IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特開2023-170826探索システム、探索装置、および探索方法
<>
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図1
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図2
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図3
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図4
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図5
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図6
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図7
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図8
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図9
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図10
  • 特開-探索システム、探索装置、および探索方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170826
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】探索システム、探索装置、および探索方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20231124BHJP
   G06V 10/143 20220101ALI20231124BHJP
   G06V 10/25 20220101ALI20231124BHJP
   G06V 20/17 20220101ALI20231124BHJP
【FI】
G06T7/00 640
G06T7/00 350B
G06V10/143
G06V10/25
G06V20/17
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082884
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 要
【テーマコード(参考)】
5L096
【Fターム(参考)】
5L096AA06
5L096CA05
5L096DA02
5L096FA06
5L096FA16
5L096GA19
5L096HA11
5L096JA22
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から恒温動物である探索対象を探索可能とする。
【解決手段】探索システム(1)は、探索領域(80)に向けて前記飛行体に配置される赤外線カメラ(11)および可視光カメラ(21)と、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像(110)と可視光カメラにより撮影された可視光画像(210)とに基づいて探索対象(81)を探索する探索装置(100)とを備え、探索装置(100)は、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を探索する探索システムであって、
前記探索領域に向けて前記飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラと、
前記赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と前記可視光カメラにより撮影された可視光画像とに基づいて前記探索対象を探索する探索装置とを備え、
前記探索装置は、基準温度を満たす第1領域として前記赤外線画像の一部を抽出した後、前記第1領域に対応する前記可視光画像の第2領域から前記探索対象を検出する、探索システム。
【請求項2】
前記探索装置は、前記基準温度によって識別される前記赤外線画像の領域のうち基準サイズを満たす領域を前記第1領域として抽出する、請求項1に記載の探索システム。
【請求項3】
前記探索装置は、前記赤外線カメラおよび前記可視光カメラを連動させて前記探索領域を撮影し、前記第1領域として前記赤外線画像の一部を抽出した後、前記可視光画像から前記第2領域を抽出する、請求項1または請求項2に記載の探索システム。
【請求項4】
前記可視光カメラは望遠機能を有し、
前記探索装置は、前記第1領域として前記赤外線画像の一部を抽出した後、前記第1領域に対応する場所を前記可視光カメラで望遠撮影することにより、前記第2領域を含む前記可視光画像を取得する、請求項1または請求項2に記載の探索システム。
【請求項5】
前記探索装置は、前記第2領域に前記探索対象が存在することを推論するための学習済みモデルを用いて、前記第2領域から前記探索対象を検出する、請求項1または請求項2に記載の探索システム。
【請求項6】
前記学習済みモデルは、前記第2領域の画像と、前前記第2領域に前記探索対象が存在するか否かを示す結果とを含む学習用データに基づき、前記第2領域から前記探索対象を検出するように学習されている、請求項5に記載の探索システム。
【請求項7】
前記第2領域は、前記可視光画像のうち、前記第1領域に含まれる前記探索領域が撮影されている領域である、請求項1または請求項2に記載の探索システム。
【請求項8】
前記第2領域は、前記可視光画像のうち、前記第1領域に撮影されている前記探索領域である、請求項1または請求項2に記載の探索システム。
【請求項9】
飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を検出する探索装置であって、
前記飛行体には前記探索領域に向けて赤外線カメラおよび可視光カメラが配置され、
前記赤外線カメラおよび前記可視光カメラの各々により撮影された画像を受信する通信インターフェイスと、
前記通信インターフェイスにより受信された画像に基づいて前記探索対象を検出するプロセッサとを備え、
前記通信インターフェイスは、前記赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と前記可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信し、
前記プロセッサは、基準温度を満たす第1領域として前記赤外線画像の一部を抽出した後、前記第1領域に対応する前記可視光画像の第2領域から前記探索対象を検出する、探索装置。
【請求項10】
飛行体より俯瞰される探索領域からコンピュータを用いて恒温動物である探索対象を検出する探索方法であって、
前記コンピュータは、
前記探索領域に向けて前記飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラの各々により撮影された画像を受信するステップと、
前記受信するステップにより受信された画像に基づいて前記探索対象を検出するステップとを含み、
前記受信するステップは、前記赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と前記可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信するステップを含み、
前記検出するステップは、基準温度を満たす第1領域として前記赤外線画像の一部を抽出した後、前記第1領域に対応する前記可視光画像の第2領域から前記探索対象を検出するステップを含む、探索方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を探索する探索システム、探索装置、および探索方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘリコプターおよびドローンなどの飛行体より俯瞰される探索領域から、人などの探索対象をコンピュータによって自動的に探索する技術が知られている。特許文献1では、空撮画像から人を含む標的物体を検出するためのシステムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-144922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
空撮画像を用いる場合、地上で撮影された画像を用いる場合と比べて、広い探索領域から探索対象を探索することができる。しかしながら、空撮画像を撮影したときの飛行体の高度が高くなるにつれて、空撮画像に含まれる探索対象が小さく、不鮮明となる。その結果、コンピュータを用いた場合であっても、空撮画像から探索対象を判別することが困難になる。この問題を解消するために、より高解像度のカメラで探索領域を撮影することが考えられる。しかし、その場合、高解像度で撮影された広範囲の画像領域の中から小さく映り込んだ探索対象を探索する必要がある。この探索は、コンピュータの処理負荷を増大させてしまう。
【0005】
本開示の目的は、処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から恒温動物である探索対象を探索可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に関わる探索システムは、飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を探索する探索システムであって、探索領域に向けて飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラと、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とに基づいて探索対象を探索する探索装置とを備え、探索装置は、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出する。
【0007】
本開示に関わる探索装置は、飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を検出する探索装置であって、飛行体には探索領域に向けて赤外線カメラおよび可視光カメラが配置され、赤外線カメラおよび可視光カメラの各々により撮影された画像を受信する通信インターフェイスと、通信インターフェイスにより受信された画像に基づいて探索対象を検出するプロセッサとを備え、通信インターフェイスは、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信し、プロセッサは、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出する。
【0008】
本開示に関わる方法は、飛行体より俯瞰される探索領域からコンピュータを用いて恒温動物である探索対象を検出する探索方法であって、コンピュータは、探索領域に向けて飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラの各々により撮影された画像を受信するステップと、受信するステップにより受信された画像に基づいて探索対象を検出するステップとを含み、受信するステップは、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信するステップを含み、検出するステップは、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出するステップを含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から恒温動物である探索対象を探索可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】ヘリコプターに搭載された探索システムを用いて探索領域を探索する様子を示す図である。
図2】探索システムの構成を示すブロック図である(実施の形態1)。
図3】探索対象を検出するための学習済みモデルを作成する手順を説明するためのブロック図である。
図4】探索領域を含む遠赤外線画像および可視光画像を示す図である。
図5】遠赤外線画像から基準温度を満たす第1領域を抽出する手順を示す図である。
図6】遠赤外線画像から基準温度および基準サイズを満たす第1領域を抽出する手順を示す図である。
図7】可視光画像から第1領域に対応する第2領域を抽出する手順を示す図である。
図8】探索領域から探索対象を探索する処理の手順を示すフローチャートである(実施の形態1)。
図9】探索システムの構成を示すブロック図である(実施の形態2)。
図10】探索領域から第1領域に対応する第2領域を望遠撮影する手順を示す図である。
図11】探索領域から探索対象を探索する処理の手順を示すフローチャートである(実施の形態2)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0012】
<実施の形態1>
図1は、ヘリコプター90に搭載された探索システム1を用いて探索領域80を探索する様子を示す図である。図1に示されるように、探索システム1は、探索装置100と、遠赤外線カメラ11と、可視光カメラ21と、表示装置30とを含む。
【0013】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、飛行体の一例となるヘリコプター90の前面側に探索領域80に向けて前記飛行体に配置される。探索装置100および表示装置30は、ヘリコプター90の機内に配置される。遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、探索装置100と通信可能に接続される。表示装置30は、探索装置100から出力される映像信号に基づいた画像を表示する。
【0014】
ヘリコプター90は、探索領域80の上空を飛行する。探索領域80には、たとえば、人間である探索対象81が存在する。人間は、恒温動物である探索対象の一例である。
【0015】
探索領域80には、探索対象81の他、牛82、工場83、車84、樹木85、覆い茂る草86など、様々なオブジェクトが存在する。これらの多数のオブジェクトの存在は、ヘリコプター90の乗員が上空から探索対象81を発見することを困難にする。
【0016】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、定期的に、あるいは、ヘリコプター90の乗員の指示に従うタイミングで、探索領域80の全域を撮影する。遠赤外線カメラ11の撮像範囲と可視光カメラ21との撮像範囲とは、完全に一致していなくてもよく、双方の撮影範囲に重複する範囲が存在すればよい。遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、撮影した画像を探索装置100に送信する。以下、遠赤外線カメラ11で撮影された画像を「遠赤外線画像110」と称し、可視光カメラ21で撮影された画像を「可視光画像210」と称することがある。
【0017】
探索装置100は、遠赤外線カメラ11から受信した遠赤外線画像110と、可視光カメラ21から受信した可視光画像210とを利用することにより、探索対象81を検出する。ここで、遠赤外線画像110と可視光画像210とを利用して探索対象81を検出する利点を説明する。
【0018】
探索システム1では、可視光カメラ21として、解像度の高いカメラが採用されている。このため、コンピュータを用いて可視光画像210を解析することにより、探索領域80の中から探索対象81を検出できる可能性がある。しかし、高解像度の可視光画像210の中に小さく映り込んだ探索対象81を検出するためには、演算性能の高いコンピュータが必要とされる。
【0019】
撮影位置を次々と変更しながら撮影した多数の画像で探索対象81を上空から探索するようなケースでは、一つの画像から探索対象81を検出する処理に長時間を費やすことは好ましくない。このことを考慮すると、システムには、より高性能のコンピュータが求められることになる。検索処理に要求される演算性能に満たないコンピュータを採用した場合、リソース不足のため、コンピュータは、演算自体ができないという状態に陥るかもしれない。
【0020】
したがって、可視光画像210のみを利用して探索対象81を探索するという手法は、システムに採用することのできるコンピュータの選択肢を少なくし、システムのコストを押し上げる。
【0021】
コンピュータの演算性能を考慮して、解像度の低い可視光画像210を利用することも考えられる。その場合、広範囲を撮影した可視光画像210では、探索対象81が画像中で不鮮明になるため、探索対象81の検出性能が極めて劣化するであろう。解像度の低い可視光画像210に写り込む探索対象81の明瞭性を担保するためには、撮影範囲を狭くする必要がある。しかし、それでは、広い探索範囲をカバーすることができないという問題が生じる。
【0022】
したがって、広い探索範囲をカバーしつつ、探索対象81の検出性能を担保するためには、広範囲を所定以上の解像度で撮影した可視光画像210を利用しつつ、コンピュータの演算性能を補完する技術が必要とされる。そこで、本実施の形態では、コンピュータの演算性能を補完するために、遠赤外線カメラ11を利用する。
【0023】
遠赤外線カメラ11を用いることにより、撮影対象の温度分布を画像化することができる。探索領域80を遠赤外線カメラ11で撮影した場合、遠赤外線画像110の温度分布に基づいて、探索領域80に存在する様々なオブジェクトを分類することができる。たとえば、探索対象81である人間が存在する部分は、人間の体温に特徴的な温度分布を示す。
【0024】
したがって、遠赤外線画像110を利用することにより、オブジェクトの形状を明確に判別することはできないものの、探索対象81に特徴的な温度分布が認められる場所を探索領域80の中から特定することができる。たとえば、探索対象81が人間である場合、人間の体温に相当する温度分布が認められる領域を遠赤外線画像110の中から特定することができる。本手法は、たとえば、人などの恒温動物の探索に好適である。
【0025】
本実施の形態に関わる探索装置100は、遠赤外線画像110のうちに探索用遠赤外線画像310を設定する。探索用遠赤外線画像310は、図1に示されるように、赤外線画像110の一部である。探索装置100は、赤外線画像110のすべてを探索用遠赤外線画像310として設定してもよい。探索装置100は、少なくとも、探索用遠赤外線画像310が可視光カメラ21の撮像範囲に包含されるように、探索用遠赤外線画像310を設定する。探索装置100は、探索用遠赤外線画像310の温度分布に基づいて、探索領域80に存在する様々なオブジェクトを分類することができる。探索装置100は、探索用遠赤外線画像310の領域に対応する可視光画像210の領域を特定する。ここで、探索用遠赤外線画像310の領域に対応する可視光画像210の領域は、可視光画像210のうち、探索用遠赤外線画像310の撮影場所と同じ場所(位置、範囲)が撮影されている領域を意味する。探索装置100は、そのようにして特定した領域を可視光画像210の解析対象とする。その結果、広範囲を撮影した可視光画像210のうちから、解析対象の部分を絞り込むことができる。
【0026】
より好ましくは、探索装置100は、探索対象81に特徴的な温度分布が認められる領域のうち、探索対象81に特徴的なサイズに合致した領域を可視光画像210の解析対象とする。たとえば、探索対象81が人間の場合、探索装置100は、人間に特徴的な温度分布が認められる領域のうち、人間のサイズでその温度分布が認められる領域を可視光画像210の解析対象とする。探索装置100は、探索対象81に特徴的なサイズに合致した領域よりも内側の領域を可視光画像210の解析対象としてもよい。
【0027】
これにより、探索対象81に特徴的な温度を有する、探索対象81以外のオブジェクトが解析対象として選択されてしまうことを防止できる。換言すると、より一層、可視光画像210の解析範囲を絞り込むことができる。
【0028】
探索装置100は、可視光画像210のうち、解析対象とした領域のみを探索し、探索対象81を検出する。探索対象81の検出には、パターン認識の技術を利用してもよく、機械学習の技術を利用してもよい。可視光画像210は、探索領域80の全域が高解像度で撮影された画像である。しかし、探索装置100は、可視光画像210のすべてを対象にして探索の演算をする必要がないため、比較的、短時間でその演算を終えることができる。このため、探索装置100には、可視光画像210のすべてを対象にして探索の演算をするために必要とされる高い演算性能までは求められない。したがって、本実施の形態によれば、探索装置100の処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域80から探索対象81を探索することができる。
【0029】
図2は、探索システム1の構成を示すブロック図である(実施の形態1)。図1を用いて説明済みのとおり、探索システム1は、探索装置100と、遠赤外線カメラ11と、可視光カメラ21と、表示装置30とを含む。探索装置100は、プロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、通信インターフェイス104と、表示インターフェイス105とを備える。探索装置100は、典型的には、コンピュータにより構成される。
【0030】
プロセッサ101は、典型的には、CPU(Central Processing Unit)またはMPU(Multi-Processing Unit)などの演算処理部である。プロセッサ101は、演算回路(Processing Circuitry)で構成されてもよい。プロセッサ101は、メモリ102に格納されたプログラムを読み出して実行することで、各種の処理を実現する。
【0031】
メモリ102は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、およびフラッシュメモリなどを含む。メモリ102は、プロセッサ101の演算処理に必要なプログラムなどを格納する。プログラムには、探索対象81を検出するために用いられる探索用プログラムが含まれる。
【0032】
ストレージ103は、ハードディスクドライブなどにより構成される。ストレージ103には、遠赤外線画像110から探索対象81の存在する領域を特定するための基準温度および基準サイズに関する情報、探索対象81を検出するために用いられる各種のデータなどが格納されている。
【0033】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、探索領域80に向かうようにヘリコプター90の前面側に配置されている。遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21の撮影範囲が重なり合うように、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21の向きが調整されている。
【0034】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、通信インターフェイス104を介してプロセッサ101と接続されている。プロセッサ101は、通信インターフェイス104介して、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21に対して撮影の指令を送信する。
【0035】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、撮影の指令に応じて探索領域80を撮影する。プロセッサ101は、たとえば、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21の撮影タイミングが連動するように、一定周期で撮影の指令を遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21へ送信する。プロセッサ101は、ヘリコプター90の乗員の指示を受けて撮影の指令を遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21へ送信してもよい。
【0036】
遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、撮影した画像を、通信インターフェイス104を介してプロセッサ101に送信する。プロセッサ101は、遠赤外線カメラ11から遠赤外線画像110を受信し、可視光カメラ21から可視光画像210を受信する。プロセッサ101は、遠赤外線画像110と可視光画像210との視差のずれを補正するための処理、その他の必要な画像処理を実行する。
【0037】
表示装置30は、表示インターフェイス105を介してプロセッサ101と接続されている。プロセッサ101は、表示装置30に映像信号を出力する。表示装置30は、たとえば、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどにより構成されている。表示装置30は、操作部として機能するタッチパネルを有していてもよい。表示装置30は、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21が撮影した画像を表示する。表示装置30は、探索装置100が検出した探索対象81を可視光画像210上に表示する。
【0038】
図3は、探索対象81を検出するための学習済みモデルを作成する手順を説明するためのブロック図である。本実施の形態では、可視光画像210から探索対象81を検出するために機械学習の技術を利用している。
【0039】
ストレージ103には、可視光画像210から探索対象81を検出するために用いられる推定モデル50が格納されている。ストレージ103に格納された推定モデル50は、学習装置200によって学習される。推定モデル50は、学習装置200によって、可視光画像210から探索対象81を検出するように学習されている。探索装置100は、学習装置200によって学習された推定モデル50をストレージ103に格納する。以下では、学習装置200によって学習済みの推定モデル50を「学習済みモデル50」とも称する。
【0040】
学習装置200は、入力部201と、判定部202と、学習部203とを備える。学習装置200は、典型的には、プロセッサおよびメモリを備えるコンピュータである。探索装置100が学習装置200として機能し、ストレージ103に格納された推定モデル50を学習用データで学習させてもよい。
【0041】
推定モデル50を学習させるため、たとえば、教師あり学習のアルゴリズムが用いられる。学習装置200は、多数の学習用データを用いた教師あり学習によって、推定モデル50を学習させる。学習用データは、学習用可視光画像71と、学習用可視光画像71に対応する正解データ72とから構成される。
【0042】
学習用可視光画像71は、推定モデル50の学習のために予め準備されている。学習用可視光画像71は、探索領域80の全域が撮影された画像であってもよい。学習用可視光画像71は、探索領域80の全域が撮影された画像のうち、探索対象81に特徴的な要素が含まれる領域を抽出した画像であってもよい。なお、探索対象81に特徴的な要素が含まれる領域とは、探索対象81に対応する温度およびサイズによって遠赤外線画像110から特定された領域に対応する部分のことである。正解データ72は、学習用可視光画像71に対応する検出結果の正解を示すデータである。
【0043】
入力部201には、学習用可視光画像71が入力される、学習部203には、正解データ72が入力される、設計者は、学習用データを学習装置200に入力することで、推定モデル50を学習させる。
【0044】
推定モデル50は、ニューラルネットワーク51と、ニューラルネットワーク51によって用いられるパラメータ52とを含む。ニューラルネットワーク51は、畳み込みニューラルネットワーク(CNN:Convolution Neural Network)、リカレントニューラルネットワーク(再帰型ニューラルネットワーク)(RNN:Recurrent Neural Network)、またはLSTMネットワーク(Long Short Term Memory Network)など、ディープラーニングによる画像認識処理で用いられる公知のニューラルネットワークが適用される。推定モデル50は、ニューラルネットワーク51を用いることで、ディープラーニングを行う。パラメータ52は、ニューラルネットワーク51による計算に用いられる重み付け係数などを含む。
【0045】
判定部202は、推定モデル50に基づいて、学習用可視光画像71に探索対象81が含まれるか否かを判定する。判定部202は、推定モデル50によって得られた判定結果を判定結果の確度と共に取得する。
【0046】
学習部203は、判定部202によって得られた判定結果と、正解データ72とに基づき、推定モデル50を学習させる。具体的には、学習部203は、推定モデル50によって得られた判定結果が、正解データ72に近づくように、パラメータ52を調整する。
【0047】
探索装置100は、学習装置200によって学習された推定モデル50を学習済みモデルとして50としてストレージ103に格納する。探索装置100は、学習装置200と通信することによって学習済みモデル50を取得してもよい。
【0048】
図4は、探索領域80を含む遠赤外線画像110および可視光画像210を示す図である。探索装置100は、遠赤外線カメラ11から遠赤外線画像110を取得し、可視光カメラ21から可視光画像210を取得する。遠赤外線画像110では、撮影対象の温度分布が画像化されている。
【0049】
図4の遠赤外線画像110では、多数のオブジェクトのうち、温度の高いオブジェクトの色が相対的に濃く、温度の低いオブジェクトの色が相対的に薄くなっている。たとえば、遠赤外線画像110において、人である探索対象81、牛82、および工場83は、温度が高いオブジェクトとして、車84、樹木85、および草86は、温度が低いオブジェクトとして、それぞれ示されている。
【0050】
工場83は、物の製造に燃焼工程を伴うような製鉄工場などである。車84の温度は、エンジンの駆動の有無で異なる。ここでは、遠赤外線画像110が撮影される前から車84のエンジンの駆動が停止している状態が継続していたものとする。このため、図4の遠赤外線画像110では、車84の色が薄くなっている。なお、図4では、遠赤外線画像110が示す温度分布を単純化して表現している。実際には、遠赤外線画像110は、より高い精度で細やかな温度分布を示す。
【0051】
探索対象81に特徴的な温度およびサイズが予めわかっていれば、遠赤外線画像110を利用することにより、探索対象81が存在する可能性が高い領域を遠赤外線画像110の中から抽出することができる。しかし、遠赤外線画像110は、探索対象81、牛82、工場83、車84、樹木85、および草86などのオブジェクトの輪郭を明瞭に再現できない。このため、遠赤外線画像110から探索対象81を精度良く検出することは難しい。たとえば、探索対象81に特徴的な温度およびサイズに一致または近似する小動物が探索領域80に存在する場合、そのオブジェクトが探索対象81である人なのか、そうでないのかを遠赤外線画像110のみから探索装置100に判別させることは困難である。
【0052】
高解像度で撮影された可視光画像210は、図4に示されるように、それらのオブジェクトの輪郭を明確に再現する。探索装置100は、遠赤外線画像110および可視光画像210のこれらの特徴を踏まえ、以下に詳細に説明する手法により、探索対象81を効率的に探索する。
【0053】
図5は、遠赤外線画像110から基準温度を満たす第1領域を抽出する手順を示す図である。探索装置100は、遠赤外線画像110に探索用遠赤外線画像310を設定する。探索装置100は、探索用遠赤外線画像310から温度分布が基準温度を満たす領域を抽出する。たとえば、探索装置100は、範囲を異ならせて探索用遠赤外線画像310を繰り返し設定し、温度分布が基準温度を満たす第1領域を抽出する。基準温度は、たとえば、T1~T2(T1≦基準温度≦T2)である。探索対象81が人間である場合、人間の標準的な体温を含む範囲を基準温度として設定することができる。探索状況に応じてオペレータが基準温度を設定できる機能を探索装置100に設けてもよい。そのような機能を探索装置100に設けることにより、オペレータは、探索領域80の気温に応じて、基準温度を補正することができる。
【0054】
図5では、温度分布が基準温度を満たす第1領域として、探索対象81を含む領域111、牛82を含む領域112、および工場83を含む領域113が抽出される例が示されている。探索装置100は、遠赤外線画像110から抽出された領域111~113の各々に対応する可視光画像210の領域を学習済みの推定モデル50に入力し、探索対象81を検出してもよい。
【0055】
しかし、図5に示される例では、探索対象81と明らかにサイズの異なる工場83の領域113も抽出されている。また、画像の輪郭が不鮮明な遠赤外線画像110からでも、探索対象81である人間と、牛82とは、そのサイズによって識別できる。遠赤外線画像110から抽出する対象に牛82および工場83を含めないことによって、可視光画像210から探索対象81を検出する処理の負荷をより一層軽減することができる。
【0056】
そこで、図6を用いて、遠赤外線画像110から抽出する対象に牛82および工場83を含めないようにする例を説明する。図6は、遠赤外線画像110から基準温度および基準サイズを満たす第1領域を抽出する手順を示す図である。
【0057】
図6に示されるように、探索装置100は、探索用遠赤外線画像310から、温度分布が基準温度および基準サイズを満たす領域を抽出する。基準温度は、図5を用いて説明したとおりである。基準サイズは、探索対象81の標準的なサイズを考慮して、適宜、設定することができる。たとえば、探索対象81が人間である場合、人間の標準的な高さ(H1≦基準高さ≦H2)および幅(W1≦基準幅≦W2)のサイズを含む範囲を基準サイズとして設定することができる。
【0058】
探索装置100は、探索用遠赤外線画像310から温度分布が基準温度および基準サイズを満たす領域を抽出する。遠赤外線画像110の1つの画素に対応する実寸大のサイズは、遠赤外線画像110の撮影高度などによって変化する。探索装置100は、撮影時のヘリコプター90の高度、撮影方向、撮影角度、遠赤外線カメラ11の画角、および遠赤外線画像110の解像度などの情報を用いることにより、遠赤外線画像110の任意の部分を構成する画素の実寸大のサイズを特定することができる。したがって、探索装置100は、基準サイズを満たす「画素の集合体」の縦の画素数と横の画素数とを算出することができる。探索装置100は、算出された画素の集合体のサイズを利用して、遠赤外線画像110のうちから温度分布が基準温度および基準サイズを満たす領域を抽出する。なお、各画素の値は温度を示す。
【0059】
このようにして遠赤外線画像110のうちから温度分布が基準温度および基準サイズを満たす領域を抽出する処理は、探索装置100に大きな負荷をかけない。このような処理は、学習済みモデルを用いた処理を行う前段階の処理として有効である。
【0060】
図6では、温度分布が基準温度および基準サイズを満たす第1領域として、探索対象81を含む領域111のみが抽出される例が示されている。このように、図6の例では、図5の例と異なり、抽出対象が少なくなっている。その結果、探索装置100の次の処理(可視光画像210から探索対象81を検出する処理)の負荷をより一層軽減することができる。なお、探索対象81を探索する範囲を広げるために、図5を用いて説明した手順で遠赤外線画像110から第1領域を抽出してもよい。
【0061】
図7は、可視光画像210から第1領域に対応する第2領域を抽出する手順を示す図である。ここでは、第1領域は、図6を用いて説明した手法で抽出されているものとする。すなわち、第1領域は、温度分布が基準温度および基準サイズを満たすものとして遠赤外線画像110から抽出された領域111である。
【0062】
探索装置100は、遠赤外線画像110から抽出された第1領域(領域111)に対応する第2領域を可視光画像210から抽出する。遠赤外線画像110と可視光画像210とでは、撮影位置の関係上、視差が存在する。このため、探索装置100は、はじめに、遠赤外線画像110と可視光画像210との視差によるずれを補正する。
【0063】
探索装置100は、視差によるずれを補正した後、遠赤外線画像110から抽出された領域111に対応する可視光画像210の第2領域を特定する。たとえば、探索装置100は、図7に示されるように、可視光画像210をマトリックス状に分割し、分割した領域を順に検索することによって遠赤外線画像110から抽出された領域111に対応する可視光画像210の第2領域を特定してもよい。
【0064】
探索装置100は、遠赤外線画像110から抽出された領域111に対応する可視光画像210の第2領域として、領域211を特定する。探索装置100は、第1領域(領域111)に撮影されている探索領域80の範囲と、第2領域(領域111)に撮影されている探索領域80の範囲とが完全に一致するように、第2領域(領域211)を特定してもよい。この場合、第2領域(領域211)は、可視光画像210のうち、第1領域(領域111)に撮影されている探索領域80に該当する。あるいは、探索装置100は、第1領域(領域111)に撮影されている探索領域80の範囲に、第2領域(領域111)に撮影されている探索領域80の範囲が含まれるように、第2領域(領域211)を特定してもよい。すなわち、第1領域には、第2領域に含まれる探索領域80の範囲よりも、より多くの探索領域80の範囲が含まれていてもよい。この場合、第2領域(領域211)は、可視光画像210のうち、第1領域(領域111)に含まれる探索領域80が撮影されている領域に該当する。
【0065】
探索装置100は、特定した領域211の画像を可視光画像210から抽出し、抽出した画像を学習済みモデル50(学習済みの推定モデル50)に入力する。これにより、学習済みモデル50は、領域211の画像を対象として、探索対象81を検出する。探索装置100は、探索対象81の検出結果を表示装置30に表示する。
【0066】
なお、図5を用いて説明した手法で第1領域を抽出した場合、可視光画像210のうち、領域111~113の各々に対応する画像が学習済みモデル50へ入力される。
【0067】
図6に示される例では、温度分布が基準温度および基準サイズを満たす第1領域として、1つの領域111のみが抽出されている。しかしながら、温度分布が基準温度および基準サイズを満たす第1領域が複数存在する場合も当然に想定される。その場合には、複数の第1領域が探索装置100によって抽出される。この場合、複数の第1領域の各々に対応する第2領域が可視光画像210から抽出される。抽出された複数の第2領域の画像は、学習済みモデル50へ入力される。
【0068】
図8は、探索領域80から探索対象81を探索する処理の手順を示すフローチャートである(実施の形態1)。以下では、図4図7を用いて説明した探索装置100の処理をフローチャートで説明する。
【0069】
はじめに、探索装置100は、探索領域80の全域を撮影するための指令を遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21に出力する(ステップS10)。遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21は、この指令に基づいて連動して探索領域80を撮影する。次に、探索装置100は、遠赤外線カメラ11から遠赤外線画像110を受信し、可視光カメラ21から可視光画像210を受信する(ステップS11)。
【0070】
次に、探索装置100は、遠赤外線画像110のうちに探索用遠赤外線画像310を設定する(ステップS12)。次に、探索装置100は、探索用遠赤外線画像310から温度分布が基準温度および基準サイズを満たす第1領域を抽出する(ステップS13)。これにより、図6を用いて説明したとおり、第1領域として、たとえば、領域111が抽出される。なお、抽出される第1領域の数は1つに限られない。探索装置100は、ステップS13の処理の後、範囲を異ならせて探索用遠赤外線画像310を設定し(ステップS12)、第1領域を抽出する処理(ステップS13)を実行することを繰り返してもよい。
【0071】
次に、探索装置100は、第1領域に対応する可視光画像210の第2領域を特定する(ステップS14)。これにより、図7を用いて説明したとおり、第2領域として、たとえば、可視光画像210の領域211が特定される。次に、探索装置100は、第2領域の画像を抽出する(ステップS15)。
【0072】
次に、探索装置100は、抽出した第2領域の画像を学習済みモデル50に入力し、探索対象81を検出する(ステップS16)。次に、探索装置100は、検出結果を表示装置20に表示し(ステップS17)、本フローチャートに基づく処理を終える。表示装置20は、たとえば、探索対象81が存在すると推定される位置を可視光画像210上に表示する。
【0073】
なお、図5を用いて説明した手法で第1領域を抽出する場合、探索装置100は、本フローチャートのステップS13において、遠赤外線画像110から温度分布が基準温度を満たす第1領域を抽出する。
【0074】
<実施の形態2>
次に、実施の形態2を説明する。図9は、探索システム2の構成を示すブロック図である(実施の形態2)。実施の形態2に関わる探索システム2は、可視光画像210を撮影するカメラとして、可視光カメラ21に変えて、望遠機能を備える可視光カメラ22を備える。
【0075】
探索システム2は、可視光カメラ22の撮影角度を3軸方向に自在に変更するためのジンバル機構40を備える。探索装置100のプロセッサ101は、ジンバル機構40を制御し、可視光カメラ22の撮影角度を3軸方向に自在に変更する。可視光カメラ22は、通信インターフェイス104を介してプロセッサ101と接続されている。プロセッサ101は、可視光カメラ22の望遠レンズの倍率およびジンバル機構40を制御することにより、探索領域80の任意の場所を拡大して撮影する。
【0076】
探索システム2は、望遠機能を備える可視光カメラ22が設けられ、かつ、可視光カメラ22に対するジンバル機構40が設けられる点で、探索システム1のハードウェア構成と異なる。その他の点では、探索システム1と探索システム2とでハードウェア構成は共通する。したがって、探索システム2も探索システム1と同様、遠赤外線カメラ11を備える。探索システム2において、可視光カメラ22は、遠赤外線カメラ11の撮像範囲の任意の部分を望遠撮影する。
【0077】
実施の形態1では、(1)遠赤外線カメラ11と可視光カメラ21とで探索領域80の全域を撮影し、遠赤外線画像110と可視光画像210とを取得する、(2)遠赤外線画像110から探索用遠赤外線画像310を設定する、(3)探索用遠赤外線画像310から第1領域を抽出する、(4)第1領域に対応する第2領域を可視光画像210から抽出する、(5)第2領域の画像を学習済みモデル50に入力する、という手順で探索対象81の探索処理を進めた。
【0078】
実施の形態2では、(1’)遠赤外線カメラ11のみで探索領域80の全域を撮影し、遠赤外線画像110を取得する、(2)遠赤外線画像110から探索用遠赤外線画像310を設定する、(3)探索用遠赤外線画像310ら第1領域を抽出する、(4’)第1領域に対応する第2領域を可視光カメラ22で望遠撮影する、(5)第2領域の画像を学習済みモデル50に入力する、という手順で探索対象81の探索処理を進める。赤外線カメラ11で撮像された第1領域に対応する第2領域を可視光カメラ22で望遠撮影する際、遠赤外線カメラ11で撮像された第1領域の範囲と可視光カメラ21で撮像する第2領域の範囲とは、完全に一致していなくてもよく、双方の撮影範囲に重複する範囲が存在すればよい。
【0079】
実施の形態2は、このように、上記(1’)および上記(4’)の手順の点で、実施の形態1と異なる。上記(4’)に関して、図10を用いて説明する。図10は、探索領域80から第1領域に対応する第2領域を望遠撮影する手順を示す図である。図10には、第2領域として、探索領域80のうちの領域221が撮影される例が示されている。第1領域は、たとえば、図7に示される遠赤外線画像110の領域111である。
【0080】
実施の形態1では、遠赤外線画像110の領域111に対応する第2領域を、予め撮影した可視光画像210から抽出した(図7参照)。これに対して、実施の形態2では、図10に示されるように、遠赤外線画像110の領域111に対応する第2領域(領域221)を可視光カメラ22で望遠撮影する。これにより、探索装置100は、学習済みモデル50に入力する領域221の画像を取得する。
【0081】
可視光カメラ22は、望遠撮影する機能を備えるため、撮影すべき場所が定まれば、上記(4’)のとおり、その場所を上空から拡大して撮影することができる。したがって、可視光カメラ22には、可視光カメラ21のような高い解像度は求められない。
【0082】
このため、実施の形態2によれば、実施の形態2に比較して、低解像度の可視光カメラを活用することができる。一方、実施の形態1の場合、同時またはほぼ同時に撮影した遠赤外線画像110および可視光画像210を利用している。このため、赤外線画像と可視光画像210とに写り込んだ各オブジェクトの位置および状態が共通している。その結果、実施の形態1では、より精度良く、探索対象81を検出することができる。
【0083】
次に、図11を用いて、実施の形態2に関わる探索の処理手順を説明する。図11は、探索領域80から探索対象81を探索する処理の手順を示すフローチャートである(実施の形態2)。
【0084】
はじめに、探索装置100は、探索領域80の全域を撮影するための指令を遠赤外線カメラ11に出力する(ステップS20)。遠赤外線カメラ11は、この指令に基づいて探索領域80を撮影する。次に、探索装置100は、遠赤外線カメラ11から遠赤外線画像110を受信する(ステップS21)。
【0085】
次に、探索装置100は、遠赤外線画像110のうちに探索用遠赤外線画像310を設定する(ステップS22)。探索用遠赤外線画像310は、実施の形態1と同様に、赤外線画像110の一部である。実施の形態1と同様、探索装置100は、赤外線画像110のすべてを探索用遠赤外線画像310として設定してもよい。実施の形態1と同様、探索装置100は、探索用遠赤外線画像310の温度分布に基づいて、探索領域80に存在する様々なオブジェクトを分類することができる。次に、探索装置100は、探索用遠赤外線画像310から温度分布が基準温度および基準サイズを満たす第1領域を抽出する(ステップS23)。この処理は、実施の形態1として説明したステップS13と同様である。これにより、第1領域として、たとえば、領域111(図6参照)が抽出される。
【0086】
次に、探索装置100は、第1領域に対応する場所を探索領域80から特定する(ステップS24)。ここで特定される場所が可視光カメラ22により望遠撮影される第2領域に該当する。次に、探索装置100は、特定した場所の望遠撮影を可視光カメラ22に指令する(ステップS25)。可視光カメラ22は、探索領域80のうち、指令に基づいた場所を望遠撮影する。
【0087】
次に、探索装置100は、可視光カメラ22から、望遠撮影された可視光画像210を受信する(ステップS26)。これにより、探索装置100は、第2領域の画像を取得する。
【0088】
次に、探索装置100は、望遠撮影された画像(取得した第2領域の画像)を学習済みモデル50に入力し、探索対象81を検出する(ステップS27)。次に、探索装置100は、検出結果を表示装置20に表示し(ステップS28)、本フローチャートに基づく処理を終える。表示装置20は、実施の形態1と同様に、探索対象81が存在すると推定される位置を可視光画像210上に表示する。
【0089】
以上に説明した各実施の形態によれば、広い撮影範囲から探索対象81が映っている可能性のある領域を遠赤外線画像110によって絞り込むことで、可視光画像210から探索対象81を検出する際の計算負荷を減らすことができる。その結果、リアルタイムに近い速度で探索処理をすることが可能になる。各実施の形態は、上空を飛行し続ける飛行体から広範囲を撮影しつつ探索対象81を探索する場合に、極めて有用である。
【0090】
<変形例>
以下、本実施の形態の変形例を説明する。
【0091】
本実施の形態では、遠赤外線画像110から抽出する第1領域として矩形の領域111を例に挙げて説明した。しかし、遠赤外線画像110から抽出する第1領域は、探索対象81などのオブジェクトに近い形状であってもよい。この場合、抽出される第1領域の形状は、遠赤外線画像110に表示される温度分布の形状に依存する。
【0092】
本実施の形態では、恒温動物である探索対象81の一例として人間を挙げた。探索対象81の他の例としては、犬および猫などのペット、馬および羊などの家畜を挙げることができる。
【0093】
本実施の形態では、飛行体の一例としてヘリコプター90を挙げた。飛行体の他の例としては、人間が搭乗しないドローンなどを挙げることができる。
【0094】
本実施の形態では、ヘリコプター90に表示装置30を設置した。しかし、ヘリコプター90に表示装置30を設置するのではなく、地上の管制塔などに表示装置30を設置してもよい。この場合、探索装置100は、無線通信によって地上の表示装置30へ映像信号を送信する。
【0095】
本実施の形態では、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21が設けられたヘリコプター90に探索装置100が搭載される。しかし、探索装置100をヘリコプター90とは別の飛行体または地上に設置してもよい。たとえば、探索装置100を管制塔に設けてもよい。この場合、ヘリコプター90には、探索装置100と通信する通信装置を設ける。通信装置は、探索装置100の指令に応じて、遠赤外線カメラ11および可視光カメラ21が撮影した画像を探索装置100へ送信する。
【0096】
[態様]
上記した実施の形態およびその変形例は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0097】
(第1項)一態様に係る探索システムは、飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を探索する探索システムであって、探索領域に向けて飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラと、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とに基づいて探索対象を探索する探索装置とを備え、探索装置は、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出する。
【0098】
第1項に記載の探索システムによれば、処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から探索対象を探索可能となる。
【0099】
(第2項)第1項に記載の探索システムにおいて、探索装置は、基準温度によって識別される赤外線画像の領域のうち基準サイズを満たす領域を第1領域として抽出する。
【0100】
第2項に記載の探索システムによれば、基準温度によって識別される赤外線画像の領域のうち基準サイズを満たす領域が第1領域として抽出されるため、より一層、検出処理の負担を軽減できる。
【0101】
(第3項)第1項または第2項に記載の探索システムにおいて、探索装置は、赤外線カメラおよび可視光カメラを連動させて探索領域を撮影し、第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、可視光画像から第2領域を抽出する。
【0102】
第3項に記載の探索システムによれば、赤外線カメラおよび可視光カメラを連動させて撮影された探索領域の画像が用いられるため、赤外線画像と可視光画像とを対応付ける処理をより単純化することができる。
【0103】
(第4項)第1項または第2項に記載の探索システムにおいて、可視光カメラは望遠機能を有し、探索装置は、第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する場所を可視光カメラで望遠撮影することにより、第2領域を含む可視光画像を取得する。
【0104】
第4項に記載の探索システムによれば、望遠機能を有する可視光カメラを用いることにより、低解像度の安価な可視光カメラを採用することができる。
【0105】
(第5項)第1項~第4項のいずれか1項に記載の探索システムにおいて、探索装置は、第2領域に探索対象が存在することを推論するための学習済みモデルを用いて、第2領域から探索対象を検出する。
【0106】
第5項に記載の探索システムによれば、学習済みモデルを用いて精度よく探索対象を検出することができる。
【0107】
(第6項)第5項に記載の探索システムにおいて、学習済みモデルは、第2領域の画像と、前第2領域に探索対象が存在するか否かを示す結果とを含む学習用データに基づき、第2領域から探索対象を検出するように学習されている。
【0108】
第6項に記載の探索システムによれば、学習用データに基づいた学習により、より精度の高い検出が可能な学習済みモデルを生成することができる。
【0109】
(第7項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の探索システムにおいて、第2領域は、可視光画像のうち、第1領域に含まれる探索領域が撮影されている領域である。
【0110】
第7項に記載の探索システムによれば、可視光画像の処理範囲を第1領域に含まれる探索領域が撮影されている領域に絞り込めるため、検出処理の負担を軽減できる。
【0111】
(第8項)第1項~第6項のいずれか1項に記載の探索システムにおいて、第2領域は、可視光画像のうち、第1領域に撮影されている探索領域である。
【0112】
第8項に記載の探索システムによれば、可視光画像の処理範囲を第1領域に撮影されている探索領域に絞り込めるため、検出処理の負担を軽減できる。
【0113】
(第9項)他の態様に係る探索装置は、飛行体より俯瞰される探索領域から恒温動物である探索対象を検出する探索装置であって、飛行体には探索領域に向けて赤外線カメラおよび可視光カメラが配置され、赤外線カメラおよび可視光カメラの各々により撮影された画像を受信する通信インターフェイスと、通信インターフェイスにより受信された画像に基づいて探索対象を検出するプロセッサとを備え、通信インターフェイスは、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信し、プロセッサは、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出する。
【0114】
第9項に記載の探索装置によれば、処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から探索対象を探索可能となる。
【0115】
(第10項)他の態様に係る探索方法は、飛行体より俯瞰される探索領域からコンピュータを用いて恒温動物である探索対象を検出する探索方法であって、コンピュータは、探索領域に向けて飛行体に配置される赤外線カメラおよび可視光カメラの各々により撮影された画像を受信するステップと、受信するステップにより受信された画像に基づいて探索対象を検出するステップとを含み、受信するステップは、赤外線カメラにより撮影された赤外線画像と可視光カメラにより撮影された可視光画像とを受信するステップを含み、検出するステップは、基準温度を満たす第1領域として赤外線画像の一部を抽出した後、第1領域に対応する可視光画像の第2領域から探索対象を検出するステップを含む。
【0116】
第10項に記載の探索方法によれば、処理負荷が増大することを抑えつつ、探索領域から探索対象を探索可能となる。
【0117】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0118】
1,2 探索システム、11 遠赤外線カメラ、21 可視光カメラ(高解像度)、22 可視光カメラ(望遠)、30 表示装置、40 ジンバル機構、50 推定モデル、51 ニューラルネットワーク、52 パラメータ、71 学習用可視光画像、72 正解データ、80 探索領域、81 人、82 牛、83 工場、84 車、85 樹木、86 草、90 ヘリコプター、100 制御装置(探索装置)、101 プロセッサ、102 メモリ、103 ストレージ、104 通信インターフェイス、105 表示インターフェイス、110 遠赤外線画像、111 領域、112 領域、113 領域、200 学習装置、201 入力部、202 判定部、203 学習部、210 可視光画像、211 領域、221 領域、310 探索用遠赤外線画像。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11