(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170776
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】受電装置、給電装置、光給電システム、受電方法、給電方法及び光給電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/80 20160101AFI20231124BHJP
H02J 50/30 20160101ALI20231124BHJP
H04B 10/80 20130101ALI20231124BHJP
H04B 10/077 20130101ALI20231124BHJP
【FI】
H02J50/80
H02J50/30
H04B10/80 160
H04B10/077
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082795
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】津田 真司
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 俊
(72)【発明者】
【氏名】木村 良之
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆裕
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AH27
5K102AM02
5K102AM06
5K102AN02
5K102AN03
5K102LA24
5K102LA32
5K102LA52
5K102PB13
5K102PH35
(57)【要約】
【課題】給電光を介して電力と情報とを同時に伝送できる受電装置、給電装置、光給電システム、受電方法、給電方法及び光給電方法を提供する。
【解決手段】波長変調によって情報が挿入された給電光を送り出すことで送電を行う一方、波長に応じて感度が異なる受光部で給電光を受け、給電光を電力に変換することで受電を行い、かつ、給電光の波長の変化に対応して変化する電力の大きさに基づいて情報を抽出する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射された給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれる情報を抽出する復調部とを備え、
前記給電光には、該給電光の波長が少なくとも第1波長と第2波長とに変化する波長変調によって前記情報が挿入され、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する受電装置。
【請求項2】
前記復調部は、前記電力の大きさの基準値と、前記受光部により変換された前記電力の大きさとに基づいて前記情報を抽出し、
前記基準値を定めるキャリブレーション処理を行う受電制御部を更に備える請求項1記載の受電装置。
【請求項3】
前記受光部は太陽電池である、
請求項1記載の受電装置。
【請求項4】
前記受光部は光電変換素子である、
請求項1記載の受電装置。
【請求項5】
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を挿入する変調部と、
を備え、
前記発光部は、少なくとも前記変調部が前記給電光に情報を挿入する期間に、予め定められた条件に従ったパワーの前記給電光を出力する給電装置。
【請求項6】
前記発光部は、前記給電光の波長を、第1波長領域の最大波長及び最小波長を少なくとも含む複数の波長と、第2波長領域の最大波長及び最小波長を少なくとも含む複数の波長とに変更可能であり、
前記第1波長領域と前記第2波長領域とは一部が重なった異なる領域、あるいは、重なりのない異なる領域であり、
前記変調部は、前記第1波長領域を用いた波長変調と、前記第2波長領域を用いた波長変調とが可能であり、
更に、前記変調部による前記給電光の変調を、前記第1波長領域を用いた波長変調と、前記第2波長領域を用いた波長変調とに切り替える送電制御部を備える請求項5記載の給電装置。
【請求項7】
給電装置と、受電装置とを備え、
前記給電装置は、
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を含める変調部と、
を有し、
前記受電装置は、
入射された前記給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれた情報を抽出する復調部とを有し、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する、
光給電システム。
【請求項8】
波長変調によって情報が挿入された給電光を、波長に応じて感度が異なる受光部で受けることで前記給電光を電力に変換し、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する受電方法。
【請求項9】
予め定められた条件に従ったパワーの給電光に、波長変調によって情報を挿入し、前記情報が挿入された前記給電光を送出する給電方法。
【請求項10】
波長変調によって情報が挿入された給電光を送り出すことで送電を行う一方、
波長に応じて感度が異なる受光部で前記給電光を受け、前記給電光を電力に変換することで受電を行い、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する光給電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、受電装置、給電装置、光給電システム、受電方法、給電方法及び光給電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、電力を光(給電光と呼ばれる)に変換して伝送し、当該給電光を電気エネルギーに変換して電力として利用する光給電システムが研究されている。特許文献1には、電気信号で変調された信号光、及び電力を供給するための給電光を発信する光発信機と、上記信号光を伝送するコア、上記コアの周囲に形成され上記コアより屈折率が小さく上記給電光を伝送する第1クラッド、及び上記第1クラッドの周囲に形成され上記第1クラッドより屈折率が小さい第2クラッド、を有する光ファイバーと、上記光ファイバーの第1クラッドで伝送された上記給電光を変換した電力で動作し、上記光ファイバーのコアで伝送された上記信号光を上記電気信号に変換する光受信機と、を備えた光通信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光給電システムにおいて給電光に情報を挿入することで電力と情報とを同時に伝送できると有用である。
【0005】
本開示は、給電光を介して電力と情報とを同時に伝送できる受電装置、給電装置、光給電システム、受電方法、給電方法及び光給電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る受電装置は、
入射された給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれる情報を抽出する復調部とを備え、
前記給電光には、該給電光の波長が少なくとも第1波長と第2波長とに変化する波長変調によって前記情報が挿入され、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0007】
本開示に係る給電装置は、
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を挿入する変調部と、
を備え、
前記発光部は、少なくとも前記変調部が前記給電光に情報を挿入する期間に、予め定められた条件に従ったパワーの前記給電光を出力する。
【0008】
本開示に係る光給電システムは、
給電装置と、受電装置とを備え、
前記給電装置は、
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を含める変調部と、
を有し、
前記受電装置は、
入射された前記給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれた情報を抽出する復調部とを有し、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0009】
本開示に係る受電方法は、
波長変調によって情報が挿入された給電光を、分光感度が一定でない受光部で受けることで前記給電光を電力に変換し、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0010】
本開示に係る給電方法は、
予め定められた条件に従ったパワーの給電光に、波長変調によって情報を挿入し、前記情報が挿入された前記給電光を送出する。
【0011】
本開示に係る光給電方法は、
波長変調によって情報が挿入された給電光を送り出すことで送電を行う一方、
前記給電光を分光感度が一定でない受光部で受け、前記給電光を電力に変換することで受電を行い、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、給電光を介して電力と情報とを同時に伝送できるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【
図2】本開示の第2実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【
図3】本開示の第2実施形態に係る光給電システムの構成図であって、光コネクタ等を図示したものである。
【
図4】本開示の他の一実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【
図5】本開示の他の一実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【
図6】本開示の他の一実施形態に係る光給電システムの構成図である。
【
図7】給電光を介して電力と情報とを伝送する構成が適用された第3実施形態に係る光給電システムを示す構成図である。
【
図8】光電変換素子の分光感度特性の一例を示すグラフである。
【
図9】給電光を介して電力と情報とを伝送する構成が適用された第4実施形態に係る光給電システムを示す構成図である。
【
図10】第4実施形態において実行される伝送処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本開示の一実施形態につき図面を参照して説明する。
【0015】
(1)システム概要
〔第1実施形態〕
図1に示すように本実施形態の光給電システム1Aは、給電装置(PSE: Power Sourcing Equipment)110と、光ファイバーケーブル200Aと、受電装置(PD: Powered Device)310を備える。光給電システム1Aは、光ファイバー250Aを介して給電光を伝送するので、光ファイバー給電(PoF: Power over Fiber)システムと呼んでもよい。
なお、本開示における給電装置は電力を光エネルギーに変換して供給する装置であり、受電装置は光エネルギーの供給を受け当該光エネルギーを電力に変換する装置である。
給電装置110は、給電用半導体レーザー111を含む。
光ファイバーケーブル200Aは、給電光の伝送路を形成する光ファイバー250Aを含む。
受電装置310は、光電変換素子311を含む。
【0016】
給電装置110は電源に接続され、給電用半導体レーザー111等が電気駆動される。
給電用半導体レーザー111は、上記電源からの電力によりレーザー発振して給電光112を出力する。
【0017】
光ファイバーケーブル200Aは、一端201Aが給電装置110に接続可能とされ、他端202Aが受電装置310に接続可能とされ、給電光112を伝送する。
給電装置110からの給電光112が、光ファイバーケーブル200Aの一端201Aに入力され、給電光112は光ファイバー250A中を伝搬し、他端202Aから受電装置310に出力される。
【0018】
光電変換素子311は、光ファイバーケーブル200Aを通して伝送されてきた給電光112を電力に変換する。光電変換素子311により変換された電力が、受電装置310内で必要な駆動電力とされる。さらに受電装置310は光電変換素子311により変換された電力を外部機器用に出力可能とされる。
【0019】
給電用半導体レーザー111及び光電変換素子311の光‐電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料が500nm以下の短波長のレーザー波長をもった半導体とされる。
短波長のレーザー波長をもった半導体は、バンドギャップが大きく光電変換効率が高いので、光給電の発電側及び受電側における光電変換効率が向上され、光給電効率が向上する。
そのためには、同半導体材料として、例えば、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、GaN等、レーザー波長(基本波)が200~500nmのレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
また、同半導体材料として、2.4eV以上のバンドギャップを有した半導体が適用される。
例えば、ダイヤモンド、酸化ガリウム、窒化アルミニウム、GaN等、バンドギャップ2.4~6.2eVのレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
なお、レーザー光は長波長ほど伝送効率が良く、短波長ほど光電変換効率が良い傾向にある。したがって、長距離伝送の場合には、レーザー波長(基本波)が500nmより大きいレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。また、光電変換効率を優先する場合には、レーザー波長(基本波)が200nmより小さいレーザー媒体の半導体材料を用いてもよい。
これらの半導体材料は、給電用半導体レーザー111及び光電変換素子311のいずれか一方に適用してもよい。給電側又は受電側における光電変換効率が向上され、光給電効率が向上する。
【0020】
〔第2実施形態〕
図2に示すように本実施形態の光給電システム1は、光ファイバーを介した給電(PoF: Power over Fiber)システムと光通信システムとを含むものであり、給電装置(PSE: Power Sourcing Equipment)110を含む第1のデータ通信装置100と、光ファイバーケーブル200と、受電装置(PD: Powered Device)310を含む第2のデータ通信装置300とを備える。
給電装置110は、給電用半導体レーザー111を含む。第1のデータ通信装置100は、給電装置110のほか、データ通信を行う発信部120と、受信部130とを含む。第1のデータ通信装置100は、データ端末装置(DTE: Data Terminal Equipment)、中継器(Repeater)等に相当する。発信部120は、信号用半導体レーザー121と、モジュレーター122とを含む。受信部130は、信号用フォトダイオード131を含む。
【0021】
光ファイバーケーブル200は、信号光の伝送路を形成するコア210と、コア210の外周に配置され、給電光の伝送路を形成するクラッド220と有する光ファイバー250を含む。
【0022】
受電装置310は、光電変換素子311を含む。第2のデータ通信装置300は、受電装置310のほか、発信部320と、受信部330と、データ処理ユニット340とを含む。第2のデータ通信装置300は、パワーエンドステーション(Power End Station)
等に相当する。発信部320は、信号用半導体レーザー321と、モジュレーター322とを含む。受信部330は、信号用フォトダイオード331を含む。データ処理ユニット340は、受信した信号を処理するユニットである。また、第2のデータ通信装置300は、給電ネットワークにおけるノードである。または第2のデータ通信装置300は、他のノードと通信するノードでもよい。
【0023】
第1のデータ通信装置100は電源に接続され、給電用半導体レーザー111、信号用半導体レーザー121と、モジュレーター122、信号用フォトダイオード131等が電気駆動される。また、第1のデータ通信装置100は、給電ネットワークにおけるノードである。または第1のデータ通信装置100は、他のノードと通信するノードでもよい。
給電用半導体レーザー111は、上記電源からの電力によりレーザー発振して給電光112を出力する。
【0024】
光電変換素子311は、光ファイバーケーブル200を通して伝送されてきた給電光112を電力に変換する。光電変換素子311により変換された電力は、発信部320、受信部330及びデータ処理ユニット340の駆動電力、その他の第2のデータ通信装置300内で必要となる駆動電力とされる。さらに第2のデータ通信装置300は、光電変換素子311により変換された電力を外部機器用に出力可能とされていてもよい。
【0025】
一方、発信部120のモジュレーター122は、信号用半導体レーザー121からのレーザー光123を送信データ124に基づき変調して信号光125として出力する。
受信部330の信号用フォトダイオード331は、光ファイバーケーブル200を通して伝送されてきた信号光125を電気信号に復調し、データ処理ユニット340に出力する。データ処理ユニット340は、当該電気信号によるデータをノードに送信し、その一方で当該ノードからデータを受信し、送信データ324としてモジュレーター322に出力する。
発信部320のモジュレーター322は、信号用半導体レーザー321からのレーザー光323を送信データ324に基づき変調して信号光325として出力する。
受信部130の信号用フォトダイオード131は、光ファイバーケーブル200を通して伝送されてきた信号光325を電気信号に復調し出力する。当該電気信号によるデータ
がノードに送信され、その一方で当該ノードからデータが送信データ124とされる。
【0026】
第1のデータ通信装置100からの給電光112及び信号光125が、光ファイバーケーブル200の一端201に入力され、給電光112はクラッド220を伝搬し、信号光125はコア210を伝搬し、他端202から第2のデータ通信装置300に出力される。
第2のデータ通信装置300からの信号光325が、光ファイバーケーブル200の他端202に入力され、コア210を伝搬し、一端201から第1のデータ通信装置100に出力される。
【0027】
なお、
図3に示すように第1のデータ通信装置100に光入出力部140とこれに付設された光コネクタ141が設けられる。また、第2のデータ通信装置300に光入出力部350とこれに付設された光コネクタ351が設けられる。光ファイバーケーブル200の一端201に設けられた光コネクタ230が光コネクタ141に接続する。光ファイバーケーブル200の他端202に設けられた光コネクタ240が光コネクタ351に接続する。光入出力部140は、給電光112をクラッド220に導光し、信号光125をコア210に導光し、信号光325を受信部130に導光する。光入出力部350は、給電光112を受電装置310に導光し、信号光125を受信部330に導光し、信号光325をコア210に導光する。
以上のように、光ファイバーケーブル200は、一端201が第1のデータ通信装置100に接続可能とされ、他端202が第2のデータ通信装置300に接続可能とされ、給電光112を伝送する。さらに本実施形態では、光ファイバーケーブル200は、信号光125,325を双方向伝送する。
【0028】
給電用半導体レーザー111及び光電変換素子311の光‐電気間の変換効果を奏する半導体領域を構成する半導体材料としては上記第1実施形態と同様のものが適用され、高い光給電効率が実現される。
【0029】
なお、
図4に示す光給電システム1Bの光ファイバーケーブル200Bのように、信号光を伝送する光ファイバー260と、給電光を伝送する光ファイバー270とを別々に設けてもよい。光ファイバーケーブル200Bも複数本で構成してもよい。
【0030】
また、
図5に示すように、光給電システム1Cは、給電光112を空間を介して伝送してもよい。このような光給電の方式は、PoA(Power over Air)と呼ばれる。
【0031】
PoA方式の光給電システム1Cにおいて、給電装置110は、コリメータレンズ115を有し、給電用半導体レーザー111から出射される給電光112をコリメータレンズ115を介して空間に送出してもよい。なお、給電光112の拡がりが小さい場合などにはコリメータレンズ115は無くてもよい。受電装置310は、集光レンズ又は拡散レンズなどのレンズ313を有し、レンズ313を介して給電光112が光電変換素子311へ入射されてもよい。また、受電装置310はレンズ313を有さずに、給電光112が直接に光電変換素子311へ入射されてもよい。
【0032】
さらに、
図6に示すように、光給電システム1Dは、給電光112を、一部の区間501で光ファイバー270Dを介して伝送し、別の一部の区間502で空間を介して伝送してよい。区間502の始端にはコリメータレンズ281が位置してもよいし、コリメータレンズ281が無くてもよい。区間502の終端には集光レンズ又は拡散レンズなどのレンズ282が位置してもよいし、レンズ282が無くてもよい。
【0033】
(2)給電光112を介して電力と情報とを伝送する構成の適用
次に、給電光112を介して電力と情報とを伝送する構成が適用された光給電システムについて説明する。
【0034】
〔第3実施形態〕
図7は、給電光112を介して電力と情報とを伝送する構成が適用された第3実施形態に係る光給電システム1Eを示す構成図である。
図8は、光電変換素子の分光感度を示すグラフである。
【0035】
第3実施形態の光給電システム1Eは、給電装置110Eと、受電装置310Eとを備える。
【0036】
給電装置110Eは、給電光112を出力する発光部111Eと、給電光112に情報を挿入する変調部150とを備える。
【0037】
発光部111Eは、給電光112の波長を少なくとも第1波長λ1と第2波長λ2とに変更可能な機能を有する。発光部111Eは、給電光112の波長を、第1波長λ1から第n波長λn(nは2以上の整数)に離散的に変更可能な構成であってもよいし、第1波長λ1から第n波長λnにかけて連続的に変更可能な構成であってもよい。発光部111Eは、波長可変構造を有する1つの給電用半導体レーザーであってもよいし、互いの発振波長が異なる複数の給電用半導体レーザーを含み、給電光112を出射する給電用半導体レーザーを切り替え可能にした構成であってもよい。
【0038】
発光部111Eは、少なくとも給電光112に情報が挿入される期間において、予め定められた条件に従ったパワーで給電光112を出力する。給電装置110Eは、発光部111Eのパワーを制御するパワー制御部を備え、当該パワー制御部の制御によって発光部111Eが上記のパワーで給電光112を出射してもよい。「予め定められた条件に従ったパワー」とは、例えば一定のパワーである。
【0039】
なお、「予め定められた条件に従ったパワー」とは、一定のパワーに限られない。例えば、「予め定められた条件に従ったパワー」とは、時刻に応じて変化するパワー、受電装置310Eの要求に応じて変化するパワーなど、様々な条件に従って変化するパワーであってもよい。すなわち、発光部111Eが出力する給電光112のパワーは、受電装置310Eにおいて予め給電光112のパワーを知ることができるように、パワーを決定する条件が予め定められていればよい。
【0040】
変調部150は、発光部111Eから出力される給電光112の波長を少なくとも第1波長λ1と第2波長λ2とに変更する波長変調を行うことで給電光112に情報を挿入する。波長変調は、給電光112の波長を第1波長λ1から第n波長λn(nは2以上の整数)に離散的に変更する変調であってもよいし、第1波長λ1から第n波長λnを含む領域で連続的に給電光112の波長を変更する変調であってもよい。波長変調の方式は、デジタル変調であってもよいし、アナログ変調であってもよい。変調部150は、波長の変化と、波長及びパワー以外の要素の変化とを複合して変調方式で、給電光112に情報を挿入してもよい。
【0041】
受電装置310Eは、受光部311Eと、復調部370とを備える。
【0042】
受光部311Eは、給電光112を電力に変換する。受光部311Eで変換された電力は後段の負荷(電気回路、電気装置など)に供給され、当該電力により負荷が動作する。
【0043】
受光部311Eは、少なくとも第1波長λ1の感度と第2波長λ2の感度とが異なる光電変換素子である。具体的には、
図8に示すように、受光部311Eは、第1波長λ1から第n波長λnまでの感度が全て異なる特性を有する光電変換素子であってもよいし、第1波長λ1から第n波長λnにかけて同一方向の勾配で感度が連続的に変化する特性を有する光電変換素子であってもよい。
【0044】
ここで、感度とは、単一波長及び単位パワーの給電光112が入射したときに変換される電力の大きさを意味する。
図8の分光感度特性のグラフにおいて、縦軸の相対感度(relative spectral response)とは、単一波長の光を入射したときに光電変換素子から出力される短絡電流の相対値を示す。受光部311Eに異なる波長及び同一パワーの給電光112が入射すると、受光部311Eから出力される電力の大きさは、
図8の特性のように変換する。
【0045】
受光部311Eは、実施形態1に示した光電変換素子311であってもよい。また、受光部311Eは、太陽電池であってもよい。太陽電池は、材料、組成、または結晶構造等の形態によって上記感度は異なり得る。どのような太陽電池を採用するかは、その用途や給電用半導体レーザーの特性等の技術的事情を種々考慮し選択すればよいが、例えば、次のような太陽電池を例示できる。すなわち太陽電池は、例えば、単結晶シリコン、多結晶シリコンまたはヘテロ接合型などのシリコン系太陽電池あるいは化合物系太陽電池(例えば、GaN系、GaAs系、InGaP系、InGaAs系、又はGe系太陽電池、あるいは、これらの系統の太陽電池を少なくとも2つ以上接合したタンデム型太陽電池等)が含まれ得るが、これらに限定されない。当該太陽電池を採用することで、低コストで大きな受光面を実現できる。大きな受光面により、給電光112を空間を介して伝送することで、給電光112に比較的に大きな拡がりが生じても、効率的な受光が可能となる。また、上記の太陽電池を採用することで、給電光112に適した波長領域において同一方向の勾配で感度が連続的に変化する分光感度特性が得やすい。
【0046】
上記特性を有する受光部311Eによれば、例えば、第1パワーで第1波長λ1の給電光112が入射したときに変換される電力の大きさと、同一の第1パワーで第2波長λ2の給電光112が入射したときに変換される電力の大きさと、・・・、同一の第1パワーで第n波長λnの給電光112が入射したときに変換される電力の大きさと、が互いに異なる。すなわち、受光部311Eに入射される給電光112のパワーが一定の場合、給電光112の波長の違いが、受光部311Eにより変換された電力の大きさの違いとなって現れる。
【0047】
復調部370は、受光部311Eにより変換された電力の大きさを検出し、検出された電力の大きさに基づいて給電光112に挿入されている情報を抽出する。すなわち、波長変調により情報が挿入された給電光112は、挿入された情報により波長が変化する。当該波長の変化は受光部311Eにおいて電力の大きさの変化に変換される。したがって、復調部370は、波長変調により挿入された情報を、電力の大きさの変調によって挿入された情報と見なして、電力の大きさに基づいて復調処理を行うことで情報を抽出できる。
【0048】
なお、復調部370は、受光部311Eの感度と波長との関係を示すデータを有し、当該データと、検出された電力の大きさとから給電光112の波長を推定し、推定された波長に基づき情報を抽出する処理を行ってもよい。
【0049】
復調部370による電力の大きさの検出は、受光部311Eから負荷に供給される電流値の検出(電圧一定の場合など)、受光部311Eから負荷に供給される電圧値の検出(電流一定の場合など)、電流値と電圧値との両方の検出など、様々な方式によって実現できる。
【0050】
また、上記では給電光112のパワーが一定の場合について説明したが、給電光112のパワーは一定でなく、予め定められた条件に従って変化してもよい。パワーが変化する場合でも、復調部370は、予め定められた条件によって給電光112のパワーの値を取得できる。パワーの値が取得できれば、当該パワーの給電光112が入射したときの変換される電力の大きさと波長との関係を計算できる。そして、当該関係と受光部311Eから出力された電力の大きさに基づいて波長を計算できる。したがって、当該場合においても、復調部370は、受光部311Eで変換された電力の大きさに基づいて、波長変調により挿入された情報を抽出することができる。
【0051】
以上のように、第3実施形態の光給電システム1Eによれば、給電光112を媒体として情報と電力とを同時に伝送することができる。
【0052】
さらに、給電装置110Eは、波長変調により給電光112に情報を挿入するので、パルス変調又はパワー変調等により給電光112に情報を挿入する場合と比較して、情報による給電光112のパワーの変動を少なくすることができる。したがって、給電装置110Eは、情報を送りつつ、安定した電力の供給を行うことができる。さらに、発光部111Eとして、波長可変構造を有する給電用半導体レーザーが採用されることで、給電装置110Eをシンプルに構成できる。
【0053】
さらに、受電装置310Eは、入射光の波長に応じて感度が異なる受光部311Eを有し、復調部370は受光部311Eで変換された電力の大きさに基づいて情報を抽出する。したがって、情報受信専用の受光部を要さずに受電装置310Eをシンプルに構成できる。さらに、波長に応じて分光する構成を要さずに受電装置310Eをシンプルに構成できる。
【0054】
なお、第3実施形態の給電装置110E及び受電装置310Eは、光ファイバーケーブル200Aを介して給電光112を伝送する
図1の光給電システム1Aに適用されてもよいし、データ伝送の機能を別途有する
図2~
図6の光給電システム1、1B~1Dに適用されてもよい。すなわち、
図1~
図6の給電装置110を給電装置110Eに代替し、
図1~
図6の受電装置310を受電装置310Eに代替してもよい。
図2~
図6の光給電システム1、1B~1Dに適用された場合、信号光125、325を介したデータ伝送と、給電光112を介した情報の伝送との、2系統のデータ伝送が可能となる。
【0055】
〔第4実施形態〕
図9は、給電光112を介して電力と情報とを伝送する構成が適用された第4実施形態に係る光給電システム1Fを示す構成図である。
図9中、第3実施形態と同一の構成要素については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0056】
第4実施形態に係る光給電システム1Fは、給電装置110Fと受電装置310Fとを備える。
【0057】
給電装置110Fは、給電光112を出力する発光部111Eと、給電光112に情報を挿入する変調部150と、給電光112の伝送と情報伝送とに関する制御を行う送電制御部160と、受電装置310Fからデータ392を受信する受信部170とを備える。
【0058】
受電装置310Fは、給電光112を電力に変換する受光部311Eと、給電光112に含まれる情報を抽出する復調部370と、給電光112を介した情報伝送に関する制御を行う受電制御部380と、給電装置110Fにデータ392を送信する送信部390とを備える。
【0059】
送信部390と受信部170とは、信号光、給電光112又は信号光の反射光、無線電波、有線の電気信号など、どのような媒体を用いてデータ392の送信と受信とを行う構成であってもよい。
【0060】
送電制御部160は、変調部150が使用する給電光112の波長領域を切り替える制御と、発光部111Eを駆動することでキャリブレーション処理を実行する制御とを行う。
【0061】
受電制御部380は、キャリブレーション処理と、情報伝送の応答処理とを実行する。
【0062】
<波長領域の切替処理>
第3実施形態で説明したように、変調部150及び復調部370は、給電光112の波長変調と復調により給電光112を介して情報を伝送できる。波長変調は、
図8の第1波長領域401を用いて行うことも可能であるし、第2波長領域402を用いて行うことも可能であり、いくつか選択可能である。
【0063】
そこで、送電制御部160は、状況に応じて、波長変調に用いる波長領域を、少なくとも第1波長領域401と第2波長領域402との間で切り替える。波長変調に用いる波長領域とは、波長変調で変更される波長の最大値(最大波長)と最小値(最小波長)との間の領域を意味する。
【0064】
第1波長領域401は、受光部311Eにおいて高効率に電力に変換できる領域であるが、領域幅が狭い。よって、第1波長領域401が選択された場合、電力伝送の効率を向上できるが、単位時間当りに伝送できる情報量が比較的に少なくなる。第2波長領域402は、領域幅が広いが、受光部311Eの電力変換効率が比較的に低い波長領域を含んでいる。よって、第2波長領域402が選択された場合、単位時間当たりに伝送できる情報量が多くなるが、電力伝送の効率が比較的に低下する。
【0065】
従って、送電制御部160は、伝送すべき電力が大きい場合に、第1波長領域401を選択し、伝送すべき電力が小さくかつ伝送すべき情報量が多い場合に、第2波長領域402を選択してもよい。送電制御部160による状況に応じた波長領域の選択により、状況に適した電力と情報の伝送が実現できる。
【0066】
なお、送電制御部160が状況に応じて切り替える波長領域は、3つ以上の波長領域であってもよいし、複数の波長領域は一部が重なっていてもよいし、重なりが無くてもよい。上記の「状況」には、受電装置310Fにおける電力の余剰量、給電光112が伝送される空間の特性(例えば湿度)の変化など、さまざまな状況が含まれてもよい。
【0067】
<キャリブレーション処理>
給電装置110Fにおいて、給電光112のパワーが第1パワーから第2パワーへ切り替えられた際、あるいは、波長変調に使用する波長領域が切り替えられた際、そのままでは、受電装置310Fにおいて当該切替えを判別できるまでに時間を要する。そして、当該時間において情報の伝達が困難となる。送電制御部160及び受電制御部380は、上記のような情報の伝達が困難となる時間を短縮するために、次のようなキャリブレーション処理を行ってもよい。
【0068】
キャリブレーション処理では、次の2つの要素が決定される。
【0069】
第1の要素は、受電装置310Fで給電光112から変換される電力の基準値である。当該基準値は、予め定められた波長の給電光112が入射されたときに受光部311Eにより変換される電力の大きさを意味する。予め定められた波長には、例えば、波長変調に使用する波長領域の最大波長、当該波長領域の中央波長、最小波長、第i番目の長さの波長などを採用できる。
【0070】
復調部370は、上記の基準値が既知となることで、受光部311Eにより変換された電力の大きさと、基準値とを比較することで、基準値の波長からどれだけ離れた波長の給電光112が入射されたのかを識別できる。したがって、復調部370は、給電光112のパワーが切り替えられた後でも、キャリブレーション処理が行われることで、速やかに復調処理に移ることができる。
【0071】
第2の要素は、波長変調で使用する波長領域の最大波長と最小波長とを識別できる値である。具体的には、最大波長の給電光112が入射されたときに受光部311Eで変換された電力の大きさ(電力の第1基準値)と、最小波長の給電光112が入射さたときに受光部311Eで変換された電力の大きさ(電力の第2基準値)である。
【0072】
復調部370は、上記の第1基準値と第2基準値とが既知となることで、波長変調で使用される波長領域を計算できる。したがって、復調部370は、波長領域が切り替わった後でも、速やかに復調処理に移行することができる。
【0073】
<給電光112を介した電力と情報の伝送処理>
図10は、第4実施形態において実行される伝送処理の一例を示すフローチャートである。当該伝送処理では、給電光112に情報が挿入される期間において給電光112のパワーが一定という条件を適用している。
【0074】
伝送処理が開始されると、まず、送電制御部160は、波長変調に用いる波長領域として、高効率に電力を伝送できる第1波長領域401、あるいは、多くの情報量を伝送しやすい第2波長領域402を選択する(ステップS1)。ここで、送電制御部160は、伝送すべき情報量、並びに、受電装置310Fに送るべき電力の大きさに応じて波長領域の選択を行ってもよい。
【0075】
次に、送電制御部160と受電制御部380とはキャリブレーション処理を実行する(ステップS2)。具体的には、送電制御部160が、発光部111Eを制御して、給電光112の波長をステップS1で選択された波長領域の最大波長と最小波長とに所定パターンで切り替える処理を行う。受電制御部380は、受光部311Eで変換された電力の大きさが上記所定パターンで変化する場合に、キャリブレーション処理であると認識し、大きい方の電力を第1基準値とし、小さい方の電力を第2基準値として設定する。
【0076】
第1基準値及び第2基準値を設定したら、受電制御部380は送信部390を介して受信部170へ確認応答(ACK:acknowledge)を送る。そして、送電制御部160が確認応答を受け取ったら(ステップS3のYES)、キャリブレーション処理が終了する。
【0077】
続いて、送電制御部160は変調部150に変調処理を開始させ、受電制御部380は復調部370に復調処理を開始させることで、給電光112を介した電力と情報との伝送処理を実行する(ステップS4)。
【0078】
そして、給電装置110Fからの情報の送信が完了し、受電制御部380が送信部390を介して受信部170へ確認応答(ACK)を送ったら(ステップS5のYES)、電力と情報との両方を同時に伝送する処理が終了する(ステップS6)。
【0079】
その後、送電制御部160は、発光部111Eを制御することで、給電光112の波長を、受光部311Eの感度が高い波長(電力変換効率が高い波長)に設定する(ステップS7)。そして、送電制御部160は、給電光112による電力の伝送処理を継続する(ステップS8)
【0080】
給電光112により電力の伝送処理中、送電制御部160は、情報の伝送要求が生じたか判別し(ステップS9)、NOであれば、ステップS8の伝送処理を継続する一方、YESであれば、ステップS4に戻って情報の伝送処理を再開する。あるいは、ステップS9の判別結果がYESであれば、送電制御部160は、ステップS1の処理に戻って、波長領域の選択から情報を伝送するための処理を再開してもよい。
【0081】
以上のように、実施形態4の光給電システム1Fによれば、受電装置310Fの復調部370が、受光部311Eが変換した電力の大きさと、当該電力の基準値とに基づいて、給電光112に挿入されている情報を抽出する。そして、受電装置310Fの受電制御部380が、上記の基準値を定めるキャリブレーション処理を実行する。したかって、給電光112のパワーと波長領域との少なくとも一方が変更された後、受電制御部380はキャリブレーション処理により上記の基準値を速やかに定めて、復調部370による復調処理を速やかに開始することができる。
【0082】
なお、キャリブレーション処理は、上記の例に限られない。例えば、受電装置310Fが給電光112のパワーを給電装置110Fに要求し、当該要求に応じて給電装置110Fが給電光112のパワーを制御する場合、受電制御部380は、上記の要求に基づき電力の基準値を決定してもよい。また、受電装置310Fは、入射された給電光112のパワーを測定する測定器を有し、一時的に測定器でパワーを測定することで、電力の基準値を決定するキャリブレーション処理を行ってもよい。
【0083】
実施形態4の光給電システム1Fによれば、給電装置110Fは、給電光112の波長変調で使用する波長領域を切り替える送電制御部160を備える。したがって、給電装置110Fは、給電光112により多くの情報の伝送が要求された場合、あるいは、伝送すべき電力が大きい場合や小さい場合など、様々な状況に適した波長領域を使用して給電光112により電力と情報とを伝送することができる。
【0084】
以上、本開示の各実施形態について説明した。しかし、本開示の受電装置、給電装置、光給電システム、受電方法、給電方法及び光給電方法は、上記実施形態に限られるものでない。実施形態で示した細部等は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0085】
以下、本開示の一実施形態を示す。一実施形態において、
(1)受電装置は、
入射された給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれる情報を抽出する復調部とを備え、
前記給電光には、該給電光の波長が少なくとも第1波長と第2波長とに変化する波長変調によって前記情報が挿入され、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0086】
(2)上記(1)の受電装置において、
前記復調部は、前記電力の大きさの基準値と、前記受光部により変換された前記電力の大きさとに基づいて前記情報を抽出し、
前記基準値を定めるキャリブレーション処理を行う受電制御部を更に備える。
【0087】
(3)上記(1)又は(2)の受電装置において、
前記受光部が太陽電池である。
【0088】
(4)上記(1)又は(2)の受電装置において、
前記受光部が光電変換素子である。
【0089】
(5)給電装置は、
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を挿入する変調部と、
を備え、
前記発光部は、少なくとも前記変調部が前記給電光に情報を挿入する期間に、予め定められた条件に従ったパワーの前記給電光を出力する。
【0090】
(6)上記(5)の給電装置において、
前記発光部は、前記給電光の波長を、第1波長領域の最大波長及び最小波長を少なくとも含む複数の波長と、第2波長領域の最大波長及び最小波長を少なくとも含む複数の波長とに変更可能であり、
前記第1波長領域と前記第2波長領域とは一部が重なった異なる領域、あるいは、重なりのない異なる領域であり、
前記変調部は、前記第1波長領域を用いた波長変調と、前記第2波長領域を用いた波長変調とが可能であり、
更に、前記変調部による前記給電光の変調を、前記第1波長領域を用いた波長変調と、前記第2波長領域を用いた波長変調とに切り替える送電制御部を備える。
【0091】
(7)光給電システムは、
給電装置と、受電装置とを備え、
前記給電装置は、
給電光を出力し、かつ、前記給電光の波長を少なくとも第1波長と第2波長とに変更可能な発光部と、
前記給電光の波長を少なくとも前記第1波長と前記第2波長とに変更する波長変調によって前記給電光に情報を含める変調部と、
を有し、
前記受電装置は、
入射された前記給電光を電力に変換する受光部と、
前記給電光に含まれた情報を抽出する復調部とを有し、
前記受光部は、少なくとも前記第1波長の感度と前記第2波長の感度とが異なり、
前記復調部は、前記受光部により変換された前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0092】
(8)受電方法は、
波長変調によって情報が挿入された給電光を、波長に応じて感度が異なる受光部で受けることで前記給電光を電力に変換し、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【0093】
(9)給電方法は、
予め定められた条件に従ったパワーの給電光に、波長変調によって情報を挿入し、前記情報が挿入された前記給電光を送出する。
【0094】
(10)光給電方法は、
波長変調によって情報が挿入された給電光を送り出すことで送電を行う一方、
波長に応じて感度が異なる受光部で前記給電光を受け、前記給電光を電力に変換することで受電を行い、さらに、前記給電光の波長の変化に対応して変化する前記電力の大きさに基づいて前記情報を抽出する。
【符号の説明】
【0095】
1、1A~1F 光給電システム
110、110E、110F 給電装置
111 給電用半導体レーザー
111E 発光部
112 給電光
150 変調部
160 送電制御部
170 受信部
200 光ファイバーケーブル
200A 光ファイバーケーブル
200B 光ファイバーケーブル
310、310E、310F 受電装置
311 光電変換素子
311E 受光部
370 復調部
380 受電制御部
390 送信部
392 データ
λ1~λn 第1波長~第n波長
401 第1波長領域
402 第2波長領域