(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170761
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】給油装置
(51)【国際特許分類】
B67D 7/06 20100101AFI20231124BHJP
【FI】
B67D7/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082763
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】大友 忠春
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 卓司
(72)【発明者】
【氏名】井口 達夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 浩司
(72)【発明者】
【氏名】津村 泰行
(72)【発明者】
【氏名】江守 一
(72)【発明者】
【氏名】寺杣 友貴
(72)【発明者】
【氏名】青木 仁志
【テーマコード(参考)】
3E083
【Fターム(参考)】
3E083AA02
3E083AB15
3E083AD30
3E083AG40
3E083AK01
(57)【要約】
【課題】深紫外線(UV-C)を用いてウイルス等を迅速かつ簡便に不活化すると共に、操作性及び安全性に優れた給油装置を提供する。
【解決手段】燃料油を供給する給油機構と、給油機構に接続される給油ホースと、給油ホースの先端に設けられ、握り部6aと、レバー部6bと、吐出パイプ6cとを備える給油ノズル6と、給油ノズルが掛けられるノズル掛け11とをハウジング本体2に備え、ハウジング本体に深紫外線を発生させる紫外線発生部7を配設し、紫外線発生部からの深紫外線を給油ノズルに照射する給油装置1。紫外線発生部は耐圧防爆ケース10内に設けられ、紫外線発生部からの深紫外線を耐圧防爆ケースの表面に設けられた強化ガラス12を通して照射することができる。紫外線発生部をノズル掛けを挟んで水平方向に相対向して2つ設けることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油を供給する給油機構と、
該給油機構に接続される給油ホースと、
該給油ホースの先端に設けられ、握り部と、レバー部と、吐出パイプとを備える給油ノズルと、
該給油ノズルが掛けられるノズル掛けとをハウジング本体に備え、
該ハウジング本体に深紫外線を発生させる紫外線発生部を配設し、
該紫外線発生部からの深紫外線を前記給油ノズルに照射することを特徴とする給油装置。
【請求項2】
前記紫外線発生部は耐圧防爆ケース内に設けられ、該紫外線発生部からの深紫外線を該耐圧防爆ケースの表面に設けられた強化ガラスを通して照射することを特徴とする請求項1に記載の給油装置。
【請求項3】
前記紫外線発生部は、前記ノズル掛けを挟んで水平方向に相対向して2つ設けられることを特徴とする請求項1又は2に記載の給油装置。
【請求項4】
前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルの握り部の長手方向に沿って照射することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の給油装置。
【請求項5】
前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルの握り部及びレバー部の下部に照射することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の給油装置。
【請求項6】
前記ハウジング本体は、前記紫外線発生部の上方に紫外線反射板を備え、前記紫外線発生部からの深紫外線を、該紫外線反射板を介して前記給油ノズルの握り部及びレバー部の上部に照射することを特徴とする請求項5に記載の給油装置。
【請求項7】
前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルが前記ノズル掛けに掛けられている際に照射することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の給油装置。
【請求項8】
前記ハウジング本体は人検知センサを備え、該人検知センサが人を検知すると、前記紫外線発生部からの深紫外線の照射を停止することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の給油装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の燃料タンク等へ燃料油を給油する給油装置に関し、特に菌、カビ、ウイルスへの対策を施した給油装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人件費の削減のために顧客自身が給油操作を行うセルフ給油所が増加している。これらのセルフ給油所での給油作業では不特定多数の顧客が給油ノズルに触れるため、給油ノズルに菌、カビ、ウイルス等が付着し、さらに近年では新型コロナウイルスの感染症の感染源になる恐れがある。
【0003】
車両に燃料油を給油する給油ノズルを清潔に維持するため、給油ノズルのアルコール消毒は有効であるが、毎回の消毒作業は作業者の負担になるため、作業性に優れた除菌、除ウイルスが望まれている。
【0004】
そこで、特許文献1には、除菌室を仕切り部材で照射室と非照射室が交互に隣接するように仕切り、除菌対象物を照射室と非照射室とを通過するように移動させ、紫外線照射ランプを照射室に臨ませて配置し、除菌対象物を照射室と非照射室を交互に通過させ、除菌対象物に紫外線を間欠的に照射して付着又は浮遊しているウイルスや細菌を除菌する装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1に記載の発明は有効であるが、除菌対象物を照射室に入れる操作が必要となり、給油装置に利用した場合には、除菌する度に給油ノズルを給油装置より取り外さなければならず操作性が悪化すると共に、給油作業の支障となるという問題がある。
【0007】
また、セルフ給油所に設置される給油装置は、顧客自らが給油ノズルを操作するので、人体に対する紫外線の影響を防ぐ手段が必要となる。特許文献1に記載の発明では、紫外線を間欠的に照射(照射したり、照射しなかったり)しているが、これは光源ランプの寿命が短くなることを防ぐことを目的としており、装置内に手が入った際に人体への影響を防ぐための手段ではない。
【0008】
さらに、給油ノズルの操作者が抗ウイルス手袋を付けて給油操作を行うことも考えられるが、装着の手間や手袋の後処理に問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、深紫外線(UV-C)を用いてウイルス等を迅速かつ簡便に不活化すると共に、操作性及び安全性に優れた給油装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、給油装置であって、燃料油を供給する給油機構と、該給油機構に接続される給油ホースと、該給油ホースの先端に設けられ、握り部と、レバー部と、吐出パイプとを備える給油ノズルと、該給油ノズルが掛けられるノズル掛けとをハウジング本体に備え、該ハウジング本体に深紫外線を発生させる紫外線発生部を配設し、該紫外線発生部からの深紫外線を前記給油ノズルに照射することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、深紫外線を給油ノズル及び給油ノズルが収納されている空間に拡散させることで、迅速、簡便かつ確実に給油ノズルの握り部等の除菌、ウイルス等の不活化を行うことができる。また、除菌のために給油ノズルを給油装置より取り外す必要もないため、操作性が悪化することもない。
【0012】
上記給油装置において、前記紫外線発生部を耐圧防爆ケース内に設け、該紫外線発生部からの深紫外線を該耐圧防爆ケースの表面に設けられた強化ガラスを通して照射することができる。紫外線発生部は可燃性蒸気が滞留する危険場所に配設されるが、紫外線発生部を耐圧防爆ケース内に設けたので、周辺で電気火花等が発生しても紫外線発生部の損傷を防止することができる。また、強化ガラスは耐熱衝撃性に優れるため、耐圧防爆ケース内で発火しても周囲の安全を維持することができる。さらに、強化ガラスは光透過性が非常に高く、除菌、ウイルス等の不活化の効率を向上させることができる。
【0013】
前記紫外線発生部を前記ノズル掛けを挟んで水平方向に相対向して2つ設け、前記紫外線発生部から前記給油ノズルに対して深紫外線を定められた特定の範囲に照射することで、給油ノズル表面に付着したウイルス等を好適に除菌することができる。
【0014】
また、前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルの握り部の長手方向に沿って照射することができる。これにより給油操作時において人が触れる箇所を効率よく除菌し、次回の利用者への感染予防を行うことができる。
【0015】
さらに、前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルの握り部及びレバー部の下部に照射することで、給油操作時に人が触れる握り部の下部等を確実に除菌することができる。
【0016】
前記ハウジング本体は、前記紫外線発生部の上方に紫外線反射板を備え、前記紫外線発生部からの深紫外線を、該紫外線反射板を介して前記給油ノズルの握り部及びレバー部の上部に照射することができる。紫外線発生部によって深紫外線を直接照射することができない給油ノズルの握り部の上部等を、紫外線反射板を介して反射された深紫外線によって効率的かつ確実に除菌することができる。
【0017】
前記紫外線発生部からの深紫外線を、前記給油ノズルが前記ノズル掛けに掛けられている際に照射することにより、ノズル掛け内に給油ノズルが存在する場合にのみ給油ノズルが除菌されるため、人体への影響がなく安全である。
【0018】
前記ハウジング本体は人検知センサを備え、該人検知センサが人を検知すると、前記紫外線発生部からの深紫外線の照射を停止することができる。顧客又は作業員が給油を行うために給油装置に近づくと深紫外線の照射が停止し、人体に影響がある深紫外線を浴びる可能性を排除することで、安全に給油作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のように、本発明に係る給油装置によれば、紫外線を用いてウイルス等を迅速かつ簡便に不活化すると共に、操作性及び安全性等に優れた給油装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る給油装置の一実施の形態を示す全体斜視図である。
【
図2】
図1の給油装置に設けられる紫外線発生装置等のハウジング本体への取付要領を説明するための概略斜視図である。
【
図3】
図2に示す紫外線発生装置及びその近傍の拡大斜視図である。
【
図4】
図3に示す紫外線発生装置及びその近傍を給油ノズルの上方から見た場合の概略図である。
【
図6】
図1に示す給油装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明に係る給油装置の一実施の形態を示し、この給油装置1は、ハウジング本体2の内部又は表面に、給油機構(不図示)、屋外データ入出力装置4、表示器5、給油ノズル6、紫外線発生部7(7A、7B)、紫外線照射ランプ8、人検知センサ9等を備える。ハウジング本体2の上部に給油管の最先端の継手3が配置され、継手3と給油ノズル6との間は給油ホース(不図示)で接続される。給油装置1の裏面側も上記と同様に構成される。
【0023】
給油機構は、従来の給油装置に設けられるものと構成や動作は同じであり、給油ポンプ、ポンプモータ、流量計、給油ホース、給油ノズル6等を備える。給油機構は、給油装置1の表面側及び裏面側に各々3系統設けられる。
【0024】
屋外データ入出力装置4は、給油設定データの入出力を制御するために設けられ、給油作業に付帯する各種設定、料金精算等を行う。この屋外データ入出力装置4、表示器5も従来の給油装置に設けられるものと構成や動作は同じである。
【0025】
紫外線発生部7(7A、7B)は、100~280nmの深紫外線(UV-C)を発生させるためのものであり、前記紫外線発生部7(7A、7B)はケース10内に耐圧防爆ケース19を介して収納されている。
図2に示すように、ハウジング本体2の支柱18に固定された側面ブラケット17に正面ブラケット14が連結され、正面ブラケット14に立設された取付ブラケット16に紫外線発生部7(7A、7B)が固定される。
【0026】
図2~
図4に明示するように、紫外線発生部7(7A、7B)は、給油ノズル6の斜め下方向に、給油ノズル6を掛けるためのノズル掛け11を挟んで水平方向に相対向して2つ設けられる。紫外線発生部7A、7Bで発生した深紫外線UV-Cは、耐圧防爆ケース19の表面に設けられた強化ガラス(例えばホウケイ酸ガラス)12A、12Bを通して外部へ照射される。
【0027】
紫外線発生部7(7A、7B)の上方には、紫外線反射板13(13A、13B)がケース10の内面に支持され、紫外線発生部7A、7Bから照射された深紫外線のうち、給油ノズル6の握り部6a及びレバー部6bに照射されず、これらを通過した深紫外線を下方に反射する。この紫外線反射板13には、250nm~400nmの波長にて高い反射率を示すMIRO-UV(登録商標)等を用いることができる。
【0028】
図1に示す紫外線照射ランプ8は、紫外線発生部7から深紫外線が照射されている際に点灯し、深紫外線の照射が停止すると消灯する。また、人検知センサ9は給油装置1に近づいてきた人を検知する。人検知センサ9は例えば検出範囲を設定できるマイクロ波センサを用いて設定範囲内に人が接近した際に作動する。
【0029】
図5に示すように、給油装置1は、給油制御装置21、ノズル除菌制御部22を備える。給油制御装置21によって、給油装置1の両サイド1、2の各々3系統の給油機構(給油ポンプ、ポンプモータ、流量計、給油ノズル6(6-1、6-2)等)を制御し、各々の給油ノズル6-1、6-2等から燃料油を供給する。また、ノズル除菌制御部22によって、後述するように、両サイド1、2の紫外線発生部7A-1、7B-1、7A-2、7B-2等、紫外線照射ランプ8-1、8-2、人検知センサ9-1、9-2を用いて給油ノズル6の除菌制御を行う。
【0030】
次に、上記構成を有する給油装置1による除菌動作について、
図6を中心に参照しながら説明する。
【0031】
ステップS1で給油装置1のノズルスイッチ(SW)がOFFであるか否か、すなわち給油ノズル6がノズル掛け11に掛けられているか否かを判断し、給油ノズル6がノズル掛け11に掛けられている場合には、ステップS2において、人検知センサ9が人を検知したか否かを判断する。
【0032】
ステップS2において人が検知されていない場合には(ステップS2;No)、ステップS3において紫外線照射ランプ8をONし、ステップS4で紫外線発生部7から深紫外線を照射する。
【0033】
図3及び
図4に示すように、紫外線発生部7(7A、7B)から強化ガラス12(12A、12B)を介して深紫外線UV-Cを給油ノズルの握り部6aの長手方向に沿って照射する。これによって、給油ノズル6の吐出パイプ6cを除く、握り部6a及びレバー部6bの下部に深紫外線が照射される。
【0034】
紫外線発生部7A、7Bから照射された深紫外線UV-Cのうち、給油ノズル6の握り部6a及びレバー部6bに照射されず、これらを通過した深紫外線UV-Cは、紫外線反射板13(13A、13B)で下方に反射され、給油ノズル6の握り部6a及びレバー部6bの上部に照射される。これによって、給油操作時に人が触れる握り部6a及びレバー部6bの全体の除菌を確実に行うことができる。
【0035】
ステップS4で紫外線発生部7から深紫外線を照射している際に、人検知センサ9が人を検知した場合(ステップS5;Yes)、又は所定時間t1が経過した場合(ステップS6;Yes)には、ステップS7において深紫外線UV-Cの照射を停止し、ステップS8で紫外線照射ランプ8をOFFして動作を終了する。
【0036】
なお、以上の説明では、車両に燃料油を供給する給油所で使われる給油ノズルを例に説明したが、EVステーションで電気自動車に電力を供給する充電ノズルや水素ステーションで燃料電池車や水素エンジン車に水素を供給する充填ノズルに紫外線発生部からの深紫外線を照射してもよい。
【0037】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術範囲を限定する趣旨の記述ではない。
【符号の説明】
【0038】
1 給油装置
2 ハウジング本体
3 継手
4 屋外データ入出力装置
5 表示器
6 給油ノズル
7 紫外線発生部
8 紫外線照射ランプ
9 人検知センサ
10 耐圧防爆ケース
11 ノズル掛け
12 強化ガラス
13 紫外線反射板
14 正面ブラケット
16 取付ブラケット
17 側面ブラケット
18 支柱
19 耐圧防爆ケース
21 給油制御装置
22 ノズル除菌制御部