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特開2023-170843複合成形品の製造方法および複合成形品
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  • 特開-複合成形品の製造方法および複合成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023170843
(43)【公開日】2023-12-01
(54)【発明の名称】複合成形品の製造方法および複合成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 51/14 20060101AFI20231124BHJP
   B29C 51/10 20060101ALI20231124BHJP
   B29C 51/08 20060101ALI20231124BHJP
【FI】
B29C51/14
B29C51/10
B29C51/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082907
(22)【出願日】2022-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】591008199
【氏名又は名称】ビューテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】坂東 隆
(72)【発明者】
【氏名】山下 紗津稀
(72)【発明者】
【氏名】杉原 一宏
【テーマコード(参考)】
4F208
【Fターム(参考)】
4F208AC03
4F208AD05
4F208AD16
4F208AG03
4F208MA01
4F208MA05
4F208MB01
4F208MB11
4F208MB22
4F208MC01
4F208MG07
4F208MG11
4F208MH06
4F208MK15
4F208MW02
4F208MW23
(57)【要約】
【課題】熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品において表面材に孔を形成することなく安定的に製造すると共に、製造工程の数を低減させることが可能な複合成形品の製造方法および複合成形品を提供する。
【解決手段】複合成形品1の製造方法であり、上型11と下型12との間に、加熱軟化させた二つの軟化シート2bとそれらに挟まれている中間材3とを配置し、二つの軟化シート2bにそれぞれ周縁部11b,12bが接触していると共に、それらの間から中間材3が外部に露出している状態で、成形面11a,12aと二つの軟化シート2bとの間の空気を真空吸引して二つの軟化シート2bを成形面11a,12aに密着させ、その後、上型11と下型12とを接近させて周縁部11b,12bにおいて二つの軟化シート2b同士を溶着させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品の製造方法であって、
所定形状の成形面を有している一対の金型の間に、それぞれ前記表面材となる樹脂シートの二つを加熱軟化させた二つの軟化シートと、二つの該軟化シートの間に挟まれている通気性および柔軟性を有する中間材とが配置され、二つの前記軟化シートそれぞれに一対の前記金型それぞれの前記成形面よりも外側の周縁部が接触していると共に、二つの前記軟化シートの間から前記中間材が外部に露出して二つの前記軟化シートの間が前記中間材を通して大気開放されている状態で、
少なくとも一方の前記金型の前記成形面と、当該金型に近い側の前記軟化シートとの間の空気を真空吸引して前記軟化シートを前記成形面に密着させ、
その後、一対の前記金型を接近させることにより、前記周縁部において、または、該周縁部よりも内側の部位において、前記中間材を通して二つの前記軟化シート同士を溶着させる
ことを特徴とする複合成形品の製造方法。
【請求項2】
熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品であって、
二つの前記表面材の間には通気性および柔軟性を有する中間材が挟まれており、
前記離隔部では、前記中間材における前記表面材と接している部位が該表面材と接着されており、
前記接触部では、前記中間材を通して二つの前記表面材が互いに溶着されている
ことを特徴とする複合成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品の製造方法および複合成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの内装部品として、両面が熱可塑性樹脂シートにより所定の形状に形成されていると共に、その間の離隔している離隔部に中間材が充填されている複合成形品がある。この複合成形品の製造方法として、例えば、左右方向へ開閉する第一型および第二型と、開閉方向へ進退し第一型の外周を囲っている型枠と、を有している金型を使用した製造方法が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1の技術は、まず、第一型と第二型とを開くと共に、型枠の先端を第一型よりも第二型側へ前進させた状態で、型枠と第二型との間に、それぞれが加熱軟化している第一樹脂シートと第二樹脂シートを挿入する。続いて、型枠の先端を第一樹脂シートに当接させた上で、第一型と第一樹脂シートとの間の空気を真空吸引して第一樹脂シートを第一型の成形面に密着させる。その後、第一樹脂シートを間にして第一型の成形面と反対側に中間材をインサートする。この中間材には、左右に貫通している貫通孔が予め設けられている。中間材をインサートした状態で、第一型および型枠と第二型とを相対的に接近させて、第一樹脂シートおよび第二樹脂シートを第二型と型枠との間に挟むと共に、第一型側から、第一樹脂シートを貫通させて中間材の貫通孔に吹込み針を挿入する。この状態で、第二型の成形面と第二樹脂シートとの間の空気を真空吸引しつつ、吹込み針の先端から第二樹脂シートと中間材との間に圧縮空気を吹き込むことにより、第二樹脂シートを第二型の成形面に密着させる。その後、型枠を第二型から遠ざかる方向へ後退させると共に、第一型と第二型とを互いに接近させて型締めして、成形面の周縁部において第一樹脂シートと第二樹脂シートを溶着するようにしている。
【0004】
ところが、第一樹脂シートと第二樹脂シートとを加熱軟化させることでそれぞれの樹脂シートに粘着性が発生するため、第一型と第二型との間に挿入するタイミングや状況、樹脂シート同士の間隔などによっては、成形する前に樹脂シート同士が密着・接着して不具合となってしまう場合があった。そのため、特許文献1の技術では、第一樹脂シートと第二樹脂シートの成形を、互いに密着・接着しないようにそれぞれ別々の工程で行っていると共に、それらの工程の間に中間材をインサートする工程を有しているため、全体として工程の数が多く時間がかかるという問題があった。
【0005】
また、特許文献1の技術では、中間材を、第一型の成形面と第二型の成形面との間の空間と対応する大きさや形状に予め成形しておく必要があり、コストが増加するという問題があった。更に、第二樹脂シートを成形する際に、第二樹脂シートと中間材との間に吹込み針によって圧縮空気を吹き込んでいるため、第二樹脂シートと中間材との接着性が悪くなるという問題があった。また、第一樹脂シートには、吹込み針による孔が形成されてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-154430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品において表面材に孔を形成することなく安定的に製造すると共に、製造工程の数を低減させることが可能な複合成形品の製造方法および複合成形品の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明に係る複合成形品の製造方法は、
「熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品の製造方法であって、
所定形状の成形面を有している一対の金型の間に、それぞれ前記表面材となる樹脂シートの二つを加熱軟化させた二つの軟化シートと、二つの該軟化シートの間に挟まれている通気性および柔軟性を有する中間材とが配置され、二つの前記軟化シートそれぞれに一対の前記金型それぞれの前記成形面よりも外側の周縁部が接触していると共に、二つの前記軟化シートの間から前記中間材が外部に露出して二つの前記軟化シートの間が前記中間材を通して大気開放されている状態で、
少なくとも一方の前記金型の前記成形面と、当該金型に近い側の前記軟化シートとの間の空気を真空吸引して前記軟化シートを前記成形面に密着させ、
その後、一対の前記金型を接近させることにより、前記周縁部において、または、該周縁部よりも内側の部位において、前記中間材を通して二つの前記軟化シート同士を溶着させる」
ことを特徴とする。
【0009】
熱可塑性樹脂シートとしては、「熱可塑性樹脂をベースレジンとして、繊維が10wt%~50wt%、添加剤が0wt%~5wt%、含有されているもの」、「熱可塑性樹脂の繊維からなり、通気抵抗を有する15gsm~50gsmの不織布」、「熱可塑性樹脂のみからなるシート」、を例示できる。上記の熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、などがある。含有される繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、などの樹脂繊維や、綿や麻やケナフのような天然繊維がある。添加剤としては、タルク、炭酸カルシウム、などがある。二つの表面材は、材質が同じであって良いし、材質が異なっていても良い。
【0010】
中間材としては、「ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリエステル、などの樹脂繊維からなる繊維状マット、または、マイクロ繊維マット」、「ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、などの合成樹脂を空隙が繋がるように発泡させた多孔質の発泡材(スポンジ状マット)」、「綿、麻、ケナフ、のような天然繊維からなるマット」、を例示できる。
【0011】
本構成によれば、加熱軟化させた二つの軟化シートの間に中間材を挟んでいるため、意図しないタイミングや状況で、二つの軟化シートが接近して密着・接着してしまうような不具合が発生することはなく、安定的に製造することができる。また、真空引きされる軟化シートの成形面とは反対側が、通気性を有する中間材を通して大気開放されているため、特許文献1のように圧縮空気を吹き込まなくても、真空と大気圧との圧力差によって軟化シートを成形面へ十分に密着させることができる。これにより、二つの表面材が互いに離隔している離隔部を形成することができる。また、表面材となる軟化シートは加熱により粘着性を有していると共に、中間材は柔軟性を有しているため、真空引きにより軟化シートが成形面に密着して所定形状に真空成形される際に、中間材における軟化シートと接して接着されている部位が軟化シートの変形により成形面側へ引っ張られ、中間材が膨張するように変形することとなる。
【0012】
このようなことから、軟化シートによる表面材の真空成形と同時に中間材を所望の形状に成形することができるため、一対の金型それぞれの成形面同士の間の空間と対応する大きさや形状に中間材を予め成形しておく必要はない。また、表面材の成形後に中間材を配置する必要はない。従って、本構成の製造方法によれば、特許文献1の技術と比較して、製造工程の数を少なくすることができ、製造にかかるコストを低減させることができる。
【0013】
また、真空引きする際に、外部に露出している中間材を通して軟化シートにおける成形面とは反対側を大気開放させているため、特許文献1のように表面材となる軟化シートに吹込み針を貫通させる必要はなく、表面材に製造用の吹込み針の孔が開いていない複合成形品を製造することができる。
【0014】
更に、真空引きにより軟化シートを表面材の形状に成形した後に、成形面の外側の周縁部において、または、周縁部よりも内側の部位において、中間材を通して二つの軟化シートを溶着させている。これにより、二つの表面材が互いに接している接触部を形成することができる。この溶着されている接触部により、複合成形品において、中間材が柔軟性を有していても二つの表面材が相対的に移動してしまうことはなく、所望の形状に保持される複合成形品を製造することができる。
【0015】
本発明に係る複合成形品は、
「熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品であって、
二つの前記表面材の間には通気性および柔軟性を有する中間材が挟まれており、
前記離隔部では、前記中間材における前記表面材と接している部位が該表面材と接着されており、
前記接触部では、前記中間材を通して二つの前記表面材が互いに溶着されている」
ことを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、二つの表面材が互いに離隔している離隔部に、通気性および柔軟性を有する中間材が挟まれているため、中間材の存在により、離隔部が中空の成形品と比較して、断熱性や吸音性を高くすることができる。また、二つの表面材には、製造用の孔が形成されていないため、見栄えが良い。
【0017】
ところで、中間材が表面材に接着されていないと、離隔部内において中間材が移動することで、断熱性や吸音性が低下したり、振動や音を発したり、する恐れがある。これに対して、本構成では、中間材が表面材と接着されているため、中間材が表面材に対して移動することはなく、断熱性や吸音性が低下したり、振動や音を発したり、することはない。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明の効果として、熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材が互いに離隔している離隔部と互いに接している接触部とを有する複合成形品において表面材に孔を形成することなく安定的に製造すると共に、製造工程の数を低減させることが可能な複合成形品の製造方法および複合成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(a)は本発明の一実施形態である複合成形品の製造方法において一対の金型を開くと共にその外部に表面材となる二つの樹脂シートと中間材とを配置した状態を概略で示す説明図であり、(b)は(a)の状態から二つの樹脂シートを加熱して軟化シートにした状態を示す説明図であり、(c)は(b)の状態から開いている一対の金型の間に二つの軟化シートと中間材を移動させた状態を示す説明図である。
図2】(a)は図1(c)の状態から開いている一対の金型を互いに接近させている状態を示す説明図であり、(b)は(a)の状態から一対の金型を接近させて一対の金型の周縁部と二つの軟化シートと中間材とがそれぞれ接する第一型締位置の状態を示す説明図であり、(c)は(b)の状態から一対の金型において真空引きを開始した状態を示す説明図であり、(d)は(c)の状態から真空引きにより二つの軟化シートが一対の金型それぞれの成形面に密着した状態を示す説明図であり、(e)は(d)の状態から一対の金型を接近させて一対の金型の周縁部において二つの軟化シートが互いに接する第二型締位置の状態を示す説明図であり、(f)は(e)の状態から一対の金型を開いてその間に複合成形品が製造された状態を示す説明図である。
図3】(a)は図2(f)とは異なる形態の複合成形品の製造方法であり開いている一対の金型の間に加熱軟化された二つの軟化シートとそれらの間に中間材とを配置して一対の金型を互いに接近させている状態を示す説明図であり、(b)は(a)の状態から一対の金型を接近させて一対の金型の周縁部と二つの軟化シートと中間材とがそれぞれ接する第一型締位置の状態を示す説明図であり、(c)は(b)の状態から一対の金型において真空引きを開始した状態を示す説明図であり、(d)は(c)の状態から真空引きにより二つの軟化シートが一対の金型それぞれの成形面に密着した状態を示す説明図であり、(e)は(d)の状態から一対の金型を接近させて一対の金型の周縁部において二つの軟化シートが互いに接する第二型締位置の状態を示す説明図であり、(f)は(e)の状態から一対の金型を開いてその間に複合成形品が製造された状態を示す説明図である。
図4】(a)は図3(f)と同じ複合成形品に対して異なる製造方法であり第一型締位置の状態で一対の金型のうちの下型側のみで真空引きをして下側の軟化シートが下型の成形面に密着している状態を示す説明図であり、(b)は(a)の状態から上型を下降させて金型の周縁部において二つの軟化シートが互いに接している第二型締位置の状態を示す説明図であり、(c)は(b)の状態から一対の金型を開いてその間に複合成形品が製造された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態である複合成形品1および複合成形品1の製造方法(以下では、単に製造方法と称する)について、図1(a)~図1(c)および図2(a)~図2(f)を参照して詳細に説明する。本実施形態の複合成形品1は、例えば、自動車の内装部品に使用されるものである。この複合成形品1は、熱可塑性樹脂シートからなる二つの表面材2が互いに離隔している離隔部1aと互いに接している接触部1bとを有している(図2(f)を参照)。更に詳述すると、複合成形品1は、二つの表面材2の間には通気性および柔軟性を有する中間材3が挟まれており、離隔部1aでは、中間材3における表面材2と接している部位が表面材2と接着されており、接触部1bでは、中間材3の通気孔(空隙)を通して二つの表面材2が互いに溶着されているものである。なお、図2(f)に示す複合成形品1は、二つの表面材2の両方が凹凸を有するようにそれぞれが真空成形されている。
【0021】
本実施形態の複合成形品1は、離隔部1aにおいて、二つの表面材2の間の間隔に応じて当該部位の中間材3の密度が異なっている。詳述すると、中間材3は、二つの表面材2の間隔が広い部位では密度が低く、二つの表面材2の間隔が狭い部位では密度が高い。この複合成形品1は、中間材3の存在により、二つの表面材の間が中空である成形品よりも断熱性や吸音性が優れている。また、複合成形品1は、二つの表面材2の何れにも製造用の孔が形成されておらず、従来の成形品よりも見栄えが良い。更に、複合成形品1は、中間材3が表面材2と接着されているため、中間材3が表面材2に対して移動することはなく、断熱性や吸音性が低下したり、振動や音を発したり、することはない。
【0022】
二つの表面材2は、材質が同じであり、熱可塑性樹脂であるポリプロピレンをベースレジンとして、繊維が10wt%~50wt%(望ましくは、20wt%~30wt%)含有されていると共に、添加剤としてタルクが1wt%~3wt%含有されたものである。中間材3は、ポリエチレンテレフタレートの繊維からなるマイクロ繊維マットである。
【0023】
続いて、上記複合成形品1の製造方法について説明する。ここでは、上型11と下型12とからなる上下方向に開閉する金型10を使用した場合を説明する。図1(a)に示すように、上型11には、下面から上方へ凹んでいる成形面11aと、この成形面11aよりも外側に設けられている周縁部11bと、を有している。また、下型12には、上面から下方へ凹んでいる成形面12aと、この成形面12aよりも外側に設けられている周縁部12bと、を有している。それぞれの成形面11a,12aは、殻状の離隔部1aを成形するためのものである。それぞれの成形面11a,12aには、成形する形状に合わせた凹凸が設けられていると共に、真空引きするための複数の小孔が設けられている。
【0024】
まず、金型10を開いた状態で、金型10の外部において、表面材2となる熱可塑性の二つの樹脂シート2aを配置すると共に、金型10を間にした反対側に一つの中間材3を配置する。二つの樹脂シート2aは、上型11と下型12との間の高さにおいて、それぞれが水平な状態で上下に離隔して配置する。一方、中間材3は、二つの樹脂シート2aの間の中間の高さで、水平な状態に配置する。
【0025】
そして、二つの樹脂シート2aのそれぞれの下方に、図示しないプレート状のヒーターを挿入して、それぞれの樹脂シート2aを、その表面温度が160℃~190℃になるまで加熱して、加熱軟化した軟化シート2bとする(図1(b)を参照)。なお、ヒーターは、表面温度が300℃~350℃であり、2分~3分加熱することで、軟化シート2bとなる。
【0026】
次に、二つの軟化シート2bを上型11と下型12との間に移動させると共に、中間材3を上型11と下型12との間に移動させて、二つの軟化シート2bの間に位置させる(図1(c)を参照)。この状態では、二つの軟化シート2bは、加熱軟化により粘着性を有しているが、間に中間材3が位置しているため、二つの軟化シート2bが互いに密着・接着して不具合となることはない。
【0027】
その後、上型11を下降させると共に、下型12を上昇させる(図2(a)を参照)。そして、上型11の周縁部11bに上側の軟化シート2bが接触すると共に、下型12の周縁部12bが下側の軟化シート2bに接触した上で、上側の軟化シート2bと下側の軟化シート2bとがそれぞれ中間材3に接した状態にする(図2(b)を参照)。この状態になった時に、上型11の下降を停止させると共に、下型12の上昇を停止させる。この状態は、金型10における第一型締位置の状態である。
【0028】
第一型締位置の状態では、軟化シート2bは、加熱軟化により粘着性を有しているため、中間材3と接している部位が中間材3と接着される。また、この状態では、中間材3の外周側面が金型10の外部へ露出している。これにより、通気性を有する中間材3を通して二つの軟化シート2bの間が大気開放されている。
【0029】
この状態で、上型11の成形面11aと軟化シート2bとの間の空気と、下型12の成形面12aと軟化シート2bとの間の空気とを、同時に真空引きする(図2(c)を参照)。二つの軟化シート2bの間が中間材3を通して大気開放されているため、真空と大気圧との圧力差によって、上側の軟化シート2bが塑性変形して上型11の成形面11aに密着すると共に、下側の軟化シート2bが塑性変形して下型12の成形面12aに密着する(図2(d)を参照)。これにより、二つの軟化シート2bがそれぞれ所望の形状に真空成形される。これら真空成形された部位は、二つの表面材2が互いに離隔している離隔部1aとなる。なお、図2(c)および図2(d)において白抜きの矢印は、空気の流れを示している。
【0030】
また、中間材3の上面と下面は、それぞれが軟化シート2bの粘着力により接着されているため、真空引きによる軟化シート2bの塑性変形に伴って、成形面11a,12a側へ引っ張られ、上下方向へ膨張するように変形する。これにより、二つの表面材2の間の間隔に応じて中間材3の密度が異なることとなる。
【0031】
その後、上型11を下降させ、上型11の周縁部11bと下型12の周縁部12bとの間の部位において、二つの軟化シート2bが互いに接したら、上型11の下降を停止させる(図2(e)を参照)。この状態は、金型10の第二型締位置の状態である。この状態では、周縁部11b,12bで挟み込まれた部分で中間材3が潰されると共に、二つの軟化シート2bの軟化した材料が中間材3の通気孔(ここでは繊維間)を通過することにより、互いが溶着されることとなる。この溶着された部位が、二つの表面材2が互いに接している接触部1bとなる。また、金型10が第二型締位置の状態になると、図示しない切断刃により、製品と同じ大きさとなるように成形品の外周の余分な部位が切断される。
【0032】
そして、軟化シート2bを冷却して硬化したら、上型11を上昇させると共に、下型12を下降させ、それらの間から取出すことにより、所望の形状に成形された複合成形品1が製造されることとなる(図2(f)を参照)。
【0033】
次に、図3(f)に示すような、二つの表面材2のうちの一方の表面材2が平坦に形成されている複合成形品1の製造方法について、図3(a)~図3(f)を参照して説明する。なお、ここでは、上記の上型11が異なるのみで、その他の構成は上記と同じであるため、同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図3(a)などに示すように、金型10の上型13は、上記の上型11とは異なっており、平坦な成形面13aと、成形面13aよりも外側に設けられている周縁部13bと、を有している。成形面13aと周縁部13bとは同一面状に形成されている。成形面13aには、真空引きするための複数の小孔が設けられている。
【0034】
上記と同様に、上下に開いた金型10の間に、加熱軟化した二つの軟化シート2bと、それらの間に中間材3を配置し、上型13を下降させると共に、下型12を上昇させる(図3(a)を参照)。そして、上型13に上側の軟化シート2bが接触すると共に、下型12の周縁部12bが下側の軟化シート2bに接触した上で、上側の軟化シート2bと下側の軟化シート2bとがそれぞれ中間材3に接した第一型締位置の状態にする(図3(b)を参照)。
【0035】
続いて、上型13の成形面13aと軟化シート2bとの間の空気と、下型12の成形面12aと軟化シート2bとの間の空気とを、同時に真空引きする(図3(c)を参照)。二つの軟化シート2bの間が中間材3を通して大気開放されているため、真空と大気圧との圧力差によって、上側の軟化シート2bが上型13の平坦な成形面13aに密着すると共に、下側の軟化シート2bが塑性変形して下型12の成形面12aに密着する(図3(d)を参照)。
【0036】
この際に、中間材3の下面が下側の軟化シート2bの塑性変形に伴って、下方向へ引っ張られて膨張するように変形する。一方、上側の軟化シート2bは、真空引きにより平坦な上型13に密着しているため、中間材3が下方向へ引っ張られても変形することはない。
【0037】
その後、上型13を下降させ、上型13の周縁部13bと下型12の周縁部12bとの間の部位において、二つの軟化シート2bが互いに接するように第二型締位置の状態にする(図3(e)を参照)。これにより、二つの軟化シート2bが互いに接している部位が互いに溶着されると共に、図示しない切断刃により、製品と同じ大きさとなるように成形品の外周の余分な部位が切断される。
【0038】
そして、軟化シート2bを冷却して硬化したら、上型13を上昇させると共に、下型12を下降させ、それらの間から取出すことにより、一方の表面材2が平坦な複合成形品1が製造されることとなる(図3(f)を参照)。
【0039】
なお、中間材3の中に芯材を入れるようにしても良い。この場合、二つの樹脂シート2a(軟化シート2b)の間に芯材が内包されている中間材3を重ねた状態で、金型10にセットして成形する。例えば、中間材3に通気性のない芯材が内包されていても、中間材3が通気性を有しているため、中間材3を通して大気開放させることができる。また、芯材を中間材3で囲むことにより、複合成形品1において芯材を保持・固定することは可能である。このように製造することにより、熱可塑性樹脂シートからなる表面材2に芯材が接着されると共に、芯材との間に中間材3が充填されており、所望の形状に保持される複合成形品を製造することができる。
【0040】
このように、本実施形態の製造方法によれば、加熱軟化させた二つの軟化シート2bの間に中間材3を挟んでいるため、意図しないタイミングや状況で、二つの軟化シート2bが接近して密着・接着してしまうような不具合が発生することはなく、複合成形品1を安定的に製造することができる。
【0041】
また、真空引きされる軟化シート2bの成形面11a,12a,13aとは反対側が、通気性を有する中間材3を通して大気開放されているため、従来のように圧縮空気を吹き込まなくても、真空と大気圧との圧力差によって軟化シート2bを成形面11a,12a,13aへ十分に密着させることができる。これにより、二つの表面材2が互いに離隔している離隔部1aを形成することができる。そして、本実施形態では、二つの軟化シート2bを同時に真空引き(真空成形)してそれぞれを表面材2に成形している。
【0042】
また、表面材2となる軟化シート2bは加熱により粘着性を有していると共に、中間材3は柔軟性を有しているため、真空引きにより軟化シート2bが成形面11a,12a,13aに密着して所定形状に真空成形される際に、中間材3の軟化シート2bと接して接着されている部位が軟化シート2bの塑性変形により成形面11a,12a,13a側へ引っ張られ、中間材3が膨張するように変形することとなる。
【0043】
このようなことから、軟化シート2bによる二つの表面材2の真空成形と同時に中間材3を所望の形状に成形することができるため、金型10それぞれの成形面11a,12a,13a同士の間の空間と対応する大きさや形状に中間材3を予め成形しておく必要はない。また、表面材2の成形後に中間材3を配置する必要はない。従って、本実施形態の製造方法によれば、従来の製造方法と比較して、製造工程の数を少なくすることができ、製造にかかるコストを低減させることができる。
【0044】
また、真空引きする際に、外部に露出している中間材3を通して軟化シート2bにおける成形面11a,12a,13aとは反対側を大気開放させているため、従来のように表面材2となる軟化シート2bに吹込み針を貫通させる必要はなく、表面材2に製造用の吹込み針の孔が開いていない複合成形品1を製造することができる。
【0045】
更に、真空引きにより軟化シート2bを表面材2の形状に成形した後に、成形面11a,12aの外側の周縁部11b,12b,13bにおいて、二つの軟化シート2bの軟化した材料が中間材3を通過することにより、二つの軟化シート2bを溶着させている。これにより、二つの表面材2が互いに接している接触部1bを形成することができる。この溶着されている接触部1bにより、複合成形品1において、中間材3が柔軟性を有していても二つの表面材2が相対的に移動してしまうことはなく、所望の形状に保持される複合成形品1を製造することができる。
【0046】
また、金型10を第二型締位置の状態にした時に、製品と同じ大きさになるように外周を切断しているため、金型10から取出した後に余分な外周を切断する必要はなく、これによっても製造工程の数を少なくすることができる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良および設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、上型11,13と下型12との間で、二つの軟化シート2bの間に中間材3を重ね合わせるものを示したが、これに限定するものではなく、金型10の外部において、二つの軟化シート2bの間に中間材3を挿入し、それらを重ね合わせてから上型11,13と下型12との間に移動させるようにしても良い。或いは、金型10の外部において、予め二つの樹脂シート2aの間に中間材3を挟んでおき、樹脂シート2aを加熱軟化させてから上型11,13と下型12との間に移動させるようにしても良い。
【0049】
また、上記の実施形態では、二つの表面材2の材質が同じものを示したが、これに限定するものではなく、二つの表面材2の材質が異なっていても良い。
【0050】
また、上記の実施形態では、表面材2として、ポリプロピレンをベースレジンとしたものを示したが、これに限定するものではなく、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、などをベースレジンとしても良い。また、表面材2に、タルクのような添加剤が含有されていなくても良い。更に、表面材2は、単層シートであっても良いし、多層シートであっても良い。また、中間材3を、ナイロン、ポリエステル、などの樹脂繊維からなる繊維状マット、マイクロ繊維マット、スポンジ状マット、などとしても良い。
【0051】
更に、上記の実施形態では、金型10として上下方向に開閉するものを示したが、これに限定するものではなく、左右方向に開閉する金型としても良い。この場合、表面材2となる樹脂シート2aや中間材3は、それらの面を左右方向へ向けた状態とする。
【0052】
また、上記の実施形態では、二つの軟化シート2bを真空引きするものを示したが、これに限定するものではなく、一方の軟化シート2bのみを真空引きして成形面に沿った形状の表面材2に形成するようにしても良い。換言すると、二つの表面材のうち一方の表面材のみが真空成形されている複合成形品としても良い。この場合、真空引きする方の表面材を上記と同じ材質にし、真空引きしない方の表面材の材質を、ポリエチレンテレフタレートのような熱可塑性樹脂の繊維からなり、通気抵抗を有する15gsm~50gsm(望ましくは、20gsm~40gsm)の不織布としても良い。或いは、真空引きしない方の表面材の材質を、熱可塑性樹脂のみからなるシートとしても良い。
【0053】
上記のような一方の表面材のみが真空成形されている複合成形品の製造方法について、図4(a)~図4(c)を参照して説明する。なお、ここでは、上記の上型が異なるのみで、その他の構成は上記と同じであるため、同じ構成については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。図4(a)などに示すように、金型10の上型14は、平坦な成形面14aと、成形面14aよりも外側に設けられている周縁部14bと、を有している。この金型10は、真空引きするための複数の小孔が、上型14には設けられておらず、下型12にのみ設けられている。
【0054】
そして、上記と同様に、上型14と下型12との間において、二つの軟化シート2b1,2b2の間に中間材3が挟まれている状態で、金型10を第一型締位置へ移動させる。その後、下型12側からのみ真空引きをすると、下側の軟化シート2b2が下型12の成形面12aに密着する際に、中間材3が軟化シート2b2と一緒に下方向の成形面12a側へ引っ張られるが、真空引きしない上側の軟化シート2b1は変形しない(図4(a)を参照)。詳述すると、真空引きしない上側の軟化シート2b1は、中間材3を介して成形面12a側(下方向)へ引っ張られても、この軟化シート2b1は非通気性または通気抵抗を有していることから、軟化シート2b1と上型14との間には真空引きされた空気の流れが生じないため、軟化シート2b1が移動したり変形したりすることはない。
【0055】
その後、平坦な上型14を第二型締位置へ下降させて、平坦な軟化シート2b1と成形された軟化シート2b2とを周縁部14b,12bにおいて溶着させる(図4(b)を参照)。そして、軟化シート2b1,2b2が硬化したら、金型10を開いて取出すことにより、一方の表面材2が平坦な複合成形品1が製造される(図4(c)を参照)。つまり、一方の表面材2のみを真空成形する場合でも、図3(f)に示す複合成形品と同じような複合成形品を製造することができる。
【0056】
また、上記の実施形態では、第二型締位置の時に、上型11および下型12のそれぞれの周縁部11b,12bの部位において、二つの軟化シート2bを溶着させるものを示したが、これに限定するものではなく、周縁部11b,12bよりも内側の部位(成形面11a,12aの中央部)において二つの軟化シート2bを溶着させても良い。この場合、一方の成形面から対面している成形面側へ突出する突起を少なくとも一つ設け、その突起により一方の軟化シートを他方の軟化シートに押し付けて溶着する。
【0057】
また、上記の実施形態では、第二型締位置の時に、外周の余分な部位を切断するものを示したが、これに限定するものではなく、金型10から成形品を取出した後で、外周の余分な部位を切断しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 複合成形品
1a 離隔部
1b 接触部
2 表面材
2a 樹脂シート
2b 軟化シート
2b1 軟化シート
2b2 軟化シート
3 中間材
10 金型
11 上型
11a 成形面
11b 周縁部
12 下型
12a 成形面
12b 周縁部
13 上型
13a 成形面
13b 周縁部
14 上型
14a 成形面
14b 周縁部
図1
図2
図3
図4