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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170816
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】周波数混合器
(51)【国際特許分類】
   H03D 7/14 20060101AFI20231124BHJP
【FI】
H03D7/14 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082871
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111763
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100163832
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 直哉
(72)【発明者】
【氏名】対馬 博之
(57)【要約】
【課題】 差動対のオフセット補正が可能な周波数混合器を提供する。
【解決手段】 シフトレジスタ41~46は、デジタル値を記憶する。DAC51~54およびIDAC55、56は、シフトレジスタ41~46に記憶された記憶されたデジタル値に基づいて、周波数混合器100のオフセット電圧を補正するために第1差動対11~14または第2差動対15、16に与える補正バイアスを発生する。コンパレータ20は、周波数混合器100から得られるオフセット電圧の極性を判定する。制御部30は、コンパレータ20の判定結果に基づいて、オフセット電圧が0となるデジタル値を探索し、シフトレジスタ41~46に記憶させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの第1差動対と、1つの第2差動対とを含む複数の差動対を有し、前記2つの第1差動対の共通ノードは、前記第2差動対の2つの差動出力ノードに各々接続されており、前記2つの第1差動対は、各々の2つの差動出力ノードが相互に接続されており、前記第1差動対が第1信号を差動増幅し、前記第2差動対が第2信号を差動増幅することにより、前記第1信号と前記第2信号とを混合した差動信号を前記第1差動対から出力する周波数混合器において、
デジタル値を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたデジタル値に基づいて、前記周波数混合器のオフセット電圧を補正するために前記第1差動対または前記第2差動対に与える補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段と、
前記周波数混合器から得られるオフセット電圧の極性を判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に基づいて、前記オフセット電圧が0となる前記デジタル値を探索し、前記記憶手段に記憶させる制御手段と
を有する周波数混合器。
【請求項2】
前記補正バイアス発生手段は、前記第1差動対を構成する各トランジスタに与えるバックゲート電圧を前記補正バイアスとして発生する請求項1に記載の周波数混合器。
【請求項3】
前記第2差動対は、前記第2信号を差動増幅することにより2つの前記第1差動対の共通ノードに2つの差動出力電流を供給するものであり、
前記補正バイアス発生手段は、前記2つの差動出力電流を補正する電流を前記補正バイアスとして発生する請求項1に記載の周波数混合器。
【請求項4】
前記制御手段は、前記2つの第1差動対から1の第1差動対を順次選択し、選択した第1差動対以外の第1差動対の共通ノードへの電流の供給を遮断し、選択した第1差動対について前記オフセット電圧が0となる前記デジタル値を探索する請求項1に記載の周波数混合器。
【請求項5】
前記記憶手段は、シフトレジスタであり、
前記制御手段は、前記判定手段の出力信号を前記シフトレジスタに入力してシフト動作させることにより前記探索を実行する請求項1に記載の周波数混合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、周波数混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
周波数混合器は、周波数の異なる2つの信号を乗算して出力する回路であり、略称ではミキサ、ミキサ回路と呼ばれることが多い。送受信システムでは、周波数混合器は要素回路として搭載され、搬送波(ローカル信号)に信号情報に基づく変調(送信)を施し、または外部からの受信信号から信号情報を復調(受信)する役割を果たす。
【0003】
周波数混合器の一形態として、図4に示すギルバートセル型回路200がある。このギルバートセル型回路200は、2つの第1差動対201および202と、1つの第2差動対203とを有する。ここで、第1差動対201の共通ノードおよび第1差動対202の共通ノードは、第2差動対203の2つの差動出力ノードに接続されている。このギルバートセル型回路200は、2つの異なる周波数成分の分離特性で優れているダブル・バランスド・ミキサを集積回路上で実装する場合に多く用いられる。
【0004】
図4に示すギルバートセル型回路200は、復調回路として用いられている。このギルバートセル型回路200には、搬送波と周波数混合された高周波信号RFが外部から入力される。ギルバートセル型回路200では、この高周波信号RFと、搬送波に相当するローカル信号LOとが乗算され、中間周波信号IFが出力される。この中間周波信号IFから差分の信号周波数のみを抽出することができる。ギルバートセル型回路200は、変調回路としても用いられる。変調回路の場合は、搬送波であるローカル信号LOと中間周波信号IFを周波数混合させて高周波信号RFを生成する。
【0005】
ギルバートセル型回路200を利用したミキサとして、図5に示すギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250がある。このギルバートセル型ダブル・バランス・ミキサ250では、ミキサ221および222がギルバートセル型回路200により構成されている。
【0006】
このギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250は、ベースバンド信号BBとローカル信号LOとを周波数混合して16QAM(直交振幅変調)送信信号を生成するミキサであり、例えば無線LAN(WiFi)の変調装置に利用されている。
【0007】
このギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250は、電流出力型の差動対211および212を有している。差動対211は、Iチャネルの差動形式のベースバンド信号BBIPおよびBBINを差動増幅し、1対の差動出力電流を出力する。差動対212は、Iチャネルに対して位相が90度ずれたQチャネルの差動形式のベースバンド信号BBQPおよびBBQNを差動増幅し、1対の差動出力電流を出力する。
【0008】
ミキサ221は、差動対211の1対の差動出力電流とIチャネルのローカル信号LOIPおよびLOINとの周波数混合を行い、1対の差動出力信号を生成する。また、ミキサ222は、差動対212の1対の差動出力電流とQチャネルのローカル信号LOQPおよびLOQNとの周波数混合を行い、1対の差動出力信号を生成する。加算器230は、ミキサ221から得られる1対の差動出力信号と、ミキサ222から得られる1対の差動出力信号とを加算することにより、16QAM送信信号を生成する。なお、このようなギルバートセル型回路を利用した周波数混合器は、例えば特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2014-7606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述したギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサ250において、同ミキサの内部の差動対に閾値Vthなどのミスマッチがある場合、オフセット電圧が発生し、2つの信号と乗算に誤差が発生する。その場合、打ち消されるはずのローカル信号LOの成分が高周波信号RFまでリークすることで、信号妨害電力となり、大きさによっては送受信システムの要求仕様を満たせない場合がある。
【0011】
特許文献1には、ギルバートセル型回路を利用した周波数混合器において、オフセット電圧を検出し、検出したオフセット電圧に基づいて入力信号を補正することで、オフセット電圧を補正する旨の記載がある。しかしながら、このように入力信号を補正することによってオフセット電圧を補正するのは、非常に難しい処理であり、オフセット電圧を十分に除去できない問題がある。
【0012】
この発明は、以上説明した事情に鑑みてなされたものであり、ギルバートセル型回路を利用した周波数混合器において、オフセット電圧を十分に除去することが可能な技術的手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、2つの第1差動対と、1つの第2差動対とを含む複数の差動対を有し、前記2つの第1差動対の共通ノードは、前記第2差動対の2つの差動出力ノードに各々接続されており、前記2つの第1差動対は、各々の2つの差動出力ノードが相互に接続されており、前記第1差動対が第1信号を差動増幅し、前記第2差動対が第2信号を差動増幅することにより、前記第1信号と前記第2信号とを周波数混合した差動信号を前記第1差動対から出力する周波数混合器において、デジタル値を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたデジタル値に基づいて、前記周波数混合器のオフセット電圧を補正するために前記第1差動対または前記第2差動対に与える補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段と、前記周波数混合器から得られるオフセット電圧の極性を判定する判定手段と、前記判定手段の判定結果に基づいて、前記オフセット電圧が0となる前記デジタル値を探索し、前記記憶手段に記憶させる制御手段とを有する周波数混合器を提供する。
【0014】
この発明によれば、判定手段は、周波数混合器から得られるオフセット電圧の極性を判定し、制御手段は、判定手段の判定結果に基づいて、オフセット電圧が0となるデジタル値を探索し、記憶手段に記憶させる。従って、この発明によれば、周波数混合器のオフセット電圧を十分に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の一実施形態である周波数混合器の構成を示す回路図である。
図2】同実施形態の動作を示すタイムチャートである。
図3】同実施形態における差動対の調整の例を示す図である。
図4】ギルバートセル型回路の構成を示す回路図である。
図5】ギルバートセル型回路を利用したミキサの構成例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し、この発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1はこの発明の一実施形態である周波数混合器100の構成を示す回路図である。この周波数混合器100は、位相が相互に90度ずれたIチャネルおよびQチャネルのベースバンド信号BBと、同じく位相が相互に90度ずれたIチャネルおよびQチャネルのローカル信号LOとを混合することにより、高周波信号OUTPおよびOUTMを出力するギルバートセル型ダブル・バランスド・ミキサである。ここで、Iチャネルのベースバンド信号BBは、差動信号である信号BBIPおよびBBINにより構成され、Qチャネルのベースバンド信号BBは、差動信号である信号BBQPおよびBBQNにより構成されている。Iチャネルのローカル信号LOは、差動信号である信号LOIPおよびLOINにより構成され、Qチャネルのローカル信号LOは、差動信号である信号LOQPおよびLOQNにより構成されている。
【0018】
周波数混合器100は、4つの第1差動対11~14と、スイッチSW1~SW4と、2つの第2差動対15および16と、抵抗RPおよびRNと、コンパレータ20と、制御部30と、シフトレジスタ41~46と、DAC51~54と、IDAC55および56と、を有する。
【0019】
第1差動対11~14は、第1信号であるローカル信号LOを差動増幅する手段であり、MOSFET(Metal
Oxide Semiconductor Field Effect Transistor;金属酸化膜半導体構造の電解効果トランジスタであり、以下、単にトランジスタという)により構成されている。
【0020】
さらに詳述すると、第1差動対11は、各々のソースが共通ノード1Cに接続されたトランジスタ1Pおよび1Nからなり、トランジスタ1Pのゲートには信号LOIPが与えられ、トランジスタ1Nのゲートには信号LOINが与えられる。また、第1差動対12は、各々のソースが共通ノード2Cに接続されたトランジスタ2Pおよび2Nからなり、トランジスタ2Pのゲートには信号LOIPが与えられ、トランジスタ2Nのゲートには信号LOINが与えられる。そして、トランジスタ1Pのドレインとトランジスタ2Nのドレインは共通接続され、この共通接続点は、抵抗RPを介して電源VCCに接続されている。また、トランジスタ1Nのドレインとトランジスタ2Pのドレインは共通接続され、この共通接続点は、抵抗RNを介して電源VCCに接続されている。このような構成により、第1差動対11および12の組が、信号LOIPおよびLOINの差動増幅を行う。
【0021】
また、第1差動対13は、各々のソースが共通ノード3Cに接続されたトランジスタ3Pおよび3Nからなり、トランジスタ3Pのゲートには信号LOQPが与えられ、トランジスタ3Nのゲートには信号LOQNが与えられる。また、第1差動対14は、各々のソースが共通ノード4Cに接続されたトランジスタ4Pおよび4Nからなり、トランジスタ4Pのゲートには信号LOQPが与えられ、トランジスタ4Nのゲートには信号LOQNが与えられる。そして、トランジスタ3Pのドレインとトランジスタ4Nのドレインは共通接続され、この共通接続点は、抵抗RNを介して電源VCCに接続されている。また、トランジスタ3Nのドレインとトランジスタ4Pのドレインは共通接続され、この共通接続点は、抵抗RPを介して電源VCCに接続されている。このような構成により、第1差動対13および14の組が、信号LOQPおよびLOQNの差動増幅を行う。
【0022】
そして、第1差動対11~14では、トランジスタ1P、2N、3Nおよび4Pの各ドレインの共通接続点が高周波信号OUTPの出力ノードとなっている。また、トランジスタ1N、2P、3Pおよび4Nの各ドレインの共通接続点が高周波信号OUTNの出力ノードとなっている。
【0023】
第2差動対15および16は、第2信号であるベースバンド信号BBを差動増幅する手段である。さらに詳述すると、第2差動対15は、電流出力型の差動対であり、2つの差動電流出力部15Pおよび15Nを有する。第2差動対15は、第2信号である信号BBIPおよびBBINを差動増幅し、信号BBIPおよびBBINの差分に比例した電流差を持った2つの差動出力電流を差動電流出力部15Pおよび15Nから出力する。同様に第2差動対16は、2つの差動電流出力部16Pおよび16Nを有する。第2差動対16は、第2信号である信号BBQPおよびBBQNを差動増幅し、信号BBQPおよびBBQNの差分に比例した電流差を持った2つの差動出力電流を差動電流出力部16Pおよび16Nから出力する。
【0024】
第1差動対11の共通ノード1Cおよび第1差動対12の共通ノード2Cは、スイッチSW1およびSW2を各々介して、第2差動対15の差動電流出力部15Pおよび15Nに各々接続されている。また、第1差動対13の共通ノード3Cおよび第1差動対14の共通ノード4Cは、スイッチSW3およびSW4を各々介して、第2差動対16の差動電流出力部16Pおよび16Nに各々接続されている。
【0025】
本実施形態では、以上のような第1差動対11~14により第1信号であるローカル信号LOが差動増幅され、第2差動対15および16により第2信号であるベースバンド信号BBが差動増幅される。これにより、第1信号および第2信号を周波数混合した差動信号である高周波信号OUTPおよびOUTNが、第1差動対11~14から出力される。
【0026】
スイッチSW1~SW4は、本実施形態において、周波数混合器100のオフセット電圧を補正する際に、共通ノード1C~4Cへの電流供給を遮断するために設けられた手段である。なお、このようなスイッチSW1~SW4を設ける代わりに、共通ノード1C~4Cに接続される電流源(図1の例では差動電流出力部15P等)の電流値を強制的に0にすることによりスイッチSW1~SW4としての機能を実現してもよい。
【0027】
コンパレータ20は、周波数混合器100のオフセット電圧の極性を判定する判定手段である。このコンパレータ20は、オフセット補正時、周波数混合器100から出力される高周波信号OUTPおよびOUTNを比較する。そして、OUTP>OUTN、すなわち、オフセット電圧の極性が正である場合、コンパレータ20は、信号CMP=1を出力する。また、OUTP<OUTN、すなわち、オフセット電圧の極性が負である場合、コンパレータ20は、信号CMP=0を出力する。
【0028】
シフトレジスタ41~46は、オフセット補正のためのデジタル値を記憶する記憶手段である。DAC51~54およびIDAC55、56は、シフトレジスタ41~46に記憶されたデジタル値に基づき、周波数混合器100のオフセット電圧を補正するために第1差動対11~14または第2差動対15、16に供給する補正バイアスを発生する補正バイアス発生手段である。
【0029】
さらに詳述すると、DAC51は、第1差動対11のトランジスタ1Pおよび1Nに対するバックゲート電圧VBS1PおよびVBS1Nを補正バイアスとして発生する。また、DAC52は、第1差動対12のトランジスタ2Pおよび2Nに対するバックゲート電圧VBS2PおよびVBS2Nを補正バイアスとして発生する。また、DAC53は、第1差動対13のトランジスタ3Pおよび3Nに対するバックゲート電圧VBS3PおよびVBS3Nを補正バイアスとして発生する。また、DAC54は、第1差動対14のトランジスタ4Pおよび4Nに対するバックゲート電圧VBS4PおよびVBS4Nを補正バイアスとして発生する。
【0030】
また、IDAC55は、第2差動対15の差動電流出力部15Pおよび15Nの各出力電流を補正(各出力電流に追加)する補正電流I1およびI2を補正バイアスとして発生する。また、IDAC56は、第2差動対16の差動電流出力部16Pおよび16Nの各出力電流を補正(各出力電流に追加)する補正電流I3およびI4を補正バイアスとして発生する。
【0031】
制御部30は、判定手段であるコンパレータ20の判定結果に基づいて、オフセット電圧が0となるデジタル値を探索し、シフトレジスタ41~46に記憶させる制御手段である。この制御部30は、第1差動対11~14から1の差動対を順次選択し、選択した差動対以外の差動対の共通ノードへの電流の供給を遮断し、選択した差動対についてオフセット電圧が0となるデジタル値を探索する。また、制御部30は、第1差動対11~14に対する補正バイアスを最適化(オフセット電圧が0となるように最適化)した状態において、第2差動対15および16から1つの差動対を順次選択し、選択した差動対についてオフセット電圧が0となるデジタル値を探索する。
【0032】
次に本実施形態の動作を説明する。図2は本実施形態の動作を示すタイムチャートである。図2に示すように、本実施形態における周波数混合器100は、第1差動対11の調整、第1差動対12の調整、第1差動対13の調整、第1差動対14の調整、第2差動対15の調整および第2差動対16の調整を順次実行した後、ノーマル動作に移行する。
【0033】
図3は第1差動対11の調整を例に本実施形態におけるオフセット補正の動作を説明する図である。第1差動対11の調整において、制御部30は、スイッチSW1のみをONとし、スイッチSW2~SW3をOFFとし、調整対象である第1差動対11以外の第1差動対12~14の共通ノード2C~4Cへの電流供給を遮断する。これは、調整対象でない第1差動対12~14が周波数混合器100のオフセット電圧の発生に関与するのを
阻止するためである。
【0034】
この状態において、制御部30は、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいて、DAC51に与えるデジタル値のビットを生成し、このビットをシフトレジスタ41に入力してシフトさせる。
【0035】
さらに詳述すると、この例では、DAC51に入力されるデジタル値の増加に応じて、バックゲート電圧VBIS1Nが増加し、バックゲート電圧VBIS1Pが減少する。そして、この例では、バックゲート電圧VBS1Nが下限値となり、かつ、バックゲート電圧VBS1Pが上限値となるデジタル値MINと、バックゲート電圧VBS1Nが上限値となり、かつ、バックゲート電圧VBS1Pが下限値となるデジタル値MAXとに挟まれた範囲をデジタル値の探索範囲とする。
【0036】
また、本実施形態において、DAC51は、デジタル値の各ビットに重み付けを行ったDA変換を行う際に、ビット1に対してはプラスの重み付けを行い、ビット0についてはマイナスの重み付けを行う。これは、以下説明する2分探索アルゴリズムによりオフセット電圧を0にするデジタル値の探索を行う際に、デジタル値の1つのビットが1になることにより補正バイアスを増加させ、デジタル値の1つのビットが0になることにより補正バイアスを減少させることが必要になるからである。なお、以下の例において、DAC51に入力されるデジタル値は6ビットであるが、デジタル値は7ビット以上であってもよい。
【0037】
まず、制御部30は、DAC51に対してデジタル値MINを与える。この例では、このデジタル値MINが与えられることにより、正のオフセット電圧が周波数混合器100から出力され、CMP=1となっている。そこで、制御部30は、時刻t1において、このCMP=1をDAC51に入力されるデジタル値の最上位ビット(この例では第6ビット)に設定する。また、制御部30は、DAC51に設定したビットをシフトレジスタ41に入力する。DAC51に入力されるデジタル値の各ビットに重み付けして加算した値(すなわち、デジタル値の大きさ)は、D/2相当増加する。この結果、MAX-MIN=Dとした場合に、DAC51の発生するバックゲート電圧VBS1NがD/2相当増加し、バックゲート電圧VBS1PがD/2相当減少する。
【0038】
図3の例では、デジタル値がD/2相当増加した後、周波数混合器100から依然として正のオフセット電圧が出力されており、CMP=1となっている。そこで、制御部30は、時刻t2において、このCMP=1をDAC51に入力されるデジタル値の第5ビットに設定する。また、制御部30は、DAC51に設定したビットをシフトレジスタ41に入力し、シフトレジスタ41に1ビットのシフト動作を行わせる。DAC51に入力されるデジタル値の各ビットに重み付けして加算した値(すなわち、デジタル値の大きさ)は、D/4相当増加する。この結果、DAC51の発生するバックゲート電圧VBS1NがD/4相当増加し、バックゲート電圧VBS1PがD/4相当減少する。
【0039】
そして、デジタル値がD/4相当増加すると、周波数混合器100から負のオフセット電圧が出力され、CMP=0となる。そこで、制御部30は、時刻t3において、このCMP=0をDAC51に入力されるデジタル値の第4ビットに設定する。また、制御部30は、DAC51に設定したビットをシフトレジスタ41に入力し、シフトレジスタ41に1ビットのシフト動作を行わせる。DAC41に入力されるデジタル値の各ビットに重み付けして加算した値(すなわち、デジタル値の大きさ)は、D/8相当減少する。この結果、DAC51の発生するバックゲート電圧VBS1NがD/8相当減少し、バックゲート電圧VBS1PがD/4相当増加する。
【0040】
以下同様であり、制御部30は、コンパレータ20から得られる信号CMPに基づいて、DAC41に入力されるデジタル値のさらに下位のビットを順次決定し、シフトレジスタ41に対する当該ビットの入力を行う。これにより周波数混合器100から出力されるオフセット電圧が次第に減少し、オフセット電圧を0にするデジタル値がシフトレジスタ41に格納される。
【0041】
第1差動対12の調整、第1差動対13の調整、第1差動対14の調整の動作も、以上説明した第1差動対11の調整の動作と同様である。第1差動対12の調整では、スイッチSW2のみをONとし、スイッチSW1、SW3およびSW4をOFFとし、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいてDAC52に入力されるデジタル値の各ビットを決定し、バックゲート電圧VBS2PおよびVBS2Nを調整する。また、第1差動対13の調整では、スイッチSW3のみをONとし、スイッチSW1、SW2およびSW4をOFFとし、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいてDAC53に入力されるデジタル値の各ビットを決定し、バックゲート電圧VBS3PおよびVBS3Nを調整する。また、第1差動対14の調整では、スイッチSW4のみをONとし、スイッチSW1~SW3をOFFとし、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいてDAC54に入力されるデジタル値の各ビットを決定し、バックゲート電圧VBS4PおよびVBS4Nを調整する。
【0042】
第2差動対15の調整および第2差動対16の調整では、シフトレジスタ41~44に記憶されたデジタル値がDAC51~54に与えられる。そして、オフセット電圧が0になるように第1差動対11~14に対する補正バイアスが最適化された状態で、第2差動対15の調整および第2差動対16の調整が行われる。第2差動対15の調整では、スイッチSW1およびSW2をONとし、スイッチSW3およびSW4をOFFとし、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいて、IDAC55に入力されるデジタル値の各ビットを決定し、補正電流I1およびI2を調整する。また、第2差動対16の調整では、スイッチSW1およびSW2をOFFとし、スイッチSW3およびSW4をONとし、コンパレータ20の出力信号CMPに基づいて、IDAC55に入力されるデジタル値の各ビットを決定し、補正電流I1およびI2を調整する。
【0043】
以上の調整により周波数混合器100のオフセット電圧は0となり、このオフセット電圧が0となるデジタル値がシフトレジスタ41~46に格納される。従って、ノーマル動作時には、このシフトレジスタ41~46内の各デジタル値をDAC51~54およびIDAC55、56に与え、オフセット電圧が0の状態で周波数混合器100を動作させることができる。
【0044】
本実施形態によれば、製造ばらつきによって、第1差動対11~14または第2差動対15、16に大きなオフセット電圧が発生していたとしても、ローカル信号LOのリークをシステムの要求仕様を満たすまで自動オフセット補正により大きく低減することができる。また、本実施形態によれば、電源VCCのヘッドルーム電圧の制約でベースバンド信号BBの信号振幅が得られない場合でも、オフセット電圧を補正することによりローカル信号LOのリークを低減できる。
【0045】
なお、オフセット電圧の補正は、任意のタイミングにおいて実行可能であり、初期動作時に実行してもよく、または稼働途中で、あるいは温度変動があった場合に実行してもよい。
【符号の説明】
【0046】
100……周波数混合器、11~14……第1差動対、15,16……第2差動対、SW1~SW4……スイッチ、15P,15N,16P,16N……差動電流出力部、20……コンパレータ、30……制御部、41~46……シフトレジスタ、51~54……DAC、55,56……IDAC。
図1
図2
図3
図4
図5