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特開2023-170792ブラスト処理用の噴射機、処理材送出回収装置及びこれらにより構成するブラスト処理装置
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  • 特開-ブラスト処理用の噴射機、処理材送出回収装置及びこれらにより構成するブラスト処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170792
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】ブラスト処理用の噴射機、処理材送出回収装置及びこれらにより構成するブラスト処理装置
(51)【国際特許分類】
   B24C 9/00 20060101AFI20231124BHJP
   B24C 5/04 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B24C9/00 D
B24C9/00 H
B24C9/00 E
B24C5/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082819
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】592209836
【氏名又は名称】プラストロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177747
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 賢一
(72)【発明者】
【氏名】米澤 昇二
(72)【発明者】
【氏名】比留川 謙一
(57)【要約】
【課題】特殊な知識や技量がなくても使用でき、可搬性にも優れたブラスト処理装置を提供する。例えば、金型の洗浄時に分解や組立てなど処理前後の準備作業等を省略でき、処理材や装置自体の取扱いも非常に容易な装置にする。
【解決手段】高圧エアに混入した処理材を噴射機からワークに噴射する際に、ワークを大きく被覆し、その内部に手を入れて作業を行うためのフード等を必要としない装置にした。作業者は手にした噴射機をワークに押し付けた状態で金型等のブラスト処理を行う。使用前の処理材は、加圧エアに混入されて処理材送出回収装置から噴射機に送り込まれてワークに噴射される。使用後の処理材は、噴射機外に漏れ出すことなく処理材送出回収装置に回収されて貯蔵される。この時、噴射機の噴射ノズルが揺動しながらワークの広範囲に処理材を噴射する。また、処理材送出回収装置は、エア源からの高圧エアによって処理材の送出と回収を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラスト処理に用いる処理材の噴射機であって、
噴射機筐体、シール部、噴射ノズル及びノズル支持部を備え、
前記噴射機筐体は、円形の開口部の全周を取り巻いて前記シール部が配され、その開口部から続く内部に前記噴射ノズルと前記ノズル支持部を内包し、エアに混入した処理材を回収する還気管との接続手段を有する排気口を備え、
前記シール部は、ワークに対向する端部がこれに密着し、前記噴射ノズルから噴射されたエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込むフィルター機能を有し、
前記噴射ノズルは、エアに混入した処理材をこれに送り込む送気管との接続手段を有する導入口と、前記噴射機筐体の軸方向でワークに対向してエアに混入した処理材を噴射する噴射口とを備え、
前記ノズル支持部は、前記噴射機筐体内に配され、前記噴射ノズルを前記噴射機筐体の軸方向かつ揺動可能に保持し、
ブラスト処理時には、
前記送気管が接続された前記噴射ノズルの前記導入口にエアに混入した処理材が高圧で送り込まれ、
前記ノズル支持部に支持された前記噴射ノズルがエアの圧力により揺動しながらエアに混入した処理材を前記噴射口からワークに噴射し、
ワークに密着した前記シール部がエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込み、
前記噴射機筐体の前記排気口に接続された前記還気管により、エアに混入した処理材が前記噴射機筐体内からエアと共に回収されることを特徴とする噴射機。
【請求項2】
ブラスト処理に用いる処理材の噴射機であって、
噴射機筐体、シール部、噴射ノズル及び球状のノズル支持部を備え、
前記噴射機筐体は、円形の開口部の全周を取り巻いて前記シール部が配され、その開口部から続く内部に前記噴射ノズルと前記ノズル支持部を内包し、前記ノズル支持部を揺動可能に包む保持部と、エアに混入した処理材を回収する還気管との接続手段を有する排気口を備え、
前記シール部は、ワークに対向する端部がこれに密着し、前記噴射ノズルから噴射されたエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込むフィルター機能を有し、
前記噴射ノズルは、前記ノズル支持部の中心近傍を貫通して、これと一体的に組み合わされ、エアに混入した処理材をこれに送り込む送気管との接続手段を有する導入口と、前記噴射機筐体の軸方向でワークに対向してエアに混入した処理材を噴射する噴射口とを備え、
前記ノズル支持部は、前記噴射機筐体内の前記保持部により、前記噴射ノズルを前記噴射機筐体の軸方向に支持しながら、これと共に揺動可能に保持され、
ブラスト処理時には、
前記送気管が接続された前記噴射ノズルの前記導入口にエアに混入した処理材が高圧で送り込まれ、
前記噴射機筐体内の前記保持部により保持された前記ノズル支持部と一体化された前記噴射ノズルがエアの圧力により揺動しながらエアに混入した処理材を前記噴射口からワークに噴射し、
ワークに密着した前記シール部がエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込み、
前記噴射機筐体の前記排気口に接続された前記還気管により、エアに混入した処理材が前記噴射機筐体内からエアと共に回収されることを特徴とする噴射機。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載の噴射機に接続して使用する処理材送出回収装置であって、
装置筐体、前記送気管、前記還気管、エア源、貯留庫、吸引機、分離機及び回収庫を備え、
前記装置筐体は、内部に前記送気管、前記還気管、前記エア源、前記貯留庫、前記吸引機、前記分離機及び前記回収庫を取り纏めて保護し、
前記送気管は、前記エア源から前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口まで配され、前記噴射機の前記導入口との接続手段を備え、
前記還気管は、前記噴射機の前記排気口から前記分離機を経由して前記回収庫まで配され、前記噴射機の前記排気口との接続手段を備え、
前記エア源は、前記送気管により前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口と接続され、高圧状態のエアを前記送気管に送出して前記噴射機の前記噴射口から噴射させる高圧エア送出機能を有し、
前記貯留庫は、前記送気管を介して前記エア源と前記噴射機の前記導入口と接続され、内部に貯蔵する処理材を前記送気管のエアに混入する処理材混入機能を有し、
前記吸引機は、前記分離機と接続され、前記分離機にエアの吸引力を付与するための負圧発生機能を有し、
前記分離機は、前記還気管により前記噴射機の前記排気口と前記回収庫に接続され、内部にエアを吸引して、これに混入した粒子を分離する分離機能を有し、
前記回収庫は、前記還気管により前記分離機に接続され、内部に処理材を貯蔵可能であり、
ブラスト処理時には、
前記エア源が前記送気管に高圧状態のエアを送出し、
前記貯留庫で前記送気管のエアに処理材を混入し、
前記吸引機が前記分離機に吸引力を付与し、
前記分離機が前記噴射機筐体内の処理材が混入したエアを前記還気管から内部に吸引し、エアに混入した処理材を分離して前記回収庫に送出し、
前記回収庫において、分離した処理材を貯蔵して回収することを特徴とする処理材送出回収装置。
【請求項4】
処理材の噴射機と、これに処理材を送出して回収する処理材送出回収装置とで構成するブラスト処理装置であって、
前記噴射機は、噴射機筐体、シール部、噴射ノズル及びノズル支持部を備え、
前記噴射機筐体は、円形の開口部の全周を取り巻いて前記シール部が配され、その開口部から続く内部に前記噴射ノズルと前記ノズル支持部を内包し、エアに混入した処理材を回収する還気管との接続手段を有する排気口を備え、
前記シール部は、ワークに対向する端部がこれに密着し、前記噴射ノズルから噴射されたエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込むフィルター機能を有し、
前記噴射ノズルは、エアに混入した処理材をこれに送り込む送気管との接続手段を有する導入口と、前記噴射機筐体の軸方向でワークに対向してエアに混入した処理材を噴射する噴射口とを備え、
前記ノズル支持部は、前記噴射機筐体内に配され、前記噴射ノズルを前記噴射機筐体の軸方向かつ揺動可能に保持するものであり、
前記処理材送出回収装置は、装置筐体、前記送気管、前記還気管、エア源、貯留庫、吸引機、分離機及び回収庫を備え、
前記装置筐体は、内部に前記送気管、前記還気管、前記エア源、前記貯留庫、前記吸引機、前記分離機及び前記回収庫を取り纏めて保護し、
前記送気管は、前記エア源から前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口まで配され、前記噴射機の前記導入口との接続手段を備え、
前記還気管は、前記噴射機の前記排気口から前記分離機を経由して前記回収庫まで配され、前記噴射機の前記排気口との接続手段を備え、
前記エア源は、前記送気管により前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口と接続され、高圧状態のエアを前記送気管に送出して前記噴射機の前記噴射口から噴射させる高圧エア送出機能を有し、
前記貯留庫は、前記送気管を介して前記エア源と前記噴射機の前記導入口と接続され、内部に貯蔵する処理材を前記送気管のエアに混入する処理材混入機能を有し、
前記吸引機は、前記分離機と接続され、前記分離機にエアの吸引力を付与するための負圧発生機能を有し、
前記分離機は、前記還気管により前記噴射機の前記排気口と前記回収庫に接続され、内部にエアを吸引して、これに混入した粒子を分離する分離機能を有し、
前記回収庫は、前記還気管により前記分離機に接続され、内部に処理材を貯蔵可能であり、
ブラスト処理時には、
前記エア源が前記送気管に高圧状態のエアを送出し、
前記貯留庫で前記送気管のエアに処理材が混入され、
前記噴射機においては、
エアに混入した処理材が前記送気管から前記噴射ノズルの前記導入口に送り込まれ、
前記ノズル支持部に支持された前記噴射ノズルがエアの圧力により揺動しながらエアに混入した処理材が前記噴射ノズルの前記噴射口からワークに高圧状態で噴射され、
ワークに密着した前記シール部がエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込みながらブラスト処理が行われ、
前記吸引機が前記分離機に吸引力を付与し、
前記分離機が前記噴射機筐体内の処理材が混入したエアを前記還気管から内部に吸引し、エアに混入した処理材を分離して前記回収庫に送出し、
前記回収庫において、分離した処理材を貯蔵して回収することを特徴とするブラスト処理装置。
【請求項5】
処理材の噴射機と、これに処理材を送出して回収する処理材送出回収装置とで構成するブラスト処理装置であって、
前記噴射機は、噴射機筐体、シール部、噴射ノズル及びノズル支持部を備え、
前記噴射機筐体は、円形の開口部の全周を取り巻いて前記シール部が配され、その開口部から続く内部に前記噴射ノズルと前記ノズル支持部を内包し、エアに混入した処理材を回収する還気管との接続手段を有する排気口を備え、
前記シール部は、ワークに対向する端部がこれに密着し、前記噴射ノズルから噴射されたエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込むフィルター機能を有し、
前記噴射ノズルは、エアに混入した処理材をこれに送り込む送気管との接続手段を有する導入口と、前記噴射機筐体の軸方向でワークに対向してエアに混入した処理材を噴射する噴射口とを備え、
前記ノズル支持部は、前記噴射機筐体内に配され、前記噴射ノズルを前記噴射機筐体の軸方向かつ揺動可能に保持するものであり、
前記処理材送出回収装置は、装置筐体、前記送気管、前記還気管、エア源、貯留庫、真空発生機、分離機及び回収庫を備え、
前記装置筐体は、内部に前記送気管・前記還気管・前記エア源・前記貯留庫・前記真空発生機・前記分離機及び前記回収庫を取り纏めて保護し、
前記送気管は、前記エア源から前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口まで配され、前記噴射機の前記導入口との接続手段を備え、
前記還気管は、前記噴射機の前記排気口から前記分離機を経由して前記回収庫まで配され、前記噴射機の前記排気口との接続手段を備え、
前記エア源は、前記送気管により前記貯留庫を経由して前記噴射機の前記導入口と接続され、前記真空発生機と接続され、高圧状態のエアを前記送気管に送出して前記噴射機の前記噴射口から噴射させ、併せて、前記真空発生機に送り込む高圧エア送出機能を有し、
前記貯留庫は、前記送気管を介して前記エア源と前記噴射機の前記導入口と接続され、内部に貯蔵する処理材を前記送気管のエアに混入する処理材混入機能を有し、
前記真空発生機は、前記エア源と前記分離機に接続され、前記エア源から送り込まれた高圧状態のエアで前記分離機にエアの吸引力を付与するための負圧発生機能を有し、
前記分離機は、前記還気管により前記噴射機の前記排気口と前記回収庫に接続され、内部にエアを吸引して、これに混入した粒子を分離する分離機能を有し、
前記回収庫は、前記還気管により前記分離機に接続され、内部に処理材を貯蔵可能であり、
ブラスト処理時には、
前記エア源が前記送気管に高圧状態のエアを送出し、
前記貯留庫で前記送気管のエアに処理材が混入され、
前記噴射機においては、
エアに混入した処理材が前記送気管から前記噴射ノズルの前記導入口に送り込まれ、
前記ノズル支持部に支持された前記噴射ノズルがエアの圧力により揺動しながらエアに混入した処理材が前記噴射ノズルの前記噴射口からワークに高圧状態で噴射され、
ワークに密着した前記シール部がエアに混入した処理材の前記噴射機筐体外への漏洩を防ぎ、かつ、周囲のエアを前記噴射機筐体内に取り込みながらブラスト処理が行われ、
前記真空発生機が前記分離機に吸引力を付与し、
前記分離機が前記噴射機筐体内の処理材が混入したエアを前記還気管から内部に吸引し、エアに混入した処理材を分離して前記回収庫に送出し、
前記回収庫において、分離した処理材を貯蔵して回収することを特徴とするブラスト処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
対象物(以下、「ワーク」という。)に研磨材等(以下、「処理材」という。)を噴射して表面加工を行うブラスト処理に関する技術である。
【背景技術】
【0002】
粒子状の処理材をワークに対して高圧で噴射し、その表面を研磨・研削・研掃・粗化など様々な表面加工を施すための処理技術としてブラスト処理が広く利用されている。それに用いる装置としては、処理材をコンプレッサの圧縮エアでワークに噴射するサンドブラスト装置の他に、コンプレッサに代えてブロワを用いる装置や、噴射機を高速で回転させて処理材を噴射するショットブラスト装置、ドライアイスペレットを処理材として使用するドライアイスブラスト装置なども使用されている。
【0003】
ブラスト処理が利用される産業分野も幅広い裾野を有するが、例えば、プラスチック製品を射出成形機で製造する際には、金型に付着した錆や汚れが作業上の不都合を引き起こす要因になり得るため、金型の洗浄などの保守管理が必要不可欠な業務になっている。この時、サンドブラストやドライアイスブラストの他、超音波洗浄機を用いる方法なども採用されるが、それらの技術には一長一短があって改善の余地が未だに残されている。
超音波洗浄では、射出成形機から取り外した金型を更に分解して洗浄機に投入する。洗浄作業の終了後も、水洗い・乾燥・組立て・再取付けのため長時間の作業が必要となる。また、金型を再び組み立てる際には、成形条件を再現するため、金型の取扱いに関する高度の知識と技量が求められる。
ドライアイスブラストでは、射出成形機の金型にドライアイスを噴射して処理するが、固着した汚れ等を完全に除去することは難しく、ドライアイスによる凍傷の虞や、温室効果ガスの発生も懸念される。
【0004】
そのため、現場の作業者が誰でも手軽に取り扱うことができ、金型を射出成形機から取り外すことなく作業を行うことができる装置があれば、非常に有意義である。そして、保守管理作業の工数を大幅に削減できると共に、金型の分解で生じる不具合も未然に予防できることになる。
このようなことから、特許文献1の氷粒ブラスト装置では、「射出成形機の金型洗浄では、金型を射出成形機本体から取り外すため、手間と時間がかかる」との問題意識に基づき、その解決策を提示している。具体的な技術内容としては、射出成形機に金型が取り付けられた状態で、金型を覆うようにフード部の端縁を金型取付面に密着させ、操作口からフード部内に手を入れて噴射ノズルを操作しながら、金型に氷粒を吹き付けて洗浄する装置である。また、処理材の噴射に関しては、「噴射能力の低減を最小限にとどめ、かつ、研磨材の噴射方向の自由度を向上することができる」とした特許文献2の研磨装置も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-9726号公報
【特許文献2】特開2010-94779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄や研磨など様々な作業を行う際の工数削減にも直結し、取扱いも容易であって特別な知識や技量を持たなくても容易に使用できるブラスト処理装置を提供することである。
例えば、金型洗浄における超音波洗浄やドライアイス洗浄等に比べ、金型の分解やその他の処理プロセスを大幅に省略することができ、処理材や装置自体の取扱いも、従来の処理方法や処理装置に比べて非常に容易なものとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金型等のワークに対して、処理材を高圧で噴射して行うブラスト処理装置である。そして、そのブラスト処理装置の一部を構成するものが処理材の噴射機であり、その噴射機と共に使用される処理材送出回収装置である。
始めに噴射機であるが、噴射機の筐体とこれに組み合わされるシール部、噴射ノズル及びノズル支持部で構成される。なお、後ほど説明する処理材送出回収装置の筐体と区別する意味において、以下の説明では「噴射機筐体」及び「装置筐体」という表現を用いるものとする。
【0008】
噴射機筐体の内部は、概ね円筒状をした空洞になっている。そして、その内部に噴射ノズルとこれを支持するノズル支持部を内包する。また、使用時にワークと対向する前方が円形の開口部となり、その開口部の全周を取り巻いてシール部が配置される。そして、多くの場合に噴射機筐体の側部となるが、使用済みの処理材を回収するために還気管が接続される排気口がある。
シール部をワーク側から見ると、噴射機筐体の開口部と同じく概ね円状であって切れ目はない。シール部はフィルター機能を備えており、その円状の前端をワークに密着させると、噴射された処理材の噴射機筐体外への漏洩が防止され、同時に周囲のエアを噴射機筐体内に取り込むことができる。
噴射ノズルは、噴射機筐体内で、その同軸方向を向いて揺動可能な状態に、ノズル支持部により支持されている。そして、その噴射ノズルには、処理材を混入した高圧のエアを噴射機に送り込む送気管との接続手段を有する導入口と、噴射機筐体の開口部側においてワークと対向する処理材の噴射口がある。
【0009】
以上の構成から、ブラスト処理時の噴射機は、次のように機能する。
この噴射機を用いた作業は、シール部の前端をワークに押し当てることで、噴射機とワークが隙間なく密着した状態を保ち、ワークの表面を滑るように噴射機を移動させながら行う。
この時、送気管が接続された導入口から、外部で加圧されて処理材が混入された高圧状態のエアが噴射ノズルに送り込まれる。噴射ノズルは、ノズル支持部に支持されながらも、エアの圧力を受けて揺動するため、エアによって付勢された処理材が噴射口からワークの処理範囲に向けて隈無く噴射される。
シール部では、噴射された処理材を噴射機外へ漏洩させず、併せて、噴射機から処理材を効率的に回収するため、周囲のエアを噴射機内に取り入れる。そして、使用済みの処理材は、噴射機の排気口に接続された還気管によってエアと共に速やかに回収される。
【0010】
なお、この噴射機において、ノズル支持部の形状を球状にし、これに対応する噴射機筐体の内側部の一部を、ノズル支持部を揺動可能に包み込む形状とし、これを保持部にすることも可能かつ有用である。
また、噴射ノズルが、この球状のノズル支持部の中心近傍を貫通するように、噴射ノズルとノズル支持部を一体化させることも可能である。この場合、ノズル支持部に空洞部を設け、それに噴射ノズルを着脱可能に組み込むような構造にしても良い。
【0011】
次に、この噴射機と共に、本発明のブラスト処理装置を構成する処理剤送出回収装置である。
噴射機と処理材送出回収装置は、先に述べた送気管と還気管によって結ばれる。なお、噴射機とこれらの管との接続は、多くの場合、適宜に接続及び解除が可能なものとする。
処理材送出回収装置の主要な構成要素としては、この2種の管類の他に、装置筐体、エア源、貯留庫、吸引機、分離機及び回収庫がある。
そして、送気管は、装置筐体内のエア源から貯留庫を経由して、装置筐体外で噴射機の導入口に接続される。また、還気管は、噴射機の排気口に接続されて、装置筐体内の分離機に繋がり、これを経由して回収庫に至る。
【0012】
装置筐体は、処理材送出回収装置の可搬性を高めるように、その他の構成要素を内部に取り纏めて保護する。貯留庫は、使用前の処理材を貯蔵する保管庫である。送気管を介してエア源と噴射機の導入口を結び、内部に貯蔵する処理材を送気管内を流動する高圧のエアに混入する処理材混入機能を備える。エア源は、高圧状態のエアを処理材と共に付勢された状態のまま、噴射機に送り込む高圧エア送出機能を持つ。そして、噴射機からエアと共に処理材がワークに吹き付けられてブラスト処理が実行される。
【0013】
噴射機内の使用済み処理材は、噴射機の排気口に接続された還気管から分離機に引き込まれる。この時、分離機にその吸引力を付与する負圧発生機能を有するものが吸引機である。分離機は、気体中の粒子を選り分けて集積する分離機能を備える。そのため、エアに混入された処理材のみを分離し、エアのみを外部に排気する。分離された処理材は使用後の処理材を保管する回収庫に送られる。
また、エアを分離機に導く吸引機については、負圧発生機能を持つ真空発生機とすることも有用である。エア源から送り込まれる高圧のエアで真空状態を発生させ、その負圧による吸引力を分離機に付与するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の噴射機、処理材送出回収装置及びこれらによって構成するブラスト処理装置は、従来型の装置に比べて、作業性や可搬性において大きな優位性を持つ。
超音波洗浄の処理液は、専用容器での保管や専門業者による特別管理産業廃棄物としての処理が必要である。手袋や保護眼鏡を着用した作業となり、前後の処理工程を含めて概ね3時間以上の作業時間を要する。
ドライアイス洗浄では、処理剤のドライアイスペレットの保管に手間が掛かり、凍傷の危険性にも注意が必要である。また、作業後は気化して温室効果ガスになるため、地球環境保護という時代的要請にも適わない。作業時間は一般に約45分程度と考えられる。
一方、本発明のブラスト処理装置の場合は、処理材は通常の容器に常温保管でき、使用後は一般産業廃棄物として処理したり、再生利用することも可能である。手袋等も不要であり、作業上の安全性も高い。
【0015】
このブラスト処理装置は、噴射機と処理材送出回収装置が共に手軽に運搬できるコンパクトな可搬式装置となり、様々な現場に移動させて使用することが可能である。また、前述したように、金型を射出成形機に取り付けた状態のままでブラスト処理ができ、本装置の取扱いも非常に容易であるため、専門的な知識や技量は不要である。当然ながら、金型洗浄以外にもその用途は多種多様である。
特許文献1の氷粒ブラスト装置のように、金型を大きく覆うフード部も不要である。特許文献1の装置を含む従来型のブラスト処理装置のように、操作口からフード部内に手を差し入れて噴射ノズルを操作するような装置ではない。手にした噴射機をそのまま金型に押しつけることで、高圧エアの圧力で噴射ノズルが自動的に揺動しながら金型の処理範囲に遍く処理材が噴射される。使用後の処理材も噴射機外に漏れることなく回収される。そのため、従来の作業工程を大幅に削減でき、例えば、金型洗浄の作業時間も10分乃至30分程度に短縮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】噴射機の外観を表した斜視図である。
図2】ブラスト処理中の噴射機の側面図である。
図3】シール部の態様が異なる噴射機の外観を表した斜視図である。
図4】噴射機の構造を表した透視図である。
図5】着脱可能なブラシ状のシール部を表した斜視図である。
図6】ブラスト処理装置の構成を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図を用いながら、本発明について説明する。
図1は、噴射機1の外観を表した斜視図である。そして、図2は、その噴射機1を用いてブラスト処理の作業中の状態を表した側面図である。
作業者は、手に持った噴射機1を、図2のようにワークWの表面に押し当て、これを滑らせるように移動させて、ワークWの表面処理を行う。
図3は、図2とは一部の仕様が異なる噴射機1の外観を表した斜視図である。また、図4は、図3と同じ仕様の噴射機1の内部構造を示した透視図である。
但し、これらの噴射機1における内外の形状や構造は、その一例である。
なお、便宜上の理由から、図の左側を噴射機1の前方、右側を後方として以下の説明を行う。
【0018】
始めに、噴射機1の全体的な構成について説明する。
この噴射機1は、後述する処理材送出回収装置6に接続して使用され、本発明のブラスト処理装置の一部にもなる。
噴射機1を構成する主要な要素としては、図示したように、噴射機筐体2、シール部3、噴射ノズル4及びノズル支持部5の4種の部品である。その他の副次的な部品については、説明の簡略のため、以下においては詳しく言及しない。
噴射機筐体2は外装部品である。図4に示したように、シール部3などの部品がこれに組み合わされて噴射機1となる。
【0019】
シール部3は、噴射機筐体2の最前方、図1で示した円形の開口部に、その全周を取り巻くように配置される。図1ではブラシ状であり、図3ではこれと異なる仕様として図示されている。
そして、図3では噴射機筐体2の前側面に隠れて視認できないが、図4に示したように噴射ノズル4とノズル支持部5が噴射機筐体2に内包されている。
この時、噴射ノズル4は、噴射機筐体2の内部空間を前後に貫く中心軸方向に同軸化されており、ワークWと対向する前方が噴射口となるように、ノズル支持部5によって噴射機筐体2内に保持されている。
【0020】
また、これらの図には、後述する処理材送出回収装置6の一部であり、ブラスト処理の際に噴射機1と処理材送出回収装置6を接続するための2種の配管部品又はその延長部品(以下、配管部品と延長部品を区別しない。)が表示されている。その1つは、噴射機1の後方から噴射ノズル4後端にあるエアの導入口に接続される送気管8である。そして、もう一つは、噴射機筐体2の下方からエアの排気口に接続されている還気管9である。
【0021】
次に、噴射機1を構成する噴射機筐体2、シール部3、噴射ノズル4及びノズル支持部5の各々について詳細に説明する。
噴射機筐体2は、噴射機1の外装部品であって、その外観の印象を大きく決定付けるものである。作業者が噴射機1を操作する際に握るグリップを下方に備える噴射機筐体2、それがない噴射機筐体2など、その形状や大きさも様々な仕様を設定し得る。
グリップを備える場合には、下向きの突出部の中を噴射機筐体2内に続く中空状にし、還気管9が接続される排気口を設け、ブラスト処理で使用された後の処理材をエアと共に回収する際の経路の一部とする。そして、作業時にはこの突出部を噴射機1の把持部にすることができる。
【0022】
噴射機筐体2は、その内外に他の部品が配置されるため、噴射機1の基礎又は土台とも言える部品であり、作業者が操作し易いように各部品をコンパクトに取り纏めると共に、噴射ノズル4等の繊細な部品を汚損等から保護する被覆体としての機能を果たす。
図3の噴射機筐体2を見ると、前方は閉塞されておらず開放され、内部に続く広い開口部になっている。
図4では、噴射機筐体2の後方も噴射ノズル4の揺動が可能となる大きさに開放されており、噴射ノズル4の後端を噴射機筐体2外に突き出した状態に図示している。そして、噴射ノズル4の後端にある導入口に送気管8が接続されている。但し、必ずしも噴射機筐体2の後部が図4のように開放される必要はなく、送気管8を通じて外部からエアの供給が可能な構造であれば良い。例えば、送気管8を還気管9と共にグリップに内包させて、噴射機筐体2内の噴射ノズル4まで取り回す構造などである。
【0023】
噴射機筐体2の外観は、図1図3を見ると、前方から後方に向かうにつれて段階的に細くなっている。そして、図3と同仕様の噴射機筐体2の内部構造を表した図4の透視図を見ると、その外観に対応するように、噴射機筐体2の内径は開口部で最も大きく、その後方である中央近傍で少し小さくなり、最後方で最も細くなっている。
このような内部形状も一例であるため、対象物の種類や大きさ、作業内容等に応じて、噴射機1には様々な仕様を設定することが想定される。しかし、ワークWの広範囲に処理材を効果的に吹き付け、同時に、使用後の処理材を速やかに回収するためには、噴射機筐体2の開口部近傍で内経を大きくし、噴射及び回収のための処理空間Bを拡張した、両図のような形状が一般的な仕様であると思われる。
【0024】
また、噴射機筐体2で排気口を設ける位置については、処理材の効率的な回収のため、多くの場合において、図4の噴射ノズル4先端、即ち噴射口の近傍から、ノズル支持部5の前方までの範囲に位置付けることが多い。
そして、ブラスト処理を行う際には、噴射機1の前方である円形の開口部をワークWに対向させて、最前部のシール部3前端を図2のようにワークWに密着させて噴射機1を使用する。
この時、図4に示した開口部のシール部3で囲い込まれる範囲が処理範囲Aであり、ワークWに当接して密閉された空間となる噴射機筐体2の内部前方が処理空間Bとなる。そして、作業者は、図2のようにして、ワークWの表面上を滑らせるように噴射機1の処理範囲Aを移動させながらブラスト処理を行う。
【0025】
以上のように、噴射機筐体2の基本的形状を表現すると、噴射ノズル4等を格納できるように、その内部に中空の格納空間があり、全体として概ね円筒状の外装部品と言うことができる。
また、必要に応じて噴射機筐体2の一部を下方に突出させて把持部兼処理材の回収経路とすることがあり、その時の噴射機1を側面から眺めた図2のような外観からは、噴射機筐体2はガン型の形状をした外装部品と言うこともできる。
【0026】
また、前述したように、噴射機1を手にした作業者は、シール部3をワークWに押し当てながらブラスト処理を行うものである。この時、作業の対象となるワークWの大きさや種類毎に最適な大きさの開口部や内部形状を有する噴射機1とするなど、ブラスト処理の作業内容等に応じた複数の仕様を設けることで、多様な選択肢の中から最善の噴射機1を適宜に選択できるものとなる。
【0027】
一方で、作業者が容易かつ効率的にブラスト処理を行うためには、噴射機1の小型化や計量化も十分に考慮される必要がある。そのため、これらの二つの観点にも配慮した仕様とすべきであり、噴射機筐体2の素材に関しても、これに適った選択が望まれる。そのため、一般的には硬質で軽量のプラスチック製やアルミニウム製の噴射機筐体2が主流になると思われる。
また、噴射機1の保守管理の利便性という観点からは、噴射機筐体2を単一の部品とするのではなく、複数の部品を組み合わせた構造とし、必要な際には分解修理ができる噴射機筐体2にすることも有用である。
【0028】
シール部3は、作業者が噴射機1をワークWに押し付けて作業を行う際に、噴射機1とワークWを隙間なく密着させて処理材が噴射機1の処理空間B外に漏れ出ることを防ぎ、使用後の処理材を速やかに回収するために周囲のエアを噴射機筐体2内に取り入れる。
これまで見てきた図に示したように、シール部3は噴射機筐体2の開口部の全周を切れ間なく取り巻いて配置される。これについても、作業内容に最適な形状や構造のシール部3を選択可能にする意味と、噴射機1の保守管理の容易化という観点から、このシール部3を必要に応じて噴射機筐体2から取り外して交換できる仕様にすることが考えられる。
【0029】
図1の噴射機1では、シール部3はブラシ状の部品である。
一方、図3のシール部3は、低く薄い円筒状の部品である。
いずれもフィルター機能を有しており、図1のシール部3はブラシ状の隙間から周囲の空気を取り込みつつ、処理材の漏洩を防いでいる。図3のシール部3では、その側面にエアの通気口を複数設けてある。各々の通気口には、微細な粒子状の処理材を通過させずに、内外のエアのみが通過可能なフィルター等が設けられる。例えば、不織布やスポンジのような素材がこのフィルターとしての機能を果たし得る。
更に、図3のような円筒状のシール部3では、ワークWと当接するシール部3の最前端に柔軟で滑りが良い素材を配置する。これにより、シール部3をワークWと更に密着させ易くなり、処理材の漏れを効果的に防止できる。また、ワークWの表面を滑らかに移動させることも可能にする。例えば、その前端に、ブラシ状の部材や内部にエアを充填した細い円形のチューブ状の部材を配する等の工夫である。
【0030】
また、このシール部3は、図5のように自由に着脱して、必要に応じて交換可能な仕様にすることができる。
この図5では、細かい毛を円形に多層的に密集させたブラシ状の部材であり、図1のシール部3と同様のものである。このブラシの先端部がワークWの表面に柔軟に密着して、処理材の漏れを効果的に防ぎつつ、周囲のエアを噴射機筐体2内にスムーズに導入することができる。そして、後方に突出する複数の突起が、噴射機筐体2の開口部に設けられた窪みに嵌合して装着される仕様として図示している。
なお、このような着脱可能なシール部3とすることについては、図3のような円筒状のシール部3に関しても同様である。
【0031】
噴射ノズル4は、気体や液体など流体用の噴射装置である。
図4では、右方に図示された噴射ノズル4の後端にあるエアの導入口から、圧縮された高圧エアを外部から連続的に取り入れて、噴射ノズル4内を流動したエアが前方の噴射口から付勢された状態のままで勢い良く噴射される。
図4では、全体的に細長い棒状として図示しているが、概ね中空の管状部品である。その内外の形状や構造も様々であり得るため、この図4の形状も一例である。
エアに混入されて付勢された処理材が、この噴射ノズル4からワークWの表面に強く連続的に吹き付けられることで、表面研磨等のブラスト処理が行われる。
【0032】
噴射ノズル4の先端側で、処理材の噴射口となる側が細く絞られており、処理材が混入された高圧のエアをワークWの特定箇所に圧力を維持した状態で集中的に噴射できる形状になっている。そして、図4の噴射ノズル4の後方には、高圧エアとこれに混入された処理材を送り込むための送気管8が図示されており、噴射ノズル4の導入口と送気管8の相対する部位には相互に対応する接続手段が設けられている。
この時、後述する処理材送出回収装置6には、処理材を混入した高圧状態のエアの噴射開始、強さ等の調整、噴射停止等を指示するための操作手段が接続され、作業者が処理状況に応じて、これらを適宜に操作しながらブラスト処理を行えるものとなる。
【0033】
この噴射ノズル4は、円筒状の噴射機筐体2の中心を前後に貫くように観念される中心軸と同軸化され、噴射口を開口部に向け、送気管8が接続された導入口を後方に向けた状態で、後述のノズル支持部5によって支持され、噴射機筐体2内に格納されている。
そして、そのような噴射ノズル4の態様を表したものが、図4の透視図であった。
【0034】
ノズル支持部5は、噴射ノズル4を噴射機筐体2と同軸化して支持する部品である。また同時に、付勢されたエアが噴射ノズル4内を勢い良く通過する際の圧力によって、噴射機筐体2内で噴射ノズル4が揺動し得る状態に保っている。
これにより、噴射ノズル4は、その先端側、即ち、ワークWに対向する処理材の噴射口が自律的な旋回運動を行えるように、噴射機筐体2内で支持されている。
ブラスト処理が行われる際、噴射機1のシール部3がワークWに押し付けられて、ワークWの表面を図4に示す処理範囲Aとして囲い込み、噴射機1とワークWとの間に処理空間Bが形成されている。そして、ワークWに対向する噴射ノズル4の先端側が処理空間B内を揺動し、噴射口から処理範囲Aに対して広角的に処理材が噴射される。
【0035】
ノズル支持部5は、このような噴射ノズル4の自律的な揺動、処理空間B内での噴射口の旋回運動を可能としつつ、噴射ノズル4を保持する。なお、ノズル支持部5の保守管理の観点からは、噴射後の処理材がノズル支持部5の自由な運動を妨げないように、ノズル支持部5の前方に処理材を遮蔽する部位や部材を設けることがある。
なお、ノズル支持部5により噴射ノズル4を揺動可能に支持する構造に関しては、噴射ノズル4を揺動軸とし、これにボールベアリングを転動体として組み合わせて構成するピボット玉軸受の構造とする方法などが、その一案として考えられる。
【0036】
図4のノズル支持部5に関しては、その外観が球状のものである。そして、その球状のノズル支持部5に対応して、噴射機筐体2内の一部がこれを包み込むように丸い空洞状の保持部になっている。このような場合、保持部とする噴射機筐体2の内側面には、揺動時の抵抗を低減させて、ノズル支持部5の円滑な動きを可能にする工夫を施す場合がある。ベアリングの組み込みが一例である。
【0037】
図4の噴射機1は、本発明の一形態であるため、ノズル支持部5の形状と、噴射機筐体2内でこれに対応する保持部の形状も、図4に限らず、その他の形態を選択することが考え得る。
しかし、ノズル支持部5と噴射機筐体2を図4のような球状の滑らかな形状の組み合わせとする効果は、複数の部品の組み合わせによる過度に複雑な構成を必要とせずに、非常に簡素な構造で自律的で滑らかな噴射ノズル4の揺動を容易に実現できる利点である。同時に、噴射ノズル4及びノズル支持部5には高い圧力が掛かるが、このような形状の組み合わせによって、ノズル支持部5を噴射機筐体2内に配置する際の安定性も向上するため、噴射機1の保守管理の利便性が向上する点も併せて期待ができる効果の一つである。
【0038】
また、図4の噴射ノズル4は、球状のノズル支持部5の中心近傍を貫くように両者が一体化されたものとして図示されている。そのような噴射ノズル4及びノズル支持部5の内部を、噴射ノズル4の後方にある導入口から前方にある噴射口に向けて付勢された高圧のエアに混入された処理材が勢い良く流動する。このようにして高速で流動するエアの力が球状のノズル支持部5を効果的に揺動させるため、噴射ノズル4は噴射口を広角的に旋回させながらワークWの広範囲に対して処理材を遍く噴射する。
この際に、噴射ノズル4と球状のノズル支持部5との位置関係については、球状のノズル支持部5の真の中心点から僅かに離れた位置を通過するように一体化させても良く、これによってエアの圧力を更に効果的に利用することが可能である。
【0039】
これまで説明してきた噴射機1の構成から、これを用いたブラスト処理の流れと噴射機1の機能については、次のようなものになる。
噴射機1の使用に際し、作業者は、図2のように送気管8と還気管9を噴射機1に接続する。図4において、噴射ノズル4の導入口に接続された送気管8からは、ワークWに対して噴射する処理材が高圧のエアに混入されて連続的に噴射ノズル4に供給される。
一方では、使用済みの処理材を回収するために噴射機筐体2の排気口に接続された還気管9には、ワークWと噴射機筐体2との間に形成された処理空間Bからエアと共に処理材を吸い出して回収するため、負圧による吸引力が効いている。
【0040】
送気管8から噴射ノズル4に連続して供給される処理材は、外部から供給される高圧状態のエアに混入されて付勢された状態になっている。そして、噴射ノズル4の内部を後方の導入口から前方の噴射口に向けて勢い良く流動し続ける。この時に、高圧のエアが高速で流動する際に生じる反力によって、噴射機筐体2内では、ノズル支持部5に支持された噴射ノズル4が、その先端にある噴射口をワークWに対向させながら、旋回するように揺動し続ける。そのため、処理材が混入されたエアがワークWの処理範囲Aに向けて広角かつ広範囲に強力に噴射される。これによって、ワークWの汚れや錆などを効果的に除去することが可能になる。
【0041】
その後、処理空間Bに連続的に噴射される処理材は、使用済みの処理材として順次速やかに回収される必要がある。噴射機筐体2の内部には、還気管9から処理材を回収するための負圧が掛けられており、噴射機筐体2の排気口からエアと共に処理材を外部に排出させる効果がある。これと同時に、処理材が速やかに噴射機筐体2の外部に排出されるように、ワークWに密着したシール部3のブラシの隙間や通気口を通じて、必要量のエアが噴射機1の周辺から噴射機筐体2内の処理空間Bに取り込まれる。これにより、噴射ノズル4からワークWに向けて噴射された処理材は、噴射機筐体2の外部に漏れることがないようにシール部3によって遮蔽され、噴射機筐体2の排気口に接続された還気管9によって噴射機1の外へと運ばれて回収される。
【0042】
次に、この噴射機1を用いてブラスト処理を行う際に、これと併せて使用される処理材送出回収装置6について説明する。
図6は、噴射機1と処理材送出回収装置6とで構成されるブラスト処理装置の全体構成を概略化して図示したものである。
始めに、処理材送出回収装置6の全体的な構成であるが、この処理材送出回収装置6は、これまで説明した噴射機1と共に用いられ、送気管8と還気管9によって噴射機1と接続される。
図6の中央から下方に、大きな四角形で図示したものが処理材送出回収装置6である。
そして、左上に図示した噴射機1に送気管8と還気管9が接続されている。
更に、装置筐体7の内部には、貯留庫10、エア源11、吸引機12、分離機13、回収庫14が格納されている。
【0043】
処理材送出回収装置6のエア源11については、電力で駆動されるコンプレッサや、電力を要しないで使用可能な高圧エアボンベ等を用いる。そして、これに接続された送気管8を通じて、貯留庫10を経由して噴射機1の導入口に接続される。また、高圧状態のエアを噴射機1の噴射口からワークWに対して、そのまま強力な圧力を維持したままの状態で噴射させることが可能な高圧エア送出機能を有している。
ブラスト処理のため、噴射機1を操作してワークWに処理材を吹き付ける際には、貯留庫10に貯蔵された処理材が使用される。そして、処理材をワークWに対して噴射する際には、エア源11から連続的に供給される高圧のエアを利用する。そのために、貯留庫10の処理材が送気管8の高圧エアに混入される。
一方、ワークWに噴射された使用後の処理材は、吸引機12で発生させた吸引力により噴射機1から分離機13に導き込まれる。そして、エアと共に分離機13に導き入れられた処理材は、分離機13でエアとの混合状態から選別されて分離される。処理材を除去した分離処理後のエアは分離機13から装置筐体7の外部に排出され、分離された処理材は回収庫14に送られて貯蔵される。
【0044】
以下、噴射機1の説明と同様に、本発明の処理材送出回収装置6を構成する個別の要素部品について説明する。
装置筐体7は、噴射機筐体2と同じく、処理材送出回収装置6の各構成要素を取り纏めて保護する外装部品である。強度が要求されるため、多くの場合に軽金属や硬質プラスチック等の素材を用いた装置筐体7であり、内部に各部品の格納空間を備える。但し、その素材や形状及び大きさについては適宜に最適なものを選択すれば良い。
なお、本装置は可搬性を一つの利点とし得るため、これを容易にするために、持ち手を備えて運搬可能な大きさとすることで利便性が更に向上する。その一例として、軽量なアルミニウム製アタッシュケースのような装置筐体7とし、これに処理材送出回収装置6の構成要素に加え、噴射機1も併せて格納することを可能とする。そして、使用時には蓋を開けて噴射機1を取り出し、送気管8等に接続して使用する。作業後は噴射機1と送気管8等との接続を解き、それらを格納して蓋を閉め、持ち手を握って容易に運搬できる仕様にすることが可能である。
【0045】
送気管8は、噴射機1の説明でも述べたように、エア源11から連続的に送り込まれる高圧状態のエアに貯留庫10に貯蔵された処理材を混入させて噴射機1に送り込むための経路になる。具体的には、エア源11から貯留庫10を経由して噴射機1に至る中空の長管である。
これについては、説明等の便宜上から、貯留庫10を分岐点として上流又は下流に分けて考えることができる。以下の説明では、エア源11から貯留庫10までを送気管上流部8uとし、貯留庫10から噴射機1の導入口までを送気管下流部8dとする。
【0046】
還気管9は、噴射機1からワークWに対して噴射した後の使用済み処理材をエアと共に吸引し、分離機13で処理材のみに分離して回収庫14まで送るための経路になる。具体的には、噴射機1から分離機13を経由して回収庫14に至る中空の長管である。
これも、送気管8と同様に便宜上の観点から、分離機13を分岐点にして上流又は下流に分けて考えることが可能である。噴射機1の排気口から分離機13までを還気管上流部9uとし、分離機13から回収庫14までを還気管下流部9dとする。但し、還気管下流部9dに関しては、装置筐体7内で分離機13と回収庫14を直接に結ぶものであるため、その長さを短縮化したり、場合によってはこれを省略することがあり得る。
【0047】
なお、図4で図示した送気管8及び還気管9の内径の大きさは一例であるが、エア源11から送出されたエアを高圧状態のままで噴射機1に送り込む送気管8の内径は一般的に細い。これに対して、使用済みの処理材が混入しているエアを効率的に吸引して回収する還気管9は送気管8よりも太い内径であることが多い。
送気管8と還気管9は共にパイプ状の部品であるが、それらは各々に噴射機1の導入口又は排気口との接続手段を備えている。この接続手段としては、ネジ構造やカップリングプラグ等の継手を利用して必要な時に容易かつ速やかに接続や解除が可能なものとする。これは噴射機1の使い易さを向上させるため、噴射機1と処理材送出回収装置6の送気管8等との間に延長用の配管部品を介在させたり、メンテナンス時にこれらを自在に分離し易くするためである。
【0048】
また、作業者が噴射機1を自由に操作し易いように、特に送気管8や還気管9の噴射機1側、即ち、作業者が噴射機1を手にする側となる送気管下流部8d及び還気管上流部9uにおいては可撓性を備える素材を選択する。
なお、図6に図示した他の配管部材として、エア源11から吸引機12に繋がる取込管15がある。これは、後ほど吸引機12の説明を行う際に、エア源11と吸引機12の協働によって負圧を発生させるため、吸引機12がエア源11から高圧エアを取り込む経路になるものである。
【0049】
貯留庫10は、ブラスト処理に使用する前の処理材を蓄えて保管する容器である。処理材が意図に反して漏れ出さないように密閉性が高く、内部が中空となった保存庫である。
送気管8を介してエア源11及び噴射機1の導入口に接続される。また、送気管8内を噴射機1に向けて流動するエアに、内部に貯蔵する処理材を混入する処理材混入機能を有している。そのため、エア源11から高圧で送出された圧縮エアを取り込む入口と、貯蔵する処理材をこれに適量混入させて噴射機1に送り出すため、送気管8に繋がる出口を備えている。
【0050】
これに用いる素材の選択は、プラスチックや金属など適宜に判断されるものだが、処理材の残量やエアへの混入状態を確認するため、その全部又は一部を透明なものとし、処理材送出回収装置6の装置筐体7の外から容易に確認が可能なものにしても良い。
また、処理材混入機能を実現する装置に関しては、ホッパ状の貯留庫10とし、前述したエアの入口と出口を集約化した混合器とし、これの内部を高速で流動して通過するエアに処理材を連続的に投入して混入させることも考えられる。
更には、貯留庫10やこれに接続される送気管8等には、安全管理のための圧力計、減圧や排気のための弁装置等を適宜に設けても良い。
【0051】
エア源11は、圧縮されて加圧された高圧状態のエアを、これに繋がる送気管8を通じて貯留庫10に送出する。そして、貯留庫10において処理材が混入されたエアは噴射機1まで至り、ワークWに勢い良く吹き付けられてブラスト処理が行われる。従って、このエア源11は、高圧のエアを送気管8から噴射機1まで付勢された状態のまま送り込むことが可能な高圧エア送出機能を有している。
前述したように、電力で駆動され、外部から導入したエアを圧縮して排出するコンプレッサや、電力を要せずに予め圧縮済みのエアを保管する高圧エアボンベ等の利用が考えられる。
エア源11がコンプレッサである場合、このブラスト処理装置を使用する作業者は、エア源11を始動又は停止させるスイッチを適時に操作しながらブラスト処理を行う。このような操作用スイッチは、処理材送出回収装置6の装置筐体7上に配置しても良いし、エア源11に接続されて装置筐体7外に配置される足踏式フットスイッチ等であっても良い。これは、エアボンベを使用する場合も同様である。
【0052】
また、エア源11や貯留庫10に繋がる送気管8には、必要に応じて、安全を保持するための弁装置を設けることがある。更に、エア源11から、粒子状の処理材が貯蔵される貯留庫10に向けて高圧エアを送り出すに際し、エアに含有される可能性がある水分を除去して乾燥状態にするため、ミストセパレータなどを配置することがある。
【0053】
吸引機12は、噴射機1の排気口に還気管9を介して接続される分離機13に繋がっている。そして、ブラスト処理で使用された後の処理材を噴射機筐体2から分離機13に引き込むための吸引力を分離機13に付与する負圧発生機能を備えている。
この吸引機12としては、外部電源や内蔵バッテリーから供給される電力で駆動されるエアバキュームポンプ等を使用することができる。また、電力供給に依存しない自立型の吸引機12としては、エア源11から供給される圧縮済みで管内を高速流動するエアにより、真空状態を発生させて負圧を生み出す真空発生機を用いることができる。
【0054】
本発明において、エア源11から送出される高圧エアによって真空発生機で負圧を生み出し、これを分離機13の吸引力にする仕様は、エネルギーの有効活用という利点の他にも、ブラスト処理装置の可搬性を向上させる意味において非常に有効なものと考える。
この真空発生機の基本的構成、そして、エア源11と吸引機12の協働は、次のようなものである。
【0055】
図6に図示したように、エア源11と真空発生機である吸引機12とが取込管15で結ばれている。そして、吸引機12には、この取込管15を通じてエア源11が送出するエアを取り入れる取込口12aがある。また、分離機13内からエアを吸い出す吸出管16が繋がる吸出口12bがあり、更に、取込口12aから取り込んだエアと、分離機13から吸い出したエアを吸引機12外に排出する排出口12cがある。
この時、ノズルとディフューザの組み合わせにより、取込口12aから取り込まれたエアはノズルで絞られて流動速度を増加させてディフューザに流入する。そして、吸出管16により分離機13内から吸い出されたエアを巻き込みながら、排出口12cの外部に排出される。
このようにして、真空発生機により、分離機13内のエアが吸い出されて負圧が生じ、噴射機1からエアとこれに混入された処理材を分離機13に引き込むための吸引力が発生する。
【0056】
分離機13は、図6のように、噴射機1に接続されて使用済みの処理材をエアと共に回収する還気管上流部9u、エアから分離した処理材を貯蔵する回収庫14に繋がる還気管下流部9d、吸引機12に負圧を生じさせる吸出管16の3種の配管と接続されている。
分離機13は、還気管9により上流側で噴射機1の排気口に、下流側で回収庫14に接続されている。そして、負圧による吸引力で自己の内部に噴射機1からエアを導入し、これに混入している粒子をエアから分離する分離機能を有している。
この分離機13は、サイクロン式の集塵装置を用いることが可能である。そして、還気管上流部9uを通り分離機13に導かれた処理材を含有するエアは、分離機13の円筒状の内壁を接線方向に高速旋回するように取り込まれる。その旋回時の遠心力でエア中の処理材が分離され、エアのみが分離機13外に排出される構造になっている。また、分離された処理材は還気管下流部9dを通って回収庫14に送られる。
【0057】
噴射機1でワークWの表面処理を行うブラスト処理に使用された後、分離機13でエアから分離された処理材は、最終的に回収庫14に貯蔵されて回収される。
回収庫14は内部が空洞のタンク状であり、必要に応じて、回収時に処理材と共に取り込まれる余剰のエアを外部に排出する弁装置等が設けられる。
貯蔵された処理材を取り出すために、その取出口が設けられ、又は、還気管9から必要に応じて容易に分離可能なものとされ、処理材が回収庫14から取り出される。
また、貯留庫10と同じく、その全部又は一部を透明なものとし、処理材送出回収装置6の装置筐体7の外から、処理材の量を容易に確認できるものにしても良い。
【0058】
処理材送出回収装置6がこのような構成を有することから、処理材送出回収装置6の機能、そして、噴射機1と処理材送出回収装置6を使用したブラスト処理の流れは、次のようなものとなる。
噴射機1は、送気管8と還気管9によって処理材送出回収装置6に接続される。この時、処理材送出回収装置6において、噴射機1の機能を実現するために働く機器は、送気管8と還気管9の他に次のようなものがあった。
使用前の処理材を貯蔵する貯留庫10があり、貯留庫10内の処理材を高圧のエアに混入させて噴射機1から噴射させるため、エア源11が噴射機1まで高圧のエアを送り込む。この貯留庫10とエア源11における協働が処理材送出回収装置6における前半の工程である。
一方、噴射機1内の使用済み処理材を分離機13に引き込むための吸引力を発生させる吸引機12、引き込んだエアから処理材を分離する分離機13、分離した処理材を保管する回収庫14の協働によって、処理材送出回収装置6における後半の工程が終了する。
なお、これらの前後半の両工程は連続的に行われるものであり、噴射機1によるブラスト処理はこれと同時進行的なものである。
【0059】
噴射機1の機能の詳細については前述したとおりだが、このブラスト処理装置においては、処理材送出回収装置6のエア源11から送気管上流部8uを通じて高圧状態で送出されるエアに対し、貯留庫10内の処理材が混入される。そして、処理材が混入されたエアは送気管下流部8dを通り、高圧状態を維持したままで噴射機1に送り込まれる。
前述のとおり、噴射機1では、高圧エアによって生み出される力でノズル支持部5と共に揺動する噴射ノズル4から、ワークWに向けて広角に処理材が噴射されてブラスト処理が実行される。作業者は噴射機1を適宜に操作してワークWの広範囲をブラスト処理することが可能である。
【0060】
この時、噴射機1と処理材送出回収装置6は、共に可搬性が高く、ワークWを被覆するカバー等を必要としないので、金型を射出成形機から取り外すことなく、作業者は容易にブラスト処理を行うことができる。
使用後の処理材は、噴射機1から処理材送出回収装置6によって自動的に回収される。この時、噴射機1では、処理材を効率的に回収するためにシール部3から周囲のエアを取り込みながらも、処理材の漏洩が防がれている。
【0061】
処理材送出回収装置6により、噴射機筐体2の排気口に接続された還気管9により噴射機1から回収される使用済み処理材は、吸引機12で生み出される吸引力によって分離機13に引き込まれる。そして、分離機13は、処理材が混合されたエアから処理材のみを分離して回収庫14に送り込むと同時に、分離後のエアを外部に放出する。
【0062】
なお、本発明のブラスト処理装置における処理材の回収率について、次のような方法による実証試験を実施した。
始めに貯留庫10に一定量(例えば、1kg等)の処理材を投入する。その後、ワークWに処理材を噴射して、実際にブラスト処理を行う。この時に、噴射機1から噴射される処理材は、同時並行的に処理材送出回収装置6の回収庫14に回収される。そして、ブラスト処理の終了後、貯留庫10内の残量を計測して処理材の使用量を把握し、同時に、回収庫14内の回収量を計測し、これらの数値を比較した。
このような実証試験を繰り返したところ、噴射機1及び処理材送出回収装置6による使用済み処理材の平均回収率は96.9%と概ね良好であり、当初に想定した回収効果を確実に得ることができた。
【符号の説明】
【0063】
1 噴射機
2 噴射機筐体
3 シール部
4 噴射ノズル
5 ノズル支持部
6 処理材送出回収装置
7 装置筐体
8 送気管
8u 送気管上流部
8d 送気管下流部
9 還気管
9u 還気管上流部
9d 還気管下流部
10 貯留庫
11 エア源
12 吸引機
12a 取込口
12b 吸出口
12c 排出口
13 分離機
14 回収庫
15 取込管
16 吸出管
A 処理範囲
B 処理空間
W ワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6