IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 福井県の特許一覧 ▶ セーレン株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社八光の特許一覧

<>
  • 特開-子宮止血用セット器具 図1
  • 特開-子宮止血用セット器具 図2
  • 特開-子宮止血用セット器具 図3
  • 特開-子宮止血用セット器具 図4
  • 特開-子宮止血用セット器具 図5
  • 特開-子宮止血用セット器具 図6
  • 特開-子宮止血用セット器具 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170781
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】子宮止血用セット器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/42 20060101AFI20231124BHJP
   A61M 25/02 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61B17/42 525
A61M25/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082804
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】592029256
【氏名又は名称】福井県
(71)【出願人】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000153823
【氏名又は名称】株式会社八光
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 政彰
(72)【発明者】
【氏名】新田 瞬
(72)【発明者】
【氏名】柳 克彦
【テーマコード(参考)】
4C160
4C267
【Fターム(参考)】
4C160HH07
4C267AA09
4C267AA39
4C267BB20
4C267CC25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】膣口からのチューブの抜けを抑制するとともに、母体の装着感が良好な子宮止血用セット器具を提供する。
【解決手段】子宮止血用セット器具は、母体の子宮内に挿入されるバルーン2と、バルーン2が先端側に固定され、子宮内の血液を外部に排出するための排液通路32a、及びバルーン2に流体を注入するための流体通路32bが形成されて膣内に挿入されるチューブ3と、チューブ3の基端側に装着され、排液通路32aに連通して子宮内の血液を外部に排出するための排液通孔が形成され、膣口からのチューブ3の抜けを規制する部材であって、膣口から露出した保持部が膣口の陰門部で保持されるストッパーと、母体に装着することでストッパーの保持部に接触して、バルーン2の子宮からの抜け及びチューブ3の膣口からの抜けを抑制するショーツ型のサポーターとを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
母体の子宮内に挿入されるバルーンと、
前記バルーンが先端側に固定され、前記子宮内の血液を外部に排出するための排液通路、及び前記バルーンに流体を注入するための流体通路が形成されて膣口内に挿入されるチューブと、
前記チューブの基端側に装着され、前記排液通路に連通して前記子宮内の血液を外部に排出するための排液通孔が形成され、前記膣口からの前記チューブの抜けを規制する部材であって、前記膣口から露出した露出部が前記膣口の周辺組織で保持される規制部材と、
前記母体に装着することで前記規制部材の前記露出部に接触して、前記バルーンの前記子宮からの抜け及び前記チューブの前記膣口からの抜けを抑制するショーツ型抜け抑制部材と、
を備えた子宮止血用セット器具。
【請求項2】
前記規制部材は、前記チューブに対する回転方向が調整可能であり、前記露出部の基端側の面は、前記母体の長手方向を長軸とする略楕円形状を有する、
請求項1に記載の子宮止血用セット器具。
【請求項3】
前記規制部材は、前記長軸上の偏心した位置に、前記チューブ及び前記規制部材の外周面を伝わって漏れる排出液を外部に排出する漏液通孔が形成された、
請求項2に記載の子宮止血用セット器具。
【請求項4】
前記露出部は、前記漏液通孔が形成された側の前記長軸上の頂部に凹みが形成された、
請求項3に記載の子宮止血用セット器具。
【請求項5】
前記チューブは、前記バルーンに近い側に厚肉部が形成され、前記バルーンから遠い基端側に薄肉部が形成され、前記薄肉部が前記膣の長さに応じて切断可能な長さ調整部を有する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の子宮止血用セット器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、子宮止血用セット器具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、子宮内での出血を抑制して止血する子宮用止血バルーンユニットの固定用支持具が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載された子宮用止血バルーンユニットは、可撓性のチューブと、チューブの先端に設けられたバルーンとを備える。子宮用止血バルーンユニットの固定用支持具は、チューブを支持するチューブストッパと、チューブストッパを母体に固定する固定部材とを有する。チューブストッパは、チューブを挟持する挟み部を有しており、固定部材は、母体の腹部に装着する腹部用ベルトと、チューブストッパを腹部用ベルトに接続するバンドとから構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2020/208993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の子宮用止血バルーンユニットによると、チューブストッパがチューブの任意の位置を挟持する構造のため、膣口からバルーン(子宮内)までの膣内に挿入されるチューブの長さを母体に合わせた適切な長さにできる。また、固定用支持具は、チューブストッパをバンドで腹部用ベルトに接続することで、子宮用止血バルーンユニットの子宮からの抜けを抑制する効果が期待される。
【0006】
しかし、分娩後に子宮の収縮が進み、バルーンとの隙間が小さくなると、子宮からバルーンを押し出そうとする力が強くなるため、バンドで腹部用ベルトに接続しているとはいえ、抜ける方向への力が大きく、バンドでは子宮用止血バルーンユニットが抜ける方向にズレてしまう懸念がある。また、チューブの外周面を伝わり漏れる血液等の排出液により母体が不快感を覚えたり、子宮用止血バルーンユニットのチューブの基端側が体外に突出する構造のため、身体の動きに制約がある等、母体の固定用支持具の付け心地は良いものとはいえない。
【0007】
本発明の課題は、膣口からのチューブの抜けを抑制するとともに、母体の装着感が良好な子宮止血用セット器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、母体の子宮内に挿入されるバルーンと、前記バルーンが先端側に固定され、前記子宮内の血液を外部に排出するための第1の通路、及び前記バルーンに流体を注入するための第2の通路が形成されて膣内に挿入されるチューブと、前記チューブの基端側に装着され、前記第1の通路に連通して前記子宮内の血液を外部に排出するための第3の通路が形成され、前記膣口からの前記チューブの抜けを規制する部材であって、前記膣口から露出した露出部が前記膣口の周辺組織で保持される規制部材と、前記母体に装着することで前記規制部材の前記露出部に接触して、前記バルーンの前記子宮からの抜け及び前記チューブの前記膣口からの抜けを抑制するショーツ型抜け抑制部材と、を備えた子宮止血用セット器具を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、膣口からのチューブの抜けを抑制するとともに、母体の装着感が良好な子宮止血用セット器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る子宮止血用セット器具を構成するバルーンユニットの一例を示す外観図である。
図2図2(a)は、バルーンユニットの内部構造の一例を示す断面図、図2(b)は、図2(a)に示す接続チューブの内部構造の一例を示す要部断面図、図2(c)は、図2(b)に示すA-A線断面図である。
図3図3は、ストッパーの斜視図である。
図4図4(a)は、ストッパーの縦断面図、図4(b)は、保持部の後端面の一例を示す図である。
図5図5は、ショーツ型のサポーターの一例を示す展開図である。
図6図6は、サポーターの母体への装着状態の一例を示す正面図である。
図7図7は、バルーンユニットの母体への装着状態の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、各図中、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付してその重複した説明を省略する。
【0012】
<全体の構成>
図1は、本発明の実施の形態に係る子宮止血用セット器具を構成するバルーンユニットの一例を示す外観図である。この子宮止血用セット器具は、子宮内にバルーン2を挿入して子宮内での出血を止血するバルーンユニット1と、母体に装着することで子宮からのバルーン2の抜けを抑制するショーツ型のサポーター10とを備える。ショーツ型のサポーター10は、ショーツ型抜け抑制部材の一例である。
【0013】
バルーンユニット1は、子宮内に挿入される膨張収縮が可能なバルーン2と、バルーン2を先端側に設け、子宮内での出血を排出するための排液ルート及びバルーン2への流体ルートを有し、膣内に挿入される可撓性を有するチューブ3と、バルーン2に流体ルートを介して流体を注入する注入装置が接続されるコネクタ4と、チューブ3の排液ルートに連通して子宮内の血液を外部に排出するとともに、膣口からのチューブ3の抜けを規制する部材であって、膣口から露出した保持部53(図3図4参照)が膣口の陰門部で保持されるストッパー5とを備える。サポーター10は、ストッパー5の保持部53を覆うように母体に装着することで、チューブ3が膣口から抜けるのを抑制する。ここで、ストッパー5は、規制部材の一例である。保持部53は、膣口から露出した露出部の一例である。陰門部は、膣口の周辺組織の一例である。
【0014】
(バルーンの構成)
バルーン2は、流体が抜かれると萎んだ状態となり、流体が注入されると膨張した状態となり得るように、例えば、シリコーン樹脂等の弾性柔軟材料から形成されている。バルーン2は、図1では、膨張した状態を示し、後述する図2(a)では、収縮した状態を示している。バルーン2は、萎んだ状態で子宮内に挿入され、膨らんだ状態で子宮内(出血部)を圧迫して止血する。
【0015】
バルーン2は、筒状に形成されており、後述する図2(a)、(b)に示すように、先端側の端部2aが先端チップ31に、基端側の端部2bが内層チューブシャフト33Aの先端部に、それぞれ接着、溶着等により接合されている。なお、バルーン2は、弾性をほとんど有していない材料、例えば、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル等のフィルム素材からブロー成型等により形成されてもよい。
【0016】
<チューブの構成>
図2(a)は、バルーンユニット1の内部構造の一例を示す断面図、図2(b)は、図2(a)に示す接続チューブの内部構造の一例を示す要部断面図、図2(c)は、図2(b)に示すA-A線断面図である。チューブ3は、図2(a)に示すように、先端チップ31と、先端チップ31に接続された接続チューブ32と、接続チューブ32に接続されたチューブシャフト33とを備える。
【0017】
(先端チップの構成)
先端チップ31は、チューブ3のバルーン2よりも先端側に20~30mm程度露出するように設けられている。先端チップ31は、子宮内の血液等の排液を排出するために、接続チューブ32の排液通路32aに連通する開口31aを有し、側面に複数の排出孔31bを有する。先端チップ31は、外周面がバルーン2の先端側の端部2aに接続され、内周面が接続チューブ32に接続されている。先端チップ31は、例えば、シリコーン、フッ素樹脂、ポリウレタン等の材料から形成されている。
【0018】
(接続チューブの構成)
接続チューブ32は、先端チップ31と内層チューブシャフト33Aとを接続するものである。接続チューブ32は、外周面がバルーン2内部の内壁面となり、バルーン2を排液通路32aと隔てるとともに、バルーン2への流体ルートの一部を有する。
【0019】
具体的には、接続チューブ32は、断面円形状を有し、子宮内の血液を外部に排出するための排液通路32aの内腔と、バルーン2への流体ルートとなる流体通路32bの内腔の複数のルーメンを備えている。そして、バルーン2への流体ルートとなる流体通路32bには、バルーン2内部に通じる複数の側孔32dが連通している。また、流体通路32bの先端側の開口部は、接着、溶着等によって接合された栓32cにより閉塞され、基端側の端部開口部は、流体ルートチューブ42の接続チップ41が接着、溶着等により接続されている。栓32c及び接続チップ41は、例えば、シリコーン、フッ素樹脂、ポリウレタン等の材料から形成されている。
【0020】
(チューブシャフトの構成)
チューブシャフト33は、バルーン2に近い側が肉厚に形成され、基端側が薄肉に形成されている。すなわち、チューブシャフト33は、厚肉部が内層チューブシャフト33A及び外層チューブシャフト33Bによる2層構造となっており、薄肉部が外層チューブシャフト33Bのみによる単層構造となっている。内層チューブシャフト33A及び外層チューブシャフト33Bは、可撓性を有するように、例えば、シリコーン、フッ素樹脂、ポリウレタン等の弾性を有する材料から押出成形等を用いて形成されている。なお、内層チューブシャフト33A及び外層チューブシャフト33Bは、一体に形成されてもよい。
【0021】
チューブシャフト33は、バルーン2に接続する先端から後端まで排液通路が連通している。すなわち、チューブシャフト33の内層チューブシャフト33Aの中空及び外層チューブシャフト33Bの中空は、それぞれ接続チューブ32の排液通路32aに連通する排液通路33a、33bとなっている。
【0022】
膣内に挿入されるバルーン2に近い側を、内層チューブシャフト33A及び外層チューブシャフト33Bによる2層構造とすることにより、チューブシャフト33の潰れ等を防止し、挿入しやすい強度を備えた厚肉部を形成することができる。一方、バルーン2から遠い基端側は、外層チューブシャフト33Bのみによる薄肉部とすることにより、当該薄肉部が柔軟な部分となり、後述するストッパー5との接続の際に、チューブシャフト33の長さ調整のため、任意の位置で容易に切断することができる長さ調整部33cとすることができる。この場合、外層チューブシャフト33Bは、内層チューブシャフト33Aよりも薄い厚さを有するものでもよい。また、チューブシャフト33に厚肉部と薄肉部を設けることにより、膣内に挿入された部位の強度を保ちつつ、長さ調整部33cとなる薄肉部は母体の膣の長さに応じて任意の位置で容易に切断することができる。なお、チューブシャフト33の長さを出血部の位置に応じて調整してもよい。これにより、バルーン2を出血部に固定することが可能になる。
【0023】
(コネクタの構成)
コネクタ4は、接続チップ41と、流体ルートチューブ42と、テーパーバルブコネクタ43とを備える。流体ルートチューブ42は、チューブ3の内腔の途中に挿入されるようになっている。すなわち、バルーン2への流体の注入、排出ルートとなる流体ルートチューブ42は、先端部を接続チューブ32の流体ルート側のルーメンに接続チップ41を介して接続し、チューブシャフト33の排液通路33aの途中から外部に突出させて基端側に延びている。そして、延設された流体ルートチューブ42の基端には、流体の注入や排出のためシリンジ等と接続するルアーテーパーとバルーン2からの流体の流れを制御する弁とを備えたテーパーバルブコネクタ43を有している。
【0024】
テーパーバルブコネクタ43には、流体ルートチューブ42を介してバルーン2に流体を注入する注入装置が接続される。この構成により、注入装置から、テーパーバルブコネクタ43、流体ルートチューブ42、接続チップ41、流体通路32b及び側孔32dを介してバルーン2に流体が注入される。
【0025】
(ストッパーの構成)
図3は、ストッパー5の斜視図、図4(a)は、ストッパー5の縦断面図、図4(b)は、保持部の後端面の一例を示す図である。なお、図4(b)は、チューブシャフト33の基端側のストッパー5への装着状態を破線で示している。
【0026】
ストッパー5は、チューブ3の基部を着脱自在に装着する通孔54を有して、チューブ3を膣口で保持する。ストッパー5は、チューブシャフト33が装着されるとともに、膣内に挿入される筒状部51と、陰門部で保持される保持部53と、筒状部51と保持部53とを緩やかなテーパーで遷移するテーパー部52とを備える。
【0027】
保持部53には、接続チューブ32の排液通路32a及びチューブシャフト33の排液通路33a、33bに連通して子宮内の血液を外部に排出するための排液通孔54aと、チューブシャフト33及びストッパー5の外周面5aを伝わって漏れる排出液を外部に排出するための漏液通孔55とが形成されている。保持部53は、略楕円状の後端面53aを有し、長軸上の少なくとも一方側(腹部側)の頂部に凹み53b及び一対の凸部53c、53cを設けたハート型形状を有する。保持部53の後端面53aは、サポーター10が接触する接触面であり、平坦な面に形成されている。保持部53は、側面を含めて全体的に角部のない形状(例えば、楕円形状、縦長円形状、ハート型形状等)に形成され、後端面53aと反対側の面は、陰門部への接触面となる。このため、保持部53の辺縁は、曲面で形成するのが好ましい。さらに、保持部53を陰門部で確実に保持できるように、後端面53aは、サポーター10に接触する十分な面積を有するのが好ましい。
【0028】
保持部53の後端面53aは、例えば、ハート型形状を有する。後端面53aの腹部側が、単に楕円の頂部であると、頂部が腹部に接触し、食い込む等により母体が不快感を覚えてしまうが、ハート型形状にすることにより、周辺組織に対応した形状となり、装着感が悪くならずに、ストッパー5を装着することができる。換言すれば、ストッパー5の筒状部51を膣内に挿入し、保持部53を陰門部で保持した際に、テーパー部52が母体に接触するときや、角部のない平面形状、及びハート型形状等の略楕円形状に形成された保持部53(単なる楕円だと接触部が痛い。)により母体の装着不快感を低減することができる。また、保持部53の後端面53aは、平坦な面として、辺縁部の面を曲面に形成しているので、サポーター10への収まりが良好となり、サポーター10にフィットするため、より確実に保持しておける。
【0029】
また、保持部53の後端面53aには、チューブシャフト33から連通する排液通孔54aの他に、略楕円形状の長軸上の偏心した位置に漏液通孔55を備えている。これにより、チューブシャフト33からストッパー5の外周面5aを伝わり漏れ出る排出液を陰門部との接触面に溜めることなく、サポーター10に排出することができ、排液や漏液が陰門部や後端面53aに溜まることによる不快感を低減することができる。
【0030】
(サポーターの構成)
図5は、ショーツ型のサポーター10の一例を示す展開図である。サポーター10は、臀部から下腹部を覆い腰部で巻いて保持する形態で、装着したときショーツ形状をなし、ストッパー5を陰門部に固定しておくためのものである。サポーター10は、バック11(後身頃)と、クロッチ12(股布)と、フロント13(前身頃)と、バック11に設けられ、腰に巻くための横長の腰ベルト14とを備え、全体としてT字形に展開した形状を有する。
【0031】
腰ベルト14は、腰に回して前面で面ファスナー15a、15bにより固定され、バック11、クロッチ12及びフロント13は、臀部から下腹部を包み、腰ベルト14に面ファスナー15c、15dにより固定され、母体に装着される。クロッチ12は、ストッパー5の後端面53aが接触する部分となるため、ストッパー5の後端面53aを完全に覆う面積を有するのが好ましい。このようにサポーター10によりストッパー5の後端面53a全体を完全に覆うことで、チューブシャフト33の位置ズレの少ない確実な固定を行うことができる。ストッパー5が完全にサポーター10で覆われることにより、バルーン2の子宮からの抜けを抑制することができる。また、バルーン2への流体ルートを確保するためのコネクタ4を除き、バルーンユニット1がサポーター10内に収まるため、母体の動きに制約が少なく、装着感を向上させることができる。
【0032】
サポーター10の少なくともクロッチ12を含む部位(ストッパー5を押さえる部分)は、吸水性の高い高分子吸収材(例えば、吸収性高分子ポリマー等)により形成されている。これにより、排液通孔54aから排出される血液等の排液、チューブシャフト33などを伝い漏れ、漏液通孔55から排出される漏液が吸収材に吸収されることで、母体が排液や漏液で濡れることを抑制することができ、装着不快感を低減することができる。このため、サポーター10に排液のためのチューブシャフト33を外部に導出するための取り出し孔を設ける必要がない。また、サポーター10が展開された形状のため、母体を大きく動かさずに装着することができ、母体に応じてサイズを調整することができる。
【0033】
<使用方法>
次に、子宮止血用セット器具の使用方法の一例を、図6及び図7を参照して説明する。図6は、サポーター10の母体への装着状態の一例を示す正面図である。図7は、バルーンユニット1の母体への装着状態の一例を模式的に示す側面図である。
【0034】
(1)チューブシャフトの長さ調整
母体100の膣101の長さに応じて外層チューブシャフト33Bの基端側の長さ調整部33cを、当該長さ調整部33cのいずれかの位置で切断することにより、チュ-ブシャフト33の長さを調整する。
【0035】
(2)チューブシャフトのストッパーへの差し込み
適切な長さに切断したチューブシャフト33の基端側をストッパー5の通孔54に差し込む。すなわち、図4(a)に示すように、チューブシャフト33の切断面33dがストッパー5の排液通孔54aを形成している鍔部に当たるまで、チューブシャフト33の基端側をストッパー5の通孔54に差し込む。
【0036】
(3)母体への挿入
図7に示すように、チューブ3及びストッパー5の筒状部51を膣101から挿入し、バルーン2を子宮103内に位置させる。このとき、バルーン2は、まだ流体が注入されていないため、萎んだ状態にある。
【0037】
(4)バルーン2の膨張
注入装置から流体をコネクタ4を介してバルーン2に注入してバルーン2を膨張させ、子宮頸部102を含む子宮103内を圧迫する。これにより想定している出血部102aが止血する。このとき、必要に応じて、チューブシャフト33の軸方向の位置を微調整し、ストッパー5が陰門部104で確実に保持されていることを確認する。
【0038】
(5)サポーターの装着
ストッパー5全体を完全に覆うように、図6及び図7に示すように、サポーター10を母体に合わせて適切な位置に面ファスナー15a乃至15dで固定し装着する。
【0039】
(6)一定時間の留置による止血
12時間程度(最長24時間)留置して止血する。このとき、必要に応じて、バルーン2の流体量を調整する。
【0040】
(本実施の形態の効果)
本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(a)ショーツ型のサポーター10を母体100に装着することで、サポーター10がストッパー5の後端面53aに接触して、バルーン2の子宮103からの抜け及びチューブ3の膣口からの抜けを抑制することができる。
(b)ストッパー5は、チューブ3に対する回転方向が調整可能であり、膣口から露出した保持部53の後端面53aが、母体100の長手方向を長軸とし、かつ、チューブ3の中心軸に対して偏心した略楕円形状を有するので、母体100の装着不快感を低減することができる。
(c)ストッパー5は、後端面53aの長軸上の偏心した位置に形成された漏液通孔55により、チューブ3及びストッパー5の外周面を伝わって漏れる漏液を外部に排出することができる。
(d)ストッパー5の排液通孔54aから排出される排液や、漏液通孔55から排出される漏液をサポ-ター10の吸収材で吸収することができるので、母体100が排液や漏液で濡れることを抑制することができ、装着不快感を低減することができる。
(e)以上説明したように、本実施の形態に係る子宮止血用セット器具によると、子宮内に留置するバルーン2の抜けを抑制して止血できるとともに、母体の装着不快感を低減することができる。
【0041】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の実施の形態は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形、実施が可能である。
【0042】
また、上記実施の形態の構成要素の一部を省くことや変更してもよい。また、上記実施の形態の使用方法において、工程の追加、削除、変更、入替え等を行ってもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…バルーンユニット、2…バルーン、2a、2b…バルーンの端部、
3…チューブ、4…コネクタ、5…ストッパー、5a…外周面、
10…サポーター、11…バック、12…クロッチ、13…フロント、
14…腰ベルト、15a~15d…面ファスナー、31…先端チップ、
31a…開口、31b…排出孔、32…接続チューブ、32a…排液通路、
32b…流体通路、32c…栓、32d…側孔、33…チューブシャフト、
33A…内層チューブシャフト、33B…外層チューブシャフト、
33a、33b…排液通路、33c…長さ調整部、33d…切断面、
41…接続チップ、42…流体ルートチューブ、43…テーパーバルブコネクタ、
51…筒状部、52…テーパー部、53…保持部、53a…後端面、53b…凹み、
53c…凸部、54…通孔、54a…排液通孔、55…漏液通孔、100…母体、
101…膣、102…子宮頸部、102a…出血部、103…子宮、104…陰門部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7