(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170828
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】圧電振動体の固有振動数の評価方法、トランスデューサの駆動方法、信号入出力装置、及び駆動システム
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20231124BHJP
G01H 13/00 20060101ALI20231124BHJP
H10N 30/88 20230101ALI20231124BHJP
H10N 30/20 20230101ALI20231124BHJP
H10N 30/30 20230101ALI20231124BHJP
H04R 29/00 20060101ALI20231124BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231124BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231124BHJP
G10K 15/00 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
G01H13/00
H01L41/053
H01L41/09
H01L41/113
H04R29/00 330
H04R3/00 330
H04R17/00 330K
G10K15/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082887
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(72)【発明者】
【氏名】内貴 崇
【テーマコード(参考)】
2G064
5D019
5D107
【Fターム(参考)】
2G064AA12
2G064AB01
2G064AB02
2G064AB11
2G064BA02
2G064BD18
2G064DD23
5D019AA21
5D019BB02
5D019FF01
5D107AA07
5D107CC02
5D107CD06
5D107DD03
5D107DD12
5D107DE02
5D107FF10
(57)【要約】
【課題】圧電振動体の固有振動数を把握することが可能な評価方法、当該評価方法により得られる圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信してトランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法、トランスデューサに駆動信号を送信し、トランスデューサからの発電波情報を受信している信号送受信装置、及び圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように制御する駆動システムを提供する。
【解決手段】振動膜230及び圧電素子210を備える圧電振動体235の固有振動数の評価方法であって、圧電素子210に一定時間だけ駆動信号を送信して振動膜230を振動させ、圧電素子210への前記駆動信号の送信を停止した後、圧電振動体235の発電波情報を取得し、前記発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を圧電振動体235の固有振動数とする評価方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動膜及び圧電素子を備える圧電振動体の固有振動数の評価方法であって、
前記圧電素子に一定時間だけ駆動信号を送信して前記振動膜を振動させ、
前記圧電素子への前記駆動信号の送信を停止した後、前記圧電振動体の発電波情報を取得し、
前記発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を前記圧電振動体の固有振動数とする評価方法。
【請求項2】
前記圧電素子への前記駆動信号の送信は、前記圧電素子の駆動電圧値の絶対値が最小になるときに停止する、請求項1に記載の評価方法。
【請求項3】
前記振動膜は、メンブレン型である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項4】
前記振動膜は、両持ち梁型である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項5】
前記振動膜は、カンチレバー型である、請求項1に記載の評価方法。
【請求項6】
振動膜と、
前記振動膜に一端が接続している軸部と、
前記軸部の他端と接続し、前記振動膜と離間して前記振動膜を囲っている枠部と、
を備える振動体の固有振動数の評価方法であって、
前記振動膜を振動させ、
前記振動膜上に配置された配線からの電磁誘導による電流情報を取得し、
前記電流情報に基づいて、電流値が最も大きい駆動波の周波数を前記振動体の固有振動数とする評価方法。
【請求項7】
前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサの駆動方法であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信して前記トランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法。
【請求項8】
前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサに前記駆動信号を送信し、前記トランスデューサからの前記発電波情報を受信している信号送受信装置であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の情報を前記トランスデューサから受信して記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された前記固有振動数の情報に基づいて、前記圧電振動体の振動が最も大きくなる駆動信号を前記トランスデューサに送信する制御部と、を備える信号送受信装置。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように、前記振動膜上に配置されている第2の圧電素子に印加する制御電圧を制御する、駆動システム。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の駆動波で駆動したときに得られる発電波の電圧の絶対値が、特定の値を超えないように、前記駆動波の電圧振幅値を決定する、駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、圧電振動体の固有振動数の評価方法、トランスデューサの駆動方法、信号入出力装置、及び駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
MEMSミラーなどの、可動する振動膜のような平板を備えるデバイスは、クーロン力(静電式)、ローレンツ力(電磁式)、圧電応力(圧電式)などにより、平板が膜厚方向に変位する。当該変位により、平板を支持する支持部に応力が生じ、当該応力によって支持部にねじれの力等が加わり、結果として、平板に振動が生じる。当該振動による平板の傾きは、平板の共振周波数(固有振動数)において駆動したときに最も効率がよい状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可動する平板には、製造工程におけるサイズ及び厚さ等の構造上のバラつきが存在し、当該バラつきに伴って、平板を可動させるためのバネとして機能する部分のバネ定数にもバラつきが生じる。結果として、デバイスの最適な駆動周波数である固有振動数は、デバイス毎にバラついており、個々のデバイスの固有振動数を把握することがデバイスを使用する上で重要である。さらに、デバイスの駆動周波数があらかじめ定まっている場合、固有振動数が駆動周波数からずれていると、効率の低下につながる。また、固有振動数が駆動周波数からずれる度に検査し、駆動周波数を調整することは困難である。
【0005】
本実施形態の一態様は、圧電振動体の固有振動数を把握することが可能な評価方法、当該評価方法により得られる圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信してトランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法、トランスデューサに駆動信号を送信し、トランスデューサからの発電波情報を受信している信号送受信装置、及び圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように制御する駆動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の一態様は、振動膜及び圧電素子を備える圧電振動体の固有振動数の評価方法であって、前記圧電素子に一定時間だけ駆動信号を送信して前記振動膜を振動させ、前記圧電素子への前記駆動信号の送信を停止した後、前記圧電振動体の発電波情報を取得し、前記発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を前記圧電振動体の固有振動数とする評価方法である。
【0007】
また、本実施形態の他の一態様は、振動膜と、前記振動膜に一端が接続している軸部と、前記軸部の他端と接続し、前記振動膜と離間して前記振動膜を囲っている枠部と、を備える圧電振動体の固有振動数の評価方法であって、前記振動膜を振動させ、前記振動膜上に配置された配線からの電磁誘導による電流情報を取得し、前記電流情報に基づいて、電流値が最も大きい駆動波の周波数を前記圧電振動体の固有振動数とする評価方法である。
【0008】
また、本実施形態の他の一態様は、前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサの駆動方法であって、前述の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信して前記トランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法である。
【0009】
また、本実施形態の他の一態様は、前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサに前記駆動信号を送信し、トランスデューサからの発電波情報を受信している信号送受信装置であって、前述の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の情報を前記トランスデューサから受信して記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記固有振動数の情報に基づいて、前記圧電振動体の振動が最も大きくなる駆動信号を前記トランスデューサに送信する制御部と、を備える信号送受信装置である。
【0010】
また、本実施形態の他の一態様は、前述の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように、前記振動膜上に配置されている第2の圧電素子に印加する制御電圧を制御する、駆動システムである。
【0011】
また、本実施形態の他の一態様は、前述の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の駆動波で駆動したときに得られる発電波の電圧の絶対値が、特定の値を超えないように、前記駆動波の電圧振幅値を決定する、駆動システムである。
【発明の効果】
【0012】
本実施形態によれば、圧電振動体の固有振動数を把握することが可能な評価方法、当該評価方法により得られる圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信してトランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法、トランスデューサに駆動信号を送信し、トランスデューサからの発電波情報を受信している信号送受信装置、及び圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように制御する駆動システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態におけるトランスデューサの構成の一例を示す上面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態における圧電振動体の固有振動数を評価するための処理の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態におけるトランスデューサの変形例1を示す上面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態におけるトランスデューサの変形例2を示す上面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態におけるMEMSミラーの構成を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本実施形態について説明する。以下に説明する図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各構成部品の厚みと平面寸法との関係等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面の相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0015】
また、以下に示す実施形態は、技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を特定するものではない。本実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0016】
具体的な本実施形態の一態様は、以下の通りである。
【0017】
<1> 振動膜及び圧電素子を備える圧電振動体の固有振動数の評価方法であって、前記圧電素子に一定時間だけ駆動信号を送信して前記振動膜を振動させ、前記圧電素子への前記駆動信号の送信を停止した後、前記圧電振動体の発電波情報を取得し、前記発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を前記圧電振動体の固有振動数とする評価方法。
【0018】
<1>によれば、圧電素子にいくつかの駆動信号を送信して振動膜を振動させ、それぞれの駆動信号に対する圧電振動体の発電波情報を取得することにより、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい圧電振動体の固有振動数と評価することができる。
【0019】
<2> 前記圧電素子への前記駆動信号の送信は、前記圧電素子の駆動電圧値の絶対値が最小になるときに停止する、<1>に記載の評価方法。
【0020】
<2>によれば、圧電振動体の振動に弾みがついている状態において、駆動信号の送信を停止することにより、停止した後でも上記弾みによる圧電振動体の振動レベル(振幅)を発電波モニタでより詳細に評価することができる。
【0021】
<3> 前記振動膜は、メンブレン型である、<1>又は<2>に記載の評価方法。
【0022】
<3>によれば、振動膜の外周部が拘束(固定)されているため、圧電振動体の機械的強度を確保することができ、さらに高周波領域において効率よく圧電振動体を駆動することができる。
【0023】
<4> 前記振動膜は、両持ち梁型である、<1>又は<2>に記載の評価方法。
【0024】
<4>によれば、振動膜の両端が拘束(固定)されているため、圧電振動体の機械的強度を確保することができる。
【0025】
<5> 前記振動膜は、カンチレバー型である、<1>又は<2>に記載の評価方法。
【0026】
<5>によれば、振動膜の端部が片側だけ拘束(固定)されているため、圧電振動体が振動しやすく、小さなエネルギーで効率よく圧電振動体を振動させることができる。
【0027】
<6> 振動膜と、前記振動膜に一端が接続している軸部と、前記軸部の他端と接続し、前記振動膜と離間して前記振動膜を囲っている枠部と、を備える振動体の固有振動数の評価方法であって、前記振動膜を振動させ、前記振動膜上に配置された配線からの電磁誘導による電流情報を取得し、前記電流情報に基づいて、電流値が最も大きい駆動波の周波数を前記振動体の固有振動数とする評価方法。
【0028】
<6>によれば振動膜を振動させ、振動に対する振動体(MEMSミラー)の発電波情報を取得することにより、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい振動体の固有振動数と評価することができる。
【0029】
<7> 前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサの駆動方法であって、<1>~<5>のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が得られた駆動信号を受信して前記トランスデューサを駆動するトランスデューサの駆動方法。
【0030】
<7>によれば、最適な固有振動数が得られた駆動信号をトランスデューサが受信することにより、効率よくトランスデューサを駆動させることができる。
【0031】
<8> 前記圧電振動体の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって前記圧電振動体が振動するトランスデューサに前記駆動信号を送信し、トランスデューサからの発電波情報を受信している信号送受信装置であって、<1>~<5>のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の情報を前記トランスデューサから受信して記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶された前記固有振動数の情報に基づいて、前記圧電振動体の振動が最も大きくなる駆動信号を前記トランスデューサに送信する制御部と、を備える信号送受信装置。
【0032】
<8>によれば、トランスデューサが受信する駆動信号を、記憶部に記憶された固有振動数の情報に基づいて、圧電振動体の振動が最も大きくなるものに制御することができる。
【0033】
<9> <1>~<5>のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数が特定の振動数となるように、前記振動膜上に配置されている第2の圧電素子(後述では圧電素子220ともいう)に印加する制御電圧を制御する、駆動システム。
【0034】
<9>によれば、第2の圧電素子に印加する制御電圧を制御することにより、第2の圧電素子が変形し、第2の圧電素子の変形に伴って振動膜も変形する。振動膜の変形によって振動膜自身のバネ定数が変化するため、結果として第2の圧電素子に印加される制御電圧を調整することにより圧電振動体の固有振動数を調整することができる。
【0035】
<10> <1>~<5>のいずれか1項に記載の評価方法により得られる前記圧電振動体の固有振動数の駆動波で駆動したときに得られる発電波の電圧の絶対値が、特定の値を超えないように、前記駆動波の電圧振幅値を決定する、駆動システム。
【0036】
<10>によれば、駆動波の電圧振幅値をフィードバック情報として用いることにより、圧電振動体の、温度などの環境要因又は経年劣化などにより特性変動があったとしても、発電波の電圧の絶対値が特定の値を超えないように制御することができる。
【0037】
<駆動システム>
本実施形態に係る駆動システムの構成について図面を用いて説明する。
【0038】
図1は、本実施形態に係る駆動システムの構成を示すブロック図である。
図2は、本実施形態におけるトランスデューサ200の構成の一例を示す上面図である。
図3は、
図2のIII-III線に沿う断面図である。駆動システム10は、信号送受信装置100と、トランスデューサ200と、を含んで構成される。
【0039】
トランスデューサ200は、振動によって超音波を送信し、かつ超音波を受信することにより振動する圧電素子210と、制御電圧を印加することにより圧電振動体235の固有振動数を制御する圧電素子220と、上面に圧電素子210及び圧電素子220が配置されている振動膜230と、振動膜230が連結されている膜支持部240と、を含んで構成される。また、膜支持部240には、振動膜230を分離するためのスリット237が設けられている。なお、圧電素子210及び振動膜230をまとめて圧電振動体235ともいう。
【0040】
トランスデューサ200は、振動膜230及び圧電素子210を含む圧電振動体235の振動によって超音波を送信し、かつ、超音波を受信することによって圧電振動体235が振動するため、センサとして機能を有する。
【0041】
トランスデューサ200は、例えば、超音波を送信させて、対象物から反射波が返ってくるまでの時間TOF(Time Of Flight)を計測することにより対象物までの距離を測定することが可能な測距システム等に用いられる。
【0042】
本実施形態において、振動膜230からみて圧電素子210が位置している方向を上方向、圧電素子210からみて振動膜230が位置している方向を下方向とする。以下の説明では、
図3に示すトランスデューサ200の状態を基準に上下方向を定義するが、トランスデューサ200を使用する方向を限定するものではない。
【0043】
圧電素子は、圧電膜の膜厚等の出来上がりのサイズ、圧電膜の結晶特性、微小欠陥等を含む出来栄え、温度などの環境要因、又は経年劣化などにより特性変動がある。本実施形態における駆動システム10は、このような特性変動によって変化した圧電素子210(圧電振動体235)に対して、現環境及び状態における固有振動数を求める、又は所定の固有振動数を得るための条件を求めることを可能とするものである。なお、所定の固有振動数を得るための条件とは、例えば、制御電圧を調整することが該当する。
【0044】
超音波の送信時において、トランスデューサ200は、圧電素子210に駆動信号の駆動電圧を印加し、圧電素子210を振動させ、圧電素子210に接する振動膜230が振動することで送信超音波が発生する。つまり、圧電振動体235が振動することで送信超音波が発生する。また、超音波の受信時においては、圧電振動体235の振動に基づいて、当該振動により生じる電気信号をセンシングすることで所定の周波数の受信超音波の受信を検知する。
【0045】
圧電素子210は、上部電極210aと、下部電極210bと、圧電膜210cと、を含む。すなわち、圧電素子210は、圧電膜210cを上部電極210a及び下部電極210bで上下方向から挟む形で積層された形態で構成される。また、振動膜230は、下部電極210bと接しているものとする。すなわち、本実施形態において、圧電素子210は、振動膜230、下部電極210b、圧電膜210c、及び上部電極210aの下から順に積層された形態で構成されるものとする。
【0046】
上部電極210a及び下部電極210bは、例えば、プラチナ、モリブデン、イリジウム、又はチタンなどの導電性を有する金属の薄膜を用いて形成されている。上部電極210aは、前述の通り、圧電膜210cの上側に位置し、上部電極210aに駆動電圧を印加するための回路パターンである電極パッド(図示なし)と接続されている。同様に、下部電極210bは、圧電膜210cの下側に位置し、下部電極210bに駆動電圧を印加するための回路パターンである電極パッド(図示なし)と配線を介して電気的に接続されている。
【0047】
本明細書等において、「電気的に接続」とは、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に限定されない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極、配線、スイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、容量素子、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0048】
圧電膜210cは、例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)によって構成されている。圧電膜210cは、チタン酸ジルコン酸鉛以外にも、窒化アルミニウム(AlN)、酸化亜鉛(ZnO)、又はチタン酸鉛(PbTiO3)などを用いることができる。
【0049】
振動膜230は、薄膜から構成されており、両端が膜支持部240に拘束(固定)されている両持ち梁型である。振動膜230の両端が拘束(固定)されているため、圧電振動体235の機械的強度を確保することができる。また、振動膜230は、膜厚方向、すなわち振動膜230に対する法線方向に変位可能なように構成されている。膜支持部240は、中空部(キャビティ)を有し、当該中空部の内周面に振動膜230が連結されている。振動膜230は膜支持部240の上端側に連結される。振動膜230及び膜支持部240は、例えば、シリコンからなる。
【0050】
超音波の送信時においては、上部電極210a及び下部電極210bには、信号送受信装置100から送られる駆動信号の駆動電圧が印加される。上部電極210a及び下部電極210bに送られてきた駆動信号の駆動電圧に応じて、圧電素子210(圧電振動体235)が振動し、送信超音波が発生する。
【0051】
超音波の受信時においては、振動膜230(圧電振動体235)に所定の周波数の超音波が到達することで振動膜230が振動する。振動膜230の振動により、圧電素子210の上部電極210a及び下部電極210bの間に電位差が生じることで所定の電圧が発生する。発生した電圧を検知することで超音波を受信することが可能となる。発生した電圧は、圧電素子210の電極パッドを介して、信号送受信装置100に送られる。
【0052】
本実施形態において、この超音波の受信時の電極の間には正圧電効果によって信号(電気信号)が生じ、信号送受信装置100は、その信号を取り出す。つまり、電極を、当該電気信号をセンシングするための振動センサとして使用する。一般的に振動センサにおいて感度が最も高い受信周波数は、センシングデバイスとなる圧電振動体235の固有振動数である。駆動システム10は、外部からの入力に対して、圧電振動体235自らの固有振動数を評価及び調整することによって、もっとも感度の高い、より快適な状態にすることができる。
【0053】
また、トランスデューサ200は、圧電素子210から送信される超音波の送信周波数、及び受信可能な超音波の受信周波数を調整することができる制御用の圧電素子220を備える。
【0054】
圧電素子220は、信号送受信装置100から送られる所定の制御電圧を印加することにより、振動膜230を変形させ、送信超音波の送信周波数、及び受信超音波の受信周波数を調整する。圧電素子220は、
図3に示すように、圧電素子210と同様に、振動膜230、下部電極220b、圧電膜220c、及び上部電極220aの下から順に積層された形態で構成されるものとする。
【0055】
上部電極220aと下部電極220bとの間に電圧が印加されると、圧電膜220cは膜厚方向(上方向)に垂直な方向(横方向)に収縮する(同時に膜厚方向に少し膨張する)ため、膜厚方向(上方向)に垂直な方向に収縮しない振動膜230及び振動膜230と積層されている部分は上側に反り上がり、振動膜230等が変形する。このとき、反り上がった部分のバネ定数が変化し(硬くなる)、これにより振動膜230が引っ張られることから振動膜230の張力も変化し(増大する)、結果として、振動膜230のバネ定数や張力などの機械的性質を変化させることができる。このようにして制御電圧が高くなっていくと、振動膜230の固有振動数が高くなる(領域が存在する)性質を活用することにより、振動膜230を含む圧電振動体235の固有振動数を変化させることができる。
【0056】
制御電圧は、例えば、0V又は任意の固定電圧、0~5Vの正弦波などを用いることができる。また、制御用の圧電素子220に印加する電圧は、フィルター等で変調した電圧を用いることができ、例えば、上部電極220aに印加する電圧を変調させて下部電極220bに変調させた電圧を印加することができる。このようにすることにより、電極パッドの数及び印加する駆動電圧の種類を減らすことができ、製造工程をより簡便にすることができる。
【0057】
また、上記構成では、圧電素子210を超音波振動駆動用(受信用)の圧電素子、圧電素子220を固有振動数制御用の圧電素子としていたがこれに限られず、圧電素子210は、信号送受信装置100から送られる所定の制御電圧を印加することにより、振動膜230を変形させ、送信超音波の送信周波数、及び受信超音波の受信周波数を調整し、圧電素子220に信号送受信装置100から送られる電圧を印加して振動膜230を振動させる、あるいは受信時に圧電素子220から送信される超音波の受信波形を信号送受信装置100に送る構成としてもよい。この場合、圧電素子210(圧電振動体235)は、制御電圧に応じて圧電膜210cに応力が発生して、当該応力に伴って振動膜230も変形し、結果として、振動膜230のバネ定数等が変化し、超音波送受信用の圧電素子220と振動膜230を含む圧電振動体の固有振動数を変化させることができる。
【0058】
次に、信号送受信装置100について説明する。信号送受信装置100は、送受信部110と、制御部120と、記憶部130と、を備える。
【0059】
送受信部110は、駆動波生成部111と、発電波モニタ112と、入出力切替部113と、を含んで構成される。駆動波生成部111は、圧電素子210に送信するための駆動波を生成する。発電波モニタ112は、圧電素子210を含む圧電振動体235の発電波情報を取得する。入出力切替部113は、圧電素子210への駆動信号の送信の開始又は停止を制御し、駆動信号の送信を停止するときは、発電波モニタ112により圧電振動体235の発電波情報を取得することができる。
【0060】
制御部120は、駆動制御部121と、電圧制御部122と、を含んで構成される。駆動制御部121は、駆動波生成部111における駆動波の生成、発電波モニタ112における圧電振動体235の発電波情報の取得、入出力切替部113における圧電素子210への駆動信号の送信の制御、記憶部130への圧電振動体235の発電波情報の格納等を制御する。電圧制御部122は、制御用の圧電素子220に所定の制御電圧を印加する。
【0061】
また、信号送受信装置100は、入出力部(送受信部110)、CPU(中央処理装置、制御部120)、及びメモリ(記憶部130)等を備える汎用のマイクロコンピュータとして構成してもよい。この場合、マイクロコンピュータには、信号送受信装置100として機能させるためのコンピュータプログラムがインストールされていてもよい。コンピュータプログラムを実行することにより、マイクロコンピュータは、信号送受信装置100が備える複数の情報処理回路として機能する。なお、後述の各情報処理を実行するための専用のハードウェアを用意して、情報処理回路を構成することも可能である。また、複数の情報処理回路を個別のハードウェアにより構成してもよい。
【0062】
記憶部130は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random access memory)、ハードディスク等で構成される。記憶部130は、圧電素子210への駆動信号の送信を停止した後、圧電振動体235の振動に基づいて、当該振動により生じる圧電振動体235の発電波情報等の情報をデータとして格納する。データを格納する記憶部は、一つのストレージデバイスの中に物理的又は論理的に分けて設けられた領域として構成されていてもよく、また、物理的に異なる複数のストレージデバイスに各データの記憶部を設ける構成としてもよい。
【0063】
(駆動システム10の処理フローの概略)
次に、
図4に示すフローチャートを用いて駆動システム10における処理(圧電振動体の固有振動数の評価方法)の流れを示す。
図4のフローチャートに示す駆動システム10の一連の動作は、駆動システム10が起動されると開始され、圧電振動体の固有振動数の決定により処理を終了する。また、
図4に示すフローチャートは、電源オフ又は処理終了の割り込みによっても処理は終了する。
【0064】
ステップS401において、駆動制御部121は、圧電素子210に印加する駆動波の周波数に初期値を設定する。ここで、駆動波の周波数に設定する初期値は、例えば、デバイスの仕様値である40kHzが設定される。
【0065】
ステップS402において、駆動制御部121は、圧電素子210に駆動信号を送信する。これにより、トランスデューサ200の振動膜230(圧電振動体235)が振動する。
【0066】
ステップS403において、圧電素子210に送信した駆動信号における振動膜230の振動レベル(振幅)が最も大きくなるまで振動させた後、入出力切替部113は、圧電素子210への駆動信号の送信を停止する。その後、圧電振動体の振動レベル(振幅)を発電波モニタで検出し、圧電振動体235の発電波情報を取得する。取得した圧電振動体235の発電波情報は、データとして記憶部130に格納される。圧電素子210への駆動信号の送信は、圧電素子210の駆動電圧値の絶対値が最小になるとき(例えば、最低駆動電圧値が0V)に停止させると、圧電振動体235の振動に弾みがついている状態から後の圧電振動体の振動レベル(振幅)を発電波モニタでより詳細に評価することができるため好ましい。
【0067】
また、圧電振動体の振動レベル(振幅)を駆動波の電圧振幅値として記憶部130に格納してもよい。格納したフィードバック情報を用いることにより、圧電振動体235の固有振動数の駆動波で駆動したときに得られる発電波の電圧の絶対値が、特定の値を超えないように、駆動波の電圧振幅値を決定することができる。これにより、圧電振動体235の、温度などの環境要因又は経年劣化などにより特性変動があったとしても、発電波の電圧の絶対値が特定の値を超えないように制御することができる。
【0068】
ステップS404において、制御部120は、所定の周波数に対する圧電振動体235の発電波情報の取得が終了したか否かを判定する。ここで所定の周波数とは、固有振動数の検査(センシング)において、あらかじめ設定された検査対象(センシング対象)となる周波数である。
【0069】
ステップS404において、制御部120は、所定の周波数に対する圧電振動体235の発電波情報の取得が終了したと判定した場合(ステップS404:YES)には、処理はステップS405に進む。一方で、ステップS404において、制御部120は、所定の周波数に対する圧電振動体235の発電波情報の取得が終了していないと判定した場合(ステップS404:NO)には、処理はステップS407に進む。
【0070】
ステップS405において、制御部120は、記憶部130に格納されている圧電振動体235の発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を判定する。
【0071】
ステップS406において、制御部120は、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を圧電振動体235の固有振動数として決定(評価)する。
【0072】
ステップS407において、駆動制御部121は、圧電素子210に印加する駆動波の周波数を変更する。具体的には、あらかじめ定められた検査内容に従って、駆動波の周波数を変更する。本実施形態では、駆動制御部121は、駆動波の周波数を1kHzずつ変化させる。すなわち、ステップS407においては、駆動制御部121は、駆動波の周波数の値を1kHz変化させる。その後、処理はステップS402に戻る。
【0073】
本実施形態では、所定の周波数を複数設定し、これらの周波数に対する圧電振動体235の発電波情報を取得し、数種類の発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を判定するため、最低1回はステップS407に進み、判定に必要な圧電振動体235の発電波情報を取得する。具体的には、例えば、デバイスの仕様値が40kHzである場合、最初に40kHzが設定される。次に、駆動制御部121は、駆動波の周波数を1kHzずつ増加させる。上記判定において、発電波の電圧の値がピークを越えて下降しはじめたら、より小刻みな周波数ステップで駆動波の周波数を逆行させて(例えば、0.5kHzずつ減少させる)もよい。さらに、これ以降、ピークを超えたらより小刻みな周波数ステップで駆動波の周波数を逆行させる処理を繰り返し行うことにより、より正確な圧電振動体235の固有振動数の評価を行うことができる。
【0074】
また、既に数種類の発電波情報が記憶部130に格納されている場合は、一度もステップS407に進まず圧電振動体235の固有振動数の評価を行ってもよい。
【0075】
前述の駆動システム10の処理フローによれば、圧電素子210にいくつかの駆動信号を送信して振動膜230を振動させ、それぞれの駆動信号に対する圧電振動体235の発電波情報を取得することにより、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい圧電振動体の固有振動数と評価することができる。
【0076】
(トランスデューサ200の駆動)
前述により、決定した圧電振動体235の固有振動数に基づいて、駆動制御部121は、当該固有振動数が得られた駆動信号を受信して圧電素子210に当該駆動信号を送信する。これにより、振動膜230(圧電振動体235)が振動し、トランスデューサ200が駆動する。当該駆動信号は、圧電振動体235の最適な固有振動数が得られるものであるため、圧電素子210が当該駆動信号を受信することにより、効率よくトランスデューサ200を駆動させることができる。
【0077】
(固有振動数の調整)
電圧制御部122は、制御用の圧電素子220に印加する制御電圧の値を制御して圧電振動体235の固有振動数を調整してもよい。具体的には、前述のフローチャートと同様に、圧電素子220に印加する制御電圧により変化する圧電振動体235の発電波情報を取得し、取得した圧電振動体235の発電波情報は、データとして記憶部130に格納される。電圧制御部122は、記憶部130に格納された圧電振動体235の発電波情報に基づいて、発電波の電圧の値が最も大きいときの制御電圧の値を判定する。制御部120は、発電波の電圧の値が最も大きいときの制御電圧の値を圧電素子220に印加する。これにより、圧電振動体235の固有振動数を最適な状態に調整することができる。
【0078】
本実施形態では、振動膜230が両持ち梁であるトランスデューサ200を用いたがこれに限られず、以下の変形例に示すような他のデバイスの固有振動数を評価してもよい。
【0079】
[第1の変形例]
図5及び
図6を用いて、本変形例におけるトランスデューサ200Aの構成を説明する。
図5は、本変形例におけるトランスデューサ200Aの構成の一例を示す上面図である。
図6は、
図5のVI-VI線に沿う断面図である。トランスデューサ200Aは、振動によって超音波を送信し、かつ超音波を受信することにより振動する圧電素子210と、上面に圧電素子210が配置されている振動膜230Aと、振動膜230Aの片方端部が連結されている膜支持部240Aと、を含んで構成される。また、膜支持部240Aには、振動膜230Aを分離するためのスリット237Aが設けられている。なお、圧電素子210及び振動膜230Aをまとめて圧電振動体235Aともいう。本変形例におけるトランスデューサ200Aが前述の
図2及び
図3に示すトランスデューサ200と異なる点は、振動膜230及び膜支持部240に代えて振動膜230A及び膜支持部240Aが設けられ、さらに、圧電素子210の片方の端部が膜支持部240A上に配置されている点である。本変形例において
図2及び
図3に示すトランスデューサ200と共通する点は前述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0080】
振動膜230Aは、薄膜から構成されており、スリット237Aの存在により、片方の端部が膜支持部240Aに拘束(固定)されているカンチレバー型である。振動膜230Aは、片側の端部だけ拘束(固定)されているため、圧電振動体235が振動しやすく、小さなエネルギーで効率よく圧電振動体235Aを振動させることができる。
【0081】
膜支持部240Aの説明は、前述の膜支持部240を援用することができる。
【0082】
駆動システム10がトランスデューサ200Aを含む場合でも、前述のように、圧電素子210にいくつかの駆動信号を送信して振動膜230Aを振動させ、それぞれの駆動信号に対する圧電振動体235Aの発電波情報を取得することにより、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい圧電振動体の固有振動数と評価することができる。
【0083】
また、前述のように、決定した圧電振動体235Aの固有振動数に基づいて、駆動制御部121は、当該固有振動数が得られた駆動信号を受信して圧電素子210に当該駆動信号を送信する。これにより、振動膜230A(圧電振動体235A)が振動し、トランスデューサ200Aが駆動する。当該駆動信号は、圧電振動体235Aの最適な固有振動数が得られるものであるため、圧電素子210が当該駆動信号を受信することにより、効率よくトランスデューサ200Aを駆動させることができる。
【0084】
[第2の変形例]
図7及び
図8を用いて、本変形例におけるトランスデューサ200Bの構成を説明する。
図7は、本変形例におけるトランスデューサ200Bの構成の一例を示す上面図である。
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う断面図である。トランスデューサ200Bは、振動によって超音波を送信し、かつ超音波を受信することにより振動する圧電素子210と、制御電圧を印加することにより圧電振動体235Bの固有振動数を制御する圧電素子220Aと、上面に圧電素子210が配置されている振動膜230Bと、振動膜230Bが連結されている膜支持部240と、を含んで構成される。なお、圧電素子210及び振動膜230Bをまとめて圧電振動体235Bともいう。本変形例におけるトランスデューサ200Bが前述の
図2及び
図3に示すトランスデューサ200と異なる点は、圧電素子220及び振動膜230に代えて圧電素子220A及び振動膜230Bが設けられている点である。本変形例において
図2及び
図3に示すトランスデューサ200と共通する点は前述の説明を援用し、以下、異なる点について説明する。
【0085】
振動膜230Bは、薄膜から構成されており、振動膜230Bの外周部が膜支持部240に拘束(固定)されているメンブレン型である。振動膜230Bは、振動膜230Bの外周部が拘束(固定)されているため、圧電振動体235Bの機械的強度を確保することができ、さらに高周波領域において効率よく圧電振動体235Bを駆動することができる。
【0086】
圧電素子220Aの説明は、前述の圧電素子220を援用することができる。また、圧電素子220Aは、圧電素子210を囲うように設けられている。
【0087】
駆動システム10がトランスデューサ200Bを含む場合でも、前述のように、圧電素子210にいくつかの駆動信号を送信して振動膜230Bを振動させ、それぞれの駆動信号に対する圧電振動体235Bの発電波情報を取得することにより、発電波の電圧の値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい圧電振動体の固有振動数と評価することができる。
【0088】
また、前述のように、決定した圧電振動体235Bの固有振動数に基づいて、駆動制御部121は、当該固有振動数が得られた駆動信号を受信して圧電素子210に当該駆動信号を送信する。これにより、振動膜230B(圧電振動体235B)が振動し、トランスデューサ200Bが駆動する。当該駆動信号は、圧電振動体235Bの最適な固有振動数が得られるものであるため、圧電素子210が当該駆動信号を受信することにより、効率よくトランスデューサ200Bを駆動させることができる。
【0089】
さらに、前述のように、電圧制御部122は、制御用の圧電素子220に印加する制御電圧の値を制御して圧電振動体235Bの固有振動数を調整してもよい。
【0090】
さらに、前述のように、圧電素子210を制御用の圧電素子とし、圧電素子220を振動用の圧電素子とする構成であってもよい。
【0091】
[第3の変形例]
図9及び
図10を用いて、本変形例におけるMEMSミラー200Cの構成を説明する。
図9は、本変形例におけるMEMSミラー200Cの構成の一例を示す上面図である。
図1は、
図9のX-X線に沿う断面図である。MEMSミラー200Cは、膜厚方向に変位可能な振動膜212と、振動膜212と離間し、かつ振動膜212を囲っている枠部211と、振動膜212と枠部211とを接続し、かつ、枠部211よりも膜厚が小さい軸部214と、軸部214上に配置されている制御用の圧電素子220Bと、圧電素子220Bと電気的に接続し、圧電素子220Bを制御するための配線216と、振動膜212の外縁部上、及び軸部214上、及び枠部211上に配置されている配線215と、を備える。なお、図示を省略するが、配線215及び配線216は、前述の制御部120と電気的に接続している。圧電素子220Bは、振動膜212を挟むように設けられている2つの軸部214上のそれぞれに配置されている。また、振動膜212、軸部214、及び枠部211をまとめて振動体250といい、振動膜212、軸部214、及び圧電素子220Bをまとめて圧電振動体235Cともいう。
【0092】
枠部211、振動膜212、及び軸部214のそれぞれは、例えば、シリコンからなる基台を加工することにより形成されている。つまり、枠部211、振動膜212、及び軸部214は、同一材料からなり、それぞれを一体として形成することにより製造工程をより簡便にすることができる。
【0093】
軸部214は、両端が固定されている両持ち梁形状であり、一方の端部が振動膜212に接続し、他方の端部が枠部211に接続しており、振動膜212と枠部211の間に配置されている。軸部214は、振動膜212の可動の際に、振動膜212の可動を補助するバネとして機能し、軸部214がバネとして機能する際のバネ定数を自身の変形によって調整し、かつ、振動膜212を支持する支持部として機能する。軸部214は、基台を加工する際、枠部211より膜厚が小さくなるようにエッチングすることで形成することができる。
【0094】
配線215は、金属コイルとして機能し、振動膜212の外縁部に配置されている配線215に電流を流すことにより、フレミングの法則によってローレンツ力が発生し、振動膜212に傾きが生じる。具体的には、磁界に直交する方向に金属コイルとして機能する配線215を配置して(磁力の方向は、振動膜212の膜厚方向Zに対して垂直方向、かつ、振動膜212と軸部214との連結面に対して平行な方向X)、
図9に示す矢印217の方向に電流を流すと振動膜212の膜厚方向に向かって配線215にローレンツ力が加わる。ローレンツ力の大きさは、電流及び磁界の強さに比例する。
【0095】
振動膜212は、膜厚方向に変位可能なように構成されている。具体的には、軸部214を回転軸として機能させ、枠部211と離間させることにより、ローレンツ力による膜厚方向における振動膜212の変位が可能となる。
【0096】
また、振動膜212上には、ミラー213が設けられており、振動膜212の傾きに伴ってミラー213も傾く。ミラー213は、上記ローレンツ力を調整することにより、方向X及び方向Zに垂直な方向Yの回転軸を回転させることが可能である。
【0097】
ミラー213は、レーザー光等を反射するミラー面を有するものであれば、特に限定されなく、例えば、蒸着または印刷等によって形成された、反射率が90%以上の金属層であってもよい。
【0098】
配線215及び配線216は、例えば、銅線、アルミニウム線、及び銅クラッドアルミニウム線(CCAW:Copper-Clad Aluminum Wires)を用いることができる。また、配線215及び配線216は、絶縁膜で被覆されていてもよく、当該絶縁膜としては、例えば、エナメル又は樹脂からなる。
【0099】
本変形例においても、前述の駆動システム10の処理フロー同様に、MEMSミラー200Cの駆動で用いる配線215からの電磁誘導による電流情報を取得することにより、電流値が最も大きい駆動波の周波数を特定することができ、その周波数を振動レベル(振幅)が最も大きい振動体の固有振動数と評価することができる。
【0100】
また、支持部である軸部214上には、制御用の圧電素子220Bが配置されており、配線216を介して圧電素子220Bに定電圧の制御電圧が印加されることによって圧電素子220Bが変形する。圧電素子220Bの変形に伴って、軸部214の両端が互い引っ張り合うように変形するため、軸部214がかたくなり、軸部214のバネ定数は上昇する。圧電素子220Bに印加される制御電圧を調整することにより、圧電素子220Bが変形し、この変形に伴って軸部214も変形するため、結果として軸部214のバネ定数を調整することができ、圧電振動体235Cの固有振動数を調整することができる。圧電振動体235Cの固有振動数を調整することにより、振動膜212、軸部214、及び枠部211からなる振動体250の固有振動数を調整することができる。
【0101】
圧電素子220Bの説明は、前述の圧電素子220を援用することができる。
【0102】
圧電素子220Bにより、ミラー面に入射したレーザー光の光路を変え、最も効率がよい状態の固有振動数においてMEMSミラー200Cを駆動させることができる。
【0103】
(その他の実施形態)
前述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述及び図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載していない様々な実施形態等を含む。
【符号の説明】
【0104】
10 駆動システム
100 信号送受信装置
110 送受信部
111 駆動波生成部
112 発電波モニタ
113 入出力切替部
120 制御部
121 駆動制御部
122 電圧制御部
130 記憶部
200、200A、200B トランスデューサ
200C MEMSミラー
210、220、220A、220B 圧電素子
210a、220a 上部電極
210b、220b 下部電極
210c、220c 圧電膜
211 枠部
212、230、230A、230B 振動膜
213 ミラー
214 軸部
215、216 配線
217 矢印
235、235A、235B、235C 圧電振動体
237、237A スリット
240、240A 膜支持部
250 振動体