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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170811
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】錠剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20231124BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 31/192 20060101ALI20231124BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20231124BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
A61K9/20
A61P29/00
A61K31/192
A61K47/38
B01J2/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082851
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】松木 誠司
(72)【発明者】
【氏名】田畑 里奈
(72)【発明者】
【氏名】志波 徹朗
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
4G004
【Fターム(参考)】
4C076BB01
4C076CC05
4C076EE32
4C076EE32B
4C076FF05
4C076FF06
4C076FF33
4C076GG04
4C076GG12
4C076GG14
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA24
4C206KA01
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA05
4C206NA11
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
4G004AA03
(57)【要約】
【課題】経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された、酸性の水難溶性薬物を含有する錠剤を生産性よく製造する方法の提供。
【解決手段】酸性の水難溶性薬物(A)を含有する錠剤の製造方法であって、前記酸性の水難溶性薬物(A)を含有する粉体組成物を混合する混合工程と、圧縮造粒装置(Y)を用いて、前記混合工程において混合された前記粉体組成物を圧縮造粒し、造粒顆粒を得る圧縮造粒工程と、を有し、前記圧縮造粒装置(Y)が、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置又はブリケット型圧縮造粒装置であり、前記圧縮造粒工程の前に前記混合工程を2回以上行い、1回目の混合工程で前記粉体組成物の一部又は全部を混合し、少なくとも前記圧縮造粒工程の直前の混合工程で前記粉体組成物の全部を混合する、錠剤の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性の水難溶性薬物(A)を含有する錠剤の製造方法であって、
前記酸性の水難溶性薬物(A)を含有する粉体組成物を混合する混合工程と、
圧縮造粒装置(Y)を用いて、前記混合工程において混合された前記粉体組成物を圧縮造粒し、造粒顆粒を得る圧縮造粒工程と、
を有し、
前記圧縮造粒装置(Y)が、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置又はブリケット型圧縮造粒装置であり、
前記圧縮造粒工程の前に前記混合工程を2回以上行い、1回目の混合工程で前記粉体組成物の一部又は全部を混合し、少なくとも前記圧縮造粒工程の直前の混合工程で前記粉体組成物の全部を混合する、錠剤の製造方法。
【請求項2】
1回目の混合工程において混合された前記粉体組成物を2回目以降の混合工程でさらに混合する、請求項1に記載の錠剤の製造方法。
【請求項3】
前記混合工程は、撹拌混合機又は容器回転型混合機を用いて前記粉体組成物を混合する工程である、請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項4】
前記酸性の水難溶性薬物(A)が、イブプロフェンである、請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項5】
前記造粒顆粒中に、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)の少なくとも一方を含有する、請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
【請求項6】
前記圧縮造粒工程の後に、前記造粒顆粒中の粒子径が250μm以下である粒子の含有割合が30質量%未満となるように、前記造粒顆粒を篩過する篩過工程をさらに有する、請求項1又は2に記載の錠剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イブプロフェン等のプロピオン酸系非ステロイド抗炎症剤(NSAIDs)は、優れた消炎、鎮痛及び解熱作用を有し、副作用が比較的少ないことから鎮痛・解熱剤及び感冒薬の成分として広く使用されている。NSAIDs等の薬物を含有する錠剤が速やかに薬効を発揮するためには、胃内で錠剤が速やかに崩壊し、その後、有効成分が速やかに溶出(溶解)することが求められる。
しかし、イブプロフェンのような酸性の水難溶性薬物は、疎水性が高く錠剤内部への水の浸透を妨げやすいため、錠剤の崩壊性に課題があり、その結果、有効成分の溶出(溶解)が進行しにくく、速効性を十分に発揮しにくいという問題がある。
【0003】
そこで、酸性の水難溶性薬物を含有する錠剤の崩壊性、溶出性に関する課題を解決する方法が検討されている。
例えば特許文献1には、難溶性医薬品に、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース等を配合して得られた難溶性医薬品配合物を流動層造粒法により造粒した圧縮成型物が開示されている。特許文献1によれば、スプレードライ法やその他湿式造粒法により造粒した圧縮成型物に比べて、優れた崩壊性、吸収性を発現できるとしている。
【0004】
しかし、イブプロフェンの場合、ヒドロキシプロピルセルロース等の汎用の結合剤を含む溶液を用いて流動層造粒や他の湿式造粒を行うと、造粒粒子の溶出性は向上するものの、その前段階である錠剤の崩壊性が著しく低下し、速効性が発揮しにくくなる場合がある。また、流動層造粒法は加水工程及び乾燥工程が必要であり、製造工程数が多く複雑になるため、生産効率の点で課題がある。
【0005】
ローラーコンパクター型、ブリケット型に代表される圧縮造粒装置を用いた圧縮造粒法は、加水工程及び乾燥工程を省略できるため生産性が高い造粒方法であり、有効成分の含量均一性確保、打錠障害を改善するため、錠剤の製造においても汎用されている。
例えば特許文献2には、イブプロフェンと、ショ糖脂肪酸エステルと、軽質無水ケイ酸等の滑沢剤と、結晶セルロース等の賦形剤と、崩壊剤とを含む混合物を圧縮造粒した後に打錠して錠剤を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭56-110612号公報
【特許文献2】特開2016-53079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、イブプロフェンを圧縮造粒した場合、経時による崩壊時間のばらつきが大きくなりやすく、また、経時に伴う崩壊性の低下(崩壊遅延)が生じることもある。
このように、崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された、酸性の水難溶性薬物を含有する錠剤を生産性よく製造することは困難である。
【0008】
本発明は、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された、酸性の水難溶性薬物を含有する錠剤を生産性よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、圧縮造粒装置に備わるロール圧縮部(1対のロールの間)を通過する造粒前の粉体の密度が不均一であることが、経時による崩壊時間のばらつきや崩壊遅延の原因となることを突き止めた。そこで、圧縮造粒工程の前に、酸性の水難溶性薬物を含有する粉体組成物を2回以上混合することで、ロール圧縮部を通過する粉体の密度が均一となり、経時による崩壊時間のばらつきと崩壊遅延を改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1] 酸性の水難溶性薬物(A)を含有する錠剤の製造方法であって、
前記酸性の水難溶性薬物(A)を含有する粉体組成物を混合する混合工程と、
圧縮造粒装置(Y)を用いて、前記混合工程において混合された前記粉体組成物を圧縮造粒し、造粒顆粒を得る圧縮造粒工程と、
を有し、
前記圧縮造粒装置(Y)が、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置又はブリケット型圧縮造粒装置であり、
前記圧縮造粒工程の前に前記混合工程を2回以上行い、1回目の混合工程で前記粉体組成物の一部又は全部を混合し、少なくとも前記圧縮造粒工程の直前の混合工程で前記粉体組成物の全部を混合する、錠剤の製造方法。
[2] 1回目の混合工程において混合された前記粉体組成物を2回目以降の混合工程でさらに混合する、前記[1]の錠剤の製造方法。
[3] 前記混合工程は、撹拌混合機又は容器回転型混合機を用いて前記粉体組成物を混合する工程である、前記[1]又は[2]の錠剤の製造方法。
[4] 前記酸性の水難溶性薬物(A)が、イブプロフェンである、前記[1]~[3]のいずれかの錠剤の製造方法。
[5] 前記造粒顆粒中に、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)の少なくとも一方を含有する、前記[1]~[4]のいずれかの錠剤の製造方法。
[6] 前記圧縮造粒工程の後に、前記造粒顆粒中の粒子径が250μm以下である粒子の含有割合が30質量%未満となるように、前記造粒顆粒を篩過する篩過工程をさらに有する、前記[1]~[5]のいずれかの錠剤の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された、酸性の水難溶性薬物を含有する錠剤を生産性よく製造する方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の錠剤の製造方法は、酸性の水難溶性薬物(A)を含有する錠剤を製造する方法であり、詳しくは後述するが、混合工程と圧縮造粒工程とを有する。
錠剤は、例えば後述の混合工程と圧縮造粒工程とを経て得られる、酸性の水難溶性薬物(A)を含む造粒顆粒(以下、「造粒顆粒(G)」ともいう。)を打錠して得られる。
造粒顆粒(G)は、少なくとも酸性の水難溶性薬物(A)を含むが、酸性の水難溶性薬物(A)以外の成分(任意成分)を含んでいてもよい。例えば、造粒顆粒(G)は、酸性の水難溶性薬物(A)に加えて、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)の少なくとも一方を含有することが好ましい。また、造粒顆粒(G)は、本発明の効果等を損なわない範囲内であれば、必要に応じて、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)以外の任意成分(以下、「任意成分(M)」ともいう。)をさらに含有していてもよい。すなわち、錠剤は、酸性の水難溶性薬物(A)に加えて任意成分を含んでいてもよく、例えば、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)の少なくとも一方を含有することが好ましい。また、錠剤は、任意成分(M)をさらに含有していてもよい。
なお、以下の明細書において、造粒顆粒(G)に含まれる酸性の水難溶性薬物(A)を特に「(A)成分」ともいう。造粒顆粒(G)が崩壊剤(B)をさらに含有する場合、造粒顆粒(G)に含まれる崩壊剤(B)を特に「(B)成分」ともいう。造粒顆粒(G)が水溶性高分子(C)をさらに含有する場合、造粒顆粒(G)に含まれる水溶性高分子(C)を特に「(C)成分」ともいう。崩壊剤(B)、水溶性高分子(C)及び任意成分(M)のそれぞれは、造粒顆粒(G)として錠剤中に含有されていてもよいし、造粒顆粒(G)以外として錠剤中に含有されていてもよい。
【0013】
<酸性の水難溶性薬物(A)>
本発明において「酸性」とは、25℃におけるpKaが7以下をいう。また、水素イオンを複数放出し、複数のpKa値を有するものについては、最も低い値のpKaが7以下をいう。
また、本発明において「水難溶性薬物」とは、20℃の水に対する溶解度が0~10mg/mLであり、好ましくは0~8mg/mLであり、より好ましくは0~6mg/mLであり、さらに好ましくは0~4mg/mLである薬物をいう。溶解度の測定は、第十八改正日本薬局方に準じた試験により行われる。
【0014】
酸性の水難溶性薬物(A)としては、例えばイブプロフェン(溶解度0.19mg/mL)、ナプロキセン(溶解度0.04mg/mL)、ケトプロフェン(溶解度0.24mg/mL)、インドメタシン(溶解度0.01mg/mL)、アセチルサリチル酸(溶解度3.3mg/mL)、エトドラック(溶解度0.11mg/mL)、メロキシカム(溶解度0.01mg/mL)、フルルビプロフェン(溶解度0.01mg/mL)、メフェナム酸(溶解度0.002mg/mL)、ピロキシカム(溶解度0.04mg/mL)等の非ステロイド抗炎症剤等の解熱鎮痛剤;ニトラゼパム(溶解度0.04mg/mL)、トリアゾラム(溶解度0.04mg/mL)等の催眠・鎮静剤;ジアゼパム(溶解度0.05mg/mL)等の精神神経用剤等が挙げられる。これらの中でも、本発明の効果が特に顕著に得られることから、解熱鎮痛剤から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イブプロフェン、ケトプロフェン、アセチルサリチル酸がより好ましく、イブプロフェン、アセチルサリチル酸がさらに好ましく、イブプロフェンが特に好ましい。
酸性の水難溶性薬物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
酸性の水難溶性薬物(A)の含有割合は、錠剤の総質量に対して2~90質量%が好ましく、8~60質量%がより好ましい。酸性の水難溶性薬物(A)の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤を小型化でき、服用性が良好となる。酸性の水難溶性薬物(A)の含有割合が上記上限値以下であれば、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。
【0016】
<任意成分>
任意成分は、錠剤に含まれる、酸性の水難溶性薬物(A)以外の成分である。
任意成分としては、崩壊剤(B)、水溶性高分子(C)、酸性の水難溶性薬物(A)以外の生理活性成分(以下、「他の生理活性成分」ともいう。)、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)以外の添加剤(以下、「他の添加剤」ともいう。)等が挙げられる。
なお、本明細書において、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)以外の任意成分を特に「任意成分(M)」ともいう。
【0017】
(崩壊剤(B))
錠剤が崩壊剤(B)を含有することで、崩壊性が向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。
崩壊剤(B)としては、例えば低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム等が挙げられる。これらの中でも、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースが好ましく、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースがより好ましい。
崩壊剤(B)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
崩壊剤(B)の含有割合は、錠剤の総質量に対して1~27質量%が好ましく、3~22質量%がより好ましい。崩壊剤(B)の含有割合が上記下限値以上であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。崩壊剤(B)の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が良好となる。
なお、錠剤中の崩壊剤(B)の含有割合は、造粒顆粒(G)に含まれる(B)成分と、造粒顆粒(G)外の崩壊剤(B)とを合算した量である。
【0019】
(水溶性高分子(C))
錠剤が水溶性高分子(C)を含有することで、酸性の水難溶性薬物(A)の溶出性が向上する。また、水溶性高分子(C)は結合剤としても作用するため、錠剤の硬度を高め維持することができる。
本発明において「水溶性」とは、20℃の水に対する溶解度が1.0g/100mL以上をいう。20℃の水に対する溶解度は1.3g/100mL以上が好ましく、10g/100mL以上がより好ましく、20g/100mL以上がさらに好ましい。溶解度が高い水溶性高分子(C)を用いるほど、酸性の水難溶性薬物(A)の溶出性が向上する。
また、本発明において「高分子」とは、重量平均分子量が1,000以上のものをいう。水溶性高分子(C)の重量平均分子量は5,000~200,000が好ましく、10,000~150,000がより好ましく、15,000~100,000がさらに好ましい。
なお、重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミネーションクロマトグラフィー)により測定できる。
【0020】
水溶性高分子(C)としては、例えばデンプン、可溶性デンプン、デキストリン、α化デンプン、アルギン酸ナトリウム、アラビヤガム、ゼラチン、トラガントガム、ローカストビーンガム、カゼイン等の天然高分子;メチルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)等のヒドロキシアルキルセルロース;カルボキシメチル化デンプンナトリウム、ヒドロキシエチル化デンプン、デンプンリン酸エステルナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルメチルエーテル(PVM)、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、部分けん化酢酸ビニルとビニルエーテルの共重合体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸及びそのエステル又は塩の重合体若しくは共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン(PVP)等の合成高分子等が挙げられる。これらの中でも、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロースが好ましく、メチルセルロースがより好ましい。
水溶性高分子(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
水溶性高分子(C)の含有割合は、錠剤の総質量に対して0.1~5質量%が好ましく、0.4~2.8質量%がより好ましい。水溶性高分子(C)の含有割合が上記下限値以上であれば、酸性の水難溶性薬物(A)の溶出性が向上すると共に、十分な錠剤硬度が得られる。水溶性高分子(C)の含有割合が上記上限値以下であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。
なお、錠剤中の水溶性高分子(C)の含有割合は、造粒顆粒(G)に含まれる(C)成分と、造粒顆粒(G)外の水溶性高分子(C)とを合算した量である。
【0022】
(任意成分(M))
任意成分(M)としては、他の生理活性成分、他の添加剤等が挙げられる。
【0023】
他の生理活性成分としては、例えばロキソプロフェンナトリウム、アセトアミノフェン、ジクロフェナック、アルクロフェナック等の非ステロイド抗炎症剤;フェノバルビタ-ル、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等の催眠・鎮静剤;フェニトイン、プリミドン、クロナゼパム、カルバマゼピン等の抗てんかん剤;塩酸メクリジン、ジメンヒドリナート等の鎮うん剤;ハロペリドール、スルピリド等の精神神経用剤;アトロピン等の鎮けい剤;ジゴキシン等の強心剤;ピンドロール、ジソピラミド等の不整脈剤;ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、フロセミド、ブメタニド等の利尿剤;塩酸プラゾシン等の抗高血圧剤;硝酸イソソルビド、ニフェジピン、ジピリダモール等の冠血管拡張剤;ノスカピン、ツロプテロール、トラニラスト等の鎮咳剤;塩酸ブロムヘキシン等の去痰剤;エリスロマイシン、ジョサマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、グリセオフルビン等の抗生物質;フマル酸クレマスチン等の抗ヒスタミン剤;安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等の中枢興奮成分;デキサメタゾン、ベタメタゾン、プレドニソロン、ダナゾール、酢酸クロルマジノン等のステロイド剤;ビタミンA類、葉酸(ビタミンM類)等のビタミン剤;ファモチジン、メトクロプラミド、オメプラゾール、トレピブトン、スクラルファート等の消化器系疾患治療剤;乾燥水酸化アルミニウムゲル、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化アルミナマグネシウム、炭酸水素ナトリウム、合成ヒドロタルサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、水酸化カルシウム等の制酸剤;クロフィブラート、メルカプトプリン、メトトレキサート、メシル酸ジヒドロエルゴタミン等が挙げられる。
他の生理活性成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
他の添加剤としては、例えば賦形剤、香料、滑沢剤、甘味剤、酸味剤等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば糖類、コーンスターチ、タルク、結晶セルロース、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、炭酸カルシウム、無水リン酸水素カルシウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、L-システイン等が挙げられる。糖類として具体的には、単糖類(キシロース等)、二糖類以上の多糖類(砂糖(グラニュー糖等)、乳糖、マルトース、スクロース、トレハロース、異性化乳糖、その他各種オリゴ糖等)、糖アルコール(パラチニット、ソルビトール、ラクチトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、マンニトール等)、水飴、異性化糖類、還元澱粉糖化物(還元澱粉分解物)等が挙げられる。
香料としては、例えばメントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ポリエチレングリコール、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、タルク等が挙げられる。
甘味剤としては、例えばサッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース、マンニトール、エリスリトール等が挙げられる。
酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸及びこれらの塩等が挙げられる。
他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
錠剤が任意成分(M)を含有する場合、任意成分(M)の含有割合は、錠剤の総質量に対して5~90質量%が好ましく、10~85質量%がより好ましい。任意成分(M)の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤の成形性がより向上する。任意成分(M)の含有割合が上記上限値以下であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。
【0026】
<錠剤の形態>
錠剤の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から錠剤の径φとして5~14mmが好ましく、6~13mmがより好ましく、7~12mmがさらに好ましい。また1錠当たりの錠剤質量は、150~550mgが好ましい。
また、錠剤の形状としては特に限定されないが、スミ角平錠、スミ丸平錠、丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。
【0027】
錠剤は、単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよい。
錠剤が単層錠の場合、錠剤は、上述した酸性の水難溶性薬物(A)と、必要に応じて崩壊剤(B)、水溶性高分子(C)及び任意成分(M)の1つ以上とを含む薬物層で構成される。一方、錠剤が積層錠の場合、錠剤は、前記薬物層と、薬物層以外の層(任意層)とで構成される。
なお、錠剤が積層錠の場合、層の数は2層であってもよいし、3層以上であってもよい。本明細書において、2層の積層錠を特に「2層錠」ともいい、3層の積層錠を特に「3層錠」ともいう。
また、錠剤が積層錠の場合、任意層は、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)のいずれか1つ以上を含んでいてもよいし、いずれも含まなくてもよい。任意層におけるこれらの成分の含有の有無及び含有割合等は、錠剤1錠当たりのこれらの成分の服用量等を勘案して適宜、選択することができる。また、上述した任意成分(M)は、薬物層のみに含まれていてもよいし、任意層のみに含まれていてもよいし、薬物層及び任意層の両方に含まれていてもよい。
錠剤が単層錠の場合、任意成分(M)は薬物層に含まれる。
なお、錠剤が酸性の水難溶性薬物(A)としてイブプロフェン(IBP)を含有し、任意成分(M)として乾燥水酸化アルミニウムゲル(AL)を含有する場合、乾燥水酸化アルミニウムゲルはイブプロフェンと異なる層、すなわち任意層に含まれることが好ましい。
【0028】
<製造方法>
以下、本発明の錠剤の製造方法の一実施形態について説明する。
本実施形態の錠剤の製造方法は、少なくとも、以下に示す混合工程と、圧縮造粒工程と、打錠工程とを有し、好ましくは、圧縮造粒工程と打錠工程との間に篩過工程を有する。また、錠剤をコーティング錠とする場合は、打錠工程の後に以下に示すコーティング工程をさらに有することが好ましい。
【0029】
(混合工程)
混合工程は、(A)成分を含有する粉体組成物を混合する工程である。
本発明の錠剤の製造方法では、後述の圧縮造粒工程の前に混合工程を2回以上行う。圧縮造粒工程の前に混合工程を2回以上行うことで、粉体組成物中の(A)成分の含有量がより均一となり、密度も均一となる。その結果、粉体組成物の密度の均一性が維持された状態で、粉体組成物が圧縮造粒工程で用いる圧縮造粒装置(Y)に備わるロール圧縮部(1対のロールの間)を通過できるため、圧縮状態が均一な造粒顆粒(G)が得られる。圧縮状態が均一な造粒顆粒(G)を用いることで、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された錠剤が得られる。
【0030】
圧縮造粒工程の前に行われる混合工程の回数は2回以上であれば特に制限されないが、回数が多くてもその効果は頭打ちとなる。また、回数が多くなるほど錠剤の生産性が低下することとなる。よって、生産性の観点から、圧縮造粒工程の前に行われる混合工程の回数は2~5回が好ましく、2~3回がより好ましく、2回がさらに好ましい。
なお、本発明において、「混合工程を2回以上行う」とは、混合操作を2回以上停止することを意味する。通常、混合工程では混合機を用いて粉体組成物を混合するが、混合操作の停止とは、混合機の運転を停止することを意味する。具体的には、粉体組成物の流動が止まった時点を混合操作が停止した(又は混合機の運転が停止した)、すなわち、N回目(Nは1以上の整数である)の混合工程が終了した、とみなす。
【0031】
また、本明細書において、圧縮造粒工程の前に2回以上行われる混合工程のうち、N回目の混合工程を「第Nの混合工程」ともいう。例えば、1回目の混合工程を「第1の混合工程」ともいい、2回目の混合工程を「第2の混合工程」ともいう。
また、本明細書において、混合前の(A)成分を含有する粉体組成物を「粉体組成物(α)」ともいい、第Nの混合工程で得られた粉体組成物を「粉体組成物(αN)」ともいう。例えば、第1の混合工程で得られた粉体組成物を「粉体組成物(α1)」ともいい、第2の混合工程で得られた粉体組成物を「粉体組成物(α2)」ともいう。また、最後の混合工程で得られた粉体組成物を「造粒前粉体」ともいう。
また、本明細書において、酸性の水難溶性薬物(A)を含有しない粉体組成物を「粉体組成物(β)」ともいう。
【0032】
以下、圧縮造粒工程の前に混合工程を2回行う場合を例にとり、第1の混合工程と第2の混合工程の一例について説明する。
【0033】
第1の混合工程は、1回目の混合工程、すなわち最初の混合工程であり、粉体組成物(α)の一部又は全部を混合し、粉体組成物(α1)を得る工程である。
粉体組成物(α1)は、(A)成分に加えて、(B)成分及び(C)成分の少なくとも一方を含有することが好ましい。また、粉体組成物(α1)は、必要に応じて任意成分(M)をさらに含有していてもよい。粉体組成物(α1)が(A)成分と任意成分とを含有する場合、第1の混合工程は、(A)成分と任意成分(例えば(B)成分、(C)成分及び任意成分(M)の1つ以上)とを混合する工程ともいえる。
第1の混合工程では、粉体組成物(α)の全部を混合することが好ましい。
なお、第1の混合工程で粉体組成物(α)の一部を混合する場合、この粉体組成物(α)の一部には、少なくとも(A)成分が含まれていればよく、(A)成分に加えて、(B)成分、(C)成分及び任意成分(M)の1つ以上が含まれていてもよい。
【0034】
粉体組成物(α1)を調製する際、各成分は公知の製造方法により製造したものを用いてもよいし、市販のものを用いてもよい。また、各成分は、原末をそのまま用いてもよいし、所望の中位径となるように混合前に原末を粉砕して用いてもよい。原末を粉砕する際、1種類の成分の原末を単独で粉砕してもよいし、他の成分の原末と共に粉砕して用いてもよい。特に、(A)成分は、粉砕することにより、体内での溶出性(特に服用直後の溶出性)が向上するため、有用である。
原末の粉砕に使用する装置としては、例えばコーミル、ピンミル等の粉砕機が挙げられる。
なお、本明細書において、(A)成分を粉砕する工程を「粉砕工程」ともいう。詳しくは後述するが、粉砕工程は第1の工程の前でもよいし、第2の工程の前又は第2の工程の後でもよい。
【0035】
第1の混合工程で用いる混合機としては、撹拌混合機、容器回転型混合機等が挙げられる。
経時に伴う崩壊時間のばらつきの抑制効果や、崩壊遅延の抑制効果が得られやすい点で、第1の混合工程では撹拌混合機を用いることが好ましく、高速撹拌混合機を用いることがより好ましい。
なお、本明細書において、混合工程で用いる混合機を総称して「混合機(X)」ともいう。
【0036】
撹拌混合機としては、例えばスパルタンミキサー(株式会社ダルトン製)、ハイスピードミキサー(株式会社アーステクニカ製)、バーチカルグラニュレータ(株式会社パウレック製)等の高速撹拌混合機;リボンミキサー(株式会社ダルトン製)等の中低速撹拌混合機などが挙げられる。
容器回転型混合機としては、例えばボーレコンテナミキサー(株式会社広島メタル&マシナリー製)、V型混合機(株式会社ダルトン製)等が挙げられる。
各混合機を用いた第1の混合工程の標準的な運転条件は以下の通りである。
【0037】
スパルタンミキサーを用いる場合、チョッパー回転速度は100~2500rpmが好ましく、ミキシングアームは3~35rpmが好ましい。
ハイスピードミキサーを用いる場合、チョッパー回転速度は100~3500rpmが好ましく、ブレードは3~500rpmが好ましい。
バーチカルグラニュレータを用いる場合、チョッパー回転速度は100~3500rpmが好ましく、ブレードは3~500rpmが好ましい。
リボンミキサーを用いる場合、回転速度は10~100rpmが好ましい。
ボーレコンテナミキサーを用いる場合、回転速度は2~15rpmが好ましい。
V型混合機を用いる場合、回転速度は2~15rpmが好ましい。
【0038】
第1の混合工程は、下記式(1)より算出した工程能力指数(Cp)が1を超えるまで、粉体組成物(α)の一部又は全部を混合することが好ましい。すなわち、工程能力指数(Cp)が1を超えた後に、混合機の運転を停止することが好ましい。工程能力指数(Cp)が1を超えることは、粉体組成物(α1)中の(A)成分の含有量が均一であることを意味する。
Cp=(規格上限-規格下限)/(6個の検体中の(A)成分の含有量の標準偏差) ・・・(1)
なお、規格は90~110%として計算する(100%は(A)成分含有量の規格中央値)。すなわち、式(1)中の「規格上限-規格下限」は110%-90%=20%である。
【0039】
式(1)中の「6個の検体中の(A)成分の含有量の標準偏差」は、以下のようにして求める値である。
すなわち、粉体組成物(α1)を容器に投入し、容器内の粉体組成物(α1)の上面から10cm下の領域における任意の3箇所から検体を採取する。同様に、容器内の粉体組成物(α1)の底面における任意の3箇所から検体を採取する。各検体中の(A)成分の含有量を高速液体クロマトグラフィー等により測定し、6個の検体の(A)成分の含有量の値から標準偏差を求める。
【0040】
第1の混合工程の後、第2の混合工程を行う。
第2の混合工程は、粉体組成物(α1)又は粉体組成物(α1)を含む混合粉体(α1’)を混合し、粉体組成物(α2)を得る工程である。
圧縮造粒工程の前に混合工程を2回行う場合、第2の混合工程が最後の混合工程、すなわち圧縮造粒工程の直前の混合工程であり、第2の混合工程で粉体組成物(α)の全部を混合する。また、粉体組成物(α2)が造粒前粉体である。
【0041】
第2の混合工程では、粉体組成物(α1)を混合してもよいし、粉体組成物(α1)を含む混合粉体(α1’)を混合してもよい。(A)成分の均一性がより高まり、ロール圧縮部を通過する粉体の密度が均一になり易くなる点で、第2の混合工程では粉体組成物(α1)を混合することが好ましい。すなわち、第1の混合工程で粉体組成物(α)の全部を混合した後、第1の混合工程で得られた粉体組成物(α1)を第2の混合工程でさらに混合することが好ましい。
圧縮造粒工程の前に混合工程を2回行う場合であって、かつ、第1の混合工程で粉体組成物(α)の一部を混合した場合は、粉体組成物(α1)に残りの粉体組成物(α)を加えて混合粉体(α1’)を調製し、この混合粉体(α1’)を第2の混合工程で混合する。
【0042】
第2の混合工程で用いる混合機としては、撹拌混合機、容器回転型混合機等が挙げられる。
撹拌混合機としては、第1の混合工程で先に例示した撹拌混合機が挙げられる。
容器回転型混合機としては、第1の混合工程で先に例示した容器回転型混合機が挙げられる。
【0043】
第2の混合工程では、第1の混合工程と同一の混合機を用いてもよいし、異なる混合機を用いてもよい。経時に伴う崩壊時間のばらつきの抑制効果や、崩壊遅延の抑制効果が得られやすい点で、第2の混合工程では撹拌混合機を用いることが好ましく、高速撹拌混合機を用いることがより好ましい。
各混合機を用いた第2の混合工程の標準的な運転条件は、第1の混合工程の説明において先に例示した運転条件と同様である。
【0044】
圧縮造粒工程の前に混合工程を2回行う場合、第2の混合工程は、圧縮造粒工程の直前から6時間前の間に行うことが好ましく、直前から3時間前の間に行うことがより好ましく、直前から1時間前の間に行うことがさらに好ましい。最後の混合工程を上記のタイミングで行うことで、最後の混合工程から圧縮造粒工程の間で、造粒前粉体の凝集、高密度化、ブロッキングを抑制することができ、製造性が良好となる。
【0045】
第2の混合工程は、粉体組成物(α2)中の密度差がなくなるまで、粉体組成物(α1)又は混合粉体(α1’)を混合することが好ましい。粉体組成物(α2)中の密度差は、混合時間(処理時間)が長くなるほど、小さくなる傾向にある。
処理時間は、混合機の運転条件にもよるが、通常は、10秒~10分が好ましく、20秒~5分がより好ましい。処理時間が上記下限値以上であれば、経時に伴う崩壊時間のばらつきをより抑えることができる。処理時間が上記上限値以下であれば、製造時間を短縮することができる。
【0046】
(A)成分の溶出性の向上や、造粒顆粒(G)の混合均一性の向上の点で、圧縮造粒工程の前に粉砕工程を行うことが好ましいが、粉砕工程は行わなくてもよい。粉砕工程を行う場合、粉砕工程は、第1の混合工程の前に行ってもよいし、第1の混合工程と第2の混合工程との間に行ってもよいし、第2の混合工程と圧縮造粒工程との間に行ってもよい。
圧縮造粒工程の前までの製造工程の一例としては、以下に示す(i)~(iv)が挙げられる。
(i)第1の混合工程→粉砕工程→第2の混合工程→圧縮造粒工程
(ii)粉砕工程→第1の混合工程→第2の混合工程→圧縮造粒工程
(iii)第1の混合工程→第2の混合工程→粉砕工程→圧縮造粒工程
(iv)第1の混合工程→第2の混合工程→圧縮造粒工程
【0047】
(i)の場合、粉体組成物(α1)を粉砕した後に、粉砕後の粉体組成物(α1)又は粉砕後の粉体組成物(α1)を含む混合粉体(α1’)を第2の混合工程で混合すればよい。
(ii)の場合、粉砕した(A)成分を用いて粉体組成物(α)を調製し、この粉体組成物(α)の一部又は全部を第1の混合工程で混合すればよい。
(iii)の場合、粉体組成物(α2)を粉砕した後に、粉砕後の粉体組成物(α2)(すなわち粉砕後の造粒前粉体)を圧縮造粒工程で圧縮造粒すればよい。
【0048】
なお、混合工程を3回以上行う場合、圧縮造粒工程の直前の混合工程(すなわち最後の混合工程)で粉体組成物(α)の全部を混合するが、第1の混合工程で粉体組成物(α)の全部を混合した後、第1の混合工程で得られた粉体組成物(α1)を2回目以降の混合工程でさらに混合することが好ましい。
圧縮造粒工程の直前の混合工程は、圧縮造粒工程の直前から6時間前の間に行うことが好ましく、直前から3時間前の間に行うことがより好ましく、直前から1時間前の間に行うことがさらに好ましい。
また、3回目以降の混合工程で用いる混合機としては、撹拌混合機、容器回転型混合機等が挙げられる。
撹拌混合機としては、第1の混合工程で先に例示した撹拌混合機が挙げられる。
容器回転型混合機としては、第1の混合工程で先に例示した容器回転型混合機が挙げられる。
3回目以降の混合工程では、第1の混合工程と同一の混合機を用いてもよいし、異なる混合機を用いてもよい。また、3回目以降の混合工程では、第2の混合工程と同一の混合機を用いてもよいし、異なる混合機を用いてもよい。
3回目以降の混合工程における処理時間は、混合機の運転条件にもよるが、通常は、10秒~10分が好ましく、20秒~5分がより好ましい。
【0049】
(圧縮造粒工程)
圧縮造粒工程は、圧縮造粒装置(Y)を用いて、混合工程において混合された粉体組成物を圧縮造粒し、造粒顆粒(G)を得る工程である。
圧縮造粒工程では、最後の混合工程で得られた粉体組成物である造粒前粉体を圧縮造粒する。
【0050】
圧縮造粒工程で用いる圧縮造粒装置(Y)は、ロール圧縮部を備えた造粒装置である。
圧縮造粒工程では、圧縮造粒装置(Y)として、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置(例えばフロイント・ターボ株式会社製)又はブリケット型圧縮造粒装置(例えば新東工業株式会社製、ホソカワミクロン株式会社製)を用いる。
なお、これらの圧縮造粒装置は、通常、ロール圧縮部の上流にスクリューを有するホッパー部を備えている。ホッパー部には、スクリューに粉体を安定的に供給するための水平軸スクレーパーが附属されている場合があるが、本発明においては、水平軸スクレーパーによる粉体の撹拌は混合工程には含まれないものとする。すなわち、本発明における混合工程は、粉体組成物が圧縮造粒装置(Y)に投入される前の工程である。
【0051】
圧縮造粒工程でローラーコンパクター型圧縮造粒装置を用いる場合の好ましい造粒条件は以下の通りである。
圧縮ロール幅1cm当たりの粉体処理速度は90g/分以上が好ましい。粉体処理速度が上記下限値以上であれば、高い生産効率が見込める。粉体処理速度の上限は特に制限されないが、速度が速すぎると造粒前粉体の圧縮が不十分となり、後述するフレーク状になりにくい場合がある。よって、粉体処理速度は90~250g/分が好ましく、120~200g/分がより好ましい。
ロール圧力は適宜選定されるが、3~12MPaが好ましい。ロール圧力が、上記下限値以上であれば造粒顆粒(G)の硬度が良好となり、上記上限値以下であれば崩壊性がより良好となる。
粉体供給スクリュー回転速度は20~100rpmが好ましい。粉体供給スクリュー回転速度が、上記下限値以上であれば高い生産効率が見込め、上記上限値以下であればロール圧縮部への造粒前粉体の供給性が良好となる。
【0052】
圧縮造粒工程でブリケット型圧縮造粒装置を用いる場合の好ましい造粒条件は、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置を用いる場合と同様である。
ロールのポケット容積は約0.3~120ccが好ましく、形状はピロー型やレンズ型、アーモンド形等の公知のものを使用できる。
【0053】
造粒前粉体が圧縮造粒装置(Y)のロール圧縮部を通過することで造粒前粉体は、ローラーコンパクター型圧縮造粒機ではフレーク状となり、ブリケット型圧縮造粒装置ではペレット状となる。以下、ロール圧縮部を通過してフレーク状或いはペレット状となった造粒前粉体を「フレーク」ともいう。
圧縮成形された直後、すなわちロール圧縮部を通過した直後のフレーク温度は10~55℃が好ましく、15~45℃がより好ましく、20~40℃がさらに好ましい。フレーク温度が上記下限値以上であれば、ロール圧縮部やフレークの結露を防ぎ、製造性が良好となる。フレーク温度が上記上限値以下であれば、フレーク温度上昇に伴い生じる錠剤の崩壊遅延をより抑制することができる。
フレーク温度を制御するための冷却方法は限定されるものではなく、ロール圧縮部のロール内部に冷却水を流してもよいし、外部から冷風を当ててもよい。
なお、フレーク温度は、例えば、サーモグラフィカメラを用いて測定することができる。
【0054】
ロール圧縮部により得られたフレークを解砕・整粒機等を用いて、解砕・整粒してもよく、これにより目的とする平均粒子径の造粒顆粒(G)を得ることができる。
造粒顆粒(G)の平均粒子径は製造性に問題がない範囲で任意に設定できるが、例えば45~900μmが好ましく、150~850μmがより好ましく、250~800μmがさらに好ましい。造粒顆粒(G)の平均粒子径が上記下限値以上であれば、(A)成分に起因する打錠時に充填不良や付着等の障害を抑制できる。造粒顆粒(G)の平均粒子径が上記上限値以下であれば、打錠時に臼へ充填される粉体重量のばらつきをより抑制できる。
なお、造粒顆粒(G)の平均粒子径は個数平均径を意味し、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えばBECKMAN COULTER社製、製品名「LS13 320」)を使用して個数%(メディアン径)により算出することができる。
【0055】
圧縮造粒工程で得られる造粒顆粒(G)は(A)成分を含む。造粒前粉体(G)が(A)成分に加えて(B)成分及び(C)成分の少なくとも一方を含有する場合、造粒顆粒(G)も(A)成分に加えて(B)成分及び(C)成分の少なくとも一方を含有することとなる。また、造粒前粉体が任意成分(M)を含有していれば、造粒顆粒(G)も任意成分(M)を含有することとなる。
なお、(A)成分としてイブプロフェンを含む造粒顆粒(G)を特に「IBP造粒顆粒」ともいう。
【0056】
(A)成分の含有割合は、造粒顆粒(G)の総質量に対して24~90質量%が好ましく、40~67質量%がより好ましい。(A)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤を小型化でき、服用性が良好となる。(A)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。加えて、粉砕機や打錠機への造粒顆粒(G)(主に(A)成分)の付着を抑制できる。
【0057】
(B)成分の含有割合は、造粒顆粒(G)の総質量に対して8~27質量%が好ましく、16~24質量%がより好ましい。(B)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。加えて、粉砕機や打錠機への造粒顆粒(G)(主に(A)成分)の付着を抑制できる。(B)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、錠剤を小型化でき、服用性が良好となる。
【0058】
(C)成分の含有割合は、造粒顆粒(G)の総質量に対して1.4~5.5質量%が好ましく、2~3.1質量%がより好ましい。(C)成分の含有割合が上記下限値以上であれば、(A)成分の溶出性が向上する。加えて、フレークの成形性が良好となる。(C)成分の含有割合が上記上限値以下であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。
【0059】
(篩過工程)
篩過工程は、圧縮造粒工程の後に、造粒顆粒(G)中の粒子径が250μm以下である粒子の含有割合が30質量%未満となるように、造粒顆粒(G)を篩過する工程である。
造粒顆粒(G)中の粒子径が250μm以下である粒子の含有割合は、造粒顆粒(G)の総質量に対して30質量%未満が好ましく、25質量%以下がより好ましい。粒子径が250μm以下である粒子の割合が上記上限値以下であれば、崩壊性がより向上し、特に、経時に伴う崩壊遅延をより抑制できる。加えて、打錠工程における臼への造粒顆粒(G)の充填性が良好となる。
【0060】
なお、粒子径が250μm以下である粒子とは、目開き250μmの篩を通過する粒子を指し、粒子径が250μm以下の粒子の含有割合は、目開き1000μm、850μm、500μm、355μm、250μmの篩を用い、サンプル量100gで、第十八改正日本薬局方に記載の「粒度測定法」第2法に基づいて操作を行った際の、目開き250μmを通過した粉体の質量基準百分率を算出することで求められる。
【0061】
(打錠工程)
打錠工程は、圧縮造粒工程で得られた造粒顆粒(G)又は造粒顆粒(G)を含む混合粉体(G’)を打錠して、錠剤を得る工程である。
打錠工程では、造粒顆粒(G)を打錠してもよいし、造粒顆粒(G)に任意成分(例えば崩壊剤(B)、水溶性高分子(C)及び任意成分(M)の1つ以上)を添加して打錠してもよい。
なお、本明細書において、造粒顆粒(G)に任意成分を添加したものを「混合粉体(G’)」という。
【0062】
造粒顆粒(G)又は混合粉体(G’)を打錠する方法としては、例えば臼と杵とを備えた打錠機を用いて打錠する方法が挙げられる。
打錠機としては、ロータリー式の打錠機(例えば、株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-J」;株式会社畑鐵工所製、製品名「L-41型」等)が挙げられるが、高い生産効率を有するロータリー式の打錠機(例えば、株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-K」等)が好ましい。
【0063】
打錠条件としては特に制限されず、錠剤に求める硬度等を勘案して適宜決定される。
ロータリー式の打錠機は、回転盤を備える。回転盤の回転速度は適宜調整可能だが、10~100rpmが好ましく、20~60rpmがより好ましい。回転盤の回転速度が上記下限値以上であれば、生産効率を高められる。回転盤の回転速度が上記上限値以下であれば、臼への造粒顆粒(G)又は混合粉体(G’)の充填量が安定する。
【0064】
単層錠を製造する場合、造粒顆粒(G)又は混合粉体(G’)を臼に充填して打錠を行うが、打錠を行う際は、予圧で打錠した後に、本圧で打錠することが好ましい。以下の明細書において、予圧で打錠する工程を「予圧工程」といい、本圧で打錠する工程を「本圧工程」ともいう。すなわち、打錠工程は、予圧工程と本圧工程とを有することが好ましい。予圧は10kN以下が好ましく、0.1~8kNがより好ましい。予圧を上記範囲内とすることでキャッピングを抑制できる。本圧は6~20kNが好ましく、8~14kNが好ましい。本圧を上記下限値以上とすることで十分な硬度が得られ、上記上限値以下とすることで錠剤の崩壊性が向上する。
【0065】
2層錠を製造する場合、薬物層を構成する造粒顆粒(G)又は混合粉体(G’)(以下、これらを総称して「薬物層用成分」ともいう。)は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分(以下、「任意層用成分」ともいう。)よりも後に充填されてもよい。薬物層用成分の安定性の観点から、薬物層用成分を臼に充填した後に任意層用成分を充填することが好ましい。
なお、任意層用成分としては、酸性の水難溶性薬物(A)を含有しない粉体組成物(β)、粉体組成物(β)の造粒物(造粒顆粒)、粉体組成物(β)の造粒物に任意成分(例えば崩壊剤(B)、水溶性高分子(C)及び任意成分(M)の1つ以上)を添加した混合粉体などが挙げられる。粉体組成物(β)は、崩壊剤(B)及び水溶性高分子(C)の少なくとも一方を含んでいてもよい。また、粉体組成物(β)は、任意成分(M)を含んでいてもよい。
また、任意成分(M)として乾燥水酸化アルミニウムゲルを含む粉体組成物(β)の造粒物を特に「AL造粒顆粒」ともいう。
【0066】
打錠を行う際は、1つ目の成分(例えば薬物層用成分)を臼に充填し、その上に2つ目の成分(例えば任意層用成分)を充填した後に予圧工程及び本圧工程を順次行ってもよい。また、1つ目の成分を臼に充填した後に1度目の予圧工程(第一の予圧工程)を行い、次いで2つ目の成分を臼に充填した後に必要に応じて2度目の予圧工程(第二の予圧工程)を行い、さらに本圧工程を行ってもよい。打錠障害をより抑制する観点では、各層の成分を臼に充填する毎に予圧工程を行うことが好ましい。
予圧は10kN以下が好ましく、0.1~8kNがより好ましい。予圧を上記範囲内とすることでキャッピングを抑制できる。本圧は6~20kNが好ましく、8~14kNが好ましい。本圧を上記下限値以上とすることで十分な硬度が得られ、上記上限値以下とすることで錠剤の崩壊性が向上する。
【0067】
3層錠を製造する場合、例えば、薬物層用成分を二つに分け、薬物層用成分、任意層用成分、薬物層用成分の順に臼に充填した後に、打錠してもよく、任意層用成分を二つに分け、任意層用成分、薬物層用成分、任意層用成分の順に臼に充填した後に、打錠してもよい。打錠障害をより抑止する観点では、薬物層用成分、任意層用成分、薬物層用成分の順に臼に充填することが好ましい。また、任意層を構成する成分を含み粉体組成物(β)と組成が異なる粉体組成物(γ)又はその造粒物(造粒顆粒)を調製し、各層を構成する成分を任意の順に臼に充填した後に、打錠してもよい。打錠障害をより抑止する観点及び薬物層用成分の安定性の観点では、薬物層用成分を最初に臼に充填することが好ましい。なお、予圧工程及び本圧工程については、上記2層錠を製造する場合と同様である。
【0068】
打錠工程では、滑沢剤を外部滑沢法により添加してもよい。
外部滑沢法は、滑沢剤を打錠機の杵及び臼に噴霧(塗布)して薬物層用成分等を打錠することで、杵及び臼と接触する錠剤の表面に滑沢剤を添加する方法である。
滑沢剤の杵及び臼への噴霧(塗布)は、従来の公知の方法に基づき、あるいは市販の機械を用いて行うことができる。市販の機械としては、例えば外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)、外部滑沢装置EXTALUB(株式会社畑鐵工所製)等が挙げられる。
外部滑沢法によって添加される滑沢剤の量は、錠剤の崩壊性の観点から、最初に臼に充填する成分(例えば薬物層用成分)の総質量に対して1質量%未満が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.1質量%以下がさらに好ましい。
なお、外部滑沢法により、薬物層の表面に付着した滑沢剤も薬物層の一部とみなす。単層錠の場合、錠剤の表面に付着した滑沢剤の全てが薬物層の一部とみなされる。2層錠の場合、例えば薬物層用成分を充填した後に第一の予圧工程を行った場合は、薬物層の表面に付着した滑沢剤の全てが薬物層の一部とみなされる。1つ目の成分を臼に充填し、予圧工程を行わずにその上に2つ目の成分を充填した後に予圧工程及び本圧工程を行う場合、外部滑沢法により添加された滑沢剤の半分が薬物層の一部とみなされ、残りの半分が任意層の一部とみなされる。3層錠の場合は、2層錠と同様である。ただし、外部滑沢法により薬物層の表面に付着する滑沢剤は、噴霧量の総質量に対して約1質量%であるため、噴霧量が1錠あたり3mg未満の場合、外部滑沢法によって噴霧された滑沢剤が錠剤の表面に付着する量は極僅かである。
【0069】
こうして得られた錠剤は、造粒顆粒(G)又は混合粉体(G’)を打錠して得られる、(A)成分を含む薬物層を有する。
薬物層中の造粒顆粒(G)の含有割合は、薬物層の総質量に対して30質量%以上が好ましく、33質量%以上がより好ましい。造粒顆粒(G)の含有割合が上記下限値以上であれば、錠剤を小型化でき、服用性が良好となる。
【0070】
錠剤は、服用性の向上等を目的として、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理が施されてもよい。
なお、本明細書において、コーティング前の錠剤を「素錠」ともいう。また、コーティング後の錠剤を「コーティング錠」ともいう。
また、本明細書において、コーティング処理により薬物層の表面に形成されたコーティング層は、薬物層の一部とみなす。
【0071】
(コーティング工程)
コーティング工程は、素錠をコーティング処理する工程である。
コーティング剤としては、崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも被膜形成剤、可塑剤及び着色剤の1つ以上を含有することが好ましく、少なくとも被膜形成剤を含有することがより好ましい。
コーティング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
被膜形成剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。
可塑剤としては、例えばマクロゴール、クエン酸トリエチル、トリアセチン、カルナウバロウ等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格(株式会社薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。
着色剤としては、例えば酸化チタン、タルク、三二酸化鉄、黄色5号アルミニウムレーキ等が挙げられる。
被膜形成剤、可塑剤及び着色剤は、それぞれ1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
また、コーティング剤として、これらの成分が混合された市販のプレミックス品を用いてもよく、例えば、日本カラコン合同会社製の商品名「オパドライ」等が挙げられる。
これらの中でも、コーティング剤としてはポリビニルアルコールを含有するものが好ましく、市販品としては、例えば日本カラコン合同会社製の商品名「オパドライAMBII」が挙げられる。
【0074】
コーティング錠におけるコーティング剤の使用量(被覆量)は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜設定される。例えば、コーティングされていない錠剤(素錠)100質量部に対し、0.1~5質量部が好ましく、0.5~2質量部がより好ましい。コーティング剤の使用量が、上記下限値以上であれば錠剤の服用性を良好に維持でき、上記上限値以下であれば崩壊性を良好に維持できる。
【0075】
素錠をコーティング処理する方法特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。コーティング処理に使用する装置としては、例えばハイコーター(フロイント産業株式会社製)、アクアコーター(フロイント産業株式会社製)等のパン型コーティング装置が挙げられる。
【0076】
<作用効果>
本発明の錠剤の製造方法によれば、圧縮造粒工程の前に上述した混合工程を2回以上行うので、密度の均一性が維持された状態で粉体組成物が圧縮造粒装置(Y)に備わるロール圧縮部を通過でき、圧縮状態が均一な造粒顆粒(G)が得られる。圧縮状態が均一な造粒顆粒(G)を用いることで、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された錠剤が得られる。
しかも、圧縮造粒法は、例えば流動層造粒法に比べて加水工程や乾燥工程を省略可能であり、生産効率が高い。よって、本発明の錠剤の製造方法によれば、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、崩壊遅延が抑制された、酸性の水難溶性薬物(A)を含有する錠剤を生産性よく製造できる。
【実施例0077】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
各例で使用した原料、打錠条件及び評価方法は、以下の通りである。
【0078】
「使用原料」
使用原料として、以下に示す化合物を用いた。
・イブプロフェン:BASF社製、商品名「イブプロフェン25」。
・低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:信越化学工業株式会社製、商品名「LH-31」。
・カルメロース:五徳薬品株式会社製、商品名「カルメロース NS-300」。
・メチルセルロース:信越化学工業株式会社製、商品名「メトローズ SM-4」。
・ヒドロキシプロピルセルロース:日本曹達式会社製、商品名「HPC-SSL」。
・アセトアミノフェン:ノバシル社製、商品名「RHODAPAPAP POWDER」。
・軽質無水ケイ酸:富士シリシア株式会社製、商品名「サイリシア350」。
・結晶セルロース:旭化成株式会社製、商品名「セオラス UF-702」。
・乾燥水酸化アルミニウムゲル:協和化学工業株式会社製、商品名「S-100」。
・リン酸二水素カリウム:太平化学産業株式会社製、商品名「日本薬局方外医薬品規格リン酸二水素カリウム」。
・ステアリン酸マグネシウム:太平化学産業株式会社製、商品名「ステアリン酸マグネシウム」、植物性 一般(外部滑沢時)、軽質(内部添加時)。
・無水カフェイン:三菱ケミカルフーズ株式会社製、商品名「日本薬局方無水カフェイン」。
・D-マンニトール:ロケットジャパン株式会社製、商品名「ペアリトール50C」。
【0079】
[測定・評価方法]
<崩壊試験>
錠剤をPTP(Press Through Package)包装材料(住友ベークライト株式会社製、商品名「VSL-4610N」)を用いてPTP包装した。PTP包装が施された錠剤を50℃、75%RHで4週間保存した。
製造直後と、50℃、75%RHで4週間保存した後の錠剤各10錠について、それぞれ崩壊時間を第十八改正日本薬局方に準じて試験して測定し、その平均値を求めた。また、10錠の崩壊時間の値から標準偏差を求め、崩壊時間のばらつきを求めた。
製造直後の錠剤の崩壊時間の平均値を「初期の崩壊時間」とし、崩壊時間の標準偏差を「初期の崩壊時間のばらつき」とした。一方、50℃、75%RHで4週間保存した後の錠剤の崩壊時間の平均値を「保存後の崩壊時間」とし、崩壊時間の標準偏差を「保存後の崩壊時間のばらつき」とした。また、保存後の崩壊時間から初期の崩壊時間を差し引いた値を「崩壊時間の差」とした。
【0080】
[実施例1~18、22~25]
<IBP造粒顆粒の製造>
1錠当たりの組成が表1~5に示す組成となるように、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び任意成分(M)を含有する粉体組成物(α)の全部を高速撹拌混合機(株式会社ダルトン製、製品名「スパルタンミキサーSPM-160GHCN」)を用い、チョッパー回転速度:1400rpm、ミキシングアーム:20rpm、処理時間:2分の条件で混合し、粉体組成物(α1)を得た(第1の混合工程)。
次いで、粉体組成物(α1)を高速撹拌混合機から取り出し、ピンミル粉砕機(株式会社パウレック製、製品名「コロプレックス160Z」)を用いて粉砕した。
【0081】
粉砕後の粉体組成物(α1)をピンミル粉砕機から取り出し、容器に投入した。容器内の粉体組成物(α1)の上面から10cm下の領域における任意の3箇所から検体を採取した。同様に、容器内の粉体組成物(α1)の底面における任意の3箇所から検体を採取した。各検体中の(A)成分の含有量を、高速液体クロマトグラフィーを用い、以下の測定条件でそれぞれ測定した。測定には、検体の濃度が0.1mg/mLとなるように適宜、移動相に溶解させたものをサンプルとして用いた。
<<測定条件>>
・測定装置:株式会社島津製作所製、製品名「一体型HPLC Prominence-i」。
・分離カラム:ジーエルサイエンス株式会社製、商品名「Inertsil ODS-3(5.0μm、150mm×4.6mm)」。
・移動相:アセトニトリル/pH2.6の0.05mоl/Lリン酸二水素ナトリウム試液混液=3/2(体積比)。pH2.6の0.05mоl/Lリン酸二水素ナトリウム試液は第十八改正日本薬局方に準じて調製した。
・移動相の流量:1.0mL/分。
・サンプルの注入量:50μL。
・測定温度:40℃。
【0082】
6個の検体の(A)成分の含有量の値から標準偏差を求め、下記式(1)より算出した工程能力指数(Cp)が1を超え、容器内の粉体組成物(α1)中の(A)成分であるイブプロフェンの含有量が均一であることを確認した。なお、規格は90~110%として計算した。
Cp=(規格上限-規格下限)/(6個の検体中の(A)成分の含有量の標準偏差) ・・・(1)
【0083】
次いで、粉砕後の粉体組成物(α1)を表1~5に示す種類の混合機を用いてさらに混合し、粉体組成物(α2)を得た(第2の混合工程)。本実施例では、得られた粉体組成物(α2)を造粒前粉体とした。
なお、第2の混合工程では、混合機として以下に示す高速撹拌混合機、中低速撹拌混合機、容器回転型混合機のいずれかを用いた。また、各混合機における運転条件を以下に示す。
<<高速撹拌混合機>>
・SPM:スパルタンミキサーSPM-160GHCN(株式会社ダルトン製)、チョッパー回転速度:1400rpm、ミキシングアーム:20rpm、処理時間:2分。
・HSM:ハイスピードミキサーFS.GS.10J(株式会社アーステクニカ製)、チョッパー回転速度:2000rpm、ブレード:200rpm、処理時間:2分。
・VG:バーチカルグラニュレータVG-25(株式会社パウレック製)、チョッパー回転速度:2000rpm、ブレード:200rpm、処理時間:2分。
<<中低速撹拌混合機>>
・RM:リボン型混合機R-5(株式会社徳寿工作所製)、回転速度:45rpm、処理時間:2分。
<<容器回転型混合機>>
・BCM:ボーレコンテナミキサーPM-100(株式会社広島メタル&マシナリー製)、回転速度:8rpm、処理時間:5分。
【0084】
次いで、造粒前粉体を混合機から取り出し、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP160×60S」)に投入して圧縮造粒し、イブプロフェンを含む造粒顆粒(IBP造粒顆粒)を得た(圧縮造粒工程)。なお、圧縮ロール幅1cm当たりの粉体処理速度が表1~5に示す速度となるように調節しながら圧縮造粒を行った。また、ロール圧縮部を通過した直後のフレーク温度が表1~5に示す温度になるよう、循環式低温恒温水槽(トーマス科学器械株式会社製、製品名「TRL750HS」)を用い、冷却水をローラーコンパクター型圧縮造粒装置のロール圧縮部のロール内部に循環させることでロールを冷却した。また、フレーク温度についてはサーモグラフィカメラ(FLIR社製、製品名「FLIR E5-XT」)を用い、ロール圧縮部を通過した直後のフレーク温度を測定した。
必要に応じ目開き250μmの篩により篩過を行い(篩過工程)、篩を通過した粒子径が250μm以下の粉体と、篩を通過しなかった粒子径が250μm超の粉体とを混合して、IBP造粒顆粒中の粒子径が250μm以下である粒子の割合が表1~5に示す値となるように調整した。
【0085】
<AL造粒顆粒の製造>
1錠当たりの組成が表1~5に示す組成となるように、崩壊剤(B)及び任意成分(M)を含有する粉体組成物(β)の全部を高速撹拌混合機(株式会社ダルトン製、製品名「スパルタンミキサーSPM-160GHCN」)を用い、チョッパー回転速度1400rpm、ミキシングアーム20rpm、処理時間1分の条件で混合した。
次いで、混合後の粉体組成物(β1)を高速撹拌混合機から取り出し、ローラーコンパクター型圧縮造粒装置(フロイント・ターボ株式会社製、製品名「ローラーコンパクターFP160×60S」)に投入して圧縮造粒し、乾燥水酸化アルミニウムゲルを含む造粒顆粒(AL造粒顆粒)を得た。
【0086】
<錠剤の製造>
IBP造粒顆粒をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-K」)の臼に充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(第一の予圧工程)、AL造粒顆粒をさらに充填し、予圧6kNにて打錠した後(第二の予圧工程)に、本圧10kNにて打錠し(本圧工程)、イブプロフェンを含む層(IBP層)と乾燥水酸化アルミニウムゲルを含む層(AL層)とを有する錠剤(積層錠)を得た。IBP層が薬物層であり、AL層が任意層である。なお、打錠には、実施例1~15、17~18、20~25では直径φが8.0mmの臼及び杵を用い、実施例16では直径φが10.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(直径φが8.0mmの場合:R1=3.2mm、R2=9.5mm、直径φが10.0mmの場合:R1=4.0mm、R2=11.5mm)を用いた。また、打錠時にはIBP造粒顆粒の充填前に外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)により、1錠当たり0.05質量%のステアリン酸マグネシウムを上下杵、臼に噴霧し打錠した。
得られた錠剤について、崩壊試験を行った。結果を表1~5に示す。
【0087】
[実施例19~21]
1錠当たりの組成が表4に示す組成となるように変更した以外は、実施例1~18、22~25と同様にしてIBP造粒顆粒を製造した。
1錠当たりの組成が表4に示す組成となるように、得られたIBP造粒顆粒と崩壊剤(B)と任意成分(M)を混合し、IBP層用の混合粉体を調製した。
【0088】
IBP層用の混合粉体をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-K」)の臼に充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(予圧工程)に、本圧10kNにて打錠し(本圧工程)、IBP層からなる錠剤(単層錠)を得た。なお、打錠には、実施例19では直径φが10.0mmの臼及び杵を用い、実施例20~21では直径φが8.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(直径φが8.0mmの場合:R1=3.2mm、R2=9.5mm、直径φが10.0mmの場合:R1=4.0mm、R2=11.5mm)を用いた。また、打錠時にはIBP層用の混合粉体の充填前に外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)により、1錠当たり0.05質量%のステアリン酸マグネシウムを上下杵、臼に噴霧し打錠した。
得られた錠剤について、崩壊試験を行った。結果を表4に示す。
【0089】
[比較例1、3、4]
1錠当たりの組成が表6に示す組成となるように変更した以外は、実施例1~18、22~25と同様にして第1の混合工程及び粉砕工程を行い、粉砕後の粉体組成物(α1)を得た。なお、実施例1~18、22~25と同様にして工程能力指数(Cp)を求め、工程能力指数(Cp)が1を超え、容器内の粉体組成物(α1)中の(A)成分であるイブプロフェンの含有量が均一であることを確認した。
得られた粉砕後の粉体組成物(α1)を造粒前粉体として用いた以外は、実施例1~18、22~25と同様にして圧縮造粒工程を行い、IBP造粒顆粒を得た。
【0090】
別途、1錠当たりの組成が表6に示す組成となるように変更した以外は、実施例1~18、22~25と同様にしてAL造粒顆粒を製造した。
【0091】
IBP造粒顆粒をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-K」)の臼に充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(第一の予圧工程)、AL造粒顆粒をさらに充填し、予圧6kNにて打錠した後(第二の予圧工程)に、本圧10kNにて打錠し(本圧工程)、IBP層とAL層とを有する錠剤(積層錠)を得た。なお、打錠には、直径φが8.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(R1=3.2mm、R2=9.5mm)を用いた。また、打錠時にはIBP造粒顆粒の充填前に外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)により、1錠当たり0.05質量%のステアリン酸マグネシウムを上下杵、臼に噴霧し打錠した。
得られた錠剤について、崩壊試験を行った。結果を表6に示す。
【0092】
[比較例2]
1錠当たりの組成が表6に示す組成となるように変更した以外は、実施例1~18、22~25と同様にしてIBP造粒顆粒を製造した。
1錠当たりの組成が表6に示す組成となるように、得られたIBP造粒顆粒と崩壊剤(B)と任意成分(M)を混合し、IBP層用の混合粉体を調製した。
【0093】
IBP層用の混合粉体をロータリー式の打錠機(株式会社菊水製作所製、製品名「アクエリアス3-K」)の臼に充填し、予圧0.3kNにて打錠した後(予圧工程)に、本圧10kNにて打錠し(本圧工程)、IBP層からなる錠剤(単層錠)を得た。なお、打錠には、直径φが8.0mmの臼及び杵を用いた。また、杵としては、杵先の形状が2段R(R1=3.2mm、R2=9.5mm)を用いた。また、打錠時にはIBP層用の混合粉体の充填前に外部滑沢噴霧システムELS-P1(株式会社菊水製作所製)により、1錠当たり0.05質量%のステアリン酸マグネシウムを上下杵、臼に噴霧し打錠した。
得られた錠剤について、崩壊試験を行った。結果を表6に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
表1~5の結果より、圧縮造粒工程の前に混合工程を2回行った各実施例で得られた錠剤は、経時に伴う崩壊時間のばらつきが小さく、かつ、崩壊遅延が抑制されていた。
一方、表6の結果より、圧縮造粒工程の前に混合工程を1回行った各比較例で得られた錠剤は、経時に伴う崩壊時間のばらつきが大きく、また、崩壊遅延が発生した。