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特開2023-170766パワーモジュール、及びこれを備える電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170766
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】パワーモジュール、及びこれを備える電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20231124BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082771
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】柳田 憲史
(72)【発明者】
【氏名】増澤 高志
(72)【発明者】
【氏名】江積 匡彦
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA21
5H770AA29
5H770BA02
5H770BA11
5H770DA03
5H770GA01
5H770GA19
5H770HA01Z
5H770HA19Z
5H770JA08Z
5H770LB05
5H770LB10
5H770PA21
5H770PA42
5H770QA01
5H770QA02
5H770QA05
5H770QA06
5H770QA08
5H770QA11
5H770QA21
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】回路パターンの端部から発生する部分放電を正確に検出する。
【解決手段】パワーモジュールは、ベースプレートの主面に配置された回路基板と、回路基板の回路パターンに電力を入力可能な主端子部と、回路パターンに接続されたパワー半導体素子によって変換された電力を出力可能な出力端子部と、主面に配置された状態で主面の広がる方向から回路基板を囲むことで回路基板を収容する収容空間を画定する側壁部と、収容空間を閉じるように側壁部に配置されることで収容空間内を閉塞する蓋部とを有するケースと、回路基板を埋めるように収容空間内に配置された絶縁部と、ケースに配置され、先端面から光が入射することで、収容空間内で生じた光を検出可能な光検出部と、を備える。光検出部の先端面は、光検出範囲が収容空間内における側壁部の内面と対向する回路パターンの側縁部を含むように側縁部に沿って複数並んで配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
前記ベースプレートの主面に配置された回路基板と、
前記回路基板の回路パターンに電力を入力可能な主端子部と、
前記回路パターンに接続されたパワー半導体素子によって変換された前記電力を出力可能な出力端子部と、
前記主面に配置された状態で前記主面の広がる方向から前記回路基板を囲むことで該回路基板を収容する収容空間を画定する側壁部と、前記収容空間を閉じるように前記側壁部に配置されることで前記収容空間内を閉塞する蓋部とを有するケースと、
前記主面に対して垂直な方向から前記回路基板を埋めるように前記収容空間内に配置された絶縁部と、
前記ケースに配置され、先端面から光が入射することで、前記収容空間内で生じた光を検出可能な光検出部と、
を備え、
前記光検出部の前記先端面は、光検出範囲が前記収容空間内における前記側壁部の内面と対向する前記回路パターンの側縁部を含むように該側縁部に沿って複数並んで配置されているパワーモジュール。
【請求項2】
複数の前記光検出部は、前記ケースの前記側壁部に一体に配置され、
各前記光検出部の前記先端面は、前記側壁部の前記内面と前記回路パターンの前記側縁部とが対向する方向で、前記絶縁部を介して前記側縁部と対向する請求項1に記載のパワーモジュール。
【請求項3】
各前記光検出部の前記先端面は、前記収容空間内で前記絶縁部と一体に配置されている請求項2に記載のパワーモジュール。
【請求項4】
請求項1から3の何れか一項に記載のパワーモジュールと、
前記パワー半導体素子のスイッチングを制御可能なゲート駆動装置と、
前記光検出部からの光を受光信号電圧に変換可能な光電変換素子と、
前記ゲート駆動装置から前記パワー半導体素子にかかる電圧が変化するタイミングと、前記光電変換素子が前記光を前記受光信号電圧に変換するタイミングとを同期させるとともに、前記光電変換素子からの前記受光信号電圧を取得可能な同期処理装置と、
前記同期処理装置が取得した前記受光信号電圧の大きさに基づいて、前記光検出範囲内の前記回路パターンにおける異常の有無を検出可能な検出装置と、
を備える電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パワーモジュール、及びこれを備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、パワー半導体素子と、絶縁基板と、FBG(Fiber Bragg Grating)が形成された光ファイバとを備えるパワー半導体モジュールが開示されている。光ファイバに形成されたFBGは、パワー半導体素子の近傍に配置されている。パワー半導体素子の近傍で部分放電が発生した際、この部分放電によるAE(Acoustic Emission)波の音圧によりFBGが伸縮する。このFBGの伸縮に伴って光信号波長が変化する現象を利用して、部分放電を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/159211号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、パワー半導体モジュール中における部分放電源は、半導体素子近傍に限られず、回路パターンの端部が起点になることがある。このため、上記特許文献1に記載の技術では、回路パターンの端部から発生する部分放電を正確に検出することができない場合がある。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、回路パターンの端部から発生する部分放電を正確に検出することができるパワーモジュール、及びこれを備える電力変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係るパワーモジュールは、ベースプレートと、前記ベースプレートの主面に配置された回路基板と、前記回路基板の回路パターンに電力を入力可能な主端子部と、前記回路パターンに接続されたパワー半導体素子によって変換された前記電力を出力可能な出力端子部と、前記主面に配置された状態で前記主面の広がる方向から前記回路基板を囲むことで該回路基板を収容する収容空間を画定する側壁部と、前記収容空間を閉じるように前記側壁部に配置されることで前記収容空間内を閉塞する蓋部とを有するケースと、前記主面に対して垂直な方向から前記回路基板を埋めるように前記収容空間内に配置された絶縁部と、前記ケースに配置され、先端面から光が入射することで、前記収容空間内で生じた光を検出可能な光検出部と、を備え、前記光検出部の前記先端面は、光検出範囲が前記収容空間内における前記側壁部の内面と対向する前記回路パターンの側縁部を含むように該側縁部に沿って複数並んで配置されている。
【0007】
本開示に係る電力変換装置は、上記のパワーモジュールと、前記パワー半導体素子のスイッチングを制御可能なゲート駆動装置と、前記光検出部からの光を受光信号電圧に変換可能な光電変換素子と、前記ゲート駆動装置から前記パワー半導体素子にかかる電圧が変化するタイミングと、前記光電変換素子が前記光を前記受光信号電圧に変換するタイミングとを同期させるとともに、前記光電変換素子からの前記受光信号電圧を取得可能な同期処理装置と、前記同期処理装置が取得した前記受光信号電圧の大きさに基づいて、前記光検出範囲内の前記回路パターンにおける異常の有無を検出可能な検出装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、回路パターンの端部から発生する部分放電を正確に検出することができるパワーモジュール、及びこれを備える電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施形態に係る電力変換装置の概略構成を示す斜視図である。
図2】本開示の第一実施形態に係るパワーモジュールを平面視した時の図である。
図3図2で示したIII-III線方向の断面図である。
図4】パワーモジュールと、ゲート駆動装置と、光電変換素子と、同期処理装置と、検出装置との関係を示す図である。
図5】パワー半導体素子に印加される電圧と、同期処理装置に入力される入力信号と、検出装置が取得する受光信号電圧との関係を示すグラフである。
図6】本開示の第二実施形態に係るパワーモジュールを平面視した時の図である。
図7図6で示したVII-VII線方向の断面図である。
図8】本開示の第三実施形態に係るパワーモジュールの断面図であり、図7で示した部分に対応した図である。
図9】本開示のその他の実施形態に係るパワーモジュールの断面図であり、図7で示した部分に対応した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による電力変換装置を実施するための形態を説明する。
【0011】
<第一実施形態>
電力変換装置は、例えば直流電力を三相交流電力等に変換する装置である。本実施形態の電力変換装置には、例えば、発電所等の系統で用いられるインバータや、電気自動車等の電動機の駆動に用いられるインバータ等が挙げられる。
【0012】
図1に示すように、電力変換装置100は、ケーシング1と、外部入力導体2と、コンデンサ3と、電力変換部4と、冷却装置5と、ゲート駆動装置6と、光電変換素子7と、同期処理装置8と、検出装置9と、ケーブル11とを備えている。なお、図1中では、紙面の都合上、光電変換素子7及びケーブル11は、示されておらず、図4中に示されている。
【0013】
(ケーシング)
ケーシング1は、電力変換装置100の外殻の一部を成している。本実施形態におけるケーシング1は、アルミ等の金属又は合成樹脂等により形成されており、直方体状を成している。ケーシング1は、互いに背合わせとなるように配置されている二つの側面を有している。以下、これら二つの側面のうち、一方側を向く側面を「入力側側面1a」と称し、他方側を向く側面を「出力側側面1b」と称する。入力側側面1aからは、直流電力を入力するための外部入力導体2が引き出されている。
【0014】
(外部入力導体)
外部入力導体2は、電力変換装置100の外部の電力系統等から供給される直流電力をコンデンサ3へ供給する一対の電気導体(バスバー)である。本実施形態における外部入力導体2は、例えば、銅等を含む金属により形成されている。外部入力導体2の一端は、ケーシング1に収容されたコンデンサ3に接続されており、外部入力導体2の他端は、ケーシング1の入力側側面1aと交差する方向でケーシング1の外部に延びている。
【0015】
(コンデンサ)
コンデンサ3は、外部入力導体2から入力された電荷を蓄えるとともに、電力変換に伴う電圧変動を抑えるための平滑コンデンサである。コンデンサ3を経由することでリプルが抑えられ平滑化された直流電圧は、電力変換部4へ供給される。コンデンサ3は、コンデンサ本体3aと、接続導体3bとを有している。コンデンサ本体3aは、主として上述した平滑コンデンサの機能を発揮する部分である。
【0016】
接続導体3bは、コンデンサ本体3aから電力変換部4へ電力を伝えるための電気導体(バスバー)である。接続導体3bは、例えば、銅等を含む金属によって形成されている。接続導体3bは、正極側端子3pと、負極側端子3nとを有している。
【0017】
正極側端子3pは、コンデンサ3における正極を成しており、コンデンサ本体3aと、電力変換部4におけるパワーモジュール400の正極とを接続する電流経路である。負極側端子3nは、コンデンサ3における負極を成しており、コンデンサ本体3aと、電力変換部4におけるパワーモジュール400の負極とを接続する電流経路である。
【0018】
これら正極側端子3p及び負極側端子3nは、間隔をあけて並んで配置されている。正極側端子3p及び負極側端子3nのそれぞれの一端は、コンデンサ本体3aに接続されている。なお、正極側端子3p及び負極側端子3nとコンデンサ本体3aとの接続状態の詳細な図示は省略する。正極側端子3p及び負極側端子3nのそれぞれの他端は、パワーモジュール400に接続されている。
【0019】
(電力変換部)
電力変換部4は、コンデンサ3から入力された電圧を変換する。本実施形態における電力変換部4は、三相交流電力を出力するために、U相、V相、及びW相用の出力をそれぞれ担当する三つのパワーモジュール400を有している。したがって、本実施形態における電力変換装置100は、三つのパワーモジュール400を備える三相インバータである。電力変換部4は、ケーシング1に収容されている。
【0020】
(パワーモジュール)
パワーモジュール400は、入力された電力を変換して出力する装置である。図2及び図3に示すように、パワーモジュール400は、ベースプレート10と、回路基板20と、主端子部30と、出力端子部40と、ケース50と、絶縁部60と、光検出部70と、ボンディングワイヤWbとを備えている。なお、図2中では、紙面の都合上、絶縁部60の図示を省略している。
【0021】
(ベースプレート)
ベースプレート10は、平板状を成す部材である。ベースプレート10は、主面10aと、この主面10aの裏側に位置する裏面10bを有している。即ち、ベースプレート10の主面10aと裏面10bとは互いに平行をなした状態で背合わせになっている。ベースプレート10の裏面10bは、グリースや放熱シート、あるいはハンダなどの接合材等(図示省略)を介して、冷却装置5(図1参照)に固定されている。本実施形態におけるベースプレート10には、例えば、銅等を含む金属が採用される。なお、ベースプレート10には、アルミニウム等の金属が採用されてもよい。
【0022】
(回路基板)
回路基板20は、第一絶縁板21と、表面パターン22(回路パターン)と、パワー半導体素子23と、裏面パターン24(回路パターン)とを有している。
【0023】
第一絶縁板21は、平板状を成している。第一絶縁板21は、第一面21aと、この第一面21aの裏側に位置する第二面21bとを有している。即ち、第一絶縁板21の第一面21aと第二面21bとは互いに平行をなした状態で背合わせになっている。第一絶縁板21の第二面21bには、銅箔等のパターンである裏面パターン24が一面に形成されている。当該裏面パターン24は、接合材Sを介してベースプレート10の主面10aの中央に固定されている。裏面パターン24は、第二面21bに対して垂直な方向に所定の厚みを有した状態で形成されている。
【0024】
本実施形態における第一絶縁板21は、例えばセラミック等の絶縁材料により形成されている。なお、第一絶縁板21を形成する絶縁材料としては、セラミック以外にも、紙フェノール、紙エポキシ、ガラスコンポジット、ガラスエポキシ、ガラスポリイミド、フッ素樹脂等を採用することができる。
【0025】
表面パターン22は、第一絶縁板21の第一面21aに形成された平面状に広がる銅箔等のパターンである。表面パターン22は、例えば、第一絶縁板21の第一面21aに接着等で固定された後、エッチング等がなされることにより形成される。表面パターン22は、第一面21aに対して垂直な方向に所定の厚みを有した状態で形成されている。
【0026】
表面パターン22は、第一絶縁板21の第一面21a上に複数配置されている。これら複数の表面パターン22は、第一絶縁板21が広がる方向で隙間を介して互いに隣接配置されている。本実施形態では、三つの表面パターン22が第一面21a上に配置されている場合を一例として説明する。以下、図2に示すように、説明の便宜上、これら三つの表面パターン22を第一表面パターン221、第二表面パターン222、及び第三表面パターン223と称する。
【0027】
第一表面パターン221には、コンデンサ3における正極側端子3pからの直流電圧が印加されるパターンである。第二表面パターン222は、直流電圧をコンデンサ3における負極側端子3nへ戻すためのパターンである。即ち、第一表面パターン221は、表面パターン22に形成されるPN間のループにおける入口部分に相当し、第二表面パターン222は、PN間のループにおける出口部分に相当する。第三表面パターン223は、交流電流をパワーモジュール400の外部へ出力するためのパターンである。
【0028】
パワー半導体素子23は、電圧や電流をオンオフするスイッチング動作により電力を変換する回路素子である。パワー半導体素子23は、例えば、MOSFETやIGBT等のスイッチング素子である。本実施形態では、一例として、四つのパワー半導体素子23が回路基板20の表面パターン22に接続されている。
【0029】
本実施形態における四つのパワー半導体素子23は、二つの第一パワー半導体素子231と、二つの第二パワー半導体素子232とによって構成されている。第一パワー半導体素子231は、第一表面パターン221に接続されている。第二パワー半導体素子232は、第三表面パターン223に接続されている。
【0030】
パワー半導体素子23がMOSFETの場合、パワー半導体素子23は、ドレインに相当する入力用端子(図示省略)と、ソースに相当する出力用端子(図示省略)と、ゲートに相当する制御信号用端子(図示省略)とを有する。この制御信号用端子には、パワー半導体素子23のスイッチングを制御するための信号がパワーモジュール400の外部から入力される。
【0031】
パワー半導体素子23の入力用端子は、表面パターン22に接合材Sを介して電気的に接続されている。パワー半導体素子23の出力用端子には、導線としてのボンディングワイヤWbの一端が電気的に接続されている。このボンディングワイヤWbの他端は、一端が接続されるパワー半導体素子23の入力用端子が接続された表面パターン22とは異なる表面パターン22に接続されている。ボンディングワイヤWbは、例えば、アルミニウム等の金属によって形成されている。即ち、第一面21aに形成された表面パターン22同士は、ワイヤボンディングによって電気的に接続されている。
【0032】
第一パワー半導体素子231の入力用端子は、第一表面パターン221に接続されている。一端が第一パワー半導体素子231の出力用端子に接続されたボンディングワイヤWbの他端は、第三表面パターン223に接続されている。第二パワー半導体素子232の入力用端子は、第三表面パターン223に接続されている。一端が第二パワー半導体素子232の出力用端子に接続されたボンディングワイヤWbの他端は、第二表面パターン222に接続されている。
【0033】
第一パワー半導体素子231における入力用端子には、第一表面パターン221を通じて直流電力が入力されるとともに、入力された直流電力がこの第一パワー半導体素子231によって交流電力に変換される。変換された交流電力は、第一パワー半導体素子231における出力用端子からボンディングワイヤWbを通じて第三表面パターン223へ出力される。
【0034】
第二パワー半導体素子232における入力用端子には、第三表面パターン223を通じて交流電力が入力されるとともに、入力された交流電力がこの第二パワー半導体素子232によって直流電力に変換される。変換された直流電力は、第二パワー半導体素子232における出力用端子(図示省略)からボンディングワイヤWbを通じて第二表面パターン222へ出力される。
【0035】
各パワー半導体素子23には、パワーモジュール400の外部に設けられたゲート駆動装置6によって生成された制御信号が入力される。パワー半導体素子23は、ゲート駆動装置6からの制御信号に従ってスイッチングを行う。なお、パワー半導体素子23がIGBTの場合、パワー半導体素子23は、コレクタに相当する入力用端子と、エミッタに相当する出力用端子と、ゲートに相当する制御信号用端子とを有する。
【0036】
(主端子部)
主端子部30は、コンデンサ3と回路基板20との間で直流電力をやり取りする電気導体(バスバー)である。主端子部30は、例えば、銅等を含む金属によって形成されている。主端子部30は、正極としてのP型端子31と、負極としてのN型端子32とを有している。これらP型端子31及びN型端子32は、ギャップを介して並んで配置されている。P型端子31は、一端が第一表面パターン221に接続され、他端がコンデンサ3の正極側端子3pに接続されている。N型端子32は、一端が第二表面パターン222に接続され、他端がコンデンサ3の負極側端子3nに接続されている。
【0037】
(出力端子部)
出力端子部40は、表面パターン22に接続されたパワー半導体素子23によって変換された交流電力を電力変換装置100の外部に設けられた負荷(図示省略)へ出力可能な電気導体(バスバー)である。出力端子部40は、例えば、銅等を含む金属によって形成されている。
【0038】
出力端子部40は、一端が回路基板20における第三表面パターン223に接続され、他端がケーシング1の出力側側面1bと交差する方向に延びている(図1参照)。本実施形態における出力端子部40の他端は、ケーシング1の出力側側面1bよりも外側に延びている。出力端子部40の他端には、例えば、モータ等の負荷につながる電力出力用の配線(図示省略)が接続される。
【0039】
(ケース)
ケース50は、ベースプレート10の主面10aに固定された状態で、主端子部30及び出力端子部40を機械的に補強する部材である。ケース50は、例えば、合成樹脂材料(絶縁材料)等により形成されている。本実施形態におけるケース50を形成する材料には、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)を採用することができる。なお、PPS以外の合成樹脂材料を、ケース50に採用してもよい。ケース50は、ベースプレート10の主面10aに、例えば接着剤等によって固定されている。
【0040】
本実施形態におけるケース50は、側壁部51と、蓋部52とを有している。なお、図2では、紙面の都合上、図2中の中央部分に図示されたパワーモジュール400が備えるケース50の蓋部52の一部を省略している。
【0041】
側壁部51は、ベースプレート10の主面10aに配置された状態で、主端子部30のP型端子31及びN型端子32、並びに出力端子部40を外側から覆うとともに、主面10aの広がる方向から回路基板20を囲っている。言い換えれば、側壁部51は、ベースプレート10の主面10aに沿う方向で回路基板20を周囲から囲っている。したがって、側壁部51は、ベースプレート10とともに回路基板20が収容される空間を画定する内面51aを有している。また、側壁部51は、内面51aとは反対側を向く外面51bを有している。本実施形態では、回路基板20が収容されるこの空間を「収容空間R」と称する。
【0042】
ここで、回路基板20の表面パターン22は、収容空間R内で側壁部51の内面51aに対向する側縁部220(第一側縁部221a、第二側縁部222a、第三側縁部223a)を有している。この側縁部220は、表面パターン22の厚みの部分に相当する面である。つまり、側縁部220は、表面パターン22の端部である。第一表面パターン221は、側壁部51の内面51aに対向する第一側縁部221aを有している。第二表面パターン222は、側壁部51の内面51aに対向する第二側縁部222aを有している。第三表面パターン223は、側壁部51の内面51aに対向する第三側縁部223aを有している。また、回路基板20の裏面パターン24は、収容空間R内で側壁部51の内面51aに対向する側縁部240を有している。この側縁部240は、裏面パターン24の厚みの部分に相当する面である。つまり、側縁部240は、裏面パターン24の端部である。
【0043】
蓋部52は、平板状を成している。図3に示すように、蓋部52は、収容空間Rを閉じるように側壁部51に一体に配置されている。蓋部52は、側壁部51に配置されることで、収容空間R内を閉塞する。本実施形態では、側壁部51に蓋部52が配置されることで、収容空間R内が暗室になる。本実施形態における蓋部52は、主面10aに対して垂直な方向から側壁部51に接着剤等を介して固定されている。蓋部52は、側壁部51に当接する当接面52bと、この当接面52bとは反対側を向く表面52aとを有している。
【0044】
(絶縁部)
絶縁部60は、収容空間R内に配置された絶縁封止材である。絶縁部60は、シリコンゲルなどの透明充填剤により形成されている。絶縁部60は、ベースプレート10の主面10aに対して垂直な方向から回路基板20を埋めるように収容空間R内に配置されている。具体的には、収容空間R内における絶縁部60は、回路基板20及びボンディングワイヤWbの表面を覆うように配置されている。収容空間Rには、パワーモジュール400の製造過程で、液状のポッティング材(透明充填剤)が充填されることで、収容空間R内に露出する回路基板20が封止される。
【0045】
収容空間R内に充填されたポッティング材は、所定の温度と時間がかけられることで硬化して絶縁部60となる。絶縁部60は、収容空間R内における回路基板20とパワーモジュール400外部の空間とを電気的に絶縁する。本実施形態におけるポッティング材には、例えば、シリコンゲルなどを用いることができる。なお、光学的に透過し検出可能であれば、シリコンゲル以外の充填材料をポッティング材として採用してもよい。絶縁部60は、ポッティング材が充填された際に生じる液面である上面60aを有している。上面60aは、蓋部52の当接面と隙間を介して対向している。
【0046】
(光検出部)
光検出部70は、収容空間R内で生じた光を検出可能な光ファイバケーブルである。光検出部70は、ケース50の蓋部52に複数配置されている。光検出部70は、先端部71を有している。先端部71は、ケース50の蓋部52の表面52aから当接面52bにかけて貫通した状態で蓋部52に固定されている。
【0047】
先端部71における先端面72は、収容空間R内に配置されている。具体的には、先端面72は、絶縁部60の上面60aと蓋部52の当接面との間の隙間に配置されている。即ち、先端部71は、蓋部52の当接面からベースプレート10に向かって突出している。先端面72は、主面10aに対して平行な状態で主面10aと対向している。光検出部70は、この先端面72から光が入射することで、収容空間R内で生じた光を検出することができる。
【0048】
各光検出部70は、光を検出可能な範囲である光検出範囲Rdを有している。本実施形態における光検出範囲Rdは、先端部71の先端面72を起点にこの先端面72から、例えば10~30°の角度に広がる円錐状を成している。図2に示すように、複数の光検出部70の先端面72は、この先端面72から広がる光検出範囲Rdが収容空間R内における側壁部51の内面51aと対向する表面パターン22の側縁部220を含むように、この側縁部220に沿って並んで配置されている。側縁部220に沿って並ぶ複数の光検出部70のうち、隣り合う二つの光検出部70は、主面10aに対して垂直な方向から見た際に、それぞれの先端面72から広がる光検出範囲Rdの少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。
【0049】
この際、第一表面パターン221に接続されたP型端子31、第二表面パターン222に接続されたN型端子32、及び第三表面パターン223に接続された出力端子部40と、ケース50の蓋部52との間には、光検出部70の先端面72は配置されていない。したがって、主面10aに対して垂直な方向から見た際に、これらP型端子31、N型端子32、及び出力端子部40を間に挟んだ状態で隣り合う二つの光検出部70の光検出範囲Rdは、互いに重なっていない。
【0050】
(冷却装置)
図1に示すように、冷却装置5は、主として電力変換部4のパワーモジュール400を冷却する装置である。冷却装置5は、ケーシング1に積層されるように設けられており、ケーシング1に固定されることで一体化されている。したがって、冷却装置5は、ケーシング1とともに電力変換装置100の外殻の一部を成している。冷却装置5には、例えば、外部から水等の液冷媒が導入される。この液冷媒がパワーモジュール400と熱交換して温められることで、パワーモジュール400を冷却する。
【0051】
(ゲート駆動装置)
ゲート駆動装置6は、パワー半導体素子23のスイッチングを制御可能な回路基板である。ゲート駆動装置6は、ケーシング1に収容されている。図1に示すように、本実施形態におけるゲート駆動装置6は、第二絶縁板61と、ゲート駆動パターン62と、ゲートドライバIC(図示省略)とを有している。
【0052】
(第二絶縁板)
第二絶縁板61は、平板状を成している。第二絶縁板61は、電力変換部4のパワーモジュール400と間隔をあけた状態でケーシング1内に配置されている。具体的には、第二絶縁板61は、例えば、ケーシング1の内面に固定されている。
【0053】
(ゲート駆動パターン)
ゲート駆動パターン62は、パワー半導体素子23のスイッチングを制御するための回路パターンである。ゲート駆動パターン62は、第二絶縁板61に形成された銅箔等のパターンである。本実施形態におけるゲート駆動パターン62には、パワー半導体素子23の制御信号用端子に入力する制御信号を生成可能なゲートドライバICが接続されている。ゲートドライバICは、パワー半導体素子23のゲートを駆動するためのゲート電圧を生成する。ゲート駆動パターンと、パワー半導体素子23とは、接続用の電気導体(図示省略)によって接続されている。ゲート駆動パターン62は、この電気導体を通じて、ゲートドライバICが生成したゲート電圧をパワー半導体素子23に入力(印加)する。
【0054】
(光電変換素子)
光電変換素子7は、光検出部70からの光を受光信号電圧に変換可能な素子である。本実施形態における光電変換素子7には、例えば、フォトダイオード等を採用することができる。光電変換素子7は、ケーシング1に収容されている(図1中では図示省略)。図4に示すように、光電変換素子7は、各光検出部70の先端面72側とは反対側の端部に一つずつ接続されている。したがって、先端面72から光検出部70に入射した光は、光電変換素子7へ導かれる。
【0055】
光検出部70を通じて光電変換素子7に導かれた光は、この光電変換素子7によって光電変換されて電気信号になる。本実施形態では、光電変換素子7の光電変換によって生成された電気信号の電圧を「受光信号電圧」と称する。光電変換素子7は、光検出部70からの光から受光信号電圧を取得する。
【0056】
(同期処理装置)
同期処理装置8は、ケーブル11を介して各光電変換素子7と電気的に接続されている。また、同期処理装置8は、ゲート駆動装置6のゲート駆動パターン62と電気的に接続されている。図1に示すように、本実施形態における同期処理装置8は、例えば、ケーシング1に収容されている。
【0057】
ここで、図5を参照して、同期処理装置8の動作の一例を説明する。ゲート駆動装置6のゲート駆動パターン62からパワーモジュール400におけるパワー半導体素子23へ電圧が印加された際、パワー半導体素子23の制御信号用端子(ゲート)と出力用端子(ソース)との間の電位差であるゲート-ソース間電圧が変化する(図5中の最も上のグラフ)。この時、ゲート駆動パターン62は、パワー半導体素子23へ電圧が印加されたことを示す信号を同期処理装置8へ送信する(図5中の上から二つ目のグラフ中における「ON(1)」を示す信号)。また、ゲート-ソース間電圧の変化に伴って、パワー半導体素子23の出力用端子(ソース)と入力用端子(ドレイン)との間の電位差であるドレイン-ソース間電圧が変化する(図5中の下から二つ目のグラフ)。
【0058】
同期処理装置8は、ゲート駆動パターン62からパワー半導体素子23へ電圧を印加したことを示す信号を受け付けると同時に、光電変換素子7からの電気信号を受け付ける。即ち、同期処理装置8は、ゲート駆動装置6からパワー半導体素子23にかかる電圧が変化するタイミングと、光電変換素子7が光を受光信号電圧に変換するタイミングとを同期させる。同期処理装置8は、これらのタイミングを同期させるとともに、同期させた時刻(t=0)から所定の時間Tが経過するまで(t=T)、受光信号電圧を経時的に取得する。同期処理装置8は、所定の時間Tの間に取得した受光信号電圧を示す信号を検出装置9へ送信する。本明細書中における受光信号電圧は、あるピンポイントの電圧値ではなく、複数の電圧値を含んでいる。受光信号電圧の一例を図5に示す(図5中の最も下のグラフ)。図5中の受光信号電圧のグラフでは、部分放電が生じた場合に同期処理装置が取得した受光信号電圧を一例として示している。
【0059】
(検出装置)
検出装置9は、同期処理装置8が取得した受光信号電圧の大きさに基づいて、光検出部70が光を検出可能な光検出範囲Rd内の回路パターンにおける異常の有無を検出する。図1に示すように、本実施形態における検出装置9は、ケーシング1に収容されている。図4に示すように、本実施形態における検出装置9は、取得部91と、判定部92と、報知部93と、記憶部94とを有している。
【0060】
取得部91は、同期処理装置8から送信された受光信号電圧を示す信号を受信することで、受光信号電圧を取得する。取得部91は、取得した受光信号電圧を判定部92へ送る。
【0061】
判定部92は、取得部91からの受光信号電圧を受け付けた場合に、この受光信号電圧に含まれる電圧値と、所定の閾値電圧Vthとを比較する。受光信号電圧に含まれる電圧値のうち少なくとも一つが閾値電圧Vth以上である場合、判定部92は、「異常がある」と判定する。一方、受光信号電圧に含まれる電圧値の全てが閾値電圧Vth未満である場合、判定部92は、「異常がない」と判定する。なお、閾値電圧Vthは、例えば、記憶部94によって予め記憶されている。
【0062】
報知部93は、「異常がある」と判定部92によって判定された場合、例えば、電力変換装置100の利用者に対してその旨を報知する。具体的には、例えば、報知部93は、電力変換装置100に設けられた状態表示ランプ等へ点灯開始の旨を示す信号を送信する。報知部93は、「異常がない」と判定部92によって判定された場合、処理を終了する。
【0063】
(作用効果)
主端子部30のP型端子31を通じてコンデンサ3から表面パターン22に入力された電力は、パワー半導体素子23のスイッチングによって変換された後、出力端子部40を通じて電力変換装置100の外部に設けられたモータ等(負荷)の回転に利用される。モータ等の回転に利用された電力は、出力端子部40を通じて再び表面パターン22に流入するとともに、パワー半導体素子23のスイッチングによって変換された後、主端子部30のN型端子32を通じてコンデンサ3へ戻る。このPN間のループ中で、コンデンサ3からの大電流がパワー半導体素子23のスイッチングによって変換された際、急激な電圧変動が発生する。この電圧変動に伴って、表面パターン22の側縁部220を起点に部分放電が生じる場合がある。
【0064】
上記構成によれば、光検出部70の光検出範囲Rdが回路パターンの側縁部220を含むように、側縁部220に沿って複数並んで配置されているため、表面パターン22の側縁部220から発生した部分放電の光は、光検出部70へ先端面72から入射する。つまり、側縁部220からの部分放電の光が、光検出部70によって検出される。したがって、表面パターン22の端部、即ち、側縁部220から発生する部分放電を正確に検出することができる。
【0065】
また、側縁部220に沿って並ぶ複数の光検出部70のうち隣り合う二つの光検出部70は、主面10aに対して垂直な方向から見た際に、それぞれの光検出範囲Rdの少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。このため、表面パターン22から発生する部分放電を高精度に検出することができる。
【0066】
また、側壁部51が画定する収容空間Rを蓋部52が閉塞することで収容空間R内が暗室にされるため、光検出部70による部分放電以外の光の検出を抑制することができる。即ち、光検出部70によってノイズとなる光が検出されることを抑制することができる。その結果、誤検出の発生を抑制することができる。
【0067】
また、同期処理装置8によって、ゲート駆動装置6からパワー半導体素子23にかかる電圧が変化し始めるタイミングと、光電変換素子7が光を受光信号電圧に変換し始めるタイミングとが同期される。このため、検出装置9は、パワー半導体素子23がスイッチングしたタイミングから部分放電の有無の検出を開始する。したがって、パワー半導体素子23がスイッチングするタイミング以外の時間帯で、ノイズとなる光が光検出部70によって検出されることを抑制することができる。その結果、誤検出の発生を回避することができる。
【0068】
<第二実施形態>
次に、本開示に係る電力変換装置100の第二実施形態について説明する。なお、以下に説明する第二実施形態では、上記の第一実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第二実施形態では、パワーモジュール400における光検出部70の配置が、第一実施形態で説明した光検出部70の配置と異なっている。
【0069】
(光検出部)
図6及び図7に示すように、本実施形態における光検出部70は、ケース50の側壁部51に複数配置されている。光検出部70の先端部71は、側壁部51の外面51bから内面51aにかけて形成された孔h1に挿通された状態で保持されている。本実施形態における先端部71の先端面72は、側壁部51の内面51aと面一とされている。複数の光検出部70の先端面72は、光検出範囲Rdが表面パターン22の側縁部220及び裏面パターン24の側縁部240を含むように、これら側縁部220,240に沿って並んで配置されている。
【0070】
図7に示すように、先端面72は、側壁部51の内面51aと表面パターン22の側縁部220とが対向する方向で絶縁部60を介して表面パターン22の側縁部220及び裏面パターン24の側縁部240と対向している。図6に示すように、側縁部220,240に沿って並ぶ複数の光検出部70のうち隣り合う二つの光検出部70は、内面51aと側縁部220,240とが対向する方向から見た際に、それぞれの光検出範囲Rdの少なくとも一部が互いに重なるように配置されている。
【0071】
この際、第一表面パターン221に接続されたP型端子31、第二表面パターン222に接続されたN型端子32、及び第三表面パターン223に接続された出力端子部40と、ベースプレート10との間には、光検出部70の先端面72が配置されている。
【0072】
(作用効果)
上記構成によれば、光検出部70の先端面72が表面パターン22の側縁部220と対向するため、第一実施形態で説明した構成と比較して、部分放電により生じた光が光検出部70に先端面72から入射しやすい。つまり、光検出部70による部分放電の検出感度が向上する。その結果、部分放電をより高精度に検出することができる。
【0073】
また、光検出部70の先端面72が裏面パターン24の側縁部240とも対向し、光検出範囲Rd内にこの側縁部240が含まれるため、裏面パターン24から部分放電が生じた場合、この部分放電を検出することができる。したがって、回路基板20中で発生する部分放電の検出漏れをより抑制することができる。
【0074】
また、光検出部70は、主端子部30のP型端子31及びN型端子32、並びに出力端子部40よりもベースプレート10側に配置されている。これにより、光検出部70が蓋部52に配置される構成と比較して、これらP型端子31、N型端子32、及び出力端子部40が光検出部70からの光検出範囲Rd内で死角になることがない。したがって、部分放電の検出漏れの発生を抑制することができる。
【0075】
<第三実施形態>
次に、本開示に係る電力変換装置100の第三実施形態について説明する。なお、以下に説明する第三実施形態では、上記の第一実施形態及び第二実施形態と共通する構成については図中に同符号を付してその説明を省略する。第三実施形態では、パワーモジュール400における光検出部70の配置が、第一実施形態及び第二実施形態で説明した光検出部70の配置と異なっている。
【0076】
(光検出部)
図8に示すように、本実施形態における光検出部70は、ケース50の側壁部51に複数配置されている。光検出部70は、側壁部51と一体に側壁部51に配置されている。光検出部70の先端部71は、側壁部51の内面51aから回路基板20に向かって突出している。本実施形態における先端部71の先端面72は、収容空間R内で絶縁部60と一体に配置されている。また、先端面72は、側壁部51の内面51aと表面パターン22の側縁部220とが対向する方向で絶縁部60を介して側縁部220と対向している。
【0077】
(作用効果)
上記構成によれば、光検出部70の先端部71が側壁部51の内面51aから回路基板20に向かって突出しているため、先端部71の先端面72が表面パターン22の側縁部220と対向した状態で近接する。これにより、第二実施形態で説明した構成と比較して、部分放電により生じた光が光検出部70に先端面72から入射しやすい。つまり、光検出部70による部分放電の検出感度がより向上する。その結果、部分放電をより高精度に検出することができる。
【0078】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成は実施形態の構成に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内での構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0079】
なお、上記本実施形態における「平行」とは、実質的に平行な状態を指すものであって、製造上のわずかな誤差や設計上の公差は許容される。つまり、上記実施形態では、ベースプレート10の主面10a及び裏面10b、第一絶縁板21の第一面21a及び第二面21bのそれぞれが互いに平行を成した状態で背合わせの関係になっている構成を説明したが、この構成に限定されることはなく、多少傾斜していてもよい。
【0080】
また、第一実施形態では、光検出部70における先端面72がベースプレート10の主面10aに対して平行を成した状態で主面10aと対向している構成を説明したが、この構成に限定されることはない。例えば、光検出部70は、先端面72が主面10aに対して傾斜した状態でケース50の蓋部52に配置されてもよい。また、光検出部70は、先端面72が主面10aに対して傾斜した状態でケース50の側壁部51に配置されてもよい。
【0081】
また、図9に示すように、光検出部70は、第一光検出部70aと、第二光検出部70bとによって構成されてもよい。この場合、第一光検出部70aは、先端部71aの先端面72aがベースプレート10の主面10aに対して傾斜した状態で側壁部51に配置される。第二光検出部70bは、先端部71bの先端面72bが回路基板20における裏面パターン24の側縁部240に対向した状態で側壁部51に配置される。この場合、複数の第一光検出部70aにおける先端面72aは、この先端面72aから広がる光検出範囲Rdが表面パターン22の側縁部220を含むように、表面パターン22の側縁部220に沿って並んで配置されている。複数の第二光検出部70bにおける先端面72bは、この先端面72bから広がる光検出範囲Rdが裏面パターン24の側縁部240を含むように、この側縁部240に沿って並んで配置されている。第一光検出部70aにおける先端面72a及び第二光検出部70bにおける先端面72bは、収容空間R内で絶縁部60と一体に配置されている。
【0082】
また、上記実施形態で説明されたパワーモジュール400の構成は、それぞれ独立した構成に留まることはない。各実施形態に記載の構成要素を適宜組み合わせてパワーモジュール400を構成してもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、電力変換部4が三つのパワーモジュール400を有する6in1モジュールの電力変換装置100の構成を説明したが、これに限定されることはない。例えば、電力変換装置100は、電力変換部4が一つのパワーモジュール400を有する2in1モジュールであってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、電力変換装置100としてインバータを一例にして説明したが、電力変換装置100はインバータに限定されることはない。電力変換装置100は、例えば、コンバータや、インバータとコンバータとを組み合わせたもの等、パワー半導体素子23により電力変換を行う装置であってもよい。電力変換装置100がコンバータの場合は、外部の入力電源(図示省略)から外部出力導体に交流電圧が入力されて回路基板20におけるパワー半導体素子23がこの交流電圧を直流電圧に変換し、パワー半導体素子23からの直流電圧が主端子部30及び接続導体3bを通じて電力変換装置100の外部へ出力される構成であってもよい。
【0085】
<付記>
各実施形態に記載のパワーモジュール、及びこれを備えている電力変換装置は、例えば以下のように把握される。
【0086】
(1)第1の態様に係るパワーモジュール400は、ベースプレート10と、前記ベースプレート10の主面10aに配置された回路基板20と、前記回路基板20の回路パターンに電力を入力可能な主端子部30と、前記回路パターンに接続されたパワー半導体素子23によって変換された前記電力を出力可能な出力端子部40と、前記主面10aに配置された状態で前記主面10aの広がる方向から前記回路基板20を囲むことで該回路基板20を収容する収容空間Rを画定する側壁部51と、前記収容空間Rを閉じるように前記側壁部51に配置されることで前記収容空間R内を閉塞する蓋部52とを有するケース50と、前記主面10aに対して垂直な方向から前記回路基板20を埋めるように前記収容空間R内に配置された絶縁部60と、前記ケース50に配置され、先端面72,72a,72bから光が入射することで、前記収容空間R内で生じた光を検出可能な光検出部70と、を備え、前記光検出部70の前記先端面72,72a,72bは、光検出範囲Rdが前記収容空間R内における前記側壁部51の内面51aと対向する前記回路パターンの側縁部(側縁部220,240)を含むように該側縁部に沿って複数並んで配置されている。
【0087】
これにより、回路パターンの側縁部から発生した部分放電の光は、光検出部70へ先端面72,72a,72bから入射する。つまり、側縁部からの部分放電の光が光検出部70によって検出される。
【0088】
(2)第2の態様に係るパワーモジュール400は、(1)のパワーモジュール400であって、複数の前記光検出部70は、前記ケース50の前記側壁部51に一体に配置され、各前記光検出部70の前記先端面72は、前記側壁部51の前記内面51aと前記回路パターンの前記側縁部とが対向する方向で、前記絶縁部60を介して前記側縁部と対向してもよい。
【0089】
これにより、光検出部70の先端面72が回路パターンの側縁部と対向するため、部分放電により生じた光が光検出部70に先端面72から入射しやすくなる。その結果、光検出部70による部分放電の検出感度が向上する。
【0090】
(3)第3の態様に係るパワーモジュール400は、(2)のパワーモジュール400であって、各前記光検出部70の前記先端面72,72a,72bは、前記収容空間R内で前記絶縁部60と一体に配置されていてもよい。
【0091】
これにより、光検出部70の先端面72,72a,72bが回路パターンの側縁部と対向した状態で近接するため、光検出部70による部分放電の検出感度がより向上する。
【0092】
(4)第4の態様に係る電力変換装置100は、(1)から(3)の何れかのパワーモジュール400と、前記パワー半導体素子23のスイッチングを制御可能なゲート駆動装置6と、前記光検出部70からの光を受光信号電圧に変換可能な光電変換素子7と、前記ゲート駆動装置6から前記パワー半導体素子23にかかる電圧が変化するタイミングと、前記光電変換素子7が前記光を前記受光信号電圧に変換するタイミングとを同期させるとともに、前記光電変換素子7からの前記受光信号電圧を取得可能な同期処理装置8と、前記同期処理装置8が取得した前記受光信号電圧の大きさに基づいて、前記光検出範囲Rd内の前記回路パターンにおける異常の有無を検出可能な検出装置9と、を備える。
【0093】
これにより、検出装置9は、パワー半導体素子23がスイッチングを開始したタイミングから部分放電の有無を検出する。つまり、パワー半導体素子23がスイッチングしたタイミング以外の時間帯で、ノイズとなる光が光検出部70によって検出されることを抑制することができる。
【符号の説明】
【0094】
1…ケーシング 1a…入力側側面 1b…出力側側面 2…外部入力導体 3…コンデンサ 3a…コンデンサ本体 3b…接続導体 3n…負極側端子 3p…正極側端子 4…電力変換部 5…冷却装置 6…ゲート駆動装置 7…光電変換素子 8…同期処理装置 9…検出装置 10…ベースプレート 10a…主面 10b…裏面 11…ケーブル 20…回路基板 21…第一絶縁板 21a…第一面 21b…第二面 22…表面パターン 23…パワー半導体素子 24…裏面パターン 30…主端子部 31…P型端子 32…N型端子 40…出力端子部 50…ケース 51…側壁部 51a…内面 51b…外面 52…蓋部 52a…表面 52b…当接面 60…絶縁部 61…第二絶縁板 62…ゲート駆動パターン 70…光検出部 70a…第一光検出部 70b…第二光検出部 71,71a,71b…先端部 72,72a,72b…先端面 91…取得部 92…判定部 93…報知部 94…記憶部 100…電力変換装置 220,240…側縁部 221…第一表面パターン 221a…第一側縁部 222a…第二側縁部 223a…第三側縁部 222…第二表面パターン 223…第三表面パターン 231…第一パワー半導体素子 232…第二パワー半導体素子 400…パワーモジュール D1…対向方向 h1…孔 R…収容空間 Rd…光検出範囲 S…接合材 Wb…ボンディングワイヤ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9