを備えさせておき、ポンプID情報から機種名などの情報を特定して、上記予報発報イベントの発生の報知の際に、医療用ポンプ装置2の種別も併せて報知するように構成してもよいことは、アラームイベントの報知の場合と同様である。
【0071】
このように、本発明に係る医療用ポンプ管理システム1によれば、ポンプ管理サーバ3が、医療用ポンプ装置2ごとに設定される予報発報条件を満たしたか否かを判定し、予報発報条件を満たしたと判定したときには、当該条件を満たした予報発報条件の内容を示す予報種別情報と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報および当該医療用ポンプ装置2のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とを含んだ予報発報指令を、ナースコールシステム6に送信するように構成されているので、ナースコールシステム6側は、どの医療用ポンプ装置(または、どの患者)でどのような予報発報条件が満たされたかを迅速に知ることができる。そのため、この情報に接した看護師などのスタッフは、通知された予報種別情報に応じた適切な対応を迅速にとることができるようになる。
【0072】
しかも、予報発報条件は医療用ポンプ装置ごとに設定されるので、たとえば、ナースセンターからの距離に応じて、液切れの予報を発報するタイミングを変えておくことで、液切れの予報発報から当該予報に対する対応(たとえば、薬液の交換など)を余裕をもって行うことができるようになる。
【0073】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれらに限定されることなくその範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0074】
たとえば、上述した実施形態では、医療用ポンプ装置自身に制御部が備えられている場合を示したが、定期的およびイベント発生時にポンプステータス情報の出力が可能な構成であれば、後付けの装置によってポンプステータス情報が出力される構成であってもよい。
【0075】
また、上述した実施形態では、アラームイベントまたは予報発報イベントの報知に際して、制御装置32は、アラームイベントの種別情報(または予報種別情報)と、当該医療用ポンプ装置のポンプID情報に対応づけられた患者ID情報と患者所在地情報とを含んだアラームイベントの発報指令(または予報発報指令)を生成してナースコールシステム6に送信する場合を例示したが、アラームイベントの発報指令および予報発報指令では、最低限、発生したイベントの種別とイベントがどの医療用ポンプ装置2または患者で発生したかの報知できればよいので、アラームイベントの発報指令または予報発報指令は、アラームイベントの種別情報(または予報種別情報)と、当該医療用ポンプ装置2のポンプID情報および/または当該ポンプID情報に対応づけられた患者ID情報とが含まれていればよい。したがって、アラームイベントの発報指令または予報発報指令は、イベントの種別情報と当該イベントが発生した医療用ポンプ装置2のポンプID情報とで構成されたり、イベントの種別情報と患者ID情報とで構成されたり、あるいはこれらに患者所在地情報を組み合わせたもので構成したりすることができる。
【0076】
また、上述した実施形態では、予報発報条件を「液切れ10分前」とした場合を例示したが、液切れまでの時間は自由に変更できるのは勿論のこと、液切れまでの猶予時間に代えて液切れまでの残量を用いるなど、予報発報条件は任意に変更することができる。要は、医療用ポンプ装置2から定期的およびイベント発生時に送信されるポンプステータス情報に基づいて判定可能な条件であれば、予報発報条件は自由に設定することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 医療用ポンプ管理システム
2 医療用ポンプ装置
3 ポンプ管理サーバ
4 電子カルテシステム
5 看護支援システム
6 ナースコールしすてむ
31 データベース
32 制御装置
63 端末装置(報知手段)
101 患者-ポンプ対応テーブル
102 ポンプステータス記録テーブル
103 予報条件記録テーブル
201 制御手段
202 予報条件設定手段
203 送信先設定手段
204 通信手段
300 スマートフォン
400 表示装置
500 端末コンピュータ
600 ナースコール用親機
N ネットワーク