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  • 特開-脱臭装置 図1
  • 特開-脱臭装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170799
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】脱臭装置
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/015 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
A61L9/015
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082834
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000102212
【氏名又は名称】ウシオ電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】内藤 敬祐
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180BB02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB08
4C180CA01
4C180CC02
4C180CC15
4C180EA17X
4C180EA35X
4C180HH05
4C180HH11
4C180HH17
(57)【要約】
【課題】密閉空間においても人体及び微生物の健康・生育に悪影響を及ぼすことなく、強い脱臭効果を得ることができる脱臭装置を提供する。
【解決手段】脱臭装置は、空気を通流させる第一通流路と、第一通流路に収容され、第一通流路内を通流する空気に対して、主たる発光波長が150nm以上200nm以下の範囲内に属する紫外光を出射する紫外光源と、第一通流路に接続され、紫外光が出射されることで生成されたオゾン含有ガスを通流させる第二通流路と、第二通流路内に充填され、オゾンを分解する触媒部材とを備え、第二通流路の第一通流路との接続口の面積は、第一通流路の断面積以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を通流させる第一通流路と、
前記第一通流路に収容され、前記第一通流路内を通流する前記空気に対して、主たる発光波長が150nm以上200nm以下の範囲内に属する紫外光を出射する紫外光源と、
前記第一通流路に接続され、前記紫外光が出射されることで生成されたオゾン含有ガスを通流させる第二通流路と、
前記第二通流路内に充填され、オゾンを分解する触媒部材とを備え、
前記第二通流路の前記第一通流路との接続口の面積は、前記第一通流路の断面積以下である、脱臭装置。
【請求項2】
前記第二通流路の流れ方向に沿った前記触媒部材の長さは、前記流れ方向に直交する断面における前記触媒部材の最大長さよりも長い、請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項3】
前記紫外光源は、エキシマランプである、請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項4】
前記第二通流路は、前記触媒部材よりも下流側に気流発生部を備える、請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項5】
前記気流発生部は、シロッコファン又は排気ポンプである、請求項4に記載の脱臭装置。
【請求項6】
前記触媒部材は、オゾンを分解する触媒を担持させたフィルターである、請求項1に記載の脱臭装置。
【請求項7】
前記フィルターは、ペレット状である、請求項6に記載の脱臭装置。
【請求項8】
前記第一通流路は、流速0.4m/s以上で前記空気を流入させる空気流入口を備える、請求項1に記載の脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱臭装置に関し、特に、オゾンを利用した脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臭気の脱臭のためにオゾン(O)が用いられるが、0.1ppm以上のオゾンは人体に有害なため、点滅制御やセンシング、ドアロックなどによるインターロックなど様々な工夫が必要なことが知られている。しかし、0.1ppm未満のオゾンであっても、臭気に敏感な人、体調がすぐれない人には悪影響を与えるリスクがある。さらにインキュベータや麹室のように菌を培養するような場所では、0.1ppm未満のオゾンであっても菌の発育に悪影響を及ぼす。
【0003】
そこで、オゾンとオゾン分解機構を備え、オゾンを外に排出せず、内部で臭気とオゾンを処理してしまう脱臭システムも知られている。しかし、オゾンを除去するフィルターに活性炭を用いると微粉末や燃焼の危険性があり、金属酸化物系の触媒を用いると気相中の有機物が触媒上で変質し、異臭を放つといった問題があった(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3918231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、放電によりオゾンを生成する放電式オゾナイザも知られているが、放電式オゾナイザからOとともに生成するNOにより触媒が変質し短寿命化する、菌の発育に悪影響を及ぼす、内装材を腐食させる、等という問題があった。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑み、密閉空間においても人体及び微生物の健康・生育に悪影響を及ぼすことなく、強い脱臭効果を得ることができる脱臭装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る脱臭装置は、空気を通流させる第一通流路と、
前記第一通流路に収容され、前記第一通流路内を通流する前記空気に対して、主たる発光波長が150nm以上200nm以下の範囲内に属する紫外光を出射する紫外光源と、
前記第一通流路に接続され、前記紫外光が出射されることで生成されたオゾン含有ガスを通流させる第二通流路と、
前記第二通流路内に充填され、オゾンを分解する触媒部材とを備え、
前記第二通流路の前記第一通流路との接続口の面積は、前記第一通流路の断面積以下である。
【0008】
この構成によれば、空気に対して紫外光が照射された際に、第一通流路内でNOxが生成されないため、密閉空間においても人体及び微生物の健康・生育に悪影響を及ぼすことがない。また、第二通流路の接続口の面積を第一通流路の断面積以下とすることで、触媒部材での圧損が大きくなり、第一通流部内を通流する空気の風量が制限されるため、第一通流路における悪臭物質のワンパス除去率を向上させて強い脱臭効果を得ることができる。
【0009】
本発明に係る脱臭装置において、前記第二通流路の流れ方向に沿った前記触媒部材の長さは、前記流れ方向に直交する断面における前記触媒部材の最大長さよりも長い、という構成でもよい。
【0010】
触媒部材の形状を、断面が小さく、かつ第二通流路の流れ方向に長尺な形状とすることで、残留有機物が触媒部材に付着した場合にオゾン含有ガスへの揮発を促し、残留有機物が触媒部材にて酸化することを抑制でき、ひいては触媒部材におけるオゾンと触媒との過熱を抑制できる。
【0011】
本発明に係る脱臭装置において、前記紫外光源は、エキシマランプである、という構成でもよい。
【0012】
この構成によれば、空気に対して紫外光が照射された際に、第一通流路内でNOxが生成されないため、密閉空間においても人体及び微生物の健康・生育に悪影響を及ぼすことがない。
【0013】
本発明に係る脱臭装置において、前記第二通流路は、前記触媒部材よりも下流側に気流発生部を備える、という構成でもよい。
【0014】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記気流発生部は、シロッコファン又は排気ポンプである、という構成でもよい。
【0015】
触媒部材よりも下流側に気流発生部(例えばシロッコファン又は排気ポンプ)を設けることで、オゾン含有ガスの線速度を速めることができる。また、気流発生部を設けることで、触媒部材を通過した排気を効率よく脱臭装置の外へ排出できる。
【0016】
本発明に係る脱臭装置において、前記触媒部材は、オゾンを分解する触媒を担持させたフィルターである、という構成でもよい。
【0017】
この構成によれば、活性炭を用いたフィルターに比べて、オゾンの分解効率が高く、また長期間性能を維持することができる。
【0018】
また、本発明に係る脱臭装置において、前記フィルターは、ペレット状である、という構成でもよい。
【0019】
この構成によれば、ハニカム構造のフィルターに比べて、形状の自由度が高く、狭空間への対応も可能となる。
【0020】
本発明に係る脱臭装置において、前記第一通流路は、流速0.4m/s以上で前記空気を流入させる空気流入口を備える、という構成でもよい。
【0021】
この構成によれば、空気流入口からの空気の逆流を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の脱臭装置の一実施形態を模式的に示す側面面である。
図2図1の脱臭装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る脱臭装置の各実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比と実際の寸法比は必ずしも一致していない。また、各図面間においても、寸法比は必ずしも一致していない。
【0024】
図1は、脱臭装置1の一実施形態を模式的に示す側面図である。図2は、図1の脱臭装置1の断面図である。脱臭装置1は、悪臭物質を含む空気をオゾンによって脱臭する装置である。
【0025】
脱臭装置1は、本体部11と、本体部11に接続された触媒部12とで構成されている。また、脱臭装置1は、第一通流路2と、第一通流路2に収容される紫外光源3と、第一通流路2に接続される第二通流路4と、第二通流路4内に充填される触媒部材5とを備えている。
【0026】
本体部11は、略直方体状を呈しており、内部に第一通流路2が形成されている。第一通流路2は、矩形状断面を有しており、空気G0を通流させる。第一通流路2は、空気G0を流入させるための空気流入口21を備える。空気流入口21は矩形状を呈している。空気流入口21から流入された空気G0は、第一通流路2内を第二通流路4へ向かって通流する。以下の説明においては、図1及び図2に示すように、空気流入口21から第二通流路4に向かう方向をX方向とし、これに直交する面をYZ平面として説明する。
【0027】
空気流入口21の面積は、第一通流路2の断面積よりも小さくなっている。従来、効率的に空気G0を取り込んで処理するようにするため、空気流入口21の面積を大きくする傾向にあったが、反対に本発明では空気流入口21の面積を小さくしている。第一通流路2への空気G0の流入量を制限することで、第一通流路2におけるワンパス除去率を向上させて強い脱臭効果を得ることができ、さらに触媒部材5への残留有機物(後述する)の付着量を低減することができる。また、空気流入口21の面積を小さくすることで、空気流入口21での空気G0の風速が速まり、さらに紫外光L(後述する)の漏洩が少なくなるため、脱臭装置1の外へのオゾン漏洩リスクを低減できる。
【0028】
本実施形態の空気流入口21は、矩形状をしているが、空気流入口21の形状はこれに限定されない。例えば、空気流入口21は円形や楕円形等でもよい。ただし、空気流入口21の形状及びサイズは、空気流入口21から流入される空気G0の流速が0.4m/s以上となるように設定されるのが好ましい。流速を0.4m/s以上とすることで空気G0の逆流を防ぐことができる。
【0029】
紫外光源3は、例えば、合成石英ガラスで形成された円筒状の管体内に放電用ガスが充填されたエキシマランプであり、管軸がX方向に沿うように配置されている。
【0030】
エキシマランプである紫外光源3は、対向する一対の電極(図示していない)が形成されており、電極間に電圧を印加すると主たる発光波長が150nm以上200nm以下の範囲内に属する紫外光Lを出射する。ここでの「主たる発光波長」とは、紫外光源3の発光スペクトル上で、ある波長λに対して±10nmの波長域Z(λ)を規定した場合において、発光スペクトルにおける全積分強度に対して40%以上の積分強度を示す波長域Z(λi)における、波長λiを指す。放電用ガスの材料によって、紫外光源3から出射される紫外光Lの波長が決定される。放電用ガスとして、キセノン(Xe)を含むガスを用いた場合には、出射される紫外光Lは、主たる発光波長が172nmの紫外光Lとなる。
【0031】
紫外光Lは、紫外光源3の外周面から外側に向かって取り出される。この紫外光Lが、第一通流路2内を通流する空気G0に対して照射される。
【0032】
紫外光源3から出射された波長λの紫外光Lが、第一通流路2内を第二通流路4に向かって通流する空気G0に対して照射されると、紫外光Lが酸素(O)に吸収されて、下記(1)式の反応が進行する。(1)式に置いて、hν(λ)は、波長λの光が吸収されることを意味する。
【0033】
+ hν(λ) → ・O + ・O ‥‥(1)
(1)式によって生成された酸素ラジカル(・O)は、周囲の酸素分子と反応し、下記(2)式によってオゾン(O)を生成する。(2)式中のMは、反応の第三体を示す。
【0034】
・O + O+ M → O + M ‥‥(2)
【0035】
空気G0には、悪臭物質、例えば、アセトアルデヒド、アンモニア、メチルメルカプタン、硫化水素、硫化メチル、プロピオン酸、イソ吉草酸、ブチルアルデヒドなどの有機物が含まれている。これらの悪臭物質は、例えば、悪臭防止法にて特定悪臭物質として制定されている。そして、オゾンが空気G0中の有機物と反応することで、空気G0に対して脱臭を行う。
【0036】
この結果、空気流入口21より第一通流路2内に流入された空気G0は、オゾンを含む空気(以下、「オゾン含有ガスG1」と称する。)に変化して、第二通流路4へ流れる。なお、オゾン含有ガスG1には、少量の有機物が残留することがあり、このオゾン含有ガスG1に残留する有機物を本明細書では「残留有機物」とも称する。
【0037】
紫外光源3は、第一通流路2内に配置されているため、空気G0に対して紫外光Lを効果的に照射することができる。これにより、紫外光Lによる有機物の分解量を増大させることができ、触媒部材5への残留有機物の付着量を低減することができる。なお、紫外光源3は、第一通流路2の中央に配置されているが、これに限定されない。また、紫外光源3は、第一通流路2内に複数本配置されていてもよい。
【0038】
主たる発光波長が150nm以上200nm以下の範囲内に属する紫外光Lを空気G0に照射した場合、空気G0中の酸素には吸収される一方で、空気G0中の窒素には吸収されない。そのため、空気G0に対して紫外光Lが照射された際に、第一通流路2内で生成されるNOxの量は実質的にゼロである。その結果、NOxによって、触媒部材5が変質して短寿命化したり、菌の発育に悪影響を及ぼしたり、内装材を腐食させたりするという問題を防ぐことができる。
【0039】
触媒部12は、X方向に延びる円柱状を呈しており、内部に第二通流路4が形成されている。第二通流路4は、円形状断面を有しており、オゾン含有ガスG1を通流させる。
【0040】
第二通流路4の内部には、触媒部材5が充填されている。触媒部材5は、オゾン含有ガスG1に含まれるオゾンを分解するものである。触媒部材5は、オゾンを分解する触媒を担持させたフィルターである。このフィルターは、ハニカム構造であってもよいが、ペレット状であるのが好ましい。また、ペレットはマンガン、特に二酸化マンガンを含むことが好ましい。
【0041】
触媒部材5のX方向の長さ5xは、X方向に直交する断面(YZ平面に平行な断面)における触媒部材5の最大長さ5yよりも長いことが好ましい。すなわち、触媒部材5は、第二通流路4の流れ方向(X方向)に長尺な形状であることが好ましい。本実施形態では、X方向に直交する断面における触媒部材5の最大長さ5yは、第二通流路4の内径と同じである。触媒部材5の形状を、断面が小さく、かつ第二通流路4の流れ方向に長尺な形状とすることで、残留有機物が触媒部材5に付着した場合にオゾン含有ガスG1への揮発を促し、残留有機物が触媒部材5にて酸化することを抑制でき、ひいては触媒部材5におけるオゾンと触媒との過熱を抑制できる。
【0042】
第二通流路4の第一通流路2との接続口4aの面積は、第一通流路2の断面積以下である。好ましくは、第二通流路4の第一通流路2との接続口4aの面積は、第一通流路2の断面積より小さい。従来、第二通流路4に充填される触媒を効率的に利用するため、第二通流路4の接続口4aを広げてオゾン含有ガスG1の線速度を遅くする傾向にあったが、反対に本発明では第二通流路4の接続口4aを狭くしている。第二通流路4の接続口4aの面積を第一通流路2の断面積以下とすることで、触媒部材5での圧損が大きくなり、第一通流路2内を通流する空気G0の風量が制限されるため、第一通流路2におけるワンパス除去率を向上させて強い脱臭効果を得ることができ、さらに触媒部材5への残留有機物の付着量を低減することができる。また、オゾン含有ガスG1の線速度が速いことで、付着した残留有機物が再揮発する速度が向上し、全体的な残留有機物の付着量を低減することができる。
【0043】
第二通流路4は、触媒部材5よりも下流側に気流発生部6を備えている。気流発生部6は、例えばシロッコファン又は排気ポンプであり、図2では気流発生部6の一例としてシロッコファンを模式的に示している。触媒部材5よりも下流側に気流発生部6を設けることで、オゾン含有ガスG1の線速度を速めることができる。また、気流発生部6を設けることで、触媒部材5を通過した排気G2を効率よく脱臭装置1の外へ排出できる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0045】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上記した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【0046】
<他の実施形態>
上記の実施形態において、第一通流路2は、矩形状断面を有しているが、これに限定されない。第一通流路2は、例えば円形状断面を有していてもよい。また、上記の実施形態において、第二通流路4は、円形状断面を有しているが、これに限定されない。第二通流路4は、例えば矩形状断面を有していてもよい。このとき、YZ平面に平行な断面における触媒部材5の最大長さ5yは、第二通流路4の矩形状断面の対角線の長さと同じである。
【符号の説明】
【0047】
1 :脱臭装置
2 :第一通流路
3 :紫外光源
4 :第二通流路
4a :接続口
5 :触媒部材
6 :気流発生部
11 :本体部
12 :触媒部
21 :空気流入口
G0 :空気
G1 :オゾン含有ガス
G2 :排気
L :紫外光
図1
図2